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特開2024-67067深溝内面への離型剤塗布方法及び離型剤塗布用の複合ノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067067
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】深溝内面への離型剤塗布方法及び離型剤塗布用の複合ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20240510BHJP
   B22C 23/02 20060101ALI20240510BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22C23/02 D
B05B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176868
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和則
【テーマコード(参考)】
4E094
4F033
【Fターム(参考)】
4E094CC56
4F033AA01
4F033BA02
4F033BA03
4F033CA02
4F033DA01
4F033EA01
4F033EA02
4F033LA03
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】金型の表面に形成された深溝の内面に効率よく離型剤を塗布することができる技術を提供する。
【解決手段】金型11の表面に形成された深溝10の内面に離型剤を塗布する方法であって、離型剤を水滴状態で深溝10の内面に噴射する第1工程と、深溝10の内面に向けてエアーを噴射して離型剤を深溝の内面で拡散する第2工程とからなる。離型剤を扇形に噴射する第1ノズル12と、エアーを扇形に噴射する第2ノズル13とが並列に収納された複合ノズルを多関節ロボットに取付け、各ノズルの噴射面を金型表面に形成された深溝に対して傾斜させて移動させながら噴射することが好ましい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型表面に形成された深溝の内面に離型剤を塗布する方法であって、
離型剤を水滴状態で深溝の内面に噴射する第1工程と、深溝の内面に向けてエアーを噴射して離型剤を深溝の内面で拡散する第2工程とからなることを特徴とする深溝内面への離型剤塗布方法。
【請求項2】
第1工程の噴射と、第2工程の噴射とを、パルス状に交互に繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載の深溝内面への離型剤塗布方法。
【請求項3】
離型剤を扇形に噴射する第1ノズルと、エアーを扇形に噴射する第2ノズルとが並列に収納された複合ノズルを多関節ロボットに取付け、各ノズルの噴射面を金型表面に形成された深溝に対して傾斜させた状態で移動させながら、第1ノズルと第2ノズルを交互に作動させることを特徴とする請求項2に記載の深溝内面への離型剤塗布方法。
【請求項4】
ケースの内部に、離型剤を扇形に噴射する第1ノズル及びそのオンオフ機構と、エアーを扇形に噴射する第2ノズル及びそのオンオフ機構とを収納し、これらのノズル間に第1ノズルの先端の付着物を除去するためのエアー通路を形成したことを特徴とする離型剤塗布用の複合ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型等の表面に形成された深溝の内面に、離型剤を塗布する方法及びこれに用いられる複合ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の品質は、金型表面に塗布される離型剤に大きく影響される。離型剤を適正な膜厚で金型表面に塗布しないと、離型時に製品表面が荒れるのみならず、金型の寿命にも悪影響が及ぶこととなる。通常は5μmから50μm程度の膜厚を形成する必要があり、特許文献1に示されるように2流体ノズルを用い、離型剤をエアー圧により金型表面に向けて均一にスプレー塗布することが行われている。
【0003】
離型剤のスプレー塗布はダイカストマシンの金型が開いている間に行なわれるため、生産性の向上のためにはできるだけ短い時間で金型の表面全体に均一に塗布することが求められる。そこで複数のスプレーノズルを両側に備えたスプレーヘッドを多関節ロボットに取付け、金型が開いている間に上方から金型の間に降下させ、固定型と可動型の両方に離型剤を短時間で吹き付けている。
【0004】
金型の表面は製品形状に応じた凹凸面となっているが、平らな部分や凹凸が比較的滑らかな部分には、従来法により離型剤の均一塗布が可能である。しかし近年においては、自動車のボディ構造体をダイカストで一体化するといった製品形状が増加している。これは複数のプレス部品を溶接してボディを構成する代わりに、薄肉で一体化したダイカスト構造体とすることにより、コスト削減と剛性アップを狙うものである。
【0005】
このようなボディ構造体は全体は薄皮で構成されているが、表面に薄いリブが多数形成されている。従って金型表面にはこれらのリブに対応する狭くて深い溝が多数存在することとなる。これらの溝は幅が2~12mm、深さが30~150mm程度のものが多く、このような狭くて深い溝の底面や側面にも離型剤を均一に塗布することが求められている。このような狭くて深い溝を、本明細書では深溝と呼ぶ。
【0006】
前記したように、従来は2流体ノズルから溝の内部に向かって離型剤をスプレーしていた。2流体ノズルでは離型剤はエアー圧により微粒子となって噴霧される。しかし溝の幅が狭くなると溝の入口付近の側面には離型剤の粒子が到達できるが、溝の底面まで到達させることは容易ではなかった。そのため図1に示すように大量の離型剤をスプレーして深溝の底面まで到達させていたのであるが、金型表面に過剰量の離型剤が付着して無駄が生ずるうえ、余分な離型剤は金型の汚れ、離型剤の飛散によるダイカスト設備の汚れ、ダイカスト設備下部への残量の蓄積などを発生して環境汚染につながり、ランニングコストの上昇やカーボンニュートラルの観点からも不都合であった。
【0007】
このような問題を解決するために、特許文献2に示される静電塗装法や、特許文献3に示される反射型塗布法も試みられている。静電塗装法は金型をプラス極とし、ノズル側をマイナス極として塗装を行う方法である。しかし、図2に示すように離型剤の粒子の大部分は深溝の入口付近に付着してしまい、深溝の奥まで到達させることができない。
【0008】
反射型塗布法は図3に示すように溝の内部に反射材を挿入し、離型剤をこの反射材に反射させて深溝の奥まで到達させようとする塗布法である。しかし幅の狭い深溝の中心に反射材を配置することは容易ではなく、実用性に乏しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-047617号公報
【特許文献2】特開2010-221289号公報
【特許文献3】特開2011-121078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、金型の表面に形成された深溝の内面全体に効率よく離型剤を塗布することができる、深溝内面への離型剤塗布方法とこれに用いられる離型剤塗布用の複合ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明の深溝内面への離型剤塗布方法は、金型表面に形成された深溝の内面に離型剤を塗布する方法であって、離型剤を水滴状態で深溝の内面に噴射する第1工程と、深溝の内面に向けてエアーを噴射して離型剤を深溝の内面で拡散する第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0012】
なお、第1工程の噴射と、第2工程の噴射とを、パルス状に交互に繰り返して行うことが好ましい。
【0013】
また、離型剤を扇形に噴射する第1ノズルと、エアーを扇形に噴射する第2ノズルとが並列に収納された複合ノズルを多関節ロボットに取付け、各ノズルの噴射面を金型表面に形成された深溝に対して傾斜させて移動させながら、第1ノズルと第2ノズルを交互に作動させることが好ましい。
【0014】
更に上記の課題を解決するためになされた本発明の離型剤塗布用の複合ノズルは、ケースの内部に、離型剤を扇形に噴射する第1ノズル及びそのオンオフ機構と、エアーを扇形に噴射する第2ノズル及びそのオンオフ機構とを収納し、これらのノズル間に第1ノズルの先端の付着物を除去するためのエアー通路を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の離型剤塗布方法によれば、先ず離型剤を第1ノズルから水滴状態で深溝の内面に噴射する。水滴は噴霧された微粒子よりも粒径が大きく、慣性力が大きいので、深溝の内部深くまで到達させることができる。次に第2ノズルから深溝の内面に向けてエアーを噴射すれば、深溝の内部に到達していた離型剤をエアー圧により押し拡げて拡散することができるので、深溝内面に離型剤を効率よく塗布することができる。
【0016】
また、第1工程の噴射と第2工程の噴射とをパルス状に交互に繰り返して行うことにより、離型剤の定着効果を高めることができる。金型の表面温度は200~300℃となることが多いが、従来の噴霧方法では噴霧された離型剤がライデンフロスト現象(液体の沸点よりはるかに高温の金属板などに液体を滴下したときに高温との接触面に自身の蒸発気体の層ができ、液体が浮く現象)により離型剤が金型表面に接触せず、塗布効果が低下する。これに対して本発明の方法によれば、金型の冷却効果も上げながら、離型剤の定着効果も高めることができる。
【0017】
また第1ノズルと第2ノズルを備えた本発明の複合ノズルを用いれば、上記した本発明の離型剤塗布方法を確実に実行することができる。一般的には制御バルブを外部に設置してノズルのオンオフを制御しているが、この場合には途中の配管の長さによって各ノズルの噴射タイミングにずれが生じる。本発明の複合ノズルは各ノズルのオンオフ機構をノズル内部に組み込んだので、自由に細かい制御が可能である。さらに本発明の複合ノズルは、離型剤を扇形に噴射する第1ノズルの先端の付着物をエアー通路を通じて供給されたエアー圧により吹き飛ばすことができるので、離型剤による第1ノズルの詰まりを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術の説明図である。
図2】従来の静電塗装技術の説明図である。
図3】従来の反射材を用いた塗装技術の説明図である。
図4】本発明の説明図である。
図5】実施形態の複合ノズルの断面図である。
図6】離型剤を噴射する状態の断面図である。
図7】離型剤の噴射を停止した状態の断面図である。
図8】エアーを噴射する状態の断面図である。
図9】離型剤を噴射する状態の断面図である。
図10】第1工程と第2工程とを示すタイムチャートである。
図11】複合ノズルの噴射面と深溝との関係を示す斜視図である。
図12】複合ノズルの噴射面と深溝とを一致させた場合の問題点の説明図である。
図13】複合ノズルの噴射面を深溝に対して斜めにした状態の説明図である。
図14】深溝に対する複合ノズルの移動を示す断面図である。
図15】他の複合ノズルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
なお、金型が水平方向に開閉する実際のダイカストマシンにおいては、離型剤は水平方向に噴射されるのであるが、本願の各図面は分かり易いように、下向きに噴射するように図示した。
【0020】
図4は本発明の説明図である。この図において10は金型11の表面に形成された深溝であり、幅が2~12mm、深さが30~150mm程度のスリット状の溝である。実施形態の金型11はダイカストマシンの金型であるが、離型剤の塗布が必要な他の成形機の金型であってもよい。まず離型剤噴射用の第1ノズル12から、離型剤を水滴状態で深溝10に向けて噴射する。この離型剤噴射用の第1ノズル12はエアーを用いない1流体ノズルであり、離型剤を大粒の水滴状態で勢いよく噴射する。水滴状態の離型剤は従来の噴霧された離型剤よりも大粒で慣性が大きいため、狭くて深い深溝10の底部付近まで送り込むことができる。
【0021】
次にエアー噴射用の第2ノズル13により加圧エアーを噴射し、深溝10の内部に到達している離型剤をエアー圧により細かく砕くとともに、底面まで確実に到達させ、深溝10の内側面にも押し広げる。このように本発明では、離型剤を水滴状態で深溝10の内面に噴射する第1工程と、その後に深溝10の内面に向けてエアーを噴射して離型剤を深溝10の内面全体に拡散する第2工程とによって、深溝内面に離型剤を効率よく塗布することができる。
【0022】
上記した本発明の離型剤塗布方法を工業的に実施するための具体的手段を、以下に説明する。図5は実施形態の複合ノズル14の断面図であり、ケース15の内部に、離型剤を扇形に噴射する第1ノズル12及びそのオンオフ機構と、エアーを扇形に噴射する第2ノズル13及びそのオンオフ機構とが並列に収納されている。
【0023】
第1ノズル12は円筒体18の内部先端側にノズルヘッド19を設け、円筒体18の内部後方側に、オンオフ機構を構成する磁性体の駒20を設けたものである。円筒体18は中央部に隔壁21を備えており、その中心に貫通孔22が形成されている。ノズルヘッド19は先細であるが、ノズル先端にはスリット状の開口が形成されており、離型剤を扇形に噴射する構造である。ノズルヘッド19の先端はキャップ23から突出している。駒20は後方のスプリング24により隔壁21に向けて弾発されている。駒20の先端には弾性体25が設けられており、隔壁21の貫通孔22を封鎖している。
【0024】
しかし駒20の後方外周に設けられたコイル26に通電すると、磁力によって磁性体の駒20は図6に示すように後方に引かれ、貫通孔22の封鎖を解除する。これと同時にケース15の後面の離型剤導入口27から圧入された離型剤がノズルヘッド19に流入し、離型剤が扇形に噴射される。なお離型剤は圧送ポンプによって離型剤導入口27に供給されている。上記したように、ノズルのオンオフ機構は、先端に弾性体25を備えた磁性体の駒20と、コイル26とにより構成されている。
【0025】
第2ノズル13も第1ノズル12とほぼ同一の構造であるため、対応部分に同一の符号を付けて説明を省略する。しかしノズルヘッド19のノズル先端の形状が異なり、ケース15の後面のエアー導入口28から供給された圧縮エアーを扇形に噴射する構造となっている。第2ノズル13は深溝10内の離型剤をかなりの勢いで押し込み拡散させる必要があるため、離型剤に比べて多くの流量が必要である。このため第2ノズル13のノズルヘッド19の穴径は大きく、第1ノズル12では穴径が1mm以下であるのに対して、第2ノズル13では2~5mmと大きくなっている。なお、第1ノズル12と第2ノズル13のノズルヘッド19の外周部分間を連通するエアー通路29が形成されているが、その役割については後述する。
【0026】
上記した離型剤塗布用の複合ノズル14は、多関節ロボットのアーム先端に取付けられ、金型が開いたタイミングで予めプログラムにより設定された塗布位置まで移動する。移動中は図5のように駒20の先端の弾性体25が隔壁21の貫通孔22を封鎖しているため、離型剤もエアーも噴射されない。
【0027】
複合ノズル14が塗布位置に到達すると、まず図6のように第1ノズル12のコイル26に通電されて駒20が後退し、貫通孔22の封鎖が解除され、第1ノズル12から離型剤が扇形に噴射される(第1工程)。第1ノズル12は1液型ノズルであって離型剤は霧状ではなく、圧送ポンプの液圧によって粒径の大きい水滴状で噴射される。第1ノズル12からの離型剤の噴射はごく短時間のパルス噴射である。
【0028】
その後、図7のように第1ノズル12のコイル26への通電が停止されると、駒20は後方のスプリング24により隔壁21に向けて弾発されるので、離型剤の噴射は停止する。このとき、ノズルヘッド19の先端に離型剤の付着物30が生ずることがある。従来の2流体混合のスプレーノズルの場合には、エアー圧によって離型剤が勢いよく吹き飛ばされるため、ノズル先端の残留物は比較的少ないのであるが、本発明で用いる1流体ノズルでは付着物30が生じ、成長して第1ノズル12の閉塞を招くおそれがある。
【0029】
次に図8のように第2ノズル13のコイル26に通電され、エアー導入口28から供給された圧縮エアーを扇形に噴射する(第2工程)。このとき、圧縮エアーの一部がエアー通路29を通じて第1ノズル12のノズルヘッド19の外周部に流れ、図8のように離型剤の付着物30を吹き飛ばす。このため第1ノズル12の閉塞は防止される。また圧縮エアーを深溝10の内部に噴射することにより、第1工程において深溝10の内部に到達していた水滴状の離型剤は深溝の内面で拡散される。このようにして、深溝10の内面全体に離型剤を塗布することができる。
【0030】
その後、第2ノズル13からの圧縮エアーの噴射は停止され、図9に示すように第1ノズル12からの離型剤の噴射が行われ、以下同様のサイクルが繰り返される。図10は上記した第1工程と第2工程とを示すタイムチャートである。図10に示すように第1工程の噴射と、第2工程の噴射とはパルス状に交互に繰り返して行われるが、第1工程と第2工程との間に0.1~0.5秒程度の短い時間差を設けることが好ましい。これは第2ノズル13からの圧縮エアーの噴射を少し遅らせることで、エアー噴射による乱流の発生を遅らせ、離型剤の金型への付着性を高めるためである。しかし第2工程の後にはこのような時間差を設ける必要はない。
【0031】
上記したように、この実施形態では離型剤とエアーをともに扇形に噴射するのであるが、図11に示すように各ノズルの噴射面を金型11の表面に形成された深溝10に対して傾斜させた状態で深溝10の長手方向に移動させながら、第1ノズル12と第2ノズル13を交互に作動させることが好ましい。もし噴射面と深溝10の方向を一致させると、図12に示すように噴射された離型剤の横方向への逃げ場がなくなり、エアー噴射が行われた際に金型表面にあふれ出すおそれがある。
【0032】
しかし図11のように噴射面を金型表面に形成された深溝10に対して傾斜させながら移動させれば、図13に示すように離型剤及びエアーの気流がスリット状の深溝10の長手方向に流れながら外に抜けるため、均一な塗布が可能となる。傾斜角度は5°~45°程度が好ましい。
【0033】
図14は深溝10に対する複合ノズル14の動きを示す深溝10の一定部位の断面図である。図示のように複合ノズル14は移動しながら離型剤とエアーを交互にパルス噴射する。複合ノズル14を深溝10の全長にわたり移動させることによって、一部分づつ集中して噴射しながら、深溝10の全体に均等に離型剤を塗布することができる。
【0034】
以上に説明した実施形態では、図5に示した第1ノズル12と第2ノズル13とを並列に配置した複合ノズル14を用いた。しかし図15に示すように、離型剤を噴射する第1ノズル12の両側にエアー噴射用の第2ノズル13を斜めに配置した構造の複合ノズルを用いることも可能である。
【0035】
以上に説明したように、本発明によれば、金型11の表面に形成された深溝10の内面に効率よく離型剤を塗布することが可能となり、これによって離型剤の使用量を節減することができるとともに、製品の肌品質の向上、金型寿命の延長などの多くの効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 深溝
11 金型
12 第1ノズル
13 第2ノズル
14 複合ノズル
15 ケース
18 円筒体
19 ノズルヘッド
20 駒
21 隔壁
22 貫通孔
23 キャップ
24 スプリング
25 弾性体
26 コイル
27 離型剤導入口
28 エアー導入口
29 エアー通路
30 付着物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15