(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067070
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】塗料充填排出システム
(51)【国際特許分類】
B05B 5/16 20060101AFI20240510BHJP
B05B 15/00 20180101ALI20240510BHJP
【FI】
B05B5/16
B05B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176874
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518423191
【氏名又は名称】株式会社ヒューマンサポートテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恭正
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】平松 夏樹
【テーマコード(参考)】
4D073
4F034
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA01
4D073CA30
4D073CB03
4F034AA03
4F034BA22
4F034BB04
4F034BB25
4F034BB28
(57)【要約】
【課題】塗料カートリッジに対する塗料の充填完了を正確に検知することができる塗料充填排出システムを提供すること。
【解決手段】この塗料充填排出システム50は、塗料充填排出装置51と、撮像装置71と、充填完了判定装置82とを備える。塗料充填排出装置51は、塗料カートリッジ10における塗料バッグ31内に塗料W1を充填し、押出液充填空間16に塗料押出液W2を供給して残留塗料を排出させる。撮像装置71は、塗料充填時にカートリッジ本体11を介して塗料バッグ31を塗料カートリッジ10の外側から撮像する。充填完了判定装置82は、撮像装置71が撮像した画像を画像処理して塗料バッグ表面31aの特徴を抽出し、その特徴抽出結果に基づいて、塗料W1の充填が完了したか否かを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ本体の内部に塗料バッグを収容した構造の塗料カートリッジにおける前記塗料バッグ内に塗料を充填するとともに、前記カートリッジ本体と前記塗料バッグとの間の押出液充填空間に塗料押出液を供給して前記塗料バッグ内に残留した前記塗料を排出させる塗料充填排出装置と、
塗料充填時に前記カートリッジ本体を介して前記塗料バッグを前記塗料カートリッジの外側から撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像を画像処理して前記塗料バッグ表面の特徴を抽出し、その特徴抽出結果に基づいて前記塗料の充填が完了したか否かを判定する充填完了判定装置と
を備えた塗料充填排出システム。
【請求項2】
前記充填完了判定装置が塗料充填完了と判断したときに、前記塗料バッグへの前記塗料の供給を直ちに停止させるように前記塗料充填排出装置を制御する制御装置を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の塗料充填排出システム。
【請求項3】
前記塗料カートリッジには、前記塗料カートリッジごとの識別情報を含む識別子が付されており、
前記識別子は、識別子読取装置を兼ねる前記撮像装置により読み取られ、
前記制御装置は、前記撮像装置の読み取り結果に基づいて前記塗料カートリッジを識別する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗料充填排出システム。
【請求項4】
前記制御装置は、記憶装置に異常発生時の前記塗料バッグの画像を保存することを特徴とする請求項2に記載の塗料充填排出システム。
【請求項5】
前記カートリッジ本体は、透明な非可撓性材料を用いて形成され、
前記塗料バッグは、可撓性材料を用いて形成され、
前記塗料押出液は、透明な液体である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗料充填排出システム。
【請求項6】
前記塗料バッグは、2枚のラミネートフィルムを貼り合わせて袋状に形成したラミネートパックであり、
前記カートリッジ本体は、円筒状に形成されるとともに、パック開口部を下方に向けた状態で前記ラミネートパックを収容し、
前記撮像装置は、前記カートリッジ本体の外周面から径方向に離間した位置に配置され、その位置から前記ラミネートパックを撮像する
ことを特徴とする請求項5に記載の塗料充填排出システム。
【請求項7】
前記充填完了判定装置は、前記撮像装置が撮像した前記塗料バッグ表面の画像を格子状に分割することで区画された複数の領域につき、画像処理を行って前記複数の領域ごとに特徴量を抽出し、その抽出された特徴量に基づいて、前記塗料の充填が完了したか否かの判定のための推論を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗料充填排出システム。
【請求項8】
前記カートリッジ本体は、透明な非可撓性材料を用いて形成され、
前記塗料バッグは、可撓性材料を用いて形成され、
前記塗料押出液は、透明な液体である
ことを特徴とする請求項7に記載の塗料充填排出システム。
【請求項9】
前記塗料バッグは、2枚のラミネートフィルムを貼り合わせて袋状に形成したラミネートパックであり、
前記カートリッジ本体は、円筒状に形成されるとともに、パック開口部を下方に向けた状態で前記ラミネートパックを収容し、
前記撮像装置は、前記カートリッジ本体の外周面から径方向に離間した位置に配置され、その位置から前記ラミネートパックを撮像する
ことを特徴とする請求項8に記載の塗料充填排出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カートリッジへの塗料の充填及び排出を行うための塗料充填排出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カートリッジ本体の内部に塗料バッグを収容した構造の塗料カートリッジがよく知られている。この塗料カートリッジは、塗装時には塗装機に装着され、塗装終了後には塗料充填排出装置に装着される。塗料充填排出装置では、塗料バッグ内に塗料を前回使用後の不足分だけ補充する。これに伴い、カートリッジ本体と塗料バッグとの間の押出液充填空間から塗料押出液が排出される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
ここで特許文献1には、塗料押出液の供給排出経路上に流量計を設け、その流量計によって塗料押出液の排出流量を監視することにより、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術においては、塗料バッグが満タンとなり、押出液充填空間内の塗料押出液がなくなった際の流量低下を検出しているため、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了の検知が遅れることがあった。それゆえ、塗料供給をストップさせるタイミングが遅くなり、満タンから流量低下までの時間(0.2~0.3秒)にかかる塗料供給圧力が塗料バッグの負担となって塗料バッグの劣化が進む結果、塗料バッグが破損しやすくなるという問題があった。また、この場合には塗料が塗料押出液に混入するため、メンテナンスの負担が増大する等といった問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了を正確に検知することができる塗料充填排出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、カートリッジ本体の内部に塗料バッグを収容した構造の塗料カートリッジにおける前記塗料バッグ内に塗料を充填するとともに、前記カートリッジ本体と前記塗料バッグとの間の押出液充填空間に塗料押出液を供給して前記塗料バッグ内に残留した前記塗料を排出させる塗料充填排出装置と、塗料充填時に前記カートリッジ本体を介して前記塗料バッグを前記塗料カートリッジの外側から撮像する撮像装置と、前記撮像装置が撮像した画像を画像処理して前記塗料バッグ表面の特徴を抽出し、その特徴抽出結果に基づいて前記塗料の充填が完了したか否かを判定する充填完了判定装置とを備えた塗料充填排出システムをその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によると、充填完了判定装置が、撮像装置が撮像した塗料充填時の画像を画像処理して塗料バッグ表面の特徴を抽出し、その特徴抽出結果に基づいて塗料の充填が完了したか否かを算出する。これにより、過充填となって塗料バッグに塗料圧力がかかる前のタイミングで、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了を正確に検知することができる。よって、塗料充填完了を検知した時点で、塗料バッグへの塗料の供給を直ちに停止させれば、塗料バッグにかかる塗料圧力を低減することができる。このため、塗料バッグの劣化や破損を防ぐことができ、ひいては、塗料バッグの長寿命化を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記充填完了判定装置が塗料充填完了と判断したときに、前記塗料バッグへの前記塗料の供給を直ちに停止させるように前記塗料充填排出装置を制御する制御装置を、さらに備えたことをその要旨とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明によると、制御装置によって、過充填となる前に塗料供給を停止させるように塗料充填排出装置を制御することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記塗料カートリッジには、前記塗料カートリッジごとの識別情報を含む識別子が付されており、前記識別子は、識別子読取装置を兼ねる前記撮像装置により読み取られ、前記制御装置は、前記撮像装置の読み取り結果に基づいて前記塗料カートリッジを識別することをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項3に記載の発明によると、塗料バッグを撮像する撮像装置を用いて識別子を撮像することにより、識別子専用の読取装置を省略することができ、塗料充填排出システムの簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
ここで、識別子としては、文字、数字、記号、絵等を用いることができる。なお、識別子として、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)等の二次元コードやバーコード等の一次元コードを用いてもよい。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記制御装置は、記憶装置に異常発生時の前記塗料バッグの画像を保存することをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項4に記載の発明によると、異常発生時の塗料バッグの画像を後から確認することができるため、異常発生時の状況の把握や異常発生の原因の解析が容易になる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれ1項において、前記カートリッジ本体は、透明な非可撓性材料を用いて形成され、前記塗料バッグは、可撓性材料を用いて形成され、前記塗料押出液は、透明な液体であることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項5に記載の発明によると、カートリッジ本体が透明な材料を用いて形成され、カートリッジ本体の内部に供給される塗料押出液が透明な液体であるため、カートリッジ本体の内部に収容される塗料バッグを、塗料カートリッジの外側にある撮像装置を用いて確実に撮像することができる。なお、塗料バッグが透明な塗料バッグである場合、塗料バッグ内への塗料の充填が完了したか否かの判定を、直接目視することにより行うことができる。また、塗料バッグ内への塗料の充填が完了したか否かの判定を、反射型光センサを使用し、発光部が発光して塗料バッグで反射した光を受光部が受光できたか否かを検知することにより行うこともできる。一方、塗料バッグが不透明な塗料バッグである場合、塗料バッグ表面の特徴を、塗料バッグ内の塗料の影響を受けることなく抽出できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記塗料バッグは、2枚のラミネートフィルムを貼り合わせて袋状に形成したラミネートパックであり、前記カートリッジ本体は、円筒状に形成されるとともに、パック開口部を下方に向けた状態で前記ラミネートパックを収容し、前記撮像装置は、前記カートリッジ本体の外周面から径方向に離間した位置に配置され、その位置から前記ラミネートパックを撮像することをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項6に記載の発明によると、撮像装置が、円筒状のカートリッジ本体内に収容されたラミネートパックを、カートリッジ本体の外周面から径方向に離間した位置から撮像する。これにより、ラミネートフィルムの表面の広い面積を撮像できるため、塗料バッグ表面の特徴を抽出しやすくなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記充填完了判定装置は、前記撮像装置が撮像した前記塗料バッグ表面の画像を格子状に分割することで区画された複数の領域につき、画像処理を行って前記複数の領域ごとに特徴量を抽出し、その抽出された特徴量に基づいて、前記塗料の充填が完了したか否かの判定のための推論を実行することをその要旨とする。
【0021】
従って、請求項7に記載の発明によると、塗料バッグ表面の画像を格子状に分割することで区画された複数の領域につき、画像処理を行って複数の領域ごとに特徴量を抽出し、その抽出された特徴量に基づいて、塗料の充填が完了したか否かの判定のための推論を実行する。この制御により、塗料の充填が完了したか否かの判定を常時最適に行うことが可能となるため、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了をより正確に検知することができる。
【0022】
ここで、特徴量としては、LBP(Local Binary Pattern)特徴量、GIST(Generalized Search Tree)特徴量、HLAC(Higher-order Local AutoCorrelation)特徴量などを挙げることができる。特には、演算コストが低く、画像の濃淡値の変動に強いLBP特徴量を用いることが好ましい。
【0023】
また、推論を実行するモデルとしては、決定木、ニューラルネットワーク、近傍法などを挙げることができる。特には、次元が多くても対応可能なニューラルネットワークを用いることが好ましい。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記カートリッジ本体は、透明な非可撓性材料を用いて形成され、前記塗料バッグは、可撓性材料を用いて形成され、前記塗料押出液は、透明な液体であることをその要旨とする。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記塗料バッグは、2枚のラミネートフィルムを貼り合わせて袋状に形成したラミネートパックであり、前記カートリッジ本体は、円筒状に形成されるとともに、パック開口部を下方に向けた状態で前記ラミネートパックを収容し、前記撮像装置は、前記カートリッジ本体の外周面から径方向に離間した位置に配置され、その位置から前記ラミネートパックを撮像することをその要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、塗料カートリッジに対する塗料の充填完了を正確に検知することができる塗料充填排出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態における塗装機を示す概略断面図。
【
図2】(a)は塗料カートリッジを示す側面図、(b)は識別子が付されたシールを示す正面図。
【
図5】パラメータRが1、2、4、8、16、32であるときの画像を示す写真。
【
図6】LBP値から得られたヒストグラムを示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
まず、
図1に示される塗装機1の構成について説明する。塗装機1は、塗装用ロボットのアーム(図示略)の先端に装着されている。塗装機1を構成する塗装機本体2の正面には、回転霧化頭3が回転可能に取り付けられている。なお、この回転霧化頭3には、図示しない高電圧発生器から高電圧が印加されるようになっている。即ち、本実施形態の塗装機1は、塗料W1を負に帯電し、被塗装物である自動車ボディをアースした状態で、塗装を行う静電塗装機である。
【0030】
また、塗装機本体2の背面に設けられた装着部には、塗料カートリッジ10が着脱可能に取り付けられている。この塗料カートリッジ10が備えるカートリッジ本体11は、本体部12及びベース部13から構成されている。本体部12は、膨張したラミネートパック31を押さえるために、変形しない非可撓性材料である透明な樹脂材料を用いて円筒状に形成されている。本体部12は、上端部にて開口するとともに、開口部分が蓋部14によって塞がれている。また、ベース部13は、塗装機本体2の装着部に接続可能になっている。
【0031】
図1に示されるように、カートリッジ本体11の内部には、ラミネートパック31(塗料バッグ)が収容されている。詳述すると、カートリッジ本体11は、パック開口部32を下方に向けた状態でラミネートパック31を収容している。ラミネートパック31は、塗料W1が充填された際に膨張させるために、変形可能な可撓性材料である透明な樹脂材料を用いて形成されている。また、ラミネートパック31は、2枚のラミネートフィルム33を重ねた状態でそれらの端縁を貼り合わせることにより袋状に形成されている。さらに、ラミネートパック31は、カートリッジ本体11の内部領域を、塗料W1が充填される塗料充填空間15と、塗料W1を塗料充填空間15から押し出すための塗料押出液W2が給排される押出液充填空間16とに区画している。ラミネートパック31は、塗料W1と塗料押出液W2との接触を防止する機能を有している。なお、押出液充填空間16は、カートリッジ本体11とラミネートパック31との間に生じる空間である。また、本実施形態で用いられる塗料W1は、導電性を有する不透明な静電塗装用水性塗料であり、本実施形態で用いられる塗料押出液W2は、ソルベントEDなどの透明な液体である。
【0032】
なお、ラミネートパック31は、塗料排出時において押出液充填空間16内に塗料押出液W2が充填された際に萎縮する。これに伴い、ラミネートパック31内(塗料充填空間15内)の塗料W1は、カートリッジ本体11の外部領域に押し出される。一方、ラミネートパック31は、塗料充填空間15内に塗料W1が充填された際(塗料充填時)に膨張する。これに伴い、縮小された押出液充填空間16内の塗料押出液W2は、カートリッジ本体11の外部領域に押し出される。
【0033】
図1に示されるように、カートリッジ本体11内には、塗料充填空間15(ラミネートパック31内)とカートリッジ本体11の外部領域との間を連通しうる塗料経路17が設けられている。塗料経路17の先端はラミネートパック31内にて開口し、塗料経路17の基端部は、ベース部13内に設けられた塗料ストップ弁18に連結されている。また、カートリッジ本体11内には、押出液充填空間16とカートリッジ本体11の外部領域との間を連通しうる塗料押出液経路19,20が設けられている。塗料押出液経路19,20の先端は押出液充填空間16内にて開口し、塗料押出液経路19,20の基端部は、ベース部13内に設けられた塗料押出液ストップ弁21,22にそれぞれ連結されている。
【0034】
図1に示されるように、塗料経路17は、塗料ストップ弁18を介して塗装機本体2内の塗料排出配管4に連通している。塗料排出配管4は、塗料充填空間15から押し出された塗料W1を回転霧化頭3に供給する通路である。また、塗料押出液経路19は、塗料押出液ストップ弁21を介して塗装機本体2内の塗料押出液通路(図示略)に連通している。塗料押出液通路は、塗装用ロボットのアームに沿って延びる配管を介してカートリッジ本体11の押出液充填空間16内に塗料押出液W2を給排する通路である。
【0035】
また、
図2(a),(b)に示されるように、塗料カートリッジ10には、同塗料カートリッジ10ごとの識別情報(塗色など)を含む識別子41が付されている。具体的に言うと、識別子41は、カートリッジ本体11のベース部13の外周面13aに貼付されたシール40(
図2(a),(b)参照)に付されている。なお、本実施形態の識別子41は、シール40に記載された色の種類の示す数字42と、同じくシール40に記載されたバーコード43(一次元コード)とからなっている。例えば、白色の塗料W1が充填された塗料カートリッジ10には、黒色の数字42である「02」と黒色のバーコード43とが付された白色のシール40が貼付されている。なお、充填する塗色ごとに、使用する塗料カートリッジ10が割り付けられている。
【0036】
なお、塗料カートリッジ10には、
図3に示される塗料充填排出システム50に取り付けられた状態で塗料W1が充填されるようになっている。塗料充填排出システム50は、塗料充填排出装置51、塗料押出液送り配管52、塗料押出液戻り配管53及びカメラ71(撮像装置)などを備えている。塗料充填排出装置51は、塗料カートリッジ10におけるラミネートパック31内に塗料W1を充填するとともに、押出液充填空間16に塗料押出液W2を供給してラミネートパック31内に残留した塗料W1を排出させる機能を有している。
【0037】
また、塗料充填排出装置51にはカートリッジ取付部54が設けられ、カートリッジ取付部54の上面には塗料カートリッジ10が着脱可能に取り付けられている。なお、塗料カートリッジ10の取付時においては、塗料押出液ストップ弁21,22が開状態となるため、押出液充填空間16内に対する塗料押出液W2の充填及び排出が可能となる。
【0038】
図3に示されるように、カートリッジ取付部54の下面には、複数のカラーバルブ56を有する塗料マニホールド55が取り付けられている。なお、本実施形態のカラーバルブ56は、電磁弁から供給されるパイロットエアにて作動するエア駆動弁である。また、塗料マニホールド55内には、カラーバルブ56を開状態に切り替えた際に、塗料タンク(図示略)内に溜められた塗料W1をラミネートパック31内(塗料充填空間15内)に導く塗料充填経路57が設けられている。なお、塗料充填経路57には、エア源(図示略)からエアが供給されるとともに、シンナー貯留タンク(図示略)からシンナーが供給されるようになっている。
【0039】
また、カートリッジ取付部54の側面には、ダンプバルブ58及び絞りバルブ59が取り付けられている。ダンプバルブ58及び絞りバルブ59は、開状態に切り替えられた際に、塗料充填経路57内のエア及び塗料や、塗料カートリッジ10内(塗料充填空間15内)のエア及び塗料を排出するようになっている。そして、カートリッジ取付部54内には、塗料充填経路57内のエア及び塗料や、塗料充填空間15内のエア及び塗料をバルブ58,59を介して外部に排出する排出経路60が設けられている。さらに、塗料ストップ弁18と塗料充填経路57と排出経路60との接続部分には、塗料ストップ弁18を開状態または閉状態に切り替えるトリガバルブ61が設けられている。なお、本実施形態のダンプバルブ58、絞りバルブ59及びトリガバルブ61は、電磁弁から供給されるパイロットエアにて作動するエア駆動弁である。また、トリガバルブ61は、ニードルで塗料ストップ弁18を押し上げることにより、塗料ストップ弁18を開状態に切り替えるニードルバルブである。
【0040】
図3に示されるように、塗料押出液送り配管52上には、塗料押出液送り配管52を開状態または閉状態に切り替える押出液供給バルブ62が設けられている。押出液供給バルブ62は、開状態に切り替えられた際に、塗料押出液送り配管52を介して押出液充填空間16に塗料押出液W2を充填可能とするようになっている。なお、本実施形態の押出液供給バルブ62は、電磁弁から供給されるパイロットエアにて作動するエア駆動弁である。
【0041】
また、塗料押出液戻り配管53上には、塗料押出液戻り配管53を開状態または閉状態に切り替える押出液排出バルブ63が設けられている。押出液排出バルブ63は、開状態に切り替えられた際に、押出液充填空間16内の塗料押出液W2を排出可能とするようになっている。なお、本実施形態の押出液排出バルブ63は、電磁弁から供給されるパイロットエアにて作動するエア駆動弁である。
【0042】
また、
図3に示される塗料充填排出装置51は、塗料押出液送り配管52、塗料押出液戻り配管53及び塗料押出液配管64を介して塗料押出液タンク65に接続されている。塗料押出液送り配管52及び塗料押出液配管64は、塗料押出液タンク65に溜められた塗料押出液W2を押出液充填空間16に供給する経路である。また、塗料押出液戻り配管53及び塗料押出液配管64は、押出液充填空間16から排出される塗料押出液W2を塗料押出液タンク65に戻す経路である。
【0043】
そして、塗料押出液配管64上には、流量計66及び切替バルブ67が設置されている。また、切替バルブ67と塗料押出液タンク65とを接続する配管68上には、濁り検知タンク69が設置されている。流量計66は、押出液充填空間16内からの塗料押出液W2の回収時の流量を計測するとともに、押出液充填空間16内への塗料押出液W2の充填時の流量を計測する。なお、本実施形態の流量計66は、塗料押出液配管64に連通するハウジング内にギヤを収容してなり、塗料押出液W2の通過に伴って回転するギヤの回転数を数えることにより、塗料押出液W2の流量を計測するギヤ式流量計である。
【0044】
図3に示されるように、切替バルブ67は、塗料押出液W2が塗料押出液タンク65に戻る際に切り替えられることにより、塗料押出液W2を濁り検知タンク69に導くようになっている。また、濁り検知タンク69は、同濁り検知タンク69内に溜められた塗料押出液W2の濁り具合を検知する濁り検知センサ(図示略)を備えている。濁り検知センサは、発光素子(光源)及び受光素子(光検出器)からなっている。発光素子及び受光素子は、濁り検知タンク69を挟んで対向配置されている。発光素子は、発光信号に基づいて発光するようになっている。受光素子は、濁り検知タンク69を通過した発光素子からの光を受光するようになっている。
【0045】
なお、濁り検知センサは、受光素子が発光素子からの光の受光量を光学的に検知することにより、塗料押出液W2の濁りを検出するようになっている。具体的に言うと、塗料押出液W2に濁りがある場合、受光素子は発光素子からの光の受光量が減少する。この場合、濁り検知センサは濁り検知信号を出力する。一方、塗料押出液W2に濁りがない場合、受光素子は発光素子からの光を確実に受光できるようになる。
【0046】
図3に示されるように、カメラ71は、塗料カートリッジ10が塗料充填排出装置51のカートリッジ取付部54に取り付けられた際に、カートリッジ本体11の外周面11aから径方向に離間した位置に配置され、その位置からラミネートパック31を撮像する。カメラ71は、塗料充填時に、カートリッジ本体11を介してラミネートパック31を塗料カートリッジ10の外側から撮像する機能を有している。また、カメラ71は、塗料カートリッジ10に付された識別子41(
図2(b)参照)を読み取る機能も有している。即ち、カメラ71は、バーコードリーダ(識別子読取装置)を兼ねている。
【0047】
次に、塗料充填排出システム50の電気的構成について説明する。
【0048】
図3に示されるように、塗料充填排出システム50はコントローラ81を備えており、コントローラ81は、CPU82、ROM83、RAM84、入出力回路等により構成されている。CPU82には、キーボード85及びディスプレイ86が接続されている。また、CPU82には、カラーバルブ56、ダンプバルブ58、絞りバルブ59、トリガバルブ61、押出液供給バルブ62、押出液排出バルブ63、流量計66、切替バルブ67、濁り検知センサ及びカメラ71が接続されている。さらに、ROM83には、塗料充填排出システム50を制御するためのプログラム(塗装プログラムなど)が記憶されている。なお、塗装プログラムは、被塗装物の種類(例えば、自動車ボディ、自動車部品等)や被塗装物の部位(例えば、ボンネット、ドア等)ごとに異なる塗装用ロボットの駆動態様を示している。
【0049】
次に、塗料充填排出システム50を用いた塗料W1の充填方法を説明する。
【0050】
まず、塗料カートリッジ10を塗料充填排出装置51のカートリッジ取付部54に取り付ける(
図3参照)。次に、CPU82は、カメラ71の読み取り結果に基づいて塗料カートリッジ10を識別する制御を行う。即ち、CPU82は、『制御装置』としての機能を有している。詳述すると、CPU82は、カメラ71に駆動信号を出力し、塗料カートリッジ10に付された識別子41をカメラ71に読み取らせる制御を行う。具体的には、識別子41の像をカメラ71によって撮影する。次に、カメラ71の撮影データをCPU82に取り込んで画像認識処理を行い、その認識した画像に基づいて、数字42及びバーコード43の種類を検出する。そして、CPU82は、カメラ71により読み取った識別子41を判別し、カートリッジ取付部54に適切な塗料カートリッジ10が装着されているか否かを判定する制御を行う。
【0051】
カートリッジ取付部54に適切な塗料カートリッジ10が装着されていると判定された場合、CPU82は、ダンプバルブ58及びカラーバルブ56に駆動信号を出力し、ダンプバルブ58及びカラーバルブ56を開状態に切り替える制御を行う。その結果、塗料充填経路57及び排出経路60内のエアが、カラーバルブ56から供給される塗料によってダンプバルブ58から塗料充填排出装置51外に排出される。
【0052】
次に、CPU82は、カラーバルブ56及びトリガバルブ61に駆動信号を出力し、カラーバルブ56及びトリガバルブ61を開状態に切り替える制御を行う。これに伴い、トリガバルブ61によって塗料ストップ弁18が開状態に切り替わり、塗料充填経路57と塗料経路17とが連通する。その結果、カラーバルブ56から供給される塗料W1が、塗料充填経路57、トリガバルブ61、塗料ストップ弁18及び塗料経路17を順番に通過し、ラミネートパック31内に充填される。このとき、CPU82が備えるタイマは、ラミネートパック31内への塗料W1の充填時間を計測し、計測した充填時間をRAM84に記憶する。
【0053】
また、CPU82は、カラーバルブ56及びトリガバルブ61に駆動信号を出力するのとほぼ同時に、押出液供給バルブ62及び押出液排出バルブ63に駆動信号を出力し、押出液供給バルブ62及び押出液排出バルブ63を開状態に切り替える。さらに、CPU82は、切替バルブ67に駆動信号を出力し、切替バルブ67を配管68を有する経路側に切り替える。その結果、押出液充填空間16内の塗料押出液W2は、塗料充填空間15内に塗料W1が充填されてラミネートパック31が膨張するのに伴い、押出液充填空間16から押し出される。そして、塗料押出液W2は、塗料押出液経路20、塗料押出液ストップ弁22、塗料押出液戻り配管53、押出液排出バルブ63及び塗料押出液配管64→流量計66→切替バルブ67→配管68→濁り検知タンク69を順番に通過し、塗料押出液タンク65に流れ込む。
【0054】
また、CPU82は、塗料充填時にカメラ71に駆動信号を出力し、カートリッジ本体11内のラミネートパック31をカメラ71に撮像させる制御を行う。次に、CPU82は、カメラ71が撮像したラミネートパック表面31a(塗料バッグ表面)の画像91(
図4参照)を画像処理してラミネートパック表面31aの特徴(例えば、皺の形、数、大きさ、長さ、密度等)を抽出する。つまり、CPU82は、ラミネートパック表面31aの張り具合を抽出する。そして、CPU82は、特徴の抽出結果に基づいて、塗料W1の充填が完了したか否か(ラミネートパック31が満タンか否か)を判定する。即ち、CPU82は、『充填完了判定装置』としての機能を有している。
【0055】
具体的に言うと、CPU82は、画像91を格子状に分割することで区画された複数の領域A1につき、画像処理を行って各領域A1ごとに特徴量(本実施形態では、LBP(Local Binary Pattern)特徴量)を抽出する。具体的に言うと、まず、CPU82は、1つの画像91をm個(本実施形態では、18個(=縦6個×横3個)の領域A1に分割する。次に、CPU82は、領域A1の各画素を中心とした円の半径をパラメータR(R1,R2,…,Rn)とし、上記の円を構成する点の個数をパラメータP(P1,P2,…,Pn)とした状態で、領域A1ごとのLBP値を算出する。なお、半径を小さくした場合(パラメータRを1(R1)に近付けた場合)には、細かい特徴が得られるため、細かい皺の抽出に適している。一方、半径を大きくした場合(パラメータRをn(Rn)に近付けた場合)には、大まかな特徴が得られるため、大きい皺の抽出に適している。そして、
図5には、パラメータRを1(R1)、2(R2)、4(R3)、8(R4)、16(R5)、32(R6)としたときの画像91が示されている。そして、CPU82は、算出されたLBP値をヒストグラム化し、得られたヒストグラム92(
図6参照)をLBP特徴量とする。さらに、これらのヒストグラム92を平坦化し、mΣ(Pn+1)次元のベクトルを得る。
【0056】
次に、CPU82は、抽出されたLBP特徴量に基づいて、塗料W1の充填が完了したか否かの判定のための推論を実行する。まず、CPU82は学習済モデルを構築する。なお、学習済モデルは、ラミネートパック31への塗料W1の充填が完了したか否かの判定に用いられる。詳述すると、学習済モデルは、
図7に示されるニューラルネットワーク101の入力層102に対して入力情報(mΣ(Pn+1)次元のベクトル)を蓄積し、ニューラルネットワーク101の出力層104から出力情報(塗料W1の充填が完了したか否かの情報)を出力するように、コンピュータを機能させるためのものである。なお、ニューラルネットワーク101は、人間の脳神経系のニューロンをシナプスで結合して形成されたネットワークをモデル化したものである。本実施形態のニューラルネットワーク101は、入力情報(mΣ(Pn+1)次元のベクトル)と同数のノードを備えた1つの入力層102と、入力層102のノードと同数のノードを備えた1つの中間層103と、2つのノード105,106を備えた1つの出力層104を有する多層パーセプトロンである。なお、ノード105は、塗料充填完了(filled)の情報を有しており、ノード106は、塗装充填未完了(unfilled)の情報を有している。
【0057】
なお、
図3に示されるCPU82は、構築された学習済モデルをRAM84に記憶する。そして、CPU82は、RAM84に記憶されている学習済モデル(ニューラルネットワーク101)を用いて、塗料W1の充填が完了したか否かの判定を行う。以上のようにすれば、様々なテクスチャ(画像91)に基づいて判定を行うことができる。
【0058】
また、CPU82は、流量計66が計測した押出液充填空間16内からの塗料押出液W2の回収時の流量(即ち、塗料W1の充填時の流量)に基づいて、塗料W1の充填が完了したか否かの判定を行う。具体的に言うと、まず、流量計66は、塗料押出液W2の回収時の流量を計測し、CPU82に対して回収流量計測信号を出力する。そして、CPU82は、回収流量計測信号が示す塗料押出液W2の流量(即ち、塗料W1の流量)を所定時間ごと(本実施形態では、0.1秒ごと)にサンプリングし、設定時間経過後、平均流量を算出する。その後、CPU82は、ラミネートパック31への塗料W1の充填中に計測される塗料押出液W2の流量が、算出された平均流量のX%(本実施形態では、80%)以上であるか否かを判定する(減衰比検知)。また、CPU82は、塗料押出液W2の流量が、予め設定した流量値以上であるか否かを判定する(絶対値検知)。さらに、CPU82は、タイマによって計測された塗料W1の充填時間が、ラミネートパック31が満タンになる時間(本実施形態では60秒)に到達したか否かを判定する。
【0059】
そして、CPU82は、塗料充填完了と判断したとき、即ち、ニューラルネットワーク101によって塗料充填完了の情報が得られたときに、ラミネートパック31への塗料W1の供給を直ちに停止させるように塗料充填排出装置51を制御する。また、CPU82は、塗料充填完了の情報が得られない場合でも、塗料押出液W2の流量が、平均流量のX%以上ではない、または、予め設定した流量値以上ではないと判定されるか、塗料W1の充填時間が満タンになる時間に到達したと判定されれば、塗料W1の供給を停止させる制御を行う。具体的に言うと、CPU82は、カラーバルブ56及びトリガバルブ61に駆動信号を出力し、カラーバルブ56及びトリガバルブ61を閉状態に切り替える制御を行う。これに伴い、トリガバルブ61によって塗料ストップ弁18が閉状態に切り替わり、塗料充填経路57と塗料経路17との連通が遮断される。また、カラーバルブ56からの塗料W1の供給が終了する。
【0060】
さらに、CPU82は、ダンプバルブ58及び絞りバルブ59に駆動信号を出力し、ダンプバルブ58及び絞りバルブ59を開状態に切り替える制御を行う。その結果、塗料充填経路57及び排出経路60内の塗料が、ダンプバルブ58及び絞りバルブ59を介して塗料充填排出装置51外に排出され、カラーバルブ56内の残圧が排出される。次に、CPU82は、トリガバルブ61に駆動信号を出力し、トリガバルブ61を開状態に切り替える制御を行う。これに伴い、トリガバルブ61によって塗料ストップ弁18が開状態に切り替わり、排出経路60と塗料経路17とが連通する。その結果、カートリッジ本体11のラミネートパック31内の塗料が、塗料経路17、塗料ストップ弁18、トリガバルブ61及び排出経路60を順番に通過した後、ダンプバルブ58及び絞りバルブ59を介して塗料充填排出装置51外に排出され、ラミネートパック31内の残圧が排出される。
【0061】
また、CPU82は、濁り検知センサからの濁り検知信号が入力された場合、即ち、塗料押出液W2の濁りを検出した場合に、濁り検出時(異常発生時)のラミネートパック31の画像91をRAM84に保存(記憶)する。即ち、RAM84は、『記憶装置』としての機能を有している。
【0062】
なお、ラミネートパック31内への塗料W1の充填が完了すると、塗料カートリッジ10を、塗料充填排出装置51のカートリッジ取付部54から取り外して塗装機1の塗装機本体2に装着する(
図1参照)。この状態において、塗料カートリッジ10の押出液充填空間16内には、別の駆動源によって塗料押出液W2が供給される。それに伴い、ラミネートパック31が萎縮するため、ラミネートパック31内の塗料W1は、塗料排出配管4を通過して回転霧化頭3より吐出され、塗装が実施される。
【0063】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態の塗料充填排出システム50によれば、CPU82が、カメラ71が撮像した塗料充填時の画像91を画像処理してラミネートパック表面31aの特徴を抽出し、その特徴抽出結果に基づいて塗料W1の充填が完了したか否かを算出する。これにより、過充填となってラミネートパック31に塗料圧力がかかる前のタイミングで、塗料カートリッジ10に対する塗料W1の充填完了を正確に検知することができる。よって、塗料充填完了を検知した時点で、ラミネートパック31への塗料W1の供給を直ちに停止させることにより、ラミネートパック31にかかる塗料圧力を低減することができる。このため、ラミネートパック31の劣化や破損を防ぐことができ、ひいては、ラミネートパック31の長寿命化を図ることができる。
【0065】
(2)本実施形態のラミネートパック31では、2枚のラミネートフィルム33を貼り合わせることにより形成されている。そして、貼り合わせ部分にあるパック開口部32を下方に向けた状態でラミネートパック31をカートリッジ本体11内に収容すると、皺が生じる領域が、カートリッジ本体11の外周面11a側を向いたラミネートフィルム33の表面(ラミネートパック表面31a)に位置するようになる。よって、カメラ71が、カートリッジ本体11の外周面11aから径方向に離間した位置からラミネートパック31を撮像すれば、ラミネートフィルム33の表面の広い面積を撮像することができ、ラミネートパック表面31aの特徴(皺の量)を抽出しやすくなる。
【0066】
(3)本実施形態では、ラミネートパック31を撮像するカメラ71を用いて識別子41を撮像するため、従来使用していた識別子41専用の読取装置であるバーコードリーダを省略することができる。よって、塗料充填排出システム50の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【0067】
(4)本実施形態では、識別子41がカートリッジ本体11の外周面11a(具体的には、ベース部13の外周面13a)に付されているため、塗料充填排出装置51のカートリッジ取付部54に塗料カートリッジ10を装着した際に、識別子41が外周面11aに露出するようになる。よって、カートリッジ本体11の外周面11aから径方向に離間した位置に配置したカメラ71を用いれば、カメラ71の位置や角度を変更しなくても、識別子41を確実に読み取ることができる。
【0068】
(5)本実施形態では、ニューラルネットワーク101によって塗料W1の充填完了(満タン)を検知するのに加えて、流量計66によっても塗料W1の充填完了を検知している。即ち、本実施形態では、2つの方法を用いて検知処理が行われるため、塗料W1の充填完了を確実に検知することができる。また、ニューラルネットワーク101及び流量計66のいずれか一方に異常が生じたとしても、もう一方によって塗料W1の充填完了を検知することができる。
【0069】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0070】
・上記実施形態のCPU82は、RAM84に記憶されている学習済モデル(ニューラルネットワーク101)を用いて、塗料W1の充填が完了したか否かの判定を行うとともに、流量計66が計測した塗料押出液W2の回収時の流量に基づいて、塗料W1の充填が完了したか否かの判定を行っていた。しかし、CPU82は、塗料W1の充填が完了したか否かの判定を、ニューラルネットワーク101のみを用いて行ってもよい。このようにすれば、流量計66を省略することができる。また、画像検知のみで流量計66を廃止した場合には、万が一ラミネートパック31が破裂して塗料押出液配管64に塗料W1が混入したとしても、復旧までの時間を大幅に低減することができる。
【0071】
・上記実施形態のCPU82は、1つの画像91を18個の領域A1に分割していた。しかし、CPUは、1つの画像91を2個以上17個以下の領域に分割してもよいし、19個以上の領域に分割してもよい。
【0072】
・上記実施形態のCPU82は、画像91を矩形状の領域A1に分割していたが、三角形状、六角形状等の他の形状をなす領域に分割してもよい。
【0073】
・上記実施形態の識別子41は、数字42とバーコード43(一次元コード)とからなっていたが、識別子41は適宜変更することができる。例えば、識別子41は、文字、記号、絵等の他のものであってもよいし、QRコード等の二次元コードであってもよい。
【0074】
・上記実施形態の識別子41は、カートリッジ本体11のベース部13の外周面13aに貼付されたシール40に付されていたが、識別子41の位置は適宜変更可能である。具体的に言うと、識別子41は、塗料カートリッジ10の外側面上の所定位置、例えば、蓋部14の上面や本体部12の外周面などに付されていてもよい。
【0075】
・上記実施形態のカメラ71は、ラミネートパック31を撮像するとともに、塗料カートリッジ10に付された識別子41を読み取るためのものであった。しかし、カメラ71は、ラミネートパック31を撮像する機能のみを有していてもよい。そして、カメラ71とは別に設けたバーコードリーダ(識別子読取装置)を用いて、識別子41を読み取るようにしてもよい。
【0076】
・上記実施形態の塗料充填排出システム50は、自動車ボディを塗装するために用いられるものであったが、バンパーなどの自動車部品やそれ以外の部品を塗装するために用いられるものであってもよい。
【0077】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0078】
(1)請求項7において、前記特徴量は、LBP(Local Binary Pattern)特徴量であることを特徴とする塗料充填排出システム。
【0079】
(2)請求項5において、前記塗料バッグは、透明な可撓性材料を用いて形成されることを特徴とする塗料充填排出システム。
【符号の説明】
【0080】
10…塗料カートリッジ
11…カートリッジ本体
11a…カートリッジ本体の外周面
16…押出液充填空間
31…塗料バッグとしてのラミネートパック
31a…塗料バッグ表面としてのラミネートパック表面
32…パック開口部
33…ラミネートフィルム
41…識別子
50…塗料充填排出システム
51…塗料充填排出装置
71…撮像装置としてのカメラ
82…充填完了判定装置及び制御装置としてのCPU
84…記憶装置としてのRAM
91…画像
A1…領域
W1…塗料
W2…塗料押出液