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特開2024-66998医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066998
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20240509BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183174
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022176431
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 和正
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】診療データに含まれる情報を整理することである。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、処理部と、を持つ。取得部は、処理対象のテキストデータを取得する。処理部は、前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象のテキストデータを取得する取得部と、
前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報を出力する処理部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記診療タームを、前記医用オントロジーに定義された対応する前記医療情報にマッピングした修飾医用オントロジーを生成するマッピング処理部と、
前記修飾医用オントロジーに基づいて、前記特定情報を特定する特定部と、
を備える請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記修飾医用オントロジー上において、前記診療タームがマッピングされていない前記医療情報である第1の医療情報に対する前記診療タームがマッピングされた前記医療情報である第2の医療情報の接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記医療情報は、少なくとも1つのカテゴリに分類されるものであって、
前記特定部は、少なくとも共通の前記カテゴリに属するそれぞれの前記第1の医療情報に対する前記第2の医療情報の接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記特定部は、共通の上位概念を持つ複数の前記第1の医療情報のうち、前記第2の医療情報が接続されたそれぞれの前記第1の医療情報に対する前記第2の医療情報の接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記医療情報は、少なくとも1つの特徴タームを含み、
前記特定部は、前記修飾医用オントロジー上において、前記診療タームがマッピングされていない前記医療情報である第1の医療情報に対する前記診療タームがマッピングされた前記医療情報である第2の医療情報の前記特徴タームに基づく接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記テキストデータに含まれる前記診療タームの共起度を求め、
前記特定部は、前記修飾医用オントロジー上において、前記診療タームがマッピングされていない前記医療情報である第1の医療情報に対する前記診療タームがマッピングされた前記医療情報である第2の医療情報の前記共起度に基づく接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記特定部は、
前記テキストデータに含まれる前記共起度のない新たな前記診療タームを含めた前記接続頻度に基づいて、前記特定情報を特定する、
請求項7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記マッピング処理部は、
前記テキストデータにそれぞれの前記診療タームが出現する確率分布を求め、
前記確率分布に基づいて、前記診療タームをマッピングした修飾医用オントロジーを生成する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記マッピング処理部は、
前記医用オントロジーをグラフ構造として学習した学習済みモデルに対して、前記診療タームを入力することで、前記修飾医用オントロジーを生成する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記特定情報によって特定された前記医療情報を表す表示内容を表示装置に表示させる表示制御部、をさらに備える、
請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記表示内容は、前記診断対象に関して前記特定の条件を新たに満たし、着目するいずれかの前記医療情報を含むものである、
請求項11に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記特定の条件は、前記診断対象の疾患に関する前記医療情報を特定するためのものである、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記特定の条件は、前記診断対象の疾患に対する治療方法に関する前記医療情報を特定するためのものである、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
コンピュータが、
処理対象のテキストデータを取得し、
前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報を出力する、
医用情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータに、
処理対象のテキストデータを取得させ、
前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定させた特定情報を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療関係の診療データの構成が複雑化してきている。例えば、医療現場においては、退院サマリなどをSOAP(Subjective:主観的、Objective:客観的、Assessment:評価、Plan:計画)の形式によって情報を構造化して記載することが行われているが、入院している患者の疾患ごとにプロブレムリストを整理して記載しておくことは難しい。このため、複雑化する診療データを整理する方法に対する要望が高まってきている。
【0003】
これに関して、従来から、診療データのテキストを主題によってクラスタリングし、生成されたそれぞれのクラスタの概念を抽出する技術に関する提案がされている。しかしながら、従来の技術では、診療データに含まれる単語間の関係性を説明することができていない。さらに、従来では、診療データに含まれる重要な単語の特定を行ったり、類似する単語をまとめたりするような技術に関する技術は提案されていない。このため、従来から提案されている技術では、診療データから膨大な数の概念や概念間の関係性が抽出された場合において、抽出された情報の整理を行ったり、重要な情報を特定したりすることは困難であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-130176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、診療データに含まれる情報を整理することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、処理部と、を持つ。取得部は、処理対象のテキストデータを取得する。処理部は、前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る医用情報処理装置の機能構成および使用環境の一例を示す図。
図2】実施形態に係る医用情報処理装置が用いる医用オントロジーの一例を模式的に示す図。
図3】実施形態に係る医用情報処理装置が備えるマッピング処理機能におけるマッピング処理の一例を模式的に示す図。
図4】実施形態に係る医用情報処理装置が備えるマッピング処理機能におけるマッピング処理の別の一例を模式的に示す図。
図5】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第1の特定処理の一例を模式的に示す図。
図6】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第2の特定処理の一例を模式的に示す図。
図7】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第3の特定処理の一例を模式的に示す図。
図8】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第4の特定処理の一例を模式的に示す図。
図9】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第5の特定処理の一例を模式的に示す図。
図10】実施形態に係る医用情報処理装置が情報を提供する表示画面の一例を示す図。
図11】実施形態に係る医用情報処理装置が備える特定機能における第5の特定処理の変形例の一例を模式的に示す図。
図12】実施形態に係る医用情報処理装置が情報を提供する表示画面の別の一例を示す図。
図13】実施形態に係る医用情報処理装置における処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムについて説明する。医用情報処理装置は、例えば、病院情報システム(HIS:Hospital Information Systems)が導入された医療機関において、患者を診断した結果である診療データを整理することにより、医師による診断を支援する装置である。医用情報処理装置は、診療データに含まれる情報の重要度を理解しやすいように整理して、医師に提示する。医用情報処理装置は、例えば、医療機関のネットワークやクラウドコンピューティングシステムなどに組み込まれたサーバー装置や記憶装置などに記憶された情報を整理して、医師に提示する。
【0009】
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置の機能構成および使用環境の一例を示す図である。医用情報処理装置100は、例えば、患者の診療に関連する種々の情報を記憶した記憶装置である診療データ記憶部10と、ネットワークNWを介して通信する。ネットワークは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局などを含む。医用情報処理装置100は、ネットワーク上のサーバー装置などによって実現されてもよい。
【0010】
診療データ記憶部10は、患者に対して行った検査や診断に関する情報(診療データ)を記憶している。診療データ記憶部10は、例えば、患者を検査したときの検査結果や患者を診療したときのカルテ(電子カルテ)などのデータを記憶する記憶装置である。電子カルテには、少なくとも、患者の診療に関する情報がテキストで表記された文章が含まれている。以下の説明においては、診療データ記憶部10に電子カルテのデータを記憶しているものとし、医用情報処理装置100は、今回の診断対象の患者(以下、「診断対象患者」という)の電子カルテに含まれる診療に関する情報を、診療データとして処理するものとする。診療データは、「処理対象」の一例である。診断対象患者は、「診断対象」の一例である。
【0011】
医用情報処理装置100は、診療データに含まれているテキストの文章から、診断対象患者の診療に関連する診療タームを抽出し、抽出した診療タームを、医用オントロジー記憶部20に記憶された医用オントロジーにマッピングする。診療タームには、医療関連の単語(以下、「医療単語」という)や、診療に関連する期間や時期などの時間情報などが含まれている。診療タームには、診断対象患者の名前(患者名)など、診断対象患者を特定する情報が含まれていてもよい。医用情報処理装置100は、診療タームをマッピングした医用オントロジーに基づいてクラスタリングし、診断対象患者が患っている疾患に関して重要度が高い診療ターム(例えば、疾患の名称など)を特定する。
【0012】
医用オントロジー記憶部20は、基本的な医用オントロジーの構成を記憶している記憶装置である。医用オントロジーは、疾患に関連する種々の情報や事象など、医療の分野における医療情報の関係性が定義された構造的フレームワークである。医用オントロジーには、例えば、疾患の名称に対して、その疾患の症状や、その症状が起こる部位、対応する治療方法、診断に有用な検査項目、疾患を患っていると判断される検査結果(検査値)、疾患に対応する治療薬(処方薬剤)など、種々の医療情報の関係性が示されている。
【0013】
図1では、医用オントロジー記憶部20が医用情報処理装置100に接続されている構成を示しているが、医用オントロジー記憶部20は、医用情報処理装置100に内蔵された記憶装置であってもよいし、ネットワークNWに接続され、医用情報処理装置100がネットワークNWを介してアクセスする記憶装置であってもよい。医用オントロジー記憶部20がネットワークNWに接続された記憶装置である場合、医用オントロジー記憶部20と診療データ記憶部10とは同じ記憶装置、つまり、医用オントロジー記憶部20が記憶している医用オントロジーが診療データ記憶部10に記憶されている構成であってもよい。
【0014】
ここで、医用オントロジー記憶部20に記憶されている基本的な医用オントロジーの構成の一例について説明する。図2は、実施形態に係る医用情報処理装置100が用いる医用オントロジーの一例を模式的に示す図である。基本的な医用オントロジーの構成では、医療単語などの医療情報を表す複数のエンティティが、医療情報間の関係性に基づいて関連付けられている。エンティティには、例えば、疾患の名称や、疾患によって起こり得る症状、症状が起こり得る部位、疾患が起こり得る原因、治療方法、治療薬の種類(総称)、治療薬の名称などを表す医療単語が、医療情報として示されている。基本的な医用オントロジーでは、例えば、疾患の名称や治療薬の種類(総称)を表す上位概念のエンティティ(以下、「上位エンティティ」という)に対して、関係性がある一つあるいは複数の下位概念のエンティティ(以下、「下位エンティティ」という)が接続されている(紐付けられている)。上位エンティティや下位エンティティには、そのエンティティに示された医療単語がどのような種類(タイプ)の医療単語であるかを表すカテゴリ情報が示されたエンティティ(以下、「カテゴリエンティティ」という)も接続されている(紐付けられている)。カテゴリエンティティでは、例えば、疾患や、症状、症状の重さ、医師の所見、検査、部位、原因、治療方法、薬などの医療単語の種類(カテゴリ)を分類するための情報が表される。図2の(a)には、疾患の名称=「肺炎」に関連する基本的な医用オントロジーの一例を示し、図2の(b)には、疾患の名称=「心不全」に関連する基本的な医用オントロジーの一例を示している。図2においては、上位エンティティのみに、カテゴリエンティティを接続している、つまり、下位エンティティに接続されているカテゴリエンティティは省略している場合の一例を示している。
【0015】
図2の(a)に示した基本的な医用オントロジーでは、疾患の名称が「肺炎」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「肺雑音」と「酸素欠乏」とのそれぞれの下位エンティティが接続され、関係性が「原因」である「感染」の下位エンティティが接続され、関係性が「治療方法」である「呼吸器」の下位エンティティが接続されている一例を示している。
【0016】
図2の(b)に示した基本的な医用オントロジーでは、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「浮腫」の下位エンティティが接続され、関係性が「所見」である「心拡大」の下位エンティティが接続され、関係性が「部位」である「気道」の下位エンティティが接続され、関係性が「治療薬」である「エナラート」、「ソタコール」、「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」のそれぞれの下位エンティティが接続されている一例を示している。さらに、図2の(b)に示した基本的な医用オントロジーでは、疾患の名称が「高血圧」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「浮腫」と「肺高血圧症」とのそれぞれの下位エンティティが接続され、関係性が「治療薬」である「ラシックス」の下位エンティティが接続されている一例を示している。さらに、図2の(b)に示した基本的な医用オントロジーでは、疾患の名称が「関節リウマチ」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「貧血」の下位エンティティが接続され、関係性が「治療薬」である「エナラート」の下位エンティティが接続されている。さらに、図2の(b)に示した基本的な医用オントロジーでは、治療薬の種類(総称)が「抗不整脈薬」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「薬」のカテゴリエンティティが接続され、抗不整脈薬としての同様の効能を有する「ソタコール」、「アミオダロン」、「アンカロン」、および「ジゴシン」のそれぞれの治療薬の名称を表す下位エンティティが接続されている。そして、図2の(b)に示した基本的な医用オントロジーの一例では、関係性が「症状」である下位エンティティの「浮腫」が、「心不全」と「高血圧」とのそれぞれの上位エンティティに接続され、関係性が「治療薬」である下位エンティティの「エナラート」が、「心不全」と「関節リウマチ」とのそれぞれの上位エンティティに接続され、関係性が「治療薬」である下位エンティティの「ソタコール」が、「抗不整脈薬」の上位エンティティに接続されている。これは、「浮腫」という症状は、「心不全」と「高血圧」とのいずれの疾患においても起こり得る症状であり、「エナラート」は、「心不全」と「関節リウマチ」とのいずれの疾患においても処方される薬剤であるからである。さらに、「ソタコール」は、複数ある「抗不整脈薬」のうちの一つであるからである。
【0017】
このように、基本的な医用オントロジーの構成では、一つの医療単語に対して、関係性のある異なる複数の医療単語が接続されていることもある。つまり、基本的な医用オントロジーは、共通の医療単語によって複数の医療単語の関係性が示されている構成となっていることもある。上位エンティティや下位エンティティ(カテゴリエンティティを含んでもよい)は、「医療情報」の一例である。
【0018】
[医用情報処理装置の構成]
医用情報処理装置100は、例えば、処理回路110を備える。処理回路110は、例えば、診療データ取得機能120や、診療データ処理機能140、情報提供機能160などの処理を実行する。診療データ処理機能140は、例えば、マッピング処理機能142や、特定機能144などの処理を実行する。処理回路110は、例えば、ハードウェアプロセッサが不図示のメモリに記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、これらの機能を実現するものである。不図示のメモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスクなどにより実現される。
【0019】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。不図示のメモリにプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブなどの記憶装置を構成する記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が医用情報処理装置100に備えるドライブ装置に装着されることで、医用情報処理装置100に備える記憶装置にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークNWを介して予めダウンロードされて、医用情報処理装置100に備える記憶装置にインストールされてもよい。医用情報処理装置100に備える記憶装置にインストールされたプログラム(ソフトウェア)は、処理回路110が備える処理回路に転送されて実行されてもよい。
【0020】
診療データ取得機能120は、診療データ記憶部10に記憶されている診療データを取得する。より具体的には、診療データ取得機能120は、診療データ記憶部10に記憶されている、診断対象患者の電子カルテに含まれているテキストの文章のデータ(以下、「テキストデータ」という)を取得する。診療データ取得機能120は、例えば、不図示の通信部を制御して、テキストデータを取得する。診療データ取得機能120は、取得したテキストデータを、診療データ処理機能140に出力する。診療データ取得機能120は、診療データ記憶部10に記憶されている診療データそのものを取得し、取得した診療データに含まれるテキストデータを抽出して診療データ処理機能140に出力してもよい。診療データ取得機能120は、「取得部」の一例である。
【0021】
診療データ処理機能140は、診療データ取得機能120により出力されたテキストデータを単語に分割し、分割したそれぞれの単語の中から診療タームを抽出する。そして、診療データ処理機能140は、医用オントロジー記憶部20に記憶されている医用オントロジーを読み出し、読み出した医用オントロジーに、抽出した診療タームをマッピングする。診療データ処理機能140は、診療タームをマッピングした医用オントロジー上で診療ターム間や、診療タームと医療単語との間の隣接関係を辿り、診断対象患者が患っている疾患に関して重要度が高い医療単語や診療ターム(診療タームを抽出した診療データである場合もある)を特定する。診療データ処理機能140は、「処理部」の一例である。
【0022】
マッピング処理機能142は、診療データ取得機能120により出力されたテキストデータを単語に分割し、分割したそれぞれの単語の中から診療タームを抽出する。そして、マッピング処理機能142は、医用オントロジー記憶部20に記憶されている医用オントロジーを読み出し、読み出した医用オントロジー内の対応するエンティティに、抽出した診療タームをマッピングする。
【0023】
ここで、マッピング処理機能142が診療タームを抽出して医用オントロジーにマッピングする処理(以下、「マッピング処理」という)の一例について説明する。図3は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備えるマッピング処理機能142におけるマッピング処理の一例を模式的に示す図である。図3の(a)には、診療データ取得機能120により出力されたテキストデータの一例を示し、図3の(b)には、マッピング処理機能142がテキストデータから抽出した診療タームをマッピングした医用オントロジー(以下、「マッピング済みオントロジー」という)の一例を示している。
【0024】
マッピング処理機能142は、図3の(a)に示したテキストデータから、診療タームを抽出する。図3の(a)には、マッピング処理機能142が、「ソタコール」、「気道」、「浮腫」、「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、「エナラート」、および「ジゴシンエリキシル」のそれぞれの医療単語を診療タームとして抽出した場合の一例を示している。
【0025】
そして、マッピング処理機能142は、図2に示したような基本的な医用オントロジーの構成に、抽出した診療タームをマッピングすることによって、マッピング済みオントロジーを生成する。図3の(b)には、マッピング処理機能142が、図3の(a)に示したテキストデータから抽出した診療ターム(「ソタコール」、「気道」、「浮腫」、「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、「エナラート」、および「ジゴシンエリキシル」)を、図2の(b)に示した「心不全」に関連する医用オントロジーに接続されている下位エンティティにマッピングした場合の一例を示している。ここで、図3の(b)では、図2の(b)に示した「心不全」に関連する医用オントロジーに接続されている「心拡大」の下位エンティティは、図3の(a)に示したテキストデータから対応する診療タームが抽出されていないため、マッピングされていない。さらに、図3の(b)には、マッピング処理機能142が、不図示のテキストデータから抽出した診療ターム(ここでは、「肺雑音」、「酸素欠乏」、「感染」、および「呼吸器」)を、図2の(a)に示した「肺炎」に関連する医用オントロジーに接続されている下位エンティティにマッピングした場合の一例を示している。
【0026】
図3に示した一例では、抽出した診療タームが基本的な医用オントロジーを構成する下位エンティティに対応する診療タームのみであったが、抽出した診療タームが基本的な医用オントロジーを構成する上位エンティティに対応する診療タームも含むことも考えられる。この場合、マッピング処理機能142は、抽出した診療タームを、上位エンティティにマッピングする。そして、マッピング処理機能142は、診療タームをマッピングしたエンティティと、診療タームをマッピングしたエンティティに接続されている上位エンティティとを含む構成の医用オントロジーを、マッピング済みオントロジーとして生成する。
【0027】
ここで、マッピング処理機能142は、生成するマッピング済みオントロジーに、時間的な情報を持たせるようにしてもよい。図3の(b)に示した一例では、マッピング処理機能142が診療タームを抽出したテキストデータが記録(記載)された日付を表す「日付」を、時間的な概念(コンセプト)の情報を示すエンティティ(以下、「情報エンティティ」という)として接続して(紐付けて)マッピングした場合の一例を示している。ここで、「日付」の情報エンティティには、記録日の情報を示す「年月日」の情報エンティティが接続されている。さらに、マッピング処理機能142は、診療タームをマッピングした異なるエンティティ同士の関係性を表すようにしてもよい。図3の(b)に示した一例では、マッピング処理機能142が診療タームを抽出したテキストデータの対象である診断対象患者の名前を表す「患者名」を、「心不全」の上位エンティティと「肺炎」の上位エンティティとを関係付けるための概念(コンセプト)情報を示す情報エンティティとして接続してマッピングした場合の一例を示している。このように、マッピング処理機能142は、種々の情報を示す情報エンティティの接続を行うことによって、異なる日付において記録されたテキストデータに基づく「心不全」の上位エンティティと、「肺炎」の上位エンティティとが、同じ診断対象患者に関連する上位エンティティであることを表すことができる。
【0028】
マッピング処理機能142が接続する情報エンティティは、テキストデータ(診療データ(電子カルテ)そのものであってもよい)に含まれる医療単語以外の単語に基づいて抽出してもよいし、例えば、診断対象患者を診断する担当の医師(担当医師)が、医用情報処理装置100が備える不図示の入力インターフェースを操作することによって指定してもよい。入力インターフェースは、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、マイクなどにより実現される。入力インターフェースがタッチパネルである場合、入力インターフェースは、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは医用情報処理装置100に接続されたディスプレイなどの表示装置と一体として形成されてよい。入力インターフェースは、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは医用情報処理装置100と無線通信可能な表示装置(例えば、タブレット端末)により実現されてもよい。本明細書において入力インターフェースは、上述したマウスやキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは医用情報処理装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは医用情報処理装置100へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0029】
このようにして、マッピング処理機能142は、テキストデータから診療タームを抽出し、基本的な医用オントロジーを構成する対応するエンティティのそれぞれに、抽出した診療タームをマッピングしたマッピング済みオントロジーを生成する。マッピング処理機能142は、生成したマッピング済みオントロジーを、特定機能144に出力する。ここで、マッピング処理機能142が生成して特定機能144に出力するマッピング済みオントロジーは、抽出した診療タームをマッピングしたエンティティと、診療タームをマッピングしたエンティティに接続されている上位エンティティのみ(情報エンティティを含んでもよい)で構成されているものである。つまり、マッピング済みオントロジーは、図2に示した基本的な医用オントロジーの構成から、診療タームに関連しないエンティティが省略された構成の医用オントロジーである。これにより、特定機能144は、テキストデータから抽出した診療タームに関連するエンティティのみで構成されたマッピング済みオントロジーに基づいて、診断対象患者が患っている疾患に関して重要度が高い医療情報(医療単語や診療ターム)を特定することができる。マッピング済みオントロジーは、「修飾医用オントロジー」の一例である。
【0030】
上述したマッピング処理では、マッピング処理機能142が、抽出した診療タームを、基本的な医用オントロジー内の対応するエンティティにマッピングする場合について説明した。しかし、マッピング処理機能142が診療タームを基本的な医用オントロジーにマッピングするマッピング処理は、抽出した診療データを対応するエンティティに単純にマッピングする処理に限定されない。例えば、マッピング処理機能142は、教師なしの学習手法であるクラスタリングの手法や、教師ありの学習手法を用いて、抽出した診療タームを基本的な医用オントロジーにマッピングしてもよい。ここで、マッピング処理機能142において、学習手法を用いて診療タームを基本的な医用オントロジーにマッピングするマッピング処理の別の一例について説明する。
【0031】
[マッピング処理の第1の変形例]
図4は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備えるマッピング処理機能142におけるマッピング処理の別の一例(第1の変形例)を模式的に示す図である。第1の変形例のマッピング処理では、まず、マッピング処理機能142は、例えば、トピックモデルを実装したLDA(Latent Dirichlet Allocation:潜在的ディリクレ配分法)によって、診療データ取得機能120により出力されたテキストデータ内にそれぞれの診療タームが出現する確率分布を求める。そして、マッピング処理機能142は、高い確率で出現する複数(例えば、確率が高い方から所定の数までなど、)の診療タームを、教師なしの学習手法であるクラスタリングの手法によって基本的な医用オントロジーにマッピングする。図4には、例えば、異なる日付において記録された診断対象患者のテキストデータ(ここでは、異なる3日分のテキストデータ)のそれぞれに含まれる診療タームが出現する確率分布をトピックモデルによって求め(ここでは、分布-1~分布-3)、それぞれの分布において確率が高い方から四つの診療タームを基本的な医用オントロジーにマッピングしてマッピング済みオントロジーを生成する場合の処理の流れの一例を模式的に示している。
【0032】
マッピング処理機能142は、第1の変形例のマッピング処理によって生成したマッピング済みオントロジー(マッピング済みオントロジーに時間的な情報を持たせるようにしてもよい)を、特定機能144に出力する。
【0033】
[マッピング処理の第2の変形例]
第2の変形例のマッピング処理では、マッピング処理機能142が、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機械学習の機能を用いて、抽出した診療タームを基本的な医用オントロジーにマッピングする。このとき、マッピング処理機能142における診療タームのマッピングは、基本的な医用オントロジーに表された医療情報の関係性(グラフ構造)を、例えば、グラフ畳み込みニューラルネットワークによって学習した学習済みモデルを用いて行われる。学習済みモデルは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などの機械学習の技術をグラフデータに適用したGCN(Graph Convolutional Network)を用いて、入力された診療タームをマッピングするエンティティを出力するように学習された学習済みモデルである。CNNは、畳み込み(Convolution)層やプーリング(Pooling)層などのいくつかの層が繋がれたニューラルネットワークである。DNNは、任意の形態の層が多層に連結されたニューラルネットワークである。学習済みモデルは、例えば、不図示の演算装置などよる機械学習モデルを用いた機械学習によって生成される。不図示の演算装置には、学習済みモデルを生成する際に、学習済みモデルの入力側に、例えば、以前に診断した他の患者や診断対象患者の診療データ(電子カルテ)に含まれていたテキストデータと、基本的な医用オントロジー(基本的な医用オントロジーによって表される医療情報の関係性を表す情報)とが入力データとして入力され、学習済みモデルの出力側に、例えば、以前に診断した他の患者や診断対象患者に対応するマッピング済みオントロジーなどが教師データとして入力される。不図示の演算装置が学習済みモデルを生成する際の入力側には、例えば、後述する診療タームの特異性を表す情報や、診療タームの共起度を表す情報などが入力データとして入力されてもよい。不図示の演算装置が学習済みモデルを生成する際の出力側には、例えば、診療タームから想定される疾患の名称など、後述するマッピング済みオントロジーを代表する代表エンティティを表す情報などが教師データとして入力されてもよい。
【0034】
マッピング処理機能142は、第2の変形例のマッピング処理によって生成したマッピング済みオントロジー(マッピング済みオントロジーに時間的な情報を持たせるようにしてもよい)を、特定機能144に出力する。
【0035】
マッピング処理機能142は、「マッピング処理部」の一例である。
【0036】
特定機能144は、マッピング処理機能142により出力されたマッピング済みオントロジーに基づいて、診断対象患者が患っている疾患の名称や、重要度が高い情報など、診断対象患者に関する特定の条件を満たす医療情報を特定する。より具体的には、特定機能144は、マッピング済みオントロジー上で、マッピング処理機能142により診療タームがマッピングされたエンティティの隣接関係を辿り、辿った隣接関係に基づく所定の接続頻度を表すラベルを、対象のエンティティに接続したクラスタを形成する。このときに特定機能144がマッピング済みオントロジー上で隣接関係を辿るエンティティの数は、例えば、n(nは、自然数)個隣のエンティティまでなど、予め設定しておいてもよい。言い換えれば、特定機能144がマッピング済みオントロジー上で隣接関係を辿るエンティティの階層は、例えば、n階層下のエンティティまでなど、予め設定しておいてもよい。つまり、特定機能144におけるマッピング済みオントロジー上の隣接関係の辿り方に、制約を設けておいてもよい。そして、特定機能144は、例えば、教師なしの学習手法であるクラスタリングの手法を用いて、形成したクラスタにおいて特定の条件を示す医療情報を表すエンティティを、形成したクラスタを代表する、つまり、マッピング済みオントロジーを代表するエンティティ(以下、「代表エンティティ」という)として特定する。例えば、特定機能144は、例えば、接続されている下位エンティティ(診療タームがマッピングされた下位エンティティ)の数が多い上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。代表エンティティは、「特定情報」の一例である。
【0037】
特定機能144は、特定のカテゴリエンティティが接続されている上位エンティティを、代表エンティティとして特定してもよい。例えば、マッピング済みオントロジー内に、「疾患」のカテゴリエンティティが接続された上位エンティティと、「薬」のカテゴリエンティティが接続された上位エンティティとがそれぞれ複数存在する場合、特定機能144は、例えば、「疾患」のカテゴリエンティティなど、同じカテゴリエンティティ(共通のカテゴリエンティティ)が接続された上位エンティティの中から、代表エンティティを特定してもよい。このとき、特定機能144は、いずれのカテゴリエンティティが接続された上位エンティティの中から代表エンティティを特定するかを、例えば、担当医師が、医用情報処理装置100が備える不図示の入力インターフェースを操作することによって指定された医療単語の種類(タイプ)、つまり、カテゴリに応じて切り替える。
【0038】
特定機能144において代表エンティティを特定する処理は、上述したように、マッピング済みオントロジー上でエンティティの隣接関係を辿った中で、(診療タームがマッピングされた)下位エンティティが接続されている数が多い上位エンティティに特定する処理に限定されるものではない。例えば、特定機能144は、診療データ取得機能120により出力されたテキストデータにおいてそれぞれの診療タームが出現する数(出現数)に基づいて、代表エンティティを特定してもよい。つまり、特定機能144は、テキストデータに同じ診療タームが複数回出現する場合には、その出現数が多い診療タームを重要度が高い診療タームとし、この診療タームがマッピングされている下位エンティティが接続されている上位エンティティを、代表エンティティとして特定してもよい。
【0039】
ここで、特定機能144において代表エンティティを特定する処理(特定処理)について、いくつかの一例を説明する。以下の説明においては、重要度が高い疾患の名称の上位エンティティを、代表エンティティとして特定するものとする。そして、以下の説明においては、診療タームがマッピングされた下位エンティティを「診療ターム」といって、診療タームがマッピングされていない下位エンティティと区別する。重要度が高い疾患の名称の上位エンティティは、「第1の医療情報」の一例である。診療タームがマッピングされた下位エンティティは、「第2の医療情報」の一例である。
【0040】
[第1の特定処理]
図5は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第1の特定処理の一例を模式的に示す図である。図5には、マッピング処理機能142によって生成されたマッピング済みオントロジーの一例に対して、特定機能144が第1の特定処理を行った状態を模式的に示している。
【0041】
第1の特定処理では、マッピング済みオントロジーにおいて、診療タームおよび下位エンティティが接続されている数が多い疾患の名称の上位エンティティを、重要度が高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。このため、特定機能144は、マッピング済みオントロジーにおいてそれぞれの診療タームの隣接関係を辿り、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数する。そして、特定機能144は、計数した診療タームおよび下位エンティティの計数値を接続頻度として表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したクラスタを形成する。このとき、特定機能144は、ラベルの属性を「数」として、それぞれの上位エンティティに接続する。
【0042】
図5には、マッピング済みオントロジーにおいて、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して計数値=「7」のラベルを接続し、疾患の名称が「肺炎」の上位エンティティに対して計数値=「4」のラベルを接続し、疾患の名称が「高血圧」の上位エンティティに対して計数値=「3」のラベルを接続し、疾患の名称が「関節リウマチ」の上位エンティティに対して計数値=「2」のラベルを接続した場合の一例を示している。ここで、「心不全」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「7」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「症状」である「浮腫」と、関係性が「部位」である「気道」と、関係性が「治療薬」である「エナラート」および「ソタコール」と、図5では省略している、関係性が「治療薬」である「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」とのそれぞれの診療タームを計数した計数値である。同様に、「肺炎」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「4」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「症状」である「肺雑音」および「酸素欠乏」と、関係性が「原因」である「感染」と、関係性が「治療方法」である「呼吸器」とのそれぞれの診療タームを計数した計数値である。同様に、「高血圧」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「3」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「症状」である「浮腫」の診療ターム、および「肺高血圧症」の下位エンティティと、関係性が「治療薬」である「ラシックス」の下位エンティティとのそれぞれを計数した計数値である。同様に、「関節リウマチ」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「2」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「症状」である「貧血」の下位エンティティと、関係性が「治療薬」である「エナラート」の診療タームとのそれぞれを計数した計数値である。図5に示した一例では、それぞれの上位エンティティに接続されているカテゴリエンティティを計数していないが、特定機能144は、カテゴリエンティティを計数してそれぞれのラベルの計数値に反映させてもよい。
【0043】
そして、特定機能144は、最も大きな計数値のラベルが接続されている上位エンティティを、重要度が最も高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。図5に示した一例では、最も大きな計数値=「7」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。
【0044】
特定機能144は、マッピング済みオントロジーに接続されている時間的な概念(コンセプト)の情報を示す「日付」の情報エンティティに基づいて、テキストデータが記録(記載)された記録日ごとに、代表エンティティとして特定してもよい。例えば、図5に示した一例では、「日付=D1」の情報エンティティが接続された系列のマッピング済みオントロジーが表す関係性の中で最も大きな計数値=「7」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、「日付=D1」に対応する代表エンティティとして特定し、「日付=D2」の情報エンティティが接続された系列のマッピング済みオントロジーが表す関係性の中で最も大きな計数値=「4」のラベルが接続されている「肺炎」の上位エンティティを、「日付=D2」に対応する代表エンティティとして特定してもよい。
【0045】
[第2の特定処理]
図6は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第2の特定処理の一例を模式的に示す図である。図6には、マッピング処理機能142によって生成されたマッピング済みオントロジーの一例に対して、特定機能144が第2の特定処理を行った状態を模式的に示している。
【0046】
第2の特定処理では、マッピング済みオントロジーにおいて、例えば、担当医師によって指定された特定のカテゴリエンティティが接続された上位エンティティの中から、診療タームおよび下位エンティティが接続されている数が多い上位エンティティを、重要度が高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。このため、第2の特定処理においても、特定機能144は、第1の特定処理と同様に、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数し、診療タームおよび下位エンティティの計数値を接続頻度として表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したクラスタを形成する。
【0047】
図6には、第1の特定処理と同様に、マッピング済みオントロジーにおいて、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティの計数値のラベルを接続した場合の一例を示している。図6に示したマッピング済みオントロジーには、図5に示したマッピング済みオントロジーに対して、治療薬の種類(総称)が「抗不整脈薬」の上位エンティティが含まれている。このため、特定機能144は、第1の特定処理において疾患の名称のそれぞれの上位エンティティに対して接続した診療タームおよび下位エンティティの計数値のラベルに加えて、「抗不整脈薬」の上位エンティティに対しても、診療タームおよび下位エンティティの計数値を表すラベルを接続する。図6には、「抗不整脈薬」の上位エンティティに対して計数値=「4」のラベルを接続した場合の一例を示している。ここで、「抗不整脈薬」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「4」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「治療薬」である「ソタコール」の診療タームと、「アミオダロン」、「アンカロン」、および「ジゴシン」の下位エンティティとのそれぞれを計数した計数値である。図6に示した一例において、それぞれの上位エンティティに接続されているカテゴリエンティティを計数してそれぞれのラベルの計数値に反映させる場合、特定機能144は、「薬」のカテゴリエンティティを計数した計数値を、「抗不整脈薬」の上位エンティティに接続するラベルの計数値に反映させる。
【0048】
そして、特定機能144は、例えば、担当医師によって指定された医療単語の種類(タイプ)、つまり、同じカテゴリエンティティ(共通のカテゴリエンティティ)が接続されている上位エンティティの中から、最も大きな計数値のラベルが接続されている上位エンティティを、重要度が最も高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。例えば、図6に示した一例において、「疾患」のカテゴリエンティティが指定された場合、特定機能144は、第1の特定処理と同様に、「疾患」のカテゴリエンティティが接続されている上位エンティティの中から、最も大きな計数値=「7」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。このとき、仮に、「抗不整脈薬」の上位エンティティに接続されているラベルの計数値が、「心不全」の上位エンティティに接続されているラベルの計数値よりも大きい場合でも、特定機能144は、指定されたカテゴリエンティティが「疾患」であるため、「薬」のカテゴリエンティティが接続されている「抗不整脈薬」の上位エンティティを代表エンティティとして特定せず、「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。
【0049】
一方、「薬」のカテゴリエンティティが指定された場合、特定機能144は、「薬」のカテゴリエンティティが接続されている上位エンティティにおいて最も大きな計数値=「4」のラベルが接続されている「抗不整脈薬」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。ただし、マッピング済みオントロジーに接続されている時間的な概念(コンセプト)の情報を示す「日付」の情報エンティティに基づいて、テキストデータが記録(記載)された記録日ごとに、代表エンティティとして特定する場合、「日付=D2」が接続された系列には、「薬」のカテゴリエンティティが接続されている上位エンティティが存在しない。このため、特定機能144は、「薬」のカテゴリエンティティが接続されている上位エンティティを代表エンティティとして特定しない(特定することができない)。この場合、特定機能144は、代わりに、「日付=D2」が接続された系列の中で最も大きな計数値=「4」のラベルが接続されている「肺炎」の上位エンティティを、「日付=D2」に対応する代表エンティティとして特定してもよい。
【0050】
[第3の特定処理]
図7は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第3の特定処理の一例を模式的に示す図である。図7には、マッピング処理機能142によって生成されたマッピング済みオントロジーの一例に対して、特定機能144が第3の特定処理を行った状態を模式的に示している。図7に示したマッピング済みオントロジーの一例では、「日付=D2」が接続された系列のエンティティを省略している。
【0051】
第3の特定処理では、マッピング済みオントロジーにおいて、診療タームおよび下位エンティティが接続されているそれぞれの上位エンティティにおける上位概念のエンティティ、つまり、上位エンティティよりもさらに上位のエンティティ(以下、「上位概念エンティティ」という)を辿り、同じ上位概念エンティティ(共通の上位概念エンティティ)に接続されている上位エンティティの中から、診療タームおよび下位エンティティが接続されている数が多い上位エンティティを、重要度が高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。このため、第3の特定処理においても、特定機能144は、第1の特定処理や第2の特定処理と同様に、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数し、診療タームおよび下位エンティティの計数値を接続頻度として表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したクラスタを形成する。上位エンティティよりもさらに上位の上位概念エンティティは、「共通の上位概念を持つ第1の医療情報」の一例である。
【0052】
図7には、第1の特定処理や第2の特定処理と同様に、マッピング済みオントロジーにおいて、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティの計数値のラベルを接続した場合の一例を示している。図7に示したマッピング済みオントロジーでは、図6に示した「日付=D1」が接続された系列のそれぞれのエンティティに対して、疾患の名称が「先天性心疾患」の上位エンティティと、「心筋症」の上位エンティティと、「循環器疾患」の上位エンティティとが含まれている。特定機能144は、「先天性心疾患」の上位エンティティに対して、計数値=「2」のラベルを接続している。ここで、「先天性心疾患」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「2」は、この上位エンティティに接続されている、関係性が「部位」である「気道」の診療タームと、関係性が「症状」である「心雑音」の下位エンティティとのそれぞれを計数した計数値である。図7に示した一例において、それぞれの上位エンティティに接続されているカテゴリエンティティを計数してそれぞれのラベルの計数値に反映させる場合、特定機能144は、「疾患」のカテゴリエンティティを計数した計数値を、「先天性心疾患」の上位エンティティに接続するラベルの計数値に反映させる。
【0053】
そして、特定機能144は、それぞれの上位エンティティの上位概念エンティティを辿って、共通の上位概念エンティティに接続されている上位エンティティを抽出する。図7に示した一例において、「先天性心疾患」の上位エンティティと、「心筋症」の上位エンティティとは、「心不全」の上位エンティティと同じ階層のエンティティであり、「循環器疾患」の上位エンティティは、「心不全」、「先天性心疾患」、および「心筋症」の上位エンティティとのそれぞれが接続されている1階層上位のエンティティである。つまり、「循環器疾患」の上位エンティティは、「心不全」、「先天性心疾患」、および「心筋症」のそれぞれの上位エンティティの上位概念エンティティ(共通の上位概念エンティティ)である。このため、特定機能144は、「循環器疾患」の上位概念エンティティに接続されている上位エンティティの中から、計数値のラベルが接続されている上位エンティティを抽出する。図7に示した一例では、特定機能144は、「心不全」の上位エンティティと「先天性心疾患」の上位エンティティとを抽出する。そして、特定機能144は、抽出した上位エンティティの中から、第1の特定処理や第2の特定処理と同様に、最も大きな計数値のラベルが接続されている上位エンティティを、重要度が最も高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。図7に示した一例では、「心不全」の上位エンティティと「先天性心疾患」の上位エンティティとのうち、最も大きな計数値=「7」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。
【0054】
[第4の特定処理]
第1~第3の特定処理では、特定機能144が、上位エンティティにおける診療タームおよび下位エンティティの接続頻度(計数値)に基づいて重要度が高い上位エンティティ(代表エンティティ)を特定した。これに対して、第4の特定処理では、それぞれの上位エンティティに接続されている診療タームの特異性を考慮して、つまり、診療タームが特異的な医療単語であるか否かに基づいてそれぞれの上位エンティティの重要度を判定し、重要度が高い上位エンティティを代表エンティティとして特定する。言い換えれば、第4の特定処理では、それぞれの上位エンティティを、接続されている診療タームの特徴を表す値(特徴値)を含めた接続頻度に基づいて、重要度を判定する。診療タームの特徴値は、例えば、この診療タームが接続され得る上位エンティティの数に基づく重み値(重み係数)である。より具体的には、診療タームの重み値は、接続され得る上位エンティティの数が一つである場合を「1」とし、接続され得る上位エンティティの数が多くなるほど小さくなる値である。例えば、診療タームにおける医療単語のカテゴリ(カテゴリエンティティ)が「薬」であり、この診療タームの薬(治療薬)が特定の疾患や症状に対応するもの(つまり、一つの疾患や症状に対応するもの)である場合には、この診療タームが接続され得る(「治療薬」として関係性がある)「疾患」や「症状」の上位エンティティは一つであるため、重み値は「1」とする。一方、この診療タームの薬(治療薬)が複数の疾患や症状に対応するもの、つまり、例えば、発熱や痛みなどの多くの疾患や症状に対して効能がある汎用性が高い治療薬である場合には、この診療タームが接続され得る(同様に「治療薬」として関係性がある)全ての「疾患」や「症状」の上位エンティティの数の逆数を、重み値とする。この重み値は、例えば、ラベルの属性を「重み」として、基本的な医用オントロジーの構成において、対象のエンティティに接続されている。重み値は、「特徴ターム」の一例である。
【0055】
第4の特定処理では、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数する際に、重み値を乗じた値(重み付けをした値)を計数値とする。これにより、第4の特定処理において特定機能144がそれぞれの上位エンティティに接続されている診療タームおよび下位エンティティの数を計数した計数値は、第1~第3の特定処理における計数値に対して、診療タームの特異性を考慮したものとなる。そして、第4の特定処理では、重み値を乗じて計数した診療タームおよび下位エンティティの計数値を接続頻度として表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したクラスタを形成する。このとき、特定機能144は、ラベルの属性を「重み付き頻度」として、それぞれの上位エンティティに接続する。
【0056】
図8は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第4の特定処理の一例を模式的に示す図である。図8には、マッピング処理機能142によって生成されたマッピング済みオントロジーの一例に対して、特定機能144が第4の特定処理を行った状態を模式的に示している。図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「浮腫」の診療タームが接続され、関係性が「部位」である「気道」の診療タームが接続され、関係性が「治療薬」である「エナラート」、「ソタコール」、および「アスピリン」と、図8では省略している、関係性が「治療薬」である「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」とのそれぞれの診療タームが接続されている。さらに、図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、「浮腫」の診療タームが、疾患の名称が「高血圧」の上位エンティティに接続され、「高血圧」の上位エンティティでは、医療単語のカテゴリが「疾患」のカテゴリエンティティが接続され、関係性が「症状」である「肺高血圧症」の下位エンティティが接続され、関係性が「治療薬」である「ラシックス」の下位エンティティが接続されている。さらに、図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、「ソタコール」の診療タームが、治療薬の種類(総称)が「抗不整脈薬」の上位エンティティに接続され、「抗不整脈薬」の上位エンティティでは、医療単語のカテゴリが「薬」のカテゴリエンティティが接続され、抗不整脈薬としての同様の効能を有する治療薬の名称を表す「アミオダロン」、「アンカロン」、および「ジゴシン」のそれぞれの下位エンティティが接続されている。さらに、図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、「アスピリン」の診療タームに、同様に対応する「疾患」や「症状」を表す「発熱」、「疼痛」、および「吐血」のそれぞれの上位エンティティが接続されている。
【0057】
図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して「治療薬」の関係性あるがある「アスピリン」に対して重み値=「0.25」のラベルを接続し、「エナラート」に対して重み値=「1.00」のラベルを接続した場合の一例を示している。図8に示したマッピング済みオントロジーの一例では、説明を容易にするため、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対する関係性が「治療薬」である「ソタコール」に対して重み値=「1.00」のラベルを接続したものとする。ここで、「アスピリン」の診療タームに対して接続したラベルの重み値=「0.25」は、この診療タームが対応する「疾患」や「症状」である上位エンティティが、「心不全」の他にも「発熱」と、「疼痛」と、「吐血」との三つの上位エンティティが接続されている、つまり、四つの上位エンティティが接続されているためである。一方、「ソタコール」の診療タームに対して接続したラベルの重み値=「1.00」は、この診療タームが対応する「疾患」や「症状」である上位エンティティが、「心不全」のみ、つまり、一つの上位エンティティのみが接続されているためである。
【0058】
第4の特定処理では、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに対して重み値を乗じた診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数して、接続頻度(重み付き頻度)を表すラベルとして接続する。図8には、マッピング済みオントロジーにおいて、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して計数値=「7.25」のラベルを接続している。ここで、「心不全」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「7.25」は、この上位エンティティに接続されている、「浮腫」、「気道」、「エナラート」、「ソタコール」、「アスピリン」のそれぞれの診療タームと、図8では省略している「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」のそれぞれの診療タームを計数する際に、「アスピリン」の値を重み値=「0.25」として計数した計数値である。図8では、「高血圧」と「抗不整脈薬」とのそれぞれの上位エンティティに対しては、接続されている診療タームおよび下位エンティティの単純な計数値のラベルを接続しているものとする。
【0059】
そして、特定機能144は、最も大きな計数値のラベルが接続されている上位エンティティを、重要度が最も高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。図8に示した一例では、最も大きな計数値=「7.25」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。
【0060】
[第5の特定処理]
第4の特定処理では、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに接続されている診療タームの特異性を考慮し、重み付けをして計数した上位エンティティにおける診療タームおよび下位エンティティの計数値(重み付き頻度)に基づいて重要度が高い上位エンティティ(代表エンティティ)を特定した。これに対して、第5の特定処理では、診療データ(電子カルテ)に含まれるテキストデータから同時に抽出される診療タームの割合を表す共起度を求め、求めた共起度を考慮してそれぞれの上位エンティティの重要度を判定して、重要度が高い上位エンティティを代表エンティティとして特定する。共起度は、例えば、jaccard(ジャッカード)係数などによって求めることができる。より具体的には、共起度は、例えば、ある診療タームAとある診療タームBとの両方の診療タームを含むテキストデータの数を、診療タームAと診療タームBとのいずれか一方あるいは両方を含むテキストデータの数で除算することによって求めることができる。共起度は、マッピング処理機能142が抽出した診療タームを医用オントロジーにマッピングする際に求めてもよいし、特定機能144が、マッピング済みオントロジー上で診療タームがマッピングされたエンティティの隣接関係を辿る際に、テキストデータを参照して求めてもよい。共起度は、例えば、診療データ処理機能140に備えられ、テキストデータに含まれる診療タームの共起度を求める処理機能によって求めてもよい。
【0061】
第5の特定処理では、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数する際に、診療ターム間の共起度を含めた値を計数値とする。これにより、第5の特定処理において特定機能144がそれぞれの上位エンティティに接続されている診療タームおよび下位エンティティの数を計数した計数値は、第1~第3の特定処理における計数値に対して、診療ターム間の共起度を考慮したものとなる。言い換えれば、第5の特定処理における計数値は、第1~第3の特定処理における計数値に対して、共起度に基づいて診療ターム間の結びつきの強さを表す重み付けを加味したものとなる。そして、第5の特定処理では、共起度を含めて計数した診療タームおよび下位エンティティの計数値を接続頻度として表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したクラスタを形成する。このとき、特定機能144は、ラベルの属性を「共起頻度」として、それぞれの上位エンティティに接続する。
【0062】
図9は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第5の特定処理の一例を模式的に示す図である。図9には、第4の特定処理と同様に、マッピング済みオントロジーにおいて、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して「治療薬」の関係性あるがある「アスピリン」の診療タームが接続されている場合の一例を示している。ただし、図9に示したマッピング済みオントロジーでは、説明を容易にするため、重み値のラベルは接続されていない、つまり、それぞれの診療タームにおける重み値は「1.00」であるものとした場合の一例を示している。そして、図9に示したマッピング済みオントロジーでは、「エナラート」の診療タームと「浮腫」の診療タームとの共起度が「0.4」であり、「浮腫」の診療タームと「ソタコール」の診療タームとの共起度が「0.1」であり、「ソタコール」の診療タームと「気道」の診療タームとの共起度が「0.1」であるものとした場合の一例を示している。
【0063】
第5の特定処理では、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数する際に、共起度を含めて計数して、接続頻度(共起頻度)を表すラベルとして接続する。図9には、マッピング済みオントロジーにおいて、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して計数値=「8.6」のラベルを接続している。ここで、「心不全」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「8.6」は、この上位エンティティに接続されている、「浮腫」、「気道」、「エナラート」、「ソタコール」、「アスピリン」のそれぞれの診療タームと、図9では省略している「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」のそれぞれの診療タームの計数値に、「エナラート」、「浮腫」、「ソタコール」、「気道」のそれぞれの診療ターム間における共起度を加算した計数値である。図9では、「高血圧」と「抗不整脈薬」とのそれぞれの上位エンティティに対しては、接続されている診療タームおよび下位エンティティの計数値のラベルを接続している。これは、「高血圧」と「抗不整脈薬」とのいずれの上位エンティティにも、共起の関係にある二つの診療タームが同時に接続されていないからである。
【0064】
そして、特定機能144は、最も大きな計数値のラベルが接続されている上位エンティティを、重要度が最も高い上位エンティティとし、代表エンティティとして特定する。図9に示した一例では、最も大きな計数値=「8.6」のラベルが接続されている「心不全」の上位エンティティを、代表エンティティとして特定する。
【0065】
このようにして、特定機能144は、マッピング済みオントロジーに基づいて、重要度が高い情報など、マッピング済みオントロジーを代表する代表エンティティを特定する。特定機能144は、特定した代表エンティティを表す情報と形成したクラスタとを、情報提供機能160に出力する。このとき、特定機能144は、例えば、接続頻度を表すラベルをそれぞれの上位エンティティに接続したマッピング済みオントロジーに特定した代表エンティティを表すラベルをさらに接続したマッピング済みオントロジーなど、代表エンティティを表す情報と形成したクラスタとを併せた情報を情報提供機能160に出力する。特定機能144は、特定した代表エンティティにおける疾患の名称などの情報を、形成したクラスタとは別々に情報提供機能160に出力してもよい。
【0066】
特定機能144は、「特定部」の一例である。
【0067】
情報提供機能160は、診療データ処理機能140により出力された代表エンティティを表す情報(より具体的には、特定機能144が形成したクラスタ)に基づいて、診断対象患者が患っている疾患に関する情報を担当医師に提供するための提供情報を生成する。情報提供機能160は、例えば、特定機能144が形成したクラスタに基づいて、疾患や診断に関する情報を表す表示内容を表示させるための表示画像を生成し、生成した表示画像を医用情報処理装置100に接続された表示装置(不図示)に表示させることにより、診断対象患者が患っている疾患に関する情報を担当医師に提供する。情報提供機能160は、例えば、不図示の通信部を制御して、ネットワークNWに接続され、担当医師が診断対象患者の疾患に関する情報を確認する際に用いる端末装置などに生成した表示画像を送信させ、この端末装置が備える、あるいはこの端末装置に接続された表示装置に表示画像を表示させることによって、診断対象患者が患っている疾患に関する情報を担当医師に提供してもよい。
【0068】
情報提供機能160は、「表示制御部」の一例である。
【0069】
図10は、実施形態に係る医用情報処理装置100が情報を提供する表示画面の一例を示す図である。図10には、提供する情報を表す表示内容を表示装置に表示させた表示画面IMの一例を示している。図10に示した表示画面IMには、例えば、五つの情報提示領域Aのそれぞれに、特定機能144が形成したクラスタに基づく情報を提示している場合の一例を示している。表示画面IMにおいて、情報提示領域A1には、特定機能144が特定した代表エンティティ(上位エンティティ)の疾患の名称を提示し、クラスタにおいて代表エンティティに接続されている下位エンティティの情報を示している。図10に示した表示画面IMでは、情報提示領域A1に疾患の名称をリストアップして示しているが、情報提示領域A1に示す情報は、例えば、診断対象患者に処方した治療薬をリストアップして示してもよいし、診断対象患者に対して行った治療方法をリストアップして示してもよい。表示画面IMにおいて、情報提示領域A2~情報提示領域A5には、代表エンティティおよびこの代表エンティティに接続されている下位エンティティにおける時間的な情報や、詳細な情報を示している。情報提示領域A2~情報提示領域A5には、例えば、医用情報処理装置100が備える不図示の入力インターフェースを担当医師が操作して、情報提示領域A1に表示させた疾患(ここでは、「心不全」)を指定した場合に、指定された疾患の上位エンティティ(代表エンティティ)に接続されているそれぞれの下位エンティティに関する時間的情報が示される。言い換えれば、情報提示領域A2~情報提示領域A5には、担当医師からの指示に応じてフィルタリングした情報が示される。情報提示領域A2~情報提示領域A5には、クラスタから抽出した情報を提示させるようにしてもよいし、クラスタを形成する元の診療データ(電子カルテ)や基本的な医用オントロジーなどを参照して抽出した情報を提示させるようにしてもよい。表示画面IMによって、担当医師は、診断対象患者の疾患に関する情報を、以前の診断結果などを含めて確認することができる。
【0070】
図10に示した表示画面IMでは、情報提示領域A1~情報提示領域A5の五つの情報提示領域Aのそれぞれに情報を提示させる(表示させる)場合の一例を示しているが、これはあくまで一例であり、医用情報処理装置100が担当医師に情報を提供する方法は、他の方法であってもよい。例えば、情報提供機能160は、表示画面IMに示した情報提示領域A2~情報提示領域A5、あるいは他の情報提示領域Aに、診断対象患者の検査画像を同時に提示させる(表示させる)ようにしてもよい。つまり、情報提供機能160が表示画面によって担当医師に情報を提供する方法は、診断対象患者が患っている疾患に関する情報をフィルタリングして提示することによって、担当医師が確認しやすいようにさせて提供する方法であれば、いかなる方法であってもよい。
【0071】
[第5の特定処理の変形例]
ところで、第5の特定処理では、特定機能144が、診療データ(電子カルテ)に含まれるテキストデータから同時に抽出される診療タームの割合を表す共起度を求め、求めた共起度を考慮して判定した重要度が高い上位エンティティ(代表エンティティ)を特定した。言い換えれば、第5の特定処理では、共起度が高い診療タームが多く接続されている上位エンティティを代表エンティティとして特定した。ここで、診断対象患者の治療を行っているときには、例えば、以前の診療データ(電子カルテ)からは抽出されていなかったものの、今回の診療データのテキストデータから新たな診療タームが抽出されたり、過去(例えば、過去1年)の診療データのテキストデータから抽出されたことはあったが、しばらくの間抽出されていなかった診療タームが再び抽出されるようになったりすることも考えられる。このような診療タームに関して第5の特定処理では、他の診療タームとの共起度を求めていない、つまり、共起度=「0.0」である。しかしながら、新たに抽出された診療タームや再び抽出された診療タームには、例えば、診断対象患者に現在治療を行っている疾患とは異なる別の疾患が発生したり、現在治療を行っている疾患が急変したり、過去に患ったが治療済みの疾患が再発したりしたことを表している診療タームも含まれると考えられる。そこで、第5の特定処理の変形例では、共起度=「0.0」の診療タームではあるものの、新たに(再度)抽出された診療タームがある場合には、この診療タームを含めてそれぞれの上位エンティティの重要度を判定し、重要度が高い上位エンティティを代表エンティティとして特定する。
【0072】
図11は、実施形態に係る医用情報処理装置100が備える特定機能144における第5の特定処理の変形例の一例を模式的に示す図である。図11には、第5の特定処理と同様に、「エナラート」の診療タームと「浮腫」の診療タームとの共起度が「0.4」であり、「浮腫」の診療タームと「ソタコール」の診療タームとの共起度が「0.1」であり、「ソタコール」の診療タームと「気道」の診療タームとの共起度が「0.1」であるものとした場合の一例を示している。そして、図11に示したマッピング済みオントロジーでは、「アスピリン」の診療タームに接続されている「疾患」の上位エンティティである「吐血」が診療タームと、「疾患」の上位エンティティである「悪寒」が診療タームとして新たに(再度)抽出された場合の一例を示している。「吐血」の診療タームと「悪寒」の診療タームとのそれぞれの診療タームは、過去(例えば、過去1年)の診療データのテキストデータから抽出されたことがない全く新しい診療ターム、あるいは、しばらくの間(例えば、過去3か月)は抽出されていなかったが、今回の診療データのテキストデータから再び抽出された診療タームである。この場合、「吐血」の診療タームと「悪寒」の診療タームとのそれぞれの診療タームは、共起度=「0.0」である。
【0073】
第5の特定処理の変形例でも、第5の特定処理と同様に、特定機能144が、それぞれの上位エンティティに対して診療タームおよび下位エンティティが接続されている数を計数する際に、共起度を含めて計数して、接続頻度(共起頻度)を表すラベルとして接続する。図11には、マッピング済みオントロジーにおいて、疾患の名称が「心不全」の上位エンティティに対して計数値=「10.6」のラベルを接続している。ここで、「心不全」の上位エンティティに対して接続したラベルの計数値=「10.6」は、この上位エンティティに接続されている、「浮腫」、「気道」、「エナラート」、「ソタコール」、「アスピリン」のそれぞれの診療タームと、図11では省略している「ジゴキシン」、「ヒドロクロロチアジド」、および「ジゴシンエリキシル」のそれぞれの診療タームに加えて、新たに抽出された「吐血」および「悪寒」のそれぞれの診療タームの計数値に、「エナラート」、「浮腫」、「ソタコール」、「気道」のそれぞれの診療ターム間における共起度を加算した計数値である。図11において、「高血圧」と「抗不整脈薬」とのそれぞれの上位エンティティは、図9に示した第5の特定処理の一例と同様である。このため、特定機能144は、第5の特定処理の変形例においても、最も大きな計数値のラベル(計数値=「10.6」)が接続されている上位エンティティである「心不全」を、代表エンティティとして特定する。
【0074】
このようにして、特定機能144は、第5の特定処理の変形例において、新たに(再度)抽出された共起度=「0.0」である診療タームも含めたマッピング済みオントロジーに基づいて、重要度が高い情報など、マッピング済みオントロジーを代表する代表エンティティを特定する。特定機能144は、第5の特定処理の変形例において、新たに(再度)抽出された診療ターム(ここでは、「吐血」と「悪寒」とのそれぞれの診療ターム)を着目する診療タームとし、着目する診療タームにおいて重要度が高い診療タームの情報を、特定した代表エンティティを表す情報と形成したクラスタとともに、情報提供機能160に出力してもよい。このとき、特定機能144は、例えば、「吐血」の診療タームの方を、同じ「疾患」の上位エンティティである「悪寒」の診療タームよりも重要度が高い診療タームとして判定し、「吐血」の診療タームの情報を、重要度が高い着目する診療タームの情報として情報提供機能160に出力する。これにより、情報提供機能160は、重要度が高い着目する診療タームの情報を含めて、診断対象患者が患っている疾患に関する情報を担当医師に提供するための表示画像を生成し、医用情報処理装置100に接続された表示装置(不図示)に表示させる。
【0075】
図12は、実施形態に係る医用情報処理装置100が情報を提供する表示画面の一例を示す図である。図12には、図10に示した表示画面IMに、重要度が高い着目する診療タームである「吐血」の診療タームの情報を追加して表示装置に表示させた表示画面IM2の一例を示している。図12に示した表示画面IM2では、情報提示領域A2に、「吐血」の診療タームが新たに抽出された時間的情報を示している。表示画面IM2によって、担当医師は、診断対象患者の疾患に関する情報として、以前の診断結果などに加えて、新たに着目する必要がある診療ターム(新着目診療ターム)が抽出されたことを確認することができる。
【0076】
図12に示した表示画面IM2では、情報提示領域A2に、新たに着目する「吐血」の診療タームの情報を提示させる(表示させる)場合の一例を示しているが、これはあくまで一例であり、医用情報処理装置100が担当医師に新たに着目する診療タームの情報を提供する方法は、担当医師が確認しやすいようにさせて提供する方法であれば、いかなる方法であってもよい。例えば、情報提供機能160は、表示画面IM2に示した情報提示領域A1~情報提示領域A5、あるいは他の情報提示領域Aに、新たに着目する必要がある診療タームが目立つようにして提示させる(表示させる)ようにしてもよい。
【0077】
[医用情報処理装置の処理]
次に、医用情報処理装置100の動作について説明する。図13は、実施形態に係る医用情報処理装置100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図13には、医用情報処理装置100が、診断対象患者の疾患に関する情報をフィルタリングして提示する処理の一例を示している。医用情報処理装置100は、例えば、診断対象患者の診断を開始する際に、担当医師からの指示に応じて、診断対象患者の疾患に関する情報を提示するようにしてもよい。
【0078】
医用情報処理装置100(処理回路110)において情報を提示する処理を開始すると、診療データ取得機能120は、診療データ記憶部10に記憶されている診断対象患者の診療データ(電子カルテ)を取得する(ステップS100)。このとき、診療データ取得機能120は、電子カルテに含まれているテキストの文章のテキストデータを取得する。診療データ取得機能120は、取得した診療データ(テキストデータ)を、診療データ処理機能140に出力する。
【0079】
診療データ処理機能140のマッピング処理機能142は、診療データ取得機能120により取得されたテキストデータを単語に分割する(ステップS102)。そして、マッピング処理機能142は、分割したそれぞれの単語の中から診療タームを抽出する(ステップS104)。さらに、マッピング処理機能142は、医用オントロジー記憶部20に記憶されている医用オントロジーを取得する(読み出す)(ステップS106)。そして、マッピング処理機能142は、取得した医用オントロジー内の対応するエンティティに、抽出した診療タームをマッピングする(ステップS108)。つまり、マッピング処理機能142は、マッピング済みオントロジーを生成する。マッピング処理機能142は、生成したマッピング済みオントロジーを、特定機能144に出力する。
【0080】
特定機能144は、マッピング処理機能142により出力されたマッピング済みオントロジーに基づいて、診療タームがマッピングされたエンティティの隣接関係を辿り、対象のエンティティに所定の接続頻度を表すラベルを接続したクラスタを形成する(ステップS110)。そして、特定機能144は、形成したクラスタにおいて特定の条件を示す医療情報を表すエンティティを、代表エンティティとして特定する(ステップS112)。特定機能144は、特定した代表エンティティを表す情報と形成したクラスタとを、情報提供機能160に出力する。
【0081】
情報提供機能160は、特定機能144により出力された代表エンティティを表す情報と形成したクラスタとに基づく提供情報(例えば、図10に示した表示画面IM)を生成して提供する(ステップS114)。そして、医用情報処理装置100(処理回路110)は、本フローチャートの処理を終了する。
【0082】
このようにして、医用情報処理装置100は、診療データ記憶部10に記憶された診断対象患者の診療データ(電子カルテ)に含まれる情報を、医用オントロジーに基づいて整理し、整理した情報を、診断対象患者の担当医師が確認しやすいようにして提供することができる。
【0083】
上記に述べたとおり、実施形態の医用情報処理装置では、診療データ記憶部10に記憶された診断対象患者の診療データ(電子カルテ)のテキストデータに含まれる情報を単語に分割し、分割したそれぞれの単語の中から診療タームを抽出する。そして、実施形態の医用情報処理装置では、抽出した診療タームを医用オントロジー内の対応するエンティティにマッピングしたマッピング済みオントロジーを生成する。これにより、実施形態の医用情報処理装置では、診断対象患者の診療データ(電子カルテ)に記載された診療タームの隣接関係を整理することができる。そして、実施形態の医用情報処理装置では、生成したマッピング済みオントロジーを代表する代表エンティティを特定する。これにより、実施形態の医用情報処理装置では、特定した代表エンティティに関連するエンティティ(関係性が「症状」、「部位」、「治療薬」などの下位エンティティ)に関する情報を、診断対象患者の担当医師が確認しやすいようにして提供することができる。言い換えれば、実施形態の医用情報処理装置では、特定した代表エンティティに着目した診療タームの情報を、確認しやすいようにして担当医師に提供することができる。このことにより、実施形態の医用情報処理装置が導入された医療機関では、担当医師が、診断対象患者に対して適切な診断を行うことができる。
【0084】
上述した実施形態では、医用情報処理装置100が、診断対象患者が患っている疾患の名称を表すエンティティ(上位エンティティ)を、代表エンティティとして特定する場合について説明した。しかしながら、医用情報処理装置100が特定する代表エンティティは、疾患の名称を表すエンティティと異なるエンティティであってもよい。例えば、医用情報処理装置100は、診断対象患者が患っている疾患に対応する治療薬や、診断対象患者が患っている疾患に対する治療方法などであってもよい。そして、医用情報処理装置100が代表エンティティとするエンティティは、例えば、担当医師が指定するようにしてもよい。この場合、担当医師による代表エンティティとするエンティティの指定は、例えば、医用情報処理装置100が備える不図示の入力インターフェースを担当医師が操作して、図10に示した表示画面IM上で行うようにしてもよい。この場合における医用情報処理装置100の機能構成、動作、処理などは、上述した実施形態の医用情報処理装置100の機能構成、動作、処理などと等価なものになるようにすればよく、容易に考えることができる。従って、この場合の医用情報処理装置100の機能構成、動作、処理などに関する詳細な説明は省略する。
【0085】
上述した実施形態では、マッピング処理機能142がマッピング済みオントロジーを生成するタイミングについては特に説明をしていないが、マッピング済みオントロジーを生成するタイミングは、診断対象患者の診療データ(電子カルテ)に新たな情報が追加されたタイミングであれば、どのようなタイミングであってもよいと考えられる。これは、診断対象患者に対して行われた検査や診断の結果が更新された後であれば、いかなるタイミングでマッピング済みオントロジーを生成したとしても、新たに検査や診断が行われるまでは、診断対象患者の診療データ(電子カルテ)には変化がないと考えられるからである。このため、マッピング処理機能142は、診療データ(電子カルテ)が更新された際にマッピング済みオントロジーを生成し、生成したマッピング済みオントロジーを不図示の記憶装置などに記憶させておくようにしてもよい。この場合、医用情報処理装置100では、不図示の記憶装置などに記憶されたマッピング済みオントロジーに対する特定機能144による特定処理から行うようにすることができる。つまり、医用情報処理装置100が同じ提供情報を担当医師に提供する場合でも、生成したマッピング済みオントロジーを不図示の記憶装置などに記憶させておくことによって、医用情報処理装置100における処理の負荷を分散させ、提供情報を提供するために同時期に行う処理の負荷を軽減させることができる。この場合における医用情報処理装置100の機能構成、動作、処理なども、上述した実施形態の医用情報処理装置100の機能構成、動作、処理などに基づいて容易に考えることができるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
処理対象のテキストデータを取得し、
前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報を出力する、
医用情報処理装置。
【0087】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、処理対象(診療データ)のテキストデータを取得する取得部(120)と、前記テキストデータに含まれる診療タームと、複数の医療情報(上位エンティティ+下位エンティティ)の関係性が定義された医用オントロジーとに基づいて、診断対象(診断対象患者)に関して特定の条件を満たすいずれかの前記医療情報を特定した特定情報(代表エンティティ)を出力する処理部(140)と、を備えることにより、診療データに含まれる情報を整理することができる。
【0088】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
10・・・診療データ記憶部、20・・・医用オントロジー記憶部、100・・・医用情報処理装置、110・・・処理回路、120・・・診療データ取得機能、140・・・診療データ処理機能、142・・・マッピング処理機能、144・・・特定機能、160・・・情報提供機能、NW・・・ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13