(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006705
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】回転型差動変圧器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/22 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01D5/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107844
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大島 豊弘
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077AA46
2F077CC02
2F077FF13
2F077FF26
2F077UU15
2F077VV02
2F077VV29
(57)【要約】
【課題】RVDTの製造時における感度の調整作業工数を低減することができる回転型差動変圧器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】RVDT1は、ケース部材10と、ケース部材10に回転自在に設けられた回転軸20と、回転軸20に固定されたロータコア30と、ケース部材10の内部に、ロータコア30に対して径方向外側に設けられたステータコア40と、ステータコア40に巻回されたステータ巻線41と、回転軸20に沿って延びる方向において、ステータコア40に対するロータコア30の相対位置を、ロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が増加する第1の方向又はロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が減少する第2の方向に調整する調整部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材(10)と、
前記ケース部材(10)に回転自在に設けられた回転軸(20)と、
前記回転軸(20)に固定されたロータコア(30)と、
前記ケース部材(10)の内部に、前記ロータコア(30)に対して径方向外側に設けられたステータコア(40)と、
前記ステータコア(40)に巻回されたステータ巻線(41)と、
前記回転軸(20)に沿って延びる方向において、前記ステータコア(40)に対する前記ロータコア(30)の相対位置を、前記ロータコア(30)に鎖交する前記ステータ巻線(41)の磁束が増加する第1の方向又は前記ロータコア(30)に鎖交する前記ステータ巻線(41)の磁束が減少する第2の方向に調整する調整部材(52a,52b)と
を備える回転型差動変圧器。
【請求項2】
前記調整部材(52a,52b)は、前記回転軸(20)と前記ケース部材(10)との間に配置される調整座金(52a,52b)を含む、請求項1に記載の回転型差動変圧器。
【請求項3】
前記調整部材は、前記ケース部材(10)に設けられ、螺合により前記回転軸(20)を軸方向に沿って押圧する螺合部材(54)と、前記回転軸(20)を前記軸方向に沿って前記螺合部材(54)が押圧する方向とは逆方向に付勢する弾性部材(55)とを含む、請求項1に記載の回転型差動変圧器。
【請求項4】
ケース部材(10)と、
前記ケース部材(10)に回転自在に設けられた回転軸(20)と、
前記回転軸(20)に固定されたロータコア(30)と、
前記ケース部材(10)の内部に、前記ロータコア(30)に対して径方向外側に設けられたステータコア(40)と、
前記ステータコア(40)に巻回されたステータ巻線(41)と
を備え、
前記回転軸(20)の軸方向に沿う方向の前記ロータコア(30)の長さと、前記軸方向に沿う方向の前記ステータコア(40)の長さとが同じ長さである回転型差動変圧器の製造方法であって、
前記回転軸(20)の前記軸方向に沿う方向において、前記ステータコア(40)に対する前記ロータコア(30)の位置を、前記ステータコア(40)の位置とは異なる初期位置にするステップと、
前記回転型差動変圧器の出力特性を検出するステップと、
前記回転型差動変圧器の出力特性に基づいて、前記ロータコア(30)の位置を前記初期位置に維持する又は前記初期位置とは異なる位置にするステップと
を有する回転型差動変圧器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は回転型差動変圧器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転型差動変圧器(RVDT)として、例えば特許文献1に記載されているようなRVDTが知られている。特許文献1に記載されたRVDTは、筒状のステータコアと、ステータコアに設けられたステータ巻線と、ステータ巻線の内側に設けられ、回転軸に保持されたロータコアとを有している。このRVDTは、回転軸の回転角度に対してステータ巻線に生じる出力電圧が変化するため、出力電圧の変化に基づいて回転軸の回転角度が得られる。
【0003】
RVDTは、ロータコアとステータコアとの空隙ギャップの大きさのばらつきにより、回転軸の回転角度に対する出力電圧が変動し、これによりRVDTの感度が変動する。そのため、従来のRVDTの製造工程においては、回転軸の回転角度に対する出力電圧のばらつきを小さくするために、ロータコアの外径部を研磨加工してロータコアとステータコアとの空隙ギャップを調整して、回転軸の回転角度に対する出力電圧の出力特性を調整することでRVDTの感度を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなRVDTでは、製造時におけるRVDTの感度を調整するためのロータコアの研磨加工に多数の作業工数を要するため、感度の調整作業工数が増加するという問題点があった。
【0006】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、RVDTの製造時における感度の調整作業工数を低減することができる回転型差動変圧器その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の回転型差動変圧器は、ケース部材と、ケース部材に回転自在に設けられた回転軸と、回転軸に固定されたロータコアと、ケース部材の内部に、ロータコアに対して径方向外側に設けられたステータコアと、ステータコアに巻回されたステータ巻線と、回転軸に沿って延びる方向において、ステータコアに対するロータコアの相対位置を、ロータコアに鎖交するステータ巻線の磁束が増加する第1の方向又はロータコアに鎖交するステータ巻線の磁束が減少する第2の方向に調整する調整部材とを備える。
【0008】
また、調整部材は、回転軸とケース部材との間に配置される調整座金を含んでもよい。
また、調整部材は、ケース部材に設けられ、螺合により回転軸を軸方向に沿って押圧する螺合部材と、回転軸を軸方向に沿って螺合部材が押圧する方向とは逆方向に付勢する弾性部材とを含んでもよい。
【0009】
また、本発明の回転型差動変圧器の製造方法は、ケース部材に回転自在に設けられた回転軸と、回転軸に固定されたロータコアと、ケース部材の内部に、ロータコアに対して径方向外側に設けられたステータコアと、ステータコアに巻回されたステータ巻線とを備え、回転軸の軸方向に沿う方向のロータコアの長さと、軸方向に沿う方向のステータコアの長さとが同じ長さである回転型差動変圧器の製造方法であって、回転軸の軸方向に沿う方向において、ロータコアの一端の位置を、ステータコアの一端の位置とは異なる初期位置にするステップと、回転型差動変圧器の出力特性を検出するステップと、回転型差動変圧器の出力特性に基づいて、ロータコアの位置を初期位置に維持する又は初期位置とは異なる位置にするステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る回転型差動変圧器及びその製造方法は、ケース部材に回転自在に設けられた回転軸と、回転軸に固定されたロータコアと、ケース部材の内部に、ロータコアに対して径方向外側に設けられたステータコアと、ステータコアに巻回されたステータ巻線とを備え、回転軸の軸方向に沿う方向のロータコアの長さと、軸方向に沿う方向のステータコアの長さとが同じ長さである回転型差動変圧器において、回転軸の軸方向に沿う方向において、ステータコアに対するロータコアの相対位置を調整するため、RVDTの製造時における感度の調整作業工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るRVDTの正面断面図である。
【
図2】
図1に示すRVDTの出力特性を示すグラフである。
【
図3】
図1に示すRVDTのRatio値特性である。
【
図4】
図1に示すRVDTの第1のロータコア位置の概略図である。
【
図5】
図1に示すRVDTの第2のロータコア位置の概略図である。
【
図6】
図1に示すRVDTの第3のロータコア位置の概略図である。
【
図7】実施の形態2に係るRVDTの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る回転型差動変圧器(RVDT)を添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1に係るRVDTの正面断面図である。RVDT1は、円筒状のケース部材10の中心部に設けられた回転軸20と、ケース部材10の内部で回転軸20に固定された、積層金属体からなるロータコア30とを有している。回転軸20は、一端部がケース部材10の外側に突出している。ケース部材10は、この回転軸20が外側に突出している側の第1ケース端部10aと、逆側の端部である第2ケース端部10bとを有している。また、ケース部材10の外側に突出している回転軸20の一端部には、回転角度を検出する図示しない検出対象物の回転軸が接続されている。すなわち、回転軸20はRVDTの入力軸を構成している。
【0013】
ロータコア30の径方向外側には、ケース部材10の内壁に固定された輪状の金属積層体からなるステータコア40が設けられている。ロータコア30とステータコア40との間には、空隙ギャップが存在している。また、ロータコア30は回転軸20と共に回転したときに、ステータコア40との間のギャップパーミアンスが変化するように任意の形状に形成されている。さらに、ロータコア30は、ケース部材10の第1ケース端部10aに近い側の第1ロータコア端部30aと、第2ケース端部10bに近い側の第2ロータコア端部30bとを有している。ステータコア40には、検出巻線及び励磁巻線を含むステータ巻線41が巻回されており、ステータコア40とステータ巻線41とは2相の出力電圧が得られるステータ部を構成している。また、ステータコア40は、第1ケース端部10aに近い側の第1ステータコア端部40aと、第2ケース端部10bに近い側の第2ステータコア端部40bとを有している。
【0014】
ロータコア30の第1ロータコア端部30aから第2ロータコア端部30bまでの回転軸20の延びる方向に沿う方向の長さと、ステータコア40の第1ステータコア端部40aから第2ステータコア端部40bまでの回転軸20の延びる方向に沿う方向の長さとが同じ長さとなるように、ロータコア30及びステータコア40は形成されている。なお、以下の説明では、回転軸20の延びる方向に沿う方向を軸方向という。ロータコア30の第2ロータコア端部30bは、ステータコア40の第2ステータコア端部40bに対して、わずかに第2ケース端部10b寄りにずれて配置されている。ステータ巻線41には、導線42が接続され、導線42はケース部材10の外部に延びている。導線42は、ステータ巻線41の出力電圧を検出する図示しない検出部に接続されている。
【0015】
回転軸20とケース部材10の第1ケース端部10aとの間、及び回転軸20とケース部材10の第2ケース端部10bとの間には、回転軸20を回転自在に支持する軸受50がそれぞれ設けられている。各軸受50は、各軸受50の軸方向の端部に回転軸20を中心に配置された、輪状の止め輪51によりそれぞれ第1ケース端部10a及び第2ケース端部10bに固定されている。第1ケース端部10a側に設けられた止め輪51と軸受50との間には、輪状の第1調整座金52aが設けられており、第2ケース端部10b側に設けられた止め輪51と軸受50との間には、輪状の第2調整座金52bが設けられている。第1調整座金52a及び第2調整座金52bは、軸方向における各軸受50の位置を調整するために設けられている。なお、第1調整座金52a及び第2調整座金52bは調整部材を構成している。
【0016】
軸方向における、ケース部材10に対する軸受50の相対位置は、第1調整座金52a及び第2調整座金50bの軸方向の寸法に対応して変化する。なお、以下の説明では、第1調整座金52a及び第2調整座金50bの軸方向の寸法を厚さという。上述した通り、ステータコア40はケース部材10の内壁に固定され、回転軸20は軸受50に支持され、ロータコア30は回転軸20に固定されている。そのため、軸方向におけるケース部材10に対する軸受50の相対位置を、第1調整座金52a及び第2調整座金52bの厚さの変更により調整することで、軸方向におけるステータコア40に対するロータコア30の相対位置を調整することができる。
【0017】
次に、
図1に示すRVDT1の動作について説明する。RVDT1のロータコア30は、回転軸20の回転と共にステータコア40の径方向内側において回転可能に設けられている。ステータ巻線41が励磁されると、ステータ巻線41の磁束がロータコア30に鎖交する。このときロータコア30が回転すると、ロータコア30とステータコア40とのギャップパーミアンスの変化に応じてステータ巻線41に2相の出力電圧が生じる。この出力電圧が導線42を経由して図示しない検出部に検出される。
【0018】
図2は、
図1に示すRVDT1の出力特性を示すグラフである。RVDT1(
図1参照)では、回転軸20の軸角度に対応して、ロータコア30とステータコア40とのギャップパーミアンスが変化し、ギャップパーミアンスの変化に応じてステータ巻線41に2相の出力電圧である出力Va1及び出力Vb1が発生する。出力Va1は、回転軸20の軸角度の増加に比例して増加し、出力Vb1は、回転軸20の軸角度の増加に比例して減少する。出力Va1と出力Vb1との和は、回転軸20の軸角度に拠らず一定値である。ステータ巻線41(
図1参照)に生じた2相の出力電圧である出力Va1及び出力Vb2は、導線42を経由して図示しない検出部に検出される。
【0019】
図3は、
図1に示すRVDT1のRatio値特性である。Ratio値は、回転軸20の軸角度に対応する出力Va1及び出力Vb2から、次の式(1)により得ることができる。
Ratio値(V/V)=(Va-Vb)/(Va+Vb) (1)
回転軸20の軸角度と、式(1)により計算されたRatio値から、
図3に示すように回転軸20の軸角度に比例するRatio値直線が得られる。すなわち、このRatio値直線により、Ratio値に対応する回転軸20の軸角度を検出することができる。なお、実際には出力Va1及び出力Vb1にはRVDT1の周囲温度や周囲の電気的ノイズを原因とする誤差が含まれるため、この誤差を適当に補正したRatio値に基づいて、Ratio値に対応する回転軸20の軸角度が検出される。これにより、RVDT1は角度検出器として動作する。
【0020】
このとき、Ratio値直線の傾きの角度θは、RVDT1の入力軸である回転軸20の軸角度に対するRVDT1の出力の感度を表す。このRVDT1の出力の感度は、RVDT1の検出精度の誤差に与える影響が大きい。そのため、RVDT1の角度検出精度の向上のためには、RVDT1の製造時に出力の感度を厳密に調整する必要がある。
【0021】
図4は、
図1に示すRVDTの第1のロータコア位置の概略図である。この第1のロータコア位置の場合には、第1調整座金52aと第2調整座金52bとの厚さが同じ第1厚さT1である。ロータコア30の第2ロータコア端部30bは、ステータコア40の第2ステータコア端部40bに対して、第2ケース端部10b(
図1参照)の側にわずかにずれた状態で配置されている。回転軸20の延びる方向に対して垂直な方向からステータコア40を見たときに、ロータコア30がステータコア40と対向して重なっている領域が存在する。この領域は、ロータコア30とステータコア40との間で磁束伝達がされる領域であり、この領域の面積を磁束伝達面積S1として示す。磁束伝達面積S1の領域の軸方向の長さは、ロータコア30の軸方向の長さ及びステータコア40の軸方向の長さよりも短い。
【0022】
ロータコア30とステータコア40との相対位置が変化すると、この磁束伝達面積S1は変化する。磁束伝達面積S1が変化すると、回転軸20の回転角度に対する、ステータコア40に巻回されたステータ巻線41の出力電圧が変化する。したがって、軸方向において、ロータコア30とステータコア40との相対位置が変化することにより、RVDT1の感度が変化する。
【0023】
図5は、
図1に示すRVDT1の第2のロータコア位置の概略図である。この第2のロータコア位置の場合には、第1調整座金52aの厚さを、第1のロータコア位置の場合の第1厚さT1(
図4参照)よりも小さい第2厚さT2に変更している。また、第2調整座金52bの厚さを、第1のロータコア位置の場合の第1厚さT1よりも大きい第3厚さT3に変更している。これにより、この第2のロータコア位置の場合のステータコア40に対するロータコア30の相対位置は、第1のロータコアの位置の場合よりも、第1ケース端部10a側に近づく方向に位置している。すなわち、
図4に示す第1のロータコア位置の場合に対して、
図5に示す第2のロータコア位置の場合には、回転軸20、ロータコア30及び軸受50が矢印Aで示す方向に移動した状態である。
【0024】
第2のロータコア位置の場合のロータコア30は、第1のロータコア位置の場合のロータコア30に対して矢印A方向に移動しているため、第2のロータコア位置の場合の磁束伝達面積S2は、第1のロータコア位置の場合の磁束伝達面積S1よりも大きい。そのため、回転軸20の軸角度に対するステータ巻線41(
図1参照)の出力電圧は、第1のロータコア位置の場合よりも大きい。よって、
図2に示すように、第2のロータコア位置におけるRVDTの出力特性は出力Va2及び出力Vb2であり、第1のロータコア位置における出力Va1及び出力Vb1よりも傾きの絶対値が大きくなる。また、この第2のロータコア位置における、
図3に示すRatio値の感度である角度θは、第1のロータコア位置の場合の角度θに対して大きくなる。
【0025】
図6は、
図1に示すRVDT1の第3のロータコア位置の概略図である。この第2のロータコア位置の場合には、第1調整座金52aの厚さを、第1のロータコア位置の場合の第1厚さT1(
図4参照)よりも大きい第3厚さT3に変更している。また、第2調整座金52bの厚さを、第1のロータコア位置の場合の第1厚さT1よりも小さい第2厚さT2に変更している。これにより、この第2のロータコア位置の場合のステータコア40に対するロータコア30の相対位置は、第1のロータコアの位置の場合よりも、第2ケース端部10b側に近づく方向に位置している。すなわち、
図4に示す第1のロータコア位置の場合に対して、
図6に示す第2のロータコア位置の場合には、回転軸20、ロータコア30及び軸受50が矢印Bで示す方向に移動した状態である。
【0026】
第3のロータコア位置の場合のロータコア30は、第1のロータコア位置の場合のロータコア30に対して矢印B方向に移動しているため、第3のロータコア位置の場合の磁束伝達面積S3は、第1のロータコア位置の場合の磁束伝達面積S1よりも小さい。そのため、回転軸20の軸角度に対するステータ巻線41(
図1参照)の出力電圧は、第1のロータコア位置の場合よりも小さい。よって、
図2に示すように、第2のロータコア位置におけるRVDTの出力特性は出力Va3及び出力Vb3であり、第1のロータコア位置における出力Va1及び出力Vb1よりも傾きの絶対値が小さくなる。また、この第3のロータコア位置における、
図3に示すRatio値の感度である角度θは、第1のロータコア位置の場合の角度θに対して小さくなる。したがって、
図4~
図6に示すように、ロータコア30とステータコア40との相対位置を調節することにより、RVDT1(
図1参照)の感度を調節することが可能である。
【0027】
次に、RVDT1を組み立てるときの、RVDT1の感度を調整する工程について説明する。
図1に示すRVDT1を組み立てるときには、ケース部材10の内部に、ステータ巻線41が巻回されているステータコア40が設けられる。次に、ケース部材10の内部に、ロータコア30が固定されている回転軸20が挿入される。次に、軸受50により回転軸20がケース部材10に支持される。次に、各軸受50の端部に第1調整座金52a、第2調整座金52bがそれぞれ配置され、各軸受50の脱落防止のために止め輪51が第1ケース端部10a及び第2ケース端部10bの所定の位置にそれぞれ設けられる。各止め輪51は、各軸受50との間に第1調整座金52a、第2調整座金52bをそれぞれ挟んで設けられている。このとき配置された第1調整座金52a及び第2調整座金52bは、同じ厚さを有している。
【0028】
このように組み立てられたRVDT1は、構成部品の寸法の公差、組立精度の誤差等の影響により、感度が予め定めた正常範囲から外れている場合がある。そのため、RVDT1の感度を検出し、感度が正常範囲から外れている場合には、RVDT1の感度を正常範囲に調節する必要がある。
【0029】
図4を参照すると、第1調整座金52aと第2調整座金52bの厚さは同じ第1厚さT1である。このときのロータコア30とステータコア40との磁束伝達面積は、磁束伝達面積S1である。次に、図示しない検出部は、
図2に示すようにRVDT1の回転軸20の軸角度と、ステータ巻線41(
図1参照)に生じた出力Va1及び出力Vb2との関係であるRVDT1の出力特性を検出する。
【0030】
次に、検出部は、検出した回転軸20の軸角度と出力Va1及び出力Vb2との関係に基づいて、上述した式(1)により
図3に示すRVDT1のRatio値直線を得る。このRatio値直線が、予め定めたRVDT1の精度範囲Wの範囲内にある場合には、RVDT1の感度を表す、Ratio値直線の傾きの角度θは予め定めた正常範囲内にある。この場合には、RVDT1の感度は予め定めた正常範囲内にあるため、これ以上RVDT1の感度を調節する必要はない。よって、ロータコア30の位置は初期位置に維持される。
【0031】
もし、検出部によって得られたRatio値直線が精度範囲Wの範囲外に出ており、且つ傾きθが予め定めた正常範囲よりも小さい場合には、RVDT1の感度はあらかじめ定めた正常範囲よりも小さい状態である。この場合には
図5に示すように、第1調整座金52aが、第1厚さT1よりも薄い第2厚さT2を有するものに交換される。また、第2調整座金52bが、第1厚さT1よりも厚い第3厚さT3を有するものに交換される。第1調整座金52a及び第2調整座金52bがこのように交換されることで、ロータコア30が矢印A側に移動し、ロータコア30とステータコア40との磁束伝達面積が磁束伝達面積S1(
図4参照)から磁束伝達面積S2に増加する。これにより、回転軸20の軸角度に対するステータ巻線41の出力電圧Va及び出力電圧Vbの傾きの絶対値が増加する。よって、
図3に示すRatio値直線の傾きの角度θが増加し、RVDT1の感度が増加して予め定めた正常範囲内に入る。
【0032】
また、もし検出部によって得られたRatio値直線が精度範囲Wの範囲外に出ており、且つ傾きθが予め定めた正常範囲よりも大きい場合には、RVDT1の感度はあらかじめ定めた正常範囲よりも大きい状態である。この場合には
図6に示すように、第1調整座金52aを、第1厚さT1よりも厚い第3厚さT3を有するものに交換する。また、第2調整座金52bを第1厚さT1よりも薄い第2厚さT2を有するものに交換する。第1調整座金52a及び第2調整座金52bをこのように交換することで、ロータコア30とステータコア40との磁束伝達面積が磁束伝達面積S1(
図4参照)から磁束伝達面積S3に減少する。これにより、回転軸20の軸角度に対するステータ巻線41の出力電圧Va及び出力電圧Vbの傾きの絶対値が減少する。よって、
図3に示すRatio値直線の傾きの角度θが減少し、RVDT1の感度が減少して予め定めた正常範囲内に入る。
【0033】
上述した通り、検出部によって得られたRatio値直線と精度範囲Wとの比較と、傾きθと傾きの正常範囲との比較結果に基づいて、第1調整座金52aと第2調整座金52bを適切な厚さを有するものにすることで、RVDT1の感度を予め定めた正常範囲内に調整することができる。
【0034】
この実施の形態1に係るRVDT1は、上述した通りロータコア30の第1ロータコア端部30aから第2ロータコア端部30bまでの軸方向の長さと、ステータコア40の第1ステータコア端部40aから第2ステータコア端部40bまでの軸方向の長さとが同じ長さとなるようにロータコア30及びステータコア40が形成されており、また、ロータコア30は第2ロータコア端部30bが、ステータコア40の第2ステータコア端部40bよりも、わずかに第2ケース端部10b寄りにずれて配置されている。そのため、第1調整座金52aと第2調整座金52bとの厚さを変更することで、磁束伝達面積を増加させる調整及び減少させる調整のいずれの調整をすることも可能であるため、RVDT1の感度を増加させる調整及び減少させる調整の両方の調整をすることが可能である。
【0035】
また、この実施の形態1に係るRVDT1は、従来のRVDTのようにロータコアの外径部の研磨加工を行う必要がなく、RVDT1の組立工程における感度の調整作業工数を低減することができる。
【0036】
このように、本実施の形態1のRVDT1は、ケース部材10と、ケース部材10に回転自在に設けられた回転軸20と、回転軸20に固定されたロータコア30と、ケース部材10の内部に、ロータコア30に対して径方向外側に設けられたステータコア40と、ステータコア40に巻回されたステータ巻線41と、回転軸20に沿って延びる方向において、ステータコア40に対するロータコア30の相対位置を、ロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が増加する第1の方向又はロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が減少する第2の方向に調整する調整部材とを備えるため、簡単にRVDTの感度を調節することができRVDT1の製造時における感度の調整作業工数を低減することができる。
【0037】
また、調整部材は、回転軸20とケース部材10との間に配置される第1調整座金52aと第2調整座金50bとを含むため、第1調整座金52aと第2調整座金50bとを適切な厚みを有するものに入れ替えることにより簡単にRVDT1の感度を調整することができる。
【0038】
また、本実施の形態のRVDT1の製造方法は、ケース部材10と、ケース部材10に回転自在に設けられた回転軸20と、回転軸20に固定されたロータコア30と、ケース部材10の内部に、ロータコア30に対して径方向外側に設けられたステータコア40と、ステータコア40に巻回されたステータ巻線41とを備え、ロータコア30の軸方向に沿う方向の長さと、ステータコア40の軸方向に沿う方向の長さとが同じ長さである回転型差動変圧器の製造方法であって、回転軸20の軸方向に沿う方向において、ロータコア30の一端の位置を、ステータコア40の一端の位置とは異なる初期位置にするステップと、RVDT1の出力特性を検出するステップと、RVDT1の出力特性に基づいて、ロータコア30の位置を初期位置に維持する又は初期位置とは異なる位置にするステップとを有するため、簡単にRVDTの感度を調節することができRVDT1の製造時における感度の調整作業工数を低減することができる。
【0039】
なお、本実施の形態1において、RVDT1を組み立てるときの、RVDT1の感度調整に用いる第1調整座金52a及び第2調整座金52bは、第1厚さT1と、第1厚さT1よりも薄い第2厚さT2と、第1厚さよりも厚い第3厚さT3とを有するものであったが、この3種類に限定されるものではない。第1調整座金52a及び第2調整座金52bは、第1厚さT1、第2厚さT2及び第3厚さT3を含む、任意の異なる厚さを有する任意の種類の座金を適当に組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、本実施の形態1においては、一方の軸受50に対して第1調整座金52aが1個設けられ、他方の軸受50に対して第2調整座金52bが1個設けられていたが、これに限定されるものではない。すなわち、一方又は他方の軸受50に対して、2個以上の座金を用いてもよい。
【0041】
また、本実施の形態1においては、各軸受50に対して第1調整座金52aと第2調整座金52bとを設けていたが、十分な剛性を有するのであれば第1調整座金52aと第2調整座金52bに替えて、セラミックワッシャ等の非金属製部材を用いてもよい。
【0042】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係るRVDTを説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の
図1~
図6の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2に係るRVDTは、実施の形態1に対して、ばね座金により感度を調整するものである。
図7は、実施の形態2のRVDTの正面断面図である。RVDT1aには、回転軸20の延びる方向に沿う方向において、第1ケース端部10aと軸受50との間にばね座金55が配置されている。また、第2ケース端部10b側の、回転軸20の端部には板状の調整用カバー53が配置されている。調整用カバー53は、ねじ54により第2ケース端部10bに固定されている。なお、ばね座金55は弾性部材を構成し、ねじ54は螺合部材を構成している。また、ばね座金55とねじ54とは調整部材を構成している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0043】
次に、RVDT1aを組み立てるときの、RVDT1aの感度を調整する工程について説明する。
図7に示すRVDT1aを組み立てるときには、ケース部材10の内部に、ステータ巻線41が巻回されているステータコア40が設けられる。次に、第1ケース端部10aにばね座金55と軸受50とが挿入される。次に、ケース部材10の内部に、ロータコア30が固定されている回転軸20が挿入される。次に、第2ケース端部10b側に軸受50が挿入される。次に、調整用カバー53がねじ54により第2ケース端部10bに固定される。
【0044】
このとき、回転軸20は調整用カバー53により第1ケース端部10a側に押圧されている。また、回転軸20はばね座金55により軸受50を介して第2ケース端部10b側に付勢されている。すなわち、回転軸20は、調整用カバー53により押圧されている方向とは逆方向に、ばね座金55により付勢されている。そのため、ねじ54の締め込み量が小さい場合には、ばね座金55の付勢力に対して調整用カバー53の押圧力が小さいため、回転軸20は第2ケース端部10b寄りに位置する。一方、ねじ54の締め込み量が大きい場合には、ばね座金55の付勢力に対して調整用カバー53の押圧力が大きいため、回転軸は第1ケース端部10a寄りに位置する。よって、ねじ54の締め込み量を調整することで、ケース部材10内部における回転軸20の位置を調整することができる。そのため、ねじ54の締め込み量を調整することで、回転軸20に固定されたロータコア30と、ステータコア40との相対位置を調整することが可能であり、RVDT1aの製造時に感度を簡単に調節することが可能である。また、ロータコア30とステータコア40との相対位置の調整工程において、止め輪や調整用カバー53を外すことなく調整作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0045】
このように、調整部材は、ケース部材10に設けられ、螺合により回転軸20を軸方向に沿って押圧するねじ54と、回転軸20を前記軸方向に沿って螺合部材54が押圧する方向とは逆方向に付勢するばね座金55とを含むため、ロータコア30とステータコア40との相対位置の微調整を行うことが容易である。
【0046】
なお、本発明の実施の形態1及び実施の形態2では、ロータコア30とステータコア40との相対位置を調整する方法で、RVDT1及びRVDT1aの感度を調整していたが、このような感度の調整方法に加えて従来のロータコア30の外径部を研磨加工する調整方法を併せて用いてもよい。例えば、RVDT1及びRVDT1aの感度調整において、最初の感度調整をロータコア30の外径部を研磨加工する方法により実施し、その後の精密な感度調整を本発明の実施の形態1及び実施の形態2の、ロータコア30とステータコア40との相対位置を調整する方法により実施してもよい。
【0047】
また、本発明の実施の形態1及び実施の形態2の感度調整方法は、例えばコア外径研磨が困難な曲線形状ロータコアを有するVRレゾルバ等の角度センサに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のRVDT1によると、ケース部材10と、ケース部材10に回転自在に設けられた回転軸20と、回転軸20に固定されたロータコア30と、ケース部材10の内部に、ロータコア30に対して径方向外側に設けられたステータコア40と、ステータコア40に巻回されたステータ巻線41と、回転軸20に沿って延びる方向において、ステータコア40に対するロータコア30の相対位置を、ロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が増加する第1の方向又はロータコア30に鎖交するステータ巻線41の磁束が減少する第2の方向に調整する調整部材とを備えるため、簡単にRVDTの感度を調節することができRVDT1の製造作業工数を低減することが可能であるから、高精度の感度調整が要求されるRVDTにおいて使用する用途に適している。
【符号の説明】
【0049】
10 ケース部材
20 回転軸
30 ロータコア
40 ステータコア
41 ステータ巻線
52a 第1調整座金(調整部材)
52b 第2調整座金(調整部材)
54 ねじ(螺合部材)
55 ばね座金(弾性部材)