(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006701
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びマット
(51)【国際特許分類】
A47G 27/00 20060101AFI20240110BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240110BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A47G27/00 Z
C08L23/16
C08K3/34
C08J3/24 Z CES
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107833
(22)【出願日】2022-07-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】522268627
【氏名又は名称】株式会社小野ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬三
【テーマコード(参考)】
3B120
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
3B120AB20
3B120BA02
3B120BA28
3B120DB10
3B120EB17
4F070AA16
4F070AB10
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC14
4F070AC16
4F070AC22
4F070AC23
4F070AC24
4F070AE01
4F070AE04
4F070AE08
4F070GA05
4F070GA06
4F070GC02
4J002BB151
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ047
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材を得ることができる消毒液用ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ゴム成分と添加剤とからなり、前記ゴム成分が、エチレンプロピレンジエンゴムであり、前記添加剤が、シリカ及び/又はタルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない、ことを特徴とする、消毒液用ゴム組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と添加剤とからなり、
前記ゴム成分が、エチレンプロピレンジエンゴムであり、
前記添加剤が、シリカ及び/又はタルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない、
ことを特徴とする、消毒液用ゴム組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、更に、顔料を含んでいる、
請求項1記載の消毒液用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100重量部に対して、前記添加剤30~70重量部が配合されている、
請求項1又は2に記載の消毒液用ゴム組成物。
【請求項4】
マット原反の裏面に、加硫ゴムからなるマット基材が接合されてなる、マットであって、
前記加硫ゴムが、請求項1記載の消毒液用ゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とする消毒液用マット。
【請求項5】
加硫ゴムからなるマット基材のみからなるマットであって、
前記加硫ゴムが、請求項1記載の消毒液用ゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とする消毒液用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材を得ることができる消毒液用ゴム組成物、及び、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できる消毒液用マット、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マットのマット基材を得るのに用いられるゴム組成物の、ゴム成分としては、エチレンプロピレンジエンゴムすなわちEPDMが、耐オゾン性、耐熱性、耐候性に優れている故に、多用されるようになっている。ところで、ゴム組成物は、ゴム成分の他に種々の添加剤を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EPDMを含むゴム組成物を用いて構成された従来のマットを、次亜塩素酸を含む消毒液の噴出器の下方に、落下して来る消毒液を受けるように配置して、「消毒液用マット」として使用すると、マットの耐久性が著しく低下する、という問題があった。
【0005】
本発明は、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材を得ることができる消毒液用ゴム組成物、及び、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できる消毒液用マット、を得ることを、目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、マットの耐久性が著しく低下する原因について鋭意研究して、次の知見を得た。
(1)消毒液に含まれている次亜塩素酸の塩素成分が耐久性の低下に大きく影響している。
(2)ゴム組成物に含まれている添加剤の内の炭酸カルシウム及び酸化亜鉛が、消毒液中の次亜塩素酸と化学反応して、塩化カルシウム及び塩化亜鉛となる。この事象が、マットの劣化を生じさせている。
【0007】
本発明者は、上記知見に基づいて、以下の発明を成した。
【0008】
本発明の第1態様は、
ゴム成分と添加剤とからなり、
前記ゴム成分が、エチレンプロピレンジエンゴムであり、
前記添加剤が、シリカ及び/又はタルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない、
ことを特徴とする、消毒液用ゴム組成物である。
【0009】
本発明の第2態様は、
マット原反の裏面に、加硫ゴムからなるマット基材が接合されてなる、マットであって、
前記加硫ゴムが、上記第1態様の消毒液用ゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とする消毒液用マットである。
【0010】
本発明の第3態様は、
加硫ゴムからなるマット基材のみからなるマットであって、
前記加硫ゴムが、上記第1態様の消毒液用ゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とする消毒液用マットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様の消毒液用ゴム組成物においては、加硫して得られたマット基材が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいないので、マット基材中で次亜塩素酸と炭酸カルシウム及び酸化亜鉛とが化学反応することはない。よって、本発明の第1態様の消毒液用ゴム組成物によれば、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるマット基材ひいてはマットを得ることができる。
【0012】
本発明の第2及び第3態様の消毒液用マットによれば、上記第1態様のゴム組成物を加硫して得られたマット基材を有しているので、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮でき、よって、「消毒液用マット」として有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の消毒液用マットを示す縦断面部分図である。
【
図2】
図1のマットの製造過程を示す縦断面部分図である。
【
図3】比較例及び実施例の加硫ゴムについての浸漬劣化試験の結果の近似曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の消毒液用マットを示す縦断面部分図である。このマット10は、パイル11が基布12にタフトされてなるマット原反1と、マット原反1の裏面13に接合されたマット基材2と、からなっている。
【0015】
マット10は、次のようにして製作される。まず、
図2に示されるように、マット原反1の裏面13に、板状のゴム組成物20を当てる。そして、マット原反1とゴム組成物20とを上下から加圧し且つ加熱する。これにより、板状のゴム組成物20が、加硫されて加硫ゴムからなるマット基材2となるとともに、マット原反1の裏面13に接合される。よって、マット10が得られる。
【0016】
そして、本発明において、ゴム組成物20は、ゴム成分と添加剤とからなっている。ゴム成分は、エチレンプロピレンジエンゴムすなわちEPDMである。添加剤は、シリカと、タルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない。なお、添加剤は、シリカ及びタルクの一方を含まなくてもよい。また、添加剤は、好ましくは、更に、顔料を含んでいる。加硫剤としては、パーオキサイド系加硫剤が好ましい。顔料としては、黒色が好ましい。ゴム組成物20は、加硫剤を含んでいるので、加熱されることにより加硫反応を起こして加硫ゴムに変性する。
【0017】
ゴム組成物20では、ゴム成分100重量部に対して、添加剤30~70重量部が配合されている。添加剤が70重量部を超えると、ゴム組成物20の練り加工工程において添加剤を均一に分散させるのが困難であり、仮に時間をかけて添加剤を均一に分散できたとしても、練り加工後のゴム組成物20の生地がパサパサになるため、その後の圧延加工が不可能になる恐れがある。一方、添加剤が30重量部未満であると、ゴム組成物20の練り加工による添加剤の分散性は向上するが、ゴム成分の比率が高くなるため、ゴム組成物20を均一に圧延することが不可能になる恐れがある。
【0018】
上記構成のゴム組成物20においては、加硫して得られたマット基材2が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいないので、次亜塩素酸を含む消毒液がマット基材2に接触したとしても、マット基材2中で次亜塩素酸と炭酸カルシウム及び酸化亜鉛とが化学反応して塩化カルシウム及び塩化亜鉛が生じるということはない。よって、上記構成のゴム組成物20によれば、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるマット基材2ひいてはマットを得ることができる。
【0019】
そして、上記構成の消毒液用マット10は、上記構成のゴム組成物20を加硫して得られたマット基材2を有しているので、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮でき、よって、「消毒液用マット」として有効に使用できる。
【0020】
[比較例1及び実施例1-3]
(ゴム組成物)
表1に示される成分及び配合からなる、比較例1及び実施例1-3のゴム組成物を、用意した。なお、比較例1は、現行のゴム組成物である。
【0021】
【0022】
(加硫ゴム)
比較例1及び実施例1-3のゴム組成物を、加硫して、加硫ゴムを得た。
【0023】
(基本物性の測定)
比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについて、「硬度」、「引張強さ」、及び「伸び」という3種の基本物性を測定した。測定方法は、JIS-K-6250(ゴム-物理試験方法通則)付属書1及び付属書2に基づいている。その結果を表2に示す。
【0024】
【0025】
(浸漬劣化試験)
比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについて、浸漬劣化試験を実施した。具体的には、加硫ゴムを、40℃のギヤーオーブン内で濃度500ppmの次亜塩素酸水(株式会社こもれび製「非電解型次亜塩素酸水ZIA500」)に浸漬し、所定時間後毎に、上記の基本物性を測定した。「所定時間後」は、24時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後とした。試験方法及び測定方法は、JIS-K-6250(ゴム-物理試験方法通則)付属書1及び付属書2に基づいている。
【0026】
表3は、浸漬劣化試験の結果を示している。表3において、「引張強さ」及び「伸び」に関しては、所定時間後毎の変化率を示している。
【0027】
【0028】
(劣化日数の予測)
表3の結果をプロットして近似曲線を作成し、比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについての劣化日数を予測した。ここでは、「劣化日数」として、ゴム劣化の目安となる「引張強さ変化率が30%低下する」までの日数を、採用した。
図3は、近似曲線を示している。表4は、劣化日数を示している。表4において、常温(23℃)での劣化日数はアレニウスの方程式により算出した。また、表4の「現行比」は、劣化日数に関しての、比較例1に対する実施例1-3の比である。
【0029】
なお、上記近似曲線は、数式で表すと次のとおりである。ここで、yはΔTB変化率であり、xは劣化日数であり、R2はバラツキを表している。
比較例1…y=-0.0405x-2.2787 R2=0.964
実施例1…y=-0.0067x+1.2944 R2=0.7829
実施例2…y=-0.0191x+0.3539 R2=0.9498
実施例3…y=-0.0151x+0.3094 R2=0.9278
【0030】
【表4】
(結論)
表4からわかるように、実施例1-3の加硫ゴムは、いずれも、比較例1の加硫ゴムに比して、劣化日数が長い。特に、実施例1の加硫ゴムは、比較例1の加硫ゴムに比して、劣化日数が約5.9倍長い。よって、実施例1-3のゴム組成物を用いて得られたマットは、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できる。
【0031】
[変形例]
上記実施形態の消毒液用マット10は、マット原反1とマット基材2とからなっているが、本発明の消毒液用マットは、マット基材のみからなるマットも、含んでいる。このマット基材は、上記実施形態のマット基材2と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の消毒液用マットは、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0033】
1 マット原反
2 マット基材
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材のためのゴム組成物であって、
ゴム成分と添加剤とからなり、
前記ゴム成分が、エチレンプロピレンジエンゴムであり、
前記添加剤が、シリカ及び/又はタルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない、
ことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、更に、顔料を含んでいる、
請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100重量部に対して、前記添加剤30~70重量部が配合されている、
請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマットであって、
マット原反の裏面に、加硫ゴムからなるマット基材が接合されてなる、マットであって、
前記加硫ゴムが、請求項1記載のゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とするマット。
【請求項5】
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマットであって、
加硫ゴムからなるマット基材のみからなるマットであって、
前記加硫ゴムが、請求項1記載のゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とするマット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材を得ることができるゴム組成物、及び、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マットのマット基材を得るのに用いられるゴム組成物の、ゴム成分としては、エチレンプロピレンジエンゴムすなわちEPDMが、耐オゾン性、耐熱性、耐候性に優れている故に、多用されるようになっている。ところで、ゴム組成物は、ゴム成分の他に種々の添加剤を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EPDMを含むゴム組成物を用いて構成された従来のマットを、次亜塩素酸を含む消毒液の噴出器の下方に、落下して来る消毒液を受けるように配置して使用すると、マットの耐久性が著しく低下する、という問題があった。
【0005】
本発明は、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材を得ることができるゴム組成物、及び、次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット、を得ることを、目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、マットの耐久性が著しく低下する原因について鋭意研究して、次の知見を得た。
(1)消毒液に含まれている次亜塩素酸の塩素成分が耐久性の低下に大きく影響している。
(2)ゴム組成物に含まれている添加剤の内の炭酸カルシウム及び酸化亜鉛が、消毒液中の次亜塩素酸と化学反応して、塩化カルシウム及び塩化亜鉛となる。この事象が、マットの劣化を生じさせている。
【0007】
本発明者は、上記知見に基づいて、以下の発明を成した。
【0008】
本発明の第1態様は、
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマット基材のためのゴム組成物であって、
ゴム成分と添加剤とからなり、
前記ゴム成分が、エチレンプロピレンジエンゴムであり、
前記添加剤が、シリカ及び/又はタルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない、
ことを特徴とする、ゴム組成物である。
【0009】
本発明の第2態様は、
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマットであって、
マット原反の裏面に、加硫ゴムからなるマット基材が接合されてなる、マットであって、
前記加硫ゴムが、上記第1態様のゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とするマットである。
【0010】
本発明の第3態様は、
次亜塩素酸を含む消毒液に対して耐久性を発揮できるマットであって、
加硫ゴムからなるマット基材のみからなるマットであって、
前記加硫ゴムが、上記第1態様のゴム組成物を加硫して得られたものである、
ことを特徴とするマットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様のゴム組成物においては、加硫して得られたマット基材が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいないので、マット基材中で次亜塩素酸と炭酸カルシウム及び酸化亜鉛とが化学反応することはない。よって、本発明の第1態様のゴム組成物によれば、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるマット基材ひいてはマットを得ることができる。
【0012】
本発明の第2及び第3態様のマットによれば、上記第1態様のゴム組成物を加硫して得られたマット基材を有しているので、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態
のマットを示す縦断面部分図である。
【
図2】
図1のマットの製造過程を示す縦断面部分図である。
【
図3】比較例及び実施例の加硫ゴムについての浸漬劣化試験の結果の近似曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態
のマットを示す縦断面部分図である。このマット10は、パイル11が基布12にタフトされてなるマット原反1と、マット原反1の裏面13に接合されたマット基材2と、からなっている。
【0015】
マット10は、次のようにして製作される。まず、
図2に示されるように、マット原反1の裏面13に、板状のゴム組成物20を当てる。そして、マット原反1とゴム組成物20とを上下から加圧し且つ加熱する。これにより、板状のゴム組成物20が、加硫されて加硫ゴムからなるマット基材2となるとともに、マット原反1の裏面13に接合される。よって、マット10が得られる。
【0016】
そして、本発明において、ゴム組成物20は、ゴム成分と添加剤とからなっている。ゴム成分は、エチレンプロピレンジエンゴムすなわちEPDMである。添加剤は、シリカと、タルクと、加硫剤と、を含んでおり、且つ、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいない。なお、添加剤は、シリカ及びタルクの一方を含まなくてもよい。また、添加剤は、好ましくは、更に、顔料を含んでいる。加硫剤としては、パーオキサイド系加硫剤が好ましい。顔料としては、黒色が好ましい。ゴム組成物20は、加硫剤を含んでいるので、加熱されることにより加硫反応を起こして加硫ゴムに変性する。
【0017】
ゴム組成物20では、ゴム成分100重量部に対して、添加剤30~70重量部が配合されている。添加剤が70重量部を超えると、ゴム組成物20の練り加工工程において添加剤を均一に分散させるのが困難であり、仮に時間をかけて添加剤を均一に分散できたとしても、練り加工後のゴム組成物20の生地がパサパサになるため、その後の圧延加工が不可能になる恐れがある。一方、添加剤が30重量部未満であると、ゴム組成物20の練り加工による添加剤の分散性は向上するが、ゴム成分の比率が高くなるため、ゴム組成物20を均一に圧延することが不可能になる恐れがある。
【0018】
上記構成のゴム組成物20においては、加硫して得られたマット基材2が炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を含んでいないので、次亜塩素酸を含む消毒液がマット基材2に接触したとしても、マット基材2中で次亜塩素酸と炭酸カルシウム及び酸化亜鉛とが化学反応して塩化カルシウム及び塩化亜鉛が生じるということはない。よって、上記構成のゴム組成物20によれば、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるマット基材2ひいてはマットを得ることができる。
【0019】
そして、上記構成のマット10は、上記構成のゴム組成物20を加硫して得られたマット基材2を有しているので、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できる。
【0020】
[比較例1及び実施例1-3]
(ゴム組成物)
表1に示される成分及び配合からなる、比較例1及び実施例1-3のゴム組成物を、用意した。なお、比較例1は、現行のゴム組成物である。
【0021】
【0022】
(加硫ゴム)
比較例1及び実施例1-3のゴム組成物を、加硫して、加硫ゴムを得た。
【0023】
(基本物性の測定)
比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについて、「硬度」、「引張強さ」、及び「伸び」という3種の基本物性を測定した。測定方法は、JIS-K-6250(ゴム-物理試験方法通則)付属書1及び付属書2に基づいている。その結果を表2に示す。
【0024】
【0025】
(浸漬劣化試験)
比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについて、浸漬劣化試験を実施した。具体的には、加硫ゴムを、40℃のギヤーオーブン内で濃度500ppmの次亜塩素酸水(株式会社こもれび製「非電解型次亜塩素酸水ZIA500」)に浸漬し、所定時間後毎に、上記の基本物性を測定した。「所定時間後」は、24時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後とした。試験方法及び測定方法は、JIS-K-6250(ゴム-物理試験方法通則)付属書1及び付属書2に基づいている。
【0026】
表3は、浸漬劣化試験の結果を示している。表3において、「引張強さ」及び「伸び」に関しては、所定時間後毎の変化率を示している。
【0027】
【0028】
(劣化日数の予測)
表3の結果をプロットして近似曲線を作成し、比較例1及び実施例1-3の加硫ゴムについての劣化日数を予測した。ここでは、「劣化日数」として、ゴム劣化の目安となる「引張強さ変化率が30%低下する」までの日数を、採用した。
図3は、近似曲線を示している。表4は、劣化日数を示している。表4において、常温(23℃)での劣化日数はアレニウスの方程式により算出した。また、表4の「現行比」は、劣化日数に関しての、比較例1に対する実施例1-3の比である。
【0029】
なお、上記近似曲線は、数式で表すと次のとおりである。ここで、yはΔTB変化率であり、xは劣化日数であり、R2はバラツキを表している。
比較例1…y=-0.0405x-2.2787 R2=0.964
実施例1…y=-0.0067x+1.2944 R2=0.7829
実施例2…y=-0.0191x+0.3539 R2=0.9498
実施例3…y=-0.0151x+0.3094 R2=0.9278
【0030】
【表4】
(結論)
表4からわかるように、実施例1-3の加硫ゴムは、いずれも、比較例1の加硫ゴムに比して、劣化日数が長い。特に、実施例1の加硫ゴムは、比較例1の加硫ゴムに比して、劣化日数が約5.9倍長い。よって、実施例1-3のゴム組成物を用いて得られたマットは、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できる。
【0031】
[変形例]
上記実施形態のマット10は、マット原反1とマット基材2とからなっているが、本発明のマットは、マット基材のみからなるマットも、含んでいる。このマット基材は、上記実施形態のマット基材2と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のマットは、次亜塩素酸を含む消毒液に対して優れた耐久性を発揮できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0033】
1 マット原反
2 マット基材