(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067082
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル高分子量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20240510BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F265/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176896
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】今田 基祐
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 香央子
【テーマコード(参考)】
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J026AA45
4J026AA46
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4J100HC10
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4J100HC38
4J100HC39
4J100HC50
4J100HC63
4J100HC69
4J100HC70
4J100HC75
4J100JA03
4J100JA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体において、粘着保持力に優れた重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、多官能アクリレートの存在下で重合する工程を含むことを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
(式中、R
1は、水素原子またはメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R
4は、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、多官能アクリレートの存在下で重合する工程を含むことを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子またはメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R
4は、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
【請求項2】
炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒の存在下でグループトランスファー重合する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒は、有機リン化合物、N-ヘテロ環状カルベン、フッ素イオン含有化合物、環状アミン化合物、及び、アンモニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【請求項4】
多官能アクリレートが全モノマーに対して0.06質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【請求項5】
前記重合体の重量平均分子量が100000~1000000であることを特徴とする請求項1または2に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【請求項6】
前記重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が10以下であることを特徴とする特徴とする請求項5に記載のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(2)で示される構造単位と一般式(3)で示される構造単位を含むビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体であって、
【化2】
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Xは多価連結基である。nは、1以上の整数を表し、mは、2以上の整数を表す。)
前記一般式(2)と前記一般式(3)の構造単位のモル比が、一般式(3)/一般式(2)>0.014/mであることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体。
【請求項8】
前記請求項1または2に記載の製造方法で得られるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体と架橋剤および硬化触媒を含む粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル高分子量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性基とイオン重合性基を分子内に併せ持つ異種重合性モノマーとして、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類が知られている。このような異種重合性モノマーを重合して得られる重合体は、工業的に汎用性が高く有用であり、各種用途において広く使用されている。
【0003】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、モノマー内にビニルエーテル基とアクリロイル基を有する。そのため、ビニルエーテル基のみをカチオン重合させるとアクリロイル基ペンダント型ポリビニルエーテルを得ることができる。一方、アクリロイル基のみを重合させるとビニルエーテルペンダント型アクリルポリマーを得ることができる。このように、ビニルエーテル基含有(メタ)酸エステル類は2種の重合性基を有するため、所望の重合体を得るためには最適な重合方法を選択する必要がある。
【0004】
なかでも、アクリロイル基のみを重合させて、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を得る方法について、これまでにいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を必須に含む単量体成分を、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物及び触媒の存在下でグループトランスファー重合する工程を含むことを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体において、重合体側鎖として存在するビニルエーテル基が架橋点となるため、粘着用途での活用が期待できるが、グループトランスファー重合法では、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する停止反応のため、得られる重合体の分子量は10万程度と低く、凝集力不足によって粘着剤としての効果は小さかった。
【0007】
本発明は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体において、粘着保持力に優れた重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、多官能アクリレートの存在下で重合する工程を含むことを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法である。
【0009】
【0010】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を表す。R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R4は、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
また、本発明の別の実施形態は、下記一般式(2)で示される構造単位と一般式(3)で示される構造単位を含むビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体であって、
【0011】
【0012】
【0013】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Xは多価連結基である。nは、1以上の整数を表し、mは、2以上の整数を表す。)
一般式(2)と一般式(3)の構造単位のモル比が、一般式(3)/一般式(2)>0.014/mであることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法で得られるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体は、凝集力に優れることから、粘着剤、接着剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0016】
[本発明の重合体の製造方法]
本発明のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法は、下記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、多官能アクリレートの存在下で重合する工程を含むことを特徴とする製造方法である。
【0017】
【0018】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を表す。R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R4は、水素原子又は有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
本発明の重合体の製造方法は、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒の存在下でグループトランスファー重合する工程を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で用いるグループトランスファー重合は、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤としてモノマーを重合させるアニオン重合の一種である。炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類のアクリロイル基に付加し、新たに形成された重合体の成長末端のシリルケテンアセタールが次々と重合体分子の末端へと移ってゆくことにより重合体が得られる。
【0020】
このようなグループトランスファー重合を用いることにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合反応を、室温等の、制御が比較的容易な温度範囲で行うことができる。また、反応系内の水分量を厳密に制御する必要もなく、上記重合反応を行うことができる。更に、上記重合を用いれば、不純物の生成が少なく、高転化率でビニルエーテル基を残存させたままビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造することができる。
【0021】
このように、触媒の存在下でのグループトランスファー重合を用いると、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類のアクリロイル基のみを重合させた、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を極めて容易かつ効率的に製造することができる。
【0022】
本発明の製造方法における重合工程では、重合開始剤として炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を用い、触媒の存在下で、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を重合させる。
【0023】
具体的には、反応前に、上記単量体成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちいずれか2つを反応容器内に仕込み、残り1つを添加することにより重合が開始する。これらを添加する順序については特に限定されず、任意の方法で添加して重合を開始することができる。
【0024】
また、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、触媒、及び、単量体成分は、それぞれ、使用する全量を一度に添加してもよいし、少量ずつ連続的に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。
【0025】
上記単量体成分を重合して得られる重合体の分子量は、上記単量体成分の種類及び量や、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の種類及び量、上記触媒の種類及び量、使用する溶媒の種類や量により適宜制御することができる。
【0026】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に重合体を製造できる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0027】
上記触媒の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に重合体を製造できる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0028】
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行うこともできるが、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、原料、触媒、重合開始剤、重合体を溶解させることのできる溶媒であれば制限されないが、重合反応が効率良く進行し得る点で、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0029】
本発明において使用する溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペンタフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン等のフッ素系溶媒;DMSO、ニトロメタン等が挙げられる。
【0030】
なかでも、重合反応がより一層効率良く進行し得る点で、上記溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、及びニトリル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒であることがより好ましい。上記溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記溶媒の使用量としては、使用する単量体成分総量100質量%に対して、好ましくは10~10000質量%、より好ましくは50~5000質量%、更に好ましくは100~1000質量%が挙げられる。
【0032】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の酸素濃度が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物や触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記酸素濃度は、800ppm以下であることがより好ましく、0~500ppmであることが更に好ましい。上記酸素濃度は、ポーラロ方式溶存酸素計により測定することができる。
【0033】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の水分量が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の水分量が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が分解を起こしにくく触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記水分量は、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。上記水分量は、カールフィッシャー水分測定法により測定することができる。
【0034】
上記重合における反応温度は、特に制限されないが、分子量及び分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、-20~100℃が好ましく、-10~50℃がより好ましく、0~30℃が更に好ましい。また、製造コスト低減の観点から、室温±20℃で重合する工程を含むことも、本発明の製造方法の好ましい形態の一つである。反応時間は、特に制限されないが、10分~48時間が好ましく、20分~36時間がより好ましく、30分~24時間が更に好ましい。
【0035】
上記重合における反応雰囲気下は、大気下でも、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0036】
上記重合反応で得られる重合体は、主鎖末端に重合開始剤のシリル基を含むシリルケテンアセタール構造又はエノレートアニオン構造となっており、反応系内に水、アルコール、又は酸を添加して、重合体の片末端のシリルケテンアセタール又はエノレートアニオンをカルボン酸又はエステルに変換させることにより、重合反応を停止させることができる。
【0037】
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。
【0038】
上記酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。
【0039】
水、アルコール又は酸の使用量としては特に限定されないが、使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物1molに対し、好ましくは1~1000mol、より好ましくは1~100mol、更に好ましくは1~10molである。
【0040】
また、上記水、アルコール、又は酸の代わりに、求電子剤を添加してもよい。求電子剤を添加することにより、目的の官能基を導入して、重合反応を停止させることができる。上記求電子剤としては、例えば、ヨウ素や臭素等のハロゲン、ハロゲン化コハク酸イミド化合物、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化プロパルギル、アルデヒド、酸クロライド等が挙げられる。
【0041】
上記求電子剤の使用量としては、特に限定されないが、使用するシリルケテンアセタール1molに対し、好ましくは0.5~1.5mol、より好ましくは0.6~1.3mol、更に好ましくは0.8~1.2molである。
【0042】
[本発明の単量体成分]
本発明では、単量体成分として、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を使用する。
上記一般式(1)において、R1は、水素原子またはメチル基を表す。R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
【0043】
R2又はR3で表される有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状若しくは環状の1価の炭化水素基、又は、これらの炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部を、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換したもの等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(1)において、R4は、水素原子又は有機基を表す。
【0045】
R4で表される有機基としては、例えば、上述したR2及びR3で表される有機基と同じものを挙げることができる。なかでも、上記R4で表される有機基は、炭素数1~11の鎖状又は環状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
全単量体成分に対するビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に限定されないが、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
本発明の単量体成分は、さらに多官能アクリレートを含む。多官能アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(アクリロキシ-ジ-(エチレンオキシ)フェニル))プロパン、2,2-ビス(4-(アクリロキシ-ポリ-(エチレンオキシ)フェニル))プロパン;ポリウレタン構造と少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基とを有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;ポリエステル構造と少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基とを有するポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ樹脂構造と少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基とを有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー;ポリアミド構造と少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基とを有するポリアミド(メタ)アクリレートオリゴマー;ポリアミン構造と少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基とを有するポリアミン(メタ)アクリレートオリゴマー;等があげられる。
【0048】
全単量体成分に対する多官能アクリレートの量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.06質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
上記単量体成分は、上記ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類以外の、他の重合性単量体を含んでいてもよい。上記他の重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有重合性単量体類;2-(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクロイルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類;メチレンブチロラクトン、メチルメチレンブチロラクトン等の重合性環状ラクトン単量体類;(メタ)アクリル酸2-(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル等のケイ素原子含有重合性単量体類;(メタ)アクリロニトリル;無水マレイン酸;等が挙げられる。
また、上記他の重合性単量体は、炭素数が2~22であることが好ましく、2~18であることがより好ましく、3~15であることが更に好ましい。
上記他の重合性単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
[本発明の開始剤]
本発明の製造方法における重合工程では、重合開始剤として炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を用い、触媒の存在下で、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を重合させることが好ましい。
具体的には、本発明において使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物としては、例えば、下記一般式(2):
【0051】
【0052】
(式中、R6及びR7は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なって、有機基を表す。R6とR7又はR7とR8は、結合して環構造を形成していてもよい。R9、R10及びR11は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるシリルケテンアセタール、下記一般式(5):
【0053】
【0054】
(式中、R6、R7及びR8‘は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R9、R10及びR11は、同一又は異なって、有機基を表す。R6とR7又はR7とR8’は、結合して環構造を形成していてもよい。R9、R10及びR11は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるビニルシラン化合物、及び、下記一般式(6):
【0055】
【0056】
(式中、R6、R7及びR8’は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R9、R10及びR11は、同一又は異なって、有機基を表す。R6とR7又はR7とR8’は、結合して環構造を形成していてもよい。R9、R10及びR11は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるアリルシラン化合物の1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
なかでも、反応性が高く、効率良く重合が進行する点で、上記シリルケテンアセタールがより好ましく挙げられる。
【0057】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に重合体を製造できる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0058】
[本発明の触媒]
本発明の製造方法において使用する触媒としては、ブレンステッド塩基やルイス塩基等の塩基性触媒として作用するものが好ましく挙げられ、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基;トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基;等が挙げられ、有機リン化合物、N-ヘテロ環カルベン、フッ素イオン含有化合物、環状アミン化合物、及び、アンモニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
なかでも、本発明による重合方法では、上記触媒として、安価で入手しやすいという点で、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(TBAOBz)のようなアンモニウム塩化合物が好ましい。
【0059】
触媒は、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類を含む単量体成分及び開始剤の両方が添加される場合は、それらの添加先の系に含まれ、いずれか一方が添加される場合は、その添加物と同じ系に含まれても、その添加物とは別にされて添加先の系に含まれているのでもよい。
【0060】
上記触媒の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に重合体を製造できる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0061】
[本発明の重合体(A)]
本発明の重合体(A)は、下記一般式(2)で示される構造単位と一般式(3)で示される構造単位を含むビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)であって、
【0062】
【0063】
【0064】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。Xは多価連結基である。nは、1以上の整数を表し、mは、2以上の整数を表す。)
前記一般式(2)と前記一般式(3)の構造単位のモル比が、一般式(3)/一般式(2)>0.014/mであることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である。
【0065】
一般式(2)と一般式(3)の構造単位のモル比が上記であると粘着保持力とタック性に優れた粘着性組成物とすることができる。前記モル比の上限は特に限定されないが、2/m以下が好ましく、より好ましくは1/m以下であり、さらに好ましくは0.5/m以下であり、特に好ましくは0.2/m以下である。
【0066】
上記一般式(2)において、R1で表される有機基としては、例えば、炭素数1~8の鎖状の1価の炭化水素基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。R2又はR3で表される有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状若しくは環状の1価の炭化水素基、又は、これらの炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部を、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換したもの等が挙げられる。
【0067】
R4で表される有機基としては、例えば、上述したR2及びR3で表される有機基と同じものを挙げることができる。なかでも、上記R4で表される有機基は、炭素数1~11の鎖状又は環状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
【0068】
上記一般式(3)において、R5で表される有機基としては、例えば、炭素数1~8の鎖状の1価の炭化水素基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0069】
上記一般式(3)において、Xで表される多価連結基としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類由来の連結基、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリオール類由来の連結基、ビスフェノール-A等の芳香族多価フェノール由来の連結基、ポリウレタン構造を有するオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマー、エポキシ樹脂構造を有するオリゴマー、ポリアミド構造を有するオリゴマー、ポリアミン構造を有するオリゴマー等のオリゴマー由来の連結基等があげられる。
【0070】
本発明の重合体(A)の製造方法は限定されないが、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法が好適に用いることができる。
【0071】
[本発明の粘着剤組成物(B)]
本発明の粘着剤組成物(B)は、上記ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル重合体(A)と架橋剤と硬化触媒を含む。
【0072】
本発明の粘着剤組成物(B)における、上記ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、特に限定されず、粘着剤組成物の目的、用途に応じて適宜設計すればよいが、例えば、固形分総量100質量%に対して1~99質量%、好ましくは2~98質量%、より好ましくは3~97質量%である。
【0073】
なお、本明細書において、「固形分総量」とは、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く)の総量を意味する。
【0074】
<架橋剤(C)>
本発明において使用する架橋剤としては、上記ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル重合体(A)を架橋しうる化合物であれば、特に限定されないが、なかでも、重合体中のビニルエーテル基と速やかに架橋反応を起こすことができる点で、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、アクリル酸エステル、カルボン酸化合物、マレイミド化合物、及び、チオールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、チオールがより好ましく、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物が更に好ましい。架橋剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等の脂環式化合物含有ビニルエーテル;アリルビニルエーテル等のアリル基含有ビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能性ジビニルエーテル;等が挙げられる。
【0076】
上記環状エーテル化合物としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,2-エポキシシクロヘキサン等の単官能エポキシ樹脂;ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸、グリシジルメタクリレート等の2官能エポキシ樹脂;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)ベンゼン、ノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の脂環式オキシラン環を有するエポキシ樹脂;3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3-シクロヘキシルオキシメチル-3-エチル-オキセタン等の単官能オキセタン樹脂;ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン等の2官能オキセタン樹脂;トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタン樹脂;テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0077】
上記アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングルコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、ジトリメチロルプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を有するマクロマー等が挙げられる。
【0078】
上記カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、1,3,5-トリカルボン酸ベンゼン等の分子内に2個以上の官能基を有する化合物;ポリ(メタ)アクリル酸等の側鎖にカルボキシル基を含むような重合体等が挙げられる。
【0079】
上記マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N,N’-テトラメチレンビスマレイミド、ビスフェノールAビス(4-マレイミドフェニルエーテル)、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン等のマレイミド化合物が挙げられる。
【0080】
上記チオールとしては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,4,6-トリメルカプト-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-トリアジン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物等が挙げられる。また、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸など、分子内にカルボキシル基とチオール基を少なくとも1つずつ含有する化合物であってよい。
【0081】
この他に、ビニルエーテル基と反応し架橋構造を形成しうる化合物を用いることもできる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、グリセロール等の脂肪族アルコール;4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA等の芳香族アルコール;無水マレイン酸等の酸無水物;等が挙げられる。
【0082】
上記架橋剤(C)の含有量は、上記粘着剤組成物(C)の固形分総量100質量%に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることが更に好ましい。
【0083】
<硬化触媒(D)>
本発明において使用する硬化触媒としては、特に限定されないが、好ましくは、カチオン硬化触媒、及び、ラジカル硬化触媒からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、ビニルエーテル基の架橋反応が速やかに進行するという点で、カチオン硬化触媒が好ましい。
【0084】
カチオン硬化触媒、ラジカル硬化触媒のどちらの場合も、粘着剤の実施形態に応じて、熱潜在性又は光潜在性のものを用いることもできる。これらの触媒は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(熱潜在性カチオン硬化触媒)
熱潜在性カチオン硬化触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。これらは、光照射によっては実用的な量のカチオン活性種を発生し得ない化合物であり、カチオン活性種を発生する温度は、40℃~200℃が好ましく、60℃~180℃がより好ましく、80℃~150℃が更に好ましい。上記熱潜在性カチオン硬化触媒として、非イオン性の硬化触媒と、イオン性の硬化触媒が挙げられる。
【0085】
上記熱潜在性カチオン硬化触媒のうち、非イオン性硬化触媒としては、有機ホウ素化合物等のルイス酸部と、アミン、ピリジン等の窒素含有化合物、ホスフィン等のリン含有化合物、スルフィド等の硫黄含有化合物等のルイス塩基部との組み合わせからなる化合物が挙げられる。
【0086】
上記熱潜在性カチオン硬化触媒のうち、イオン性硬化触媒としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウム、(4-ヒドロキシフェニル)メチル-o-トリルスルホニウム、(4-アセトキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリシアノメタニド等のアニオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。
【0087】
(光潜在性カチオン硬化触媒)
光潜在性カチオン硬化触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、非イオン性の硬化触媒とイオン性の硬化触媒が挙げられる。上記非イオン性の硬化触媒としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。上記イオン性の硬化触媒としては、例えば、ジフェニルヨードニウム、4-メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4-(ジフェニルスルフォニオ)-フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)-フェニル〕スルフィド、4-クロロフェニルジフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、η5-2,4-(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6-η-(メチルエチル)ベンゼン〕-Fe(1+)等のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のアニオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。また、必要に応じてチオキサントン等の光増感剤を添加しても良い。
【0088】
(熱潜在性ラジカル硬化触媒)
熱潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等が挙げられる。
【0089】
(光潜在性ラジカル硬化触媒)
上記光潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-1フェニルプロパノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]-1,2-オクタンジオン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)エタノン等のオキシムエステル類;ベンゾイルぎ酸メチル等が挙げられる。
【0090】
上記硬化触媒(D)の含有量は、上記重合体(A)と架橋剤(C)の総和を100質量部とした場合に、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。
【0091】
本発明の粘着剤組成物(B)は、上述した成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、溶剤、紫外線吸収剤、光増感剤、酸化防止剤、色材、可塑剤、粘着付与剤、レベリング剤、無機微粒子、有機微粒子、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、発泡抑制剤、フィラー等が挙げられる。これらの成分は、公知のものから適宜選択して使用することができる。また、これらの使用量も適宜設定することができる。
【0092】
<粘着剤組成物の製造方法>
本発明の粘着剤組成物(B)の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した各成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。分散混合は、特に限定されず、公知の手法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。例えば、色材を含む場合、溶媒や分散剤等を用いて色材組成物を予め調製し、次いで、上述した各成分と混合してもよい。
【0093】
<使用方法>
本発明の粘着剤組成物(B)の使用方法としては、例えば、上記粘着剤組成物を基材上に塗布し、塗布物を乾燥、加熱、又は活性エネルギー線を照射、あるいはこれらの組み合わせにより、塗布物を硬化させて粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。
【0094】
上記基材としては、特に限定されず、例えば、木材、ガラス、SUS板、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の各種プラスチック、あるいはこれらの組合せからなる公知の基材が挙げられる。
【0095】
塗布方法は、特に限定されず、グラビアコート、ロールコート、バーコート、アプリケーター等の公知の方法で行うことができる。
【0096】
乾燥又は加熱方法は、粘着剤組成物の組成、目的、用途に応じて、公知の方法から適宜選択すればよいが、例えば、40~150℃で行うことが好ましく、60~120℃で行うことがより好ましい。乾燥加熱時間は、1~30分間であることが好ましく、2~10分間であることがより好ましい。
【0097】
活性エネルギー線照射は、赤外線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を用いて公知の方法で行うことができる。照射量は、粘着剤組成物の組成、用途に応じて適宜設定することができる。
【0098】
<用途>
本発明の粘着剤組成物(B)は、優れた粘着性を有する。本発明の粘着剤組成物は、優れた粘着性が必要とされる用途に好適に使用することができ、具体的には、例えば、粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ、両面テープ、表面保護フィルム、表面保護テープ、マスキングテープ、太陽電池モジュール用バックシート等、広範囲において好適に使用することができる。
【実施例0099】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。各実施例における重合体等の分析は以下のようにして行った。
【0100】
<1H-NMR測定>
装置:アジレント・テクノロジー社製核磁気共鳴装置(600MHz)
測定溶媒:重クロロホルム
【0101】
<モノマー残存率測定>
得られた重合体組成物約0.1gと基準物質アニソール約0.02gを、酢酸エチル5mLで希釈した溶液を、下記ガスクロマトグラフ分析装置及び条件で測定し、サンプルと基準物質とのピーク面積比からモノマーの残存量を求めた。
装置:GC-2010((株)島津製作所製)
カラム:キャピラリーカラムInertCap Pure-WAX(ジーエルサイエンス(株)製、カラム長:30m、カラム内径:0.25mm、キャピラリー内フィルム厚:0.25μm)
キャリアガス:窒素
カラム温度:40°Cで3分保持、8°C/分で昇温、220°Cで5分間保持
注入口温度:300°C
検出器温度:300°C(FID)
検出される物質と保持時間:アニソール(10.9分)、VEEA(19.7分)
【0102】
<分子量測定>
得られた重合体を、テトラヒドロフランで溶解・希釈し、孔径0.45μmのフィルターで濾過したものを、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置、及び条件で測定した。
装置:HLC-8020GPC(東ソー株式会社製)
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
分離カラム:TSKgel SuperHM-M、TSKgel SuperH-RC(東ソー株式会社製)
【0103】
[実施例1]
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEA」と称する。)0.559g(3.0mmol)、アクリル酸2-エチルヘキシル6.634g(36.0mmol)、アクリル酸ブチル4.566g(35.6mmol)、ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学製、NKエステル A-200)0.064g(0.21mmol)、脱水glyme(1,2-ジメトキシエタン)12.9mL、安息香酸テトラブチルアンモニウムメチル9.1mg(0.025mmol)を入れ、窒素気流下、0℃で攪拌しながら、脱水glyme3.1mLに溶解したトリメチルシリルジメチルケテンアセタール10.9mg(0.063mmol)を加え、重合を開始した。10分後、及び15分後に、脱水glyme1.2mLに溶解したトリメチルシリルジメチルケテンアセタール4.3mg(0.025mmol)をそれぞれ追加で投入した。30分攪拌した後、少量のメタノールで重合を停止した。その後、溶媒を減圧除去し、室温下で真空乾燥することによって、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(1A)を取得した。得られた重合体のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は367,000g/mol、分子量分布は8.7であった。また、1H-NMR分析によって、重合に消費されたVEEAのビニルエーテル基は、重合中に変換されることなく重合体の側鎖として保持されていることが確認された。
【0104】
[実施例2]
多官能アクリレートであるポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学製、NKエステル A-200)を0.013g(0.04mmol)用いた以外は、実施例1と同様に行い、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(2A)を取得した。得られた重合体のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は123,700g/mol、分子量分布は2.9であった。また、1H-NMR分析によって、重合に消費されたVEEAのビニルエーテル基は、重合中に変換されることなく重合体の側鎖として保持されていることが確認された。
【0105】
[比較例1]
多官能アクリレートであるポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学製、NKエステル A-200)を0.006g(0.02mmol)用いた以外は、実施例1と同様に行い、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(c1A)を取得した。得られた重合体のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は109,700g/mol、分子量分布は2.6であった。また、1H-NMR分析によって、重合に消費されたVEEAのビニルエーテル基は、重合中に変換されることなく重合体の側鎖として保持されていることが確認された。
【0106】
[比較例2]
多官能アクリレートであるポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学製、NKエステル A-200)を用いなかった以外は、実施例1と同様に行い、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(c2A)を取得した。得られた重合体のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は114,300g/mol、分子量分布は2.6であった。また、1H-NMR分析によって、重合に消費されたVEEAのビニルエーテル基は、重合中に変換されることなく重合体の側鎖として保持されていることが確認された。
【0107】
<粘着剤組成物(B)の調整>
表1に示す配合となるように、上記で得られたポリマー、酢酸エチル、架橋剤、硬化触媒を混合し、粘着剤組成物(B)を調製した。なお、表中の各配合量は、固形分換算量である。また、架橋剤、硬化触媒は、下記のものを使用した。
(架橋剤)
1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル (アルドリッチ社製)
(硬化触媒)
FX-TP-BC-PC-AD-57103 (カチオン硬化触媒、日本触媒社製)
【0108】
【0109】
得られた粘着剤組成物について、保持力評価、及び、ボールタック試験を下記の方法で行った。結果を表2に示す。
【0110】
<試験片の作成方法>
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)を用い、得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmとなるように上記基材の片面に塗布した後、80℃で3分間乾燥を行った。その後、粘着剤表面に離型紙(サンエー化研株式会社製、商品名K-80HS)を貼着して保護した後、80℃、3時間にて養生し、粘着フィルム(粘着製品)を得た。この粘着フィルムを所定の大きさに切断して、試験片を作製した。なお、離型紙は各種測定試験を実施する際に引き剥がした。
【0111】
<保持力の測定方法>
温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、JIS G 4305に規定されるSUS板に、2kgのゴムローラを1往復させて、上記粘着フィルムを貼着した。貼付面積は25mm×25mmであった。このサンプルを25分間放置した後、80℃の恒温機に入れて、鉛直に吊り下げた。20分間経過した後、粘着フィルムに9.8Nの重りを掛けた。負荷は、1.568N/cm2であった。荷重を掛けて、SUS板から粘着フィルムが落下するまでの時間、又は、24時間(1440分)後のズレ距離を測定した。
【0112】
<ボールタック試験>
評価サンプルとして上記粘着フィルムを用意し、JIS Z-0237に規定されているJ.Dow法に基づいて温度が23℃、相対湿度が65%の雰囲気中でボールタック試験を行ない、斜面で停止したボール番号を調べ、タック性を評価した(ボールタックテスター、上島製作所製)。すなわち、30℃の傾斜板に、上記粘着シート上の滑走距離が10cmになるように裁断し、塗布面が表側になるようにして粘着シートを載置し、上記表面に大きさの異なる鋼球(直径1/32インチから32/32インチまでの、1/32インチずつ直径が異なる32個の鋼球。小さい順に1から32までの番号が振られている。)を転がして、停止するか否かにより粘着力を測定した。より番号の大きい鋼球が停止する方が、タック性が大きいと評価する。
【0113】