(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067007
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】複合粒子
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240509BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08G18/00 A
C08G18/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186220
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022176571
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜多 藍
(72)【発明者】
【氏名】和田 全展
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智恵
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC25
4J034HC26
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC04
4J034RA01
4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】被覆層で徐放性薬剤の表面が被覆されてなる複合粒子であり、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立し、かつ耐衝撃性にも優れる複合粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】
(1)前記ポリウレタン樹脂(P)が、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を構成原料とするポリエステルポリウレタン樹脂である
(2)前記ポリウレタン樹脂(P)の(P)の重量に基づくエステル基濃度が0.03~0.40g/gである
(3)前記ポリエステルポリオール(A)が、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有する
(4)前記徐放性薬剤粒子(Y)が、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)とを含有する徐放性薬剤粒子である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子であり、下記(1)~(4)のすべてを満たす複合粒子:
(1)前記ポリウレタン樹脂(P)が、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を必須構成原料とするポリエステルポリウレタン樹脂である;
(2)前記ポリウレタン樹脂(P)が有するエステル基の合計重量が、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.03~0.40(g)である;
(3)前記ポリエステルポリオール(A)が、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有する;
(4)前記徐放性薬剤粒子(Y)が、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)とを含有する徐放性薬剤粒子である。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(P)が、アルキレンオキシ基を有しており、ポリウレタン樹脂(P)が有するアルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の合計重量が、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.01~0.5gである請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価が8~85mgKOH/gである請求項1又は2に記載の複合粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農業、食品添加物、化粧品、衛生用品等の分野において、有効成分を徐放する徐放性薬剤は効果の持続性や取り扱いの容易さの観点から非常に有用であり。幅広く使用されている。その中で農業用薬剤(肥料、農薬及び害生物防除剤等)、防藻剤、水中生物付着防止剤等の用途に使用される徐放性薬剤は、プラスチック被膜殻を有するものが多く用いられているが、有効成分が放出された後の被膜殻が河川や海洋等に流出してプラスチックゴミになるため、近年、環境保護の観点から、被膜(被覆層)への生分解性付与が求められている。
【0003】
徐放性薬剤の被覆層に生分解性を付与する方法としては、被覆層として天然ゴムや生分解性ポリエステル等の生分解性材料を用いる方法が挙げられるが、生分解性材料のみからなる被覆層では薬剤の溶出が速くなりすぎることがあり、生分解性材料とポリオレフィン系樹脂等の非生分解性樹脂との混合物からなる被覆層が研究されてきた。
例えば特許文献1では、脂肪族ポリエステル4重量%以上80重量%以下、ポリオレフィン19重量%以上95重量%以下、及び光分解剤0.00001重量%以上10重量%以下を含有する被覆層を有する被覆粒状肥料が提案されている。特許文献1に記載の被覆層は、非生分解性樹脂であるポリオレフィンとポリオレフィンの酸化分解を促進する光分解剤を併用することで、肥料の溶出制御幅の広さと被覆層の分解性の両立を試みたものであるが、被覆層の分解性は十分とはいえず、使用される環境によって被覆層の分解性及び薬剤の溶出速度が大きく変化するという問題もあった。また被覆層の耐衝撃性が低く、保管時や施肥時に被覆層が破損する等の問題が起こることがあった。
【0004】
一方、生分解性樹脂からなる被覆層の外側にさらに保護層を設けることにより、被覆層の分解速度及び薬剤の溶出速度をコントロールする方法も提案されている。
例えば特許文献2では、肥料成分を含有する粒状物質の表面に被覆層が設けられてなる被覆粒状肥料であって、該被覆層が、ポリイソシアネート成分とポリカプロラクトンジオールを含有するポリオール成分とが重合されてなるウレタン樹脂等の生分解性を有する樹脂からなる樹脂被覆層と、該樹脂被覆層の外側に設けられた抗菌剤及び植物硬化油を含む保護層とを有してなることを特徴とする被覆粒状肥料が提案されている。しかしながら特許文献2に記載の被覆層は、施用場面の相違に起因する肥料の溶出速度の変化は小さいものの、徐溶性のコントロール(所望の溶出速度に調整)はまだ不十分であり、耐衝撃性等の機械的物性についても考慮されていないため、実使用面での課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-43391号公報
【特許文献2】特開2011-178579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、被覆層で徐放性薬剤の表面が被覆されてなる複合粒子であり、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立し、かつ耐衝撃性にも優れる複合粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明はポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子であり、下記(1)~(4)のすべてを満たす複合粒子である。
(1)前記ポリウレタン樹脂(P)が、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を必須構成原料とするポリエステルポリウレタン樹脂である;
(2)前記ポリウレタン樹脂(P)が有するエステル基の合計重量が、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.03~0.40(g)である;
(3)前記ポリエステルポリオール(A)が、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有する;
(4)前記徐放性薬剤粒子(Y)が、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)とを含有する徐放性薬剤粒子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合粒子は、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立し、かつ機械的強度(耐衝撃性等)にも優れるという効果を奏する。なお、「薬剤の徐放性のコントロールに優れる」とは、薬剤の放出速度(溶出速度)を所望の範囲に調整可能であることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の複合粒子は、ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子である。徐放性薬剤粒子(Y)、ポリウレタン樹脂(P)、被覆層(II)、本発明の複合粒子について順に説明する。
【0010】
<徐放性薬剤粒子(Y)>
本発明における徐放性薬剤粒子(Y)は、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)とを含有する徐放性薬剤粒子である。
徐放性薬剤粒子(Y)の形態は特に限定されないが、徐放性制御材料(I)で薬剤(Z)の表面が被覆されてなる徐放性薬剤粒子、及び、徐放性制御材料(I)の内部に薬剤(Z)が担持されてなる徐放性薬剤粒子等が挙げられる。
【0011】
本発明における薬剤(Z)としては、農業用薬剤、香料、染料、防藻剤及び水中生物付着防止剤等が挙げられる。
農業用薬剤としては、肥料(尿素、硝酸アンモニウム及び硫酸カリウム等)、農薬(殺菌剤、除草剤及び植物成長調整剤等)、害生物防除剤(忌避剤、殺虫剤、殺ダニ剤及び殺そ剤等)等が挙げられる。
【0012】
本発明における徐放性制御材料(I)は、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。
無機材としては、硫黄、多孔質シリカ及び多孔質セラミックス等が挙げられる。
天然系材料としては、セルロース、デンプン、天然ゴム、油脂及び天然系多孔質材(多孔質セルロース粒子)等が挙げられる。
天然ゴムしてはニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、クロロプレンゴム(CR)及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。油脂としては脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物を主成分とするワックス等が挙げられ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス(カルナバワックス)、ライスワックス、蜜蝋及びヒマワリワックス等が含まれる。
熱可塑性生分解性樹脂には、日本バイオプラスチック協会(JBPA)が生分解性プラマークを付与しているもの(ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートサクシネート等)が含まれる。
徐放性制御材料(I)中の無機材、天然系材料及び生分解性高分子の合計含有量は、生分解及び薬剤の徐放性コントロールの観点から、40~100重量%であることが好ましい。
【0013】
徐放性薬剤粒子(Y)は、発明の効果を阻害しない範囲で、上記(I)及び(Z)に加えて添加剤等を含有してもよい。添加剤としてはパラフィン、界面活性剤、タルク及び酸化防止剤等が挙げられる。
【0014】
徐放性薬剤粒子(Y)における徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)の含有重量比[(Z)/(I)]は、(Y)が徐放性制御材料(I)で薬剤(Z)の表面が被覆されてなる徐放性薬剤粒子である場合、薬剤の徐放性コントロールの観点から、好ましくは2~50である。一方、(Y)が徐放性制御材料(I)の内部に薬剤(Z)が担持されてなる徐放性薬剤粒子である場合、薬剤の徐放性コントロールの観点から、好ましくは0.1~10である。
また、徐放性薬剤粒子(Y)における徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)の合計重量は、(Y)の重量に基づいて80~100重量%であることが好ましく、90~100重量%であることが更に好ましい。
【0015】
徐放性薬剤粒子(Y)を構成する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)の組み合わせや、徐放性薬剤粒子(Y)の形態は特に限定されないが、薬剤の徐放性コントロール等の観点から、例えば下記(1)~(3)の形態が好ましく、(1)の形態であると後述する被覆性が更に良好となる。
(1)固体(粒状、ペレット状等)の薬剤(Z)の表面が硫黄及び/又は上記熱可塑性生分解性樹脂を含有する徐放性制御材料(I)で被覆されてなるもの
(2)非水溶性液状(25℃における水への溶解度2g/L未満)の薬剤(Z)が多孔質材料である徐放性制御材料(I)に担持されてなるもの
(3)水溶性液状(25℃における水への溶解度2g/L以上)の薬剤(Z)を多孔質材料である徐放性制御材料(I-1)に担持し、更に、上記生分解性樹脂を含有する徐放性制御材料(I-2)で被覆してなるもの
また、徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)の好ましい組み合わせの具体例としては、下記(i)~(iii)の組み合わせが挙げられる。
(i)(Z):固体粒状肥料と(I):熱可塑性生分解性樹脂の組み合わせ
(ii)(Z):固体粒状肥料と(I):硫黄の組み合わせ
(iii)(Z):非水溶性液状防藻剤と(I):多孔質シリカの組み合わせ
【0016】
徐放性薬剤粒子(Y)の製造方法は特に限定されないが、例えば上記(1)の形態の場合、噴流動装置や回転ドラム式のコーティング装置を用いて薬剤(Z)の表面を徐放性制御材料(I)でコーティングすることにより製造することができる。上記(2)の形態の場合、薬剤(Z)が溶解した有機溶剤を徐放性制御材料(I)に含浸させたのち、脱溶剤することにより製造することができる。上記(3)の形態の場合、薬剤(Z)が溶解した有機溶剤を徐放性制御材料(I)に含浸させたのち、脱溶剤して得られたものを、更に噴流動装置や回転ドラム式のコーティング装置を用いて徐放性制御材料(I)でコーティングすることにより製造することができる。
【0017】
<ポリウレタン樹脂(P)>
徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層(II)に含まれる、ポリウレタン樹脂(P)は、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を必須構成原料とするポリエステルポリウレタン樹脂であり、ポリウレタン樹脂(P)に含まれるエステル基の合計重量が1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.03~0.40(g)であり、前記ポリエステルポリオール(A)が、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有するポリウレタン樹脂である。
前記ポリウレタン樹脂(P)は生分解性を有するため、徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層(II)がポリウレタン樹脂(P)を含むことによって、被覆層に高いレベルの生分解性と薬剤の徐放性のコントロール性を付与することができる。
なお、本発明において「生分解性を有する」とは、環境中の水分により分子中のエステル結合が加水分解され低分子化した後、更に微生物分解、酵素分解又は生物による摂食が可能であることを意味する。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ポリエステルポリオール(A1)、脂肪族-芳香族ポリエステルポリオール(A2)及び芳香族ポリエステルポリオール(A3)が挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリエステルポリオール(A1)としては、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)及び低分子ポリオールを開始剤としてラクトン類を開環重合させることにより得られるラクトン系脂肪族ポリエステルポリオール(A12)等が挙げられる。
【0020】
脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)の原料である脂肪族ポリカルボン酸としては、炭素数(カルボキシル基の炭素を含む)3~10の脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸及びフマル酸)及びこれらのエステル形成性誘導体(酸無水物、低級アルキルエステル及び酸ハライド等)が挙げられる。これらの脂肪族ポリカルボン酸のうち生分解性の観点から好ましいのはアジピン酸である。
脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)の原料である脂肪族ポリオール(好ましくは脂肪族ジオール)としては、炭素数2~10の脂肪族低分子ポリオール(好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジメチルプロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,6-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコール等の脂肪族低分子ジオール)、及び、分子量又は数平均分子量1000以下の脂肪族ポリエーテルポリオール[好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(付加形式はブロック及び/又はランダムのいずれでもよい)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ポリエーテルジオール]が挙げられる。これらの脂肪族ポリオールのうち、特に好ましいのは、分子量又は数平均分子量1000以下の脂肪族ポリエーテルポリオールである。分子量又は数平均分子量1000以下の脂肪族ポリエーテルポリオールを構成原料とするポリエステルポリオールは、同程度の分子量の他のポリエステルポリオールと比較して低粘度かつガラス転移温度が低く、被覆性が特に良好となり、複合粒子製造時の条件(温度等)の許容幅も広くなる。また、複合粒子の低温条件下での耐衝撃性が良好となる。分子量又は数平均分子量1000以下の脂肪族ポリエーテルポリオールの中で、生分解性の観点から特に好ましいのはポリエチレングリコールであり、徐放性コントロールの観点から特に好ましいのはポリプロピレングリコールである。
【0021】
なお本発明において、「被覆性が良好」であるとは、被覆度分布(内包薬剤の重量に対する徐放性制御材料(I)と被覆層(II)の合計重量の比率の分布)が狭く、最外層である被覆層(II)による被覆のバラつきが小さい(被膜欠損や膜厚のバラつきが少ない)こと、及び被覆工程の作業性が良好であることを意味する。
【0022】
ラクトンポリエステルポリオール(A12)の原料である低分子ポリオールとしては、上記(A11)の原料として例示した炭素数2~10の脂肪族低分子ポリオール等が挙げられる。
ラクトンポリエステルポリオール(A12)の原料であるラクトン類としては、炭素数4~6のもの、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン及びγ-バレルラクトン等が挙げられる。
【0023】
脂肪族-芳香族ポリエステルポリオール(A2)としては、上記脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)の原料の一部が芳香族化合物に置き換えられたもの、好ましくは、脂肪族ポリカルボン酸の一部が芳香族ポリカルボン酸に置き換えられたポリエステルポリオール(脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸と芳香族ポリカルボン酸とを構成単位とするポリエステルポリオール)が挙げられる。
脂肪族-芳香族ポリエステルポリオール(A2)の原料である芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数(カルボキシル基の炭素を含む)8~10の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、テレフタル酸及びジメチルテレフタル酸)等が挙げられる。
【0024】
芳香族ポリエステルポリオール(A3)としては、芳香環構造含有ポリオールと芳香族ポリカルボン酸との縮重合体等が挙げられる。
芳香族ポリエステルポリオール(A3)の原料である芳香環構造含有ポリオールとしては、芳香族低分子ポリオール{例えばキシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、レゾルシン及びビスフェノールA}及び分子量1000以下の芳香環構造含有ポリエーテルポリオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、レゾルシンのエチレンオキシド付加物及びレゾルシンのプロピレンオキシド付加物等)が挙げられる。
芳香族ポリエステルポリオール(A3)の原料である芳香族ポリカルボン酸としては、上記(A2)の原料として例示したもの等が挙げられる。
【0025】
本発明においてポリエステルポリオール(A)は脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を必須とし、ポリエステルポリオール(A)として(A11)1種を単独で用いても、(A11)以外のポリエステルポリオールと併用してもよい。
また上述のとおり、ポリエステルポリオール(A)は、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有する。(A11)の含有量が(A)の重量に基づいて70%未満であると、複合粒子の被覆層の生分解性と薬剤の徐放性コントロールの両立が難しくなることがあり、また、被覆性や複合粒子の低温下での耐衝撃性が悪くなる。
(A)の重量に基づく(A11)の重量は、更に好ましくは80重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上である。
(A11)以外の(A)を併用する場合、本発明の複合粒子の被覆層の生分解性と薬剤の徐放性等を所望の範囲に調整するために適宜選定することができる。例えば、被覆層の生分解性を特に向上させたい場合は上記(A12)及び/又は(A2)を用いると調整しやすい。薬剤の徐溶日数を伸ばしたい(溶出速度を特に緩やかにしたい)場合は上記(A3)を用いると調整しやすい。
【0026】
ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量(Mn)は被覆層の生分解性及び徐溶性の観点から、500~20000であることが好ましく、1300~14000であることが更に好ましい。
【0027】
なお、本発明における数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC-8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL-H」(1本)、「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μL
流量:1mL/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0028】
ポリエステルポリオール(A)の水酸基価(mgKOH/g)は、被覆層の生分解性等の観点から、15~250mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは8~85mgKOH/gである。
なお、ポリエステルポリオール(A)として2種以上のポリエステルポリオールを併用している場合の水酸基価は、併用しているポリエステルポリオールの混合物の水酸基価を意味する。
ポリエステルポリオール(A)の水酸基価は、ポリエステルポリオール(A)であるポリエステルポリオールの混合物をJIS K1557-1に準拠して測定する方法、又は併用するポリエステルポリオールのそれぞれの水酸基価と併用する量とを用いて平均値を計算する方法で算出される。
【0029】
ポリエステルポリオール(A)の酸価(mgKOH/g)は、被覆層の生分解性及び薬剤の徐放性の観点から、0~10mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは0~3mgKOH/gであることが好ましい。
なお、ポリエステルポリオール(A)の酸価は、JIS K0070に準拠して測定される。
【0030】
ポリイソシアネート(B)としては、従来ポリウレタンの製造に使用されているものが使用でき、例えば脂肪族ポリイソシアネート(B1)、脂環式ポリイソシアネート(B2)、芳香族ポリイソシアネート(B3)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(B4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(B5)等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネート(B1)としては、炭素数{炭素数はイソシアネート基(以下、NCO基と略記することがある)の炭素を含む、以下のポリイソシアネートの炭素数についても同様}4~22の鎖状脂肪族ジイソシアネート及び炭素数4~22の鎖状脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記することがある)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0032】
脂環式ポリイソシアネート(B2)としては、炭素数8~18の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記することがある)、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記することがある)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0033】
芳香族ポリイソシアネート(B3)としては、炭素数8~26の芳香族ジイソシアネート、炭素数8~26の芳香族トリイソシアネート、これらのイソシアネートの粗製物及びこれらイソシアネートの混合物等が挙げられる。具体例としては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略記することがある)、粗製TDI、2,2’-、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記することがある)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI、又はポリメリックMDI)、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート及びm-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0034】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(B4)としては、炭素数10~18の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
(B11)~(B14)のポリイソシアネートの変性物(B5)としては、上記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等)が含まれ、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
【0036】
これらのポリイソシアネート(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポリイソシアネート(B)は、本発明の複合粒子の被覆層の生分解性と薬剤の徐放性を所望の範囲に調整するために適宜選定することができる。例えば、被覆層の生分解性を特に向上させたい場合は上記(B1)及び/又は(B2)を用いると調整しやすい。薬剤の徐溶日数を伸ばしたい(溶出速度を特に緩やかにしたい)場合は上記(B3)を用いると調整しやすい。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂(P)は、上記条件を満たすポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を必須成分とするポリウレタン樹脂形成性組成物(p)の硬化物であり、ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)は、発明の効果を阻害しない範囲で必要により、更にポリエーテルポリオール(D)を含有してもよい。
ポリエーテルポリオール(D)としては、分子内にエステル基を有さず、2個以上のエーテル基を有するポリオールであり、具体例としては、水やMnが500未満のジオール[炭素数2~8の脂肪族2価アルコール{直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等)及び分岐アルキル鎖を有するジオール(1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール等)等};炭素数6~10の脂環基含有2価アルコール{1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等};炭素数8~20の芳香環含有2価アルコール{m-又はp-キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン};ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)のアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのアルキレンオキシド付加物及びビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート等]への炭素数2~4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド)付加物等が挙げられる。
これらの(D)のうち、被覆性(被覆率分布)の観点からは、凝固点が40℃以下であるものが好ましく、凝固点が40℃以下のポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、数平均分子量1500以下のポリエチレングリコール及び数平均分子量2500以下のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合物が挙げられる。
なお、(D)の凝固点(℃)は、JIS K0065に準拠して測定される。
【0038】
上記ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)における、ポリオール{ポリエステルポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(D)}とポリイソシアネート(B)との当量比[{(A)及び(D)中のOH基の合計モル数}/{(B)中のNCO基のモル数}]は、薬剤の徐放性及び被覆層の耐衝撃性の観点から、好ましくは1/0.9~1/2であり、更に好ましくは1/1.1~1/1.5である。
【0039】
ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)は、更に脂肪族モノオール(E)を含有してもよい。脂肪族モノオール(E)としては、複合粒子表面のべたつき抑制および被覆性の観点から、融点40~100℃が好ましく、60℃~80℃がさらに好ましい。脂肪族モノオールとしては、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール(1-ドコサノール)等が挙げられ、薬剤の徐放日数を伸ばすという観点から、脂肪族モノオールの炭素数は15以上が好ましい。
また、ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)は、前記脂肪族ジオールと前記脂肪族ジカルボン酸と前記脂肪族モノオール(E)とを重縮合して得られるポリエステルモノオールを含んでも良い。ポリエステルモノオールを用いることでポリウレタン樹脂の生分解性が良好となる。
【0040】
ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)におけるポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の合計重量は、(p)の重量に基づいて50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)におけるポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(D)、脂肪族モノオール(E)及びポリイソシアネート(B)の合計重量は、(p)の重量に基づいて95重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることが更に好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)は、硬化性の観点から、更に触媒(C)を含有することが好ましい。
触媒(C)としては、ウレタン化反応を促進するすべての触媒を使用できるが、硬化反応の反応速度及び被覆層の耐衝撃性の観点から、3級アミン{トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-エチルモルフォリン、N,N-ジメチルアミノエタノール、ビスジメチルアミノエチルエーテル、N-(N’,N’,-2-ジメチルアミノエチル)モルフォリン、ジアザビシクロウンデセン及びアミン系ポリオール等}及びカルボン酸金属塩(酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ及びオクチル酸鉛等)が挙げられる。
3級アミンの具体例としては、ジアザビシクロウンデセン[商品名「DBU」、サンアプロ(株)製]、脂肪族アミン系ポリオール[商品名「サンニックス NP300」、三洋化成(株)製]等が挙げられる。
触媒(C)としては、自然環境への影響の点から、トリエタノールアミン及びジアザビシクロウンデセンが好ましい。
触媒(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
触媒(C)の使用量は、ポリエステルポリオール(A)100重量部に対して、0.01~5.0重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.05~2.0重量部である。
【0043】
上記ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)をウレタン化反応(硬化反応)させることにより、生分解性を有するポリウレタン樹脂(P)が得られる。ポリオール{(A)、必要により含有する(D)及び必要により含有する(E)}、(B)及び必要により含有する(C)をあらかじめ混合してポリウレタン樹脂形成性組成物(p)を製造してから徐放性薬剤(Y)の被覆に用いてもよく、徐放性薬剤(Y)の被覆直前まで別で保管し、被覆時に混合((p)を製造)して使用してもよいが、ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)が(D)や(E)を含有する場合、他の成分と混合する前に(A)と(D)や(E)とをあらかじめ混合することが好ましい。被覆及び硬化方法については後述する。
【0044】
本発明におけるポリウレタン樹脂(P)が有するエステル基の合計重量は、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.03~0.40(g)であり、好ましくは0.05~0.36(g)である。1gのポリウレタン樹脂(P)あたりのエステル基の合計重量が0.03(g)未満であると被覆層の生分解性が不足し、0.40(g)を超えると耐衝撃性が不足することがある。
なお、1gの前記ポリウレタン樹脂あたりのエステル基の合計重量(g/g)は、(P)の赤外線分光分析(IR)を測定し、エステル基に由来するピークの強度と、エステル基の量が既知のサンプルを用いて作成した検量線(ピーク強度とエステル基の量との関係をプロットしたもの)を用いて算出することができる。
【0045】
本発明におけるポリウレタン樹脂(P)は、被覆層の生分解性と被覆性の観点からは、アルキレンオキシ基を有することが好ましい。前記ポリウレタン樹脂が有するアルキレンオキシ基の量は、アルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の合計重量が1gのポリウレタン樹脂(P)あたり、0.01~0.5(g/g)となる量であることが好ましい。アルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の合計重量は、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.05~0.4(g)であることが更に好ましく、0.1~0.4(g)であることが特に好ましい。1gのポリウレタン樹脂(P)あたりの、アルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の合計重量が上記範囲内であれば、被覆層の生分解性と被覆性(被覆率分布)を高いレベルで両立しやすい。
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂(P)に含まれるアルキレンオキシ基が有する酸素原子の合計重量は、ポリウレタン樹脂(P)が有するアルキレンオキシ基に含まれる酸素原子(エーテル性酸素原子)の数から算出することができる。
アルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の重量は、(P)の赤外線分光分析(IR)を測定し、アルキレンオキシ基に由来するピークの強度と、アルキレンオキシ基の数が既知のポリウレタン樹脂を測定サンプルとして用いて作成した検量線(ピーク強度と酸素原子の量との関係をプロットしたもの)を用いて算出することができる。
【0046】
本発明におけるポリウレタン樹脂(P)に含まれるイソシアネート基の合計重量は、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり、0.02~0.10(g)であることが好ましい。イソシアネート基の合計重量が上記範囲であれば、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立しやすい。
なお、ポリウレタン樹脂(P)に含まれるイソシアネート基の合計重量は、ポリウレタン樹脂(P)中のイソシアネート基[NCO基]の数から算出することができる。イソシアネート基の数は、(P)の製造に供した原料の量比から求めることができ、1gのポリウレタン樹脂(P)あたりのイソシアネート基数にイソシアネート基の化学式量(化学式量:42)をかけて算出する方法や、固体核磁気共鳴スペクトル(固体NMR)等でポリウレタン樹脂(P)を構成するモノマー組成とイソシアネート基の数を求めイソシアネート基の化学式量をかけて算出する方法により算出することができる。
【0047】
本発明におけるポリウレタン樹脂(P)の下記数式(1)で算出される架橋密度(1gのポリウレタン樹脂が有する架橋点のモル数)は0.0~0.5(mmol/g)であることが好ましい。架橋密度が上記範囲であれば、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立しやすい。架橋は、前記ポリエルテルポリオール(A)及び/又はポリイソシアネート(B)として3官能以上の化合物を用いる方法やアミンポリオール(トリエタノールアミン等)を触媒に用いる方法等で行うことができ、用いる量で架橋密度を調整することができる。
【0048】
【数1】
数式(1)において、m及びAiは、それぞれ、(P)を構成するポリオール{ポリエステルポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(D)}のうち、分子中に有する水酸基の数が3以上であるポリオール(pa)における以下の値を意味する。
m:(P)を構成するポリオール(pa)由来単位の個数
Ai[単位:mmol/g]:1000×{(P)を構成するi番目のポリオール(pa)が有する水酸基の数から2を減算した数}/(pa)の数平均分子量
また、数式(1)において、n及びBiは、それぞれ、(P)を構成するポリイソシアネート(B)のうち、分子中に有するイソシアネート基の数が3以上であるポリイソシアネート(pb)における以下の値を意味する。
n:(P)を構成するポリイソシアネート(pb)由来単位の個数
Bi[単位:mmol/g]:1000×{(P)を構成するi番目のポリイソシアネート(pb)が有するイソシアネート基の数から2を減算した数}/(pb)の分子量
【0049】
<被覆層(II)>
本発明における被覆層(II)は、上記ポリウレタン樹脂(P)を含有する。
本発明における被覆層(II)中のポリウレタン樹脂(P)の含有量は、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールの両立の観点から、被覆層(II)の重量に基づいて60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることが更に好ましい。
【0050】
被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部を被覆する方法としては、従来公知のいずれの方法を用いてもよいが、例えば、下記(1)~(2)の方法が挙げられる。
(1)流動状態又は転動状態にある徐放性薬剤粒子(Y)にあらかじめ混合したポリウレタン樹脂形成性組成物(p)を添加して(Y)の表面に付着させ、必要により加熱して硬化させて被覆層(II)を形成させる方法。
(2)流動状態又は転動状態にある徐放性薬剤粒子(Y)に、ポリオール{ポリエステルポリオール(A)、又はポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(D)及び脂肪族モノオール(E)の混合物}とポリイソシアネート(B)を別の噴霧器から交互に2~5回に分けて噴霧し、徐放性薬剤粒子(Y)表面で混合し、必要により加熱して硬化させて被覆層(II)を形成させる方法。この時、必要により触媒(C)はポリオールに溶解させて使用する。
なお、上記(1)及び(2)において(Y)を流動状態又は転動状態とするには、流動層コーティング装置、転動造粒装置、パン型転動装置及び各種撹拌装置等を好適に使用できる。
必要により加熱する際の加熱温度としては、硬化反応の制御及び被覆層の均一性(被覆率のバラつきを小さくする)の観点から25~80℃が好ましく、40~70℃が更に好ましい。
【0051】
また、本発明における被覆層(II)の平均厚みは、薬剤の徐放性の観点及び徐放性薬剤粒子(Y)からの剥離防止の観点から、1~60μmであることが好ましく、2~40μmであることが更に好ましい。
なお、本発明における被覆層(II)の平均厚み(μm)は、下記の方法で測定することができる。
【0052】
[被覆層(II)の平均厚みの測定方法]
本発明の複合粒子の重心を通るようにカミソリで2分割に切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、任意の1か所の最外層の厚み(μm)を計測する。5つの粒子をランダムに選択し上記のように切断・最外層の厚みを計測し、5つの粒子の最外層の厚みの平均を被覆層(II)の平均厚み(μm)とする。
【0053】
被覆層(II)は発明の効果を阻害しない範囲で、ポリウレタン樹脂(P)以外の添加剤等を含有してもよい。添加剤としては耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、界面活性剤、相溶化剤、着色剤、抗菌・防黴剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、充填剤、導電剤、防腐剤、芳香剤及び防虫剤等が挙げられる。
【0054】
<複合粒子>
本発明の複合粒子は、ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる。
本発明の複合粒子では、徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が、更に、ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で被覆された構造を有するため、徐放性薬剤粒子(Y)の生分解性を維持したまま、耐衝撃性等の機械的強度と薬剤の徐放性コントロール面(特に、一般的な熱可塑性生分解性樹脂では実現不可能であった、溶出速度を緩やかにする方向へのコントロールが可能)の両方を改善することが可能である。ポリウレタン樹脂(P)は、その組成から徐放性薬剤(Y)表面のピンホールや凹凸((Y)製造時の脱溶剤時に生じるピンホールや、多孔性の徐放性制御材料(I)表面の凹凸)にアンカー効果で強力に接着することが可能であるため、(Y)表面から剥離しにくく、また複合粒子表面の凹凸を低減することできる。その結果、得られる複合粒子の薬剤の徐放性コントロール面と耐衝撃性が良好となるものと推察される。
【0055】
本発明の複合粒子において、徐放性薬剤粒子(Y)100重量部に対する、(P)を構成するポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の合計含有量は、薬剤の徐放性及び耐衝撃性の観点から、0.1~50重量%であることが好ましく、0.2~30重量%であることが更に好ましい。
【0056】
複合粒子の製造方法としては、上述の「被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部を被覆する方法」と同じである。
【0057】
本発明の複合粒子は、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立し、かつ機械的強度(耐衝撃性等)にも優れるため、医薬品、農業、食品添加物、化粧品、衛生用品等の分野において徐放性が求められる用途に幅広く用いることができ、極めて有用である。特に農業用薬剤(肥料、農薬及び害生物防除剤等)、防藻剤及び水中生物付着防止剤として好適に使用でき、とりわけ肥料等の農業用薬剤として有用である。
【0058】
本明細書には、以下の事項が開示されている。
【0059】
本開示(1)は、ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子であり、下記(1)~(4)のすべてを満たす複合粒子である。
(1)前記ポリウレタン樹脂(P)が、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を必須構成原料とするポリエステルポリウレタン樹脂である;
(2)前記ポリウレタン樹脂(P)が有するエステル基の合計重量が、1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.03~0.40(g)である;
(3)前記ポリエステルポリオール(A)が、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を(A)の重量に基づいて70重量%以上含有する;
(4)前記徐放性薬剤粒子(Y)が、無機材、天然系材料及び熱可塑性生分解性樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する徐放性制御材料(I)と薬剤(Z)とを含有する徐放性薬剤粒子である。
【0060】
本開示(2)は、前記ポリウレタン樹脂(P)が、アルキレンオキシ基を有しており、アルキレンオキシ基に含まれる酸素原子の合計重量が1gのポリウレタン樹脂(P)あたり0.01~0. 5(g)である、本開示(1)に記載の複合粒子である。
【0061】
本開示(3)は、前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価が8~85mgKOH/gである、本開示(1)又は(2)に記載の複合粒子である。
【実施例0062】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
なお、表1~4中の原料の記号等は次のとおりである。
<ポリエステルポリオール(A)>
(A11-1):プロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量2000、水酸基価55mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例6で得たもの]
(A11-2):ネオペンチルグリコール/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量2000、水酸基価60mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例7で得たもの]
(A11-3):ネオペンチルグリコール/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価30mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例8で得たもの]
(A11-4):ネオペンチルグリコール/コハク酸のポリエステルジオール(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例9で得たもの]
(A11-5):ポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例10で得たもの]
(A11-6):ポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量2000、水酸基価58mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例11で得たもの]
(A11-7):ポリエチレングリコール1000[商品名「PEG-1000」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価33mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例12で得たもの]
(A11-8):ポリエチレングリコール1000[商品名「PEG-1000」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量3000、水酸基価37mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例13で得たもの]
(A11-9):ポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例14で得たもの]
(A11-10):ポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例15で得たもの]
(A11-11):ポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例16で得たもの]
(A11-12):ポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例17で得たもの]
(A11-13):ポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]/マロン酸のポリエステルジオール(数平均分子量4000、水酸基価26mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例18で得たもの]
(A11-14):ポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]/セバシン酸のポリエステルジオール(数平均分子量2000、水酸基価53mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)[製造例19で得たもの]
(A11-15):ヘキサンジオール/セバシン酸のポリエステルジオール(数平均分子量13000、水酸基価9mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g[製造例20で得たもの]
(A11-16):ポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]/アジピン酸のポリエステルジオール(数平均分子量1300、水酸基価85mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g[製造例21で得たもの]
(A12-1):ポリカプロラクトンジオール[商品名「プラクセル205」、ダイセル化学(株)製](数平均分子量530、水酸基価213mgKOH/g、酸価0.08mgKOH/g、融点30-40℃)
【0064】
<ポリイソシアネート(B)>
(B-1):ジフェニルメタンジイソシアネート(NCO基含量:33.6重量%)
(B-2):ポリメリックMDI[商品名「ミリオネート MR-200」、東ソー(株)製、NCO基含量:31.0重量%]
(B-3):ヘキサメチレンジイソシアネート[商品名「HDI 24A-100 ビウレットタイプ」、旭化成(株)製、NCO基含量:23.5重量%]
(B-4):ヘキサメチレンジイソシアネート[商品名「D101」、旭化成(株)製、NCO基含量:19.7重量%]
<触媒(C)>
(C-1):トリエタノールアミン
(C-2):トリエチルアミン
(C-3):ジアザビシクロウンデセン[商品名「DBU」、サンアプロ(株)製]
(C-4):脂肪族アミン系ポリオール[商品名「サンニックスNP300」、三洋化成工業(株)製]
<ポリエーテルポリオール(D)>
(D-1):ポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製、凝固点:6℃]
(D-2):ポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製、凝固点:-31℃]
<脂肪族モノオール(E)>
(E-1):ベヘニルアルコール[東京化成(株)製、融点:70℃]
(E-2):セバシン酸/1,12-ドデカンジオール/1-ドコサノールのポリエステルモノオール(数平均分子量13000、水酸基価85mgKOH/g、酸価<1mgKOH/g)[製造例22で得たもの]
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
[製造例1:徐放性薬剤粒子(Y-1)の製造]
噴流層による流動層コーティング装置に、市販の固体粒状農薬である薬剤(Z-1)[チアメトキサム粒剤、平均粒径1mm、有効成分チアメトキサム0.5%(水への溶解度4.1g/L)]1000gを仕込み、芳香族ポリエステル系生分解性樹脂[商品名「エコフレックス」、BASF社製]65gをテトラクロロエチレン1000部に溶解した溶液を噴霧し、60℃の熱風で乾燥することにより、生分解性樹脂を含有する徐放性制御材料(I)で(Z-1)の表面を被覆してなる徐放性薬剤粒子(Y-1)を得た。
【0072】
[製造例2:徐放性薬剤粒子(Y-2)の製造]
パン型転動装置に、市販の固体粒状肥料である薬剤(Z-2)[固体粒状窒素肥料、重量平均粒子径5.0mm]1000gを仕込み、50℃に温調した。50℃に温調しながら、装置内で浮遊している上記(Z-2)に、150℃で溶融させた溶融硫黄150gをスプレー噴霧した後、冷風をあてて50℃以下まで冷却することにより、無機材を含有する徐放性制御材料(I)で(Z-2)の表面を被覆してなる徐放性薬剤粒子(Y-2)を得た。
【0073】
[製造例3:徐放性薬剤粒子(Y-3)の製造]
多孔質シリカ[商品名「ゴッドボール」、鈴木油脂工業(株)製、平均粒径30μm]100gに、市販の防藻剤である薬剤(Z-3)[商品名「ホクサイドDCMU」、北興産業(株)製、水への溶解度35mg/L]の粉末30gをメチルエチルケトン溶媒に溶かした溶液を含浸させた後に、約60℃で1時間乾燥させることにより、(Z-3)を含有(担持)する多孔質シリカを得た。この(Z-3)含有多孔質シリカに、更に60℃で溶融させたパラフィン5gをスプレーコーティングすることにより、多孔質の無機材である徐放性制御材料(I)の内部に(Z-3)が担持されてなる徐放性薬剤粒子(Y-3)を得た。
【0074】
[製造例4:徐放性薬剤粒子(Y-4)の製造]
多孔質セルロース粒子[商品名「ビスコパール AH-2050L」、レンゴー(株)製、平均粒径2mm]100gを、殺菌剤である薬剤(Z-4)[70℃で溶融混合したパルミチン酸(水への溶解度<1g/L)50gとシンナムアルデヒド(水への溶解度<1g/L)40gの混合物]に徐々に投入してべたつきがなくなる(パルミチン酸とシンナムアルデヒドの全量が多孔質セルロースに担持される)まで撹拌することにより、多孔質の天然系材料である徐放性制御材料(I)の内部に(Z-4)が担持されてなる徐放性薬剤粒子(Y-4)を得た。
[製造例5:徐放性薬剤粒子(Y-5)の製造]
パン型転動装置に、市販の固体粒状肥料である農業用薬剤(N-2)[固体粒状窒素肥料、重量平均粒子径5.0mm]1000gを仕込み、60℃に温調した。60℃に温調しながら、装置内で浮遊している上記(N-2)に、80℃で溶融させたカルバナワックス100gをスプレー噴霧した後、冷風をあてて50℃以下まで冷却することにより、天然ワックスである徐放性制御材料(I)で農業用薬剤(N-2)の表面を被覆してなる徐放性薬剤粒子(Y-5)を得た。
【0075】
[製造例6:ポリエステルポリオール(A11-1)の製造]
SUS製セパラブルフラスコにプロピレングリコール100重量部、アジピン酸175重量部を仕込み、窒素ガスを通じながら撹拌し、常圧下で徐々に昇温し、230℃にて約10時間反応させた。次いで同温度にて徐々に減圧とし、反応混合物の酸価が3mgKOH/g未満になるまで760~40mmHgにて10時間反応させることにより、プロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-1)(分子量2000、水酸基価55mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0076】
[製造例7:ポリエステルポリオール(A11-2)の製造]
プロピレングリコール100重量部をネオペンチルグリコール100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から126重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ネオペンチルグリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-2)(数平均分子量2000、水酸基価60mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0077】
[製造例8:ポリエステルポリオール(A11-3)の製造]
プロピレングリコール100重量部をネオペンチルグリコール100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から133重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ネオペンチルグリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-3)(数平均分子量4000、水酸基価30mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0078】
[製造例9:ポリエステルポリオール(A11-4)の製造]
プロピレングリコール100重量部をネオペンチルグリコール100重量部へ、アジピン酸175重量部をコハク酸106重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ネオペンチルグリコール/コハク酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-4)(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0079】
[製造例10:ポリエステルポリオール(A11-5)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から32重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリエチレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-5)(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0080】
[製造例11:ポリエステルポリオール(A11-6)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から27重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリエチレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-6)(数平均分子量2000、水酸基価58mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0081】
[製造例12:ポリエステルポリオール(A11-7)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリエチレングリコール1000[商品名「PEG-1000」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から11重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリエチレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A-7)(数平均分子量4000、水酸基価33mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0082】
[製造例13:ポリエステルポリオール(A11-8)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリエチレングリコール1000[商品名「PEG-1000」、三洋化成工業(株)製]200重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から19重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリエチレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-8)(数平均分子量3000、水酸基価37mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0083】
[製造例14:ポリエステルポリオール(A11-9)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から32重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-9)(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0084】
[製造例15:ポリエステルポリオール(A11-10)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から30重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-10)(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0085】
[製造例16:ポリエステルポリオール(A11-11)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から11重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-11)(数平均分子量4000、水酸基価32mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0086】
[製造例17:ポリエステルポリオール(A11-12)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]200重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から19重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-12)(数平均分子量3000、水酸基価38mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0087】
[製造例18:ポリエステルポリオール(A11-13)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール1000[商品名「サンニックスPP1000」、三洋化成工業(株)製]200重量部へ、アジピン酸175重量部からマロン酸15.6重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/マロン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-13)(数平均分子量4000、水酸基価26mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0088】
[製造例19:ポリエステルポリオール(A11-14)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリプロピレングリコール400[商品名「サンニックスPP400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸175重量部からセバシン酸38重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリプロピレングリコール/セバシン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-14)(数平均分子量2000、水酸基価53mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0089】
[製造例20:ポリエステルポリオール(A11-15)の製造]
SUS製セパラブルフラスコに1,6-ヘキサンジオール100重量部、セバシン酸170重量部を仕込み、窒素ガスを通じながら撹拌し、常圧下で徐々に昇温し、230℃にて約10時間反応させた。次いで同温度にて徐々に減圧とし、反応混合物の酸価が3mgKOH/g未満になるまで760~40mmHgにて10時間反応させることにより、ヘキサンジオール/セバシン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-15)(分子量13000、水酸基価9mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0090】
[製造例21:ポリエステルポリオール(A11-16)の製造]
プロピレングリコール100重量部をポリエチレングリコール400[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製]100重量部へ、アジピン酸の仕込量を175重量から24重量部へ変更する以外は製造例6と同様にして、ポリエチレングリコール/アジピン酸のポリエステルジオールであるポリオール(A11-16)(数平均分子量1300、水酸基価85mgKOH/g、酸価<3mgKOH/g)を得た。
【0091】
[製造例22:脂肪族モノオールを構成単量体として含むポリエステルモノオール(E-2)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、セバシン酸700部と1,12?ドデカンジオール410部と1-ドコサノール及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.5部を入れ、160℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら6時間反応させた。次いで210℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させ、さらに0.5~3.5kPaの減圧下に反応混合物の酸価が1mgKOH/g未満になるまで反応させて、脂肪族モノオールを構成単量体として含むポリエステルモノオール(E-2)(数平均分子量13000、水酸基価85mgKOH/g、酸価<1mgKOH/g)を得た。
【0092】
[実施例1:複合粒子(X-1)の製造]
速度30rpmで回転しているパン型転動装置に、徐溶性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を仕込み、80℃に温調(加熱)した。ポリエステルポリオール(A11-1)22重量部とポリイソシアネート(B-1)3重量部とをスタティックミキサーで混合したもの(ポリウレタン樹脂形成性組成物(p))を80℃に温調(加熱)しながら、装置内で回転している上記(Y-1)に噴霧した後、さらに2時間硬化させることにより、ポリウレタン樹脂(P-1)を含有する被覆層(II)で(Y-1)の表面が被覆されてなる複合粒子(X-1)を得た。
【0093】
[実施例2~71、73~81:複合粒子(X-2)~(X-71)、(X-73)~(X-81)の製造]
表1~表5に示した配合組成(重量部)に従って各徐放性薬剤粒子(Y)と、各ポリオール{ポリエステルポリオール(A)、必要によりポリエーテルポリオール(D)及び必要により脂肪族モノオール(E)}、各ポリイソシアネート(B)、及び必要により各触媒(C)を混合したものとを用いる以外は実施例1と同様にして、各ポリウレタン樹脂(P)を含有する被覆層(II)で各徐放性薬剤粒子(Y)の表面の少なくとも一部が被覆されてなる複合粒子(X-2)~(X-71)、(X-73)~(X-81)を得た。なお、ポリエーテルポリオール(D)を原料に含む場合、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(D)とをスタティックミキサーで10分混合した後、他の各成分と混合した。また、触媒(C)を原料に含む場合、ポリオールと触媒(C)とをスタティックミキサーで10分混合した後、ポリイソシアネート(B)と混合した。
【0094】
[実施例72:複合粒子(X-72)の製造]
表4に示した配合組成(重量部)に従って徐放性薬剤粒子(Y-4)と、ポリエステルポリオール(A11-14)、ポリイソシアネート(B-4)及び触媒(C-1)を混合したものとを用い、各温調(加熱)温度を80℃から100℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(P-72)を含有する被覆層(II-72)で徐放性薬剤粒子(Y-4)の表面が被覆されてなる複合粒子(X-72)を得た。
なお、(C-1)は、あらかじめ(A11-14)とスタティックミキサーで10分混合してから、(B-4)と混合した。
実施例59は、ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)の配合組成は実施例58のものと同じで、温調温度(すなわち、被覆及び硬化時の加熱温度)のみ変更した実施例である。
【0095】
[比較例1~4]
上記製造例で得られた徐放性薬剤粒子(Y-1)~(Y-4)をそのまま用いて、それぞれ比較の粒子(比X-1)~(比X-4)とした。
【0096】
[比較例5:比較の複合粒子(比X-5)の製造]
噴流層による流動層コーティング装置に、徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を仕込み、60℃に温調した。低密度ポリエチレン[商品名「UBEポリエチレンR300」、宇部丸善(株)製(密度0.92、MFR0.35g)]をテトラクロロエチレンに溶解した溶液を、装置内で浮遊している被覆粒子(Y-1)に、スプレー噴霧した後、熱風に噴流させて60℃に温調させ脱溶剤を行うことにより、低密度ポリエチレンからなる被覆層(比II-5)で(Y-1)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-5)を得た。
【0097】
[比較例6:比較の複合粒子(比X-6)の製造]
徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を徐放性薬剤粒子(Y-2)徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部へ、ポリエステルポリオール(A11-1)22重量部とポリイソシアネート(B-1)3重量部とをそれぞれポリプロピレングリコール(A’-1)[サンニックスPP600 三洋化成工業(株)製]10.5重量部とポリイソシアネート(B-1)4.5重量部へ変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(比P-6)を含有する被覆層(比II-6)で(Y-2)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-6)を得た。
【0098】
[比較例7:比較の複合粒子(比X-7)の製造]
徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を徐放性薬剤粒子(Y-3)1000重量部へ変更する以外は比較例5と同様にして、低密度ポリエチレンからなる被覆層(比II-7)で(Y-3)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-7)を得た。
【0099】
[比較例8:比較の複合粒子(比X-8)の製造]
徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を徐放性薬剤粒子(Y-4)1000重量部へ、ポリエステルポリオール(A11-1)22重量部とポリイソシアネート(B-1)3重量部とをそれぞれポリプロピレングリコール(A’-1)43重量部及びポリイソシアネート(B-1)17重量部へ変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較のポリウレタン樹脂(比P-8)を含有する被覆層(比II-8)で(Y-4)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-8)を得た。
【0100】
[比較例9:比較の複合粒子(比X-9)の製造]
徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を徐放性薬剤粒子(Y-2)1000重量部へ、ポリエステルポリオール(A11-1)22重量部とポリイソシアネート(B-1)3重量部とをそれぞれポリカプロラクトンジオール(A12-1)[プラクセル205 ダイセル化学(株)製]2.85重量部及びポリイソシアネート(B-2)1.15重量部へ変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(比P-9)を含有する被覆層(比II-9)で(Y-2)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-9)を得た。
【0101】
[比較例10:比較の複合粒子(比X-10)の製造]
徐放性薬剤粒子(Y-1)1000重量部を徐放性薬剤粒子(Y-2)1000重量部へ、ポリエステルポリオール(A11-1)22重量部とポリイソシアネート(B-1)3重量部とをそれぞれポリカプロラクトンジオール(A12-1)[プラクセル205 ダイセル化学(株)製]2.85重量部及びポリイソシアネート(B-2)1.15重量部へ変更し、各温調(加熱)温度を40℃から70℃に変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂(比P-10)を含有する被覆層(比II-10)で(Y-2)の表面が被覆されてなる比較の複合粒子(比X-10)を得た。
比較例10は、ポリウレタン樹脂形成性組成物(p)の配合組成は比較例9のものと同じで、温調温度(すなわち、被覆及び硬化時の加熱温度)のみ変更した実施例である。
【0102】
実施例1~80で得られた各複合粒子(X)及び比較例1~10で得られた比較の粒子(比X)について、「{ポリエステルポリオール(A)中のOH基のモル数}/{(B)中のNCO基のモル数}」と「徐放性薬剤粒子(Y)100重量部に対する被覆層(II)中に含まれる(A)と(B)の合計含有量(重量%)」を各表(表1~6)に示した。また、上述の方法で測定した「被覆層(II)の平均厚み(μm)」を示した。更に、「被覆層の生分解性」、「薬剤の徐放性」、「耐衝撃性(散布時及び低温保管後)」を下記方法で評価した結果を示した。更に、徐放性薬剤粒子(Y-1)、(Y-2)、(Y-4)又は(Y-5)を用いた実施例及び比較例については、「被覆性(被覆率分布)」を下記方法で評価した結果を示した。
【0103】
(1)被覆層の生分解性
各実施例及び比較例6、8、9及び10の各ポリオール{(A)及び必要により(D)又は(E)}、(B)、及び必要により(C)を混合したもの(ポリウレタン樹脂形成性組成物(p))を40℃で2時間硬化させ、フィルム状の硬化物(厚さ5mm以下)を得た。硬化物15mm×15mm×上記フィルム状の硬化物の厚さにせん断したのち、JIS K6954に準じて、崩壊度を測定した。比較例5と比較例7で被覆層(比II)として用いた低密度ポリエチレンも同様にフィルム状に成型、せん断したものを試料として、試験を行った。60℃、90日後の崩壊度を測定・計算し、下記基準で評価した。なお、比較例1~4の粒子は被覆層(比II)を有さないため、本試験は実施しなかった。
<評価基準>
☆:80%以上
◎:60%以上80%未満
〇:40%以上60%未満
△:10%以上40%未満
×:10%未満
【0104】
(2)薬剤の徐放性
各複合粒子(X)50gとイオン交換水100gを密閉できるガラス製広口サンプル瓶容器に入れ、25℃の恒温槽内で保管し、一定期間ごとに、内容物を撹拌してから1g程度サンプリングし、サンプリング液中に含まれる薬剤(Z)を液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)で定量した。
<測定条件>
装置:LCMS-8030((株)島津製作所製)
カラム:InertSustain C18(シリカゲル粒子径2μm、内径2.1mm、長さ100mm)
カラム温度:40℃
移動相A:10mM酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=80/20
移動相B:メタノール
流量:0.2ml/min
<評価方法>
<1>初期溶出率(%):25℃の恒温槽内で5日保管後の溶出率
下記式により初期溶出率(%)を求め、下記基準で評価した。
初期溶出率(%)={25℃の恒温槽内で5日保管後のサンプリング液中の薬剤(Z)の重量分率/複合粒子(X)中に含まれる薬剤(Z)が全量溶出した場合のサンプリング液中の重量分率}×100
[評価基準]
◎:5%以下
〇:5%超20%以下
△:20%超50%以下
×:50%超
<2>80%溶出日数(日):試験前の複合粒子(X)中に含まれる薬剤(Z)の80重量%がサンプリング液に溶出するまでの日数を、下記基準で評価した。
[評価基準]
◎:30日以上120日未満
〇:20日以上29日以下
△:10日以上19日以下
×:9日以下又は120日以上
【0105】
(3)耐衝撃性(散布時)
各複合粒子(X)500gを肩掛け式電動散粒機(商品名「ブロキャスJr」、向井工業(株)製)を用いて地上100cmの高さからコンクリート地面上に散布した。散布された該(X)50gをサンプルとして、上記(2)<1>と同様に初期溶出率(%)を測定、算出した。コンクリート地面上への散布時の衝撃により複合粒子の最外層である被覆層(II)にひび割れや欠け等が生じた場合、初期溶出率は(2)<1>よりも大きくなるため、散布前後の初期溶出率の差ΔAを下記式により求め、下記基準で耐衝撃性を評価した。なお、比較例1~4の粒子は被覆層(比II)を有さないため、本試験は実施しなかった。
ΔA(%)={散布後の(X)の初期溶出率(%)}-{散布前(上記(2)<1>)の(X)の初期溶出率(%)}
[評価基準]
◎:0~5%以下
○:5%超10%以下
△:10%超20%以下
×:20%超
【0106】
(4)耐衝撃性(低温保管試験後)
貯蔵庫等で低温保管される場合の保管温度と保管時の取り扱い時に受ける衝撃(積み上げ等)を想定した落袋試験を下記手順で行い、落袋試験後の初期溶出率を測定して試験前の初期溶出率と比較することにより、低温保管試験後(低温保管及び落袋試験後)の耐衝撃性を評価した。
-18℃±3℃で24時間冷却した複合粒子(X)50gを1Lポリエチレン製袋にに入れ、粒子がほぼ1層になる程度に広げた後、重り用の複合粒子(X)10kgを封入した20Lポリエチレン製袋の下面に貼り付けたものを試験袋とした。試験袋を、1Lポリエチレン製袋を貼り付けた側を下面にした状態で2mの高さから垂直に10回落下させた。落袋試験後の1Lポリエチレン製袋内の(X)50gをサンプルとして、上記(2)<1>と同様に初期溶出率(%)を測定、算出した。低温保管試験で受けた衝撃により複合粒子の最外層である被覆層(II)にひび割れや欠け等が生じた場合、初期溶出率は(2)<1>よりも大きくなるため、低温保管試験前後の初期溶出率の差ΔAを下記式により求め、下記基準で耐衝撃性を評価した。なお、比較例1~4の粒子は被覆層(比II)を有さないため、本試験は実施しなかった。
ΔA(%)={低温保管試験後の(X)の初期溶出率(%)}-{低温保管試験前(上記(2)<1>)の(X)の初期溶出率(%)}
[評価基準]
◎:0~5%以下
○:5%超10%以下
△:10%超20%以下
×:20%超
【0107】
(5)被覆性(被覆率分布)(徐放性薬剤粒子(Y-1)、(Y-2)、(Y-4)又は(Y-5)を用いた実施例及び比較例のみ)
各複合粒子について、ランダムに10粒を選定し、それぞれの重量を測定した。1粒に11番ミシン針で5か所穴をあけた後、200mlのイオン交換水を入れたビーカーに入れ24時間静置した。静置後、ビーカー内の固形物をろ過回収し、イオン交換水で水洗後、順風乾燥機で110℃×90分間乾燥させることにより、薬剤が流出した空の被膜を得た。この空の被膜の重量を測定し、下記式により該粒子の被覆率{内包していた薬剤(Z)の重量に対する徐放性制御材料(I)と被覆層(II)の合計重量割合}(%)を算出した。
残りの9粒についても同様にして被覆率を算出し、10粒の被覆率からヒストグラムを作成して、標準偏差(σ)を求めた。この標準偏差(σ)が0に近いほど被覆率の分布がシャープ(被覆率のバラつきが小さい)であり、最外層である被覆層(II)による被覆のバラつきも小さい(被膜欠損や膜厚のバラつきが少ない)といえる。下記基準で被覆性を評価した。
なお、比較例1~4の粒子は被覆層(比II)を有さないため、本試験は実施しなかった。徐放性薬剤粒子(Y-3)を用いた実施例及び比較例の複合粒子は、(Y-3)及び複合粒子の粒子径が小さく本試験を行うことが困難であるため、実施しなかった。
被覆率(%)=[空の被膜の重量(g)/{試験前の複合粒子の重量(g)-空の被膜の重量(g)}]×100
[評価基準]
〇:0~1%以下
△:1%超2%以下
×:2%超
【0108】
表1~6の結果から、本発明の複合粒子は、比較のものに比べて、被覆層の生分解性、薬剤の徐放性コントロール、耐衝撃性に優れることが分かる。更に、徐放性薬剤粒子(Y-1)、(Y-2)、(Y-4)又は(Y-5)を用いた実施例の複合粒子は、被覆性にも優れることが分かる。
一方、被覆層を有さない比較例1~4の粒子は薬剤の徐放性のコントロールが不十分であり、被覆層が脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸との縮重合体(A11)を用いたポリウレタン樹脂を含んでいない比較例5~8の複合粒子は、薬剤の徐放性には優れるものの被覆層の生分解性が悪かった。ポリエステルポリオール(A)としてラクトンポリエステルポリオール(A12)を用いたポリウレタン樹脂からなる被覆層を有する比較例9は、複合粒子の低温保管試験後の耐衝撃性が悪かった。これは、ラクトンポリエステルポリオール(A12)を含むポリウレタン樹脂形成性組成物の粘度が高く、徐放性薬剤粒子(Y)の表面に均一に被覆できなかったからだと想定される。また、複合粒子製造時の温調(加熱)温度(すなわち、被覆時及び硬化時の加熱温度)を40℃から70℃に変更する以外は比較例9と同様に行った比較例10は、低温保管試験後の複合粒子の耐衝撃性は改善されたので、温調温度を上げたことで被覆の均一性は改善されたものと思われるが、被覆率分布は改善されなかった。
本発明の複合粒子は、被覆層の生分解性と薬剤の徐放性のコントロールを高いレベルで両立し、かつ機械的強度(耐衝撃性等)と被覆性にも優れるため、医薬品、農業、食品添加物、化粧品、衛生用品等の分野において徐放性が求められる用途に幅広く用いることができ、有用である。特に農業用薬剤(肥料、農薬及び害生物防除剤等)、防藻剤及び水中生物付着防止剤として好適に使用でき、とりわけ肥料等の農業用薬剤として有用である。