(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067023
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】カップリング剤およびポリエチレングリコールで前処理した、ゴム組成物用の沈降シリカ
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240509BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240509BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240509BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240509BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240509BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240509BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C01B33/18 B
C08K3/04
C08K3/36
C08K9/06
C08K9/04
C08K3/06
C08L21/00
C08L91/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188164
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】18/052,039
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・レイモンド・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ジム・パパコンスタントパウロス
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・インケット・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スカイ・ティアンシャン・シュエ
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC14
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH17
4G072HH29
4G072HH39
4G072JJ22
4G072JJ47
4G072KK01
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4G072QQ07
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4G072TT05
4G072UU08
4J002AC00W
4J002AC03W
4J002AC03X
4J002AC08W
4J002AC08X
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4J002DA048
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4J002FD017
4J002FD148
4J002FD207
4J002GB00
4J002GN01
4J002GT00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】道路用タイヤ向けのゴム組成物における使用に適した、シリカ材料を提供する。
【解決手段】前処理シリカ材料は、シリカ粒子、シリカ粒子に結合したオルガノシランカップリング剤、およびシリカ粒子に接触しているポリエチレングリコールを含む。前処理シリカ材料は、1つまたは複数の加硫可能エラストマーおよび硬化剤をさらに含むゴム組成物において使用し得る。タイヤトレッドまたはタイヤの他の部分が、このゴム組成物から形成し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子、
シリカ粒子に結合したオルガノシランカップリング剤、および
シリカ粒子に接触しているポリエチレングリコール
を含む、前処理シリカ材料。
【請求項2】
シリカ粒子が沈降シリカであることを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項3】
シリカ粒子が、少なくとも30m2/gまたは最大で300m2/gのCTAB表面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項4】
シリカ粒子が、籾殻灰に由来することを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項5】
オルガノシランカップリング剤が、ケイ素原子および少なくとも1つの加水分解可能基を含む第1の反応部分、および加硫可能エラストマーの二重結合と反応することができる第2の反応部分を含み、第1および第2の反応部分は、ポリスルフィドおよびヒドロカルビレン基のうち少なくとも1つを含む架橋単位によって接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項6】
第1の反応部分の加水分解可能基のうち少なくとも1つが、アルコキシ基およびアミノアルキル基から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の前処理シリカ材料。
【請求項7】
カップリング剤が、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(アルコキシアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(トリアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項8】
ポリエチレングリコールが、100~16,000の分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1に記載の前処理シリカ材料。
【請求項9】
ポリエチレングリコールが、600以下の分子量Mnを有することを特徴とする、請求項8に記載の前処理シリカ材料。
【請求項10】
100phrの加硫可能エラストマー、
少なくとも5phrの請求項1に記載の前処理シリカ、
カーボンブラック補強充填剤、
1つまたは複数の加工助剤、および
硫黄含有硬化パッケージ
を含む、ゴム組成物。
【請求項11】
加硫可能エラストマーが、スチレンブタジエンエラストマーおよびポリブタジエンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
カーボンブラックおよびシリカ以外の補強充填剤が、10phr以下で存在することを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの加工助剤が、樹脂、ワックスおよび液状可塑剤のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項14】
硬化パッケージが、硫黄系加硫剤、ならびに硬化促進剤、硬化促進助剤、フリーラジカル開始剤および硬化阻害剤のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項15】
酸化防止剤、劣化防止剤およびオゾン劣化防止剤のうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項16】
請求項10に記載のゴム組成物から形成される、タイヤトレッド。
【請求項17】
前処理シリカ材料を形成する方法であって、
シリカ粒子、オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールを含むスラリーを形成すること、
スラリーを、オルガノシランカップリング剤がシリカ粒子と結合する温度に加熱すること、ならびに
加熱したスラリーを乾燥させて、前処理シリカ材料を形成すること
を含む方法。
【請求項18】
オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールが、充填剤100部当たり少なくとも1部の量でスラリー中にそれぞれ存在することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
硬化することが、混合物を、少なくとも140℃の温度に加熱することを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
硬化ゴム組成物を特徴とするタイヤトレッドを形成することを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]例示的実施形態は、特にタイヤトレッド、より詳細には道路用タイヤ向けのゴム組成物における使用に適した、前処理シリカ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]シリカは、ゴム組成物において広く用いられている充填剤である。シリカは、フュームド(または焼成)シリカ、およびシリカゲルから形成される沈降シリカを含む種々の形態で生成され得る。籾殻において存在する非晶質シリカを水酸化ナトリウムで蒸解させてケイ酸ナトリウムを形成し、酸性化剤、例えば、硫酸または二酸化炭素での反応によりケイ酸ナトリウムからシリカを沈降させることによって、籾殻灰から沈降シリカを調製するプロセスが開発されてきた。例えば、WO2001/74712、WO2004/073600ならびに米国特許第5,833,940号および同第11,027,981号を参照のこと。
【0003】
[0003]沈降シリカは一般に、本来的に親水性であり、したがってゴム組成物においては、それ自体との親和性が高く、ジエン系エラストマーに対する親和性が低いため、沈降シリカをゴム組成物全体に十分に分散させることが困難である。これに対処するため、沈降シリカは疎水化されてもよい。その結果、ゴム組成物においてジエン系エラストマーに対するシリカ粒子の親和性を改善し、ゴム組成物において沈降シリカをより十分に分散させることができる。
【0004】
[0004]疎水化は、例えば、アルキルシラン、例えば、ハロゲン化アルキルシランまたはアルコキシアルキルシランを用いて行うことができ、これは沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する。シリカ上のヒドロキシル基と反応することができる第1の部分(例えば、アルコキシシラン部分)、およびゴム組成物のジエン系エラストマー(複数可)と相互作用することができる第2の部分(例えばポリスルフィド部分)を含有するシリカカップリング剤も、使用してもよい。例えば、Hahnらによる米国特許第10,947,369号は、カップリング剤により沈降シリカにカップリングしたジエン系エラストマーを含有するゴム組成物について記載している。沈降シリカはアルキルシランで前処理される。沈降シリカの疎水化のための他の方法は、例えば、米国特許第4,474,908号、同第5,780,538号および同第6,573,324号に見出し得る。
【0005】
[0005]2011年8月23日に発行された、Hahnらによる、SPECIALIZED SILICA, RUBBER COMPOSITION CONTAINING SPECIALIZED SILICA AND PRODUCTS WITH COMPONENT THEREOFという名称の米国特許第8,003,724 B2号は、アリル官能化沈降シリカ、およびかかるシリカを含有するゴム組成物について記載している。
【0006】
[0006]2015年7月7日に発行された、Hahnらによる、RUBBER COMPOSITION CONTAINING SILICA REINFORCEMENT AND FUNCTIONALIZED CROSSLINKS AND PRODUCTS WITH COMPONENT THEREOFという名称の米国特許第9,074,073 B2号は、共役ジエン系エラストマーをブレンドすることにより形成されるゴム組成物、沈降シリカおよび補強充填剤としてのゴム補強性カーボンブラックの組み合わせ、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドカップリング剤、およびジメルカプトチアジアゾールについて記載している。
【0007】
[0007]2022年6月30日に公表された、HahnらによるMETHOD OF SILICA PRETREATMENTという名称の米国特許公開第20220204351 A1号は、シリカカップリング剤および相間移動剤を使用して、水性スラリー中でもみ殻灰シリカから事前に疎水化された沈降シリカを製造するための方法について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2001/74712
【特許文献2】WO2004/073600
【特許文献3】米国特許第5,833,940号
【特許文献4】米国特許第11,027,981号
【特許文献5】米国特許第10,947,369号
【特許文献6】米国特許第4,474,908号
【特許文献7】米国特許第5,780,538号
【特許文献8】米国特許第6,573,324号
【特許文献9】米国特許第8,003,724 B2号
【特許文献10】米国特許第9,074,073 B2号
【特許文献11】米国特許公開第20220204351 A1号
【特許文献12】米国特許公開第2002/0081247 A1号
【特許文献13】米国特許第7,585,481 B2号
【特許文献14】米国特許第5,587,416 A号
【特許文献15】米国特許第5,800,608 A号
【特許文献16】米国特許第5,882,617 A号
【特許文献17】米国特許第6,107,226A号
【特許文献18】米国特許第6,180,076 B1号
【特許文献19】米国特許第6,221,149 B1号
【特許文献20】米国特許第6,268,424 B1号
【特許文献21】米国特許第6,335,396 B1号
【特許文献22】米国特許第9,334,169 B2号
【特許文献23】米国特許第9,359,215 B2号
【特許文献24】米国特許公開第20030118500 A1号
【特許文献25】米国特許公開第20040062701 A1号
【特許文献26】米国特許公開第20050032965 A1号
【特許文献27】EP0647591A
【特許文献28】米国特許第5,708,069号
【特許文献29】米国特許第7,550,610号
【特許文献30】米国特許第5,789,514号
【特許文献31】米国特許第8,440,750 B2号
【特許文献32】米国特許第5,827,912号
【特許文献33】米国特許第5,780,535号
【特許文献34】米国特許第6,005,027号
【特許文献35】米国特許第6,136,913号
【特許文献36】米国特許第6,121,347号
【特許文献37】米国特許公開第20220195153号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、346頁および347頁
【非特許文献2】the Vanderbilt Rubber Handbook、Robert O.Ohm編(Norwalk、Conn.,R.T.Vanderbilt Company,Inc.、1990)、554~557頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0008]一部の既存の疎水化シリカの1つの課題は、形成されたゴム組成物が低い剛性を有する傾向があることである。一部の既存の疎水化シリカの別の課題は、徹底した混合を達するための高温の時間が、初期の混合段階において必要とされるために、天然ゴムと配合することが困難で有り得ることである。別の課題は、一部のシリカカップリング剤が、水溶液中にシリカの前処理が可能となるよう十分には分散しないことである。
【0011】
[0009]これらの課題などを克服することができるシリカ材料が、なおも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0010]例示的実施形態の態様は、カップリング剤およびポリエチレングリコールで前処理したシリカ材料を、前処理シリカ材料を調製する方法、前処理シリカ材料で形成されたゴム組成物、ゴム組成物を形成する方法、および硬化ゴム組成物を含む成形された物体、例えばタイヤなどに関連させる。
【0013】
[0011]期せずして、非晶質シリカをカップリング剤および低分子量PEGの組み合わせで前処理することにより、ゴムコンパウンドにおいて、従来の混合されたシリカおよびシランに優る、良質なコンパウンドの稠度、低い混合回数および改善された特性をもたらすことができる。
【0014】
[0012]既存の前処理シリカ材料は、低いヒステリシス挙動を有するゴム組成物をもたらすことができる一方、コンパウンドの剛性の顕著な低下をこうむる傾向にある。例示的な前処理シリカは、ヒステリシスが低いだけでなく、従来の混合されたシリカ/シラン組成物よりも剛性が高い、ゴムコンパウンドももたらす。得られる硬化ゴムコンパウンドはまた、従来の混合されたシリカ/シラン組成物と比較して、改善された引張および摩耗特性を示す。
【0015】
[0013]例示的実施形態の一態様によれば、前処理シリカ材料は、シリカ粒子、シリカ粒子に結合したオルガノシランカップリング剤、およびシリカ粒子に接触しているポリエチレングリコールを含む。
【0016】
[0014]前処理シリカ材料において、シリカ粒子は、沈降シリカでもよい。シリカ粒子は、少なくとも30m2/gまたは最大で300m2/gのCTAB表面積を有し得る。シリカ粒子は、籾殻灰に由来してもよい。
【0017】
[0015]前処理シリカ材料において、オルガノシランカップリング剤は、ケイ素原子および少なくとも1つの加水分解可能基を含む第1の反応部分、および加硫可能エラストマーの二重結合と反応することができる第2の反応部分を含んでもよく、第1および第2の反応部分は、ポリスルフィドおよびヒドロカルビレン基のうち少なくとも1つを含む架橋単位によって接続されている。第1の反応部分の加水分解可能基のうち少なくとも1つは、アルコキシ基およびアミノアルキル基から選択されてもよい。カップリング剤は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(アルコキシアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(トリアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、およびこれらの混合物から選択されてもよい。
【0018】
[0016]前処理シリカ材料において、ポリエチレングリコールは、100~16,000または、1500以下もしくは600以下の分子量Mnを有してもよい。
[0017]ゴム組成物は、100phrの加硫可能エラストマー、少なくとも5phrの請求項1に記載の前処理シリカ、カーボンブラック補強充填剤、1つまたは複数の加工助剤、および硫黄含有硬化パッケージを含んでもよい。
【0019】
[0018]ゴム組成物において、加硫可能エラストマーは、スチレンブタジエンエラストマーおよびポリブタジエンエラストマーを含んでもよい。
[0019]ゴム組成物において、カーボンブラックおよびシリカ以外の補強充填剤は、10phr以下にて存在してもよい。加工助剤(複数可)は、樹脂、ワックスおよび液状可塑剤のうち少なくとも1つを含んでもよい。硬化パッケージは、硫黄系加硫剤、ならびに硬化促進剤、硬化促進助剤、フリーラジカル開始剤および硬化阻害剤のうち少なくとも1つを含んでもよい。ゴム組成物は、酸化防止剤、劣化防止剤およびオゾン劣化防止剤のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0020】
[0020]タイヤトレッドは、ゴム組成物から形成されてもよい。
[0021]例示的実施形態の別の態様によれば、前処理シリカ材料を形成する方法は、シリカ粒子、オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールを含むスラリーを形成するステップと、スラリーを、オルガノシランカップリング剤がシリカ粒子と結合する温度に加熱するステップと、加熱したスラリーを乾燥させて、前処理シリカ材料を形成するステップと、を含む。
【0021】
[0022]本方法において、オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールは、充填剤100部当たり少なくとも1部の量でスラリー中にそれぞれ存在してもよい。
[0023]例示的実施形態の別の態様によれば、硬化ゴム組成物を形成する方法は、60~80phrスチレン-ブタジエンエラストマーおよび20~40phrポリブタジエンを含む100phrの加硫可能エラストマーと、0~10phr(または、2~10phr)のカーボンブラックと、5~150phr(または、10~120phr)のオルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールで前処理したシリカ粒子と、0~70phr(または、2~40phr)の樹脂と、0~70phrまたは(5~40phr)の炭化水素油と、0.5~5phrのパラフィンワックスと、必要に応じて、0.5~6phrのp-フェニレンジアミンと、0~10phr(または、1~10phr)の脂肪酸と、0.5~10phrの有機硬化促進剤と、0.5~7.0phrの酸化亜鉛と、0.3~4.0phrの元素状硫黄と、を共に混合することを含む。本方法はさらに、混合物を硬化するステップを含む。
【0022】
[0024]本方法において、硬化するステップは、混合物を、少なくとも140℃の温度に加熱するステップを含んでもよい。
[0025]硬化するステップは、硬化ゴム組成物を含むタイヤトレッドを形成するステップを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0026]
図1は、例示的実施形態の一態様による前処理シリカ材料を形成する方法を説明するフローチャートである。
【
図2】[0027]
図2Aは、未処理シリカ粒子の顕微鏡写真を示す。
図2Bは、PEGのみで処理したシリカ粒子の顕微鏡写真を示す。
図2Cは、PEGおよびオルガノシランカップリング剤で処理したシリカ粒子の顕微鏡写真を示す。
【
図3】[0028]
図3は、試料ゴム組成物に関する硬化G’対歪のプロットを示す。
【
図4】[0029]
図4は、試料ゴム組成物に関する硬化G’対歪のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0030]例示的実施形態の態様は、ゴム組成物において、補強充填剤として有用な前処理シリカ材料に関する。例示的な前処理シリカ材料は、ゴム組成物およびゴム組成物から形成された成形された物体において使用される従来のシリカ材料に優る、配合の稠度、低い混合回数および改善された特性をもたらすことができる。
【0025】
[0031]種々の態様において、水性環境において、シリカは、カップリング剤およびポリエチレングリコール(PEG)の組み合わせで処理される。前処理シリカ材料は、水性シリカスラリーから、例えば、乾燥、例えば、噴霧乾燥により回収される。次いで、このようにして形成された前処理シリカ材料に、1つまたは複数のジエン系エラストマーおよび好適なゴム形成の添加剤を配合して、タイヤ、特に、タイヤトレッドにおける使用に適したゴム組成物を形成することができる。
【0026】
[0032]このプロセスによって前処理したシリカ材料は、コンパウンド特性の予期せぬ組み合わせをもたらす。特に、本明細書に記載された前処理シリカ材料は、ヒステリシスが低いだけでなく、従来の混合されたシリカ/シランコンパウンドよりも剛性が高い、ゴムコンパウンドももたらす。得られるゴム組成物はまた、シリカおよびシランの混合物を主成分とする従来のゴム組成物と比較して、改善された引張および摩耗特性を示す。
【0027】
[0033]用語「ゴム」および「エラストマー」は、本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、同義で使用し得る。用語「ゴム組成物」および「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、本明細書で使用される場合、「種々の成分および材料とブレンドまたは混合されたゴム」を指すのに同義で使用され、かかる用語は、ゴムの混合およびゴムの配合技術における当業者には公知である。
【0028】
[0034]本発明の明細書において、「phr」という用語は、100重量部のゴムまたはエラストマー当たりの、それぞれの材料の重量部を指す。「phr」という用語は、充填剤100重量部に対する重量部を指す。
【0029】
[0035]「シリカ」という用語は、本明細書では、二酸化ケイ素、SiO2を指すために使用される(少量の不純物を、一般に1重量%未満含有する場合があり、シリカが形成されるプロセスに起因する)。例示的なシリカは、沈降シリカである。「沈降シリカ」という用語は、合成非晶質シリカを指すために使用され、典型的には、シリカを酸性化剤で沈降させるプロセスによって得られる。
【0030】
[0036]「前処理シリカ材料」または「前処理シリカ」という用語は、それを少なくとも1つの加硫可能エラストマーを含有するゴム組成物に組み入れる前に、カップリング剤およびPEGで表面処理したシリカを指す。
【0031】
[0037]「未処理シリカ」という用語は、「前処理シリカ材料」との識別を容易にするため、カップリング剤およびPEGで処理する前のシリカを指す。
[0038]用語「ゴム」および「エラストマー」は、別段の指示がない限り、同義で使用し得る。用語「硬化する」および「を硫化処理する」は、別段の指示がない限り同義で使用し得る。
【0032】
[0039]エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、別段の指示がない限り、DIN 53445により、加熱速度1℃にて決定し得る。
[0040]CTBA表面積は、ASTM D6845-20「Standard Test Method for Silica, Precipitated, Hydrated-CTAB (Cetyltrimethylammonium Bromide) Surface Area」に従って測定される。本試験方法は、沈降シリカの比表面積の測定を対象とするが、微細すぎて臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(臭化セチルトリメチルアンモニウム、通常、CTABと称される)分子を収容できない微細孔に含有される面積は除く。
【0033】
[0041]
図1は、前処理シリカ材料を調製し、前処理シリカ材料をゴム組成物に組み入れる例示的方法を説明する。本方法は、S100にて開始する。
[0042]S102にて、未処理シリカが用意される。未処理シリカは、ヒドロキシル基を有する沈降シリカの予洗した湿潤ろ過ケーキでもよい。沈降シリカは、籾殻灰またはバガス(サトウキビ)灰などに由来してよく、酸処理ケイ酸ナトリウムの洗浄およびろ過の後に、乾燥させる必要がない。
【0034】
[0043]S104にて、未処理シリカを水中(または、主に水である他の水性媒体)に希釈させて、水性スラリーを形成する。一実施形態では、スラリーは、5~30重量%シリカ、もしくは少なくとも10重量%シリカ、または、噴霧乾燥機を介してポンプ送出することができる他の好適な希釈物を含有してもよい。
【0035】
[0044]S106にて、スラリーのpHは、例えば、6~7のpHに調整し得る。
[0045]S108にて、ポリエチレングリコールおよびカップリング剤は、順次または同時のいずれかでスラリーに添加され、未処理シリカと混合される。一実施形態では、ポリエチレングリコールの少なくとも一部が、シリカの分散に役立つように最初に添加され、続いてカップリング剤を添加する。S108は、室温(例えば、30℃未満)にて実行し得る。
【0036】
[0046]別の実施形態では、ポリエチレングリコールおよびカップリング剤の一方または両方が、ろ過段階の前に未処理沈降シリカに添加される。しかしながら、本アプローチは、洗浄および/またはろ過中に添加剤の喪失をもたらす場合がある。
【0037】
[0047]S110にて、スラリーの温度が、カップリング剤がシリカの水和した表面と反応するが、水の沸点を下回る、例えば、少なくとも20℃、もしくは少なくとも40℃、もしくは少なくとも60℃、または最高で95℃、もしくは最高で90℃の温度、例えば、80~85℃に上げられる(または、その温度で維持される)。カップリング剤を、シリカ、特に、シリカ粒子の表面上に存在するヒドロキシル基と反応させるのに十分なある時間、シリカカップリング剤を、シリカと反応させる。
【0038】
[0048]S112にて、例えば、噴霧乾燥により、水の沸点を超える温度、例えば、少なくとも130℃または少なくとも150℃にて、スラリーを乾燥させる。乾燥させた生成物は、実質的に球状のビーズ、顆粒または粉末(その全てが、本明細書において、全体的に粒子と称される)の形態でもよい。
【0039】
[0049]S114にて、得られる前処理シリカは、1つまたは複数の加硫可能エラストマー、他の充填剤、例えば、カーボンブラック、加工助剤、硬化剤、および必要に応じて他の添加剤と配合されて、硬化ゴム組成物を形成し得る。硬化ゴム組成物は、タイヤトレッドもしくはその一部、タイヤの側壁または他の成形された物体の形状でもよい。
【0040】
[0050]本方法は、S116にて終了する。
[0051]S108にて使用されるオルガノシランカップリング剤は、ケイ素原子および少なくとも1つの加水分解可能基を含む第1の反応部分、および加硫可能エラストマーの二重結合と反応することができる第2の反応部分を含んでよく、第1および第2の反応部分は、ポリスルフィドおよびヒドロカルビレン基のうち少なくとも1つを含む架橋単位によって接続されている。第1の反応部分の加水分解可能基のうち少なくとも1つは、アルコキシ基およびアミノアルキル基から選択し得る。カップリング剤は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(アルコキシアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(トリアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、およびこれらの混合物から選択し得る。
【0041】
[0052]S112にて形成される前処理シリカ材料は、少なくとも30m2/g、もしくは少なくとも50m2/g、もしくは少なくとも100m2/g、もしくは少なくとも200m2/g、または最大で500m2/g、もしくは最大で400m2/g、もしくは最大で300m2/gのCTAB表面積を有してもよい。
【0042】
[0053]ゴム組成物の形成において、S114で用いられる加硫可能エラストマーは、スチレンブタジエンエラストマーおよびポリブタジエンエラストマーを含んでもよい。
[0054]一態様では、カーボンブラックおよびシリカ以外の補強充填剤は、10phr以下でゴム組成物において存在してもよい。
【0043】
[0055]ゴム組成物の形成に使用される加工助剤(複数可)は、樹脂、ワックスおよび液状可塑剤のうち少なくとも1つを含んでよい。
[0056]硬化パッケージは、硫黄系加硫剤、ならびに硬化促進剤、硬化促進助剤および硬化阻害剤のうち少なくとも1つを含んでよい。
【0044】
[0057]ゴム組成物は、酸化防止剤、劣化防止剤およびオゾン劣化防止剤のうち少なくとも1つをさらに含んでよい。
[0058]タイヤトレッドは、ゴム組成物から形成し得る。
【0045】
前処理シリカ材料
[0059]例示的実施形態の一態様によれば、
図1において説明される方法により形成されることができる前処理シリカ材料は、カップリング剤およびその上の低分子量PEGの組み合わせを有するシリカ粒子を含む。これらの構成成分の例は、ここでさらに詳細に記載する。
【0046】
未処理シリカ
[0060]未処理シリカは、籾殻において存在する非晶質シリカを水酸化ナトリウムで消化してケイ酸ナトリウムを形成し、酸性化剤、例えば、硫酸または二酸化炭素での反応によりケイ酸ナトリウムからシリカを沈降させることによる、籾殻(rice husk)灰(もみ殻(rice hull)灰としても周知)に由来する沈降シリカでもよい。得られるシリカ沈降物は、洗浄、ろ過される。米国特許公開第2002/0081247 A1号および米国特許第7,585,481 B2号は、例えば、本明細書で利用可能なもみ殻灰シリカを製造するための方法を開示する。沈降シリカの調製のための他の方法は、米国特許第5,587,416 A号、同第5,800,608 A号、同第5,882,617 A号、同第6,107,226A号、同第6,180,076 B1号、同第6,221,149 B1号、同第6,268,424 B1号、同第6,335,396 B1号、同第9,334,169 B2号、同第9,359,215 B2号、米国特許公開第20030118500 A1号、同第20040062701 A1号、同第20050032965 A1号およびEP0647591Aに開示されている。未処理シリカはまた、例えば、米国特許第5,708,069号、同第7,550,610号、および同第5,789,514号に記載されているようなシリカゲルから形成することもできる。シリカゲルは、例えば、シリカヒドロゲルを、例えば、オルガノメルカプトシランおよびアルキルシランで疎水化して生成物を乾燥させることにより誘導される。
【0047】
[0061]本方法において使用される未処理シリカは、ASTM D6845-20に従って測定した場合、例えば、30~300m2/g、少なくとも30m2/g、もしくは少なくとも50m2/g、もしくは少なくとも90m2/g、もしくは少なくとも120m2/g、または最大で500m2/g、もしくは最大で300m2/gのCTAB表面積を有し得る(乾燥の場合)。未処理沈降シリカは、残留の硫酸ナトリウムに起因して、6~8のpHを有し得る。
【0048】
[0062]未処理シリカは、示差走査熱量測定(DSC)により決定した場合、10マイクロメートル(μm)未満、もしくは5μm未満、もしくは0.01μm未満、または最大で0.1μmの粒径を有し得る。
【0049】
[0063]例示的な未処理沈降シリカは、PPG IndustriesからHi-Sil(商標)として、例えば210、243、315、EZ 160G-D、EZ 150G、190G、200G-D、HDP-320Gおよび255CG-Dの表記にて、SolvayからZeosil(商標)として、115GR、125GR、165GR、175GR、185GR、195GR、1085GR、1165MP、1115MP、HRS 1200MP、Premium MP、Premium 200MP、および195HRの表記にて、EvonikからUltrasil(商標)として、VN2、VN3、VN3GR、5000GR、7000GR、9000GRの表記にて、Zeopol(商標)として8755LSおよび8745の表記にて、Wuxi Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.からNewsil(商標)として、115GRおよび2000MPの表記で、Maruo Calcium Co.,Ltd.からTokusil(商標)315として、およびYihai Food and Oil Industry(China)から籾殻灰由来のシリカを入手可能である。いずれの沈降シリカも本方法で使用し得る。他の実施形態では、未処理沈降シリカが、使用直前に湿潤ろ過材料として調製される。
【0050】
ポリエチレングリコール(PEG)
[0064]ポリエチレングリコールは、平均で2個またはそれよりも多いモノマー単位(n=2)、例えば、少なくとも4個(n=4)、もしくは少なくとも7個(n=7)、もしくは少なくとも8個(n=8)、または最大で360個、もしくは最大で80個、もしくは最大で60個、もしくは最大で40個、もしくは最大で20個、もしくは最大で12個のモノマー単位を含んでよい。ポリエチレングリコールは、少なくとも100個、もしくは少なくとも150個、もしくは少なくとも180個、もしくは少なくとも200個、もしくは少なくとも300個、または最大で16,000個、もしくは最大で3500個、もしくは最大で1500個、もしくは最大で1000個、もしくは最大で600個のモノマー単位の数平均分子量Mnを有し得る。一実施形態では、PEGは、200または400のMnを有する。
【0051】
[0065]高い分子量では、PEGは、カップリング剤によりシリカ表面へのアクセスを阻害する傾向がある。
[0066]ポリエチレングリコールは、前処理シリカを形成するために、充填剤100部当たり0.1部(phf)以上(未処理沈降シリカの乾燥重量で決定した場合)、例えば、少なくとも1phf、もしくは少なくとも2phf、または最大で50phf、もしくは最大で20phf、もしくは最大で12phf、例えば、2~20phfで使用し得る。
【0052】
カップリング剤
[0067]カップリング剤は、水中で可溶性であり、シリカ粒子の表面上のヒドロキシル基、および1つまたは複数の二重結合(例えば、C=C結合)を有するポリマー、特に、ジエン系エラストマーと結合することができる。
【0053】
[0068]一実施形態では、カップリング剤は、二官能性オルガノシランカップリング剤である。オルガノシランカップリング剤の例は、架橋単位、例えば、ポリスルフィドおよび/またはヒドロカルビレン架橋により接続されている、第1および第2の反応部分を有する。反応部分のうちの第1の反応部分は、ケイ素原子およびケイ素原子に結びついて容易に加水分解する基、例えば、アルコキシ基またはアミノアルキル基を含む。加水分解可能基は、加水分解されることができ加水分解された形態で、シリカ粒子と共有結合を形成する。第2の反応部分は、1つまたは複数の二重結合(例えば、C=C結合)を含むポリマー、例えばジエン系エラストマーと結合を形成して、カップリング剤とポリマーの間で、例えば脱離反応により、共有結合を形成することができる。第2の反応部分は、第1の反応部分と同一でもよく、例えば、ケイ素原子に結びついたアルコキシ基もしくはアミノアルキル基を有するケイ素原子を含み、または、異なる部分でもよい。
【0054】
[0069]実例となるカップリング剤は、1つまたは複数の、ケイ素原子に直接結合したアルコキシ基、例えば、メトキシ基またはエトキシ基(または複数可)を含む。かかるカップリング剤において、アルコキシ基は、典型的にはシリカの表面上に見出される水分の存在下で加水分解して、対応するシラノールを形成するが、そのシラノールが、シリカ表面の存在下で、シリカと反応するか、または縮合するかして、ケイ素原子をシリカ表面に結合させる。ケイ素原子に結びついた有機基(1個または複数)は、このように、加硫化の間にポリマーマトリックスとの化学反応に利用可能である。その結果、ポリマーマトリックスは、カップリング剤によって、例えば、ポリマーの硬化または加硫化の間に、シリカ粒子に化学的に結合することができる。
【0055】
[0070]オルガノシランカップリング剤の一例は、一般的な形態でもよく、
【0056】
【0057】
R1、R2およびR3のうち少なくとも1つは、加水分解可能基、例えば、アルコキシ基でもよいが、R1、R2およびR3のうちの残りはまた、加水分解可能基または非反応性基、例えば水素でもよく、
R4およびR5は、独立して、ヒドロカルビレン基または単結合(すなわち、不在)であり、
xは、硫黄架橋における接続された硫黄原子の数であり、0~12、例えば、1~8であってよく、
Yは、H、アルコキシシラン基(例えば、SiR1(R2)(R3)に対して類似)、アルキルシラン、CN、ビニル、アミン、アルキルチオール、アルキルアミン、メタクリレート、ニトロソ、ハロゲン基、およびこれらの混合物から選択される。
【0058】
[0071]一実施形態では、R4およびR5のうち少なくとも1つは、ヒドロカルビレン基であり、および/または式中、xは、0より大きい。
[0072]「ヒドロカルビレン基」は、炭素および水素で構成され、脂肪族、芳香族、またはこれらの組み合わせでもよい。ヒドロカルビレン基は、分枝または非分枝でもよい。
【0059】
[0073]カップリング剤として使用してもよい、好適な硫黄含有オルガノシランの例は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(アルコキシアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィドおよびビス(トリアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィドを含み、ここで、カップリング剤は、少なくとも2個の硫黄原子、または最大で10個の硫黄原子、もしくは最大で8個の硫黄原子の硫黄架橋を含み、その場合、それぞれのアルコキシ基は、存在する場合、1~18個の炭素原子(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)を含み、アリールオキシ基は、存在する場合、6~12個の炭素原子を含み、アルキル基は、少なくとも2個の炭素原子、例えば、エチルまたはプロピルを含む。
【0060】
[0074]かかるカップリング剤の具体例は、
3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、
3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、
3,3’-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2’’-エチルヘキソキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、
2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロヘキソキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
3,3’-ビス(トリシクロペントキシシリルプロピル)トリスルフィド、
2,2’-ビス(トリ-2’’-メチルシクロヘキソキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、
2,2’-ビス(ジメチルsec-ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、
3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
3,3’-ビス(ジ-t-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、
3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキシシリルプロピル)ジスルフィド、
3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、
2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、
2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、
3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、
3,3’-ビス(エチルジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、
3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、
4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、
12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、
18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、
18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、
4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、
4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシレン)テトラスルフィド、
5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、およびこれらの混合物を含む。
【0061】
[0075]平均2~5個の硫黄原子を有する、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドは、EvonikからSi 69(商標)として(硫黄架橋中、平均3.7個の接続された硫黄原子を有する)、およびEvonikからSi 266(商標)として(平均2.15個の接続された硫黄原子を有する)市販されている。
【0062】
[0076]他の好適なオルガノシランカップリング剤は、
ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス-(ベータ-メトキシエトキシ)シラン、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシランビス(2-トリエトキシシリル-エチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリル-エチル)テトラスルフィド、
3-メルカプトプロピル-トリエトキシシラン、2-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、
2-メルカプトプロピル-トリエトキシシラン、3-ニトロプロピル-トリメトキシシラン、
3-ニトロプロピル-トリエトキシシラン、3-クロロプロピル-トリメトキシシラン、3-クロロプロピル-トリエトキシシラン、2-クロロプロピル-トリメトキシシラン、2-クロロプロピル-トリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、
3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-ベンゾチアゾールテトラスルフィド、
3-トリメトキシシリルプロピル-メタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-メタクリレートモノスルフィドなど、およびこれらの混合物を含む。例えば、3-チオシアネートプロピル-トリエトキシシランは、Sigma-AldrichからSi 264として市販されており、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシランは、Momentive Performance MaterialsからSilquest(商標)A-189として入手可能である。
【0063】
[0077]他のオルガノシランカップリング剤は、アリルシラン、米国特許第8,440,750 B2号に記載されているように、例えば、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、ジアリルクロロメチルシラン、ジアリルジクロロシランおよびトリアリルクロロシランを含む。
【0064】
[0078]他の好適なシランカップリング剤は、米国特許第5,827,912号、同第5,780,535号、同第6,005,027号、同第6,136,913号、および同第6,121,347号に記載されている。
【0065】
[0079]前処理シリカを形成するために使用されるシランカップリング剤は、少なくとも100重量部の充填剤に対して0.01重量部でもよい(「phf」は、ここでは未処理シリカ)。一部の実施形態では、シリカカップリング剤の量は、未処理沈降シリカの少なくとも1phf、もしくは少なくとも2phf、もしくは少なくとも5phf、もしくは少なくとも8phf、もしくは少なくとも10phf、または最大で50phf、もしくは最大で15phf、例えば、2~15phfでもよい。
【0066】
[0080]カップリング剤のポリエチレングリコールに対する比率は、重量比で、少なくとも0.8:1、もしくは少なくとも1:1、もしくは少なくとも1.2:1、または最大で10:1、もしくは最大で3:1でもよい。
【0067】
[0081]カップリング剤およびPEGは、混合物が噴霧乾燥される際、シリカ上に保持されるので、それぞれの量およびphfは、スラリーに添加されたカップリング剤およびPEGの量および前処理シリカ生成物の乾燥重量から容易に決定可能である。
【0068】
ゴム組成物
[0082]例示的実施形態の別の態様では、ゴム組成物は、例示的な前処理シリカ材料を、少なくとも5phr、もしくは少なくとも10phr、もしくは少なくとも20phr、もしくは少なくとも50phr、または最大で150phr、もしくは最大で120phr、もしくは最大で110phr、もしくは最大で100phr、例えば、10~150phrの量で含む。言い換えれば、前処理シリカは、完全処方ゴム組成物の少なくとも2重量%、もしくは少なくとも5重量%、もしくは少なくとも10重量%、もしくは少なくとも20重量%、または最大で60重量%、もしくは最大で40重量%でもよい。
【0069】
[0083]一実施形態では、ゴム組成物は、100phrの加硫可能エラストマー、少なくとも5phrの前処理シリカ、必要に応じて、1つまたは複数の他の補強充填剤、1つまたは複数の加工助剤および硫黄含有硬化パッケージを含む。
【0070】
[0084]例示的なゴム組成物は、1つまたは複数のエラストマー、例えば、エラストマーの混合物、例示的な前処理シリカ、必要に応じて、カーボンブラック、1つまたは複数の加工助剤、例えば、油およびワックス、ならびに硬化剤および1つまたは複数の硬化促進剤/促進助剤を含む硬化パッケージを含む。これらの構成成分の例は、次のとおりである。
【0071】
エラストマー
[0085]1つまたは複数の硫黄加硫可能エラストマーは、ゴム組成物において使用し得る。これらのエラストマーは、少なくとも1つの二重結合、例えば、C=C結合、例えば、ジエン系エラストマーを含んでよい。加硫可能エラストマーの例は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、天然ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、溶液-重合スチレン-ブタジエン(SSBR)、乳化-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブタジエンゴム(BR)、ハロブチルゴム、例えば、ブロモブチルゴムおよびクロロブチルゴム、ニトリルゴム、液状ゴム、ポリノルボルネンコポリマー、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水和アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ブチルゴム、水素化スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、エチレンモノマーから形成されたターポリマー、プロピレンモノマー、および/またはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、イソプレン系ブロックコポリマー、ブタジエン系ブロックコポリマー、スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-[エチレン-(エチレン/プロピレン)]-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、ランダムスチレンコポリマー、水素化スチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ポリオレフィン、非晶性ポリオレフィン、半結晶性ポリオレフィン、アルファ-ポリオレフィン、reactor-readyポリオレフィン、アクリレート、メタロセン触媒ポリオレフィンポリマーおよびエラストマー、リアクタ製造の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、コ-ポリエステルブロックコポリマー、ポリウレタンブロックコポリマー、ポリアミドブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性加硫物、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンn-ブチルアクリレートコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、ネオプレン、アクリル、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンを含むポリエチレン、エチレン-プロピレンポリマー、プロピレン-ヘキセンポリマー、エチレン-ブテンポリマー、エチレンオクテンポリマー、プロピレン-ブテンポリマー、プロピレン-オクテンポリマー、メタロセン触媒ポリプロピレンポリマー、メタロセン触媒ポリエチレンポリマー、エチレン-プロピレン-ブチレンターポリマー、プロピレンから生成されたコポリマー、エチレン、C4~C10アルファ-オレフィンモノマー、ポリプロピレンポリマー、マレイン酸変性ポリオレフィン、ポリエステルコポリマー、コポリエステルポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、および/またはポリ酢酸ビニルを含み、および/またはここで、ポリマーは、必要に応じて、修飾および/または、ヒドロキシル基、エトキシ基、エポキシ基、シロキサン基、アミン基、アミンシロキサン基(aminesiloxane-)、カルボキシ基、フタロシアニン基、およびシラン-スルフィド基のうちの1つまたは複数から選択される官能化を、ポリマー鎖末端またはポリマー内のペンダント位置に含む。
【0072】
[0086]アルコキシシラン基およびチオール基で官能化された、好適な溶液重合のスチレン-ブタジエンゴムは、例えば、SynthosからのSprintan(商標)SLR 4602として市販されている。エラストマーは、約65のムーニー粘度、約21重量%の結合スチレンおよび約49重量%のビニル構造を有する。官能化により、シリカおよびカーボンブラックの相互作用を改善する。
【0073】
[0087]習慣により、ゴム組成物におけるエラストマーの総量は100phrである。
他の充填剤
[0088]一部の実施形態では、前処理シリカ材料は、別のシリカ材料(前処理シリカ材料以外)と、例えば、前処理シリカ材料:他のシリカ材料(複数可)の重量比において、20:80~95:5、例えば、少なくとも40:60または少なくとも60:40で、組み合わせてよい。別のシリカと組み合わせる際、ゴム組成物におけるシリカの総量は、最大で150phr、または最大で120phrでもよい。他の実施形態では、前処理シリカ材料は、ゴム組成物において使用されるシリカの唯一の形態である。
【0074】
[0089]シリカ以外の補強充填剤は、例えば、少なくとも1phr、または最大で80phr、もしくは最大で50phr、もしくは最大で20phr、もしくは最大で10phrの量で利用し得る。かかる追加の補強充填剤の例は、カーボンブラック、アルミナ、水酸化アルミニウム、粘度(補強グレード)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強性の酸化亜鉛およびこれらの組み合わせを含む。
【0075】
[0090]カーボンブラックは、少なくとも100m2/kg、もしくは少なくとも102m2/kg、もしくは少なくとも104m2/kg、または最大で120m2/kg、もしくは最大で118m2/kg、もしくは最大で116m2/kgのCTAB比表面積を有し得る。本明細書で有用な例示的なカーボンブラックは、ASTM D1765-21「Standard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Products」で規定したように、ASTM指定、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。
【0076】
[0091]カーボンブラックは、ゴム組成物において存在する唯一の補強充填剤でもよい。カーボンブラックは、例えば、少なくとも2phr、もしくは少なくとも3phr、または最大で20phr、もしくは最大で10phr、もしくは最大で5phrの量で存在してもよい。ゴム組成物におけるシリカのカーボンブラックに対する重量比は、30:1~2:1、例えば、25:1以下、または少なくとも5:1でもよい。一部の実施形態では、カーボンブラックは、ゴム組成物において用いられない。
【0077】
[0092]一部の実施形態では、1つまたは複数の非補強充填剤は、ゴム組成物において使用し得る。かかる充填剤の例は、粘土(非補強グレード)、グラファイト、過酸化マグネシウム、デンプン、窒化ホウ(非補強グレード)、窒化ケイ素、窒化アルミニウム(非補強グレード)、ケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、ゴム粉末およびこれらの組み合わせを含む。「非補強充填剤」という用語は、20m2/g、またはそれ未満、例えば、10m2/g、またはそれ未満の窒素吸着比表面積(N2SA)を有する粒子材料を指すために使用される。粒子材料のN2SA表面積は、ASTM D6556-21「Standard Test Method for Carbon Black-Total and External Surface Area by Nitrogen Adsorption」に従って決定される。特定の実施形態では、非補強充填剤は、1000nmを超える粒径を有する粒子材料でもよい。非補強充填剤の総量は、使用される際、0.1~10phr、または最大で5phr、もしくは最大で1phrでもよい。
【0078】
加工助剤
[0093]加工助剤は、合計で、少なくとも4phrまたは最大で100phrにて使用されてよく、液状可塑剤、樹脂、ワックス、酸化防止剤、劣化防止剤、オゾン劣化防止剤およびこれらの機能性のうちの2つまたはそれよりも多くを提供する材料のうち1つまたは複数を含んでよい。
【0079】
液状可塑剤(油および油以外を含む)
[0094]トレッドゴム組成物は、少なくとも5phr、または最大で40phrの液状可塑剤、もしくは最大で30phrの液状可塑剤を含んでよい。他の実施形態では、液状可塑剤をゴム組成物に含まない。
【0080】
[0095]液状可塑剤という用語は、室温にて液体である(すなわち、25℃以上にて液体である)可塑剤成分を指すために使用される。炭化水素樹脂は、可塑剤とは対照的に、一般に、室温で固体である。一般に、液状可塑剤は、0℃を下回るTg、全体的には、0℃をはるかに下回り、例えば、-30℃未満、または-40℃未満、または-50℃未満、例えば、0℃~-100℃のTgを有す。
【0081】
[0096]好適な液状可塑剤は、油(例えば、石油系炭化水素油ならびに植物源の油)および油以外の液状可塑剤、例えば、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸可塑剤およびスルホン酸可塑剤を含む。液状可塑剤は、配合プロセス中にまたはその後、エクステンダオイル(ゴムを増量させるために使用される)として添加し得る。石油系油は、芳香族、ナフテン系、低多環芳香族(PCA)油、およびこれらの混合物を含んでよい。植物油は、野菜、ナッツ、種子およびこれらの混合物、例えば、トリグリセリドから収穫された油を含んでよい。
【0082】
[0097]好適な低PCA油は、IP346法(Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003、第62編、the Institute of Petroleumにより出版、UK)で決定した場合、重量が3重量%未満の多環式芳香族含量を有するものを含む。例示的な石油源の低PCA油は、軽度抽出溶媒(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、TRAEおよび重ナフテン系を含む。例示的なMES油は、CATENEX(商標)SNRとしてShellから、PROREX(商標)15およびFLEXON(商標)843としてExxonMobilから、およびVIVATEC(商標)200としてH&R Groupから市販されている。例示的なTDAE油は、TYREX(商標)20としてExxonMobilから、およびVIVATEC(商標)500およびVIVATEC(商標)180としてH&R Groupから入手可能である。例示的な重ナフテン系オイルは、SHELLFLEX(商標)794としてShellから、およびHyprene(商標)Black OilとしてErgonから入手可能である。例示的な植物源の油には、大豆または大豆油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、ベニバナ油、コーン油、アマニ油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油およびパーム油が挙げられる。
【0083】
[0098]例示的なエーテル可塑剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール、カルボン酸のトリエステルおよびジエステルを含む、リン酸またはスルホン酸およびこれらのトリエステルの混合物を含む。より具体的には、例示的なカルボン酸エステル可塑剤は、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセロールトリエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む。例示的なグリセロールトリエステルは、重量で、少なくとも50重量%、または少なくとも80重量%の不飽和C18脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの混合物)を含むものを含む。他の例示的なカルボン酸エステル可塑剤は、ステアリン酸エステル、リシノール酸エステル、フタル酸エステル(例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレートおよびジイソデシルフタレート)、イソフタル酸エステル、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸エステル(例えば、ジ(2-エチルヘキシル)アジペートおよびジイソオクチルアジペート)、リンゴ酸エステル、セバシン酸エステル(例えば、ジ(2-エチルヘキシル)セバケートおよびジイソオクチルセバケート)、およびフマル酸エステルを含む。例示的なリン酸可塑剤は、トリ-ヒドトカルビルホスフェートまたはジ-ヒドトカルビルホスフェート構造を有するものを含む(ここで、それぞれのヒドトカルビルは、独立して、C1~C12アルキル基ならびに置換および非置換のC6~C12芳香族基から選択される)。より具体的には、例示的なホスフェート可塑剤は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートおよびジフェニルモノ-o-キセニルホスフェートを含む。例示的なスルホン酸可塑剤は、スルホン酸エステル、例えば、スルホンブチルアミド、トルエンスルホンアミド、N-エチル-トルエンスルホンアミドおよびN-シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミドを含む。
【0084】
[0099]使用される油(1種または複数)のTgは、-40℃~-100℃であってもよい。
[0100]一部の実施形態では、炭化水素樹脂および液状可塑剤の総量は、少なくとも5phr、もしくは少なくとも15phr、もしくは少なくとも20phr、または最大で70phr、もしくは最大で40phr、もしくは最大で30phrである。
【0085】
樹脂
[0101]好適な樹脂は、炭化水素樹脂を含む。炭化水素樹脂の例には、テルペンおよびテルペノイドを含む、芳香族、脂肪族および脂環式樹脂が挙げられる。炭化水素樹脂は、少なくとも0℃、もしくは少なくとも30℃、または最大で125℃、もしくは最大で50℃のTgを有してもよい。炭化水素樹脂Tgは、エラストマーのTg測定について上記で論じられた手順に従って、DSCにより決定することが可能である。炭化水素樹脂は、少なくとも70℃または最高で100℃の軟化点を有してもよい。炭化水素樹脂の軟化点は、一般に、Tgに関連している。Tgは、一般に、その軟化点よりも低く、Tgが低いほど軟化点も低くなる。
【0086】
[0102]一実施形態では、炭化水素樹脂は、使用される場合、少なくとも1phr、少なくとも2phr、少なくとも3phr、もしくは少なくとも5phr、または最大で70phr、もしくは最大で50phr、もしくは最大で40phr、もしくは最大で30phr、もしくは最大で20phr、もしくは最大で10phrの総量で、ゴム組成物において存在する。他の実施形態では、炭化水素樹脂剤をゴム組成物に含まない。
【0087】
[0103]脂肪族樹脂の例は、C5フラクションホモポリマーおよびコポリマー樹脂を含む。脂環式樹脂の例は、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの組み合わせを含む。
【0088】
[0104]芳香族樹脂の例は、芳香族ホモポリマー樹脂および芳香族コポリマー樹脂を含む。芳香族コポリマー樹脂は、1つまたは複数の他の(非芳香族の)モノマーを有する組み合わせにおいて、1つまたは複数の芳香族モノマーの組み合わせを含む炭化水素樹脂を指し、全てのモノマーの重量による大部分は、全体的に、芳香族である。
【0089】
[0105]芳香族樹脂の具体例は、クマロン-インデン樹脂、アルキル-フェノール樹脂およびビニル芳香族ホモポリマーまたはコポリマー樹脂を含む。アルキル-フェノール樹脂の例は、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、低重合度を有するもの)を含む。ビニル芳香族樹脂は、以下のモノマー:アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンなどのうち1つまたは複数を含んでよい。ビニル芳香族コポリマー樹脂の例は、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5フラクション樹脂(例えば、C5フラクション/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、およびDCPD/スチレンコポリマー樹脂)を含む。
【0090】
[0106]他の芳香族樹脂は、テルペン樹脂、例えば、アルファ-ピネン樹脂、ベータ-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-およびD-異性体のラセミ混合物である、L-リモネン、D-リモネン、ジペンテン)、ベータ-フェランドレン、デルタ-3-カレン、デルタ-2-カレン、およびこれらの組み合わせを含む。
【0091】
[0107]一実施形態では、炭化水素樹脂は、芳香族および脂肪族/脂環式炭化水素の組み合わせを含む。かかる場合、芳香族樹脂と併用されるいずれかの脂肪族および/または脂環式樹脂の総量は、5phr以下、もしくは4phr未満、もしくは3phr未満、または炭化水素樹脂の全体量の20重量%超、もしくは15重量%以下、もしくは10重量%以下でもよい。
【0092】
[0108]芳香族樹脂は、少なくとも1000グラム/モルおよび/または最大で4000グラム/モルのMwを有してもよい。
[0109]ゴム組成物において使用し得る樹脂の他の例には、粘着付与樹脂、例えば、非反応性のフェノールホルムアルデヒド、および剛性樹脂、例えば、反応性のフェノールホルムアルデヒド樹脂およびレゾルシノールまたはレゾルシノールおよびヘキサメチレンテトラミンを含み、それらは、1~10phrにて使用されてよく、最小限の粘着付与樹脂は、使用される際、1phrであり、最小限の硬化剤樹脂は、使用される際、3phrである。他の樹脂は、Papakonstantopoulosらに対する米国特許公開第20220195153号に記載のとおり、ベンゾオキサジン樹脂を含む。
【0093】
[0110]ゴム組成物における樹脂の総量は、少なくとも1phr、もしくは少なくとも5phr、または最大で50phr、もしくは最大で20phr、もしくは最大で10phrでもよい。他の実施形態では、樹脂をゴム組成物に含まない。
【0094】
ワックス
[0111]好適なワックス、特に、微結晶ワックスは、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)の346~347頁に示される種類のものでもよい。ワックスの例には、分枝または非分枝でもよいC22~C60の飽和炭化水素、およびこれらの混合物が挙げられる。ワックス(複数可)は、使用される場合、ゴム組成物において、1~5phr存在してもよい。他の実施形態では、ワックスをゴム組成物に含まない。
【0095】
[0112]使用されるワックスは、オゾン劣化防止剤として機能する場合がある。
酸化防止剤、劣化防止剤
[0113]例示的な酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、ジフェニル-p-フェニレンジアミンなど、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook (1978)、344~346頁に開示されるものを含む。かかる酸化防止剤はまた、オゾン劣化防止剤として機能する場合があり、0.1~5phr、例えば、少なくとも0.3phr、もしくは少なくとも1phr、または最大で3phrにて使用し得る。他の実施形態では、酸化防止剤、例えば、パラフェニレンジアミンを、ゴム組成物に含まない。
【0096】
[0114]劣化防止剤は、使用される場合、アミン系劣化防止剤およびフェノール含有劣化防止剤を含んでもよく、1~5phrにて使用し得る。他の実施形態では、劣化防止剤をゴム組成物に含まない。
【0097】
[0115]フェノール含有劣化防止剤は、高分子ヒンダードフェノール酸化防止剤など、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook (1978)、344~347頁に含まれるものを含む。
【0098】
硬化パッケージ
[0116]硬化パッケージは、加硫剤および加硫促進剤、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、脂肪酸、例えば、ステアリン酸など)、フリーラジカル開始剤、加硫阻害剤およびスコーチ防止剤のうち少なくとも1つを含む。
【0099】
加硫剤
[0117]ゴム組成物の加硫化は、加硫剤、例えば、硫黄系加硫剤、および/または過酸化物系加硫剤の存在下で行われる。
【0100】
[0118]好適な硫黄加硫剤の例は、元素状硫黄(遊離硫黄)、不溶性の高分子硫黄、可溶性硫黄、硫黄供与性加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィド、または硫黄オレフィン付加物、およびこれらの混合物を含む。
【0101】
[0119]硫黄加硫剤は、0.1~10phr、例えば、少なくとも0.5phrもしくは少なくとも1phr、または最大で8phr、もしくは最大で5phrの量で使用し得る。他の実施形態では、硫黄加硫剤をゴム組成物に含まない。
【0102】
硬化促進剤、促進助剤、フリーラジカル開始剤、および阻害剤
[0120]硬化促進剤および促進助剤は、加硫化剤用触媒として作用する。促進剤は、加硫化に必要とされる時間および/または温度を制御するため、および加硫物の特性の改善のために使用される。一実施形態では、単一の促進剤系、すなわち、一次促進剤を使用し得る。一次促進剤は、0.5~3phrの範囲内の量で使用し得る。別の実施形態では、2つまたはそれより多い促進剤の組み合わせを使用し得る。本実施形態では、一次促進剤は、全体的に大量(0.5~2phr)で使用され、二次促進剤は、全体的に少量(0.05~0.50phr)で使用され、それにより、加硫物の硬化促進を補助し、その特性を改善する。かかる促進剤の組み合わせは、硫黄硬化ゴムの最終的な特性の相乗効果を生じることが歴史的に公知であり、しばしば、どちらか一方の促進剤の単独の使用により生成されたものよりも、幾分良質である。加えて、遅延作用促進剤が使用されてよく、標準的な加工温度により受ける影響は低く、通常の加硫化温度にて十分な硬化を生じる。
【0103】
[0121]硬化促進剤の例示的な例は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンテートを含む。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤が使用される場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物でもよいが、スルフェンアミドの二次促進剤を使用してもよい。
【0104】
[0122]かかる硬化促進剤の例は、チアゾールおよび/またはスルフェンアミド加硫化促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、およびN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、グアニジン加硫化促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ならびにこれらの混合物を含む。トレッド組成物において、チウラム促進剤は、除外してもよい。
【0105】
[0123]加硫化促進剤の量は、0.1~10phr、例えば、少なくとも0.5phrもしくは少なくとも1phr、または最大で5phrでもよい。他の実施形態では、加硫化促進剤をゴム組成物に含まない。
【0106】
[0124]加硫促進助剤は、加硫化を助けるために使用される添加剤である。一般に、加硫促進助剤は、無機および有機構成成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く用いられている無機加硫促進助剤である。有機加硫促進助剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、前述のもののそれぞれの亜鉛塩およびチオ尿素化合物、例えば、チオ尿素とジヒドトカルビルチオ尿素、例えば、ジアルキルチオ尿素およびジアリールチオ尿素、ならびにこれらの混合物を含む。具体的なチオ尿素化合物は、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素、およびo-トリルチオ尿素を含む。
【0107】
[0125]無機加硫促進助剤の量は、0.1~6phr、もしくは少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phr、または最大で4phrでもよい。有機加硫促進助剤の量は、0.1~10phr、もしくは少なくとも0.5phr、もしくは少なくとも1phrもしくは少なくとも4phr、または最大で8phrでもよい。他の実施形態では、無機および有機の加硫促進助剤を、ゴム組成物に含まない。
【0108】
[0126]フリーラジカル開始剤は、一部の実施形態で使用される場合があるが、時折、酸化還元反応開始剤として公知であり、キレート鉄塩、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒドおよび有機ヒドロペルオキシドの組み合わせを含む。例示的な有機ヒドロペルオキシドは、クメンヒドロペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、および三級ブチルヒドロペルオキシドを含む。フリーラジカル開始剤は、硫黄系加硫剤と組み合わせて、またはそれに代えて使用してもよい。フリーラジカル開始剤の量は、使用される場合、0.1~4phrまたは0.5~2phrでもよい。他の実施形態では、フリーラジカル開始剤をゴム組成物に含まない。
【0109】
[0127]加硫化阻害剤は、加硫化プロセスを制御するために使用され、加硫化を全体的に遅らせる、または阻害して、所望の時間および/または温度に到達させる。実施例の加硫化阻害剤は、シクロヘキシルチオフタルイミドを含む。
【0110】
[0128]加硫化阻害剤の量は、使用される場合、0.1~3phrまたは0.5~2phrでもよい。他の実施形態では、加硫化阻害剤をゴム組成物に含まない。
ゴム組成物の調製
[0129]ゴム組成物は、1つまたは複数の二重結合を含む加硫可能エラストマー、前処理シリカ、必要に応じて他の充填剤、例えばカーボンブラック、および硫黄系ゴム硬化剤を含まない他のゴムの配合成分を混合することにより調製し得るが、この混合は、高せん断ゴム混合条件の下、高温における、通常、「非生産的」混合段階(複数可)と称される、少なくとも1つの機械的ミキサーを用いた、少なくとも1つの混合ステップにおいてなされ、その後、硫黄および硫黄硬化促進剤などの硫黄系硬化パッケージが添加され、混合段階中のゴム混合物の不必要な予備硬化を避けるために、より低い混合温度で一緒に混合される、最終の「生産的」な混合ステップまたは段階が続く。ゴム組成物は、混合段階のそれぞれの間に40℃を下回る温度に冷却し得る。非生産的混合段階という用語は、加硫剤または加硫化促進剤が添加されない場合の混合段階(または複数可)を指す。最終的な生産的混合段階という用語は、加硫剤および加硫化促進剤が、ゴム組成物中に添加される場合の混合段階を指す。
【0111】
[0130]例えば、バンバリーミキサーにおいて、またはミルドロール(milled roll)上で、成分を共に混練することにより、混合を実施し得る。
[0131]非生産的混合段階は、130℃~200℃の温度にて、例えば、2分間、約145℃の温度にして行われてよい。硬化パッケージが添加されるとすぐに、最終的なマスタバッチの混合段階が、加硫化温度を下回る温度で実行されてよく、例えば、120℃以下、例えば、60℃~120℃、例えば、115℃の温度にて2分間、それにより、ゴム組成物の不要な予備硬化を回避する。硬化パッケージが完全に混合したとき、混合物の温度は、上昇させて、硬化を達成し得る。ゴム組成物の硬化は、120℃~200℃、例えば、少なくとも140℃、または最高で180℃、例えば、150℃の温度までの温度で実行し得る。通常の加硫化プロセスのいずれか、例えば、プレス機もしくは金型における加熱、または過熱蒸気もしくは高温の空気を用いた加熱を使用し得る。当業者には公知であり、容易に明らかと見込まれる種々の方法により、かかるタイヤは、構築され、成形され、モールドされ、硬化され得る。硬化ゴム組成物は、それを含むタイヤトレッドまたはタイヤの少なくとも一部の形状でもよい。
【0112】
[0132]例示的実施形態の一態様では、タイヤが提供され、そのタイヤは、少なくとも一部が例示的なゴム組成物から形成されたトレッドを有する。タイヤの他の一部、例えば、タイヤの側壁は、付加的にまたは選択的に、少なくとも一部が、本明細書に記載のゴム組成物から形成し得る。タイヤは、道路用車両、例えば、自動車トラックのための空気入りタイヤ、またはオフロード車両、飛行機などのためのタイヤでもよい。
【0113】
[0133]ゴム組成物は、タイヤにおける使用に限定されず、ゴム手袋、手術機器などの用途に用いてもよい。
タイヤトレッド特性
[0134]このゴム組成物をタイヤ、例えば、タイヤトレッドに使用すると、改善されたまたは所望のトレッド特性を有するタイヤをもたらすことができる。これらの改善されたまたは所望の特性は、転がり抵抗性、雪または氷のトラクション、ウェットトラクション、ドライハンドリングおよび摩耗のうち1つまたは複数を含み得る。さらなる改善されたまたは所望の特性は、破断時伸び(Eb)、破断時引張強さ(Tb)およびTb×Ebを含む。
【0114】
実施例の組成物
[0135]表1は、例示的実施形態の態様に従って、例示的なゴム組成物を説明する。
【0115】
【0116】
[0136]例示的実施形態の範囲を制限することを意図することなく、以下の実施例は、例示的な前処理シリカ材料の調製、この前処理シリカ材料を用いたゴム組成物、およびこれらの特性について説明する。
【実施例0117】
[0137]以下の材料を得た。
[0138]ろ過および洗浄された未処理シリカは、籾殻において存在する非晶質シリカを水酸化ナトリウムで消化してケイ酸ナトリウムを形成し、硫酸での反応によりケイ酸ナトリウムからシリカを沈降させることにより調製する。沈降シリカを、洗浄、ろ過する。
【0118】
[0139]オルガノシランカップリング剤:Evonik Industriesによる、Si 69(商標)およびSi 266(商標)は両方、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ポリスルフィド架橋において、平均3.7個および2.15個の硫黄原子それぞれに接続する。
【0119】
[0140]ポリエチレングリコール:Dowによる、400MnのPEG、Carbowax 400。
[0141]ポリエチレングリコール:Dowによる、200MnのPEG、Carbowax 400。
【0120】
[0142]Synthosによる、溶液重合官能性スチレン-ブタジエンゴム(f-SSBR)、Sprintan(商標)SLR 4602。
[0143]The Goodyear Tire & Rubber Companyによる、溶液重合調製のcis-ポリブタジエンゴム(cis-PBD)、BUD 1207(商標)(1,3-ブタジエンモノマーのニッケル触媒により調製される)。
【0121】
[0144]沈降非晶質シリカ:Solvayによる、Zeosil(商標)1165、約165m2/gのBET窒素表面積および約160m2/gのCTAB表面積を有す。
[0145]沈降非晶質シリカ:Solvayによる、Zeosil(商標)200MP、約212m2/gのBET窒素表面積および約196m2/gのCTAB表面積を有す。
【0122】
[0146]カーボンブラック(CB):ゴム補強性HAF(高耐摩耗性(high abrasion furnace))カーボンブラック、ASTM指定N330。
[0147]ワックス:パラフィン系および微結晶ワックスのブレンド。
【0123】
[0148]ナフテン系オイル:プロセス油および石油可塑剤。
[0149]樹脂:Kolon Industriesによる、アルファメチルスチレン樹脂MK-2085。
【0124】
[0150]硬化促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)。
[0151]酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤:Eastmanによる、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、Santoflex 6PPD。
【0125】
[0152]加硫促進助剤:酸化亜鉛、ジフェニルグアニジンおよびステアリン酸。
実施例1 前処理シリカの調製
[0153]シリカ試料S0~S19を、表2に示すように、沈降シリカから調製する。未処理沈降シリカを水と混合して、80重量%の水を含むスラリーを形成し、コロイドミル内に入れる。PEGおよびカップリング剤を、添加する(使用する場合)。試料S0~S10において、カップリング剤およびPEGを、使用する場合、ほぼ同時に添加する。試料S11~S18において、PEGを、使用の場合、最初に添加し、混合した後、カップリング剤を添加し、さらに混合する。スラリーを、撹拌しながら、反応温度(約80℃)まで加熱する。高せん断を示すこれらの試料について、高せん断を、4分間適用する。次いで、スラリーを、噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、そこで、185℃の乾燥空気を使用する。次いで、カップリング剤を有する試料を、2分間160℃で熱処理する。試料S9は、S4の反復であり、S10は、S8の反復であることに注意されたい。
【0126】
【0127】
[0154]
図2Aは、未処理シリカ粒子(試料S0)の顕微鏡写真を示し、
図2Bは、PEGのみで処理したシリカ粒子(S19)を示し、
図2Cは、PEGおよびSi69カップリング剤(S9)で処理したシリカ粒子を示す。分かるように、未処理シリカ試料は、高度に凝集する一方、他の2つの試料は、対照的に、より分散性である。
【0128】
実施例2 ゴム組成物の調製
[0155]ゴム組成物を、実施例1からの試料を使用して調製する。配合プロセスは、4つの混合段階を含み、最初の3つの段階は、非生産的であり、第4の段階は生産的段階である。第1の段階において、エラストマー、実施例1からのシリカ(またはZeosil(商標)1165)および他の添加を、ミキサーでブレンドする。第2の段階において、より多くのシリカ充填剤を添加する。第3の段階において、混合のみを実施する。第4の段階において、加硫剤(硫黄)および他の加硫添加剤を組み入れる。各段階の間において、混合物を冷却する。
【0129】
[0156]ゴム組成物を、表3に示すとおり調合する。全ての量は、phrで表される。全ての試料は、同量(phr)のカーボンブラック、ワックス、ステアリン酸および6-PPDを使用する。実施例1~3において、前処理シリカとしてではなく、カップリング剤を、第2の混合段階で添加する。
【0130】
[0157]Cは、対照試料を指す(シリカを、カップリング剤およびPEGで前処理しない場合)。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例3
[0158]対照試料14および15を、2分間160℃で熱処理する一方、前処理シリカを含有するものを、さらなる熱処理無しで160℃に降下することを除き、実施例2と同様に、さらなるゴム組成物(試料14~24)を、前処理シリカS11~S18および対照試料を使用して調製した。ゴム組成物は、表4に示す構成成分を含む。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
上記ゴム組成物の性質
[0159]以下の試験をゴム組成物に実施した。
[0160]硬化特性を、ASTM D2084-19a「Standard Test Method for Rubber Property-Vulcanization Using Oscillating Disk Cure Meter」に記載される方法に従って、Monsantoのオシレーティングディスクレオメータ(MDR)を使用して、150℃の温度で、11ヘルツの周波数で稼働させ、決定する。オシレーティングディスクレオメータの説明は、the Vanderbilt Rubber Handbook、Robert O.Ohm編(Norwalk、Conn.,R.T.Vanderbilt Company,Inc.、1990)、554~557頁に見出すことができる。本硬化メータの使用および曲線から読み取られた標準値は、ASTM D-2084において規定される。オシレーティングディスクレオメータ上で得られる典型的な効果曲線は、the Vanderbilt Rubber Handbookの1990年編の555頁に示されている。
【0140】
[0161]かかるオシレーティングディスクレオメータにおいて、配合ゴム試料を、一定の振幅の振動せん断作用に供する。加硫化温度でロータを振動させるのに必要な、試験されるストックに埋め込まれたオシレーティングディスクのトルクが測定される。ゴムまたは配合方法における変化は、トルクにおける変化から非常に容易に検知できるので、本硬化試験を使用して得られた値は、非常に有意である。
【0141】
[0162]貯蔵弾性率を、ゴムプロセスアナライザー(RPA)を用いて決定する。本事例では、貯蔵弾性率の値を、1%および10%の歪にて決定する。
[0163]Tの値は、トルク増加の表示された%に対する分である。例えば、T90は、90%のデルタトルクに到達するまでの、分で表された時間である。デルタトルクは、最大と最小トルクとの差異である。
【0142】
[0164]引張特性を、Instron Corporationによる、自動試験システム装置で測定する。かかる装置は、最終的な引張、最終的な伸び、弾性率などを決定することができる。
【0143】
[0165]試験された試料に関して、結果を、表5および6に示す。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
[0166]反復試料S9およびS10に関する結果は示さないが、結果は再現可能であることを示す。
[0167]硬化特性に関して、例示的な前処理シリカ試料は、さらに高い最大トルクを有し、改善されたコンパウンドの剛性を示す。PEGを有するおよび有さない試料についての結果の比較は、PEGは、硬化プロセスを加速させることを示唆している。
【0148】
[0168]引張特性に関して、弾性率については、Si266含有試料は、対照試料に類似する一方、PEGを有さないSi69含有試料は、より低い弾性率を有する。引張応力については、PEGを有さないSi266試料は、対照よりもより低い引張応力を有する一方、Si69については、全ての試料が、対照と類似している。破断時伸びについては、PEGを有さないSi266試料は、対照試料よりもより低い伸びを有する一方、Si69については、全ての試料が、対照試料よりも高い。前処理シリカを含有する全ての試料が、300%でのエネルギーに関して、対照試料と同じか、またはそれに勝る。
【0149】
[0169]引張特性を使用して、強化の欠如および低性能の分散体を示すことができる。例えば、低い300%弾性率は、MDRデータからのデルタトルクが低い場合、低い量の架橋を示し、またはデルタトルクが十分な場合、低い量の強化を示すことができる。低い引張強度とカップリングした低い伸びは、充填剤の低性能の分散体を示し得る。試料番号4は、相当の伸びおよび高い引張強度とカップリングした、高い300%弾性率を示し、本前処理シリカが、優れた特性を実証することを示す。
【0150】
[0170]RPAデータにより、例示的な前処理シリカ(例えば、試料4を参照されたい)は、10%にて、対照試料よりも高い貯蔵弾性率G’および低いtanΔを有し、タイヤトレッドゴム組成物において使用される際は、優れた取り扱いおよびより良好な燃費を有するであろうことを示す。
【0151】
[0171]全体として、PEGを有する前処理試料を、非常に十分に混合すると、良好なグリーン強度を有する一方、Si69を有するがPEGを含まない前処理試料は、破損し、乏しいグリーン強度を有する傾向にある。
【0152】
[0172]
図3および4は、実施例3の試料に関する、貯蔵弾性率G’(100℃での硬化前、60℃での硬化後)対%歪のプロットである。
[0173]上記に文献のそれぞれは、参照により、本明細書に組み込まれる。実施例中を除いて、または別段に明確に示されない場合、材料、反応条件、分子量、炭素原子の数などの量を指定する、本明細書における全ての数値的な量は、「約」という語で修飾されていると理解されるべきである。別段の指示がない限り、本明細書で参照されるそれぞれの化学物質または組成物は、商用グレードの材料であり、異性体、副生成物、誘導体、および通常、商用グレードで存在すると理解される他のかかる材料を含んでもよいと解釈されるべきである。しかしながら、それぞれの化学的構成成分の量は、別段の指示がない限り、商用材料において通常存在しうるなんらかの溶媒または希釈油を除いて提示される。本明細書において述べられた、量、範囲および比率の上限および下限は、独立して組み合わされてもよいと理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素の範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と共に使用されてもよい。
【0153】
[0174]上記に開示されたものの変異形ならびに他の特徴および機能、またはこれらの代替物が、他の多くの異なる系または用途に組み合わされてもよいことが理解されよう。種々の、現在予見されていないまたは予期されていない代替物、修正、変形またはこれらの改良が、当業者によって、その後になされてよく、それは、以下の特許請求の範囲に包含されることも、意図される。
【0154】
[発明の態様]
[1]
シリカ粒子、
シリカ粒子に結合したオルガノシランカップリング剤、および
シリカ粒子に接触しているポリエチレングリコール
を含む、前処理シリカ材料。
[2]
シリカ粒子が沈降シリカである、1に記載の前処理シリカ材料。
[3]
シリカ粒子が、少なくとも30m2/gまたは最大で300m2/gのCTAB表面積を有する、1に記載の前処理シリカ材料。
[4]
シリカ粒子が、籾殻灰に由来する、1に記載の前処理シリカ材料。
[5]
オルガノシランカップリング剤が、ケイ素原子および少なくとも1つの加水分解可能基を含む第1の反応部分、および加硫可能エラストマーの二重結合と反応することができる第2の反応部分を含み、第1および第2の反応部分は、ポリスルフィドおよびヒドロカルビレン基のうち少なくとも1つを含む架橋単位によって接続されている、1に記載の前処理シリカ材料。
[6]
第1の反応部分の加水分解可能基のうち少なくとも1つが、アルコキシ基およびアミノアルキル基から選択される、5に記載の前処理シリカ材料。
[7]
カップリング剤が、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(アルコキシアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、ビス(トリアリールオキシシリルアルキル)ポリスルフィド、およびこれらの混合物から選択される、1に記載の前処理シリカ材料。
[8]
ポリエチレングリコールが、100~16,000の分子量Mnを有する、1に記載の前処理シリカ材料。
[9]
ポリエチレングリコールが、600以下の分子量Mnを有する、8に記載の前処理シリカ材料。
[10]
100phrの加硫可能エラストマー、
少なくとも5phrの1に記載の前処理シリカ、
カーボンブラック補強充填剤、
1つまたは複数の加工助剤、および
硫黄含有硬化パッケージ
を含む、ゴム組成物。
[11]
加硫可能エラストマーが、スチレンブタジエンエラストマーおよびポリブタジエンエラストマーを含む、10に記載のゴム組成物。
[12]
カーボンブラックおよびシリカ以外の補強充填剤が、10phr以下で存在する、10に記載のゴム組成物。
[13]
少なくとも1つの加工助剤が、樹脂、ワックスおよび液状可塑剤のうち少なくとも1つを含む、10に記載のゴム組成物。
[14]
硬化パッケージが、硫黄系加硫剤、ならびに硬化促進剤、硬化促進助剤、フリーラジカル開始剤および硬化阻害剤のうち少なくとも1つを含む、10に記載のゴム組成物。
[15]
酸化防止剤、劣化防止剤およびオゾン劣化防止剤のうち少なくとも1つをさらに含む、10に記載のゴム組成物。
[16]
10に記載のゴム組成物から形成される、タイヤトレッド。
[17]
前処理シリカ材料を形成する方法であって、
シリカ粒子、オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールを含むスラリーを形成すること、
スラリーを、オルガノシランカップリング剤がシリカ粒子と結合する温度に加熱すること、ならびに
加熱したスラリーを乾燥させて、前処理シリカ材料を形成すること
を含む方法。
[18]
オルガノシランカップリング剤およびポリエチレングリコールが、充填剤100部当たり少なくとも1部の量でスラリー中にそれぞれ存在する、17に記載の方法。
[19]
硬化することが、混合物を、少なくとも140℃の温度に加熱することを含む、17に記載の方法。
[20]
硬化ゴム組成物を含むタイヤトレッドを形成することを含む、17に記載の方法。