(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066989
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置の検査方法、半導体装置およびプローブカード
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240509BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240509BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240509BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240509BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/28 V
G01R31/28 K
G01R31/26 G
G01R31/26 J
G01R1/073 E
G01R1/067 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152115
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】18/051,926
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷村 政明
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AB16
2G003AC03
2G003AE08
2G003AF01
2G003AG03
2G003AG04
2G003AH05
2G011AA16
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB04
2G011AE03
2G011AF07
2G132AB14
2G132AE23
2G132AF02
2G132AK07
2G132AL15
2G132AL21
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA31
4M106DD03
4M106DD10
4M106DH14
4M106DH44
4M106DH45
4M106DH46
4M106DJ03
(57)【要約】
【課題】温度センサ回路の温度特性を高精度に補正する。
【解決手段】半導体装置は、センサ素子を含む温度センサ回路と、各種内部回路と、センサ素子に接続されるセンサ端子と、各種内部回路に接続される通常端子と、を備える。半導体検査装置は、第1のプローブと、第2のプローブとが装着されたプローブカードを用いることで、第1のプローブがセンサ端子に接触し、第2のプローブが半導体装置に接触しない第1の状態と、第1のプローブがセンサ端子に接触し、第2のプローブが通常端子に接触する第2の状態とで、ステージ上に搭載された半導体装置を検査する。半導体検査装置は、第1の状態を用いてセンサ素子の出力値を測定することで、センサ素子の実温度特性を算出し、当該実温度特性に基づいて、第2の状態でのセンサ素子の実温度を把握する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体検査装置を用いた半導体装置の検査方法であって、
前記半導体装置は、
温度に依存して出力値が変化するセンサ素子を含み、前記センサ素子の出力値に基づいて前記半導体装置の温度を検知する温度センサ回路と、
前記半導体装置が担う各種機能を実現する内部回路と、
前記センサ素子に接続されるセンサ端子と、
前記内部回路に接続される通常端子と、
を備え、
前記半導体検査装置は、
第1の長さと、前記第1の長さよりも短い第2の長さとに設定可能な第1のプローブと、前記第2の長さに設定される第2のプローブとが装着されたプローブカードを用いることで、前記第1のプローブが前記センサ端子に接触し、前記第2のプローブが前記半導体装置に接触しない第1の状態と、前記第1のプローブが前記センサ端子に接触し、前記第2のプローブが前記通常端子に接触する第2の状態とで、ステージ上に搭載された前記半導体装置を検査し、
前記ステージの温度を少なくとも2以上の温度に設定し、
各温度で、前記第1の状態を用いて前記センサ素子の出力値を測定し、前記ステージの温度を前記センサ素子の実温度とみなすことで、前記センサ素子の実温度と前記センサ素子の出力値との関係を表す実温度特性を算出し、
前記各温度で、前記第2の状態を用いて、前記センサ素子の出力値の測定と前記温度センサ回路の出力値の取得とを含めて前記半導体装置全体を検査し、前記ステージの温度を前記センサ素子の実温度とみなさずに、前記センサ素子の出力値を前記実温度特性に基づいて実温度に換算することで、前記センサ素子の実温度と前記温度センサ回路の出力値との関係を算出する、
半導体装置の検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の検査方法において、
前記センサ端子は、
前記センサ素子に外部からバイアスを印加するための第1のセンサ端子および第2のセンサ端子と、
前記バイアスの印加に応じて前記センサ素子に生じる出力値を外部で測定するための第3のセンサ端子および第4のセンサ端子と、
を備え、
前記第1のプローブは、前記第1のセンサ端子~前記第4のセンサ端子にそれぞれ接触する4本のプローブを備え、
前記半導体検査装置は、前記第1のプローブを介して前記第1のセンサ端子および前記第2のセンサ端子に前記バイアスを印加し、前記第3のセンサ端子および前記第4のセンサ端子に生じた前記センサ素子の出力値を前記第1のプローブを介して測定する、
半導体装置の検査方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の検査方法において、
前記センサ素子に印加される前記バイアスは、電流であり、
前記センサ素子の出力値は、電圧値である、
半導体装置の検査方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の検査方法において、
前記半導体検査装置は、前記第2の状態で検査を行う際に、前記センサ素子の前記実温度特性に基づいて、前記センサ素子の実温度が本来の検査温度となるように、前記ステージの温度を設定する、
半導体装置の検査方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の検査方法において、
前記半導体検査装置は、プローバと、テスタと、を有し、
前記プローバは、
前記ステージを駆動することで前記第1の状態または前記第2の状態を構築し、
前記第1の状態を構築した場合には第1の検査開始命令を前記テスタへ送信し、
前記第1の検査開始命令に応じて前記テスタから受信した第1の検査終了通知に応じて前記第2の状態を構築し、
前記第2の状態を構築した場合には第2の検査開始命令を前記テスタへ送信し、
前記テスタは、
前記プローバからの前記第1の検査開始命令に応じて、第1の検査プログラムを実行することで前記センサ素子の出力値を測定し、
前記センサ素子の出力値を測定したのち前記第1の検査終了通知を前記プローバへ送信し、
前記プローバからの前記第2の検査開始命令に応じて、第2の検査プログラムを実行することで、前記センサ素子の出力値の測定と前記温度センサ回路の出力値の取得とを含めて前記半導体装置全体を検査し、
前記半導体装置全体の検査を終了したのち第2の検査終了通知を前記プローバへ送信する、
半導体装置の検査方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の検査方法において、
前記通常端子の数は、1000個以上である、
半導体装置の検査方法。
【請求項7】
温度に依存して出力値が変化するセンサ素子を含み、前記センサ素子の出力値に基づいて半導体装置の温度を検知する温度センサ回路と、
前記半導体装置が担う各種機能を実現する内部回路と、
外部への検査用端子の一部であり、前記センサ素子に接続されるセンサ端子と、
前記検査用端子の他の一部であり、前記内部回路に接続される通常端子と、
を備える、
半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記センサ端子は、
前記センサ素子に外部からバイアスを印加するための第1のセンサ端子および第2のセンサ端子と、
前記バイアスの印加に応じて前記センサ素子に生じる出力値を外部で測定するための第3のセンサ端子および第4のセンサ端子と、
を備える、
半導体装置。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置において、
さらに、前記センサ素子と前記センサ端子との間の配線に直列に挿入されるESD(Electro Static Discharge)保護素子を備える、
半導体装置。
【請求項10】
請求項7記載の半導体装置において、
前記半導体装置を、第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向のそれぞれで2等分することで4個の領域に区別した場合、
前記温度センサ回路または前記センサ端子の一方は、前記4個の領域の中で点対称となる2個の領域の一方に配置され、前記温度センサ回路または前記センサ端子の他方は、前記点対称となる2個の領域の他方に配置され、前記センサ端子は、配置される領域の中で前記半導体装置の外周に近い箇所に配置される、
半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記温度センサ回路および前記センサ端子の組を複数組備え、
前記複数組のそれぞれにおいて、前記温度センサ回路または前記センサ端子の一方は、前記点対称となる2個の領域の一方に配置され、前記温度センサ回路または前記センサ端子の他方は、前記点対称となる2個の領域の他方に配置され、前記センサ端子は、配置される領域の中で前記半導体装置の外周に近い箇所に配置される、
半導体装置。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、前記内部回路としてプロセッサおよびメモリを含んだSOC(System On a Chip)である、
半導体装置。
【請求項13】
半導体検査装置で用いられるプローブカードであって、
第1の長さと、前記第1の長さよりも短い第2の長さとに設定可能な第1のプローブと、
前記第2の長さに設定される第2のプローブと、
を備え、
前記第1のプローブが非検査デバイスである半導体装置に接触し、前記第2のプローブが前記半導体装置に接触しない第1の状態と、前記第1のプローブおよび前記第2のプローブの両方が前記半導体装置に接触する第2の状態とを構築することが可能となっている、
プローブカード。
【請求項14】
請求項13記載のプローブカードにおいて、
前記半導体装置は、温度に依存して出力値が変化するセンサ素子と、前記センサ素子に接続されるセンサ端子と、前記半導体装置が担う各種機能を実現する内部回路と、前記内部回路に接続される通常端子と、を備え、
前記第1のプローブは、前記センサ端子に接触するためのプローブであり、
前記第2のプローブは、前記通常端子に接触するためのプローブである、
プローブカード。
【請求項15】
請求項13記載のプローブカードにおいて、
前記第1のプローブは、
第1のバレルと、
前記第1のバレル内に収納される第1のバネと、
前記第1のバレル内に挿入され、前記第1のバネによって挿入量が制限される第1のプランジャと、
を備え、
前記第2のプローブは、
前記第1のバレルと同じ長さの第2のバレルと、
前記第2のバレル内に収納され、前記第1のバネよりも硬い第2のバネと、
前記第2のバレル内に挿入され、前記第2のバネによって挿入量が制限され、前記第1のプランジャよりも短い第2のプランジャと、
を備える、
プローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の検査方法、半導体装置およびプローブカードに関し、例えば、温度センサ回路を搭載した半導体装置における温度センサ回路の補正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、広い面積にわたって電極パッドにプローブさせる場合に、全てのプローブに均等な圧力を加えることが可能な半導体検査用プローブ装置が示される。具体的には、プローブ装置のステージ上において、ウエハ搭載領域の周囲に、ウエハと同じ厚さのスペーサが設置される。これにより、プローブ構造体は、ウエハとスペーサの両方に対向した状態で押圧されるため、プローブ構造体がウエハの表面に対して傾斜するのを防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、温度センサ回路を搭載したSOC(System On a Chip)等の半導体装置が広く用いられている。温度センサ回路を搭載することで、半導体装置の温度を検知することができ、例えば、半導体装置を過温度等から保護すること等が可能になる。このような半導体装置では、近年の大規模化に伴い、パッケージ形態が、QFP(Quad Flat Package)からFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)等へと移行している。これに伴い、半導体装置の端子、すなわち電極パッドは、半導体装置、言い換えれば半導体チップの全面に配置され、端子数は、数1000個以上となってきている。
【0005】
一方、このような半導体装置が形成された半導体ウエハを検査する際には、各温度での検査結果に基づいて温度センサ回路の温度特性をトリミングやLUT(Look Up Table)などで補正することが望まれる。そのためには、検査時における半導体装置の実温度を正しく把握することが必要となる。しかしながら、半導体装置の実温度は、半導体装置の端子数が増加するほど把握し難くなる。すなわち、半導体装置は、半導体検査装置の温度調整機構から熱を印加されると共に、各端子からプローブを介して常温環境等に設置されるテスタ等にも接続される。このため、端子数、ひいてはプローブ数が増加するほど、温度調整機構の設定温度は、半導体装置の実温度に一致し難くなる。
【0006】
また、このような要因に加えて、大規模化に伴い半導体装置の発熱量が増加することによっても、温度調整機構の設定温度は、半導体装置の実温度に一致し難くなる。これらの要因によって、検査時における半導体装置の実温度を正しく把握できない、すなわち、温度調整機構の設定温度を半導体装置の実温度とみなせない結果、温度センサ回路の温度特性を高精度に補正することが困難となるおそれがあった。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態の半導体装置の検査方法は、半導体検査装置を用いた方法である。半導体装置は、温度に依存して出力値が変化するセンサ素子を含み、当該センサ素子の出力値に基づいて半導体装置の温度を検知する温度センサ回路と、半導体装置が担う各種機能を実現する内部回路と、センサ素子に接続されるセンサ端子と、内部回路に接続される通常端子と、を備える。半導体検査装置は、第1のプローブと、第2のプローブとが装着されたプローブカードを用いることで、第1のプローブがセンサ端子に接触し、第2のプローブが半導体装置に接触しない第1の状態と、第1のプローブがセンサ端子に接触し、第2のプローブが通常端子に接触する第2の状態とで、ステージ上に搭載された半導体装置を検査する。この際に、半導体検査装置は、ステージの温度を少なくとも2以上の温度に設定し、各温度で、第1の状態を用いてセンサ素子の出力値を測定し、ステージの温度をセンサ素子の実温度とみなすことで、センサ素子の実温度とセンサ素子の出力値との関係を表す実温度特性を算出する。また、半導体検査装置は、各温度で、第2の状態を用いて、センサ素子の出力値の測定と温度センサ回路の出力値の取得とを含めて半導体装置全体を検査し、当該センサ素子の出力値を実温度特性に基づいて実温度に換算することで、センサ素子の実温度と温度センサ回路の出力値との関係を算出する。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態の半導体装置の検査方法を用いることで、温度センサ回路の温度特性を高精度に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1による半導体検査装置の構成例および前提となる問題点を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1における半導体装置の構成例を示す概略図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2における温度センサ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図3B】
図3Bは、
図2における温度センサ回路の他の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるプローブカードの詳細な構成例を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示したプローブカードを用いた場合での半導体装置の検査状態の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図4に示したプローブカードを用いた場合での半導体装置の検査状態の他の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5Aに示した状態での詳細な検査方法の一例を説明する等価回路図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1による半導体装置の検査方法の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した処理内容を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した半導体検査装置において、テスタとプローバとの間の主な処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2による半導体装置において、温度センサ回路に関する主要部の構成例を示す回路図である。
【
図11A】
図11Aは、実施の形態2による半導体装置において、温度センサ回路およびセンサ端子の配置構成例を示す模式図である。
【
図11B】
図11Bは、実施の形態2による半導体装置において、温度センサ回路およびセンサ端子の他の配置構成例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3による半導体装置の検査方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体検査装置および半導体装置の概略および前提となる問題点>
図1は、実施の形態1による半導体検査装置の構成例および前提となる問題点を示す概略図である。
図1に示す半導体検査装置は、テスタ1と、プローバ2と、プローブカード3とを備える。テスタ1は、テスタ本体10と、テストヘッド11とを備える。テストヘッド11は、外部へ信号を出力するドライバや、外部からの信号を入力するレシーバや、外部へ電源電圧または電源電流を供給し、電源電流または電源電圧を測定可能な電源ユニット等を備える。テスタ本体10は、所定の検査プログラム等に基づいて、ドライバからの出力信号や電源ユニットからの電源等を制御し、レシーバへの入力信号や、電源ユニットでの測定値等を評価する。
【0015】
プローバ2は、ウエハチャック等と呼ばれるステージ20と、温度調整機構21と、温度測定ユニット22と、ステージ駆動機構23と、を備える。ステージ20上には、複数の半導体チップCP、言い換えれば半導体装置が形成される半導体ウエハWFが搭載される。温度調整機構21は、ヒータや冷却器等を含み、ステージ20の加熱または冷却を行う。温度測定ユニット22は、ステージ20の温度を測定する。プローバ2は、温度測定ユニット22によって測定された温度を反映して温度調整機構21を制御することで、ステージ20、ひいては半導体ウエハWFを所定の設定温度に制御する。
【0016】
プローブカード3は、テストインタフェース12を介してテストヘッド11に接続される。プローブカード3は、テストヘッド11またはプローバ2に対して着脱可能となっている。プローブカード3は、メイン基板30と、変換基板31と、補強板32と、複数のプローブPBが取り付けられたプローブユニット33とを備える。補強板32は、メイン基板30と変換基板31とを連結し、その連結状態を固定する。プローブユニット33は、変換基板31に装着される。メイン基板30は、テストインタフェース12と変換基板31との間を接続する複数の配線を有し、当該配線によって信号または電源を伝送する。変換基板31は、メイン基板30と複数のプローブPBとの間を接続する複数の配線を有し、当該配線によって信号または電源を伝送する。
【0017】
プローバ2内のステージ駆動機構23は、ステージ20をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる。ステージ20の各軸方向の移動量は、任意に設定可能となっている。明細書では、半導体ウエハWFの面方向またはステージ20の面方向を、X軸方向およびX軸方向と直交するY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。ステージ駆動機構23は、被検査デバイスとなる半導体チップCPを検査する際には、ステージ20をX軸方向およびY軸方向に移動させたのち、プローブカード3に装着されるプローブPBが半導体チップCPの端子に接触するように、ステージ20をZ軸方向に移動させる。
【0018】
図2は、
図1における半導体装置の構成例を示す概略図である。
図2に示す半導体装置、すなわち半導体チップCPは、例えば、SOCであり、単数または複数、この例では複数の温度センサ回路THS1,THS2と、半導体装置が担う各種機能を実現する内部回路とを備える。明細書では、複数の温度センサ回路THS1,THS2を総称して温度センサ回路THSと呼ぶ。
【0019】
内部回路には、例えば、プロセッサPRC、メモリ、アクセラレータACC、通信インタフェースCIF、アナログディジタル変換器ユニットADCU、ディジタルアナログ変換器ユニットDACU等が含まれる。メモリには、SRAM、DRAM等の揮発性メモリVMEMや、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリNVMEMが含まれる。
【0020】
複数の温度センサ回路THS1,THS2は、半導体チップCP内のそれぞれ異なる位置での温度を検知する。プロセッサPRCは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等であり、メモリに格納された所定のプログラムを実行することで所定の機能を実現する。アクセラレータACCは、半導体装置に求められる専用の機能を担う回路である。通信インタフェースCIFは、所定の通信プロトコルに基づき、装置外部と通信を行う。
【0021】
図3Aおよび
図3Bは、
図2における温度センサ回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図3Aに示す温度センサ回路THSaは、電流源CSと、センサ素子SEの一例であるダイオードDsと、差動アンプDAMPと、電源レギュレータLDOと、アナログディジタル変換器ADCと、を備える。電流源CSは、ダイオードDsに定電流を供給する。定電流が供給されたダイオードDsは、温度に応じた出力値VM、ここでは出力電圧を発生する。ダイオードDsの温度係数は、例えば、-2mV/℃等である。
【0022】
差動アンプDAMPは、ダイオードDsの出力値VMを固定のゲインで増幅する。アナログディジタル変換器ADCは、差動アンプDAMPから出力されるアナログ信号を、ディジタル信号となる出力値VOに変換する。半導体チップCPは、このようにして得られた温度センサ回路THSaからの出力値VOに基づいて、自身の温度を把握する。電源レギュレータLDOは、外部電源電圧VCCから内部電源電圧VDDを生成し、内部電源電圧VDDを、電流源CS、差動アンプDAMPおよびアナログディジタル変換器ADCに供給する。
【0023】
図3Bに示す温度センサ回路THSbは、
図3Aとはセンサ素子SEの構成が異なっている。すなわち、
図3Bでは、センサ素子SEとしてpnp型のバイポーラトランジスタBTが用いられ、センサ素子SEの出力値VMは、バイポーラトランジスタBTのベース・エミッタ間電圧となっている。なお、この例では、センサ素子SEとして、ダイオードDs等を用いたが、これに限らず、場合によっては、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ素子等を用いてもよい。この場合、センサ素子SEに対して、電流を印加して電圧を検出する方式や、電圧を印加して電流を検出する方式を適用できる。
【0024】
ここで、特に、
図2に示したSOC等の半導体チップCPでは、多機能化、大規模化に伴い、半導体チップCPの全面に多数の検査用端子、例えば電極パッドが配置される。検査用端子の数は、例えば、1000個以上であり、数1000個となる場合もある。このため、
図1に示したような半導体検査装置を用いて当該半導体チップCPを検査する際には、多数の検査用端子にそれぞれ接続される多数のプローブPBが必要となる。プローブPBは、比較的熱抵抗が小さい導電材料で構成される。
【0025】
一方、
図1に示したような検査時には、前述した内部回路の検査に加えて、温度センサ回路THSの温度特性を補正することが望まれる。具体的には、例えば、温度調整機構21を用いてステージ20を所定の設定温度に設定した状態で、温度センサ回路THSの出力値VOを取得すればよい。そして、ステージ20の設定温度を半導体チップCPの実温度とみなして、当該設定温度を温度センサ回路THSの出力値VOに関連付ければよい。
【0026】
ただし、実際には、特に、2つの要因(1)(2)によって、ステージ20の設定温度を半導体チップCPの実温度とみなすことが困難となり得る。要因(1)として、半導体チップCPが大規模化するほど、検査時での半導体チップCPの発熱40aが増加する。この場合、半導体チップCPの実温度は、ステージ20の設定温度よりも高くなるように作用する。要因(2)として、プローブPBの数が増加するほど、半導体チップCPと、常温環境下に設置されるテストヘッド11との間の熱伝導40bが生じ易くなる。この場合、半導体チップCPの実温度は、常温に近づくように作用する。そこで、以下に述べる実施の形態の方式を用いることが有益となる。
【0027】
<プローブカードの詳細>
図4は、
図1におけるプローブカードの詳細な構成例を示す断面図である。
図4には、
図1の場合と同様のプローブカード3が示される。ここで、
図4に示されるプローブカード3は、
図1に示したプローブPBとして、2種類のプローブPB1,PB2を備える。プローブPB1は、長さL1と、長さL1よりも短い長さL2とに設定可能なものである。一方、プローブPB2は、長さL1には設定されず、長さL2に設定されるものである。
【0028】
具体的な構成例として、プローブPB1は、バレル35と、バレル35内に収納されるバネ37aと、バレル35内に挿入され、バネ37aによって挿入量が制限されるプランジャ36aと、を備える。
図1に示したステージ駆動機構23によって、プランジャ36aのバレル35内への挿入量を調整することで、プローブPB1は、長さL1と長さL2とに設定される。
【0029】
同様に、プローブPB2も、バレル35と、バレル35内に収納されるバネ37bと、バレル35内に挿入され、バネ37bによって挿入量が制限されるプランジャ36bと、を備える。プローブPB2のバレル35は、プローブPB1のバレル35と同じ長さを有する。一方、プローブPB2のバネ37bは、プローブPB1のバネ37aよりも硬いもの、すなわちバネ定数が大きいものが用いられる。さらに、プローブPB2のプランジャ36bは、プローブPB1のプランジャ36aよりも短い長さを有する。このような構成の違いにより、プローブPB2は、
図1に示したステージ駆動機構23によって、長さL2のみに設定される。
【0030】
ここで、プローブPB1は、例えば、温度センサ回路THS内のセンサ素子SEに接続されるセンサ端子に接触するためのものである。一方、プローブPB2は、
図2で述べた内部回路に接続される通常端子に接触するためのものである。このため、例えば、プローブPB2の本数は、1000本以上であるのに対して、プローブPB1の本数は、数本程度となり得る。
【0031】
図5Aおよび
図5Bは、
図4に示したプローブカードを用いた場合での半導体装置の検査状態の一例を示す図である。
図5Aおよび
図5Bには、
図1に示した半導体検査装置と同様の構成が示される。ただし、
図5Aでは、プローブPB1が長さL1に設定されることで、プローブPB1が半導体チップCPのセンサ端子に接触し、プローブPB2が半導体チップCPの通常端子に接触しない状態ST1が構築されている。また、
図5Bでは、プローブPB1,PB2の両方が長さL2に設定されることで、プローブPB1が半導体チップCPのセンサ端子に接触し、プローブPB2が半導体チップCPの通常端子に接触する状態ST2が構築されている。
【0032】
詳細には、ステージ駆動機構23は、ステージ20を、予め設定したZ軸方向の移動量を表すオーバードライブ量OD1に基づいて移動させることで、
図5Aに示した状態ST1を構築する。同様に、ステージ駆動機構23は、ステージ20を、
図5Aの場合よりも大きいオーバードライブ量OD2に基づいて移動させることで、
図5Bに示した状態ST2を構築する。
【0033】
ここで、
図5Aに示した状態ST1では、
図5Bに示した状態ST2と比較して、半導体チップCPに接触するプローブPBの数は、極度に少ない。このため、
図1および
図2で述べた要因(2)を排除する、すなわちプローブPBを介した熱伝導40bを抑制することが可能になる。さらに、
図5Aに示した状態ST1では、
図5Bに示した状態ST2と異なり、動作する回路は、温度センサ回路THS、詳細には、その中のセンサ素子SEのみに限定される。このため、
図1および
図2で述べた要因(1)を排除する、すなわち半導体チップCPの発熱40aを抑制することも可能になる。
【0034】
これらの結果、状態ST1では、ステージ20の設定温度を半導体チップCPの実温度とみなすことが可能になる。そして、温度センサ回路THS、詳細にはその中のセンサ素子SEの出力値VMと、センサ素子SEひいては半導体チップCPの実温度との関係を表す実温度特性を算出することができる。一方、
図5Bに示した状態ST2では、
図1および
図2で述べたように、ステージ20の設定温度を半導体チップCPの実温度とみなすことが困難となり得る。ただし、状態ST2では、プローブPB1を介してセンサ素子SEの出力値VMを測定することで、当該出力値VMを、状態ST1で算出したセンサ素子SEの実温度特性に基づいて実温度に換算することができる。これにより、状態ST2においても、半導体チップCPの温度を正確に把握することが可能になる。
【0035】
このようにして、半導体チップCPの温度を正確に把握できる結果、温度センサ回路THSの温度特性を高精度に補正することが可能になる。具体的な補正方法として、例えば、温度センサ回路THSにフューズを搭載し、レーザトリミングやヒューズカットによってセンサ素子SEの抵抗値を物理的に調整する方法が挙げられる。または、温度センサ回路THSの出力値VOを温度に換算する際に用いられる換算テーブルや換算式を補正する方法が挙げられる。換算テーブルは、例えば、LUT(Look Up Table)によって実現され得る。換算式は、例えば、換算式に含まれるゲインやオフセット等のパラメータを記憶するメモリによって実現され得る。この場合、プロセッサは、当該換算式を用いて出力値VOを温度に換算する処理を実行すればよい。
【0036】
なお、この例では、状態ST1において、温度センサ回路THS内のセンサ素子SEの出力値VMと実温度との関係を表す実温度特性を算出したが、場合によっては、温度センサ回路THSの出力値VOと実温度との関係を表す実温度特性を算出してもよい。この場合、半導体チップCPに、例えば、温度センサ回路THSのみを動作させ、その出力値VOを取得できる仕組みを設け、それに必要な端子をセンサ端子として設ければよい。
【0037】
ただし、状態ST1において、温度センサ回路THSの実温度特性を算出する場合、センサ素子SEの実温度特性を算出する場合と比較して、必要なセンサ端子の数が増えるおそれや、温度センサ回路THS全体が動作することにより、発熱が増加するおそれがある。この観点では、状態ST1においては、温度センサ回路THSではなくセンサ素子SEの実温度特性を算出することが望ましい。
【0038】
<半導体装置の検査方法>
図6は、
図5Aに示した状態での詳細な検査方法の一例を説明する等価回路図である。
図6には、テストヘッド11の一部と、プローブカード3の一部と、半導体チップCP内の温度センサ回路THSの一部とが示される。半導体チップCPには、例えば、4個のセンサ端子P1~P4が設けられる。センサ端子P1,P2は、センサ素子SEの両端にそれぞれ接続され、センサ素子SEに外部からバイアスを印加するための端子である。センサ端子P3,P4は、センサ素子SEの両端にそれぞれ接続され、バイアスの印加に応じてセンサ素子SEに生じる出力値VMを外部で測定するための端子である。
【0039】
プローブカード3は、当該4個のセンサ端子P1~P4と、テストヘッド11とをプローブPB1を介して接続する。寄生抵抗r1~r4は、この接続に伴うものであり、プローブPB1の抵抗や、各基板上の配線抵抗や、各箇所の接触抵抗等を表すものである。テストヘッド11は、電源ユニットIFS,VFSと、レシーバVMEa,VMEbとを備える。電源ユニットIFS,VFSは、寄生抵抗r1,r2およびセンサ端子P1,P2を介して、センサ素子SEに定電流Irを供給する。この際に、電源ユニットIFSは、電流源として機能し、電源ユニットVFSは、センサ端子P2を所定の電圧、例えば0V等に固定する電圧源として機能する。
【0040】
一方、レシーバVMEa,VMEbは、センサ端子P3,P4および寄生抵抗r3,r4を介して、センサ素子SEの出力値VM、詳細にはセンサ素子SEの両端に生じる出力電圧を入力し、その出力電圧の値を測定する。このような測定方法は、4端子法と呼ばれる。4端子法を用いると、定電流Irを寄生抵抗r1,r2の影響を受けずに供給でき、また、センサ素子SEの出力値VMを寄生抵抗r3,r4の影響を受けずに測定できる。すなわち、仮に2端子のみで同様の測定を行う場合には、寄生抵抗に伴う誤差が生じ得る。
【0041】
なお、電源ユニットIFSによる定電流Irは、例えば、温度センサ回路THS内の電流源CSからの定電流と同じ値に設定される。また、温度センサ回路THS内の電流源CSや差動アンプDAMPは、電源が供給されないため非動作状態となる。ただし、このような非動作状態の箇所への定電流Irの漏洩経路を遮断するため、この例では、電流源CSとセンサ素子SEとの間に、デフォルトでオフとなるスイッチSWが挿入されている。また、定電流Irの漏洩経路が他にもある場合には、同様にしてスイッチが挿入される。
【0042】
図7は、実施の形態1による半導体装置の検査方法の一例を示すフロー図である。
図8は、
図7に示した処理内容を説明するための模式図である。
図8には、温度と、センサ素子SEの出力値VMおよび温度センサ回路THSの出力値VOとの関係が示される。
図7において、まず、プローバ2は、温度調整機構21を用いてステージ20を所定の設定温度T1、例えば、-40℃に設定する(ステップS101)。次いで、プローバ2は、ステージ駆動機構23を用いて、
図5Aに示した状態ST1を構築する(ステップS102)。この状態ST1を用いて、テスタ1は、プローブPB1およびセンサ端子P1~P4を介してセンサ素子SEの出力値VM1[1]を測定する(ステップS103)。
【0043】
続いて、プローバ2は、ステージ駆動機構23を用いて、
図5Bに示した状態ST2を構築する(ステップS104)。この状態ST2を用いて、テスタ1は、プローブPB1およびセンサ端子P1~P4を介してセンサ素子SEの出力値VM1[2]を測定する(ステップS105)。また、これと並行して、テスタ1は、プローブPB2および通常端子を介して、温度センサ回路THSの出力値VO1[2]の取得を含め、半導体チップCP全体の検査、すなわち
図2で述べた内部回路の検査を行う(ステップS106)。
【0044】
その後、プローバ2は、温度調整機構21を用いてステージ20を所定の設定温度T2、例えば、125℃に設定する(ステップS107)。次いで、プローバ2は、ステージ駆動機構23を用いて、
図5Aに示した状態ST1を構築する(ステップS108)。この状態ST1を用いて、テスタ1は、プローブPB1およびセンサ端子P1~P4を介してセンサ素子SEの出力値VM2[1]を測定する(ステップS109)。
【0045】
続いて、プローバ2は、ステージ駆動機構23を用いて、
図5Bに示した状態ST2を構築する(ステップS110)。この状態ST2を用いて、テスタ1は、プローブPB1およびセンサ端子P1~P4を介してセンサ素子SEの出力値VM2[2]を測定する(ステップS111)。また、これと並行して、テスタ1は、プローブPB2および通常端子を介して、温度センサ回路THSの出力値VO2[2]の取得を含め、半導体チップCP全体の検査、すなわち
図2で述べた内部回路の検査を行う(ステップS112)。
【0046】
その後、テスタ1は、状態ST1でのセンサ素子SEの出力値VM、すなわち設定温度T1での出力値VM1[1](ステップS103)と、設定温度T2での出力値VM2[1](ステップS109)と、に基づいて、
図8に示されるようなセンサ素子SEの実温度特性SPeを算出する(ステップS113)。センサ素子SEの実温度特性SPeは、センサ素子SE、ひいては半導体チップCPの実温度とセンサ素子SEの出力値VMとの関係を表す。また、当該実温度特性SPeを算出する際に、テスタ1は、設定温度T1,T2をそれぞれ、センサ素子SEの実温度とみなす。
【0047】
次いで、テスタ1は、状態ST2でのセンサ素子SEの出力値VM、すなわち設定温度T1での出力値VM1[2](ステップS105)と、設定温度T2での出力値VM2[2](ステップS111)とを、ステップS113で算出したセンサ素子SEの実温度特性SPeに基づいて、実温度T1r,T2rに換算する(ステップS114)。すなわち、この際に、テスタ1は、設定温度T1,T2をセンサ素子SEの実温度とみなさない。
【0048】
続いて、テスタ1は、状態ST2での温度センサ回路THSの出力値VO、すなわち、設定温度T1での出力値VO1[2](ステップS106)と、設定温度T2での出力値VO2[2](ステップS112)とを、それぞれ、ステップS114で換算した実温度T1r,T2rに関連付ける。そして、この関連付けによって、テスタ1は、
図8に示されるような温度センサ回路THSの実温度特性SPcを算出する(ステップS115)。温度センサ回路THSの実温度特性SPcは、センサ素子SE、ひいては半導体チップCPの実温度と温度センサ回路THSの出力値VOとの関係を表す。この温度センサ回路THSの実温度特性SPcは、例えば、
図2に示したメモリに保存され、実使用上で、温度センサ回路THSの出力値VOを実温度に換算する際に用いられる。
【0049】
図8において、状態ST2では、-40℃の設定温度T1に対する実温度T1rは-30℃となっており、125℃の設定温度T2に対する実温度T2rは110℃となっている。この例では、例えば、25℃といった常温から離れるほど、設定温度と実温度との誤差が大きくなっている。また、ここでは、2通りの設定温度T1,T2で検査を行うことで、実温度特性SPe,SPcを、一次特性として算出した。ただし、2通りの設定温度に限らず、例えば、3通り以上の設定温度で検査を行い、3点以上で直線近似を行うことで、実温度特性SPe,SPcを算出してもよい。または、一次特性に限らず、他の特性に近似してもよい。
【0050】
図9は、
図1に示した半導体検査装置において、テスタとプローバとの間の主な処理手順の一例を示すシーケンス図である。前提として、テスタ1とプローバ2は、所定の通信プロトコルに基づく通信回線を介して接続されている。
図9において、プローバ2は、温度調整機構21を用いて、ステージ20を所定の温度、例えば、
図7における温度T1に設定する(ステップS201)。
【0051】
続いて、プローバ2は、ステージ駆動機構23を用いてステージ20を駆動することで、半導体ウエハWF上のある半導体チップCPを被検査デバイスとして、第1の状態ST1を構築する(ステップS202)。プローバ2は、第1の状態ST1を構築した場合、テスタ1へ、通信回線を介して第1の検査開始命令TES1を送信する(ステップS203)。
【0052】
テスタ1は、プローバ2からの第1の検査開始命令TES1に応じて、第1の検査プログラムを実行することで、被検査デバイスにおけるセンサ素子SEの出力値VMを測定する(ステップS204)。そして、テスタ1は、センサ素子SEの出力値VMを測定したのち、第1の検査終了通知TEE1をプローバ2へ送信する(ステップS205)。
【0053】
プローバ2は、テスタ1からの第1の検査終了通知TEE1に応じて、同じ半導体チップCPを被検査デバイスとして、第2の状態ST2を構築する(ステップS206)。プローバ2は、第2の状態ST2を構築した場合、第2の検査開始命令TES2をテスタ1へ送信する(ステップS207)。テスタ1は、プローバ2からの第2の検査開始命令TES2に応じて、第2の検査プログラムを実行することで、被検査デバイスにおけるセンサ素子SEの出力値VMの測定と温度センサ回路THSの出力値VOの取得とを含めて被検査デバイス全体を検査する(ステップS208)。
【0054】
そして、テスタ1は、被検査デバイス全体の検査を終了したのち、第2の検査終了通知TEE2をプローバ2へ送信する(ステップS209)。プローバ2は、テスタ1からの第2の検査終了通知TEE2を受けて、同じ半導体ウエハWF上の次の半導体チップCPを被検査デバイスとして、第1の状態ST1を構築する。これにより、テスタ1およびプローバ2は、半導体ウエハWF全体の検査を終えるまで、ステップS202~ステップS209の処理を繰り返す。
【0055】
また、プローバ2は、半導体ウエハWF全体の検査を終えた場合で、別の温度で検査を行う場合には、温度調整機構21を用いて、ステージ20を別の温度、例えば、
図7における温度T2に設定する。これにより、テスタ1およびプローバ2は、全ての温度での検査を終えるまで、ステップS201~ステップS209の処理を繰り返す。このような処理手順を用いることで、半導体ウエハWF全体を対象に、
図7に示したような第1の状態ST1と第2の状態ST2とを用いた検査を行うことが可能になる。
【0056】
<実施の形態1の主要な効果>
以上のように、実施の形態1の方式では、長さが異なる2種類のプローブが装着されたプローブカードを用いることで、センサ素子のみにプロービングされる第1の状態と、半導体装置全体にプロービングされる第2の状態とを構築することができる。そして、第1の状態を用いることで、センサ素子の実温度特性を高精度に算出することができ、当該実温度特性に基づいて、第2の状態であってもセンサ素子の実温度を高精度に把握することが可能になる。
【0057】
その結果、半導体装置における温度センサ回路の温度特性を高精度に補正することが可能になる。特に、発熱の増大やプローブ数の増加が生じる大規模な半導体装置であっても、高精度な補正が実現できる。そして、温度センサ回路を高精度に補正することで、例えば、半導体装置を過温度等から適切に、すなわちオーバースペックやアンダースペックを生じさせることなく保護することが可能になる。
【0058】
(実施の形態2)
<半導体装置の構成>
図10は、実施の形態2による半導体装置において、温度センサ回路に関する主要部の構成例を示す回路図である。
図10には、
図6の場合と同様の温度センサ回路THSおよびセンサ端子P1~P4が示される。ただし、
図10に示される半導体装置、すなわち半導体チップCPは、
図6の構成例と異なり、ESD(Electro Static Discharge)保護素子PE1~PE4を備える。ESD保護素子PE1~PE4は、センサ素子SEとセンサ端子P1~P4との間の配線にそれぞれ直列に挿入される。
【0059】
一般的に、製品としての外部端子には、ESD保護素子が設けられる。一方、センサ端子P1~P4は、例えば、検査用端子であり、製品としての外部端子には属しないものである。ただし、検査の際に、プローブカード3のプローブPB1を介してセンサ端子P1~P4に静電気が印加されるおそれがあるため、この例では、ESD保護素子PE1~PE4が設けられる。
【0060】
ここで、外部端子用のESD保護素子は、通常、外部端子と電源との間に接続されるクランプ素子等によって構成される。ただし、センサ端子P1~P4にこのようなクランプ素子を設けると、センサ素子SEの出力値VMの測定が困難となり得る。そこで、
図10の例では、ESD保護素子PE1~PE4は、配線に直列に挿入される高抵抗素子等によって構成される。高抵抗素子を用いた場合であっても、実施の形態1で述べた4端子法を用いることで、センサ素子SEの出力値VMを高精度に測定できる。
【0061】
図11Aおよび
図11Bは、実施の形態2による半導体装置において、温度センサ回路およびセンサ端子の配置構成例を示す模式図である。
図11Aおよび
図11Bにおいて、ここでは、半導体装置、すなわち半導体チップCPを、X軸方向およびY軸方向のそれぞれで2等分することで、4個の領域AR1~AR4に区別する。領域AR1は、X軸方向で領域AR2に隣接し、Y軸方向で領域AR4に隣接する。領域AR3は、X軸方向で領域AR4に隣接し、Y軸方向で領域AR2に隣接する。その結果、領域AR1と領域AR3とは、点対称な領域となり、領域AR3と領域AR4も、点対称な領域となる。
【0062】
図11Aには、半導体チップCPが、温度センサ回路THSおよびセンサ端子P1~P4の組を1組備える場合の配置構成例が示される。
図11Aに示されるように、温度センサ回路THS1またはセンサ端子P1~P4の一方は、4個の領域AR1~AR4の中で点対称となる2個の領域の一方に配置され、温度センサ回路THS1またはセンサ端子P1~P4の他方は、当該点対称となる2個の領域の他方に配置される。
【0063】
この例では、温度センサ回路THS1は、領域AR4に配置され、センサ端子P1~P4は、領域AR2に配置される。さらに、センサ端子P1~P4は、配置される領域AR2の中で半導体チップCPの外周に近い箇所に配置される。この例では、半導体チップCPの最外周に配置される。なお、当該センサ端子P1~P4を除く端子は、
図2で述べた内部回路に接続される通常端子である。
【0064】
ここで、センサ端子P1~P4は、
図1等で述べたように、プローブPB1を介して常温等の熱が伝導される端子である。この場合、温度センサ回路THS1とセンサ端子P1~P4との距離が長くなるほど、センサ端子P1~P4における熱が温度センサ回路THS1に与える影響を小さくすることができる。すなわち、
図5Aに示した第1の状態ST1において、センサ素子SEの温度と、ステージ20の設定温度との誤差を低減することができる。そこで、
図11Aに示したような配置構成例を用いることが有益となる。
【0065】
図11Bには、半導体チップCPが、温度センサ回路THSおよびセンサ端子P1~P4の組を複数組、ここでは3組備える場合の配置構成例が示される。この場合も
図11Aの場合と同様であり、各組において、温度センサ回路THSとセンサ端子P1~P4とが、点対称となる2個の領域に分けて配置される。
【0066】
この例では、温度センサ回路THS1は、領域AR4に配置され、そのセンサ端子P1~P4は、領域AR2に配置される。温度センサ回路THS2に関しても、温度センサ回路THS1の場合と同様である。また、温度センサ回路THS3は、領域AR3に配置され、そのセンサ端子P1~P4は、領域AR1に配置される。なお、ここでも、各温度センサ回路THS1~THS3のセンサ端子P1~P4は、半導体チップCPの最外周に配置される。
【0067】
<実施の形態2の主要な効果>
以上、実施の形態2の半導体装置を用いると、センサ端子にESD保護素子を設けることで、検査時において、温度センサ回路を静電気から保護することが可能になる。また、温度センサ回路とセンサ端子とを離れた位置に配置することで、センサ端子における熱が温度センサ回路に与える影響を小さくすることができ、センサ素子の実温度特性をより高精度に算出することが可能になる。その結果、半導体装置における温度センサ回路の温度特性も、より高精度に補正することが可能になる。
【0068】
(実施の形態3)
<半導体装置の検査方法>
図12は、実施の形態3による半導体装置の検査方法の一例を示すフロー図である。
図13は、
図12に示した処理内容を説明するための模式図である。
図13には、
図8の場合と同様に、温度と、センサ素子SEの出力値VMおよび温度センサ回路THSの出力値VOとの関係が示される。例えば、
図7および
図8に示した検査方法では、第2の状態ST2において、半導体チップCPの実温度と、ステージ20の設定温度とが異なる状態で検査が行われる。その結果、半導体チップCPの実際の検査温度、例えば、
図8における110℃が、本来の検査温度、例えば125℃とは異なる状態となり得る。
【0069】
そこで、実施の形態3では、半導体検査装置は、第2の状態ST2で検査を行う際に、センサ素子SEの実温度特性SPeに基づいて、センサ素子SE、ひいては半導体チップCPの実温度が本来の検査温度となるように、ステージ20の温度を設定する。その一例として、
図12および
図13には、特に、高温側の検査温度を本来の検査温度に設定する方法が示される。
【0070】
図12において、まず、プローバ2は、温度調整機構21を用いてステージ20を所定の設定温度T1、例えば-50℃に設定する(ステップS301)。この際の設定温度T1は、
図7のステップS101の場合と異なり、第2の状態ST2におけるセンサ素子SEの実温度T1rが本来の検査温度である例えば-40℃に近くなるように、予め実験的に定めた値である。ただし、当該設定温度T1は、アンダースペックの検査温度、すなわち-40℃よりも高い温度とならないように定められる。
【0071】
続いて、ステップS302~S311において、
図7に示したステップS102~S111の場合と同様の処理が行われる。すなわち、第1の状態ST1を用いて、温度T1でセンサ素子SEの出力値VM1[1]と、温度T2、例えば125℃での出力値VM2[1]とが測定される(ステップS303,S309)。また、第2の状態ST2を用いて、温度T1でのセンサ素子SEの出力値VM1[2]と、温度T2での出力値VM2[2]とが測定される(ステップS305,S311)。さらに、第2の状態ST2を用いて、温度T1での温度センサ回路THSの出力値VO1[2]が取得される(ステップS306)。
【0072】
その後、テスタ1は、
図7のステップS113の場合と同様に、状態ST1でのセンサ素子SEの出力値VM、すなわち各設定温度T1,T2での各出力値VM1[1],VM2[1]に基づいて、
図13に示されるようなセンサ素子SEの実温度特性SPeを算出する(ステップS312)。続いて、テスタ1は、算出したセンサ素子SEの実温度特性SPeに基づいて、ステップS311で測定したセンサ素子SEの出力値VM2[2]、すなわち温度T2かつ第2の状態ST2での測定値を実温度T2rに換算する(ステップS313)。
【0073】
次いで、テスタ1およびプローバ2は、実温度T2r、例えば110℃が本来の検出温度である温度T2、例えば125℃となるように、ステージ20の設定温度を温度T2から温度T3に補正する(ステップS314)。具体的な補正方法の一例として、テスタ1は、まず、設定温度T2と実温度T2rとの誤差を算出し、この誤差の分だけステージ20の設定温度を上げるようにプローバ2に指示する。そして、テスタ1は、ステージ20の設定温度を上げた状態、かつ第2の状態ST2で、逐次、センサ素子SEの出力値VM3[2]を監視しながら、ステップS309で得られた出力値VM2[1]と同じ値が得られるように、プローバ2を介してステージ20の設定温度を調整する。
【0074】
ここで、ステップS309で得られたセンサ素子SEの出力値VM2[1]は、実温度が温度T2、すなわち125℃であることを表す値である。したがって、ステップS314で得られたステージ20の補正後の設定温度T3、例えば140℃は、第2の状態ST2でのセンサ素子SEの実温度T3rを、本来の検査温度である温度T2、すなわち125℃に定めるための値となる。
【0075】
このようにして、ステージ20の設定温度を温度T3に補正した状態、かつ第2の状態ST2で、テスタ1は、プローブPB1を介して、センサ素子SEの出力値VM3[2]を測定する(ステップS315)。これと並行して、テスタ1は、プローブPB2を介して、温度センサ回路THSの出力値VO3[2]の取得を含め、半導体チップCP全体の検査、すなわち
図2で述べた内部回路の検査を行う(ステップS316)。
【0076】
次いで、テスタ1は、第2の状態ST2で得られたステップS305でのセンサ素子SEの出力値VM1[2]、すなわち設定温度T1での測定値と、ステップS315でのセンサ素子SEの出力値VM3[2]、すなわち設定温度T3での測定値と、を実温度特性SPeに基づいて、実温度T1r,T3rに換算する(ステップS317)。
図13の例では、実温度T1rは、-43℃である。また、実温度T3rは、温度T2、すなわち125℃にほぼ等しい値となる。
【0077】
続いて、テスタ1は、第2の状態ST2で得られたステップS306での温度センサ回路THSの出力値VO1[2]、すなわち設定温度T1での取得値と、ステップS316での温度センサ回路THSの出力値VO3[2]、すなわち設定温度T3での取得値とを、それぞれ、ステップS317で換算した実温度T1r,T3rに関連付ける。そして、この関連付けによって、テスタ1は、
図13に示されるような温度センサ回路THSの実温度特性SPcを算出する(ステップS318)。
【0078】
なお、ステージ20の設定温度の補正方法は、
図12および
図13に示した方法に限らず、第1の状態ST1を用いて算出したセンサ素子SEの実温度特性SPeに基づく方法であれば、様々な方法であってよい。例えば、ある半導体ウエハWF内の一つの半導体チップCPを対象に、第1の状態ST1を用いてセンサ素子SEの実温度特性SPeを算出しておく。さらに、当該半導体チップCPを対象に、第2の状態ST2において、センサ素子SEの実温度が本来の検査温度となるようなステージ20の設定温度を、実温度特性SPeに基づいて探索しておく。この際には、例えば、ステップS314と同様の方法を用いればよい。
【0079】
このようにして、一つの半導体チップCPで得られる補正後のステージ20の設定温度は、例えば、半導体チップCPおよび半導体ウエハWFの種類が変わらず、半導体検査装置の種類も変わらなければ、流用することが可能である。この場合、この補正後のステージ20の設定温度を、単に、
図7のステップS101,S107における温度T1,T2に適用すればよい。
【0080】
<実施の形態3の主要な効果>
以上、実施の形態3の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加えて、半導体装置の実温度を本来の検査温度に設定した上で、半導体装置の検査を行うことが可能になる。その結果、半導体装置の品質をより確実に保証することが可能になる。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1 テスタ
2 プローバ
20 ステージ
21 温度調整機構
3 プローブカード
CP 半導体チップ(半導体装置)
P1-P4 センサ端子
PB プローブ
SE センサ素子
SPe 実温度特性
ST1,ST2 状態
THS 温度センサ回路