IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

特開2024-6699ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法
<>
  • 特開-ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法 図1
  • 特開-ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法 図2
  • 特開-ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法 図3
  • 特開-ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法 図4
  • 特開-ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006699
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/64 20060101AFI20240110BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240110BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20240110BHJP
   B24B 19/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16C33/64
F16C19/38
F16C33/60
B24B19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107831
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 良雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
3C049
3J701
【Fターム(参考)】
3C049AA03
3C049AA09
3C049CA01
3C049CA03
3C049CB02
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA55
3J701BA56
3J701BA69
3J701DA11
3J701FA31
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB50
(57)【要約】
【課題】研削割れや研削戻りを防止できるハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】ハブユニット軸受は、外周に、内輪軌道面と、内輪軌道面の軸方向両側に位置する大鍔部及び小鍔部と、が設けられた内輪部材と、内周に外輪軌道面が設けられた外輪部材と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に配された複数の円すいころと、を備える。大鍔部は、内輪部材の軸方向一方側面を構成する大鍔側平面と、大鍔部の外径面である大鍔外径面と、大鍔外径面と内輪軌道面とを接続する大鍔面と、を有する。小鍔部は、内輪部材の軸方向他方側面を構成する小鍔側平面と、小鍔部の外径面である小鍔外径面と、小鍔外径面と内輪軌道面とを接続する小鍔面と、を有する。小鍔側平面と小鍔外径面との角部には、肉盗み部が設けられる。大鍔外径面と、大鍔面と、内輪軌道面と、小鍔外径面と、小鍔側平面と、は研削面である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に、内輪軌道面と、前記内輪軌道面の軸方向両側に位置する大鍔部及び小鍔部と、が設けられた内輪部材と、
内周に外輪軌道面が設けられた外輪部材と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配された複数の円すいころと、
を備えるハブユニット軸受であって、
前記大鍔部は、前記内輪部材の軸方向一方側面を構成する大鍔側平面と、前記大鍔部の外径面である大鍔外径面と、前記大鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する大鍔面と、を有し、
前記小鍔部は、前記内輪部材の軸方向他方側面を構成する小鍔側平面と、前記小鍔部の外径面である小鍔外径面と、前記小鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する小鍔面と、を有し、
前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との角部には、肉盗み部が設けられ、
前記大鍔外径面と、前記大鍔面と、前記内輪軌道面と、前記小鍔外径面と、前記小鍔側平面と、は研削面である、
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記肉盗み部は、非研削面である
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
前記肉盗み部は、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部に設けられた面取り部であり、
前記面取り部は、研削面である、
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項4】
外周に、内輪軌道面と、前記内輪軌道面の軸方向両側に位置する大鍔部及び小鍔部と、が設けられた内輪部材と、
内周に外輪軌道面が設けられた外輪部材と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配された複数の円すいころと、
を備えるハブユニット軸受の製造方法であって、
前記大鍔部は、前記内輪部材の軸方向一方側面を構成する大鍔側平面と、前記大鍔部の外径面である大鍔外径面と、前記大鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する大鍔面と、を有し、
前記小鍔部は、前記内輪部材の軸方向他方側面を構成する小鍔側平面と、前記小鍔部の外径面である小鍔外径面と、前記小鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する小鍔面と、を有し、
前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との角部には、肉盗み部が設けられ、
総型の砥石によって、前記大鍔側平面を基準として、前記大鍔外径面と前記大鍔面と前記内輪軌道面と前記小鍔外径面と前記小鍔側平面とを同時研削する、
ハブユニット軸受の製造方法。
【請求項5】
前記砥石の研削面と、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部と、の間に前記肉盗み部によって隙間が設けられることにより、前記肉盗み部に対して研削が行われない、
請求項4に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項6】
前記肉盗み部は、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部に設けられた面取り部であり、
前記面取り部は、前記砥石によって、前記大鍔外径面と前記大鍔面と前記内輪軌道面と前記小鍔外径面と前記小鍔側平面と共に、同時研削される
請求項4に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のトランスミッション(MT、AT、DCT、CVT、ハイブリッド等)又はデファレンシャルに備わる回転部を支持する円すいころ軸受が開示されている。図4は、特許文献1の円すいころ軸受の断面図である。
【0003】
図4に示すように、特許文献1の円すいころ軸受100は、内輪軌道面111を有する内輪110と、外輪軌道面121を備える外輪120と、内輪軌道面111と外輪軌道面121との間に配置された複数の円すいころ130と、複数の円すいころ130を収容する保持器140と、を備える。図4に示すように、円すいころ軸受100においては、内輪軌道面111の延長線と、外輪軌道面121の延長線と、を中心軸O上で交差させることにより、円すいころ130の自転を可能としている。このように、一般的に円すいころの径方向と軸方向の位置関係は固定される。
【0004】
通常、円すいころ軸受100の内輪110においては、軸方向両側面112,113の研削後に、軸方向両側面112,113のうち大鍔側の軸方向側面113(大鍔側平面とも呼ぶ)を基準に、内輪軌道面111と大鍔面114が同時にまたは別々に研削され、大鍔側平面113と内輪軌道面111及び大鍔面114との位置関係が固定される。車両用の円すいハブユニット軸受の如き複列円すいころ軸受では、軸方向寸法のばらつきがアキシアル隙間や予圧のばらつきになる。
【0005】
図5は、特許文献2の玉ハブユニット軸受の内輪の研削加工を示す図である。ハブユニット軸受では、低トルク、長寿命、高剛性を両立する必要がある。そのため、図5に示すように特許文献2の玉ハブユニット軸受では、内輪215の軌道面215a及びシール嵌合面215bに対する砥石224による研削時に、内輪215の突合せ面215c(小端面)も一体研削し、軌道面215aと突合せ面215cの位置関係を固定して予圧のばらつきを抑制している。なお、内輪215の突合せ面215c側の外径面215dは、黒皮(スケール)であり非研削面である。
【0006】
ここで、円すいハブユニット軸受の内輪を特許文献2と同様の方法で一体研削しようとすると、以下の理由で、研削割れや研削戻りが発生しやすくなる。図5で例示した通り、通常、玉ハブユニット軸受の内輪の突合せ面は径方向の幅が小さく、また、突合せ面側の外径面は黒皮(非研削面)である。対して、円すいハブユニット軸受の内輪の突合せ面は小鍔がある分径方向の幅が大きい。突合せ面側の外径面は円すいころの組込み疵を防止する観点から研削面であり、突合せ面及び突合せ面側の外径面においては内輪と砥石との間に隙間が無い。また、この部分の砥石は凹面であることから、遠心力の影響でクーラントの供給がしにくい。
【0007】
総形砥石は、ダイヤモンドホイールで成形されるが、ダイヤモンドホイールに小さな凸Rを作る為には、小さなダイヤモンドを埋め込む必要があり、その部分の砥石は切れ味が悪くなり、研削熱が大きくなる。また、小さなダイヤモンドを使用したダイヤモンドホイールで成形する為には、砥石の砥粒を小さくする必要があるが、砥粒の小さい砥石での研削は研削熱が大きくなる。
【0008】
以上の様に、クーラントの供給がしにくい状態で研削熱が大きくなる条件が重なるため、研削割れや研削戻りが発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-46914号公報
【特許文献2】特開2006-329322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、研削割れや研削戻りを防止できるハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 外周に、内輪軌道面と、前記内輪軌道面の軸方向両側に位置する大鍔部及び小鍔部と、が設けられた内輪部材と、
内周に外輪軌道面が設けられた外輪部材と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配された複数の円すいころと、
を備えるハブユニット軸受であって、
前記大鍔部は、前記内輪部材の軸方向一方側面を構成する大鍔側平面と、前記大鍔部の外径面である大鍔外径面と、前記大鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する大鍔面と、を有し、
前記小鍔部は、前記内輪部材の軸方向他方側面を構成する小鍔側平面と、前記小鍔部の外径面である小鍔外径面と、前記小鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する小鍔面と、を有し、
前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との角部には、肉盗み部が設けられ、
前記大鍔外径面と、前記大鍔面と、前記内輪軌道面と、前記小鍔外径面と、前記小鍔側平面と、は研削面である、
ハブユニット軸受。
(2) 前記肉盗み部は、非研削面である
(1)に記載のハブユニット軸受。
(3) 前記肉盗み部は、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部に設けられた面取り部であり、
前記面取り部は、研削面である、
(1)に記載のハブユニット軸受。
(4) 外周に、内輪軌道面と、前記内輪軌道面の軸方向両側に位置する大鍔部及び小鍔部と、が設けられた内輪部材と、
内周に外輪軌道面が設けられた外輪部材と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配された複数の円すいころと、
を備えるハブユニット軸受の製造方法であって、
前記大鍔部は、前記内輪部材の軸方向一方側面を構成する大鍔側平面と、前記大鍔部の外径面である大鍔外径面と、前記大鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する大鍔面と、を有し、
前記小鍔部は、前記内輪部材の軸方向他方側面を構成する小鍔側平面と、前記小鍔部の外径面である小鍔外径面と、前記小鍔外径面と前記内輪軌道面とを接続する小鍔面と、を有し、
前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との角部には、肉盗み部が設けられ、
総型の砥石によって、前記大鍔側平面を基準として、前記大鍔外径面と前記大鍔面と前記内輪軌道面と前記小鍔外径面と前記小鍔側平面とを同時研削する、
ハブユニット軸受の製造方法。
(5) 前記砥石の研削面と、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部と、の間に前記肉盗み部によって隙間が設けられることにより、前記肉盗み部に対して研削が行われない、
(4)に記載のハブユニット軸受の製造方法。
(6) 前記肉盗み部は、前記小鍔側平面と前記小鍔外径面との前記角部に設けられた面取り部であり、
前記面取り部は、前記砥石によって、前記大鍔外径面と前記大鍔面と前記内輪軌道面と前記小鍔外径面と前記小鍔側平面と共に、同時研削される
(4)に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハブユニット軸受及びハブユニット軸受の製造方法によれば、研削割れや研削戻りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図2】第1実施形態に係る内輪の研削加工を示す図である。
図3】第2実施形態に係る内輪の研削加工を示す図である。
図4】特許文献1の円すいころ軸受の断面図である。
図5】特許文献2の玉ハブユニット軸受の内輪の研削加工を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
自動車等の車輪を支持するハブユニット軸受は、車輪を取り付けるためのハブ輪を転がり軸受を介して回転自在に支承するものであり、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式がされ、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。このハブユニット軸受には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列円すいころ軸受を嵌合させた第1世代と称される構造や、外輪部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造や、ハブ輪の外周に複列の内輪軌道面のうちの一方が直接形成された第3世代構造が存在する。
【0015】
以下の実施形態においては、第1世代構造の円すいハブユニット軸受を構成する複列円すいころ軸受について説明するが、本発明は、第2世代構造や第3世代構造の円すいハブユニット軸受にも適用可能である。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。図1に示す複列円すいころ軸受1は、円すいハブユニット軸受を構成する。複列円すいころ軸受1は、外周に、内輪軌道面11と、内輪軌道面11の軸方向両側に位置する大鍔部13及び小鍔部15と、が設けられた1対の内輪部材10,10と、内周に複列の外輪軌道面21,21が設けられた外輪部材20と、内輪軌道面11と外輪軌道面21との間に転動自在に配された複数の円すいころ30と、円すいころ30を転動自在に保持する保持器40と、内輪部材10及び外輪部材20との間の軸受空間の軸方向両側を密封する1対のシール50,50と、を備える。
【0017】
大鍔部13は、内輪部材10の軸方向一方側面(図1の左右外側の面)を構成する大鍔側平面13aと、大鍔部13の外径面である大鍔外径面13bと、大鍔外径面13bと内輪軌道面11とを接続する大鍔面13cと、を有する。大鍔外径面13bにはシール50が設けられる。大鍔面13cには、円すいころ30の頭部31が摺接する。大鍔部13によって、円すいころ30の軸方向移動が規制される。
【0018】
小鍔部15は、内輪部材10の軸方向他方側面(図1の左右内側の面)を構成する小鍔側平面15aと、小鍔部15の外径面である小鍔外径面15bと、小鍔外径面15bと内輪軌道面11とを接続する小鍔面15cと、を有する。1対の内輪部材10,10は、小鍔側平面15a,15a同士が軸方向に当接して組み合わされる。したがって、小鍔側平面15aは、所謂「突合わせ面」である。なお、小鍔側平面15a,15a同士の間には間座が介在してもよい。小鍔面15cには、円錐ころ30の尾部33が摺接せず、小鍔面15cと円錐ころ30の尾部33の間には隙間が存在する。
【0019】
ここで、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部には、肉盗み部17が設けられる。図示の肉盗み部17は、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部を、内輪部材10の全周にわたって切り欠いた断面略L字状の溝部である。
【0020】
そして、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと小鍔側平面15aとは、図2を用いて後述する総型の砥石60によって同時研削された、研削面である。これに対し、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部に設けられた肉盗み部17は、砥石60によっては研削されておらず、非研削面である。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る内輪の研削加工を示す図である。図2に示すように、本実施形態においては、総型の砥石60によって、大鍔側平面13aを基準として、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと小鍔側平面15aとを同時研削する。
【0022】
砥石60の研削面61は、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと小鍔側平面15aとに対応する形状を有している。そして、砥石60の研削面61と、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部と、の間に肉盗み部17によって隙間Sが設けられる。これにより、肉盗み部17に対しては研削が行われない。このように、クーラントの供給がしにくく、また、研削熱が大きくなる部分での研削を避けられるので、研削割れや研削戻りが防止できる
【0023】
また、本例の場合、上述のように内輪部材10と砥石60との間に隙間Sが存在するので、研削点へクーラントを供給しやすくなる。また、砥石60の凹面63での研削を避けている為、小さなダイヤモンドを使用したダイヤモンドホイールや砥粒の小さい砥石の使用を避けることで研削熱を減らし、研削割れや研削戻りが防止できる。
【0024】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る内輪の研削加工を示す図である。図3に示すように、本実施形態の内輪部材10の肉盗み部17は、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部に設けられた面取り部19である。図示の例では、面取り部19は、内輪部材10の全周にわたって設けられた丸面取りである。この面取り部19は、曲率半径が0.8mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。
【0025】
そして、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと小鍔側平面15aとは、後述する総型の砥石60によって同時研削された、研削面である。さらに、小鍔側平面15aと小鍔外径面15bとの角部に設けられた面取り部19(肉盗み部17)も、砥石60によっては研削された研削面である。
【0026】
砥石60の研削面61は、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと面取り部19と小鍔側平面15aとに対応する形状を有している。したがって、本実施形態においては、面取り部19も、砥石60によって、大鍔外径面13bと大鍔面13cと内輪軌道面11と小鍔外径面15bと小鍔側平面15aと共に、同時研削される。
【0027】
上述の通り、面取り部19の曲率半径が0.8mm以上に設定されるので、砥石60のダイヤモンドホイールへの小さなダイヤモンドの使用を避け、砥粒の大きな砥石(粒度:#80~120)の使用を可能にし、研削熱が大きくならない様にしているので、研削割れや研削戻りが防止できる。
【0028】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 複列円すいころ軸受(ハブユニット軸受)
10 内輪部材
11 内輪軌道面
13 大鍔部
13a 大鍔側平面(内輪部材の軸方向一方側面)
13b 大鍔外径面
13c大鍔面
15 小鍔部
15a 小鍔側平面(内輪部材の軸方向他方側面)
15b 小鍔外径面
15c 小鍔面
17 肉盗み部
19 面取り部
20 外輪部材
21 外輪軌道面
30 円すいころ
31 頭部
33 尾部
40 保持器
50 シール
60 砥石
61 研削面
63 凹面
図1
図2
図3
図4
図5