(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067021
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】オンコスタチンM受容体シグナリング制御による非アルコール性脂肪性肝疾患、肝硬変又は肝癌の予防と治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240509BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240509BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240509BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P1/16
A61P35/00
A61K38/19
C12Q1/02
C07K14/52
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
C12N15/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187881
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022176773
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022192237
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308038613
【氏名又は名称】公立大学法人和歌山県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 吉博
(72)【発明者】
【氏名】小森 忠祐
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA40
2G045FB04
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX01
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA01
4C084MA16
4C084MA31
4C084MA34
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB26
4C084ZC02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】非アルコール性脂肪肝(NAFL)から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、さらには肝硬変や肝癌への進展を抑制し得る新規なNASHの予防及び治療薬を提供すること。
【解決手段】オンコスタチンM(OSM)とその受容体とを介したシグナリングを増強する物質を含有してなる、
(1)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防及び/又は治療用、
(2)NASHから肝硬変又は肝癌への進展抑制用、又は
(3)肝硬変又は肝癌治療用の
剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンコスタチンM(OSM)とその受容体とを介したシグナリングを増強する物質を含有してなる、
(1)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防及び/又は治療用、
(2)NASHから肝硬変又は肝癌への進展抑制用、又は
(3)肝硬変又は肝癌治療用の
剤。
【請求項2】
前記物質がOSM受容体に対するアゴニストである、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記アゴニストが、OSM又は肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するそのフラグメントである、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
OSMが、以下の(a)又は(b):
(a)配列番号4で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号4で表わされるアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するポリペプチド
である、請求項3に記載の剤。
【請求項5】
NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質を、OSM受容体を発現する細胞に接触させる工程、並びに
(2)被検物質の非存在下と比較して、OSM受容体を介したシグナリングを増大させた被検物質を、NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変又は肝癌の予防・治療剤に関する。より詳細には、本発明は、オンコスタチンMとその受容体とを介したシグナリングを増強する物質を含有してなる、非アルコール性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎への進展予防、非アルコール性脂肪肝炎の症状改善、非アルコール性脂肪肝炎から肝硬変や肝癌への進展抑制、又は肝硬変や肝癌の症状改善剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満を基盤としたインスリン抵抗性は、糖尿病、高脂血症、高血圧を惹起する。肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧が集積した状態はメタボリック症候群と呼ばれ、動脈硬化性疾患の重篤な危険因子となる。動脈硬化性疾患は、しばしば糖尿病患者を死に至らしめることがよく知られているが、糖尿病患者の死因の約1/8が肝硬変や肝癌という肝疾患によるものである。近年、これらの肝疾患の原因となる非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)が注目されている。NAFLDは、メタボリック症候群におけるインスリン抵抗性や高脂血症が原因となり、肝細胞へ脂肪が蓄積すること(その状態は非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver: NAFL)と呼ばれる)により発症する(
図1)。NAFLに炎症が加わった病態は、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)と呼ばれ、さらに線維化が進行すると肝硬変となり、最終的には肝癌へと進展する(
図1)。NAFLDは、NAFLとNASHを合わせた総称である。
【0003】
成人におけるNAFLDの有病率は、先進国、発展途上国を問わず約25%と高く、NAFLのうち6-30%がNASHへと進行すると考えられている。日本においても、NAFLDの患者数は約2000万人、NASHの患者数は100-200万人と推定されており、非常に多い。NASHにはこれまで薬物療法、瀉血療法、及び肝移植など様々な治療が試みられてきたが、確立された治療法がないのが現状である。また、NAFL/NASHを基盤とした肝癌の発症原因に関しては研究報告も少なく、有効な治療法の開発が望まれている。
【0004】
オンコスタチンM(OSM)は、その受容体複合体の中にgp130を共有するIL-6ファミリーに属するサイトカインである。OSMはヒト腫瘍細胞の増殖抑制作用を有する因子として見出されたが、抗腫瘍作用のみならず、多彩な機能を担う分子であることが明らかとなってきている。本発明者らは以前、OSMはその受容体を介して、メタボリック症候群に関連する肝細胞への脂肪蓄積と脂肪組織の炎症、及びインスリン抵抗性を改善することを報告した(特許文献1、非特許文献1及び2)。
【0005】
しかしその一方で、OSMを野生型マウスの正常肝臓で過剰発現させると著しく肝線維化が進行し、逆に、OSMノックアウトマウスに慢性肝炎モデル化を施すと肝線維化が有意に軽減されることや、OSMがコラーゲンIやTIMP-1分泌を増大させることによって肝星細胞/筋線維芽細胞の応答を調節し、慢性肝疾患における線維形成を促進する役割を果たし得ること(非特許文献3)、進行性NAFLDのモデル動物や患者でOSMが過剰発現し、筋線維芽細胞の遊走を刺激することにより線維化促進因子として作用すること(非特許文献4)等が報告されている。
このように、OSM/OSMRシグナリングの促進が、NAFLからNASHへの進展やNASHを基盤とした肝癌の発症に対しても、予防及び治療的な効果を有するか否かは全く不明のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Komori, T. et al., J. Biol. Chem., 289(20): 13821-13837 (2014)
【非特許文献2】Komori, T. et al., Diabetologia, 58: 1868-1876 (2015)
【非特許文献3】Matsuda, M. et al., Hepatology, 67(1): 296-312 (2018)
【非特許文献4】Foglia, B. et al., Cells, 9(28): (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、NAFLからNASH、さらには肝硬変や肝癌への進展を抑制し得る新規のNASHの予防及び治療薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、NAFLからNASH、さらには肝硬変や肝癌への進展におけるOSM/OSMRシグナリングに着目し、NASHモデルマウス及びNASHを介して肝癌を発症するモデルマウスを用いて、NASHやそれを基盤とした肝癌に対するOSM/OSMRの役割について検討した。その結果、NASHモデルマウスにおいて、OSMの投与は肝細胞の炎症を軽減し、肝機能を改善した。OSMの投与により炎症性(M1型)の肝マクロファージや炎症性サイトカイン発現が低減し、肝細胞死が抑制され、肝細胞の再生が誘導された。また、OSMの投与により、抗炎症作用を有する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)及び肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子の発現が上昇した。次に、本発明者らは、NASHモデルマウスにストレプトゾトシンを投与してNASHを基盤とする肝癌発症モデルを作製し、OSMRβ遺伝子欠損マウスと野生型マウスとで肝癌の発症を比較したところ、OSMRβ遺伝子欠損マウスにおいて肝癌の発症頻度がより高かった。そこで、当該肝癌発症モデルマウスに対し、NASH期にOSMを投与したところ、肝癌の発症が顕著に抑制された。
加えて、本発明者らは、OSMRβ遺伝子欠損マウスのSTAMモデルでは、野生型マウスと比較して老化肝細胞の指標であるp21陽性細胞の増加が認められ、さらに、老化肝細胞の除去に働くNK細胞が減少していることを確認した。加えて、発明者らは、OSMRβ遺伝子欠損マウスのSTAMモデルに対してOSMを腹腔内投与すると、投与後の肝においてCXCL10の発現増加がみられ、また、NASH期のSTAMモデルマウスの肝より分取した類洞内皮細胞をOSMで刺激すると、CXCL10の発現が増加することも確認した。
これらの知見に基づいて、本発明者らは、OSM/OSMRシグナリングを増強することにより、NAFLからNASH、さらにはNASHから肝硬変や肝癌への進展を抑制し得ることを実証し、加えて、OSM/OSMRシグナリングを増強することにより類洞内皮細胞におけるCXCL10の発現を増強することでNK細胞の肝への集簇を促し、NK細胞による老化肝細胞の除去が促進される結果として、NASH、肝硬変、或いは肝癌を治療し得ること見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]オンコスタチンM(OSM)とその受容体とを介したシグナリングを増強する物質を含有してなる、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防及び/又は治療剤。
[2]前記物質がOSM受容体に対するアゴニストである、[1]に記載の剤。
[3]前記アゴニストが、OSM又は肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するそのフラグメントである、[2]に記載の剤。
[4]OSMが、以下の(a)又は(b):
(a)配列番号4で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号4で表わされるアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するポリペプチド
である、[3]に記載の剤。
[5]NASHから肝硬変又は肝癌への進展抑制用である、[1]~[4]のいずれかに記載の剤。
[6]NASHの予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質を、OSM受容体を発現する細胞に接触させる工程、並びに
(2)被検物質の非存在下と比較して、OSM受容体を介したシグナリングを増大させた被検物質を、NASHの予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程
を含む、方法。
或いは、本発明は以下の通りである。
[A1]
オンコスタチンM(OSM)とその受容体とを介したシグナリングを増強する物質を含有してなる、
(1)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防及び/又は治療用、
(2)NASHから肝硬変又は肝癌への進展抑制用、又は
(3)肝硬変又は肝癌治療用の
剤。
[A2]
前記物質がOSM受容体に対するアゴニストである、[A1]に記載の剤。
[A3]
前記アゴニストが、OSM又は肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するそのフラグメントである、[A2]に記載の剤。
[A4]
OSMが、以下の(a)又は(b):
(a)配列番号4で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号4で表わされるアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、肝障害改善及び/又は肝再生活性を有するポリペプチド
である、[A3]に記載の剤。
[A5]
NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質を、OSM受容体を発現する細胞に接触させる工程、並びに
(2)被検物質の非存在下と比較して、OSM受容体を介したシグナリングを増大させた被検物質を、NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程
を含む、方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、OSM/OSMRシグナリングを増強することでNAFLからNASH、さらにはNASHから肝硬変や肝癌への進展を抑制することができ、さらに肝硬変や肝癌における老化肝細胞の除去を促進することで、これら疾患の症状を改善することができる。また、OSM-OSMRシグナル伝達系を用いて、新規のNASH、肝硬変及び肝癌の予防及び/又は治療薬を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】メタボリック症候群からNAFL、NASHを経て肝癌の発症に至る病態進展の様子と、本発明において見出されたOSMの効果の作用点を示す模式図である。
【
図2】NASHモデルマウス、及びNASHを介して肝癌を発症するモデルマウスの肝臓におけるOSM、及び0SMRβの発現を示す図である。NASHモデルマウスとして、メチオニン・コリン欠乏食(MCD食)給餌のC57BL/6Jマウス(A, D; 野生型MCD)、及びMCD食給餌のob/obマウス(B, E; ob/obMCD)を用いた。NASHを基盤として肝癌を発症するモデルマウスとしてSTAMマウス(C, F)を用いた。それらのマウスの肝におけるOSM(A-C)とOSMRβ(D-F)の発現を検討した。各グラフにおいて、野生型は、普通食(MF)給餌のC57BL/6Jマウスである。* p < 0.05
【
図3】NASHモデルマウスの肝臓におけるOSM及び0SMRβの発現局在を示す図である。MCD食給餌のC57BL/6Jマウスの肝におけるOSM及びOSMRβの発現を検討した。(A) OSMとF4/80の二重免疫染色。矢頭は二重陽性細胞を示している。DAPIにて対比染色を行った。スケールバー = 25 μm。(B) OSMRβの免疫染色。メチルグリーンにて対比染色を行った。OSMRβは肝細胞(矢頭)や炎症細胞(矢印)に発現が認められた。スケールバー = 50 μm。(C) OSMRβと、F4/80(上段)又はLyve-1(下段)との二重免疫染色。矢頭は二重陽性細胞を示している。DAPIにて対比染色を行った。スケールバー = 10 μm。
【
図4】STAMマウスの肝臓におけるOSMRβの発現を示す図である。STAMマウスのNASH期の肝臓におけるOSMRβの発現細胞を検討した。OSMRβとアルブミン (A)、F4/80 (B) 又はLyve-1 (C)との二重免疫染色。DAPIにて対比染色を行った。OSMRβは、肝細胞 (A)、マクロファージ (B) 及び類洞内皮細胞 (C) において発現が認められた。矢頭は二重陽性細胞を示している。スケールバー = 20 μm。
【
図5】OSM遺伝子欠損マウスにおけるNASHの増悪を示す図である。野生型(WT)とOSM遺伝子欠損マウス(KO)にMCD食を4週間給餌した。(A) OSM遺伝子欠損マウスの肝におけるヘマトキシリン・エオシン(HE)染色像。矢頭は炎症細胞巣を示している。CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(B) OSM遺伝子欠損マウスの肝における炎症細胞巣数の定量化結果を示す。(C) OSM遺伝子欠損マウスの肝における炎症性サイトカインの遺伝子発現量を示す。(D) OSM遺伝子欠損マウスの血中AST/ALT濃度の測定結果を示す。* p < 0.05
【
図6】OSM遺伝子欠損マウスにおけるNASH増悪メカニズムを示す図である。野生型マウス(WT)とOSM遺伝子欠損マウス(KO)にMCD食を4週間給餌してNASHモデルを作製した。(A) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるF4/80の免疫染色像を示す。矢頭はhCLS(hepatic crown-like structure;肝王冠用構造)を示している。ヘマトキシリンにて対比染色を行った。CV;中心静脈。スケールバー = 100 μm。(B) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるF4/80陽性面積の定量化結果を示す。(C) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるマクロファージのM1型マーカー(iNOS, CCR2)とM2型マーカー(Arg1, CD206)の発現を示す。(D) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるhCLS数を示す。(E) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるTUNEL染色の染色像を示す。矢頭はTUNEL陽性細胞を示している。CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(F) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるTUNEL染色によるアポトーシス細胞の定量化結果を示す。(G) 野生型マウス(WT)及びOSM遺伝子欠損マウス(KO)の肝におけるGPX4遺伝子の相対発現量を示す。* p < 0.05
【
図7】OSM投与によるNASHの改善効果を示す図である。NASHモデルマウス(ob/obマウスにMCD食を4週間給餌したモデル)にOSMを1週間腹腔内投与した(1日2回、1回当たり12.5 ng/g体重)。Veh:ビヒクル投与。(A) OSM投与後の肝HE染色像を示す。矢頭は炎症細胞巣を示している. CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(B) OSM投与後の肝における炎症細胞巣数の定量化結果を示す。(C) OSM投与後の血中AST/ALT濃度を示す。 (D) OSM投与後の肝におけるF4/80の免疫染色像を示す.矢頭はhCLSを示している。ヘマトキシリンにて対比染色を行った。CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(E) OSM投与後の肝におけるF4/80陽性面積の定量化結果を示す。(F) OSM投与後の肝におけるhCLS数の定量化結果を示す。(G) OSM投与後の肝における炎症性サイトカインの遺伝子発現量を示す* p < 0.05
【
図8】OSM投与によるNASHの改善メカニズムを示す図である。NASHモデルマウス(ob/obマウスにMCD食を4週間給餌したモデル)にOSMを1週間腹腔内投与した(1日2回、1回当たり12.5 ng/g体重)。Veh:ビヒクル投与。(A) OSM投与後の肝におけるTUNEL染色による染色像を示す。矢頭はTUNEL陽性細胞を示している。CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(B) OSM投与後の肝におけるTUNEL染色によるアポトーシス細胞の定量化結果を示す。(C) OSM投与後の肝におけるKi67陽性細胞の免疫染色像を示す。矢頭はKi67陽性細胞を示している。CV:中心静脈。スケールバー = 100 μm。(D) OSM投与後の肝におけるKi67陽性細胞の定量化結果を示す。* p < 0.05
【
図9】OSM投与によるNASHモデルマウスの類洞内皮機能、及び細胞増殖関連遺伝子の発現変化を示す図である。NASHモデルマウス(ob/obマウスにMCD食を4週間給餌したモデル)にOSM(12.5 ng/g体重)を腹腔内投与し、その1時間後と2時間後の肝における類洞内皮機能関連遺伝子(eNOS, VEGF)、及び肝細胞増殖関連遺伝子(HGF, MET)の発現変化を検討した。コントロールと比較して、OSM投与により、eNOS及びHGFの発現増加が認められた。* p < 0.05
【
図10】0SMRβ遺伝子欠損マウスのSTAMモデルにおける肝癌の発症を示す図である。OSMRβ遺伝子欠損マウス(OSMRβ
-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)においてSTAMモデルを作成し、肝臓における肝癌の発症を検討した.(A) STAMモデルマウスから切除した肝臓の写真を示す。野生型マウス、OSMRβ遺伝子欠損マウス共に肝癌の発症が認められたが、OSMRβ遺伝子欠損マウスにおいてより多くの肝癌の発症が認められた。スケールバー= 1 cm。(B) 腫瘍数の測定結果を示す。* p < 0.05
【
図11】OSM投与による肝癌発症の抑制効果を示す図である。NASH期である8週齢のSTAMマウスに対し、1週間OSMを腹腔内投与した(1日2回、1回当たり12.5 ng/g体重)。肝癌の発症は16週齢において検討した。(A) STAMモデルマウスから切除した肝臓の写真を示す。野生型マウスでは、多数の肝癌の発症が認められたが、OSMの投与により肝癌の発症が抑制された。スケールバー= 1 cm。(B) 腫瘍数の測定結果を示す。* p < 0.05
【
図12】OSMRβ遺伝子欠損マウスのSTAMモデルにおける老化肝細胞関連因子を検討した結果を示す図である。
図12(A)は、OSMRβ遺伝子欠損マウスの肝において、野生型マウスと比較して、老化肝細胞の指標であるp21陽性細胞の増加が認められたことを示す。
図12(B)は、OSMRβ遺伝子欠損マウスの肝においてはNK細胞が減少していることを示す。
図12(C)は、OSMRβ遺伝子欠損マウスのSTAMモデルにおけるOSMの腹腔内投与後の肝において、CXCL10の発現が増加したことを示す。
図12(D)は、NASH期のSTAMモデルの肝より分取された類洞内皮細胞をOSMで刺激すると、CXCL10の発現が増加することを示す。図中の「*」は、p<0.05を意味し、Scale barは50μmをそれぞれ意味する。
【
図13】OSMによるNASH及びそれを基盤とする肝癌発症の抑制並びに肝癌治療メカニズムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、オンコスタチンM(OSM)とその受容体のシグナリングを増強する物質を含有してなる、
(1)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の予防及び/又は治療用、
(2)NASHから肝硬変又は肝癌への進展抑制用、又は
(3)肝硬変又は肝癌治療用の
剤(以下、「本発明の剤」ともいう。)を提供する。
【0014】
本明細書において「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」とは、メタボリック症候群におけるインスリン抵抗性や高脂血症等、アルコール以外の原因により、肝細胞へ脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪肝であって、かつ肝細胞の炎症を伴う病態をいう。単なる非アルコール性脂肪肝(NAFL)とNASHを総称してNAFLDという。
【0015】
(オンコスタチンM(OSM))
オンコスタチンM(OSM)は、IL-6ファミリーに属するサイトカインであり、ヒトでは、配列番号2で表される252アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する前駆体として翻訳された後、1-25位のシグナルペプチド及びC末端の31アミノ酸が除かれ、26-221位の196アミノ酸からなる成熟型となる。ヒト成熟OSMのアミノ酸配列を配列番号4に示す。尚、本明細書において、タンパク質及びペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。
【0016】
本明細書において、「オンコスタチンM(OSM)」とは、
(a)配列番号4で表されるヒト成熟OSMのアミノ酸配列;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMの、他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ニワトリなど)におけるオルソログのアミノ酸配列;又は
(c)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMもしくは上記(b)のオルソログの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型におけるアミノ酸配列を意味する。
好ましくは、OSMは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMもしくはその天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型である。当該遺伝子多型としては、例えば、dbSNPに登録されているSNPs(ヒトの場合、UniProtKBのP13725(https://www.uniprot.org/uniprotkb/P13725/entry)の「Variants」に列挙される疾患と関連しない(DISEASE ASSOCIATION: No)SNPs、マウスの場合、UniProtKBのP53347(https://www.uniprot.org/uniprotkb/P53347/entry)の「Variants」に列挙される疾患と関連しない(DISEASE ASSOCIATION: No)SNPs等)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
(オンコスタチンM受容体(OSMR))
オンコスタチンM受容体(OSMR)は、OSMと結合して下流の因子にシグナルを伝達する細胞表面受容体であり、OSM特異的なオンコスタチンM受容体β(OSMRβ)と、IL-6ファミリーの受容体に共通するgp130とのヘテロ二量体である。OSMはOSMRβ及びgp130のいずれとも低親和性で結合できるが、単独で結合しても細胞内にシグナルを伝達できない。OSMがOSMRβとgp130とのヘテロ二量体に高親和性に結合することで、Ras-MAPK経路の活性化や、JAK-STAT経路によるSTAT3、STAT5の活性化が起こり、細胞内シグナルが伝達される。
OSMRβは1回膜貫通型のタンパク質であり、ヒトでは、配列番号6で表される979アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し、そのうち1-27位がシグナルペプチドであり、28-740位が細胞外領域、741-761位が膜貫通領域、762-979位が細胞内領域である。なお、ヒトOSMRβのアミノ酸配列をコードする部分を含む塩基配列は、配列番号5で表される。
【0018】
本明細書において、「OSMRβ」とは、配列番号6で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号28-979で表されるアミノ酸配列と、同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。「配列番号6で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号28-979で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」とは、
(a)配列番号6で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号28-979で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMRβの、他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ニワトリなど)におけるオルソログのアミノ酸配列;又は
(b)配列番号6で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号28-979で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMRβもしくは上記(a)のオルソログの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型におけるアミノ酸配列
を意味する。
好ましくは、OSMRβは配列番号6で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号28-979で表されるアミノ酸配列からなるヒト成熟OSMRβもしくはその天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型である。当該遺伝子多型としては、例えば、dbSNPに登録されているSNPが挙げられるが、それらに限定されない。
【0019】
本発明の剤の有効成分として用いられる「OSMとその受容体とを介したシグナリングを増強する物質」としては、OSMとOSMRとの相互作用による前記いずれかの経路を活性化させ得る限り特に制限はないが、OSMRに結合して当該受容体を介したシグナリングを活性化し得る物質、即ち、OSMRに対するアゴニストであることが好ましい。OSMRに対するアゴニストとして、例えば、OSM自体もしくはその等価物(以下、「OSM類」ともいう。)を挙げることができる。OSM類は、配列番号4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。
【0020】
OSM類は、ヒトや他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ニワトリなど)のOSM産生細胞(例、活性化マクロファージ、I型ヘルパーT(Th1)細胞等)もしくはそれを含む組織から単離・精製される蛋白質であってもよい。また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成された蛋白質であってもよいし、あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
【0021】
配列番号4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、当該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸残基の割合(%)を意味する。本明細書におけるアミノ酸配列の同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
【0022】
OSM類は、配列番号4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と同質の活性を有する蛋白質である。ここで「活性」とは、例えば、受容体との結合活性や、マクロファージの表現型を非炎症性(M2型)にシフトさせる活性、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β等)の発現抑制活性、肝細胞死抑制活性、肝再生促進活性、eNOSやHGFの発現誘導活性、肝細胞における抗炎症活性等、NAFLからNASH及び/又はNASHから肝硬変・肝癌への進展を抑制する任意の活性を意味する。ここで「同質」とは、それらの活性が定性的に同じであること意味する。したがって、OSM類の活性は野生型OSMと同等もしくはそれ以上であることが好ましいが、これらの活性の程度は異なっていてもよい。
【0023】
あるいは、本発明で用いられるOSM類としては、例えば、(i)配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1~30個程度、より好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども含まれる。
【0024】
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は特に制限されない。例えば、OSMのヘリックスBとヘリックスCとの間のループ領域の一部又は全部を欠失させた高活性変異体(J. Biol. Chem. 287(39): 32848-32859)をあげることができるが、これらに限定されない。
【0025】
OSM類はまた、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と同質の活性(例、肝障害改善活性、肝再生活性など)を有する限りにおいて、配列番号4で表されるアミノ酸配列又はそれに対応する成熟OSMのアミノ酸配列の一部のみを含む、それらのフラグメントであってもよい。
【0026】
本発明で用いられるOSM類は遊離体であってもよいし、塩であってもよい。そのような塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属、アルカリ土類金属)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0027】
OSM類は、前述したヒトや他の温血動物のOSM産生細胞もしくは組織の細胞外マトリクスや培養上清から、自体公知の蛋白質の精製方法、例えば、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等を用いて単離することができる。また、OSM類は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。即ち、OSM類を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより製造することができる。
【0028】
好ましい実施態様においては、OSM類は、それをコードする核酸を含有する形質転換体を培養し、得られる培養物から分離精製することによって製造することができる。ここで核酸はDNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合は、好ましくは二本鎖DNAである。OSM類をコードするDNAは、例えば、OSMのcDNA配列情報に基づいてオリゴDNAプライマーを合成し、OSMを産生する細胞より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。得られたcDNAを鋳型にして、自体公知の部位特異的変異誘発法を用いて、各種変異を導入することができる。
【0029】
OSM類をコードするDNAとしては、例えば、配列番号3で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した野生型OSMと同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。配列番号3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号3で表される塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
OSM類をコードするDNAは、好ましくは、配列番号3で表される塩基配列を有する野生型ヒト成熟OSMをコードする領域を含むDNA、又は種々のヒト成熟OSM変異体タンパク質をコードする領域を含むDNAである。OSM類は、当該DNAを宿主細胞内に導入し、当該細胞から分泌発現させることにより製造されるので、宿主細胞がシグナルペプチドやC末端プロ配列をプロセシングする能力を有する限り、配列番号1で表される塩基配列からなるヒトOSM前駆体ポリペプチドをコードするDNAを用いることができる。
【0030】
OSM類をコードするDNAは、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長をコードするDNAを構築することも可能である。化学合成又はPCR法もしくはGibson Assembly法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、当該DNAを導入する宿主に合わせて使用コドンをCDS全長にわたり設計できる点にある。異種DNAの発現に際し、そのDNA配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに変換することで、タンパク質発現量の増大が期待できる。使用する宿主におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(公財)かずさDNA研究所のホームページに公開されている遺伝暗号使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)を用いることができ、または各宿主におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよい。
【0031】
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。当該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0032】
OSM類をコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、OSM類をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、当該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例、pFast-Bac);動物細胞発現プラスミド(例、pA1-11,pXT1,pRc/CMV,pRc/RSV,pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター(例、BmNPV,AcNPV);レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。他の宿主においても自体公知のプロモーターを適宜選択することができる。
【0033】
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0034】
上記したOSM類をコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、OSM類を製造することができる。宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。哺乳動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、HEK293細胞などが用いられる。他の宿主についても自体公知の細胞をそれぞれ適宜選択することができる。
【0035】
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
【0036】
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5~約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640培地、199培地、Ham’s F-12培地などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6~約8である。培養は、通常約30℃~約40℃で、約15~約60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外にOSM類を製造せしめることができる。
【0037】
前記形質転換体を培養して得られる培養物からOSM類を自体公知の方法に従って分離精製することができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
【0038】
かくして得られるOSM類が遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって、当該遊離体を塩に変換することができ、OSM類が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、当該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
【0039】
本発明の別の実施態様において、OSMRに対するアゴニストは、OSM類以外の物質であって、OSMRに結合して当該受容体を介したシグナリングを活性化し得る物質であり得る。当該物質は、低分子化合物であってもよいし、あるいは、核酸(例、アプタマー)、ペプチド、タンパク質、アゴニスト抗体などの中分子又は高分子であってもよい。これらのOSMRに対するアゴニストは、後述する「本発明のスクリーニング法」を用いて同定されるものであってよい。
【0040】
好ましい一実施態様において、OSMRに対するアゴニストは、当該受容体に対するアゴニスト抗体であり得る。当該アゴニスト抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよいが、好ましくはモノクローナル抗体である。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。IgG1やIgG2のFc領域はADCC、ADCP、CDC等のエフェクター機能を有し得るので、これらのエフェクター機能が低いIgG4を用いることが好ましい場合があるが、この限りではない。
【0041】
OSMRに対するアゴニスト抗体は、当該受容体を介したシグナリング(例、Ras-MAPK経路、JAK-STAT経路)を活性化・増強し得る限り、いかなる様式でOSMRに結合してもよく、例えば、OSMRβ又はgp130のいずれか一方に結合して、他方のサブユニットとの二量化を促進するものであってもよいし、あるいは、OSMRβ/gp130複合体の両サブユニットが会合する部位に対して特異的に結合するものであってもよい。さらに、各サブユニットに対してそれぞれ特異的親和性を有する抗体部分を含む二重特異性抗体とすることもできる。OSMRに対するアゴニスト抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
【0042】
好ましい一実施態様において、OSMRに対するアゴニスト抗体は、ヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、当該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト-ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
【0043】
別の実施態様において、OSMRに対するアゴニストは、例えば、後述の本発明のスクリーニング法により同定される物質(例、低分子化合物)であり得る。
【0044】
本発明の一実施態様において、「OSMとその受容体とを介したシグナリングを増強する物質」は、本発明の剤の投与対象である温血動物に内在するOSM遺伝子の発現を誘導・増強し得る物質であり得る。そのような物質として、例えば、上皮増殖因子(EGF)/インターロイキン(IL)-2/IL-3/エリスロポイエチン(EPO)/顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)(EMBO J 15: 1055-1063, 1996)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)(Am J Physiol Cell Physiol 301: C947-C953, 2011)、プロスタグランジンE2(PGE2)(J Neurosci 22: 5334-5343, 2002)、ヒト性腺刺激ホルモン(hCG)/β-hCG(Cytobios 92: 159-163, 1997)、シスプラチン(Immunol Cell Biol 75:492- 496, 1997)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)(Proc Natl Acad Sci USA 83:9739 -9743, 1986)等を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0045】
(OSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を含有する医薬)
上述のいずれかのOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質は、OSM/OSMRのシグナリングを増強して、肝マクロファージの表現型を非炎症性(M2型)にシフトさせる活性、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β等)の発現抑制活性、肝障害(細胞死)抑制活性、肝再生促進活性、eNOSやHGFの発現誘導活性、肝細胞における抗炎症活性等を示すことで、NAFLからNASH及び/又はNASHから肝硬変・肝癌への進展を抑制することができる。したがって、これらの物質は、NASHの予防及び/又は治療薬として使用することができる。さらに、OSMとその受容体のシグナリングを増強する物質は、類洞内皮細胞におけるCXCL10遺伝子の発現を亢進し、類洞内皮細胞の近傍へのNK細胞の集簇を促進することにより、類洞内皮細胞の近傍(即ち、肝)における老化肝細胞の除去を促進する。従って、これらの物質は、NASH、肝硬変、又は肝癌の治療薬としても使用することができる。ここで「予防」とは、NASHの発症(NAFLからNASHへの進展)を防止することだけでなく、発症を遅延させることを含む。また「治療」とは、NASHの症状の改善だけでなく、NASHから肝硬変、ひいては肝癌への進展抑制、再発の予防等を含む。
【0046】
上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を含有する医薬は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ニワトリなど)、好ましくはヒトに対して、経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
【0047】
上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0048】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、鼻腔内投与剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
【0049】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
【0050】
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。OSMとその受容体のシグナリングを増強する物質は、投薬単位剤形当たり通常0.1~500mg、とりわけ注射剤では5~100mg、その他の剤形では10~250mg含有されていることが好ましい。
【0051】
上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、OSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を1回量として、通常0.0001~20mg/kg体重程度、低分子化合物であれば1日1~5回程度、経口または非経口で、抗体であれば1日~数ヶ月に1回、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0052】
なお前記した各組成物は、上記OSMとその受容体のシグナリングを増強する物質との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。例えば、他の活性成分として、ビオグリタゾン、スタチン、エゼチミブ、アンジオテンシンII受容体拮抗薬等の基礎疾患(例、糖尿病、脂質異常症、高血圧など)の治療薬、ビタミンE等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法)
本発明はまた、NASH、肝硬変又は肝癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質を、OSMRを発現する細胞に接触させる工程、並びに
(2)被検物質の非存在下と比較して、OSMRを介したシグナリングを増大させた被検物質を、NASH、肝硬変又は肝癌(以下、「NASH等」とも称することがある)の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程
を含む、方法(以下、「本発明のスクリーニング法」ともいう。)を提供する。
ここで、OSMRβ又はgp130を単独で用いてもOSMからのシグナル伝達は生じないので、OSMRとしては、OSMβとgp130との複合体が用いられる。OSMRを発現する細胞としては、例えば、マクロファージやTh1細胞等が用いられ得る。
【0054】
例えば、OSMRを発現するマクロファージを用いる場合、被検物質の存在下及び非存在下で当該細胞の培養に適した培地中で当該細胞をインキュベートした後、例えば、マクロファージの表現型を非炎症性(M2型)にシフトさせる活性、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β等)の発現抑制活性、肝障害(細胞死)抑制活性、肝再生促進活性、eNOSやHGFの発現誘導活性、肝細胞における抗炎症活性等を指標として、被検物質の存在下で上記のいずれかの活性が有意に増大した場合に、当該被検物質をNASH等の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。あるいは、培養細胞を用いて、OSMRβの細胞内シグナル伝達ドメインとgp130の細胞内シグナル伝達ドメインのそれぞれにスプリット酵素の各サブユニットを融合させたコンストラクトを導入し、細胞膜上に発現させ、当該酵素の基質を培地に添加して、酵素反応を可視化することにより、被検物質の存在下で当該酵素活性が有意に増大した場合に、当該被検物質をNASH等の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。あるいは、NASH、肝硬変又は肝癌を有する対象から得られた類洞内皮細胞に対して被験物質を接触させたとき、当該被験物質の存在下で類洞内皮細胞におけるCXCL10遺伝子の発現が有意に増大した場合に、当該被験物質をNASH等の予防及び/又は治療薬の候補として選択することもできる。
【0055】
本発明のスクリーニング法により同定されたNASH等の予防及び/又は治療薬は、上記のOSMとその受容体のシグナリングを増強する物質を含有する医薬と同様にして、製剤化することができ、投与対象である温血動物に対して投与することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例0056】
(方法)
実験動物
本実施例で用いたC57BL/6Jマウスは、日本SLC(静岡、日本)より購入した。ob/ob マウス、OSM遺伝子欠損マウス、及びOSMRβ遺伝子欠損マウスは、自家繁殖したものを用いた。OSM遺伝子欠損マウス(Minehata K et al., Int J Hematol 84: 319-327, 2006)、及びOSMRβ遺伝子欠損マウス(Tanaka M et al., Blood 102: 3154-3162, 2003)は、以前に作製された系統を用いた。全てのマウスは、明暗周期が12時間(明期:午前8時から午後8時まで)、温度22.0-25.0℃、湿度50-60%のSPF環境の室内で、自由摂食(MF;オリエンタル酵母、東京、日本)、自由飲水下で飼育した。全ての実験は和歌山県立医科大学動物実験委員会による審査・承認を受け、和歌山県立医科大学の動物実験のガイドラインを遵守して行った。また、環境省の実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準に則し、動物に対する負荷を軽減することに努めた。
【0057】
NAFL、NASH、及びNASHを介して肝癌を発症するモデルマウスの作製
NAFLのモデルマウスは、普通食としてMFを給餌して飼育した12週齢の雄性ob/obマウスを用いた。NASHのモデルマウスは、8週齢の雄性ob/obマウスにメチオニン・コリン欠乏(MCD)食(A02082002B;リサーチダイエット、ニュージャージー、米国)を4週間給餌し、作製した。NASHを介して肝癌を発症するモデルマウスは、既報に従い作製した(STAMマウス; Fujii et al., Med Mol Morphol 46: 141-152, 2013)。すなわち、2日齢の雄性C57BL6/Jマウスにストレプトゾトシン(200μg;和光純薬、大阪、日本)を皮下投与し、4週齢から高脂肪食(HFD32;日本クレア、東京、日本)を給餌した。その後、6週齢(NAFL期)、8週齢(NASH期)、12週齢(肝硬変期)、16週齢(肝癌期)のSTAMマウスを用いて実験を行った。
【0058】
OSM遺伝子欠損マウスにおけるNASHモデルの作製
8週齢の雄性OSM遺伝子欠損マウス、及びその同腹の野生型マウスにMCD食を4週間給餌した。
【0059】
OSMRβ遺伝子欠損マウスにおけるSTAMモデルの作製
2日齢の雄性OSMRβ遺伝子欠損マウス、及びその同腹の野生型マウスにストレプトゾトシン(200μg;和光純薬)を皮下投与し、4週齢から高脂肪食(HFD32)を給餌した。その後、16週齢にて肝癌発症の評価を行った。
【0060】
NASHモデルマウス、及びSTAMマウスに対するOSMの投与
作製したNASHモデルマウス、及び8週齢のSTAMマウスに組換えマウスOSM(R&D Systems、ミネソ夕、米国)を12.5 ng/g体重の投与量にて腹腔内投与した。NASHの治療、及び肝癌の発症に対するOSMの効果を検討するために、上記の投与量にて1日2回、1週間の投与を行った。また、肝臓におけるOSMの直接的な効果を検討するために、上記の投与量のOSMを投与してから1時間後、及び2時間後に実験を行った。
【0061】
採血、血清AST・ALTの測定
マウスの眼窩静脈叢より採血を行い、血清分離後に血清AST・ALTの測定を長浜ライフサイエンスラボラトリー(滋賀、日本)にて行った。
【0062】
臓器の採取、組織切片の作成
マウスにイソフルラン麻酔をかけ、生理食塩水を経心的に注入して脱血した後に、4%パラホルムアルデヒドを経心的に注入し灌流固定を行った。肝臓を採取し、4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で3時間浸漬固定した。浸潰固定後、TUNEL染色、及び免疫染色用には、肝臓を30%スクロース溶液にて脱水した。その後、O.C.Tコンパウンド(サクラファインテック、東京、日本)で包埋し、ドライアイスを入れたn-ヘキサン中に沈めて固め、-80℃で保存した。クライオスタットを用いて6μmの薄さの肝切片を作成した。HE染色用には、浸漬固定後にパラフィンブロックの作製を行い、ミクロトームを用いて4μmの薄さの肝切片を作成した。
【0063】
TUNEL染色
TUNEL染色はTdT In Situ Apoptosis Detection Kit(R&D Systems)を用いて行った。Labeling reaction mix (ビオチン化TdT dNTPMix、TdT酵素、マンガンの混合液)にて切片を37℃で60分間インキュベートした後、HRP標識ストレプトアビジンにて室温で1時間インキュベートした。その後、ジアミノベンチジン(DAB)にて発色し、メチルグリーンにて対比染色を行なった。
【0064】
免疫染色
免疫染色は、既報に従い行った(Komori et al., J Biol Chem, 28.8: 21861-21875, 2013)。5%の正常ロバ血清(Jackson ImmunoResearch、ペンシルバニア、米国)にて切片を室温で1時間インキュベートした。その後、抗OSM抗体(1:100; R&D Systems)、抗OSMRβ抗体(1:200; R&D Systems)、抗アルブミン抗体(1:100; Nordic Immunological Laboratories、ティルバーグ、オランダ)、抗Lyve-1抗体(1:100;アブカム、ケンブリッジ、英国)、抗F4/80抗体(1:50; セロテック、オックスフォード、英国)、抗Ki67抗体(1:500; Novocastra Laboratories、ニューキャッスル、英国)、抗p21抗体(1:100; アブカム)で切片を4℃で一晩インキュベートした。蛍光染色法では、二次抗体(Cy3でラベルされた抗ヤギIgG抗体、Cy2でラベルされた抗ウサギIgG抗体、及びCy2でラベルされた抗ラットIgG抗体;Jackson ImmunoResearch)を用いて室温で1時間インキュベートし、4’,6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride(DAPI)で対比染色を行った。酵素抗体法では、二次抗体(NICHIREI-Histofine simple-stain MAX-PO、ニチレイ、東京、日本)を用いて室温で1時間インキュベ一トし、DABにて発色後、メチルグリーンにて対比染色を行った。染色像は、デジタルCCDカメラ(DP71;オリンパス、東京、日本)が取り付けられた落射蛍光顕微鏡(BX5O;オリンパス)を用いて撮影した。
NK1.1の染色に関しては、直接法を用いた。抗CD16/CD32抗体(1:100; BDバイオサイエンス、サンノゼ、米国)にて切片を室温で1時間インキュベートした後、APCでラベルされた抗NK1.1抗体(1:100; サーモフィッシャーサイエンティフィック、ウォルサム、米国)で切片を4℃で一晩インキュベートした。その後、DAPIで対比染色を行い、共焦点顕微鏡(LSM900; カールツァイス、オーバーコッヘン、ドイツ)を用いて撮影した。
【0065】
RNA抽出、リアルタイムPCR
RNA抽出、及びリアルタイムPCRは既報に従い、行った(Komori et al., J Biol Chem, 288: 21861-21875, 2013)。肝臓より、TRI reagent (モレキュラーリサーチセンター、オハイオ、米国)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAの濃度を測定し、アプライドバイオシステムズ(カリフォルニア、米国)のHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いてcDNAを作成した。リアルタイムPCRはTaqMan法により行い、マスターミックスにはRotor-Gene Probe PCR Kit(キアゲン)、リアルタイムPCR装置はRotor gene Q(キアゲン)を用いた。TaqManプロープはTaqMan Gene Expression Assays(アプライドバイオシステムズ)のOSM(Mm01193966_ml)、OSMRβ(Mm00495424_ml)、TNF-α(Mm00443258_ml)、IL-1β(Mm00434228_m1)、IL-10((Mm00439616_ml)、iNOS(Mm00440502_m1)、CCR2(Mm00438270_m1)、Arg1(Mm00475988_m1)、CD206(Mm01329362_m1)、eNOS(Mm00435217_ml)、VEGF(Mm00437306_ml)、HGF(Mm01135184_ml)、MET(Mm01156972_ml)、GPX4(Mm00515041_ml)、CXCL10 (Mm00445235_m1)、18S(Hs99999901_sl)を用いた。得られたデータよりCt値を算出し、ΔΔCt法により相対定量解析を行った。
【0066】
NASH期のSTAMモデルの肝より調整した類洞内皮細胞のOSM刺激実験系
8週齢のSTAMマウスにイソフルラン麻酔をかけ、肝臓を採取した。コラゲナーゼIVシグマ、セントルイス、米国)を用いて肝臓を単細胞分離した後、磁気ビーズでラベルされた抗CD146抗体(ミルテニーバイオテク、ベルギッシュ・グラードバッハ、ドイツ)を用いて、autoMACS Pro Separator(ミルテニーバイオテク、ベルギッシュ・グラードバッハ、ドイツ)にて類洞内皮細胞を分取した。分取した細胞を培養し、OSM(50 ng/ml; R&D Systems)にて刺激してから1時間後、及び2時間後に実験を行った。
【0067】
統計解析
データは、平均±標準誤差で表記し、統計解析は、スチューデントのt検定により行った。 p < 0.05の差異に対し、統計的に有意と判断した。
【0068】
(結果)
NASH及び肝癌の発症に対するOSMの役割を検討するために、NASHモデルマウスとしてMCD食給餌のC57BL/6Jマウス、及びMCD食給餌のob/obマウスを、NASHを基盤として肝癌を発症するモデルマウスとしてSTAMマウスをそれぞれ用い、肝におけるOSMとOSMRβの発現を検討した。いずれのモデルマウスの肝においても、野生型マウス(MF給餌のC57BL/6Jマウス)の肝と比較してOSMの有意な発現増加が認められた(
図2A-C)。MCD食給餌のob/obマウス、及びSTAMマウスでは、NAFL(MF給餌のob/obマウス)の肝との比較においてもOSMの増加が見られた(
図2B, C)。また、野生型マウスの肝と比較して、NASHの肝においてOSMRβの発現も有意に高値を示した(
図2D-F)。さらに、STAMマウスにおいては、肝癌期の肝においてもOSM及びOSMRβの有意に高い発現が認められた(
図2C, F)。以上の結果より、OSMは、NASH及び肝癌の発症に関与している可能性が示唆された。
【0069】
NASHモデルマウス(MCD食給餌のC57BL/6Jマウス)の肝におけるOSM発現細胞を検討したところ、F4/80陽性のマクロファージに認められた(
図3A)。次に、NASHの肝におけるOSMの作用部位を検討するために、NASHモデルマウス(MCD食給餌のC57BL/6Jマウス)、及びSTAMマウスのNASH期の肝におけるOSMRβの発現細胞について検討した。OSMRβは、いずれのモデルマウスにおいても肝細胞(
図3B,
図4A)、マクロファージ(
図3C,
図4B)、及び類洞内皮細胞(
図3C,
図4C)に発現が認められた。これらの結果より、OSMは、NASHの肝において、肝細胞、類洞内皮細胞及びマクロファージに作用している可能性が示唆された。
【0070】
NASHの発症におけるOSMの役割を検討するために、OSM遺伝子欠損マウスにMCD食を給餌し、NASHの程度を評価した。野生型マウスと比較して、OSM遺伝子欠損マウスの肝において、炎症細胞巣の有意な増加(
図5A, B)、及び炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-1βの遺伝子発現の有意な増加(
図5C)が認められた。抗炎症サイトカインであるIL-10の遺伝子発現はOSM遺伝子欠損マウスの肝で有意に低下していた(
図5C)。また、肝障害の程度を検討するために、血中AST・ALTの濃度を測定したところ、OSM遺伝子欠損マウスにおいて有意な増加が認められた(
図5D)。以上の結果より、OSMの欠損は、MCD食により惹起されるNASHを増悪させる可能性が示唆された。
【0071】
OSM遺伝子欠損マウスにおけるNASH増悪の原因を検討するために、NASH発症に重要である肝マクロファージの数と表現型について検討した。マクロファージは主に炎症性のM1型と抗炎症性のM2型に分類される。OSM遺伝子欠損マウスの肝において、マクロファージの有意な増加(
図6A, B)、M1型のマーカーであるiNOSやCCR2の遺伝子発現の有意な増加、及びM2型のマーカーであるArginase-1やCD206の遺伝子発現の有意な低下が認められ(
図6C)、OSM遺伝子欠損マウスの肝では、炎症性(M1型)マクロファージが有意に増加していることが示唆された。また、OSM遺伝子欠損マウスの肝では、hepatic crown-like structure(hCLS;細胞死に陥った肝細胞をマクロファージが取り囲んで貧食・処理する構造)の有意な増加が認められた(
図6D)。そこで、OSM遺伝子欠損マウスの肝における細胞死について検討したところ、TUNEL染色においてアポトーシス像の有意な増加が認められた(
図6E, F)。また、鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスの抑制分子であるグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)の遺伝子発現低下が有意に認められた(
図6G)。以上の結果より、OSMの欠損は、肝細胞死の充進と炎症性マクロファージの増加を引き起こし、NASHを増悪させる可能性が示唆された。
【0072】
上記の結果より、OSMはNASHを抑制する可能性が示唆された。そこで、OSMのNASHに対する治療効果を検討するために、NASHモデルマウス(MCD食給餌のob/obマウス)にOSMを1週間腹腔内投与し、NASHの程度を検討した。コントロール群では、肝の炎症細胞巣が多数認められたが、OSMの投与によりそれらが有意に改善していた(
図7A, B)。また、コントロール群と比較してOSM投与群で、血中AST・ALT濃度の有意な減少が認められた(
図7C)。これらの結果より、OSMは、NASHに対して治療的効果を有する可能性が示唆された。
【0073】
OSMによるNASH改善メカニズムを検討した。OSM投与により肝マクロファージ(
図7D, E)、及びTNF-αやIL-lβの遺伝子発現(
図7G)の有意な減少が認められた。また、hCLS(
図7F)、及びアポトーシス像(
図8A, B)の有意な減少が認められた。さらには、細胞増殖のマーカーであるKi67陽性の肝細胞が有意に増加していた(
図8C, D)。以上の結果より、OSMは、肝細胞死を抑制し、肝細胞の再生を誘導することによりNASHを改善させる可能性が示唆された。
【0074】
NASHの肝におけるOSMの作用を検討するために、NASHモデルマウス(MCD食給餌のob/obマウス)にOSMを腹腔内投与し、OSMにより誘導される遺伝子を検討した。OSM投与後1時間と2時間において、類洞内皮機能と関連した遺伝子として抗炎症に作用するeNOSの発現、及び肝細胞増殖関連遺伝子としてHGFの発現が有意に増加していた(
図9)。
【0075】
OSMのNASHを基盤とする肝癌の発症に対する作用を検討するために、野生型マウスとOSMRβ遺伝子欠損マウスにおいてSTAMモデルを作成し、肝における肝癌の発症を比較した。野生型マウス、OSMRβ遺伝子欠損マウス共に肝癌の発症が認められたが、OSMRβ遺伝子欠損マウスにおいて有意により多くの肝癌が発症していた(
図10A, B)。以上の結果より、OSMシグナルの欠損は、NASHを基盤とする肝癌の発症を促進する可能性が示唆された。
【0076】
そこで、OSMの肝癌発症に対する抑制効果を検討するために、NASH期である8週齢のSTAMマウスに対し、1週間OSMを腹腔内投与し、肝癌の発症を検討した。コントロール群では多数の肝癌の発症が認められたが、OSMの投与により肝癌の発症が有意に抑制されていた(
図11A, B)。これらの結果より、OSMは、NASHを基盤とする肝癌の発症を抑制する可能性が示唆された。
【0077】
さらに、OSMRβ遺伝子欠損マウス(OSMRβ-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)においてSTAMモデルを作成し、肝臓における老化細胞関連因子を検討した。OSMRβ遺伝子欠損マウスの肝において、野生型マウスと比較して、老化肝細胞の指標であるp21陽性細胞の増加が認められた(
図12(A))。また、老化肝細胞の除去に働くNK細胞(NK1.1陽性細胞)が減少していた(
図12(B))。さらに、NK細胞を誘導するケモカインの一種であるCXCL10の発現を検討したところ、OSMの腹腔内投与後の肝におけるCXCL10の発現増加が認められた(
図12(C))。さらに、NASH期のSTAMモデルの肝より類洞内皮細胞を分取し、OSMで刺激したところ、CXCL10の発現増加が認められた(
図12(D))。尚、
図12中の「*」は、p<0.05を意味し、Scale barは50μmを意味する。
【0078】
図12に示される結果から、OSMの投与は類洞内皮細胞におけるCXCL10遺伝子の発現亢進をもたらすことが明らかとなった。理論に拘束されることを望むものではないが、上述した通り、CXCL10は老化肝細胞の除去に働くNK細胞(NK1.1陽性細胞)を誘導するケモカインの一種であることから、OSMの投与後、類洞内皮細胞の近傍(換言すれば、肝臓)にNK細胞が集簇することが予想される。集簇したNK細胞により、NASH、肝硬変、或いは肝癌における老化肝細胞の除去が促進され、その結果として、NASH、肝硬変、或いは肝癌の病状の改善が期待される。従って、この側面において、本発明は、NASH、肝硬変、又は肝癌の治療又は予防剤と捉えることができる。
【0079】
以上の結果より、NAFLからNASHへの進行の過程において、マクロファージより産生されたOSMが、肝細胞、マクロファージ、及び類洞内皮細胞を介して肝障害や炎症を抑制し、更にはOSMが類洞内皮細胞におけるCXCL10の発現を亢進させ、その結果としてNK細胞による肝組織中の老化肝細胞の除去の促進を導くことが示された(
図13)。OSMは、これらの作用により、NAFLからNASHへの進行を抑制する効果、NASHを改善する効果、肝硬変や肝癌発症の抑制効果、そして、肝硬変や肝癌を改善する効果をもたらすものと考えられる(
図13)。
本発明の剤は、OSM/OSMRシグナリングを増強することでNAFLからNASH、さらにはNASHから肝硬変や肝癌への進展抑制を可能とし、さらに肝硬変や肝癌の治療を可能とする点できわめて有用である。また、本発明のスクリーニング法は、OSM/OSMRシグナル伝達系を用いて、新規のNASH、肝硬変、又は肝癌の予防及び/又は治療薬を探索することができるので、NASH、肝硬変、及び肝癌の根治薬の開発のための創薬ツールとして有用である。