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特開2024-67046農産加工品を管理する情報システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067046
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】農産加工品を管理する情報システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240510BHJP
   A23F 3/00 20060101ALI20240510BHJP
   A23F 3/06 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
G06Q50/02
A23F3/00
A23F3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176822
(22)【出願日】2022-11-03
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【弁理士】
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】桜井 昌広
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英海
【テーマコード(参考)】
4B027
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FR01
4B027FR20
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】作物の育成から農産加工品として生産されるまでの過程で取得される情報を一元的に管理するとともに、障害の発生に対応する。
【解決手段】作物の育成から農産加工品への加工までの情報を受信する受信部と、受信した情報に基づき、何れかの過程における作業の計画または機器の設定値を生成する計画設定値生成部と、受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する障害検知部と、当該障害に係る過程の計画または設定値を障害が回避されるように修正し、修正計画または修正設定値を生成する計画設定値修正部と、計画設定値生成部が生成した計画または設定値を、作業の実施者端末または機器に送信し、修正計画または修正設定値を、修正に係る作業の実施者端末または修正に係る機器に送信する送信部と、を有する情報システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理する情報システムであって、
前記作物の圃場を管理する圃場管理過程、前記作物を育成する作物育成過程、前記作物を収穫する作物収穫過程、前記収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、および、前記農産物を加工する農産物加工過程から選択された1以上の過程を含む前記農産加工品の生産に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した受信情報に基づき、前記全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成部と、
前記受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する障害検知部と、
前記障害検知部が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の前記計画または前記設定値を、前記障害が回避されるように修正し、前記計画の修正計画または前記設定値の修正設定値を生成する計画設定値修正部と、
前記計画設定値生成部が生成した前記計画または前記設定値を、前記作業の実施者端末または前記機器に送信し、前記修正計画または前記修正設定値を、前記修正に係る作業の実施者端末または前記修正に係る機器に送信する送信部と、を有する
情報システム。
【請求項2】
前記計画設定値修正部が、前記障害に係る過程を含む、前記作物収穫過程、前記農産物輸送過程、前記農産物加工過程から選択された1以上の過程の前記修正計画または前記修正設定値を生成する
請求項1に記載の情報システム。
【請求項3】
前記圃場、前記作物、前記農産物および前記農産加工品が、それぞれ、茶圃場、茶木、茶の生葉および製茶品であり、
前記圃場管理過程、前記作物育成過程、前記作物収穫過程、前記農産物輸送過程および前記農産物加工過程が、茶圃場管理過程、茶木育成過程、生葉摘採過程、生葉輸送過程および製茶過程であり、
前記茶圃場管理過程、前記茶木育成過程、または、前記生葉摘採過程において、施肥機、防除機、摘採機、または、フィールドサーバからの情報を受信し、
前記生葉輸送過程において、輸送車両からの情報を受信し、
前記製茶過程において、受入コンテナ、蒸熱機、蒸葉処理機、葉打機、粗揉機、揉捻機、中揉機、精揉機、乾燥機からの情報を受信する
請求項1または2に記載の情報システム。
【請求項4】
前記障害検知部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程、または、前記製茶過程における障害を検知し、
前記計画設定値修正部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程および前記製茶過程から選択された1以上の過程における前記修正計画または前記修正設定値を生成する
請求項3に記載の情報システム。
【請求項5】
前記障害検知部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程、または、前記製茶過程における障害を検知し、
前記計画設定値修正部が、前記生葉輸送過程における前記修正計画または前記修正設定値を生成する
請求項3に記載の情報システム。
【請求項6】
作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理するコンピュータで稼働するプログラムであって、
前記作物の圃場を管理する圃場管理過程、前記作物を育成する作物育成過程、前記作物を収穫する作物収穫過程、前記収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、および、前記農産物を加工する農産物加工過程から選択された1以上の過程を含む前記農産加工品の生産に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信機能と、
前記受信機能が受信した受信情報に基づき、前記全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成機能と、
前記受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する障害検知機能と、
前記障害検知機能が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の前記計画または前記設定値を、前記障害が回避されるように修正し、前記計画の修正計画または前記設定値の修正設定値を生成する計画設定値修正機能と、
前記計画設定値生成機能が生成した前記計画または前記設定値を、前記作業の実施者端末または前記機器に送信し、前記修正計画または前記修正設定値を、前記修正に係る作業の実施者端末または前記修正に係る機器に送信する送信機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産加工品を管理する情報システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
茶業は、生葉生産、荒茶加工、仕上げ茶加工、そして販売という他に類例をみない、複雑な過程を内部にもつ経営特徴がある。その中には、個人で荒茶加工、仕上げ茶加工まで自工場にて行う所謂個人経営の他に、自らは茶工場を持たずに、工場を持つ農家や製茶業へ生葉を売り、茶加工工場は共同にて経営する共同経営と呼ばれる形態のものがある。このような共同経営の場合には、各農家が茶加工工場の稼働中に刈り取った生茶葉を持ち込んで製茶加工をすることになるが、生茶葉を刈り取る摘採機の故障、天候不順による摘採予定日のずれ、製茶加工機の故障など現状においては、様々な要因により、製茶工場の稼働率を妨げる要因が存在する。
【0003】
たとえば、特許文献1には、製茶工場において、該製茶工場が受け入れる茶葉の茶圃場を任意の区画に分け、区分けされた茶圃場毎の茶栽培管理情報をデータベース化して茶栽培管理情報データベースとし、必要に応じて、茶葉に対応する区画の茶圃場の茶栽培管理情報を検索する茶情報追跡システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-141071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシステムを適用すれば、製茶工場が受け入れる茶葉の各農家の圃場毎に生茶葉を受け入ることは可能である。しかし、各農家及び製茶工場がリアルタイムに通信されている訳ではないため、何らかのトラブルが発生した際には、その情報が行き届かずに、刈り取った生茶葉の加工が当日中に出来ずに生茶葉を無駄にしてしまう、又は摘採機の故障等により予定していた生茶葉の摘採で出来ずに、製茶工場の稼働率を低下させてしまうなどの問題は依然として残るという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程で取得される一次情報を、一元的に管理する管理システムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、作業中に使用される機器の障害を検知する障害検知部と、その検知した障害を回避する手段を有し、農作業者、流通手段、農産物加工工場を一元的に通信し、リアルタイムに作業状態を明確化する管理システムを提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、農作物の収穫、輸送、加工の過程で何らかのトラブルが発生した場合でも、障害を検知し、リアルタイムに障害を回避して、障害による生産効率の低下を抑制することができる管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理する情報システムであって、前記作物の圃場を管理する圃場管理過程、前記作物を育成する作物育成過程、前記作物を収穫する作物収穫過程、前記収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、および、前記農産物を加工する農産物加工過程から選択された1以上の過程を含む前記農産加工品の生産に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した受信情報に基づき、前記全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成部と、前記受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する障害検知部と、前記障害検知部が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の前記計画または前記設定値を、前記障害が回避されるように修正し、前記計画の修正計画または前記設定値の修正設定値を生成する計画設定値修正部と、前記計画設定値生成部が生成した前記計画または前記設定値を、前記作業の実施者端末または前記機器に送信し、前記修正計画または前記修正設定値を、前記修正に係る作業の実施者端末または前記修正に係る機器に送信する送信部と、を有する情報システムを提供する。
【0010】
前記計画設定値修正部が、前記障害に係る過程を含む、前記作物収穫過程、前記農産物輸送過程、前記農産物加工過程から選択された1以上の過程の前記修正計画または前記修正設定値を生成するものであってもよい。
【0011】
前記圃場、前記作物、前記農産物および前記農産加工品が、それぞれ、茶圃場、茶木、茶の生葉および製茶品であり、前記圃場管理過程、前記作物育成過程、前記作物収穫過程、前記農産物輸送過程および前記農産物加工過程が、茶圃場管理過程、茶木育成過程、生葉摘採過程、生葉輸送過程および製茶過程であり、前記茶圃場管理過程、前記茶木育成過程、または、前記生葉摘採過程において、施肥機、防除機、摘採機、または、フィールドサーバからの情報を受信し、前記生葉輸送過程において、輸送車両からの情報を受信し、前記製茶過程において、受入コンテナ、蒸熱機、蒸葉処理機、葉打機、粗揉機、揉捻機、中揉機、精揉機、乾燥機からの情報を受信するものであってもよい。
【0012】
前記障害検知部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程、または、前記製茶過程における障害を検知し、前記計画設定値修正部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程および前記製茶過程から選択された1以上の過程における前記修正計画または前記修正設定値を生成するものであってもよい。
【0013】
前記障害検知部が、前記生葉摘採過程、前記生葉輸送過程、または、前記製茶過程における障害を検知し、前記計画設定値修正部が、前記生葉輸送過程における前記修正計画または前記修正設定値を生成するものであってもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理するコンピュータで稼働するプログラムであって、前記作物の圃場を管理する圃場管理過程、前記作物を育成する作物育成過程、前記作物を収穫する作物収穫過程、前記収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、および、前記農産物を加工する農産物加工過程から選択された1以上の過程を含む前記農産加工品の生産に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信機能と、前記受信機能が受信した受信情報に基づき、前記全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成機能と、前記受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する障害検知機能と、前記障害検知機能が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の前記計画または前記設定値を、前記障害が回避されるように修正し、前記計画の修正計画または前記設定値の修正設定値を生成する計画設定値修正機能と、前記計画設定値生成機能が生成した前記計画または前記設定値を、前記作業の実施者端末または前記機器に送信し、前記修正計画または前記修正設定値を、前記修正に係る作業の実施者端末または前記修正に係る機器に送信する送信機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムを提供する。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】情報システム100が管理する農産加工品の作物育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
図2】情報システム100の構成を示す機能ブロック図である。
図3】情報システム120が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
図4】フィールドサーバ230の構成を示す機能ブロック図である。
図5】摘採機240の構成を示す機能ブロック図である。
図6】施肥機260の構成を示す機能ブロック図である。
図7】防除機280の構成を示す機能ブロック図である。
図8】製茶ライン520の構成を示す機能ブロック図である。
図9】製茶ライン520の各機能ブロックを模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、情報システム100が管理する農産加工品の作物育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。図1において、実線矢印は物の流れを示し、破線矢印は情報の流れを示す。
【0019】
情報システム100は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品600を管理する。圃場200は、作物を育成する。圃場作業者202は、作業者端末204を携帯し、圃場200を管理する圃場管理過程、作物を育成する作物育成過程、作物を収穫する作物収穫過程における各種作業に従事する。
【0020】
作業者端末204は、情報システム100から作業の計画、たとえば、施肥計画、防除計画、収穫計画等を受信する機能を有する。このため、圃場作業者202は、当該受信した計画を参照して、作業を行うことができる。
【0021】
圃場作業者202は、また、作業者端末204に作業日報等の作業情報を入力することも可能であり、作業者端末204は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0022】
圃場200には、フィールドサーバ206、採取機208、施肥機または防除機等の管理機210が配置され、圃場作業者202は、これら圃場機器を利用して、施肥作業、防除作業、収穫作業等の圃場作業を行う。圃場機器(フィールドサーバ206、採取機208、管理機210等)は、圃場管理過程で圃場情報を取得し、作物育成過程で育成情報を取得し、作物収穫過程で収穫情報を取得し、取得した圃場情報、育成情報および収穫情報を情報システム100に送信する。
【0023】
前記圃場情報として、たとえば圃場200の土壌情報が例示でき、前記育成情報として、たとえば作物の育成状況を示す画像情報や作物育成過程における気象情報が例示できる。前記収穫情報として、たとえば農産物の収穫予定日時情報、重量情報、品質情報等が例示できる。
【0024】
また、圃場機器(フィールドサーバ206、採取機208、管理機210等)は、前記した情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から夫々の機器における設定値を受信し、情報システム100から設定値を受信して自動入力することで、圃場作業者202による入力作業が省略または簡略化でき、圃場機器の自動運転にも対応することが可能になる。
【0025】
輸送車両300は、圃場200で収穫された農産物を輸送する。輸送作業者302は、輸送車両300を操作して農産物輸送過程における輸送作業に従事する。輸送作業者302は、作業者端末304を携帯し、作業者端末304は、情報システム100から輸送計画等を受信する。輸送作業者302は、受信した輸送計画を参照して、輸送作業を行うことができる。輸送作業者302は、また、作業者端末304に作業日報等の作業情報を入力することも可能であり、作業者端末304は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0026】
輸送車両300は、当該輸送過程において輸送情報を取得し、取得した輸送情報を情報システム100に送信する。輸送情報として、たとえば、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。また、輸送車両300は、輸送情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から輸送車両300における設定値、たとえばナビゲーションシステムへの入力値を受信する。この際、情報システム100から設定値を受信して自動入力することで、輸送作業者302による入力作業が省略または簡略化できる。
【0027】
農産物受入設備400は、輸送された農産物を受け入れる。受入作業者402は、受入設備400を操作して農産物受入過程における受入作業に従事する。受入作業者402は、作業者端末404を携帯し、作業者端末404は、情報システム100から受入計画等を受信する。受入作業者402は、受信した受入計画を参照して、受入作業を行うことが可能であり、受入作業者402は、作業者端末404に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末404は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0028】
農産物受入設備400は、当該受入過程において受入情報を取得し、取得した受入情報を情報システム100に送信する。前記受入情報として、たとえば、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。
【0029】
また、農産物受入設備400は、受入情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から農産物受入設備400における設定値を受信する。この際、情報システム100から設定値を受信して自動入力することで、受入作業者402による入力作業が省略または簡略化できる上、農産物受入設備400を無人で自動制御することもできる。
【0030】
農産物加工設備500は、受け入れた農産物を加工する。加工作業者504は、野菜や果物などの農産物を、ジュースなどの新しい製品に加工することに従事する。加工作業者504は、作業者端末502を携帯し、作業者端末502は、情報システム100から加工計画等を受信する。加工作業者504は、受信した加工計画を参照して、加工作業を行うことが可能であり、加工作業者504は、作業者端末502に加工作業の日報等の作業情報を入力し、作業者端末502は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0031】
農産物加工設備500により加工された農産物は、農産加工品600として取扱業者700を介して小売店800に出荷され、消費者900によって購入される。農産加工品600としては、ジュースの他にジャム、ドレッシング、漬物などが挙げられる。
【0032】
取扱業者700は、流通販売過程で取得される情報、たとえば、農産加工品600の売上、在庫、在庫回転率、小売店800から取得する消費者900のニーズに関連するニーズ情報等の流通販売情報を情報システム100に送信する。
【0033】
図2は、情報システム100の構成を示す機能ブロック図である。情報システム100は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理する情報システムであり、たとえば、サーバ等のコンピュータハードウェアおよびソフトウェアによって構成される。情報システム100は、制御部114,受信部102、送信部104、計画設定値生成部106、記憶部108、推定部110、障害検知部112、計画設定値修正部113を有する。
【0034】
受信部102は、作物の圃場を管理する圃場管理過程、作物を育成する作物育成過程、作物を収穫する作物収穫過程、収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、および、農産物を加工する農産物加工過程から選択された1以上の過程を含む前記農産加工品の生産に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する。なお、流通販売過程で取得される流通販売情報には、ニーズ情報を含んでもよい。
【0035】
本明細書において、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」を1サイクルとし、当該1サイクルを「サイクル過程」と定義するものとする。たとえば図1を例にすれば、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」とは、管理状態にある圃場200で作物が育成され、当該作物が農産物として収穫され、輸送車両300を介して輸送され、当該農産物を農産物加工設備500にて加工して農産加工品600と為し、これを取扱業者700、小売店800、消費者900へ流通販売するまでの過程をいい、当該一連の過程を「サイクル過程」と定義することができる。
【0036】
ただし、圃場管理過程は、作物育成に先立って管理されることは勿論、作物の育成途中および収穫後にあっても管理されることが一般的であることから、圃場管理過程は、サイクル過程の全般に渡る過程であるといえる。また、作物育成過程は、育成される作物が樹木等複数年に渡って収穫される作物である場合、サイクル過程の全般に渡って育成管理されるべきであり、この場合、圃場管理過程同様、サイクル過程の全般に渡る過程であるといえる。
【0037】
なお、本明細書における「農産加工品の生産に係る全過程」は、上記「サイクル過程」のうち、作物が圃場200で育成され、収穫され、輸送され、農産物加工設備500で農産加工品600に加工されるまでの過程をいう。
【0038】
計画設定値生成部106は、受信部102が受信した受信情報に基づき、前記した圃場管理過程、作物育成過程、作物収穫過程、農産物輸送過程、農産物加工過程を含む全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記した全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する。
【0039】
障害検知部112は、受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する。
【0040】
計画設定値修正部113は、障害検知部112が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の計画または設定値を、障害が回避されるように修正し、計画の修正計画または設定値の修正設定値を生成する。この場合、送信部104は、修正計画または修正設定値を、修正に係る作業の実施者端末または修正に係る機器に送信し、当該構成を有することで、障害が発生した場合、臨機応変に対応し、当該障害を回避することができる。
【0041】
送信部104は、計画設定値生成部106が生成した計画または設定値を、対応する作業の実施者端末または機器に送信し、計画設定値修正部113が生成した修正計画または修正設定値を、修正に係る作業の実施者端末または修正に係る機器に送信する。
【0042】
推定部110は、任意の「サイクル過程」における流通販売過程で取得された流通販売情報に含まれるニーズ情報に適合する計画または設定値を推定する。たとえば、推定部110は、ニーズ情報をデータ化したニーズデータを入力したとき、推定計画または推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する。
【0043】
記憶部108は、推定部110が推定した計画の推定計画および設定値の推定設定値を、当該「サイクル過程」で取得または生成した受信情報、計画または設定値とともに、当該「サイクル過程」に関連付けたサイクル情報として記録する。
【0044】
推定部110が推定計画または推定設定値を生成し、記憶部108にこれを記録する場合、計画設定値生成部106は、現「サイクル過程」より前の「サイクル過程」における推定計画または推定設定値に基づいて現「サイクル過程」の計画または設定値を生成することができる。あるいは、計画設定値生成部106は、現サイクル過程において取得した受信情報に基づく調整を推定計画または推定設定値に加えて現「サイクル過程」の計画または設定値を生成することができる。
【0045】
障害検知部112は、受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する。
【0046】
以下、受信部102が受信する受信情報、および、当該受信情報を受信した場合に計画設定値生成部106が生成する計画または設定値を例示する。
【0047】
たとえば、受信部102が、圃場管理過程で取得される圃場情報を受信し、受信した圃場情報が、圃場の土壌情報を含む場合、計画設定値生成部106は、当該土壌情報に基づいて、圃場の施肥の計画または施肥で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0048】
たとえば、受信部102が、作物育成過程で取得される育成情報を受信し、受信した育成情報が、作物の画像情報または作物の育成過程における気象情報を含む場合、計画設定値生成部106は、画像情報または気象情報に基づいて、作物の防除もしくは収穫の計画、または、防除もしくは収穫で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0049】
たとえば、受信部102が、作物収穫過程で取得される収穫情報を受信し、受信した収穫情報が、農産物の収穫予定日時情報、重量情報または品質情報を含む場合、計画設定値生成部106は、収穫予定日時情報、重量情報または品質情報に基づいて、農産物の輸送の計画、または、輸送で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0050】
たとえば、受信部102が、農産物輸送過程で取得される輸送情報を受信し、受信した輸送情報が、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報または到着予定日時情報を含む場合、計画設定値生成部106は、重量情報、品質情報または到着予定日時情報に基づいて、農産物の受入もしくは加工の計画、または、受入もしくは加工で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0051】
たとえば、受信部102が、農産物加工過程で取得される加工情報を受信し、受信した加工情報が、農産物の加工の過程でモニタしているモニタリング情報を含む場合、計画設定値生成部106は、モニタリング情報に基づいて、加工の変更計画、または、加工で使用する機器の再設定値を生成することができる。
【0052】
以上説明した情報システム100によれば、「作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程」で取得される一次情報を、一元的に管理することができる。
【0053】
また、作業中に使用される機器の障害を検知する障害検知部と、その検知した障害を回避する手段を有し、農作業者、流通手段、農産物加工工場を一元的に通信し、リアルタイムに作業状態を明確化することができる。
【0054】
さらに、農作物の収穫、輸送、加工の過程で何らかのトラブルが発生した場合でも、障害を検知し、リアルタイムに障害を回避して、障害による生産効率の低下を抑制することができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態2の情報システム120は、上記した情報システム100を製茶に特化した場合の例を示す。すなわち、実施の形態1における圃場200、作物、農産物および農産物加工設備500、農産加工品600は、本実施の形態2において、それぞれ、茶圃場220、茶木、茶の生葉および製茶ライン520、製茶品620であり、実施の形態1における圃場管理過程、作物育成過程、作物収穫過程、農産物輸送過程、農産物加工過程および流通販売過程は、本実施の形態2において、それぞれ、茶圃場管理過程、茶木育成過程、生葉摘採過程、生葉輸送過程、製茶過程および茶製品の流通販売過程である。この場合、情報システム120は、茶圃場管理過程、茶木育成過程、または、生葉摘採過程において、施肥機280、防除機260、摘採機240、または、フィールドサーバ230からの情報を受信し、生葉輸送過程において、輸送車両320からの情報を受信し、製茶過程において、製茶ライン520からの情報を受信する。製茶ライン520からの情報として、生葉管理工程、蒸熱工程、蒸葉処理工程、葉打ち工程、粗揉工程、中揉工程、精揉工程、乾燥工程の各工程で使用する機器からの情報を例示することができる。
【0056】
また、本実施の形態2においては、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」とは、管理状態にある圃場220で作物が育成され、当該作物が茶木、茶の生葉として収穫され、輸送車両320を介して輸送され、当該農産物である茶木、茶の生葉を製茶ライン520にて加工して製茶品520と為し、これを取扱業者700、小売店800、消費者900へ流通販売するまでの過程のことであり、これを以って「サイクル過程」と定義することができる。
【0057】
図3は、情報システム120が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。図3において、実線矢印は物の流れを示し、破線矢印は情報の流れを示す。
【0058】
情報システム120は、茶木を育成し収穫し加工して得られる茶製品を管理する。情報システム120は、図2を用いて説明した情報システム100と同様の構成を有する。同様の構成については説明を省略する。
【0059】
なお、計画設定値生成部106は、作物、農産物が茶木、生葉(生茶葉)である場合、農産物(生葉)加工過程の加工計画を含んでもよい。共同経営による場合等であれば、各農作業者が生茶葉を製茶工場へ納入する際に納入予定を製茶工場が把握している方が工場の計画を立案しやすいためである。
【0060】
また、障害検知部112は、作物、農産物が茶木、生葉(生茶葉)であり、計画設定値生成部106に農産物加工過程の加工計画を含んでいる場合には、後述する摘採機240の故障、輸送機器320のトラブル、製茶ライン520の機械トラブルなどを検知してもよい。例えば、摘採機240の故障により、納入予定の生茶葉が製茶工場に納入できなくなってしまった場合には、計画設定値修正部113により、農作業者を納入可能な他の農作業者に計画自体を変更することも可能である。
【0061】
更に、送信部104は、このような突発的に発生した修正計画または修正設定値であっても、修正に係る作業の実施者端末または修正に係る機器に送信し、当該構成を有することで、障害が発生した場合、臨機応変に対応し、当該障害を回避することができる。
【0062】
茶圃場220は、茶木を育成する。茶圃場作業者222は、作業者端末224を携帯し、茶圃場220を管理する茶圃場管理過程、茶木を育成する茶木育成過程、茶葉を収穫する生葉摘採過程における各種作業に従事する。作業者端末224は、情報システム120から作業の計画、たとえば、施肥計画、防除計画、摘採計画を受信し、茶圃場作業者222は、当該受信した計画を参照して、作業を行うことができる。
【0063】
茶圃場作業者222は、また、作業者端末224に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末224は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。
【0064】
茶圃場220には、フィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280等の茶圃場機器が配置される。茶圃場作業者222は、これらフィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280等の茶圃場機器を利用して、施肥作業、防除作業、摘採作業等の茶圃場作業を行う。
【0065】
茶圃場機器は、茶圃場管理過程で圃場情報を取得し、茶木育成過程で育成情報を取得し、生葉摘採過程で収穫情報を取得し、取得した圃場情報、育成情報および収穫情報を情報システム120に送信する。前記圃場情報として、茶圃場220の土壌情報が例示でき、前記育成情報として、茶木の育成状況を示す画像情報や茶木育成過程における気象情報が例示できる。
【0066】
また、収穫情報として、生葉の収穫予定日時情報、重量情報、品質情報等が例示できる。前記茶圃場機器は、取得した情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から夫々の機器における設定値を受信する。この際、情報システム120から設定値を受信して自動入力することで、茶圃場作業者222による入力作業が省略または簡略化でき、茶圃場機器の自動運転にも対応することが可能になる。
【0067】
図4は、フィールドサーバ230の構成を示す機能ブロック図であり、図5は、摘採機240の構成を示す機能ブロック図である。図6は、施肥機260の構成を示す機能ブロック図であり、図7は、防除機280の構成を示す機能ブロック図である。
【0068】
フィールドサーバ230は、気象情報取得部232、航空撮像部233、記憶部234、通信部235、制御部236を有する。フィールドサーバ230は、複数のセンサーとネットワーク技術を利用した屋外設置型のシステムとして構成され、気温センサー、湿度センサー、日照センサー、 土壌温度センサーなどを含んでいる。具体的には、各種データ処理を行う制御部236と、ドローンなどの遠隔操作により無人の飛行物体を操り、上空より茶圃場を撮像する航空撮像部233、各種センサーにて測定された値やデータ等を記憶する記憶部234,気象情報を取得する気象情報取得部232、情報システム120との送受信を行う通信部235により構成されている。また、フィールドサーバ230は、土壌情報取得部247を備えてもよい。
【0069】
摘採機240は、摘採装置242、走行部243、GPS244、センシング部245、生葉分析計246、土壌情報取得部247、荷重変換部248、判定部249、記憶部250、通信部251、制御部252等から構成される。
【0070】
制御部252は、各種データ処理を行い、GPSユニット244は、茶圃場の地理的位置を特定する。
【0071】
センシング部245は、複数の撮像装置を摘採機240の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。また、センシング部245には、近赤外線画像撮像装置を備えてもよい。近赤外線画像撮像装置で撮像した画像は、生葉の成分分析等に用いることができる。
【0072】
生葉分析計246は、生葉を破壊することなく、成分を分析するものであり、生葉中の全窒素、総繊維、含水率等を計測することができる。また、生葉の葉緑素値を計測することができるものであってもよい。
【0073】
土壌情報取得部247は、施肥量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0074】
荷重変換部248は、ロードセルの値より茶の収量を自動予測するために設けられる。
【0075】
判定部249は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPS244からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)を判定する。また、判定部249は、生葉分析計246による計測値から茶葉(生葉)の階級を判定したり、土壌情報取得部247から取得した土中の施肥量の適否を判定したり、荷重変換部248により測定された収量を判定する。
【0076】
記憶部250は、摘採機240の走行情報や刈取り情報等を記憶し、通信部251は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0077】
摘採装置242は、例えば刈り取った茶葉(生葉)を、刈刃後方からの背面風によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、背面風に乗せて、収容部など適宜の部位に移送する。
【0078】
走行部243は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0079】
施肥機260は、肥料散布装置262、走行部263、GPS264、センシング部265、土壌情報取得部267、判定部269、記憶部270、通信部271、制御部272等から構成される。
【0080】
制御部272は、各種データ処理を行い、GPSユニット264は、茶圃場の地理的位置を特定する。
【0081】
センシング部265は、複数の撮像装置を施肥機260の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。センシング部265には、センシング部245と同様に、近赤外線画像撮像装置を備えてもよく、マルチスペクトルカメラを備えてもよい。
【0082】
土壌情報取得部267は、施肥量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0083】
判定部269は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPS264からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)や、土壌情報取得部267から取得した土中の施肥量の適否を判定する。
【0084】
また、判定部269は、前記センシング部265にて撮像した近赤外線画像と可視画像を合成して得られるNDVI(正規化植生指数)画像から、生育状況を数字や色で視認し、その数字や色を基に生葉の収穫予定日時を判定することもできる。更に判定部269は、生葉分析計246で計測された生葉中の総繊維量や、葉緑素値に基づき、生葉の収穫予定日時を判定することもできる。
【0085】
記憶部270は、施肥機260の走行情報や施肥情報等を記憶し、通信部271は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0086】
肥料散布装置262は、例えば、車両後部に設けられたコンテナ内に設けられている肥料搬出部によって内部の肥料が散布位置から土壌に向けて適量が搬出され、散布された肥料の散布量の情報は、通信部271を介して情報システム120へ送られる。
【0087】
走行部263は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0088】
防除機280は、薬液散布装置282、走行部283、GPS284、センシング部285、土壌情報取得部287、判定部289、記憶部290、通信部291、制御部292等から構成される。
【0089】
制御部292は、各種データ処理を行い、GPSユニット284は、茶圃場の地理的位置を特定する。センシング部285は、複数の撮像装置を防除機の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。
【0090】
土壌情報取得部287は、散布する薬液量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0091】
判定部289は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPS284からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)や、土壌情報取得部287から取得した農薬量の適否を判定する。
【0092】
記憶部290は、防除機280の走行情報や農薬の散布情報等を記憶し、通信部291は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0093】
薬液散布装置282は、例えば、車両に設けられた薬剤タンク内の薬剤を、薬剤導管を介して茶葉に向けて適量を散布する。散布された薬剤の散布量の情報は、通信部291を介して情報システム120へ送られる。
【0094】
走行部283は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0095】
表1は、上記したフィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280が備える情報取得手段を例示した表である。表1において、各機器は、「●」が記入された情報を取得する。
【表1】
【0096】
輸送車両320は、茶圃場220で収穫された生茶葉を輸送する。輸送作業者322は、輸送車両320を操作して生茶葉輸送過程における輸送作業に従事する。輸送作業者322は、作業者端末324を携帯し、作業者端末324は、情報システム120から輸送計画等を受信することで、輸送作業者322は、受信した輸送計画を参照して、輸送作業を行うことができる。輸送作業者322は、また、作業者端末324に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末324は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。
【0097】
輸送車両320は、当該輸送過程において輸送情報を取得し、取得した輸送情報を情報システム120に送信する。前記輸送情報としては、輸送に係る生茶葉の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。
【0098】
輸送車両320は、輸送情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から輸送車両320における設定値、たとえばナビゲーションシステムへの入力値を受信し、情報システム120から設定値を受信して自動入力することで、輸送作業者322による入力作業が省略または簡略化できる。
【0099】
生葉受入420は、輸送された生茶葉を受け入れる。受入作業者422は、生葉の受入設備を操作して生茶葉受入過程における受入作業に従事する。受入作業者422は、作業者端末424を携帯し、作業者端末424は、情報システム120から受入計画等を受信することで、受入作業者422は、受信した受入計画を参照して、受入作業を行うことができる。更に受入作業者422は、作業者端末424に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末424は、入力された作業情報を情報システム120に送信することもできる。尚、作業者端末424は、設置式、携帯式のいずれであってもよい。
【0100】
生葉受入420は、当該受入過程において受入情報を取得し、取得した受入情報を情報システム120に送信する。前記受入情報として、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。また、生葉受入420は、受入情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から生葉受入420における設定値を受信する。その際は、情報システム120から設定値を受信して自動入力することで、受入作業者422による入力作業が省略または簡略化できる。
【0101】
製茶ライン520は、受け入れた生茶葉を荒茶に加工する。ライン作業者524は、生葉受入420にて受け入れた生茶葉を荒茶に加工することに従事する。ライン作業者524は、作業者端末522を携帯し、作業者端末522は、情報システム120から加工計画等を受信する。ライン作業者524は、受信した加工計画を参照して、加工作業を行える。ライン作業者524は、作業者端末522に加工作業の日報等の作業情報を入力し、作業者端末522は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。製茶ライン520は、情報システム120から加工計画等を受信して無人で自動制御してもよい。製茶ライン520は加工作業の日報等の作業情報を自動的に情報システム120に送信するものでもよい。
【0102】
図8は、製茶ライン520の構成を示す機能ブロック図であり、図9は、製茶ライン520の各機能ブロックを模式的に示した模式図である。製茶ライン520は、図8に示したように製造装置が細分化されている。
【0103】
生葉受入420で受け入れた生茶葉は、生葉管理工程にて、受入コンテナ(生葉自動コンテナ)530に投入され、茶葉温度の常温保持が促される。生葉自動コンテナは、生茶葉を刈取群毎に区別して一時貯留する。収容された生茶葉を次工程へ供給する際には、通気性コンベアを駆動させて生茶葉を収容箱の搬出口まで搬送し、当該搬出口に配設された掻き落とし装置にて必要量の生茶葉を次工程へと送出するように構成する。
【0104】
生葉管理工程より送出された生茶葉は、茶葉内の酸化酵素の活性を失わせ、茶葉の風味を長く保存させることを目的として蒸熱工程に移行される。蒸熱工程は蒸熱機532により行われ、蒸気量、蒸し時間、蒸し胴の回転数、蒸し胴の傾斜角度、攪拌回転数等により、茶葉の色、茶葉の外観、水色等茶葉品質に大きな差が生じるため、各調整が非常に大事な工程であることが知られている。
【0105】
蒸熱工程を終えた蒸し茶葉は、蒸葉処理工程に送られる。蒸葉処理工程は蒸葉処理機532により行われ、回転胴内における程良い打圧と攪拌羽根による攪拌を作用させる工程であり、次工程以降の揉込みを良くして、茶葉の仕上がりを良くする目的で行われる。
【0106】
葉打ち工程および粗揉工程は、蒸葉処理を終えた蒸し茶葉を揉みながら乾燥する工程であり、葉打機536及び粗揉機538により行われ、蒸し茶葉の含水率をDB350~400%からおよそ100%まで低減する。葉打ち工程および粗揉工程は、茶葉の品質を決定する大事な工程でもある。
【0107】
揉捻工程は、粗揉工程での揉み不足及び乾燥ムラを補完し、茶葉の水分量を均一にし、ヨレ形状を付与するため揉捻機540にて行われる。
【0108】
中揉工程は、回転胴と揉み手により揉乾を行う工程であり、次工程以降に適するよう茶葉を調整するため、中揉機542により行われる。さらに、精揉工程により、精揉機544を使用して、茶葉内部の水分を適量まで減量し、茶葉形状が整えられ、乾燥工程にて、乾燥機546を使用して、茶葉の水分を5%程度まで熱風乾燥し、茶葉を貯蔵可能な状態とし、荒茶製造は完了する。
【0109】
但し、図8図9に示した製茶ライン520は一般的な例示であり、生葉受入420から荒茶が完成するまでの装置であれば、これらの全ての工程をすべて含むものでなくてもよく、また、その他の装置が追加されていてもよい。
【0110】
また、本実施の形態2の情報システムは、煎茶の製造ラインに限られるものではなく、半発酵茶、発酵茶の製造ラインであっても、適用が可能であり、その場合には、製造ライン内に上記以外の萎凋工程、発酵工程も含まれる。
【0111】
なお、仕上ブレンド工程548を行う場合、荒茶を出荷状態に仕上げるとともに、産地や品種、蒸し具合などが異なる荒茶の特長を見極め、ブレンドしてもよい。
【0112】
表2は、上記した製茶ライン520の各工程において取得される情報を例示した表である。表2において、各工程では、「●」が記入された情報を取得する。
【表2】
【0113】
製茶ライン520により荒茶に加工された製茶品620は、取扱業者700を介して小売店800に出荷され、消費者900によって購入される。
【0114】
このようなシステム構成とすることで、生葉の摘採、輸送、茶製品への加工の過程で障害が発生した場合であっても、リアルタイムに状況を把握し、障害を回避または障害の影響を少なくするよう摘採計画、輸送計画、加工計画等を修正することができる。その結果、障害の影響による茶製品の生産効率低下を抑制することができる。なお、上記した情報システムによれば、以下のような効果も得られる。
【0115】
すなわち、茶圃場220内で収穫された生茶葉は、情報システム120から受信した作業計画、施肥量等の生茶葉に関する情報を保持したまま、輸送され、加工され、販売されるため、製茶品として、最終的に消費者の手に渡るまでの全過程を総合的に俯瞰することができ、収穫・製茶ライン加工・流通などの過程を明確にすることができる。特に、多岐にわたる製茶ライン加工を経たとしても、販売段階にて、茶葉育成時の施肥量、農薬量等の履歴が明確となるため、消費者への安全性向上に大幅に寄与することが可能である。
【0116】
また、茶圃場管理過程から流通販売過程までの一連の過程を1サイクルとするサイクル過程において、当該サイクル過程の流通販売過程で取得された流通販売情報にニーズ情報を含ませることで、市場ニーズを反映した流通過程サイクルを実現することもできる。
【0117】
たとえば、ニーズ情報として品評会における評価結果を採用し、茶市場や品評会で高い評価を得た茶製品の成分分析結果と、加工前生茶葉の成分分析結果および製茶ラインのパラメータ(各機器の設定値)との関係を推定するような人工知能(AI)を構築すれば、市場ニーズを反映した流通過程サイクルを実現できる。
【0118】
すなわち、加工前の生葉の成分分析データおよび製茶ラインにおける加工パラメータを入力データとし、加工後の茶製品の成分分析データを出力データとする学習済み深層学習ニューラルネットワークを構築すれば、当該学習済み深層学習ニューラルネットワークを利用して、加工前に、仕上り製品の品質を予測することができる。当該予測は、次年度の生産計画策定に生かすことができる。また、生葉受け入れの際の成分分析結果から、計画で予定された加工パラメータを適用した場合の仕上り製品の品質を容易に予測でき、当該品質に問題がある場合には、速やかに計画済みの加工パラメータを適切な品質が予測される加工パラメータに計画変更することができる。前記予測は仕上がり製品の品質のみならず、製造装置の低燃費等の効率化を要望する生産者からのニーズ情報にも適用が可能である。
【0119】
また、加工前の生葉の成分分析データ(仮定または実測値)および加工後の茶製品の成分分析データ(目標値)を入力データとし、製茶ラインにおける加工パラメータを出力データとする学習済み深層学習ニューラルネットワークを構築すれば、当該学習済み深層学習ニューラルネットワークを利用して、品評会で高い評価を得た茶製品の成分分析結果に適合するよう、製茶ラインのパラメータ(各機器の設定値)を推定することができる。
【0120】
前記判定部により、センシング部にて撮像した近赤外線画像と可視画像を合成して得られるNDVI(正規化植生指数)画像から生育状況を数字や色で視認を可能とする場合には、収穫予定日時を判定する数字や色の判定閾値をニーズ情報としてもよい。そのようにすれば、前年以前の過去の収穫に対する市場評価を考慮しながら、収穫予定日時を判定する数字や色の判定閾値を変更していくことができる。
【0121】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0122】
たとえば、上記した実施の形態では、情報システム100,120について説明したが、本発明はプログラムとして把握することも可能である。すなわち、上記した実施の形態の発明は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理するコンピュータで稼働するプログラムであって、前記作物の圃場を管理する圃場管理過程、前記作物を育成する作物育成過程、前記作物を収穫する作物収穫過程、前記収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、前記農産物を加工する農産物加工過程、および、前記加工により得られる農産加工品を流通販売する流通販売過程、を含む前記農産加工品の生産販売に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信機能と、前記受信部が受信した受信情報に基づき、前記全過程の何れかの過程における作業の計画、または、前記全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成機能と、前記計画設定値生成部が生成した前記計画または前記設定値を、前記作業の実施者端末または前記機器に送信する送信機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラム、として把握することも可能である。
【符号の説明】
【0123】
100…情報システム、102…受信部、104…送信部、106…計画設定値生成部、108…記憶部、110…推定部、112…障害検知部、113…計画設定値修正部、120…情報システム、200…圃場、202…圃場作業者、204…作業者端末、206…フィールドサーバ、208…採取機、210…管理機、220…茶圃場、222…茶圃場作業者、224…作業者端末、230…フィールドサーバ、232…気象情報取得部、233…航空撮像部、234…記憶部、235…通信部、236…制御部、240…摘採機、242…摘採装置、243…走行部、244…GPSユニット、245…センシング部、246…生葉分析計、247…土壌情報取得部、248…荷重変換部、249…判定部、250…記憶部、251…通信部、252…制御部、260…施肥機、262…肥料散布装置、263…走行部、264…GPSユニット、265…センシング部、267…土壌情報取得部、269…判定部、270…記憶部、271…通信部、272…制御部、280…防除機、282…薬液散布装置、283…走行部、284…GPSユニット、285…センシング部、287…土壌情報取得部、289…判定部、290…記憶部、291…通信部、292…制御部、300…輸送車両、302…輸送作業者、304…作業者端末、320…輸送車両、322…輸送作業者、324…作業者端末、400…農産物受入設備、402…受入作業者、404…作業者端末、420…生葉受入、422…受入作業者、424…作業者端末、500…農産物加工設備、502…作業者端末、504…加工作業者、520…製茶ライン、522…作業者端末、524…ライン作業者、530…受入コンテナ、532…蒸熱機、534…蒸葉処理機、536…葉打機、538…粗揉機、540…揉捻機、542…中揉機、544…精揉機、546…乾燥機、548…仕上ブレンド工程、600…農産加工品、620…製茶品、700…取扱業者、800…小売店、900…消費者。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9