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特開2024-67080廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067080
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラント
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20240510BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240510BHJP
   C10L 5/46 20060101ALI20240510BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
B09B3/40
C10L5/46
C10L5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176892
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
4D004
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA19
4D004CA24
4D004CA40
4D004CA42
4H015AA01
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA04
4H015BA08
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB04
4H015BB05
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】廃棄物を多くの需要が期待でき利用しやすいものに再資源化すること。
【解決手段】廃棄物処理方法は、廃棄物1を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物20とする発酵乾燥工程(ステップS10)と、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22、即ち、発酵乾燥物20の一部である発酵乾燥軽量物22を加熱し熱分解油220を生成する熱分解工程(ステップS130)とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とする発酵乾燥工程と、
前記発酵乾燥物を加熱し熱分解油を生成する熱分解工程と
を具備することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記熱分解工程で、前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料(RDF)の原料とすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
更に、前記熱分解工程の前に、前記発酵乾燥物の脱塩を行う脱塩工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とする発酵乾燥処理部と、
前記発酵乾燥物を加熱し熱分解油を生成する熱分解装置と
を具備することを特徴とする廃棄物処理プラント。
【請求項5】
前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料(RDF)の原料とすることを特徴とする請求項4に記載の廃棄物処理プラント。
【請求項6】
更に、前記前記発酵乾燥物の熱分解の前に前記発酵乾燥物の脱塩を行う脱塩手段を具備することを特徴とする請求項4に記載の廃棄物処理プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、レストラン、料亭、ホテル、スーパーマーケット等で発生する生ごみ、紙、プラスチック等が混在した廃棄物を再資源化するために好気性発酵乾燥処理する廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントに関するもので、特に、熱分解油(生成油)等の再資源化物を提供できる廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭や、レストラン、料亭、ホテル、スーパーマーケット等の飲食物提供を行なう産業や、学校や、その他の事業所から排出される、生野菜、果実、肉類等の生ごみ類、紙類、布類、小型プラスチック等を含む一般ごみ、生活ごみ等の可燃ごみ(燃やせるごみ)の多くは、自治体により指定された方法で数種類に分別収集され、焼却処分場において焼却処分されている。
しかし、近年では、環境負荷の観点から生ごみ等の有機性廃棄物を含む一般廃棄物を資源として再利用することにより少しでも焼却量を減少させる努力がなされ、焼却処理からサーマルリサイクル、ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクル等への試みが積極的に行われている。例えば、特許文献1や特許文献2に示すように、生ごみ等の有機性廃棄物を好気的な環境下で発酵乾燥させて、有機肥料の原料や、固形燃料(Refuse Derived Fuel:RDF)の原料として再資源化する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6567741号公報
【特許文献2】特開2015ー020110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、こうした生ごみ等を含む可燃ごみである一般廃棄物を好気発酵乾燥させ、その発酵乾燥物を固形燃料化して製造する固形燃料(RDF)においては、食品ラップのような高塩素濃度含有プラスチックや生ごみ由来の塩等の無機塩化物により塩素濃度が高くなり、その利用先は、高塩素対応型の燃焼ボイラー設置者や固形燃料RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)のような大量の低塩素固形燃料で希釈できる大規模な製紙会社工場、セメント工場等に限定されている。
【0005】
したがって、固形燃料であるRDFの消費、需要先が限定されていることで、固形燃料製造場の近隣に固形燃料の需要先(高塩素対応型の燃焼ボイラー設置者、大規模な製紙会社工場、セメント工場等)がない場合には、遠くの需要先まで輸送しなければならず、そこまでの輸送に費用が生じることになる。しかも、固形燃料であるRDFは固形状であるため、嵩張り、保管にも場所をとる。よって、輸送や保管に多くのコストが掛かり、トータル的なエネルギ消費も考えると利用価値が低減する可能性があり、廃棄物プラントの普及の足枷となる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、廃棄物を多くの需要が期待でき利用しやすいものに再資源化する廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の廃棄物処理方法は、発酵乾燥工程にて廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とし、熱分解工程にて前記発酵乾燥物を加熱し熱分解油を生成するものである。
【0008】
上記発酵乾燥工程は、例えば、外部からの空気の導入及び外部への空気の排出を可能とし負圧に制御して臭気の漏れを防止した気密構造のハウジング内において、廃棄物を好気発酵し、その発酵熱で水分除去して乾燥させるものである。好ましくは、廃棄物に空気を供給する送風によって廃棄物の好気発酵及び乾燥の進行を促進する。また、発酵中に廃棄物に散水することで均一な好気発酵を促進する。更に、好ましくは、発酵乾燥物の一部を発酵補助剤として廃棄物と混合し、より好ましくは、脱塩処理した発酵補助材を廃棄物と混合し、廃棄物を効率的に好気発酵及び乾燥させる。
【0009】
上記熱分解工程は、廃棄物を好気発酵し乾燥させてなる発酵乾燥物を加熱して発酵乾燥物中の炭化水素分を熱分解し、気化された油成分(熱分解ガス)を冷却して凝縮することで、即ち、発酵乾燥物中の炭化水素分を油化することで、熱分解油(生成油)を得るものである。このときの発酵乾燥物を加熱する温度は、廃棄物の炭化水素分を熱分解できる温度であればよく、好ましくは、300℃を超え、700℃以下、より好ましくは、350℃以上、700℃以下である。また、加熱の手段までは特に問われず、電気ヒータ等による電熱式による加熱であってもよいし、バーナー加熱方式であってもよいし、過熱水蒸気式であってもよいし、高周波誘導加熱方式、電磁誘導方式であってもよい。
【0010】
なお、上記廃棄物とは、家庭や事業所で排出された生ごみや紙屑等の燃やせるごみである家庭系一般廃棄物や、事務系廃棄物や、産業廃棄物としての食品廃棄物、動食物性残渣等の有機性廃棄物であり、主には、生ゴミ等の有機性廃棄物や、紙、繊維、プラスチックを含むものである。
【0011】
請求項2の発明の廃棄物処理方法は、前記熱分解工程で、前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料RDF(Refuse Derived Fuel:RDF)の原料とするものである。
【0012】
請求項3の発明の廃棄物処理方法は、更に、前記熱分解工程の前に、前記発酵乾燥物の脱塩を行う脱塩工程を具備するものである。
上記脱塩工程は、廃棄物由来の塩類を除去するものであり、発酵乾燥物を、例えば、水洗処理する脱塩処理により、廃棄物の生ゴミ(食品残渣)等に含まれる塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)等の無機塩化物の塩類を水に溶解させて除去してもよいし、250℃以上、300℃以下の加熱処理により、廃棄物の食品ラップ、錠剤の包装シート等に含有している塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニル(PVC)等の有機塩素化合物の塩類を熱分解させて除去してもよいし、それら両者を行っても良い。
【0013】
請求項4の発明の廃棄物処理プラントは、廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とする発酵乾燥処理部と、前記発酵乾燥物を加熱し熱分解油を生成する熱分解装置とを具備する。
【0014】
上記発酵乾燥処理部は、廃棄物を好気発酵し、その発酵熱で乾燥させるものであればよく、例えば、ファン(ブロア)等によって外部からの空気の導入及び外部へ空気の排出を可能とし負圧に制御して臭気の漏れを防止した気密構造のハウジングを備えた好気発酵乾燥装置で構成される。好ましくは、廃棄物に空気を供給する送風装置を備え、ハウジングに静置した廃棄物に送風を行い、廃棄物の好気発酵及び乾燥の進行を促進する。また、好ましくは、発酵中に廃棄物に散水する散水手段を備えることで廃棄物の均一な好気発酵を促進する。更に、好ましくは、発酵乾燥物の一部を発酵補助剤として廃棄物と混合し、より好ましくは、脱塩処理した発酵補助材を廃棄物と混合し、廃棄物を効率的に好気発酵及び乾燥させる。
【0015】
上記熱分解装置は、通常、加熱手段を備えた熱分解槽(反応釜)と、熱分解槽で生成された熱分解ガスを冷却し液化する冷却器とを有し、廃棄物を好気発酵し乾燥させてなる発酵乾燥物を熱分解槽に投入してそこで加熱して発酵乾燥物中の炭化水素分を熱分解し、気化された油成分(熱分解油)を冷却器にて冷却して凝縮することで熱分解油(生成油)を得るものである。このときの発酵乾燥物を加熱する温度は、廃棄物の炭化水素分を熱分解できる温度であればよく、好ましくは、300℃を超え、700℃以下、より好ましくは、350℃以上、700℃以下である。また、加熱の手段までは特に問われず、電気ヒータ等による電熱式による加熱であってもよいし、バーナー加熱方式であってもよいし、過熱水蒸気式であってもよいし、高周波誘導加熱方式であってもよい。
【0016】
請求項5の発明の廃棄物処理プラントは、前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料RDF(Refuse Derived Fuel:RDF)の原料とするものである。
【0017】
請求項6の発明の廃棄物処理プラントは、更に、前記熱分解の前に前記発酵乾燥物の脱塩を行う脱塩手段を具備するものである。
上記脱塩手段は、廃棄物由来の塩類を除去するものであり、発酵乾燥物を、例えば、水洗処理する脱塩処理により、廃棄物中の生ゴミ(食品残渣)等に含まれる塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)等の無機塩化物の塩類を水に溶解させて除去してもよいし、250℃以上、300℃以下の加熱処理により、廃棄物中の食品ラップ、錠剤の包装シート等に含有している塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニル(PVC)等の有機塩素化合物の塩類を熱分解させて除去してもよいし、それら両者を行っても良い。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る廃棄物処理方法によれば、発酵乾燥工程において廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とし、熱分解工程において前記発酵乾燥物を所定温度で加熱して熱分解油を生成する。こうして生成された熱分解油は、重質油、軽質油を含み、燃料として利用しやすいものであるから多くの需要が期待される。即ち、発酵乾燥物の炭化水素分の油化により生成される熱分解油は、密度が0.7~0.9と重軽油相当であり、発酵乾燥物から製造する固形燃料RDFの密度よりも高密度で、液体であるから、燃焼制御も容易で、かつ、貯蔵スペースも取り難く保管のコストもかかりにくい。
こうして、請求項1の発明に係る廃棄物処理方法においては、廃棄物を、多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油に再資源化するものである。
【0019】
請求項2の発明に係る廃棄物処理方法によれば、前記熱分解工程で、前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料(RDF)の原料とするから、請求項1に記載の効果に加えて、廃棄物の再資源化物を多様化し、多用途に展開できるものとする。
【0020】
請求項3の発明に係る廃棄物処理方法によれば、更に、前記熱分解工程の前に、脱塩工程にて前記発酵乾燥物の脱塩を行うから、脱塩処理された発酵乾燥物から生成される熱分解油の残留塩素が低減される。よって、請求項1に記載の効果に加えて、熱分解油(生成油)を高質化できる。
【0021】
請求項4の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、発酵乾燥処理部により廃棄物を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物とし、熱分解装置により前記発酵乾燥物を所定温度で加熱して熱分解油を生成する。こうして生成された熱分解油は、重質油、軽質油を含み、燃料として利用しやすいものだから多くの需要が期待される。即ち、発酵乾燥物の炭化水素分の油化により生成される熱分解油は、密度が0.7~0.9と重軽油相当であり、発酵乾燥物から製造する固形燃料RDFの密度よりも高密度で、液体であるから、燃焼制御も容易で、かつ、貯蔵スペースも取り難く保管のコストもかかりにくい。
こうして、請求項4の廃棄物処理プラントにおいては、廃棄物を、多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油に再資源化するものである。
【0022】
請求項5の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、前記発酵乾燥物から前記熱分解油が分離した残渣は固形燃料(RDF)の原料とするから、請求項4に記載の効果に加えて、廃棄物の再資源化物を多様化し、多用途に展開できるものとする。
【0023】
請求項6の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、更に、前記熱分解の前に、脱塩手段により前記発酵乾燥物の脱塩を行うから、脱塩処理された発酵乾燥物から生成される熱分解油の残留塩素が低減される。よって、請求項4に記載の効果に加えて、熱分解油(生成油)を高質化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物プラントにおける廃棄物処理工程のフローチャートである。
図2図2は本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物プラントにおける発酵乾燥物の選別処理及び脱塩処理の概念図である。
図3図3は本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物プラントにおける熱分解装置の一例を示す概念図である。
図4図3は本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物プラントにおける熱分解装置の他の例を示す概念図である。
図5図5は本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物プラントにおける熱分解装置の更に別の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0026】
[実施の形態]
まず、本発明の実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントにおける廃棄物処理の全体の概略流れを、図1及び図2を参照して説明する。本実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントは、一般家庭等から廃棄された生ごみ、紙、布、プラスチック等の廃棄物1を熱分解油(生成油)220や廃棄物固形燃料(Refuse Derived Fuel:RDF)211等に再資源化(リサイクル)するための廃棄物再資源化(廃棄物リサイクル)に適用されるものである。
【0027】
家庭内または事業所で生ごみ、紙屑、庭木の剪定屑、プラスチック等の燃やせるごみ(可燃ごみ)として排出され、塵収集車で収集、搬送されてきた家庭系または事業系一般廃棄物や、産業廃棄物として搬送されてきた食品廃棄物や動植物性残渣等の有機性廃棄物等の廃棄物1は、廃棄物処理プラントの建屋内に入ると、まず、破砕工程(ステップS1)において、廃棄物1の生ごみ、紙、プラスチック類等を収容していた塵袋が破砕機によって破られる。また、粗破砕や押し潰し等によって廃棄物1が破砕、減容化される。
破砕、減容化された廃棄物1は、続く混合工程(ステップS2)において、廃棄物1の堆積物内に通気の空隙を多く形成して嵩増しをするための嵩密度調節材2及び好気性微生物が付着した発酵補助材3と混合され、嵩密度が所定の範囲内となるように調節されて、発酵資材10を形成する。
【0028】
廃棄物1に混合する嵩密度調節材2としては、廃棄物1の堆積物を嵩増しして、堆積物内に通気の空隙を形成できる所定寸法の有機材料であればよく、好ましくは、吸水性、吸湿性があり微生物を担持できる有機材料、例えば、木材チップ等の木質資材や、固形燃料211のRDF(Refuse Derived Fuel)や、固形燃料のRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)等が使用できる。
【0029】
木材チップ等の木質資材や固形燃料原料は低コストであり、好気性微生物を担持しやすいことで繰り返しの再使用で廃棄物1の効率の良い好気発酵及び乾燥処理を促進できる。よって、低コストで廃棄物1の好気発酵の促進を可能とする。特に、後述するように、発酵資材10を発酵乾燥させてなる発酵乾燥物20から選別された木質資材24は、生ゴミ等の分解物の含有量が多いことで好気性微生物の好気性発酵による発熱(発酵熱)が期待でき、発酵資材10の好気発酵、乾燥の進行の高い促進効果を期待できる。
【0030】
また、発酵補助材3は、廃棄物1の好気発酵乾燥の処理効率を高めるものであり、好気発酵済みの発酵乾燥物20であれば好気性微生物が多く付着していることから好適である。特に、本実施の形態において、発酵補助材3は、廃棄物1を含んだ発酵資材10を発酵乾燥させてなる発酵乾燥物20から選別され、脱塩されたものが使用される。即ち、発酵乾燥物20の粒度・重量選別によって発酵乾燥物20から固形燃料原料210等となるものとは別に分離選別された発酵乾燥細粒物23を脱塩処理したものを発酵補助材3として発酵資材10の好気発酵処理に戻して使用する。
【0031】
次に、こうして廃棄物1に嵩密度調節材2及び発酵補助材3が混合されて所定の嵩密度に調節された発酵資材10は、建屋内に全体あるいは一部が格納された発酵乾燥処理部としての好気発酵乾燥装置のコンクリート製のハウジング内に積み込まれ、そこで、発酵乾燥工程(ステップS10)として所定の日数、好気発酵され、また、乾燥される。
【0032】
このとき、本実施の形態の発酵乾燥処理部としての好気発酵乾燥装置では、ハウジング内に静置した発酵資材10に散水(噴霧)を行っている。そして、本実施の形態では、ハウジング内に排出された廃水、即ち、廃棄物1を含んだ発酵資材10から染み出た廃水、散水の余剰水等を回収し、フィルタで濾過し、その濾過した水をハウジング内の発酵資材10への散水(噴霧)に再び使用している。また、前述した廃棄物1の破砕や、嵩密度調節材2及び発酵補助材3との混合工程等を含め、廃棄物1から建屋内に排出された廃水についてもそれを回収し、フィルタで濾過し、その濾過した水をハウジング内の発酵資材10への散水(噴霧)に使用している。
【0033】
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、廃棄物1に含まれていた水分、また、廃棄物1を好気発酵させるハウジング内に噴霧された水も含め、ハウジング内に排出された廃水は、ハウジングの底部に形成した排水溝から回収され、また、建屋内に排出された廃水についても、建屋内の底部に形成した排水溝から回収され、貯水タンクやフィルタを介して、廃棄物1を含んだ発酵資材10への散水として利用されることで、廃水を外部に排出しない構造である。
【0034】
こうして、本実施の形態の好気発酵乾燥装置においては、ハウジング内で廃棄物1から染み出した廃水及び散水の余剰水である廃水を回収し、外部に排出することなくフィルタで異物を除去したのち廃棄物1を含んだ発酵資材10に繰り返し散水として循環させて使用するものであり、ハウジング内で生じた廃水は好気性微生物を含むから、それを水滴として噴霧する水にも、好気性微生物が含まれることで、発酵資材10に対して好気性微生物を均一に分布させて好気性発酵による処理効率を高めることができる。即ち、水滴の噴霧により、水滴に含まれる好気性微生物が発酵資材1全体に浸透し均一化するため、効率のよい好気発酵処理を可能とする。
特に、ハウジング内からの廃水及びハウジング以外の建屋内から生じた廃水をも回収して散水に使用するから、発酵資材10の効率的な好気発酵処理のための好気性微生物に必要な水分を低コストでまかなうことができ、外部への排水量を少なくでき、排水のための浄化設備を小規模にまたは不要化できる。
【0035】
また、本実施の形態の好気発酵乾燥装置のハウジングでは、空気(臭気)の排出と建屋内の新鮮な空気の取り入れとの入れ替えを行うことによって酸素を補充し、更に、ハウジング内を所定の温度及び負の気圧に制御している。加えて、ハウジングの上部から室内空気をファン(ブロア)で吸気し、その空気を圧縮してハウジングの下面から噴出することでハウジング内の空気を循環させる空気循環部を形成し、ハウジング内に積み込まれた発酵資材10に対し通気を行っている。
【0036】
なお、本実施の形態では、好気発酵乾燥装置のハウジングに入力する空気量よりも、ハウジングから排出する空気量を大きく設定し、ハウジング内を負圧に維持することでハウジング室外に臭気が出る可能性を皆無としているが、ハウジングから排出した空気(臭気)は、エアプレナム室を介して生物脱臭装置で脱臭処理してから外部に排気している。
即ち、ハウジングから排出された湿気を多く含む空気(臭気)は、ハウジングからエアプレナム室に送られ、そこで、ハウジング室外の建屋内から取り入れた導入空気と混合された後、建屋の屋外に設置された脱臭設備の生物脱臭装置に送られる。
【0037】
本実施の形態の生物脱臭装置は、好気性微生物が付着した木材チップ等の担体を堆積してなるバイオフィルを備え、エアプレナム室から送られてきた混合空気をバイオフィルタに通すことによって、混合空気に含まれていた臭気成分をバイオフィルタ内の好気性微生物の好気的発酵によって分解脱臭してから、外部、即ち、屋外の大気中へと排気(放出)する。このような好気性微生物の生物的処理による消化によって脱臭を行う生物脱臭装置では、好気発酵乾燥装置から排気された悪臭ガスが、例えばCO2やH2Oのような無害な物質や、SO4 -やNO3 -のような無機イオンに分解されて放出されるが、このとき、後処理が必要な残渣を発生することもなく、また、焼却するものでもないから、CO2やNOXの排出も最小限に抑えられる。
【0038】
なお、本実施の形態の生物脱臭装置では、バイオフィルタに対し散水を行っており、散水の余剰水は回収し、再び散水として再利用している。これにより、臭気を分解、消費する木材チップ等の担体に付着した好気性微生物の活性、生育に必要な水分を均一に付加、補充できるから、安定した脱臭効率が得られる。特に、バイオフィルタを通過して回収された散水の余剰水は好気性微生物を含むから、それを水滴として噴霧する水にも、好気性微生物が含まれることで、バイオフィルタに対して好気性微生物を均一に分布させて好気性発酵による消化効率を高めることができる。即ち、循環水の水滴の噴霧により、水滴に含まれる好気性微生物がバイオフィルタ全体に浸透し均一化するため、効率の良い臭気処理が可能となる。更に、散水の余剰水を回収して再使用するから安定した脱臭効率のための好気性微生物に必要な水分を低コストでまかなうことができ、また、バイオフィルタへの散水の余剰水を外部に排出しないものであるから、排水のための浄化設備を小規模にまたは不要化できる。
【0039】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、常に負圧に保たれる建屋内で廃棄物1の処理が行われ、建屋内に格納された好気発酵乾燥装置において室外よりも高い陰圧に保たれて室外から室内の空気流を遮断し臭気漏れを防止しているハウジング内で発酵資材10の好気発酵、乾燥が行われている。そして、ハウジング内の空気(臭気)は、エアプレナム室を介して屋外に設置された生物脱臭装置において槽内に充填された木質チップ等の担体からなるバイオフィルタを通ることで脱臭処理され、大気中へ排気される。したがって、悪臭の排出、制御不能な臭い漏れのないものである。
【0040】
因みに、好気発酵乾燥装置(静置型)における微生物による発酵過程では、まず、初期の数日間には、廃棄物1中の易分解性の有機物質、例えば、たんぱく質、アミノ酸、糖質等をバクテリア、糸状菌等が積極的に分解し、廃棄物1、延いてはハウジング内の温度を上昇させる。易分解性の物質が消費され温度が高温になると、高温性好気性の放線菌等が有機物の分解に携わるようになり、ヘミセルロースやセルロースの分解が始まり、温度は最高60℃~80℃になる。この高温環境によって雑菌類が死滅することで処理物の衛生化が図れる。通常55℃以上、3日間、好ましくは、65℃以上、48時間以上で病原菌等が殺菌される。続いて30℃~50℃の中温域を維持し、有機物の分解を更に促進させる。その後、ハウジング室外から取り入れるハウジング内に取り入れる空気量を増やして、冷却及び乾燥を促進させる。
【0041】
こうして、発酵乾燥工程(ステップS10)では、好気性微生物による廃棄物1の分解、好気発酵が進み、また、発酵熱、通気による乾燥が進む。即ち、この発酵乾燥工程(ステップS10)では、バクテリア、糸状菌等の好気性微生物によって、酸素及び廃棄物1の有機物が消費されて二酸化炭素及びエネルギ(熱)が生産され、ここで発生した熱は、廃棄物1を含んだ発酵資材10の温度を上昇させ、発酵資材10を乾燥させる。なお、通常組成(有機ごみ20%、全体水分量60%)の廃棄物1は発酵乾燥による分解、水分の除去で概ね半分量に減容する。
【0042】
そして、好気発酵乾燥装置で好気発酵、乾燥を終えた発酵乾燥物20、即ち、好気性微生物により好気発酵され、その発酵熱及び通気(送風)によって乾燥された発酵乾燥物20は、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、ホイールローダー等が中継し、続く選別工程(ステップS20)で、寸法(粒度)や重力(比重)等の基準で、嵩密度調節材2として使用した木質資材24が主に含まれる所定のオーバーサイズの発酵乾燥重量物21と、油化の対象とする所定のオーバーサイズの発酵乾燥軽量物22と、主に発酵補助材3として使用される所定のアンダーサイズの発酵乾燥細粒物23とに選別される。
【0043】
具体的には、本実施の形態では、最初に粒度及び重量選別機で所定の空気流による浮力及び所定サイズのメッシュの篩で重量(比重)及び粒度(粒子の大きさ)で発酵乾燥物20の選別を行う。なお、粒度及び重量選別機においては、例えば、トロンメルスクリーン、スタースクリーン、振動篩等のスクリーンSによる粒度選別及び風力選別(重量選別)を組合せることにより行われる。このとき粒度及び重量選別機に導入した空気流は、サイクロンCに導き、渦流で塵芥を下に落として除去し、サイクロンCの上部から塵芥を除去した空気を排出している。サイクロンCの出力側にもファンで吸引するのが効果的である。
【0044】
この選別機では、発酵乾燥物20を、嵩密度調節材2として再使用される大きな木材チップ(木辺)等の木質資材24を主に含む所定のオーバーサイズ(所定の目開きの篩を通過しなかったサイズ)及び所定重量以上の発酵乾燥重量物21と、主に、紙、プラスチック、生ごみ等の分解物等が含まれる所定のオーバーサイズ(所定の目開きの篩を通過しないサイズ)で所定の重量未満の発酵乾燥軽量物22と、主に生ごみ等の分解物等が含まれる所定のアンダーサイズ(所定の目開きの篩を通過したサイズ)の発酵乾燥細粒物23とに選別する。
【0045】
粒度及び重量選別機で選別された所定のオーバーサイズで所定重量以上の発酵乾燥重量物21は、嵩密度調節材2として使用される大きな木材チップ(木辺)等の木質資材24を主に含むものであり、磁気選別機Mによる磁気選別(ステップS21)等によって鉄等の金属類310が選別除去され、更に、手選別(人為選別)(ステップS22)等で、瓶、ガラス、陶器、石等の不燃物320が選別除去され、金属類310及び不燃物320が除去された残りが、次回の好気発酵させる未処理の廃棄物1に対して嵩密度調節材2として使用される木質資材24として回収され、発酵乾燥処理する廃棄物1の嵩密度調節材2として再使用される。なお、こうした磁気選別、手選別といった選別工程で除去された鉄等の金属類310や、瓶、ガラス、陶器等の不燃物320は、リサイクルまたは廃棄処分される。なお、熱分解工程(ステップS130)の前に近赤外線等の光学選別によって塩化ビニル330を選別してもよい。これにより生成する後述の熱分解油220や固形燃料RDF220の塩素濃度より低エネルギ消費量で低減でき、より高質な熱分解油220や固形燃料RDF220の生成を可能とする。
【0046】
また、粒度及び重量選別機で選別した所定のアンダーサイズの発酵乾燥細粒物23は、主に生ごみ等の分解物を含むものであることから廃棄物1を好気発酵させる種菌(好気性微生物)も存在し、廃棄物1の好気発酵乾燥を効率的に促進できる発酵補助材3に好適に使用されるものとして回収される。
【0047】
特に、本実施の形態においては、粒度及び重量選別機で選別で選別した所定のアンダーサイズの発酵乾燥細粒物23は、脱塩工程(ステップS30)で脱塩処理してから、次サイクルの未処理の廃棄物1に混合させる発酵補助材3として使用される。
発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥細粒物23の水洗処理を行うことで発酵乾燥細粒物23に含まれる水溶性の塩化物を水に溶解させることにより除去でき、発酵乾燥細粒物23の塩分濃度を大きく低減できる。そして、発酵乾燥細粒物23の水洗処理を行い発酵乾燥細粒物23の塩分濃度を低減することにより、発酵乾燥工程(ステップS10)において発酵乾燥細粒物23を未処理の発酵資材10の発酵乾燥処理に戻して発酵補助材3として繰り返し使用する場合でも、発酵資材10が発酵乾燥されてなる発酵乾燥物20に塩分濃縮、塩分の蓄積が生じることなく、発酵乾燥物20の塩分濃度を低濃度に維持でき、また、安定した発酵乾燥効率を維持できる。これより、発酵乾燥物20から選別され油化の対象となる発酵乾燥軽量物22においても、塩分濃度が低く抑えられることになる。よって、リサイクル原料210の加熱により生成する熱分解油(生成油)220中の残留塩素(塩素留分)も極めて少なく、高品質な生成油220や固形燃料(RDF)211の供給を可能とする。
【0048】
即ち、「廃棄物1の塩素濃度/(1ー減量率)」<「発酵補助材3の塩素濃度」(減量率:{発酵資材10の重量-発酵乾燥物20の重量}/発酵資材10の重量)である場合には、発酵乾燥工程(ステップS10)において発酵補助材3を加えた発酵資材10の発酵乾燥処理で発酵乾燥物20に塩分濃縮、蓄積が生じることになるから、つまり、発酵乾燥物20の一部である発酵乾燥細粒物23を発酵補助材3として発酵資材10に混合するものとして戻して(循環させて)繰り返し使用する場合に発酵補助材3の塩分濃度が廃棄物1の塩分濃度よりも高いと、発酵資材10の塩分濃度を次第に上昇させることになるから、高塩分による発酵阻害が生じ、バッチ式の廃棄物1の好気発酵処理において、安定した発酵乾燥効率が持続できなくなる恐れがある。
そこで、本実施の形態では、発酵乾燥細粒物23を水洗処理による脱塩処理してから、廃棄物1に混合させる発酵補助材3として使用することで、「廃棄物1の塩素濃度/(1ー減量率)」≧「発酵補助材3の塩素濃度」の状態の維持が可能となり、脱塩した発酵乾燥細粒物23を発酵補助材3として加えた発酵資材10の発酵乾燥処理で、発酵資材10を発酵乾燥させてなる発酵乾燥物20に塩分濃縮、蓄積が生じることなく、バッチ式の廃棄物1の好気発酵処理において、安定した発酵乾燥効率を維持できることになる。
【0049】
特に、本実施の形態では、上述したように、発酵資材10に散水する水は、廃棄物1に含まれていた廃水と共に回収されてフィルタによる異物除去後に、タンクに溜め、それを散水に再使用して循環させているものであり、その塩分濃度は発酵資材10の塩分濃度と平衡状態にあるから、また、堆積する発酵資材10の内部に散水の水が浸透し難いことで、発酵資材10への散水で、発酵資材10の塩分濃度が散水に溶出し難く、無機塩化物の塩分を十分に除去することは困難である。このため、脱塩処理を行うことなく発酵乾燥細粒物23を発酵補助材3として使用すると、その発酵補助材3及び廃棄物1を含んだ発酵資材10を発酵乾燥させた発酵乾燥物20は、廃棄物1よりも塩分濃度が高いものとなり、廃棄物1よりも塩分濃度が高い発酵乾燥物20の一部を発酵補助材3として繰り返し使用する場合には、前回処理した発酵資材10よりも新規に処理する発酵資材10の方が塩分濃度が高くなることになり、発酵資材10に塩分が濃縮、蓄積し、次第に塩分濃度が上昇することなる。そして、塩分濃度が高くなると発酵阻害が生じることになる。
【0050】
しかしながら、発酵乾燥細粒物23を水洗処理による脱塩処理してから、廃棄物1に混合させる発酵補助材3として使用すると、脱塩処理によって、発酵補助材3として使用する発酵乾燥細粒物23の塩分濃度が低減される。特に、廃棄物1や発酵乾燥物20よりも発酵乾燥細粒物23の方が量的にも少ないものであり、少ない水の使用量で、発酵乾燥細粒物23から無機塩化物を除去できる。即ち、発酵乾燥物20から選別し、廃棄物1を好気発酵させる際の発酵補助材3に使用する発酵乾燥細粒物23に対し、水洗処理の脱塩処理を行うものでは、加熱を要しない少ない消費エネルギ量で、かつ、少ない水の使用量で、s原料210の塩素濃度を効果的に低減できる。よって、低コストで効果的に塩分濃度を低減できる。
こうして、廃棄物1よりも塩分濃度の低い発酵乾燥細粒物23を廃棄物1に混合して廃棄物1を発酵乾燥させることで、発酵資材10に塩類が濃縮、蓄積していく事態が防止され、発酵乾燥物20の塩分濃度を低減できることにもなる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥細粒物23に対し脱塩を行う水洗処理は、コンベア上等の所定の場所に発酵乾燥細粒物23を載せ、その上から水を散布、噴霧する散水処理により行われる。このときの散水処理に使用される水は、上述したハウジング内や建屋内で廃水(汚水)として排出され、回収された廃水とは別途でそれよりも塩分濃度が低い水である。また、本実施の形態では、発酵乾燥細粒物23の散水で使用した水は回収し、溶解された無機塩化物を除去したのち、再び発酵乾燥細粒物23の散水として循環させて繰り返し使用している。
即ち、本実施の形態では、発酵乾燥細粒物23に対して散水した水(余剰水)は回収され、発酵乾燥細粒物23の散水に使用され回収された水には廃棄物1由来の無機塩化物が溶解していることから、その溶解している無機塩化物を除去する。そして、無機塩化物を除去した水は、フィルタで異物を除去した後、脱塩工程(ステップS30)で発酵乾燥細粒物23の脱塩処理のために発酵乾燥細粒物23に散水する水として再使用する。即ち、発酵乾燥細粒物23に対して散水した水は無機塩化物を除去したのち、循環させて繰り返し散水に使用される。しかし、本発明を実施する場合には、無機塩化物を除去した水は、散水として再使用、循環させることなく、下水処理して放水(外部に排水)してもよい。この場合には、発酵乾燥細粒物23の脱塩のための散水に使用する水は、バイオフィルタの散水を回収して浄化した水や外部からの新鮮な水(用水)が取り込まれて、それが使用される。
【0052】
また、本実施の形態において、粒度及び重量選別機で選別した所定のオーバーサイズで所定重量未満の発酵乾燥軽量物22は、主に紙、プラスチック、生ごみ等の分解物等が混在するものであり、磁気選別機Mによる磁気選別(ステップS24)等によって鉄等の金属類310が選別除去されたのち、熱分解工程(ステップS130)で所定温度の加熱を行うことで発酵乾燥軽量物22に含まれている炭化水素分を熱分解し、その熱分解ガスを冷却して熱分解油(生成油)220を生成する。また、炭化水素分が気化した残渣は、固形燃料(RDF)211に使用される固形燃料原料210とする。
【0053】
熱分解工程(ステップS130)において発酵乾燥軽量物22の熱分解(油化)を行う熱分解装置としては、例えば、図3に示すように、連続処理式の熱分解(油化)装置111Aが使用できる。連続処理式の熱分解装置111Aは、発酵乾燥軽量物22を加熱する加熱手段及び加熱しながら発酵乾燥軽量物22を送り出す押出機112を備えた熱分解槽110Aと、熱分解槽110Aでの加熱による発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分の熱分解によって生じた熱分解ガスを冷却し、凝縮する冷却器131と、冷却器131で凝縮されることにより生成した熱分解油(生成油)220を回収する油タンク134とを有する。
【0054】
熱分解槽110Aは、発酵乾燥軽量物22が投入されるホッパー111が接続され、ホッパー111を介して供給された発酵乾燥軽量物22をヒータ等の加熱手段により所定温度で加熱するものである。なお、発酵乾燥軽量物22が投入されるホッパー111には、常時または定期的に振動を与え、ホッパー111の目詰まりを防止するようにしてもよい。また、ホッパー111に投入された発酵乾燥軽量物22には、必要に応じ添加剤(消石灰等)を混合してもよい。
【0055】
熱分解槽110Aの押出機112は、例えば、外周に加熱手段としての電気ヒータ(バンドヒータ等)が配設された加熱筒と、加熱筒の内部で回転するスクリューとで構成されるスクリュー型押出機である。スクリューは、外部に設けられたモータによって一方向に回転駆動される。なお、一軸スクリュー押出機であってもよいし、二軸スクリュー押出機であってもよい。
【0056】
ここで、本実施の形態では、熱分解槽110Aは、発酵乾燥軽量物22を250℃以上、300℃以下の低温で加熱し脱塩する脱塩加熱部110aと、脱塩加熱部110aに接続し脱塩加熱部110aから送られてきた発酵乾燥軽量物22を300℃を超え、700℃以下の高温で加熱する熱分解部110bとから構成されている。
【0057】
したがって、ホッパー111から投入された発酵乾燥軽量物22は、まず、脱塩加熱部110aの加熱筒内で電気ヒータにより250℃以上、300℃以下に加熱されながら押出機112のスクリューによって下流側に送り込まれる。この脱塩加熱部110aでの250℃以上、300℃以下の加熱により、発酵乾燥軽量物22に含まれている食品ランプ等に由来の塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニル(PVC)等の有機塩素化合物が熱分解され、有機塩素化合物中の塩素、水素が脱離される、即ち、脱塩酸化されることで、塩化水素ガスが生じる。つまり、脱塩加熱部110aで発酵乾燥軽量物22を250℃以上、300℃以下で加熱することにより、発酵乾燥軽量物22に含まれている有機塩素化合物の塩分が除去され脱塩される。そして、脱塩加熱部110aでの発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱により生じた塩化水素ガス(蒸気)は、脱塩加熱部110aから排出され、冷却器121(凝縮器,冷却コンデンサ)により冷却されて凝縮されることで塩酸として塩酸タンク124で回収される。なお、冷却器121を通過したガスは、塩化水素ガスを吸収する塩化水素トラップ126で塩化水素ガスを除去したのち、オフガス処理部151で焼却(燃焼)等され、或いは、燃料として使用される。塩酸タンク124で回収された塩酸は、通常、工業用薬剤として利用可能である。
【0058】
更に、脱塩加熱部110aで加熱されながら押出機112のスクリューによって下流側の熱分解部110bに送られた発酵乾燥軽量物22は、熱分解部110bの加熱筒内で電気ヒータにより300℃を超え、700℃以下で加熱されながら押出機112のスクリューによって下流側に送り込まれる。この熱分解部110bでの300℃を超え、700℃以下の加熱により、発酵乾燥軽量物22が熱分解ガスと残渣に分離される。即ち、発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分が熱分解されることにより熱分解ガスが生じ、熱分解部110bから排出されて、発酵乾燥軽量物22の熱分解後の残渣と分離される。
【0059】
発酵乾燥軽量物22の熱分解後の残渣は、固形燃料(RDF)211に利用される固形燃料原料210として残渣タンク144で回収される。なお、発酵乾燥軽量物22中の有機塩素化合物の塩素、水素が脱離した残りは、塩素原子が含まれない有機化合物や炭化物である。
【0060】
一方、熱分解部110bで生成された熱分解ガスは、熱分解部110bから排出され、冷却器(凝縮器,冷却コンデンサ)131により冷却されて凝縮され、油水分離器132で水分と油分に分離されたのち、油分が油タンク134で熱分解油(生成油)220として回収される。
即ち、熱分解部110bで生じた熱分解ガスが供給される冷却器131は、熱分解ガスを冷水または空気で冷却し凝縮させることにより液化する。例えば、冷却器131は熱分解ガスを流通させる胴体及び胴体内に配設される冷却伝熱管を有し、冷却伝熱管の内部に冷却水を流すことで胴体内に流通する熱分解ガスを冷却する。
そして、熱分解ガスの液化により生じた油水分は、冷却器131による熱分解ガスの冷却で生じた液状の油水分を分離する油水分離器132にて油分である熱分解油220と水分とが分離され、即ち、冷却によって得られた低分子量の炭化水素や冷却によって固体となる物質を含む凝縮液、及び冷却伝熱管の外面に沿って流れる液膜の流下液との混合液は油水分離器132に入り混合液の清澄液を熱分解油220として分離され、分離された熱分解油220は油タンク134で回収される。
【0061】
なお、発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱で生じた蒸気を冷却する冷却器121及び発酵乾燥軽量物22の300℃を超え、700℃以下の加熱で生じた熱分解ガスを冷却する冷却器131の下流側には、オフガス処理部151が設けられており、冷却器121や冷却器131で凝縮しきれないオフガス成分は、燃焼して廃棄される。或いは、燃料として使用される。冷却器121,131を通過したオフガス(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の可燃性ガス)は、オフガス処理部151で焼却(燃焼)等され、或いは、燃料として使用される。オフガスについては、トラップ等の配設により逆流を防止する構成としてもよい。また、このとき燃焼のエネルギは、熱分解槽110Aの加熱用バーナー等の助燃用燃料として活用してもよい。
【0062】
こうして、発酵乾燥軽量物22の300℃を超え、700℃以下の加熱により生成した熱分解油220は、各種燃料(例えば、ボイラ、発電機、重機等の燃料)として使用できるものであり、需要家に供給される。特に、熱分解油220であれば、固形燃料RDFと比較して、輸送性、貯蔵性に優れ、更に、燃料として扱いやすいものであり、燃料用油として多用途(例えば、ボイラー、発電機、重機等の機械等の燃料)に使用できる。また、熱分解油220の一部は、熱分解槽110Aにおける加熱手段の燃料として使用することも可能である。
【0063】
即ち、発酵乾燥軽量物22から製造される固体の固形燃料RDFの場合には、嵩高であることで保管スペースにも場所をとるうえ、保管時の湿気や温度によっては再発酵(二次発酵)が進行し臭気やガスを生じる恐れがあることから、安全対策からすれば保管や貯蔵場所、輸送方法にも気を遣う必要があるのに対し、液体の熱分解油220であれば、固形燃料RDFと比較して、省スペースでの保管、輸送ができ、また、湿気や温度を気にせずに低コストでの輸送、保管、貯蔵が可能ある。そして、発酵乾燥軽量物22の熱分解(油化)によって生成された熱分解油220は、密度が約0.7~0.9と重軽油相当であり、発酵乾燥軽量物22から製造される固形燃料(RDF)の密度が約0.3~0.4であるのと比較して、高密度であり、しかも、液体であることで、固形燃料(RDF)よりも燃焼制御が容易であることから、使途が広くて利用しやすく、廃棄プラントの近隣での消費、需要が高く見込める。
よって、近隣に固形燃料RDFの需要家を持たない地域でも、熱分解油220であれば、固形燃料RDFと比較して汎用性が高く、その需要が期待できる。故に、廃棄物プラントの普及にも繋げることができる。
【0064】
このようにして発酵乾燥軽量物22を所定温度で加熱しその有機物中の炭化水素を熱分解して得られた熱分解油220は、芳香族化合物、含酸素化合物、高極性化合物が少量含まれるも低極性の脂肪族性化合物も多く、燃料としての物性は高いものであり、石油由来燃料と混合しても相分離し難く燃料として十分に価値の高いものである。
また、こうした発酵乾燥軽量物22の加熱では、触媒を添加しなくとも、低い温度で熱分解が進行しやすく油成分が揮発することで、エネルギ効率が高いものである。これは、発酵乾燥軽量物22ではラジカルが多く生成しやすいためと推測される。
【0065】
特に、本実施の形態においては、発酵乾燥軽量物22を350℃を超え、700℃以下で加熱して熱分解ガスを生じさせる前に、発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱によって脱塩素を行っているから、即ち、脱塩酸化を行った発酵乾燥軽量物22の炭化水素分を油化しているから、このようにして生成された熱分解油(生成油)220は、塩分の残留が少なく、高カロリーで高質なものとなる。また、有機化合物が脱塩酸化された発酵乾燥軽量物22によれば、水素分が脱離していることにより、300℃を超え、700℃以下の加熱による熱分解において、配管の閉塞やガス化の阻害となるタールの副生を低減することができる。
【0066】
なお、上記実施の形態の説明では、熱分解油220は、軽質油相当(ガソリン相当)、灯油相当、軽油相当、重油相当が混ざった混合油での説明としているが、本発明を実施する場合には、それら混合油の熱分解油(生成油)220を、軽質油、中質油、重質油等に分離する分離装置(蒸留装置)を更に設けてもよく、熱分解油220から分離した軽質油を重機等の機械燃料等に、中質油をボイラー燃料等に、重質油を発電燃料等にそれぞれ使用してもよい。
【0067】
また、本実施の形態においては、発酵乾燥軽量物22の炭化水素分が気化した残渣は、残渣タンク144で回収され、固形燃料RDFの原料(固形燃料原料210)とされる。残渣タンク144で回収された残渣の固形燃料原料210は、例えば、ベーラー(圧縮梱包機)で圧縮梱包することによって固形燃料化工程(固形燃料製造工程)への移送を容易にすることができる。
そして、その後の固形燃料化工程で、固形燃料原料210は、例えば、乾いたプラスチック、木質材、紙、布等の熱量調整材と混合され、また、粉砕機で粉砕され、更に必要に応じて鉄や石等の不燃物を除去し、成形機で成形されることによって固形燃料化され、固形燃料(RDF)211となる。なお、成形工程では、必要に応じ腐敗防止剤等の添加剤が添加される。また、このときの固形燃料製造工程、特に成形工程で生じた臭気、水蒸気等は、生物脱臭装置に送給し、そこで脱臭した後、外へ排気することもできる。
【0068】
特に、こうして製造された固形燃料(RDF)211は、発酵乾燥軽量物22を300℃を超え、700℃以下、好ましくは、350℃以上、700℃以下加熱して熱分解ガスを生じさせる前に、発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱によって脱塩素を行っているから、即ち、脱塩酸化を行った発酵乾燥軽量物22の炭化水素分を油化した残渣である固形燃料原料210から製造されるから、塩分濃度が低いものである。よって、汎用性が高くなり、その需要の拡大が期待できる。また、発酵乾燥軽量物22の炭化水素分が熱分解された残渣、即ち、高熱処理された残渣から製造される固形燃料(RDF)211は、水分量をより少なくでき、再発酵(二次発酵)が進行するのが抑制され、再発酵による悪臭やガスが生じ難いより安全なものでもある。
【0069】
ところで、本発明を実施する場合には、発酵乾燥軽量物22から熱分解油220を生成する熱分解装置111Aは、熱分解槽110Aが、上述のスクリュー型押出機の形態のもの、即ち、連続処理式のものに限定されるものではなく、例えば、図4図5に示すように、熱分解槽が反応釜110Bの形態のバッチ式のものであってもよい。
図4に示すバッチ処理式の熱分解装置111Bも、発酵乾燥軽量物22を加熱する加熱手段を備えた熱分解槽(反応釜)110Bと、熱分解槽(反応釜)110Bでの加熱による発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分の熱分解によって生じた熱分解ガスを冷却し、凝縮する冷却器131と、冷却器131で凝縮されることにより生成した熱分解油(生成油)220を回収する油タンク134とを有する。また、熱分解槽(反応釜)110Bの上流側には、脱塩装置171を有する。
【0070】
脱塩装置171は、ホッパー111を介して供給された発酵乾燥軽量物22をヒータ等の加熱手段により所定温度で加熱し、発酵乾燥軽量物22中の有機塩素化合物の脱塩酸化により脱塩を行うものである。
この脱塩装置171は、外周に加熱手段としての電気ヒータ(バンドヒータ等)が配設された加熱筒と、加熱筒の内部で回転するスクリューとで構成されるスクリュー型押出機112を備え、加熱しながら発酵乾燥軽量物22を熱分解槽(反応釜)110Bに供給することができる。しかし、本発明を実施する場合には、発酵乾燥軽量物22を所定温度で加熱できるものであれば、スクリュー型押出機112を備えるものに限定されない。
【0071】
熱分解槽(反応釜)110Bは、脱塩装置171から供給された発酵乾燥軽量物22をヒータやバーナー等の加熱手段により所定温度で加熱するものである。熱分解槽(反応釜)110Bの内部には撹拌機またはモータにより回転駆動するドラムを設置することにより熱分解槽(反応釜)110Bに投入された発酵乾燥軽量物22の炭化水素分の熱分解(油化)を均一に促進する。
【0072】
こうしたバッチ処理式の熱分解装置111Bにおいても、ホッパー111から投入された発酵乾燥軽量物22は、まず、脱塩装置171の加熱筒内でヒータにより250℃以上、300℃以下に加熱されながら押出機112のスクリューによって下流側に送り込まれる。この脱塩装置171での250℃以上、300℃以下の加熱により、発酵乾燥軽量物22に含まれている食品ランプ等に由来の塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニル(PVC)等の有機塩素化合物が熱分解され、有機塩素化合物中の塩素、水素が脱離される、即ち、脱塩酸化されることで、塩化水素ガスが生じる。つまり、脱塩装置171で発酵乾燥軽量物22を250℃以上、300℃以下で加熱することにより、発酵乾燥軽量物22に含まれている有機塩素化合物の塩分が除去され脱塩される。そして、脱塩装置171での発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱により生じた塩化水素ガス(蒸気)は、脱塩装置171から排出され、冷却器121(凝縮器,冷却コンデンサ)により冷却されて凝縮されることで塩酸として塩酸タンク124で回収される。なお、冷却器121を通過したガスは、塩化水素ガスを吸収する塩化水素トラップ126で塩化水素ガスを除去したのち、オフガス処理部151で焼却(燃焼)等され、或いは、燃料として使用される。
【0073】
更に、脱塩装置171で加熱されながら押出機112のスクリューによって下流側に送られて熱分解槽(反応釜)110Bに投入された発酵乾燥軽量物22は、ヒータ等により300℃を超え、700℃以下に加熱される。この熱分解槽(反応釜)110Bでの300℃を超え、700℃以下の加熱により、発酵乾燥軽量物22が熱分解ガスと残渣に分離される。即ち、発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分が熱分解されることにより熱分解ガスが生じ、熱分解槽(反応釜)110Bから排出されて、発酵乾燥軽量物22の熱分解後の残渣と分離される。
【0074】
バッチ処理式の熱分解装置111Bにおいても、発酵乾燥軽量物22の熱分解後の残渣は、固形燃料(RDF)211に利用される固形燃料原料210として残渣タンク144で回収される。
一方、熱分解槽(反応釜)110Bで生成された熱分解ガスは、熱分解槽(反応釜)110Bから排出され、冷却器(凝縮器,冷却コンデンサ)131により冷却されて凝縮され、油水分離器132で水分と油分に分離されたのち、油分が油タンク134で熱分解油(生成油)220として回収される。
【0075】
ところで、図4に示したバッチ処理式の熱分解装置111Bでは、スクリュー型押出機112を備えた脱塩装置171を熱分解槽(反応釜)110Bと別途に設けた構成としているが、本発明を実施する場合には、図5に示す熱分解装置111Cのように、250℃以上、300℃以下の脱塩酸工程と、高温350℃を超え700℃以下の熱分解工程とを同じ熱分解槽(反応釜)110B内で行ってもよい。
即ち、図5に示すバッチ処理式の熱分解装置111Cも、発酵乾燥軽量物22を加熱する加熱手段を備えた熱分解槽(反応釜)110Bと、熱分解槽(反応釜)110Bでの加熱による発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分の熱分解によって生じた熱分解ガスを冷却し、凝縮する冷却器131と、冷却器131で凝縮されることにより生成した熱分解油(生成油)220を回収する油タンク134とを有し、ホッパー111を介して供給された発酵乾燥軽量物22を熱分解槽(反応釜)110Bに設けたヒータ等の加熱手段により加熱を行う。
【0076】
そして、このときの加熱工程を、250℃以上、300℃以下での加熱と、300℃を超え、700℃以下での加熱との2段階で行うことで、前者の250℃以上、300℃以下での加熱工程によって、発酵乾燥軽量物22中の有機塩素化合物を脱塩酸化する脱塩工程を行い、後者の300℃を超え、700℃以下の加熱工程によって発酵乾燥軽量物22中の炭化水素分を熱分解する熱分解工程を行う。これより、熱分解ガスと残渣に分離される。
熱分解装置111Cにおいても、熱分解槽(反応釜)110B内での発酵乾燥軽量物22の250℃以上、300℃以下の加熱により生じた塩化水素ガス(蒸気)は、熱分解槽(反応釜)110Bから排出され、上述の熱分解装置111A,111Bと同様に、冷却器121により冷却されて凝縮されることで塩酸として塩酸タンク124で回収される。冷却器121を通過したガスは、塩化水素ガスを吸収する塩化水素トラップ126で塩化水素ガスを除去したのち、オフガス処理部151で焼却(燃焼)等され、或いは、燃料として使用される。また、発酵乾燥軽量物22の300℃を超え、700℃以下の加熱による熱分解後の残渣は、固形燃料(RDF)211に利用される固形燃料原料210として残渣タンク144で回収される。一方、発酵乾燥軽量物22の300℃を超え、700℃以下の加熱により熱分解槽(反応釜)110Bで生成された熱分解ガスは、熱分解槽(反応釜)110Bから排出され、冷却器131により冷却されて凝縮され、油水分離器132で水分と油分とに分離されたのち、油分が油タンク134で熱分解油(生成油)220として回収される。
【0077】
なお、本発明を実施する場合には、熱分解槽(反応釜)110A,110Bと冷却器132との間に触媒槽を配置し、熱分解槽(反応釜)110A,110Bで生じた熱分解ガスを更に触媒を用いて接触分解させ改質を行い、重質油分と軽質油分とを分離して回収するようにしてもよい。
また、発酵乾燥軽量物22の熱分解(油化)と共に、水蒸気による無酸素状態での処理で炭化を行い、炭化残渣を生成してもよい。即ち、発酵乾燥軽量物22の熱分解された残渣を炭化物として回収してもよい。こうした炭化残渣は、例えば、脱臭剤、調湿材、防ダニ・防カビ材、エコセメント、水質の浄化剤、土壌改良材等としての活用が可能となる。
【0078】
加えて、本発明を実施する場合には、250℃以上、300℃以下の加熱により発酵乾燥軽量物22に含まれている塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニル(PVC)等の有機塩素化合物を熱分解する前に、発酵乾燥軽量物22に散水を行うことで発酵乾燥軽量物22に含まれている生ゴミ等に由来の塩化ナトリム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)等の有無無機塩化物を水に溶解させて脱塩する水洗処理を行ってもよい。即ち、水洗処理され無機塩化物を除去した発酵乾燥軽量物22を、250℃以上、300℃以下で加熱して有機塩素化合物の脱塩酸化を行い、その後、300℃を超え、700℃以下で加熱して炭化水素分の熱分解を行って熱分解油220を生成するものとしてもよい。
このように、水洗処理により無機塩化物を除去し、更に、所定温度の加熱処理により有機塩素化合物の塩素分の除去を行った発酵乾燥軽量物22から生成される熱分解油220は、より残留塩素が少ないものとなり、より高質なものとなる。更に、発酵乾燥軽量物22の熱分解された残渣においても、より塩分濃度を少なくできるから、汎用性を高めることができる。
【0079】
こうして、本実施の形態では、廃棄物1を好気発酵により乾燥させた発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22を所定温度で加熱して炭化水素分を熱分解することで熱分解油(生成油)220を生成する。また、炭化水素分が気化した残渣は固形燃料(RDF)211に利用される固形燃料原料210となる。
【0080】
本実施の形態においては、廃棄物1を好気発酵により乾燥させてから、その固形状の発酵乾燥物20(発酵乾燥軽量物22)を所定温度で加熱して炭化水素分を熱分解することで熱分解油(生成油)220を生成するものであり、廃棄物1の乾燥及び減容に加熱エネルギを要さず、また乾燥されて水分量が減少した発酵乾燥物20を高温加熱するものであるから、燃焼効率がよく少ない加熱エネルギで熱分解油(生成油)220として回収できる。こうした廃棄物1の発酵乾燥物20の熱分解で生じた熱分解油220は、固形燃料(RDF)と比較し、燃料として使い勝手がよいものである。更に、発酵乾燥物20の炭化水素分が気化した残渣は固形燃料(RDF)211に利用される固形燃料原料210となるから、他用途に展開できる再資源化物を形成できるものである。
【0081】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントは、生ごみ、プラスチック、紙、布等が混在している廃棄物1を好気発酵し発酵の熱や通気を利用して乾燥させることにより発酵乾燥物20とし、その発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22を所定温度の加熱により熱分解ガスと残渣とに分離し、生じた熱分解ガスを凝縮して熱分解油(生成油)220として回収し、また、残渣を固形燃料(RDF)211に使用される固形燃料原料210として回収し、熱分解油(生成油)220及び固形燃料(RDF)211へと再資源化するものである。
【0082】
即ち、本実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントは、廃棄物1を好気発酵乾燥したのち、熱分解油220を生成するものであり、熱分解油200であれば、固形燃料RDFと比較して使途の限定が少なくて利用、消費しやく燃料としての使途の拡大を図ることができる。
こうして、本実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントは、多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油220の再資源化物(ケミカルリサイクル品)に廃棄物1を変換するもの、つまり、廃棄物1を多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油220に再資源化するものである。また、発酵乾燥物20の炭化水素分の熱分解した残渣は固形燃料RDFの原料210にもなり固形燃料RDF211としての再資源化もできるから、廃棄物1の再資源化物を多用途に展開できるものである。
【0083】
特に、本実施の形態の廃棄物処理方法及び廃棄物処理プラントでは、好気発酵乾燥させる廃棄物1に対し、発酵乾燥物20の一部、即ち、発酵乾燥物20から粒度・重量選別した発酵乾燥細粒物23を発酵補助材3として混合して(戻して)、廃棄物1を好気発酵させることで好気発酵乾燥の促進を行っているところ、発酵補助材3として使用する発酵乾燥細粒物23は、発酵乾燥物20からの選別後、発酵乾燥細粒物23に含まれている無機塩化物を水洗処理により水に溶解させる脱塩処理を行うことで塩素濃度が低減されたものである。また、発酵乾燥物20から選別した発酵乾燥軽量物22は、所定の低温で加熱して有機塩素化合物の塩素を脱塩してから熱分解するのである。よって、その熱分解によって生成された熱分解油(生成油)220は、残留塩素が少なく、また、熱分解されない残りの残渣においても塩分濃度が低いものとなる。よって、残留塩素の少ない熱分解油(生成油)220及び塩分濃度の少ない固形燃料(RDF)211の提供を可能とし、他用途に展開でき高質な再資源化物を形成できるものである。
【0084】
なお、上記の実施の形態では、熱分解工程の前の所定加熱での押出機方式による脱塩素であることで、脱塩塩素率も高く、脱塩素にようする反応時間も短くでき脱塩素を効率的にできるものであるが、本発明を実施する場合には、ロータリーキルン方式、溶融槽(釜)方式、触媒方式による脱塩処理としてもよい。
【0085】
以上説明してきたように、上記実施の形態の廃棄物処理方法は、廃棄物1を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物20とする発酵乾燥工程(ステップS10)と、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22、即ち、発酵乾燥物20の一部である発酵乾燥軽量物22を加熱し熱分解油220を生成する熱分解工程(ステップS130)とを具備するものである。
【0086】
上記実施の形態の廃棄物処理方法によれば、発酵乾燥工程(ステップS10)において廃棄物1を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物20とし、熱分解工程(ステップS130)において発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22を所定温度で加熱して熱分解油220を生成する。こうして生成された熱分解油220は、重質油、軽質油を含み、燃料や工業用原料等として利用しやすいものだから多くの需要が期待される。即ち、発酵乾燥軽量物22の炭化水素分の油化により生成される熱分解油220は、密度が0.7~0.9と重軽油相当であり、発酵乾燥物20から製造する固形燃料RDFの密度よりも高密度で、液体であるから、燃焼制御も容易で活用しやすく、また、貯蔵スペースも取り難く保管のコストもかかりにくい。
こうして、上記実施の形態の廃棄物処理方法によれば、汎用性が高くて使途が広く、廃棄プラントの近隣での消費、需要が高く見込める熱分解油220を生成するものであり、廃棄物1を多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油220に再資源化するものである。
【0087】
また、上記実施形態の廃棄物処理方法は、熱分解工程(ステップS130)で発酵乾燥軽量物22から熱分解油220が分離した残渣は固形燃料(RDF)原料210とするから、廃棄物の再資源化物(ケミカルリサイクル品、サーマルリサイクル品)を多様化し、多用途に展開できるものとする。
【0088】
上記実施形態の廃棄物処理方法は、更に、熱分解工程の前に脱塩工程にて発酵乾燥軽量物22の脱塩を行うから、脱塩処理された発酵乾燥軽量物22から生成される熱分解油の残留塩素が低減される。よって、より高質な熱分解油(生成油)を生成できる。また、脱塩処理された発酵乾燥軽量物22の炭化水素分が熱分解された残渣についても、塩素濃度が低いものとなるから、塩素濃度が低い固形燃料RDF211を形成できる。
【0089】
更に、上記実施形態の廃棄物処理方法によれば、発酵乾燥工程(ステップS10)において、発酵乾燥物20の一部である発酵乾燥細粒物23を脱塩してから発酵補助剤3として廃棄物1と混合し、廃棄物1を効率的に好気発酵及び乾燥させることで、塩分濃度の低い発酵乾燥物20にできるから、その発酵乾燥物20の炭化水素分を熱分解してなる熱分解油の残留塩素濃度や発酵乾燥軽量物22の炭化水素分が熱分解された残渣の塩素濃度を低減できることで、より高質な再資源化物を提供できる。
【0090】
ところで、上記実施の形態の説明は、廃棄物1を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物20とする発酵乾燥処理部と、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22を加熱し熱分解油220を生成する熱分解装置111A,111B,111Cとを具備する廃棄物処理プラントの発明と捉えることもできる。
【0091】
上記実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、発酵乾燥処理部により廃棄物1を好気発酵し乾燥させて発酵乾燥物20とし、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥軽量物22を熱分解装置111A,111B,111Cにより所定温度で加熱して熱分解油220を生成する。こうして生成された熱分解油220は、重質油、軽質油を含み、燃料や工業用原料等として利用しやすいものだから多くの需要が期待される。即ち、発酵乾燥軽量物22の炭化水素分の油化により生成される熱分解油220は、密度が0.7~0.9と重軽油相当であり、発酵乾燥物20から製造する固形燃料RDFの密度よりも高密度で、液体であるから、燃焼制御も容易で活用しやすく、また、貯蔵スペースも取り難く保管のコストもかかりにくい。
こうして、上記実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、汎用性が高くて使途が広く、廃棄プラントの近隣での消費、需要が高く見込める熱分解油220を生成するものであり、廃棄物1を多くの需要が期待でき利用しやすい熱分解油220に再資源化するものである。
【0092】
また、上記実施形態の廃棄物処理プラントは、発酵乾燥軽量物22から熱分解油220が分離した残渣は固形燃料(RDF)211の原料とするから、廃棄物の再資源化物を多様化し、多用途に展開できるものとする。
【0093】
更に、上記実施形態の廃棄物処理プラントは、更に、発酵乾燥軽量物22の熱分解の前に発酵乾燥軽量物22の脱塩を行う脱塩手段としての所定温度に加熱する加熱手段や水洗手段を具備するから、脱塩処理された発酵乾燥物から生成される熱分解油の残留塩素が低減される。よって、より高質な熱分解油(生成油)を生成できる。
【0094】
更に、上記実施形態の廃棄物処理プラントによれば、発酵乾燥処理部において、発酵乾燥物20の一部である発酵乾燥細粒物23を脱塩してから発酵補助剤3として廃棄物1と混合し、廃棄物1を効率的に好気発酵及び乾燥させることで、塩分濃度の低い発酵乾燥物20にできるから、その発酵乾燥物20の炭化水素分を熱分解してなる熱分解油の残留塩素濃度や発酵乾燥軽量物22の炭化水素分が熱分解された残渣の塩素濃度を低減できることで、より高質な再資源化物を提供できる。
【0095】
ところで、上記実施の形態の説明では、発酵乾燥物20から選別された発酵乾燥細粒物23は、発酵補助材3に使用する説明としたが、本発明を実施する場合には、発酵乾燥細粒物23の一部を堆肥原料230として使用するものとしてもよい。堆肥原料230は、別途の熟成床で、上述の好気発酵乾燥のときと同様、散水と通気を行いながら、数日から数週間寝かせて熟成させ、その後、用途や使用条件に合わせた篩分けや、必要があれば更なる熟成を経て、高品位な堆肥とすることができる。これより、より多用途への再資源化物の展開が可能である。
【0096】
なお、上記好気発酵では、好気性微生物の使用を前提として説明してきたが、嫌気性微生物の付着が皆無であることを意味するものではなく、好気性微生物の働く環境を作ることを意味するものである。
また、本発明を実施するに際しては、廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等については、上記実施例に限定されるものではない。また、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0097】
1 廃棄物
20 発酵乾燥物
22 発酵乾燥軽量物
111A,111B,111C 熱分解装置
210 固形燃料原料
211 固形燃料(RDF)
220 熱分解油(生成油)
図1
図2
図3
図4
図5