(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067090
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】オイルタンク用ブリーザー
(51)【国際特許分類】
F16K 24/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F16K24/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176919
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 禎久
(72)【発明者】
【氏名】四分一 裕起
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太河
【テーマコード(参考)】
3H055
【Fターム(参考)】
3H055AA04
3H055BA12
3H055CC04
3H055GG26
3H055GG37
(57)【要約】
【課題】オイルタンクからのオイルの漏出や、オイルタンク内への異物の侵入を好適に回避することができるオイルタンク用ブリーザー、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】上半部2及び下半部3の内部において、直線状に延在するように形成された吸気用通路4及び排気用通路5と、上半部2の外周面に形成された外側開口部6と、下半部3の表面に形成された吸気用開口部8及び排気用開口部10と、外側開口部6と吸気用通路4及び排気用通路5とを連通させる上側通路7と、吸気用開口部8と吸気用通路4とを連通させる下側通路9とを有し、吸気用バルブ11(ボール弁12、弁座13、スプリング14)が、吸気用通路4内に配置され、排気用バルブ15(ボール弁16、弁座17、スプリング18)が、排気用通路5内に配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルタンクの内部に配置される下半部と、オイルタンクの外部に配置される上半部とからなるオイルタンク用ブリーザーであって、
上半部及び下半部の内部において、上半部側から下半部側まで直線状に延在するように形成された吸気用通路及び排気用通路と、上半部の外周面に形成された外側開口部と、下半部の表面に形成された吸気用開口部及び排気用開口部と、上半部内において、外側開口部と吸気用通路及び排気用通路とを連通させる上側通路と、下半部内において、吸気用開口部と吸気用通路とを連通させる下側通路と、を有し、
弁座と、弁座よりも下方側に配置されたボール弁と、ボール弁を吸気用開口部側から外側開口部側へ向かって押し付けるスプリングとによって構成される吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、
弁座と、弁座よりも上方側に配置されたボール弁と、ボール弁を外側開口部側から排気用開口部側へ向かって押し付けるスプリングとによって構成される排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴とするオイルタンク用ブリーザー。
【請求項2】
吸気用開口部が、下半部の外周面に形成され、排気用開口部が、下半部の下面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のオイルタンク用ブリーザー。
【請求項3】
オイルタンクの内部に配置される下半部と、オイルタンクの外部に配置される上半部とからなるオイルタンク用ブリーザーを製造する方法であって、
下半部の下面から上半部の中間高さ位置まで穿孔を行って、吸気用バルブの弁座として機能する段部を有する吸気用通路を形成し、及び、上半部の上面から下半部の下面まで貫通するように穿孔を行って、排気用バルブの弁座として機能する段部を有する排気用通路を形成し、
上半部の外周面から斜め上方へ向かって、まず排気用通路と連通し、次いで吸気用通路と連通するまで穿孔を行って、上側通路を形成し、及び、下半部の外周面から吸気用通路に達するまで穿孔を行って、下側通路を形成し、
吸気用通路内に下方側からボール弁とスプリングを挿入し、吸気用通路の下部を封止し、及び、排気用通路内に上方側からボール弁とスプリングを挿入し、排気用通路の上部を封止することを特徴とするオイルタンク用ブリーザーの製造方法。
【請求項4】
吸気用通路を形成した後、吸気用通路の下部の内周面にネジ溝を形成し、
吸気用通路内にボール弁とスプリングを挿入した後、吸気用通路の下部に止めネジを装着して封止することを特徴とする、請求項3に記載のオイルタンク用ブリーザーの製造方法。
【請求項5】
排気用通路を形成した後、排気用通路の上部の内周面にネジ溝を形成し、
排気用通路内にボール弁とスプリングを挿入した後、排気用通路の上部に止めネジを装着して封止することを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のオイルタンク用ブリーザーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤や舗装面の締め固め作業に用いられる振動ローラー等に搭載されるオイルタンク用のブリーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
路盤等の締め固め作業に用いられる振動ローラーにおいては、駆動方式として油圧を利用する方式(油圧駆動方式)が採用されることが多い。油圧駆動方式を採用した振動ローラーは、一般的に、原動機(内燃機関エンジン、電動モータ等)の駆動力を受けて稼働する油圧ポンプと、油圧ポンプに供給される作動油を貯留するオイルタンクと、前後のローラードラムをそれぞれ回転駆動させる二つの油圧走行モーターと、それらの間で作動油を循環させる油圧回路とを有しており、原動機の駆動力が、油圧ポンプから油圧回路を介して油圧走行モーターへ伝達されて、前後のローラードラムが回転駆動するように構成されている。
【0003】
作動油を貯留するオイルタンクの上部には、タンク内外の空気の圧力差を回避するために、ブリーザーと呼ばれる装置(空気通路を確保するための装置)が配置されている。
【0004】
図3は、従来の一般的なオイルタンク用のブリーザー31の内部構造を示す垂直断面図である。このブリーザー31は、上半部32と、上半部32よりも直径が小さい下半部33とによって構成されており、内部には、中心軸線に沿って垂直方向に延在する中央通路34と、上半部32の外周面に形成された外側開口部36と中央通路34とを連通させる上側通路37と、下半部33の外周面に形成された内側開口部38と中央通路34とを連通させる下側通路39とが形成されている。
【0005】
このブリーザー31は、オイルタンク40の上面部を貫通する穴に下半部33を差し込んで固定し、下半部33の内側開口部38がオイルタンク40の内部において開口するとともに、上半部32の外側開口部36がオイルタンク40の外部において開口した状態とすることにより、下側通路39、中央通路34、及び、上側通路37を介して、オイルタンク40内の空間と外部とを連通させることができ、タンク内外における空気の圧力差の発生を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示すような従来のオイルタンク用のブリーザー31は、オイルタンク40内の空間と外部とが常時連通しているため、振動ローラーの走行時、移送時、保管負圧時等において、オイルタンク40内のオイルが、ブリーザー31内部の通路(下側通路39、中央通路34、及び、上側通路37)を通過して、外部へ漏出したり、外部からオイルタンク40内へ水、その他の異物が侵入してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、オイルタンクからのオイルの漏出や、オイルタンク内への異物の侵入を好適に回避することができるオイルタンク用ブリーザー、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るオイルタンク用ブリーザーは、オイルタンクの内部に配置される下半部と、オイルタンクの外部に配置される上半部とからなり、上半部及び下半部の内部において、上半部側から下半部側まで直線状に延在するように形成された吸気用通路及び排気用通路と、上半部の外周面に形成された外側開口部と、下半部の表面に形成された吸気用開口部及び排気用開口部と、上半部内において、外側開口部と吸気用通路及び排気用通路とを連通させる上側通路と、下半部内において、吸気用開口部と吸気用通路とを連通させる下側通路と、を有し、弁座と、弁座よりも下方側に配置されたボール弁と、ボール弁を吸気用開口部側から外側開口部側へ向かって押し付けるスプリングとによって構成される吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、弁座と、弁座よりも上方側に配置されたボール弁と、ボール弁を外側開口部側から排気用開口部側へ向かって押し付けるスプリングとによって構成される排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴としている。
【0010】
尚、このオイルタンク用ブリーザーにおいては、吸気用開口部が、下半部の外周面に形成され、排気用開口部が、下半部の下面に形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るオイルタンク用ブリーザーの製造方法は、下半部の下面から上半部の中間高さ位置まで穿孔を行って、吸気用バルブの弁座として機能する段部を有する吸気用通路を形成し、及び、上半部の上面から下半部の下面まで貫通するように穿孔を行って、排気用バルブの弁座として機能する段部を有する排気用通路を形成し、上半部の外周面から斜め上方へ向かって、まず排気用通路と連通し、次いで吸気用通路と連通するまで穿孔を行って、上側通路を形成し、及び、下半部の外周面から吸気用通路に達するまで穿孔を行って、下側通路を形成し、吸気用通路内に下方側からボール弁とスプリングを挿入し、吸気用通路の下部を封止し、及び、排気用通路内に上方側からボール弁とスプリングを挿入し、排気用通路の上部を封止することを特徴としている。
【0012】
尚、このオイルタンク用ブリーザーの製造方法においては、吸気用通路を形成した後、吸気用通路の下部の内周面にネジ溝を形成し、吸気用通路内にボール弁とスプリングを挿入した後、吸気用通路の下部に止めネジを装着して封止することが好ましく、また、排気用通路を形成した後、排気用通路の上部の内周面にネジ溝を形成し、排気用通路内にボール弁とスプリングを挿入した後、排気用通路の上部に止めネジを装着して封止することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るオイルタンク用ブリーザーは、装着されたオイルタンクの内外で差圧が生じ、その大きさが既定値を超えた場合に、吸気用バルブ又は排気用バルブが開弁して、空気が流通するように構成され、それ以外の場合には、閉弁状態に維持されるため、オイルタンク内のオイルが、ブリーザー内部の通路を通過して、外部へ漏れ出したり、外部からオイルタンク内へ水、その他の異物が侵入してしまうという問題を好適に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係るオイルタンク用ブリーザーの製造方法によれば、上記のようなオイルタンク用ブリーザーを効率良く、簡単に製造することができ、また、二つのバルブ(吸気用バルブ及び排気用バルブ)を内蔵しているにも拘わらず、全体としてコンパクトな構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るブリーザー1の内部構造を示す垂直断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すブリーザー1の製造方法の説明図である。
【
図3】
図3は、従来の一般的なオイルタンク用のブリーザー31の内部構造を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に沿って本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るブリーザー1の内部構造を示す垂直断面図である。このブリーザー1は、上半部2と、下半部3とによって構成され、オイルタンク20の上面部を貫通する穴に下半部3を差し込んで固定し、下半部3がオイルタンク20の内部に位置し、上半部2がオイルタンク20の外部に位置する状態で使用される。
【0017】
ブリーザー1の内部には、垂直方向へ直線状に延在する二本の通路(吸気用通路4、及び、排気用通路5)が、上半部2側から下半部3側まで延在するように形成されている。また、上半部2の外周面には外側開口部6が形成され、下半部3の表面には、二つの内側開口部(吸気用開口部8、及び、排気用開口部10)が形成されている。尚、吸気用開口部8は、下半部3の外周面に形成され、排気用開口部10は、下半部3の下面(底面)に形成されている。
【0018】
外側開口部6は、上半部2内に形成された上側通路7を介して吸気用通路4、及び、排気用通路5と連通しており、吸気用開口部8は、下半部3内に形成された下側通路9を介して吸気用通路4と連通している。排気用開口部10は、排気用通路5の下端において開口している。
【0019】
吸気用通路4内には、吸気用バルブ11が配置されている。この吸気用バルブ11は、
図1に示すように、ボール弁12(弁体)と、弁座13と、ボール弁12を弁座13に向かって付勢するスプリング14とによって構成されている。
【0020】
吸気用通路4内において、ボール弁12は、弁座13よりも下方側(下側通路9側)に配置され、弁座13は、ボール弁12よりも上方側(外側開口部6側)に配置されている。従って、吸気用バルブ11は、ボール弁12が、スプリング14によって吸気用開口部8側から外側開口部6側へ向かって押し付けられて閉弁するように構成されている。
【0021】
吸気用バルブ11は、オイルタンク20内が負圧となり、オイルタンク20の内側と外側の差圧によってボール弁12に作用する圧力が、設定された開弁圧を超えた場合に開弁し、外側の空気が、外側開口部6から、上側通路7、吸気用通路4、及び、下側通路9を通って、オイルタンク20の内側へ流入することになる。
【0022】
排気用通路5内には、排気用バルブ15が配置されている。この排気用バルブ15は、
図1に示すように、ボール弁16(弁体)と、弁座17と、ボール弁16を弁座17に向かって付勢するスプリング18とによって構成されている。
【0023】
排気用通路5内において、ボール弁16は、弁座17よりも上方側(外側開口部6側)に配置され、弁座17は、ボール弁16よりも下方側(排気用開口部10側)に配置されている。従って、排気用バルブ15は、ボール弁16が、スプリング18によって外側開口部6側から排気用開口部10側へ向かって押し付けられて閉弁するように構成されている。
【0024】
排気用バルブ15は、オイルタンク20内が正圧となり、オイルタンク20の内側と外側の差圧によってボール弁16に作用する圧力が、設定された開弁圧を超えた場合に開弁して、オイルタンク20の内側の空気が、排気用開口部10から、排気用通路5、上側通路7を通って、オイルタンク20の外側へ流出することになる。
【0025】
以上に説明したように、
図1に示すブリーザー1は、装着されたオイルタンク20の内外で差圧が生じ、その大きさが既定値を超えた場合に、吸気用バルブ11又は排気用バルブ15が開弁して、空気が流通するように構成され、それ以外の場合には、閉弁状態に維持されるため、オイルタンク20内のオイルが、ブリーザー1内部の通路(下側通路9、吸気用通路4、排気用通路5、及び、上側通路7)を通過して、外部へ漏れ出したり、外部からオイルタンク20内へ水、その他の異物が侵入してしまうという問題を好適に回避することができる。
【0026】
図2は、
図1に示すブリーザー1の製造方法の説明図である。まず、
図2(1)に示すように、上半部2及び下半部3の内部に、垂直方向に延在する吸気用通路4、及び、排気用通路5を形成する。
【0027】
吸気用通路4は、下半部3の下面から上半部2の中間高さ位置まで(上半部2の上面まで貫通しないように)、穿孔を行って形成する。このとき、径が異なる2種類のドリルを順番に使用することにより、吸気用通路4内に段部(弁座13)を形成する。また、吸気用通路4の下部(下半部3の下面から所定の高さ位置までの部位)の内周面にネジ溝21を形成する。
【0028】
排気用通路5は、上半部2の上面から下半部3の下面まで貫通するように、穿孔を行って形成する。このとき、径が異なる2種類のドリルを順番に使用することにより、排気用通路5内に段部(弁座17)を形成する。また、排気用通路5の上部(上半部2の上面から所定の深さ位置までの部位)の内周面にネジ溝22を形成する。
【0029】
次に、
図2(2)に示すように、上側通路7、及び、下側通路9を形成する。上側通路7は、上半部2の外周面から、斜め上方へ向かって穿孔を行って形成する。このとき、上側通路7が、まず排気用通路5と連通(交差)し、次いで吸気用通路4と連通するように穿孔を行う。つまり、上半部2の外周面のうち、排気用通路5に近い部位から穿孔を開始し、斜め上方であって、排気用通路5と交差し、かつ、吸気用通路4と交差する方向へ向かって穿孔を行って、上側通路7を形成する。一方、下側通路9は、下半部3の外周面から吸気用通路4に達するまで穿孔を行って形成する。
【0030】
このようにして、上半部2及び下半部3の内部に通路(吸気用通路4、排気用通路5、上側通路7、及び、下側通路9)を形成したら、吸気用通路4内に、下方側からボール弁12とスプリング14(
図1参照)を挿入し、吸気用通路4の下部(ネジ溝21を形成した部位)に、六角穴付き止めネジ(
図1参照)を装着して封止する。また、これと同様に、排気用通路5内に、上方側からボール弁16とスプリング18(
図1参照)を挿入し、排気用通路5の上部(ネジ溝22を形成した部位)に、六角穴付き止めネジ(
図1参照)を装着して封止する。
【0031】
このような方法を実施することにより、
図1に示すようなオイルタンク用ブリーザーを、効率良く、簡単に製造することができる。また、二つのバルブ(吸気用バルブ11及び排気用バルブ15)を内蔵しているにも拘わらず、全体としてコンパクトな構成を実現することができる。更に、上側通路7を、上半部2の外周面から、斜め上方へ向かって穿孔を行って形成することにより、上側通路7内、及び、オイルタンク20内への水(その他の異物)の侵入を好適に回避することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:ブリーザー、
2:上半部、
3:下半部、
4:吸気用通路、
5:排気用通路、
6:外側開口部、
7:上側通路、
8:吸気用開口部、
9:下側通路、
10:排気用開口部、
11:吸気用バルブ、
12:ボール弁、
13:弁座、
14:スプリング、
15:排気用バルブ、
16:ボール弁、
17:弁座、
18:スプリング、
20:オイルタンク、
21,22:ネジ溝、
31:ブリーザー、
32:上半部、
33:下半部、
34:中央通路、
36:外側開口部、
37:上側通路、
38:内側開口部、
39:下側通路、
40:オイルタンク、