(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067014
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240509BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187439
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022176315
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511027622
【氏名又は名称】ランテクニカルサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 好家
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA33
5F131BA00
5F131CA09
5F131CA32
5F131DA02
5F131DA14
5F131DA22
5F131DA23
5F131EC32
5F131EC43
5F131EC52
5F131EC62
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】基板と該基板を搬送する為の搬送用基板との接合体を容易に剥離することが可能な剥離方法を提供すること。
【解決手段】前記基板1と前記搬送用基板3の接合体5を冷却すること、前記基板1、前記搬送用基板3、のいずれかの表面またはその双方の表面から、前記基板1と前記搬送用基板3の厚み方向、及び接合層7へ向けて超音波振動Uを印加すること、を含み、前記接合体の接合は、前記基板と前記搬送用基板のいずれか一方または双方の接合面に200nm以下の波長を含む第1の紫外線を照射する表面処理を施されて接合されているものを含んでよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と搬送用基板との接合体を剥離する剥離方法であって、
前記基板と前記搬送用基板の接合体を冷却すること、
前記基板、前記搬送用基板、のいずれかの表面またはその双方の表面から、前記基板と前記搬送用基板の厚み方向、及び接合層へ向けて超音波振動を印加すること、を含む剥離方法。
【請求項2】
前記超音波振動を印加することの前に、前記基板と前記搬送用基板との接合層に水を介在させること、を含む請求項1に記載の剥離方法。
【請求項3】
前記冷却することの前に、前記基板と前記搬送用基板との接合層に水を介在させること、を含む請求項1に記載の剥離方法。
【請求項4】
前記超音波振動を印加することは、液体を介在させて行うこと、を含む請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項5】
前記液体は、水またはアルコール類またはこれらの混合物である、請求項4に記載の剥離方法。
【請求項6】
前記液体は、加温されていること、を含む請求項4に記載の剥離方法。
【請求項7】
前記超音波振動を印加することは、中が中空である金属ケースを前記搬送用基板に接触させ、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、を含む請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項8】
前記液体は、加温されていること、を含む請求項7に記載の剥離方法。
【請求項9】
前記超音波振動を印加することは、一方が開口する金属ケースを、開口する側を前記搬送用基板側に向けて接触させ、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、を含む請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項10】
前記液体は、加温されていること、を含む請求項9に記載の剥離方法。
【請求項11】
前記超音波振動を印加することは、一方が開口する金属ケースを、開口する側を前記搬送用基板側に向け、その開口端を接合材で固定し、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、
前記液体を排出し、前記金属ケースを前記搬送用基板と共に前記基板から離間し搬送すること、を含む請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項12】
前記液体は、加温されていること、を含む請求項11に記載の剥離方法。
【請求項13】
前記基板は、単体又は回路を有する、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項14】
前記接合体の接合は、無機膜を介在させて接合されている、請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項15】
前記接合体の接合は、前記基板と前記搬送用基板のいずれか一方または双方の接合面にエネルギーを与える表面処理を施されて接合されている、請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項16】
前記接合体の接合は、前記基板と前記搬送用基板のいずれか一方または双方の接合面に200nm以下の波長を含む第1の紫外線を照射する表面処理を施されて接合されている、請求項1または2に記載の剥離方法。
【請求項17】
前記接合体の接合は、接合面にSiの薄膜をスパッタ法により0.1nmから30nmの厚さに形成し、その後第2の紫外線を照射する、請求項16に記載の剥離方法。
【請求項18】
前記接合体の接合は、接合面にSiの薄膜をスパッタ法により0.1nmから30nmの厚さに形成し、前記薄膜の表面をイオンビームにて活性化し、その後第2の紫外線を照射する、請求項16に記載の剥離方法。
【請求項19】
前記接合体の接合は、前記基板にパターンが構成され、選択的に凸部のみを接合する、請求項16に記載の剥離方法。
【請求項20】
前記液体は、純水である、請求項4に記載の剥離方法。
【請求項21】
前記純水に酸素を混入する、請求項20に記載の剥離方法。
【請求項22】
前記純水に窒素を混入する、請求項20に記載の剥離方法。
【請求項23】
前記純水にオゾンを混入する、請求項20に記載の剥離方法。
【請求項24】
基板と搬送用基板との接合体を剥離する剥離方法であって、前記接合体を冷却すること、前記接合体の一部又は全部へ向けて超音波振動を印加すること、を含む剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、透明基板上に形成された有機化合物からなる面状の発光層によって形成され、薄型ディスプレイなどへの実用化が進んできている。有機EL素子を利用した有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、視野角が大きく、消費電力が小さく、折り曲げることができる柔軟性を備えることが出来るので、商業的利用価値が高い。また、薄型基板(1μm厚のSiウエハー)を利用する製造方法として、ICの三次元実装分野やMEMS分野でもプロセス開発が行われている。
【0003】
シリコンウエハーの厚さは、製造工程での取り扱いの簡便さから0.5-1mm程度に作られている。一般のシリコンウエハーの場合、外寸はSEMIなどの業界団体で標準化されており、直径150mm(6インチ)の場合は厚さ0.625mm、200mm(8インチ)では厚さ0.725mm、300mm(12インチ)では厚さ0.775mmとされている。しかしながら、利用しようとしている薄型基板は一般的には0.5μmから0.2mm程度の厚さであり、このままでは、一般の製造工程においては、搬送が困難である。また、基板サイズは小さいサイズではチップサイズ、4インチ角から、大きいサイズでは1m角をこえるものもある為、デバイス製造時における薄型基板をロボットなどで搬送することが困難である。
【0004】
そこで考えられるのは、0.1mm厚以上1.1mm厚ぐらいまでのガラス基板、フィルムまたはシリコンウエハーを搬送用基板として、その表面に上記の薄型基板を貼り付けて搬送する方法である。この方法であると、基板厚は既存の設備をそのまま使用して搬送できるという利点がある。しかし、搬送用基板はデバイスが完成した後、搬送用基板から剥がされなければならない。
【0005】
薄型基板には3つの種類がある。一つは薄型ガラスであり、もう一つはポリイミドに代表される耐熱性フィルムである。このフィルムには搬送用基板にワニスを直接塗工し、焼成後、フィルム化する方法で作成されたフィルムも含まれる。3つ目はシリコンウエハーである。シリコンウエハーは場合によっては、粘着剤がついているテープで保護されている場合もある。この場合、基板はシリコンウエハーとフィルムの積層体である。
【0006】
現在提案されている搬送方法は搬送のキャリアとしてガラスやシリコンウエハーを使う方法である。薄型ガラスの場合はガラス同士という特性からキャリアガラス表面を清浄な状態に保ち、直接貼り付けることにより接合する方法である。また耐熱性フィルムの場合、搬送ガラスとフィルムの間にレーザー照射により破壊現象の起こる膜を形成し、貼り合わせ後、レーザー照射で剥離する方法である。また薄型基板がシリコンウエハーである場合、非接触の搬送方法や特殊チャック方法が提案されているが搬送できる厚さに限度がある。実際には、厚さ100μm前後が実現可能な領域であり、1μmなどの厚さでは搬送方法がない。
【0007】
この場合では搬送用基板を使う方法が考えられる。ただ剥離方法に良い方法がない。またシリコンウエハーの場合は薄くするために研磨を用いることがある。この場合はシリコンウエハーに粘着テープを貼り、研磨後、割れやかけを防ぐ。この場合もキャリアとしてガラスを使うことが提案されている。
【0008】
薄型基板は、たとえばディスプレイにおいてはTFT形成プロセスなどにおいて、300℃から500℃程度に加熱する工程がある。また、シリコンウエハーなどの半導体プロセスでは、アニール工程で800℃以上に加熱する工程が存在する。加熱された工程を経るため、接着された搬送用基板から薄型基板をはがす方法に有力な方式がない。
【0009】
一方、仮接合、剥離技術はデバイスが薄型化するに従い、多くの需要が生まれてきた。現在の仮接合、剥離は紫外線に反応するテープを貼り、すべての工程を経た後、紫外線で剥離する。またはレーザーリフトオフと呼ばれる接合界面にレーザー焦点をあてて剥がす方法がある。(フレキシブル有機ELのキャリアガラスとpiワニスの剥離に使っている)ただこれらの技術は紫外線を透過するものが使用される事を前提とする。キャリアとしてシリコンウエハーを使う場合は適応付加である。この技術は紫外線が寄与しない、または有機物質を剥離膜として使えない場合の解決策である。大きなアプリケーションとしてはシリコンウエハーとインターポーザー(ガラスやシリコン)の接合、剥離がある。
【0010】
デバイス基板がますます薄型化するに従い、搬送用基板にデバイス基板を貼り付け、その後に薄化する工程が増えてきている。現在求められているのは、薄化工程(切削、研磨)でも剥がれない接着強度を持ち、しかも薄化後、加熱工程(デバイス製作上に必要)を経ても、剥がす事の出来る工程である。特に研磨後のデバイス基板は極めて薄くなっている。(3-10μ)その場合、機械的剥離は困難である。
【0011】
また、AIの進展、電気自動車の普及などを中心とする産業の変化に対応して、様々なデバイスが小型化、薄型化の必要性に迫られている。最も多くの要求が寄せられているのは半導体の分野である。電気的処理容量の増大により、SI WAFERを積み重ねる必要性に迫られている。その際、必要なのはSI WAFERの薄型化である。500μから800μぐらいのSI WAFERを最大1μまで研削、研磨する事により、SI WAFERを積み重ねたときの容積の画期的削減が期待できる。このとき必要なのは、キャリアWAFER(SI WAFER,GLASS WAFER)に仮接合し、この後、研削、研磨し、その時剥がれず、デバイスの完成後に容易に剥離できる技術である。この仮接合はSI WAFERのみならず、GLASSや他の素材にも適応できると考えられる。したがって、剥離を前提とする仮接合方法についてもさらなる検討が求められている。
【0012】
例えば、特許文献1には、薄型基板と搬送用基板とを無機材料層を介して接合することにより、これらの剥離を容易にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、薄型基板と搬送用基板とを容易に剥離するためのさらなる方法が求められている。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板と該基板を搬送する為の搬送用基板との接合体を容易に剥離することが可能な剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明における基板と搬送用基板との接合体を剥離する剥離方法は、前記基板と前記搬送用基板の接合体を冷却すること、前記基板、前記搬送用基板、のいずれかの表面またはその双方の表面から、前記基板と前記搬送用基板の厚み方向、及び接合層へ向けて超音波振動を印加すること、を含む。
【0017】
本発明の一態様では、前記超音波振動を印加することの前に、前記基板と前記搬送用基板との接合層に水を介在させること、を含む。
【0018】
本発明の一態様では、前記冷却することの前に、前記基板と前記搬送用基板との接合層に水を介在させること、を含む。
【0019】
本発明の一態様では、前記超音波振動を印加することは、液体を介在させて行うこと、を含む。
本発明の一態様では、前記液体は、水またはアルコール類またはこれらの混合物である。
本発明の一態様では、前記液体は、加温されていること、を含む。
【0020】
本発明の一態様では、前記超音波振動を印加することは、中が中空である金属ケースを前記搬送用基板に接触させ、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、を含む。
本発明の一態様では、前記液体は、加温されていること、を含む。
【0021】
本発明の一態様では、前記超音波振動を印加することは、一方が開口する金属ケースを、開口する側を前記搬送用基板側に向けて接触させ、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、を含む。
本発明の一態様では、前記液体は、加温されていること、を含む。
【0022】
本発明の一態様では、前記超音波振動を印加することは、一方が開口する金属ケースを、開口する側を前記搬送用基板側に向け、その開口端を接合材で固定し、該金属ケースの内部に液体を充填し、該金属ケースの内部から超音波振動を前記搬送用基板側へ印加すること、前記液体を排出し、前記金属ケースを前記搬送用基板と共に前記基板から離間し搬送すること、を含む。
本発明の一態様では、前記液体は、加温されていること、を含む。
【0023】
本発明の一態様では、前記基板は、単体又は回路を有する、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む。
【0024】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、無機膜を介在させて接合されている。
【0025】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、前記基板と前記搬送用基板のいずれか一方または双方の接合面にエネルギーを与える表面処理を施されて接合されている。
【0026】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、前記基板と前記搬送用基板のいずれか一方または双方の接合面に200nm以下の波長を含む第1の紫外線を照射する表面処理を施されて接合されている。
【0027】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、接合面にSiの薄膜をスパッタ法により0.1nmから30nmの厚さに形成し、その後第2の紫外線を照射する。
【0028】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、接合面にSiの薄膜をスパッタ法により0.1nmから30nmの厚さに形成し、前記薄膜表面をイオンビームにて活性化し、その後第2の紫外線を照射する。
【0029】
本発明の一態様では、前記接合体の接合は、前記基板にパターンが構成され、選択的に凸部のみを接合する。
【0030】
本発明の一態様では、前記液体は、純水である。
【0031】
本発明の一態様では、前記純水に酸素を混入する。
【0032】
本発明の一態様では、前記純水に窒素を混入する。
【0033】
本発明の一態様では、前記純水にオゾンを混入する。
【0034】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明における基板と搬送用基板との接合体を剥離する剥離方法は、前記接合体を冷却すること、前記接合体の一部又は全部へ向けて超音波振動を印加すること、を含む。このような構成によれば、より容易に剥離することができるのみならず、さらに剥離時間をより短くすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、基板と該基板を搬送する為の搬送用基板との接合体を容易に剥離することが可能な剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る剥離方法の対象になる接合体の接合工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらの具体的な実施形態に限定されないことは自明である。
【0038】
(第1実施形態)
図1から
図4は、本実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。以下、図を参照して、本実施形態に係る剥離方法の工程を説明する。
【0039】
(a)接合体の準備工程
図1に示すように、本実施形態は、基板1と搬送用基板3との接合体5を剥離する剥離方法である。接合体5は、接合層7を介して基板1と搬送用基板3とが接合されている。この接合層は、無機膜であってもよいし、基板1と搬送用基板3のいずれか一方または双方の接合面にエネルギーを与える表面処理を施されて接合された接合層であってもよい。ここでエネルギーを与えるとは、基板1、搬送用基板3の表面に向けて、イオンビームや、電子ビーム、あるいはUV照射を与えることを含む。基板1は、単体又は回路を有する、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであってよい。ここで、単体とは、表面に回路を有していない例えばガラス単体、シリコン単体、化合物半導体単体、高分子フィルム単体等のことをいう。本実施形態では、基板1は、回路基板11の表面に回路層9が形成されている。
図1に示す状態では、基板1の薄化工程が施された後を示している。
【0040】
(b)接合体の冷却工程
図2に示すように、接合体5は、冷却チャンバ13内に搬送され、冷却チャンバ13内の雰囲気F中で冷却される。冷却雰囲気Fは、通常の空気であってもよいし、不活性ガスで充填されていてもよい。また、雰囲気Fは、液体であってもよい。液体としては、水やアルコール類や、これらの混合物であってよい。冷却温度は、-1℃~-100℃、好適には、-20℃~-50℃であってよい。
【0041】
(c)超音波印加工程
図3に示すように、冷却工程の後に、接合体5は、超音波Uを印加される。超音波Uの印加は、基板1、搬送用基板3、のいずれかの表面またはその双方の表面から、基板1と搬送用基板3の厚み方向、及び接合層7へ向けて超音波振動Uを印加する。本実施形態では、搬送用基板3の表面から搬送用基板3の厚み方向、接合層7に向けて超音波Uが印加されている。このときの超音波の振動数は、20kHz~950kHz、好適には20kHz~100kHzであってよい。またこれらの波長をミックスさせてもよい。
【0042】
(d)剥離状態
図4に示すように、上述の超音波印加工程を一定時間施すと、接合体は、基板1と搬送用基板3とに剥離されて、一連の工程を終了する。
【0043】
以上述べたように、本実施形態では、接合体5を冷却チャンバ13内で冷却した後、超音波Uを接合層7に向けて印加して、基板1と搬送用基板3とに剥離するので、熱工程などを経て接合が強固になった接合体であっても、基板1と搬送用基板3とに損傷を与えることなく容易に剥離することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態の一工程を説明する模式図である。本実施形態では、第1実施形態の工程に加え、
図3に示す超音波振動を印加することの前に、
図5に示すように、水Wを満たした水槽15に、接合体5を浸し、基板1と搬送用基板3との接合層7に水を介在させる。その他の工程については、第1実施形態と同等の工程を有する。本実施形態では、第1実施形態において超音波振動を印加することの前に、基板1と搬送用基板3との接合層7に水を介在させるので、水の介在によって剥離をさらに容易に行うことができる。本実施形態では、超音波振動を印加することの前に、水Wを満たした水槽15に、接合体5を浸し、基板1と搬送用基板3との接合層7に水を介在させたが、この工程を、接合体5を冷却することの前に行ってもよい。
【0045】
(第3実施形態)
図6は、本実施形態の一工程を説明する模式図である。本実施形態では、第1実施形態の
図3に示す超音波振動を印加することを、
図6に示すように、液体Lを満たした液槽16に、接合体5を浸し、液体を介在させて行う。具体的には、液槽16の底部に配置された超音波振動子17を駆動し、超音波Uが液体Lを介在して接合体5に印加される。超音波Uは、図に示すように基板1の底部からその厚み方向に、接合層7に向けて、液体Lを介在して印加される。ここで、液体Lとは、水またはアルコール類またはこれらの混合物であってよい。また、液体Lは、加温されていてよい。液体の温度は、30℃~100℃、好適には、30℃~60℃であってよい。このときの超音波の振動数は、20kHz~950kHz、好適には20kHz~100kHzであってよい。またこれらの波長をミックスさせてもよい。その他の工程については、第1実施形態と同等の工程を有する。本実施形態では、第1実施形態における超音波の印加を、液体Lを介在させて行うので、超音波の印加を効率良く行うことができ、剥離をより促進することができる。
【0046】
本実施形態においては、液体Lは、純水であってよい、また
図9に示すように、純水中に気体Gを混入させてよい。気体Gは、酸素、窒素、オゾンのいずれかであってよい。純水中に気体Gを混入させることによって、剥離をさらに促進させることができる。
【0047】
(第4実施形態)
図7は、本実施形態の工程を説明する模式図である。本実施形態では、第1実施形態の
図3に示す超音波振動を印加することを、
図7(a)に示すように、中が中空である金属ケース19を接合体5の搬送用基板3側に接触させ、この金属ケース19の内部に液体Lを充填し、この金属ケース19の内部から超音波振動Uを搬送用基板3側へ印加する。接合体5は、チャック23によって保持されて金属ケース19に押しつけられている。
図7(b)に示すように、一定時間の間、超音波を印加することにより、接合体5は、基板1と搬送用基板3とに剥離することができる。具体的には、金属ケース19の内部に超音波振動子(図示せず)を配置し、その超音波振動子から超音波Uを、金属ケース19の内部に充填された液体Lを介在させて、搬送用基板3側からその厚さ方向、接合層7に向けて印加することにより、基板1と搬送用基板3との剥離を促進させる。ここで、液体Lとは、水またはアルコール類またはこれらの混合物であってよい。また、液体Lは、加温されていてよい。液体の温度は、30℃~100℃、好適には、30℃~60℃であってよい。このときの超音波の振動数は、20kHz~950kHz、好適には20kHz~100kHzであってよい。またこれらの波長をミックスさせてもよい。その他の工程については、第1実施形態と同等の工程を有する。本実施形態では、第1実施形態の超音波の印加を金属ケース19の内部から液体Lを介在させて行うので、超音波の印加を効率良く行うことができ、剥離をより促進することができる。本実施形態では、内部が中空の金属ケース19内に液体Lを充填したがこれに限定されず、超音波が伝搬するものであれば、例えば気体であっても良い。また、内部が中空ではなく、金属で充填されたものを用いて超音波を印加してもよい。
【0048】
(第5実施形態)
図8は、本実施形態の工程を説明する模式図である。本実施形態では、第1実施形態の
図3に示す超音波振動を印加することを、
図8(a)に示すように、一方が開口する金属ケース21を、開口する側を搬送用基板側3に向け、その開口端を接合材(シールチューブ)25で固定し、金属ケース21の内部に液体Lを充填し、この金属ケース21の内部から超音波振動Uを搬送用基板3側へ液体Lを介して印加する。接合体5は、チャック23によって保持されて金属ケース21の開口側に接している。
図8(b)に示すように、一定時間の間、超音波Uを印加することにより、基板1と搬送用基板3とは、剥離することができる。その後、液体Lを排出し、金属ケース21を搬送用基板3と共に基板1から離間し搬送する。液体Lの充填、排出は、管27を介して行われる。具体的には、金属ケース21の内部に超音波振動子(図示せず)を配置し、その超音波振動子から超音波Uを、金属ケース21の内部に充填された液体Lを介在させて、搬送用基板3側からその厚さ方向、接合層7に向けて印加することにより、基板1と搬送用基板3との剥離を促進させる。ここで、液体Lとは、水またはアルコール類またはこれらの混合物であってよい。また、液体Lは、加温されていてよい。液体の温度は、30℃~100℃、好適には、30℃~60℃であってよい。このときの超音波の振動数は、20kHz~950kHz、好適には20kHz~100kHzであってよい。またこれらの波長をミックスさせてもよい。その他の工程については、第1実施形態と同等の工程を有する。本実施形態では、第1実施形態の超音波の印加を、一方が開口した金属ケース21の内部から液体Lを介在させて直接搬送用基板3に向けて行うので、超音波の印加を効率良く行うことができ、剥離をより促進することができる。
【0049】
(第6実施形態)
図10から
図19は、本発明において剥離工程の対象となる接合体の接合工程を示す図である。以下に図を参照しながら、本実施形態の接合体の接合工程を説明する。
【0050】
<1>基板と搬送用基板の準備
図10に示すように、回路基板11上に回路層9を有する基板1と、搬送用基板3を準備する。
<2>接合面の表面処理
図11に示すように、基板1と搬送用基板3のいずれか一方または双方の接合面に200nm以下の波長を含む第1の紫外線31を照射する表面処理を施す。本実施形態では、基板1と搬送用基板3の双方の接合面に第1の紫外線31が照射されている。
【0051】
<3>基板と搬送用基板の接合
図12に示すように、表面処理が行われた基板1と搬送用基板3との接合面を接触させ圧力を加えることによって、基板1と搬送用基板3とを接合する。
<4>接合体の完成
図13に示すように、上述の工程を経て、接合体41が得られる。接合体41は、回路基板11と回路層9とからなる基板1と搬送用基板3とが接合された接合体41である。
【0052】
このような接合体を用いることによって、搬送工程(半導体製造工程)中は、剥離することのない接合強度を保ちながら回路形成等の工程を行うことができ、上述の剥離の実施形態を適用することによって、容易に剥離することが可能な接合体を提供することができる。
【0053】
(第6実施形態の変形例1)
本変形例では、基板1と搬送用基板3との接合面の表面処理(上述の工程<2>)の前に、接合層を形成する。
図14に示すように、接合層7として、接合面にSiの薄膜をスパッタ法により0.1nmから30nmの厚さに形成し、
図15に示すように、第2の紫外線33を接合層7に照射して接合層表面を活性化する。または、イオンビーム35を接合層7に照射し、さらに第2の紫外線33を接合層7に照射して接合層表面を活性化する。その後、上述の<2>以降の接合工程を行い、
図16に示す接合体43を得る。本実施形態では、搬送中にさらに安定した接合強度を保ち、上述の剥離工程で容易に剥離可能な接合体43を提供することができる。
【0054】
(第6実施形態の変形例2)
本変形例では、基板2と搬送用基板3との接合面の表面処理(上述の工程<2>)の前に、準備する基板2は、
図17に示すように、回路層39に凸部を有するパターンが構成された基板2を用いる。その後、上述の<2>以降の接合工程を行い、
図18に示す接合体45を得る。本変形例の接合体45は、
図18に示すように、選択的に凸部のみが接合されている。本実施形態では、凸部のパターンを調整することによって、接合強度を調整することが可能な接合体45を提供することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明した。特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想から逸脱することなく、これらに変更を施すことができることは明らかである。また、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【実施例0056】
以下に、本発明に係る実施例を示す。本発明の内容はこれらの実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0057】
実施例の試験は、以下の手順で行った。
【0058】
(1)搬送用基板とデバイス基板の準備
試料の組み合わせとして、搬送用基板と搬送用基板と仮定して、4インチのシリコンウエハーを用意した。
【0059】
(2)無機物層(接合層)の形成
以下[表1]で示す通り、サンプルごとに、イオンビームスパッタを使用して、Si(シリコン)の無機物層(接合層)をシリコンウエハーの表面(片面)に形成した。スキャン数は1であり、1スキャンにつき1.5nm形成されるため、1.5nmのSi(シリコン)の無機物層が形成された。
【0060】
(3)常温接合処理
下記条件で、常温接合処理を行った。
(常温接合条件)
・プレス条件:5kN/5min
・プレス環境:N2(窒素)環境下
【0061】
(4)加熱処理
常温接合の後、デバイスの製造工程を想定して、下記[表1]に示す加熱処理を行った。
【0062】
(5)冷却処理
その後、接合体を冷却チャンバで、-40℃、1時間の冷却を行った。
【0063】
(6)超音波印加による剥離
冷却後の試料に38kHzの超音波振動を印加した。試料5、6については、冷却から15秒後に超音波を印加、他は常温に戻してから超音波を印加した。
【0064】
(剥離の結果)
[表1]に示す通り、すべて10分以内に剥離した。データからは冷却状態で超音波を印加した方が剥離時間は短い傾向にある。
【表1】
【0065】
なお、比較例として、上記(5)の冷却処理を行わなかったこと以外は上記実施例と同様にしてそれぞれ剥離を行ったが、いずれも剥離困難であった。(表1試料番号h1、h2)
【0066】
上記の結果によれば、本発明に係る剥離方法によって、基板を容易に剥離できることが理解される。