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特開2024-67019電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置、及びその燃料電池の制御方法
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  • 特開-電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置、及びその燃料電池の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067019
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置、及びその燃料電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04537 20160101AFI20240509BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240509BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240509BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04664
H01M8/04313
G01R31/389
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187751
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】63/421,605
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】周裕福
(72)【発明者】
【氏名】劉靜蓉
(72)【発明者】
【氏名】蔡英文
(72)【発明者】
【氏名】康顧厳
(72)【発明者】
【氏名】徐志▲ウェイ▼
【テーマコード(参考)】
2G216
5H127
【Fターム(参考)】
2G216BA51
5H127AC05
5H127AC13
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA20
5H127DB49
5H127DB50
5H127DB53
5H127DB63
5H127DB68
(57)【要約】      (修正有)
【課題】定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するための燃料電池発電性能計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置110は、テスト抵抗116、第1テストスイッチ114、電流計測ユニット118および制御ユニット112を含む。制御ユニット112は、第1制御信号を発信することにより選択的に第1テストスイッチ114を導通させるように、第1テストスイッチと電流計測ユニット118とを制御する。第1テストスイッチ114が導通している場合、燃料電池102、テスト抵抗116、第1テストスイッチ114および電流計測ユニット118はテスト回路を形成し、電流計測ユニット118はテスト回路を通るテスト電流を計測し、制御ユニット112は、テスト電流に基づいて燃料電池102の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得し、リアルタイム抵抗値に基づいて燃料電池102の発電性能を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するための燃料電池発電性能計測装置であって、
テスト抵抗、第1テストスイッチ、電流計測ユニット、及び、制御ユニットを含み、
前記制御ユニットは、第1制御信号を発信することにより選択的に前記第1テストスイッチを導通させるように、前記第1テストスイッチと前記電流計測ユニットとを制御し、
前記第1テストスイッチが導通している場合、前記燃料電池、前記テスト抵抗、前記第1テストスイッチ及び前記電流計測ユニットはテスト回路を形成し、前記電流計測ユニットは前記テスト回路を通るテスト電流を計測し、前記制御ユニットは前記テスト電流に基づいて前記燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得し、該リアルタイム抵抗値に基づいて前記燃料電池の発電性能を評価し、
前記燃料電池の出力電圧が前記定格出力電圧の1/2未満となり、及び/または、
前記テスト抵抗の抵抗値が前記内部抵抗の所定の抵抗値より小さい、燃料電池発電性能計測装置。
【請求項2】
前記電流計測ユニットはホール電流計測素子を含む、請求項1に記載の燃料電池発電性能計測装置。
【請求項3】
定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するための燃料電池発電性能計測装置であって、
テスト抵抗、第1テストスイッチ、差動電圧計測ユニット、及び、制御ユニットを含み、
前記制御ユニットは、第1制御信号を発信することにより選択的に前記第1テストスイッチを導通させるように、前記第1テストスイッチと前記差動電圧計測ユニットとを制御して、
前記第1テストスイッチが導通している場合、前記燃料電池、前記テスト抵抗及び前記第1テストスイッチがテスト回路を形成し、前記差動電圧計測ユニットは、前記テスト抵抗の上流端電圧及び下流端電圧をそれぞれ計測して前記テスト抵抗の差動電圧を取得し、前記制御ユニットは前記差動電圧及び前記テスト抵抗の抵抗値に基づいて前記テスト回路のテスト電流を得て、前記テスト電流及び前記燃料電池の前記定格出力電圧に基づいて前記燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得し、該リアルタイム抵抗値に基づいて前記燃料電池の発電性能を評価し、
前記燃料電池の出力電圧が前記定格出力電圧の1/2未満となり、及び/または、前記テスト抵抗の抵抗値が前記内部抵抗の所定の抵抗値より小さい、燃料電池発電性能計測装置。
【請求項4】
前記テスト抵抗の抵抗値は、前記内部抵抗の予測抵抗値の1/5~1/100である、請求項1または3に記載の燃料電池発電性能計測装置。
【請求項5】
前記差動電圧計測ユニットは、
前記テスト抵抗の上流端にカップリングするように接続され、当該上流端における電圧の電圧信号が入力される第1入力端、
前記テスト抵抗の下流端にカップリングするように接続され、当該下流端における電圧の電圧信号が入力される第2入力端、及び、
前記制御ユニットにカップリングするように接続され、前記上流端における電圧及び前記下流端における電圧の電圧信号を伝送する出力端を有する、請求項3に記載の燃料電池発電性能計測装置。
【請求項6】
前記差動電圧計測ユニットは差動増幅器を含む、請求項3に記載の燃料電池発電性能計測装置。
【請求項7】
前記制御ユニットに制御されるように前記制御ユニットと接続されている、電圧計測ユニット及び第2テストスイッチをさらに含み、
前記制御ユニットは、選択的に前記第2テストスイッチを導通させるように、第2制御信号を発信し、
前記第1テストスイッチ及び前記第2テストスイッチがいずれも導通しない時に、前記電圧計測ユニットは前記燃料電池の開回路電圧を計測する、請求項1または3に記載の燃料電池発電性能計測装置。
【請求項8】
定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するとともに、制御する方法であって、
請求項7に記載の燃料電池発電性能計測装置を準備する工程、
短絡動作を行う工程、
前記燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得するように計測を行う工程、及び
前記リアルタイム抵抗値に基づいて前記燃料電池の発電性能を評価する工程、を含む、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項9】
前記燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得するように計測を行う工程は、
前記短絡動作の期間中に少なくとも三つの時点を選択して、当該時点における前記燃料電池のリアルタイム電流値を計測する工程をさらに含む、請求項8に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項10】
前記リアルタイム電流値に基づいて前記燃料電池の性能指標を評価する工程をさらに含む、請求項9に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項11】
前記燃料電池の性能指標を評価する工程は、
短絡開始後の一定期間内にリアルタイム電流データをキャプチャ、記録及び比較することによって当該期間中における短絡開始時の瞬間電流ピーク値を取得するとともに、異なる短絡動作期間中における当該瞬間電流ピーク値の変化を比較し、前記燃料電池のスタック性能指標を評価する工程を含む、請求項10に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項12】
前記燃料電池の発電性能をアクティブ化する工程をさらに含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項13】
前記燃料電池の発電性能をアクティブ化する工程は、
前記第1テストスイッチの導通及び切断を少なくとも一回繰り返すことにより、一回または数回の短絡アクティブ化動作を行う工程、及び、
前記短絡アクティブ化動作の時間長さ及び/または周期を調整する工程を含む、請求項12に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項14】
前記燃料電池の発電性能をアクティブ化する工程は、
前記燃料電池のスタックを交換または修理する工程を含む、請求項12に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項15】
前記燃料電池の発電性能を評価する工程は、
前記第2テストスイッチの非導通期間の時間長さが前記第1テストスイッチの導通期間の時間長さよりも長くなるように、前記第2テストスイッチの非導通期間の時間長さを増やす工程、
前記燃料電池に関する回復参考電圧差値を取得するように計測を行う工程、及び
前記回復参考電圧差値と所定の閾値との関係に基づいて前記燃料電池のスタック性能指標を評価する工程、を含む、請求項8に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項16】
前記回復参考電圧差値と所定の閾値との関係に基づいて前記燃料電池のスタック性能指標を評価する工程は、
特定の時点の回復参考電圧を計測するとともに、異なる短絡動作期間中における同一の当該特定の時点の当該回復参考電圧同士間の差値が所定の閾値よりも大きいか否かについて比較する工程を含む、請求項15に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項17】
前記燃料電池の発電性能をアクティブ化する工程をさらに含み、
前記燃料電池の発電性能をアクティブ化する工程は、
前記回復参考電圧差値が前記所定の閾値よりも小さい場合、少なくとも一回のパージ排水を行う工程、及び、
前記回復参考電圧差値が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記第1テストスイッチの導通及び切断を少なくとも一回繰り返すことによって一回または数回の短絡アクティブ化動作を行うとともに、前記短絡アクティブ化動作の時間長さ及び/または周期を調整する工程、を含む、請求項16に記載の、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法。
【請求項18】
負荷装置に電力を供給するための電源供給システムであって、
前記負荷装置に電気的に接続され、且つ、定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池と、
前記燃料電池に接続され、前記燃料電池の発電性能を計測するための、請求項7に記載の燃料電池発電性能計測装置と、を含み、
前記第2テストスイッチは前記電圧計測ユニットと前記負荷装置との間に存在し、
前記第1テストスイッチが導通している場合、前記第2テストスイッチの非導通が維持され、前記燃料電池からテスト電流が前記燃料電池発電性能計測装置へ出力され、
前記第1テストスイッチが導通しない場合、前記第2テストスイッチの導通が維持され、前記燃料電池から動作電流が前記負荷装置へ出力される、電源供給システム。
【請求項19】
前記燃料電池発電性能計測装置は、
前記負荷装置と共に前記燃料電池の両端に並列接続されている補助電力供給ユニットをさらに含む、請求項18に記載の電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給システム(power supply system)及び計測装置(detection device)に関し、特に、電源供給システム、その燃料電池(fuel cell)の発電性能(power generation performance)の計測装置、及び当該燃料電池の制御方法(control method)に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の発電性能は、燃料供給の流量(fuel supply flow)、環境中の空気圧力(ambient air pressure)、温度(temperature)、湿度(humidity)、及び、各スタック自体の使用歴(usage history of each fuel cell stack)など、多くの要素による影響を受ける。車両や飛行輸送機への適用において、燃料電池の発電性能は安全にタスクを遂行するための重要な要素である。そのため、燃料電池の発電性能のモニタリングは、非常に重要であり、これによりタスクを遂行するためのエネルギー供給の余裕度(energy supply margin)を予測することができる。余裕度の予測は、燃料電池の制御動作やタスク変更の根拠として、燃料電池を応用するための重要な技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許第109726452B号(2020年10月27日) 発明名称:「インピーダンスのスペクトルに基づいてプロトン交換膜型燃料電池の故障をオンライン診断する方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、制御ユニットによって燃料電池の内部抵抗(internal resistance)のリアルタイム抵抗値(real-time resistance value)を取得し、燃料電池の発電性能を調整し、これにより燃料電池の良好な動作状况(good operating condition)を維持することができる電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置、及び当該燃料電池の制御方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、定格出力電圧(rated output voltage)と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するための燃料電池発電性能計測装置を提供する。該計測装置は、テスト抵抗(test resistor)、第1テストスイッチ(first test switch)、電流計測ユニット(current detection unit)及び制御ユニット(control unit)を含む。制御ユニットは、第1制御信号(first control signal)を発信することにより選択的に前記第1テストスイッチを導通させるように、前記第1テストスイッチと前記電流計測ユニットとを制御する。第1テストスイッチが導通している場合、燃料電池、テスト抵抗、第1テストスイッチ及び電流計測ユニットはテスト回路(test loop)を形成し、電流計測ユニットはテスト回路を通るテスト電流(test current)を計測し、制御ユニットはテスト電流に基づいて燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得し、該リアルタイム抵抗値に基づいて燃料電池の発電性能が評価。燃料電池の出力電圧は定格出力電圧の1/2未満となり、及び/または、テスト抵抗の抵抗値は内部抵抗の所定の抵抗値より小さい。
【0006】
本発明の一態様によれば、燃料電池の発電性能を計測するための燃料電池発電性能計測装置(fuel cell power generation performance detection device)を提供する。該燃料電子は、定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する。該燃料電池発電性能計測装置は、テスト抵抗、第1テストスイッチ、差動電圧計測ユニット(differential voltage detection unit)及び制御ユニットを含む。制御ユニットは、第1制御信号を発信することにより選択的に前記第1テストスイッチを導通させるように、前記第1テストスイッチと前記差動電圧計測ユニットとを制御する。前記第1テストスイッチが導通している場合、前記燃料電池、前記テスト抵抗及び前記第1テストスイッチはテスト回路を形成し、前記差動電圧計測ユニットは、前記テスト抵抗の上流端電圧(upstream end voltage)及び下流端電圧(downstream end voltage)をそれぞれ計測して前記テスト抵抗の差動電圧(differential voltage)を取得し、前記制御ユニットは前記差動電圧及び前記テスト抵抗の抵抗値に基づいて前記テスト回路のテスト電流を得て、前記テスト電流及び前記燃料電池の定格出力電圧に基づいて前記燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得し、該リアルタイム抵抗値に基づいて前記燃料電池の発電性能を評価する。前記燃料電池の出力電圧が前記定格出力電圧の1/2未満となり、及び/または、前記テスト抵抗の抵抗値が前記内部抵抗の所定の抵抗値より小さい。前記第1テストスイッチを制御し、テスト回路を形成し、回路電流を生成する動作は、以下に短絡動作(short-circuit operation)と略称し、短絡動作の期間に回路を通る電流は短絡電流(short-circuit current)とも称する。
【0007】
本発明の一態様によれば、定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する燃料電池の発電性能を計測するとともに、制御する方法を提供し、該燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法は以下の工程を含む。燃料電池発電性能の計測装置を準備する。短絡動作を行う。燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値を取得するように計測を行う。燃料電池の内部抵抗のリアルタイム抵抗値に基づいて、該燃料電池の発電性能を評価する。
【0008】
本発明の一態様によれば、負荷装置(load device)に電力を供給するための電源供給システムを提供し、該電源供給システムは燃料電池及び燃料電池発電性能計測装置を含む。燃料電池は、負荷装置に電気的に接続され、且つ、定格出力電圧と、所定の抵抗値を有する内部抵抗とを有する。燃料電池発電性能計測装置は、前記燃料電池に接続され、前記燃料電池の発電性能を計測する。第2テストスイッチ(second test switch)は、電圧計測ユニットと負荷装置との間に位置する。第1テストスイッチが導通している場合、第2テストスイッチの非導通(turn off)が維持され、燃料電池からテスト電流が前記燃料電池発電性能計測装置へ出力される。第1テストスイッチが導通しない場合、第2テストスイッチの導通(turn on)が維持され、燃料電池から動作電流(operating current)が前記負荷装置へ出力される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例に係る燃料電池発電性能の計測装置の模式図である。
図2】本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能の計測装置の模式図である。
図3】本発明の一実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図である。
図4】短絡動作の波形図である。
図5】短絡アクティブ化動作の時間長さを調整する波形図である。
図6図5の短絡アクティブ化動作の時間長さを調整する一例の模式図である。
図7】本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図である。
図8図7の短絡動作終了後に負荷時間の供給を遅延させる波形図である。
図9図7の燃料電池スタックの性能指標を評価するための回復参考電圧差値の波形図である。
図10】本発明の一実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図である。
図11図10のリアルタイム電流値の波形図である。
図12】本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図である。
図13図12の短絡開始の瞬間の電流ピークの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術案を明確かつ完全に説明するが、説明された実施例は本発明の一部の実施例であって、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が自明である前提の下で得られた他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。以下の説明では、同一/類似の構成部品を同一/類似の符号で示す。
【0011】
図1及び図2を参照すると、図1は、本発明の一実施例に係る電源供給システム100及びその燃料電池発電性能の計測装置110の模式図であり、図2は、本発明の別の実施例に係る電源供給システム101及びその燃料電池発電性能の計測装置110の模式図である。図1において、電源供給システム100は、燃料電池102と、燃料電池発電性能の計測装置110と、負荷装置106とを含んでもよく、負荷装置106は、燃料電池102の両端に並列接続され、燃料電池発電性能の計測装置110は、燃料電池102と負荷装置106との間にカップリング(electrically coupled)するように接続される。図2において、電源供給システム101は、燃料電池102と、燃料電池発電性能の計測装置110と、負荷装置106とを含んでもよく、その接続関係は図1とほぼ同様であるため、ここでは説明しない。
【0012】
図1の燃料電池発電性能の計測装置110及び図2の燃料電池発電性能の計測装置110は、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を計測することにより、燃料電池102の発電性能を評価する。燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法については、図3の各工程S110~S150を参照されたい。
【0013】
燃料電池102は、例えば68V以上の開回路電圧(open circuit voltage)V0と、例えば20Aの定格出力電流とを有し、定格出力電流である場合、該燃料電池は例えば48Vの定格出力電圧VFC0を有する。燃料電池102は、負荷装置106に電気的に接続され、負荷装置106に動作電流及び動作電圧(operating voltage)を出力する。一般的に、燃料電池102の電位を順次増加させるように、燃料電池102は、スタックされた複数の燃料電池スライス(fuel cell units)を直列に含む。例えば、燃料電池102のスタックの電位エネルギーは設計上の要求に応じて48Vとするか、または、実際のニース(actual voltage conditions)に応じて電圧を調整することができる。燃料電池102の出力電圧は、燃料電池スライスの枚数によって決まり、枚数が多いほど電圧が高く、枚数が少ないほど電圧が低くなる。しかし、燃料電池102の電力供給期間中に、内部触媒材料(internal catalyst material)の経年劣化(aging)、陽極の水素流路(anode hydrogen flow channel)に水が溜まるなどの要因により、燃料電池102の発電性能が永久的または一時的に低下する場合、出力が低下し、リアルタイム内部抵抗が顕著に増加する。ガス流路内の少量の水溜まりなどの要因による性能の低下は、リアルタイム内部抵抗の変化に基づいて、速やかに発見して処理することができ、これにより、さらなる深刻な性能の低下を避けることができる。従って、燃料電池発電性能の計測装置110により、燃料電池102の発電性能を評価して燃料電池102の制御動作の根拠とすることができる。
【0014】
例えば、30キロ級の単軸無人ヘリコプタ(single-axis unmanned helicopter)の水素燃料電池102を例にすると、最大離陸重量(maximum takeoff weight)35キロの離陸、ホバリングまたはタスク執行時に必要な電力(最大出力が4KWを超える可能性がある)を提供するために、無人機は4組の1KW定格出力の燃料電池102(72個の燃料電池スライスを直列につなぐ)と、48V/12AHの高出力リチウムイオンと電池を搭載して、様々な状況に適用できる高い瞬間出力を提供する。
【0015】
燃料電池102の出力電流を20A、定格出力電圧VFC0を48Vとする場合、燃料電池102の出力は約960Wとなる。燃料電池102が、車両や飛行輸送機などの高出力を必要とする電源供給システム100に適用されるとき、継続的に高出力及び大電流の出力が必要となる場合があり、この場合、燃料電池102の出力電圧VFC及び内部抵抗104のリアルタイム抵抗値は、負荷の変動に応じて変化してもよい。タスク執行中に車両や飛行輸送機が燃料電池102の性能変化をリアルタイムに把握できるように、本発明は、燃料電池発電性能の計測装置110を電源供給システム100、101に組み込み、燃料電池の発電性能の評価指標として、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値をリアルタイムに計測する。なお、燃料電池発電性能の計測装置110は、リアルタイム計測に限定されるものではなく、オフライン計測(offline detection)にも適用することができる。
【0016】
図1を参照すると、燃料電池発電性能の計測装置110は、制御ユニット112、第1テストスイッチ114、テスト抵抗116及び電流計測ユニット118を含む。制御ユニット112は、例えば、プロセッサ、集積回路、またはシステムの単一ウェハである。第1テストスイッチ114は制御ユニット112に接続され、第1テストスイッチ114は制御ユニット112からの制御信号(例えば導通信号(turn-on signal)または切断信号(turn-off signal)であり、例えば短パルス信号(short pulse signal)である)を受信できる。図1に示すように、テスト抵抗116及び電流計測ユニット118はそれぞれ燃料電池102の両端に連結され、第1テストスイッチ114はテスト抵抗116と電流計測ユニット118との間に位置し、制御ユニット112は、第1制御信号を第1テストスイッチ114に発信することにより、選択的に第1テストスイッチ114を導通させる。第1テストスイッチ114が導通している場合、燃料電池102、テスト抵抗116、第1テストスイッチ114及び電流計測ユニット118はテスト回路115を形成する。テスト回路115は閉回路(closed loop)であり、第1テストスイッチ114は例えば短絡テストスイッチ(short-circuit test switch)である。第1テストスイッチ114が導通している場合、燃料電池102は瞬時にテスト電流ISC(即ち短絡電流)を放出し、テスト電流は順次にテスト抵抗116及び電流計測ユニット118を通る。
【0017】
燃料電池102が瞬時に放出するテスト電流ISCは燃料電池102の発電性能に比例している。燃料電池102が瞬時に放出するテスト電流ISCが大きいほど、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値が小さい。逆に、燃料電池102が瞬時に放出するテスト電流ISCが小さいほど、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値が大きい。第1テストスイッチ114が導通している期間に、制御ユニット112は、電流計測ユニット118を利用して、テスト回路115を流れているテスト電流ISCの大きさを計測して、内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を直ちに計算できて、燃料電池102の発電性能の変化を把握することができる。電流計測ユニット118は、例えば、ホール電流計測素子(Hall current detector)や電流計(ammeter)などの類似の素子である。燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値の算出方式については、以下の説明を参照されたい。
【0018】
一実施例では、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCは、例えば、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rより小さい。例えば、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rが1Ωである場合、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCは0.1Ω以下であってもよい。選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rに近く、または所定の抵抗値Rより少し大きい場合、テスト電流ISCが流れている間(即ち第1テストスイッチ114が導通している期間)に、テスト抵抗116による出力発熱(heat dissipation power)が増加する。例えば、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rが1Ωであり、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが5.8Ωである場合、第1テストスイッチ114が導通する前に、燃料電池102の出力電圧VFCは68Vであり、第1テストスイッチ114が導通している間に、電流計測ユニット118によって計測されたテスト電流ISCは68/(1+5.8)=10Aである。この場合、テスト電流ISCが流れている間にテスト抵抗116による出力発熱(すなわち、電力消費(power consumption))PTは、ISC*(ISC*RSC)=10*58=580Wであり、つまり、テスト抵抗116による出力発熱が大幅に増加する。
【0019】
一方、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rが1Ωであり、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが0.01Ωである場合(すなわち、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rよりも小さい場合)、第1テストスイッチ114が導通する前に、燃料電池102の出力電圧VFCは68Vであり、第1テストスイッチ114が導通している間に、電流計測ユニット118によって計測されたテスト電流ISCは68/(1+0.01)=67.3Aであり、テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSCは約67.3A*0.01=0.673Vである。電流が流れている間にテスト抵抗116による出力発熱PTは、ISC*VSC=67.3*0.673≒45.3Wであり、つまり、テスト抵抗116による出力発熱が大幅に減少する。したがって、本実施例では、好ましくは、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rよりも小さい。テスト抵抗116の抵抗値RSCが、例えば、燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rの1/5~1/100にあるが、これに限定されるものではない。
【0020】
一実施例では、第1テストスイッチ114が導通している場合、選択された燃料電池102の出力電圧VFCは例えば定格出力電圧VFC0の1/2未満となる。一実施例では、好ましくは、第1テストスイッチ114が導通している場合、選択された燃料電池102の出力電圧VFCは例えば定格出力電圧VFC0の1/10未満となる。この場合、テスト抵抗116の抵抗値RSCは燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rの約1/10であると見なすことができ、テスト抵抗116の抵抗値RSCを限定する技術的効果と同様の効果を奏する。
【0021】
燃料電池102の個々のスタックは、設計上の要求に応じて、独立したスタックバランス制御装置(Balance of Plant、 BOP)を有してもよい。飛行過程(flight)に必要な電力に合わせて各スタックの発電を開始または停止させ、発電期間中のスタック温度、空気量、及び燃料供給を制御するほか、本実施例の燃料電池発電性能の計測装置110を用いて、例えば図3の燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法により、燃料電池102の各スタックの発電性能を周期的に評価することができ、これにより、各スタックの最新の性能状況を常に把握し、スタックバランス制御装置の記録装置において、毎回の飛行動作(flight operation)中に得られたスタック性能状況を更新することができる。その中の一つのスタックのテスト記録が他のスタックと比べて明らかな差があって(例えば差が20%以上である)、該スタックの性能が低下した可能性がある場合、スタックの交換または修理をすることにより、燃料電池102の良好な性能を維持する目的を達することができる。
【0022】
もう一度図1を参照されたい。燃料電池発電性能の計測装置110は、制御ユニット112に制御のために接続されている電圧計測ユニット120及び第2テストスイッチ122をさらに含んでもよい。電圧計測ユニット120は、燃料電池102の出力端(output end)に位置する。第2テストスイッチ122は電圧計測ユニット120と負荷装置106との間に位置し、制御ユニット112は、第2制御信号(second control signal)を発信することにより、選択的に第2テストスイッチ122を導通させることができる。第1テストスイッチ114及び第2テストスイッチ122がいずれも導通しない場合、電圧計測ユニット120は燃料電池102の開回路電圧を計測する。図4に示すように、制御ユニット112は第1制御信号を発信することにより第1テストスイッチ114を導通させる時に、第1テストスイッチ114は導通状態にあり、燃料電池102はテスト電流ISCを燃料電池発電性能の計測装置110に出力する。この時、第2テストスイッチ122が開回路状態を維持することにより、第1テストスイッチ114が導通している期間に、燃料電池102の出力電圧VFCが負荷装置106の動作電圧に影響を及ぼすことを防止することができる。逆に、第1テストスイッチ114が導通しない期間に、制御ユニット112は第2制御信号を発信することにより第2テストスイッチ122を導通させる場合、第2テストスイッチ122は導通状態を維持し、負荷装置106の動作電圧は燃料電池102の出力電圧VFCと等しくなる。この時、燃料電池102はテスト電流ISCを出力せずに、動作電圧V1を負荷装置106に出力する。
【0023】
一実施例では、第1テストスイッチ114が導通した後、制御ユニット112は、燃料電池102の出力電圧の変化及び電流計測ユニット118が測量したテスト電流ISCによって、内部抵抗104のリアルタイム抵抗値Rを計算することができる。燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値の変化傾向により、制御ユニット112は、燃料電池102の発電性能が低下しているか否かを評価することができる。特に、燃料電池102の内部の温度・湿度条件の制御不良(poor control)または電池材料の経年劣化に起因する性能の低下は、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値に顕著な変化を生じさせる可能性がある。
【0024】
一実施例では、燃料電池102の内部温度、空気湿度及び水素圧力が燃料電池102の性能変化に影響を及ぼした場合、制御ユニット112は、燃料電池102の陰極の放熱ファンの回転速度を調整して燃料電池102の内部温度を低下させる方法、燃料電池102の動作電圧を調整する方法、陽極の除水(anode water removal)または短絡加湿(short-circuit humidification)(例えば、プロトン交換膜の湿潤度を維持する)などの方法を電源供給システム100、101に通知することにより、燃料電池102の良好な性能を維持することができる。
【0025】
図2を参照すると、燃料電池の発電性能の計測装置110は、制御ユニット112、第1テストスイッチ114、テスト抵抗116、電圧計測ユニット120、及び差動電圧計測ユニット130を含む。該燃料電池の発電性能の計測装置110と図1の燃料電池の発電性能の計測装置110との相違点は、差動電圧計測ユニット130及び差動電圧計測ユニット130に関連する配置の設計や制御動作にある。差動電圧計測ユニット130は、第1入力端(first input terminal)131、第2入力端(second input terminal)132及び出力端133を有する。上流端(upstream end)における電圧の電圧信号(voltage signal)が入力される第1入力端131は、テスト抵抗116の上流端にカップリングするように接続される。下流端(downstream)における電圧の電圧信号が入力される第2入力端132は、テスト抵抗116の下流端にカップリングするように接続される。上流端における電圧及び下流端における電圧の電圧信号を伝送する出力端133は制御ユニット112にカップリングするように接続される。差動電圧計測ユニット130は、第1テストスイッチ114が導通している場合、第1テストスイッチ114の両端の電圧変化による影響を受けないように、テスト抵抗116の両端(即ち上流端及び下流端)にかかる電圧VSC(テスト電流ISC×テスト抵抗116の抵抗値RSC=テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSC;VSC=ISC*RSC)を計測する。差動電圧計測ユニット130は、例えば、テスト抵抗116の両端の電圧を所定の倍率で調整/増幅する増幅率(amplification factor)を有する差動増幅器である。一実施例では、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCは、例えば、燃料電池の内部抵抗104の所定の抵抗値Rの1/5~1/100である。したがって、制御ユニット112は、テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSCを計測し、テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSCに基づいてテスト電流ISCを取得する場合、テスト抵抗116の抵抗値RSCが燃料電池102の内部抵抗104の所定の抵抗値Rよりもはるかに小さいので、テスト抵抗116の抵抗値RSCを無視し、テスト電流ISCから燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を推定することができる。この場合のリアルタイム抵抗値は約V0/ISCである。
【0026】
図2の燃料電池102、制御ユニット112、第1テストスイッチ114、テスト抵抗116、第2テストスイッチ122及び電圧計測ユニット120間の接続関係に関して、前記一実施例では詳しく説明したので、ここでは説明しない。
【0027】
図3を参照すると、本発明の一実施例に係る燃料電池102の発電性能に関する計測及び制御方法を模式的に示す。本発明の燃料電池102の発電性能に関する計測及び制御方法は、燃料電池102の発電性能を計測するとともに、制御し、以下の工程S110~S140を含む。工程S110では、燃料電池の発電性能の計測装置110が提供され、短絡動作の周期や計測読取の時点等のパラメータが予め設定された。図1及び図2のように、燃料電池の発電性能の計測装置110に関する配置の設計及び動作について以上詳述したので、ここでは言及しない。次に、工程S120において、短絡動作を行う。工程S130では、燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を取得するように計測を行う。その後、工程S140では、リアルタイム抵抗値に基づいて燃料電池102の発電性能を評価する。
【0028】
工程S120では、短絡動作は、例えば、第1テストスイッチ114の導通及び切断を少なくとも一回繰り返すことにより、テスト抵抗116を流れているテスト電流ISC図1に示す)またはテスト抵抗116の両端にかかる電圧VSC図2に示す)をテストする。図1に示すように、第1テストスイッチ114が導通している場合、電流計測ユニット118によって、テスト回路を流れているテスト電流ISCを計測し、制御ユニット112はテスト電流ISCに基づいて燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を取得する。あるいは、図2に示すように、制御ユニット112は、第1制御信号を発信することにより、第1テストスイッチ114の導通を制御し、差動電圧計測ユニット120は、テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSCを計測し、制御ユニット112は、テスト抵抗116の両端にかかる電圧VSCに基づいてテスト電流ISCを取得し、テスト電流ISCに基づいて燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を評価する。
【0029】
短絡動作の波形図は図4を参照されたい。第1テストスイッチ114が導通(ON)であり、第2テストスイッチ122が非導通(OFF)である間、計測されたテスト電流ISC及び出力電圧VFCは、有意に変化し、第1テストスイッチ114が非導通(OFF)であり、第2テストスイッチ122が導通(ON)である間、計測されたテスト電流ISCは0であり、出力電圧VFCは、例えば、動作電圧V1である。第1テストスイッチ114の導通(ON)回数は一回または複数回であり、毎回の導通期間(turn-on period)の時間長さT1は固定値または変動値である。短絡動作において、実際に継続的に電流を出力する時の性能に比較的に近い燃料電池102の発電性能を表すため、第1テストスイッチ114の導通期間の時間長さT1及び第2テストスイッチ122の非導通期間(turn-off duration)の時間長さT2は例えば20msより大きくて、好ましくは、例えば50ms~500msである。時間の長さT1と時間の長さT2は同じでも異なってもよく、設計に応じて決められる。上記のような短絡動作の時間長さとすることにより、以下のことを回避することができる:燃料電池102において燃料電池102の継続放電性能(continuous discharge performance)の低下が、二重層容量(double-layer capacitance)による電気的特性に起因する過渡電流(transient current)により確認されなくなる(遮られる)。さらに、頻繁なテストによって燃料電池102内に短時間に熱が蓄積され、放散できず昇温するなどの問題を避けるために、隣接の二回の短絡動作の間隔の長さT0と第1テストスイッチ114の導通期間の時間長さT1との比は例えば100倍以上(即ちT0/T1>100)であり、隣接の二回の短絡動作の間隔の長さT0は例えば5秒(5000ms)より大きいが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
テスト抵抗116の定格電力(rated power)の過大に起因する問題を解決するために、本燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法は、テスト抵抗116の抵抗値RSCを大幅に引き下げることにより、テスト抵抗116に必要な定格電力を下げる。一実施例では、第1テストスイッチ114が導通している場合、燃料電池102の出力電圧VFCは定格出力電圧VFC0の1/2より低く、及び/または、テスト抵抗116の抵抗値RSCは内部抵抗104の所定の抵抗値Rより小さい。また、選択されたテスト抵抗116の抵抗値RSCが低いほど、テスト電流ISCが高いが、テスト抵抗116による電圧降下分VSCは低い。そのため、テスト抵抗116による出力発熱は逆に少なくなる。
【0031】
また、燃料電池102の継続放電性能の低下が燃料電池102の容量特性により遮られる問題を回避するため、一実施例では、第1テストスイッチ114が導通している場合、第1テストスイッチ114の導通期間の時間長さT1は数十msec~数百msec(例えば50msec~500msec)以上とする。
【0032】
そのため、第1テストスイッチ114の導通期間中に、抵抗値が比較的に低いテスト抵抗116により、出力電圧VFCが短絡(即ちVFC≒VSC1)に近い状況になるが、短絡動作によって内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を取得でき、これを燃料電池102の発電性能の変化の指標とすることができる。さらに、燃料電池102を一定期間使用した後、白金触媒(platinum catalyst)の一部が失活して燃料電池102の性能が低下することがあるが、工程S150のスタック性能の制御によって燃料電池102が再アクティブ化され、燃料電池102の性能が回復することができる。
【0033】
短時間の短絡動作は、上述の第1テストスイッチ114の導通期間の時間長さT1または周期を調整することによって設計されることができ、その時間の長さT1は例えば50ms~500msである。さらに、燃料電池102の反応速度は外部燃料(external fuel)の供給速度によって制限され、陰極と陽極の反応物は外部から供給され、電極内に大量に格納されることはない。したがって、短絡動作は、損傷または安全上の危険性につながることはない。適切な条件下で、短絡動作は積極的に機能し、燃料電池102の発電性能を改善させ、燃料電池102の活性を回復させることがある。
【0034】
図1及び図2を参照すると、電源供給システム100、101は、負荷装置106と共に燃料電池102の両端に並列接続されている補助電力供給ユニット124をさらに含んでもよい。補助電力供給ユニット124は例えば二次電池(例えばリチウム電池)、電気二重層コンデンサ、または、少なくとも1つの他の燃料電池である。第2テストスイッチ122の非導通期間に、燃料電池102の出力電圧VFCが大幅に降下し、負荷装置106の動作電圧が低下しすぎ、負荷装置106の稼動が異常になることを回避するために、補助電力供給ユニット124は、第2テストスイッチ122の非導通期間T2に、負荷装置106が必要とする動作電流を持続に提供する。
【0035】
一方、第1テストスイッチ114の導通期間に第2テストスイッチ122の非導通が維持されるように回路制御を設計することによって、負荷装置106に電力を供給する補助電力供給ユニット124が給電線路を経由して逆方向に多くの電流をテスト抵抗116に提供することが避けられ、電流計測ユニット118または差動電圧計測ユニット130の計測情報が補助電力供給ユニット124の影響を受けることが避けられる。
【0036】
図3を参照すると、一実施例では、燃料電池の発電性能に関する計測および制御方法は、燃料電池102の発電性能をアクティブ化する工程S150をさらに含むことができる。例えば、図5のように、工程S150では、第1テストスイッチ114の導通と切断を少なくとも一回繰り返して、一回または複数回の短絡アクティブ化動作(short-circuit activation operations)を行う。燃料電池102の発電性能をアクティブ化する工程は、短絡アクティブ化動作の時間長さを50msから300msに増加させる工程S151を含むことができ、これにより、燃料電池102の発電性能を向上させ、燃料電池102の活性を回復させることができる。別の一実施例では、燃料電池102の発電性能をアクティブ化する工程は、短絡アクティブ化動作の周期を調整して例えば10秒おきに一回から5秒おきに一回に変える工程S152を含むことができ、これにより、燃料電池102の発電性能を向上させ、燃料電池102の活性を回復させることができる。別の一実施例では、燃料電池102の発電性能をアクティブ化する工程は、燃料電池102の発電性能を改善するためにスタックを交換または修理する工程S153を含むことができる。以下では、異なる実施例について詳細に説明する。
【0037】
図5を参照すると、本発明の一実施例の波形図が示されている。工程S151では、燃料電池102の短絡アクティブ化動作は例えば10秒(10000ms、即ちT0)おきに定期に一回行う。短絡アクティブ化動作の時間長さT1は例えば50msから300msまで徐々に調整され、短絡アクティブ化動作期間(即ち第1テストスイッチ114の導通期間)にテスト抵抗116を流れているテスト電流ISCをパルス負荷テストの電流とする。異なる短絡アクティブ化動作中に制御ユニット112によって読み取れるパルス負荷テストの電流を互いに比較できるようにするために、パルス負荷テストの電流は、例えば、同じ50ミリ秒(ms)の時点(ただし、これに限定されない)で得られる電流データである。これにより、短絡動作期間(時間の長さT1は例えば50ms、100ms、200ms、300msなど)によるパルス負荷電流テストの差異をなくすことができる。
【0038】
図6を参照すると、図5の短絡アクティブ化動作の時間長さを調整する一例の模式図が示されている。まず、燃料電池102をウォーミングアップし、温度を38~40℃で安定に制御し、次に、燃料電池102が定電流(例えば20A)で負荷装置106に放電し、燃料電池102の出力電圧VFCを47Vから50Vに徐々に上昇させ、出力を950Wから1000Wに引き上げる。このとき、燃料電池102の短絡動作期間(時間T1は約50ms)におけるテスト電流ISCの電流値は、約70Aまで安定して上昇する。しかし、制御ユニット112が60分間連続動作すると、テスト電流ISCは約60Aまでゆっくりと低下し始め、燃料電池102の出力電圧VFCは最初の50Vから47.5Vまで低下した。このとき、安定した一定の負荷下で燃料電池102の電圧VFCが低下した。触媒が失活し始めたため、燃料電池102の出力が低下(発電性能が低下)した可能性が示される。つまり、10秒おきに行う50ms一回の短絡動作は燃料電池102のアクティブ化にとって効果が足りないことが示される。
【0039】
図6に示すように、本実施例では、燃料電池102の性能を1000Wに回復させるために、短絡アクティブ化の頻度を10秒おきに一回に維持したまま、短絡アクティブ化動作の時間長さT1を50msから100ms(図5に示すように)に徐々に調整する。30分間継続してアクティブ化を行うと、燃料電池102の発電電力は再び1000Wに回復され、燃料電池102の出力電圧VFCは50Vに回復され、テスト電流ISCも70Aに回復された。
【0040】
図7を参照すると、本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図が示されている。一実施例では、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法は以下の工程S110~S150を含む。同じ工程及び説明は以上のとおりで、これ以上言及しないが、相違点は以下のとおりである。工程S140では、燃料電池102の発電性能を評価する工程は、工程S141~S143を含み、例えば、リアルタイム抵抗値及び回復参考電圧差値(recovery reference voltage difference)と所定の閾値との関係に基づいて発電性能を評価する。工程S141では、短絡動作が終了した後、第2スイッチの非導通期間の時間長さT2を増加させるように負荷の提供を先延ばす。工程S142では、短絡動作が終了した(第1スイッチが切断した)後から、第2スイッチが導通する前までの特定の時点(例えば20msを先延ばした後)で、回復参考電圧差値を計測して、電圧回復速度を比較する。工程S143では、回復参考電圧差値と所定の閾値との関係に基づいて燃料電池102のスタックの性能指標を評価する。工程S150では、燃料電池102の発電性能をアクティブ化する工程は工程S154~S155をさらに含む。工程S154では、燃料電池102の回復参考電圧差値が所定の閾値よりも小さい場合、陽極の水溜まりを除去して燃料電池102の発電性能を向上させるために、制御ユニット112は、パージ排水の周期を短縮させて能動的にパージ排水の頻度を増加させることを電源供給システム100、101に通知する。工程S155では、燃料電池102の回復参考電圧差値が所定の閾値よりも大きい場合、前記第1テストスイッチ114の導通及び切断を少なくとも一回繰り返すことによって一回または数回の短絡アクティブ化動作を行う。制御ユニット112は、短絡アクティブ化動作の時間長さT1及び/または短絡アクティブ化周期を調整することによって、燃料電池102の発電性能を向上させる。工程S142の電圧回復状態の比較に関して、もっと具体的に言えば、第1テストスイッチ121が切断した(短絡を停止した)後、第2テストスイッチ122が導通する前に、燃料電池の電圧の上昇の比率を比較する。本実施例は第1テストスイッチ121が切断した後の20ms時点で回復参考電圧差値を計測する。図9中に示すように、100ms~150msの期間に電圧回復状態が異なる三つの曲線は、回復参考電圧差値がそれぞれΔVre1、ΔVre2、ΔVre3であり、ΔVre1=(Vre1-VC1)、ΔVre2=(Vre2-VC1)、ΔVre3=(Vre3-VC1)である。簡潔にするために、以下、ΔVre1、ΔVre2、ΔVre3のみを比較する場合を説明する。
【0041】
図8図9を参照する。図8図7の短絡動作終了後に負荷時間の供給を遅延させる波形図であり、図9図7の燃料電池のスタックの性能指標を評価するための回復参考電圧差値の波形図である。一実施例では、回復参考電圧差分値を取得するために、燃料電池102の短絡動作は、10秒(すなわち、T0)おきに定期的に行われ、短絡動作の時間長さT1は、例えば100msであり、短絡動作期間の終了後に、例えば、負荷時間を50ms(すなわち、T2-T1)遅延させ、その結果、第2テストスイッチ122の非導通期間の時間長さT2は、約150msであり、第1テストスイッチ114の導通期間の時間長さT1よりも長く、燃料電池102の出力電圧VFCは、第1テストスイッチ121及び第2テストスイッチ122の両方が導通しない期間中に、自然に回復する。一実施例では、第2テストスイッチ122の非導通期間の時間長さT2を増加させ(即ちT2>T1)、燃料電池102の出力電圧VFCを自然に回復(relaxation)させ、制御ユニット112は負荷時間及び読み取った短絡電圧VC1に基づいて燃料電池102の回復参考電圧差値を計算できる。理論的には、燃料電池102の出力は負荷装置106の需要とともに増加し、負荷装置106の動作電流が上昇すると、燃料電池102の温度も上昇する。ファンの速度を上げて空気により熱を放出した後、温度が著しく低下するが、テスト電流ISCは徐々に低下し続け(約ISC1)、出力電圧VFCと出力電力も低下し続けている(例えば、出力電圧VFCはVからVに低下している)場合、図7では、燃料電池スタックの性能指標である回復参考電圧差値の波形図を評価し、燃料電池102の発電性能が理想的でないことが示される。そのため、工程S143では、回復参考電圧差値をモニタリングしたとき、電圧の上昇が緩やかになり、電圧回復の速度が遅くなると評価し、燃料電池102の陽極に水溜り現象があると判断する。工程S154では、少なくとも一回の能動的なパージ排水(purge)を経由した後に、電圧回復の速度が元に回復しただけでなく、テスト電流ISCも明らかに上昇する。つまり、燃料電池102のスタック性能指標に基づいて、可能な要因を見出して排除した後に、燃料電池102の発電性能は迅速に回復できる。
【0042】
図9を参照すると、第2テストスイッチ122が遅延されて導通しない期間内(例えば100ms~150ms)に、特定の時点の回復参考電圧、例えば120msの時点の回復参考電圧Vre1、Vre2、Vre3を測量するが、これに限定しない。そして、複数の同一の当該特定の時点の回復参考電圧Vre1、Vre2、Vre3間の回復参考電圧差値(即ちΔVre1、ΔVre2、ΔVre3)が所定の閾値(所定の閾値は例えば所期の電圧差値の95%より低いが、これに限定しない)より大きいか否かを比較する。回復参考電圧差値がΔVre1から徐々に低下してΔVre2になった(≒ΔVre1×0.90<ΔVre1×0.95)場合、電圧回復の速度が明らかに異常に遅いことが示される。したがって、工程S155では、短絡動作の時間長さT1(例えば、50ms、100ms、200ms、300ms)を調整すること、及び/または、短絡アクティブ化の周期を調整する(例えば、5秒おきを10秒おきに変更する)ことにより、燃料電池102の性能を向上させることができる。例えば、図9において、VC1は異なる程度の水溜まり状態での短絡動作中の燃料電池102の短絡電圧を示し、回復参考電圧がVre1~Vre3の範囲にある場合、燃料電池102の動作電圧(V~V)が正常の範囲にあり、回復参考電圧差値が閾値(ΔVre3≒ΔVre1×0.95)より小さくならず、まだ許容範囲内にある。回復参考電圧がVre2~re3の範囲にある場合、燃料電池102の動作電圧(V~V)が正常の状態に回復しておらず、回復参考電圧差値が所定の閾値よりも小さく、スタックの性能を調節する必要がある。例えば、工程S154では、少なくとも一回の能動的なパージ排水によって燃料電池102の発電性能を向上させることができ、電圧回復の速度を元に戻しただけでなく、テスト電流ISCも明らかに上昇させる。
【0043】
図10及び図11を参照する。図10は、本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図を示し、図11は、図10のリアルタイム電流値の波形図を示す。一実施例では、燃料電池102の発電性能に関する計測及び制御方法は、以下の工程S110~S150を含む。同じ工程及び説明は以上のとおりで、これ以上言及しないが、相違点は以下のとおりである。燃料電池102の内部抵抗104のリアルタイム抵抗値を取得するように計測する工程S130は、燃料電池102のリアルタイム電流値を計測する工程S131をさらに含む。一実施例では、制御ユニットは例えば少なくとも三つの時点(これに限定しない)を選択して、燃料電池102のリアルタイム電流値を測量し、これにより、燃料電池102内部抵抗の変化を判断するための有効な指標を取得する。また、工程S140では、リアルタイム抵抗値、リアルタイム電流値に基づいて、燃料電池102の発電性能を評価する。例えば、図11では、短絡動作期間の時間長さT1は、例えば100msであり、短絡動作期間内に複数の計測時点を選定し、例えば20msおきに一つの時点を設定し、30、50、70msで計測したが、これに限定しない。30ms、50ms、70msの三つの時点で得られたリアルタイム電流値をそれぞれI30、I50及びI70とする。各リアルタイム電流値はそれぞれ、一定の不変の電流成分Ibaseと、一定の時定数に従ってゆっくりと減衰する(すなわち、減衰率)電流成分Ipxとを含む。図11に示すように、I30、I50及びI70のリアルタイム電流値から代数演算を経て、一定の不変の電流成分と、時間とともに徐々に減衰して消失する電流成分Ipx(またはほぼ時間0である場合のピーク電流の開始値)と、減衰率(さらに減衰の時定数を算出する)との3つの未知数を算出することができる。このうち、電流成分Ibaseは過渡応答がなくなり最終的に安定した短絡電流である。一実施例の実験では、燃料電池の陰極と陽極にそれぞれ高湿度の空気と水素を通し、約50分間発電を行った間に、燃料電池102の内部に水が溜まり、発電性能が約23%までに徐々に低下した。この間、上記の方法を用いて短絡動作を継続して行い、それぞれ30ms、50ms、70msの三つの時点の電流を取得し、I30、I50及びI70とし、これに基づいて各短絡動作期間中のIbase電流をモニタリングした。実験開始時、10分、20分、50分などの四つの時点で四回の短絡電流データ(Ibase)をそれぞれ53.5A、33.0A、24.2A、17.2Aと取得した。これにより、短絡電流データの著しい変化に基づいて、水溜まりの初期で早期警報を得ることができる。燃料電池102の発電性能を評価するために、このような電流成分Ibaseは、リアルタイム抵抗値を計算するためのテスト電流として制御ユニット112に提供され、さらに、燃料電池102のスタック内部が水溜まりしているか否かを判断するためのスタック性能指標としても有効であり、燃料電池102の内部での「ガス拡散による抵抗」を反映することができる。
【0044】
図12及び図13を参照する。図12は本発明の別の実施例に係る燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法の模式図であり、図13図12の短絡開始の瞬間の電流ピークの波形図である。一実施例では、燃料電池102の発電性能に関する計測及び制御方法は以下の工程S110~S150を含む。同じ工程及び説明は以上のとおりで、これ以上言及しないが、相違点は以下のとおりである。リアルタイム抵抗値に基づいて燃料電池102の発電性能を評価する工程S140は、工程S144をさらに含む。工程S144では、制御ユニット112は、所定の短絡が開始した後の一定の期間内(例えば第1テストスイッチ114が導通した後の5μs~5000μs)に、リアルタイム電流データの取得、記録及び比較を経て、当該期間内の短絡開始の瞬間の電流ピーク値を取得する。定期的に短絡動作期間内のピーク値を記録し、異なる短絡動作期間中における電流ピーク値の変化を比較して、燃料電池102のイオン伝導膜の導電性の変化を取得することにより、燃料電池102のスタック性能指標を評価する。このようなイオン伝導膜の電気伝導特性は主にオーム特性であり、短絡テストの初期ピーク電流から大きく影響される。好ましくは、短絡開始の瞬間のピーク電流から当該イオン伝導膜が良好な状態にあるか否かを計測する。理論上、燃料電池102の電圧の変化は抵抗と容量特性として現れ、短絡テストの最初は電流が最大となり、その後、徐々に低下する。しかし、燃料電池102のスタックから第1テストスイッチ114までの短絡回路における回避不可能なインダクタンス効果によって、短絡開始の瞬間の電流ピーク値の立ち上がりが数μs~数百μs遅延する。正確な短絡開始の瞬間の電流ピーク値を抽出して記録するためには、ピーク電流立ち上がり時点を逃さないように、当該遅延期間については比較的高速、高頻度のサンプリングレートとアナロジー/デジタル(analog/digital)変換レートが必要である。あるいは、このようなアナロジー/デジタル信号を処理できる態様としては、前述の制御ユニット112が、比較的長いサンプリング周期においても短絡開始の瞬間の電流ピークを取得できるように、ピーク検知保持回路を使用して、当該時間帯に発生する電流ピーク信号を比較的に長時間保持してもよい。一実施例では、制御ユニット112が短絡開始の瞬間の電流ピークを取得できるように、上記の制御ユニット112はピーク検知保持回路を備えてもよい。
【0045】
例えば、図13では、短絡開始の瞬間の電流ピーク値に基づいて燃料電池102のスタック性能を計測するために、本実施例では、0.7ミリオームの短絡抵抗を用いて計測された、燃料電池のインピーダンススペクトルに基づき、短絡パルスに対する、周波数領域での応答を計算する。フーリエ変換(FFT)を経て時間領域での応答を観察すると、短絡開始の瞬間の電流ピークが通常、第1テストスイッチ114の導通直後の短い時間内(例えば5~15μs)に現れることが判った。データグラフ#1~#4は、正常動作時、通常の湿度の水素ガスと空気を使用した場合の燃料電池の短絡開始の瞬間のピーク電流の波形である。データグラフ#5~#7は、実験の過程で、除水乾燥処理した空気と水素ガスをそれぞれ陰極と陽極に通し、約45分間後、燃料電池の発電性能が約10%低下していることを示している。テストによりインピーダンススペクトルの分析結果を得た。図13の#5、#6、#7の3つの短絡電流の波形に示すように、3つのピーク電流の差異を比較するために、図13は、短絡開始から約30μsまでの電流波形を時間拡大図で示して、それぞれの電流ピークの差異を示している。短絡開始の瞬間のピーク電流からわかるように、乾燥ガスによって燃料電池の発電性能が低下し、ピーク電流が顕著に低下した(#5のピーク電流の約144Aから#7のピーク電流の約89.67Aまで低下し、その差は約37%であり、より顕著な有意差を有する)。一方、#1~#4の電流の波形では、ピーク電流が177.6Aから170.8Aに変化し、明らかな変化はない。#5~7と#1~4とを比較すると、燃料電池102において高周波応答を示したプロトン交換/伝導膜では、インピーダンスの変化が明らかに増加している。したがって、本実施例の短絡開始の瞬間の電流ピーク値の計測は、スペクトル中の高周波インピーダンスの計測ポイントように、異常に乾燥であることに起因する燃料電池102のプロトン交換/伝導膜のインピーダンスの変動を早期に予見することができ、燃料電池のスタック性能指標を評価することができる。
【0046】
後続の工程S150及び工程S150のサブ工程S151~S155は、燃料電池102の発電性能をアクティブ化するためのものであり、上述の実施例で説明したので、ここでは説明を省略する。燃料電池102の発電性能を評価するために、第1実施例(工程S151)、第2実施例(工程S152)、第4実施例(工程S131)のいずれかを選択できる。しかし、実際の需要に応じて、第1実施例(工程S151)、第2実施例(工程S152)、第4実施例(工程S131)の一つを任意に選択してそれぞれ第3実施例(工程S141~S143、S154~S155)及び第5実施例(工程S144)と組合せることができる。燃料電池102の発電性能をさらに有効的に評価するために、上記工程を同時にまたは順次に行うことができる。しかし、これらに限定されない。
【0047】
本発明の実施例に係る電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置及びその燃料電池の制御方法は、制御ユニットを介して燃料電池のリアルタイム発電性能を計測、評価、アクティブ化することにより、燃料電池を良好な動作状態に維持することができる。特に車両や航空機のような高出力を必要とする電源システムに応用される場合、本発明の電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置およびその燃料電池の制御方法は、車両又は航空機がタスク遂行中に、燃料電池の発電性能を確保することができる。空気流の変化や飛行振動などの過酷な環境に直面した場合に、燃料電池の性能変化を瞬時に把握し、燃料電池内部の温度を低下させ、燃料電池の動作電圧を調整し、陽極除水、短絡加湿などの方法で、燃料電池の良好な発電性能を維持する目的を達成できる。一実施例では、燃料電池発電性能に関する計測及び制御方法により得られる内部抵抗のリアルタイム抵抗値を燃料電池の性能変化の指標とすることができる。短絡アクティブ化動作の時間長さを調整して、短絡アクティブ化動作の期間を調整して、第2テストスイッチの非導通期間の時間長さを遅延させ、回復参考電圧差値を計測し、リアルタイム電流値及び/または短絡開始の瞬間の電流ピーク値を計測することによって、燃料電池の発電性能を改良して、スタックの性能指標を評価する。もちろん、本実施例の電源供給システム、その燃料電池の発電性能の計測装置及びその燃料電池の制御方法は、燃料電池のスタックの性能指標の根拠として、燃料電池の発電性能が低下しているか否かを判定するように、静的性能検査や負荷シミュレーションシステムに適用することができる。
【0048】
以上のように、本発明は実施例によって明らかにされているが、これらに限定するものではない。本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、各種の変更及び修正を行うことができるものとする。したがって、本発明の保護の範囲は、明細書によって定義されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】