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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067094
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】飲食用液体製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240510BHJP
【FI】
A23L27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176926
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】507024183
【氏名又は名称】Sマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】塩貝 淳二
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LG65
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】本発明は、大量の飲食用液体を効率的に製造することが可能な飲食用液体製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】粉末状原料Fが収容されるとともに、複数の細孔を有するフィルタ21が底部21aに設けられた上側容器21と、上側容器21に収容された粉末状原料に対して熱湯を噴射する熱湯噴射部14と、上側容器21の底部21aの裏側に設けられ、上側容器21の底部21aからフィルタ211を介して流れ落ちた飲食用液体を貯留する下側容器22と、下側容器22内に貯留された飲食用液体の吐出または停止を行うための吐出弁32とを備える。上側容器21は、底部21aに立設された区隔壁214によって、粉末状原料Fが収容される第1の区画部K1と、粉末状原料Fが収容されない第2の区画部K2とに区画され、第1の区画部K1と第2の区画部K2が互いに上方で連通している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状原料に熱湯を噴射して、粉末状原料と熱湯が混合した飲食用液体を製造する飲食用液体製造装置であって、
粉末状原料が収容されるとともに、複数の細孔を有するフィルタが底部に設けられた上側容器と、
前記上側容器に収容された粉末状原料に対して熱湯を噴射する熱湯噴射部と、
前記上側容器の底部の裏側に設けられ、該上側容器の底部からフィルタを介して流れ落ちた飲食用液体を貯留する下側容器と、
前記下側容器内に貯留された飲食用液体の吐出または停止を行うための吐出弁とを備え、
前記上側容器は、底部に設けられた区隔壁によって、粉末状原料が収容される第1の区画部と、粉末状原料が収容されない第2の区画部とに区画され、前記第1の区画部と前記第2の区画部が互いに連通していることを特徴とする飲食用液体製造装置。
【請求項2】
前記第2の区画部は、筒状の前記区隔壁の内側に構成される請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項3】
前記第2の区画部は、前記区隔壁により前記上側容器の高さの20%~50%の高さとなるように構成される請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項4】
前記第2の区画部は、前記区隔壁により前記第1の区画部の開口面積の10%~30%の開口面積となるように構成される請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項5】
前記第2の区画部は、該第2の区画部の上方を覆うための閉蓋部材が着脱可能に設けられる請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項6】
前記第2の区画部は、前記上側容器の底部に立設された下側区隔壁と、該下側区隔壁に着脱可能に接続される上側区隔壁とにより構成される請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項7】
前記第2の区画部は、側面に複数の細孔を有する前記区隔壁により構成される請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【請求項8】
前記第1の区画部は、前記熱湯噴射部の直下に配置されている請求項1に記載の飲食用液体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ダシ液体などの飲食用液体を効率的に製造するため飲食用液体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンビニエンスストアや飲食店等において、和食全般に使用されるダシ液体などの飲食用液体を製造する装置がバックヤード等に設置されている。この装置は、容器内にかつお等の粉末状原料を収容した上で、該粉末状原料に対して熱湯を噴射して混合することによりダシ液体を生成したあと、該ダシ液体を容器底部のフィルタに通過させて濾し出す。このように粉末状原料を包装パックに入れることなく、熱湯と直接混合することにより風味豊かなダシ液体を製造することができる。
【0003】
ところが、粉末状原料と熱湯を混合したダシ液体をフィルタに通過させて濾し出す場合、粉末状原料の種類によっては、その油分や熱湯の中で膨張した粉末状原料が容器の底部においてペースト状に沈殿し、十分な量のダシ液体を濾し出すことが困難であったり、仮に濾し出せたとしても非常に時間がかかる場合があった。
【0004】
そこで、本出願人は、粉末状原料が収容されるとともに、複数の細孔が穿設されたフィルタが底部に設けられた上側容器(第1の容器)と、上側容器内に収容された粉末状原料に熱湯を噴射する熱湯噴射部と、上側容器の底部の裏側に設けられた下側容器(第2の容器)と、下側容器内の飲食用液体の吐出または停止を行うための吐出弁とを備える飲食用液体製造装置を提案していた(特許文献1参照)。これによれば、吐出弁の切替による下側容器内の空気層の圧力低下に伴って、上側容器内の飲食用液体が底部からフィルタを介して下側容器に吸引されながら流れ落ちたあと、吐出弁を通じて装置外に取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-178300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば4~5リットル程度の比較的少量の飲食用液体を製造する場合には特許文献1に記載の従来の飲食用液体製造装置でも十分対応可能であるが、例えば10リットル程度の大量の飲食用液体を製造する場合には従来の飲食用液体製造装置では対応できない場合があった。
【0007】
具体的に説明すると、特許文献1に記載のような上側容器と下側容器からなる飲食用液体装置では、上側容器内の粉末状原料に対して熱湯を噴射して、上側容器内の飲食用液体を下側容器に吸引したあと、吐出弁を介して装置外に取り出すことを行うが、依然として粉末状原料が上側容器の底部においてペースト状に沈殿した状態となる。このため、上側容器内の粉末状原料に噴射する熱湯の供給量に対して、上側容器から下側容器に吸引される飲食用液体の吸引量が少なくなるため、大量の飲食用液体を製造するために装置を所定時間以上に亘って使用すると、上側容器から飲食用液体が溢れる虞があるという問題があった。もとより、上側容器内の粉末状原料に対して噴射する熱湯の供給量を少なくすれば、上側容器から液体が溢れることを防止できるかもしれないが、それだと飲食用液体を製造するのに長時間を要することから、大量の飲食用液体を効率的に製造することができなくなるという問題が新たに生じる。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、装置を所定時間以上に亘って使用した場合でも上側容器から飲食用液体が溢れることを防止することができ、ひいては大量の飲食用液体を効率的に製造することが可能な飲食用液体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、粉末状原料に熱湯を噴射して、粉末状原料と熱湯が混合した飲食用液体を製造する飲食用液体製造装置であって、粉末状原料が収容されるとともに、複数の細孔を有するフィルタが底部に設けられた上側容器と、前記上側容器に収容された粉末状原料に対して熱湯を噴射する熱湯噴射部と、前記上側容器の底部の裏側に設けられ、該上側容器の底部からフィルタを介して流れ落ちた飲食用液体を貯留する下側容器と、前記下側容器内に貯留された飲食用液体の吐出または停止を行うための吐出弁とを備え、前記上側容器は、底部に設けられた区隔壁によって、粉末状原料が収容される第1の区画部と、粉末状原料が収容されない第2の区画部とに区画され、前記第1の区画部と前記第2の区画部が互いに連通していることを特徴とする。
【0010】
これによれば、上側容器に収容された粉末状原料に対して熱湯を噴射すると、第1の区画部では粉末状原料がペースト状に沈殿した状態になる一方、第2の区画部では粉末状原料が沈殿しない状態になる。このため、上側容器内で粉末状原料と熱湯が混合した飲食用液体は、上側容器の底部からフィルタを介して下側容器に流れ落ちる際、粉末状原料がペースト状に沈殿した第1の区画部のほか、粉末状原料が存在していない第2の区画部からも下側容器内に流れ落ちるため、上側容器の粉末状原料に熱湯を所定時間以上に亘って噴射した場合でも、上側容器から飲食用液体が溢れることを防止することができ、大量の飲食用液体を効率的に製造することが可能となる。
【0011】
また、前記第2の区画部は、筒状の前記区隔壁の内側に構成されてもよい。これによれば、簡易な構成にして所望の大きさの第2の区画部を構成することができる。
【0012】
また、前記第2の区画部は、前記区隔壁により前記上側容器の高さの20%~50%の高さとなるように構成されてもよい。これによれば、第2の区画部が上側容器の高さの20%以上の高さに形成されているため、粉末状原料を上側容器の第1の区画部に収容する際、粉末状原料が第2の区画部に誤って侵入することを防止することができる。また、第2の区画部が上側容器の高さの50%以下の高さに形成されているため、上側容器内で粉末状原料と熱湯が混合した飲食用液体が第2の区画部内に上方から速やかに流入することができる。
【0013】
また、前記第2の区画部は、前記区隔壁により前記第1の区画部の開口面積の10%~30%の開口面積となるように構成されてもよい。これによれば、第2の区画部の開口面積が第1の区画部の開口面積10%以上に形成されているため、上側容器内の飲食用液体の一部は第2の区画部内に流入したあと、上側容器の底部から下側容器にスムーズに流れ落ちることができる。また、第2の区画部の開口面積が第1の区画部の開口面積の30%以下に形成されているため、上側容器内の飲食用液体の大部分は第1の区画部における上側容器の底部からペースト状の粉末状原料を通過しながら下側容器に流れ落ちることができ、飲食用液体を所定の濃度に維持することが可能となる。
【0014】
また、前記第2の区画部は、該第2の区画部の上方を覆うための閉蓋部材が着脱可能に設けられてもよい。これによれば、粉末状原料を上側容器に収容する際、第2の区画部の上方を閉蓋部材で覆うことによって、粉末状原料が第2の区画部に誤って侵入することを防止することができる。また、熱湯噴射部により粉末状原料に対して熱湯を噴射する際、第2の区画部に設けられた閉蓋部材を取り外すことによって、上側容器内で粉末材料と熱湯が混合した飲食用液体が第2の区画部内に上方から流入することができる。
【0015】
また、前記第2の区画部は、前記上側容器の底部に立設された下側区隔壁と、該下側区隔壁に着脱可能に接続される上側区隔壁とにより構成されてもよい。これによれば、粉末状原料が少ない場合、下側区隔壁から上側区隔壁を取り外した状態で粉末状原料を第1の区画部に収容する一方、粉末状原料が多い場合、下側区隔壁に上側区隔壁を接続した状態で粉末状原料を第1の区画部に収容し得るため、粉末状原料の分量に応じて区隔壁全体の高さを切り替えることが可能となる。
【0016】
また、前記第2の区画部は、側面に複数の細孔を有する前記区隔壁により構成されてもよい。これによれば、上側容器内の飲食液体中に浮遊する微粉化した粉末状原料が第2の区画部内に侵入することを防止しつつ、上側容器内の飲食用液体が区隔壁の複数の細孔を通過して速やかに第2の区画部に流入することができる。
【0017】
また、前記第1の区画部は、前記熱湯噴射部の直下に配置されてもよい。これによれば、第1の区画部に収容されている粉末状原料に対して熱湯が直接噴射されるため、上側容器内において粉末状原料と熱湯を速やかに混合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上側容器に収容された粉末状原料に対して熱湯を噴射すると、第1の区画部では粉末状原料がペースト状に沈殿した状態になる一方、第2の区画部では粉末状原料が沈殿しない状態になる。このため、上側容器内で粉末状原料と熱湯が混合した飲食用液体は、上側容器の底部からフィルタを介して下側容器に流れ落ちる際、粉末状原料がペースト状に沈殿した第1の区画部のほか、粉末状原料が存在していない第2の区画部からも下側容器内に流れ落ちるため、上側容器の粉末状原料に熱湯を所定時間以上に亘って噴射した場合でも、上側容器から飲食用液体が溢れることを防止することができ、大量の飲食用液体を効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る飲食用液体製造装置の外観斜視図である。
図2図1の飲食用液体製造装置の構成概略図である。
図3】上側容器および下側容器の側方断面図である。
図4】上側容器および下側容器の分解斜視図である。
図5図1の飲食用液体製造装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】ダシ液体を作り出す工程を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る飲食用液体製造装置の上側容器および下側容器の側方断面図である。
図8】第3の実施形態に係る飲食用液体製造装置の上側容器および下側容器の側方断面図である。
図9】第4の実施形態に係る飲食用液体製造装置の区隔壁を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る飲食用液体製造装置(以下、本装置という)の第1の実施形態について図1図6を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、飲食用液体はコンビニエンスストアや飲食店等において和食全般に使用されるダシ液体である。
【0021】
本装置は、図1および図2に示すように、熱湯を供給する給湯部1と、給湯部1により供給される熱湯とかつお等の粉末状原料Fを混合してダシ液体を生成する混合部2と、混合部2で生成したダシ液体を吐出する吐出部3と、ユーザにより操作される操作パネル4と、各部を制御する制御部5を備え、それら各部がステンレス製の基台6に設けられている。
【0022】
前記給湯部1は、図2に示すように、熱湯を貯留するタンク部11と、該タンク部11に設けられた給湯弁12と、該給湯弁12に連接された略L字状の給湯管13と、混合部2に熱湯を噴射する熱湯噴射部14とを備える。
【0023】
前記タンク部11は、ステンレス製の直方体状のタンク部本体11aと、給水チューブ11bを介してタンク部本体11aに水を供給するポンプ部11cと、タンク部本体11a内の水を加熱するためのヒータ11dと、給水制御用のフロートセンサ11eを備え、フロートセンサ11eの検出に基づいて、制御部5の命令に応じてポンプ部11cの作用により水道水やポリタンク内の水を給水チューブ11bを介してタンク部本体11aに供給して、ヒータ11dによりタンク部本体11a内の水を加熱して熱湯にする。
【0024】
なお、11fは、タンク部本体11aの下部に設けられた排水コックであり、該排水コック11fを開くことによりタンク部本体11a内の熱湯を外部に排出する。また、11gは、タンク部本体11aの上部に設けられたオーバーフロー用の排出チューブである。
【0025】
前記給湯弁12は、タンク部11内の熱湯を給湯管13を介して混合部2に供給するための電磁弁であって、制御部5の命令に応じて開状態になった場合、タンク部11内の熱湯を混合部2に供給する一方、制御部5の命令に応じて閉状態となった場合、熱湯の供給を停止する。
【0026】
前記熱湯噴射部14は、後述する上側容器21の上方中央部に配置され、制御部5の命令に応じて上側容器21内に収容された粉末状原料Fに対して、タンク部11から送られてきた熱湯を所定角度で均一に噴射する。
【0027】
なお、基台6にステンレス板15が固定されており、該ステンレス板15に熱湯噴射部14が固定されるとともに、該ステンレス板15により上側容器21の上部開口が閉蓋される。
【0028】
前記混合部2は、図2に示すように、かつお等の粉末状原料Fを収容する上側容器21と、上側容器21の底部21aの裏側に設けられた下側容器22とを備え、基台6に着脱可能に設けられている。
【0029】
前記上側容器21は、図3および図4に示すように、平面視円形状の底部21aと、該底部21aの周縁部から上方に立設された側面部21bとからなる上部開口の合成樹脂製の半透明容器であり、内部にかつお等の粉末状原料Fが収容される。なお、本実施形態では、上側容器21は4リットルの容量を有する。
【0030】
また、前記上側容器21は、底部21aの中央部に後述の吐出部材23が貫通する貫通孔21cが穿設されるとともに、該貫通孔21cの周囲にはダシ液体を通すための6個の通過孔21dが周方向に沿って穿設されている。
【0031】
また、前記上側容器21は、底部21aにおいて、下から順に支承板211、フィルタ212、および押さえ板213が設けられている。
【0032】
前記支承板211は、中央部に後述の吐出部材23を貫通するための貫通孔211aが穿設されるとともに、該貫通孔211aの周囲にダシ液体を通すための複数の通過孔211bが穿設されており、フィルタ212を通過してきたダシ液体が通過孔211bを下方に通過する。この支承板211により上側容器21の底部21aにおいてフィルタ212を安定良く支承することができる。なお、支承板211と上側容器21の底部21aの間にはダシ液体漏れを防止するためのゴムパッキン215が設けられている。
【0033】
前記フィルタ212は、中央部に後述の吐出部材23を貫通するための貫通孔212aが穿設されるとともに、多数の細孔を有するメッシュ状に形成されている。このフィルタ212の細孔の大きさは、粉末状原料Fは通過しないがダシ液体は通過する程度の大きさ、例えば80ミクロンから100ミクロンが好ましい。
【0034】
前記押さえ板213は、中央部に後述の吐出部材23を貫通するための貫通孔213aが穿設されるともに、該貫通孔213aの周囲にダシ液体を通すための3個の略扇状の第1の通過口213bと1個の円形状の第2の通過口213cが穿設されており、上側容器21内のダシ液体が通過口213b、213cを下方に通過する。
【0035】
また、前記上側容器21は、底部21aにおいて円筒状の区隔壁214が設けられており、区隔壁214の外側に配置され、かつ粉末状原料Fが収容される第1の区画部K1と、区隔壁214の内側に配置され、かつ粉末状原料Fが収容されない第2の区画部K2とに区画されている。
【0036】
この前記区隔壁214は、押さえ板213の第2の通過口213cの周縁部に立設されており、上端部に第2の区画部K2の流入口214aが形成されるとともに、区隔壁214の下端部に第2の区画部K2の流出口214bが形成され、軸方向に貫通した状態に形成されている。
【0037】
而して、上側容器21は、粉末状原料Fが収容される第1の区画部K1と、粉末状原料Fが収容される第2の区画部K2による2つの区画領域において、底部21aにおける押さえ板213、フィルタ212および支承板211を介して下側容器22の内部と連通した状態となる。
【0038】
このため、上側容器21内の粉末状原料Fと熱湯が混合したダシ液体の大部分は、後述するように下側容器22内の空気層の圧力低下に伴って、第1の区画部K1におけるペースト状に沈殿した粉末状原料を通過したあと、押さえ板213の第1の通過口213b、フィルタ212の細孔、支承板211の通過孔211b、底部21aの通過孔21dの順に通過し、下側容器2内に吸引されながら流れ落ちる。
【0039】
また、上側容器21内の粉末状原料Fと熱湯が混合したダシ液体の一部は、後述するように下側容器22内の空気層の圧力低下に伴って、区画壁214の流入口214aから第2の区画部K2内に流入したあと、区隔壁214の流出口214bから押さえ板213の通過口213c、フィルタ212の細孔、支承板211の通過孔211b、底部21aの通過孔21dの順に通過し、下側容器22内に吸引されながら流れ落ちる。
【0040】
なお、前記区隔壁214は、熱湯噴射部14が位置する上側容器21の中央部から径方向に偏心した位置に配置されている。これにより、前記第1の区画部K1は、熱湯噴射部14の直下に配置されるため、第1の区画部K1に収容されている粉末状原料Fに対して熱湯が直接噴射され、上側容器21内において粉末状原料Fと熱湯を速やかに混合することができる。
【0041】
前記下側容器22は、図3および図4に示すように、上側容器21より容量が小さい上部開口の合成樹脂製の半透明容器であって、平面視円形状の底部22aと、該底部22aの周縁部から上方に立設された側面部22bとからなる。
【0042】
また、前記下側容器22は、上側容器21の底部21aにより上部開口を閉蓋する態様で上側容器21の底部21aの裏側に設けられ、上側容器21から流れ落ちてきたダシ液体を受けて一時的に貯留するものとなされている。
【0043】
また、前記下側容器22は、底部22aの中央部に貫通孔22cが穿設されており、該貫通孔22cに吐出部材23が貫通状態で固定されている。
【0044】
前記吐出部材23は、上部のボルト部23aが上側容器21における各貫通孔21c、211a、212a、213aを貫通した状態でナット部材23bに螺着され、これにより上側容器21と下側容器22が密着状態で固定される。
【0045】
また、前記吐出部材23は、下部の胴体部23cがボルト部23aよりも径大の円柱状に形成され、胴体部23cの側面に吐出弁32に連通する4個の吐出口23dが穿設されている。これにより制御部5の命令により吐出弁32が開状態になると、下側容器22内に貯留するダシ液体が各吐出口23dに流入したあと、後述の吐出管31、吐出弁32および吐出チューブ33を通じて装置外の寸胴容器等に吐出される。
【0046】
なお、下側容器22の裏側には、ステンレス製の取手24が設けられており、取手24を把持しながら上側容器21と下側容器22を基台6に一体的に着脱するものとなされている。
【0047】
前記吐出部3は、一端を下側容器22の吐出部材23に接続された吐出管31と、該吐出管31の他端に設けられた吐出弁32と、該吐出弁32の下部に設けられた吐出チューブ33とを備える。
【0048】
前記吐出弁32は、下側容器22に一時的に貯留されたダシ液体を装置外に吐出するための電磁弁であって、制御部5の命令により開状態になった場合、下側容器22に一時的に貯留したダシ液体を吐出管31および吐出チューブ33を介して吐出する一方、制御部5の命令により閉状態になった場合、当該ダシ液体の吐出を停止する。
【0049】
前記操作パネル4は、基台6の前面に設けられ、熱湯の供給温度を表示する温度表示部41と、熱湯の供給時間を表示する時間表示部42と、装置の電源を入れたり切ったりするための電源ボタン43と、ダシ液体の製造の運転を開始や停止などを行う運転ボタン44と、熱湯の供給温度、供給時間、供給タイミングなどの設定を行う設定ボタン45とを備える。
【0050】
前記制御部5は、図5に示すように、操作パネル4による各種操作により、ポンプ部11c、ヒータ11d、給湯弁12、熱湯噴射部14、吐出弁32の各部を制御する。例えば、制御部5は、操作パネル4において熱湯の供給温度、供給時間、供給タイミングが設定された場合、該設定に応じてポンプ部11c、ヒータ11d、給湯弁12、熱湯噴射部14、吐出弁32の各部を制御する。
【0051】
次に本装置の動作について図6を参照しつつ説明する。なお、本装置の動作の前段階として、装置における給湯弁14および吐出弁32は閉じた状態になっている。
【0052】
まず、図6(a)に示すように、上側容器21および下側容器22を基台6から一体的に取り外し、上側容器21の内部に粉末状原料Fを落とし入れながら収容したあと、上側容器21および下側容器22を基台6に一体的に再び取り付ける。このとき、上側容器21の区隔壁214の内側に位置する第2の区画部K2に粉末状原料Fが入り込まないように注意しながら、上側容器21の区隔壁214の外側に位置する第1の区画部K1のみに粉末状原料Fを収容する。
【0053】
次に、図6(b)に示すように、操作パネル4によりあらかじめ設定されたプログラムに応じて、熱湯噴射部14が上側容器21の第1の区画部K1に収容された粉末状原料Fに対して熱湯の噴射を開始したあと、熱湯が所定量に到達するまで熱湯の噴射を所定時間継続し、上側容器21の内部において粉末状原料Fと熱湯を混合させてダシ液体を生成する。
【0054】
このとき、上側容器21は、第1の区画部K1に粉末状原料Fがペースト状に沈殿した状態となる一方、第2の区画部K2に粉末状原料Fが沈殿しない状態となっている。
【0055】
また、下側容器22は、上側が上側容器21のダシ液体で閉蓋され、かつ下側が吐出弁32により閉じられていることにより内部が密閉状態になっている上、上側容器21内のダシ液体により内部の空気層の温度が上昇して、大気圧に比べて圧力が高い状態となるため、上側容器21内のダシ液体は下側容器22に流れる落ちない。
【0056】
次に、図6(c)に示すように、熱湯噴射部14が熱湯の噴射を継続するとともに、吐出弁32が所定の時間およびタイミング(例えば、10秒開いたあと、5秒閉じる)で開閉すると、上側容器21内のダシ液体が底部21aから下側容器22に流れ落ちる。
【0057】
具体的には、吐出弁32が開いた状態になった場合、下側容器22の内部の空気層が高い圧力から大気圧へと圧力が一気に低下するため、下側容器22の内部の空気層の圧力低下に伴って、上側容器21内のダシ液体が上側容器21の底部21aから下側容器内に吸引されながら流れ落ちる。
【0058】
このとき、上側容器21内のダシ液体の大部分は、下側容器22の内部の空気層の圧力低下に伴って、第1の区画部K1におけるペースト状に沈殿した粉末状原料Fを通過したあと、押さえ板213の第1の通過口213b、フィルタ212の細孔、支承板211の通過孔211b、底部21aの通過孔21dの順に通過し、下側容器2内に吸引されながら流れ落ちる。
【0059】
また、上側容器21内の粉末状原料Fと熱湯が混合したダシ液体の一部は、下側容器22の内部の空気層の圧力低下に伴って、区画壁214の流入口214aから第2の区画部K2内に流入したあと、区隔壁214bの流出口214bから押さえ板213の通過口213c、フィルタ212の細孔、支承板211の通過孔211b、底部21aの通過孔21dの順に通過し、下側容器22内に吸引されながら流れ落ちる。
【0060】
そして、下側容器22に一時的に貯留されたダシ液体は、吐出部材23、吐出管31、吐出弁32および吐出チューブ33を通じて装置外の寸胴容器等に間欠的に吐出される。
【0061】
次に、図6(d)に示すように、熱湯噴射部14が熱湯の噴射を停止する一方、吐出弁32が上記の開閉動作の継続すると、上側容器21内の残りのダシ液体は、上述と同様にして上側容器21の第1の区画部K1および第2の区画部K2から下側容器22内に吸引されながら流れ落ちたあと、下側容器22内から吐出部材23、吐出管31、吐出弁32および吐出チューブ33を通じて装置外の寸胴容器等に吐出される。
【0062】
而して、上側容器21内のダシ液体は、上述のように粉末状原料Fがペースト状に沈殿した第1の区画部K1のほか、粉末状原料Fが存在していない第2の区画部K2からも下側容器22内に吸引されながら流れ落ちる。このため、上側容器21内の粉末状原料に噴射する熱湯の供給量に対して、上側容器21から下側容器22に吸引されるダシ液体の吸引量が同程度以上になるため、上側容器21の粉末状原料Fに熱湯を所定時間以上に亘って噴射した場合でも、上側容器21からダシ液体が溢れることを防止することができ、大量のダシ液体を効率的に製造することが可能となる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、本装置の第2の実施形態について図7を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0064】
本実施形態では、前記第2の区画部K2は、第1の区画部K1の上方を覆うための閉蓋部材216が区隔壁214に着脱可能に設けられている。
【0065】
これによれば、粉末状原料Fを上側容器21に収容する際、第2の区画部K2の上方を閉蓋部材216で覆うことによって、粉末状原料Fが第2の区画部K2に誤って侵入することを防止することができる。また、熱湯噴射部14により粉末状原料Fに対して熱湯を噴射する際、第2の区画部K2に設けられた閉蓋部材216を取り外すことによって、上側容器21内で粉末状材料Fと熱湯が混合したダシ液体が第2の区画部K2内の上方の流入口214aから内側に流入することができる。
【0066】
<第3の実施形態>
次に、本装置の第3の実施形態について図8を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態では、前記第2の区画部K2は、上側容器21の底部21aに立設された短尺の下側区隔壁214と、該下側区隔壁214に着脱可能に接続される長尺の上側区隔壁217とにより構成される。なお、本実施形態では、上側区隔壁217は、下側区隔壁214の外側に嵌合することにより接続される。
【0068】
これによれば、粉末状原料Fが少ない場合、下側区隔壁214から上側区隔壁217を取り外した状態で粉末状原料Fを第1の区画部K1に収容する一方、粉末状原料Fが多い場合、下側区隔壁214に上側区隔壁217を接続した状態で粉末状原料Fを第1の区画部K1に収容することができ、粉末状原料Fの分量に応じて区隔壁全体の高さを切り替えることが可能となる。
【0069】
<第4の実施形態>
次に、本装置の第4の実施形態について図9を参照しつつ説明する。
本実施形態では、前記第2の区画部K2は、側面に複数の細孔を有するメッシュ状の区隔壁214’により構成される。この区隔壁214’の細孔の大きさは、上側容器21内でダシ液体中に浮遊する微粉化した粉末状原料Fは通過しないがダシ液体は通過する程度の大きさ、例えば40ミクロンから50ミクロンが好ましい。これによれば、上側容器21内のダシ液体中に浮遊する微粉化した粉末状原料Fが第2の区画部K2内に侵入することを防止しつつ、上側容器21内のダシ液体が区隔壁214’の複数の細孔を通過して速やかに第2の区画部K2内に流入することができる。
【0070】
また、区隔壁214’を上側容器21と同程度の高さとした場合や、区隔壁214’の上端面を閉蓋状態にした場合(上端面も複数の細孔を有するメッシュ状に形成した場合も含む)、上側容器21内に溜まるダシ液体の量に関わらず、ダシ液体は区隔壁214’の細孔から第2の区画部K2内に流入することができる。また、上側容器21の第1の区画部K1に粉末状原料Fを投入する際、第2の区画部K2に粉末状原料Fが入らないように確実にカバーする効果もある。
【0071】
なお、区隔壁214’は、第1の実施形態または第2の実施形態の区隔壁214のように上側容器21の底部21a(押さえ板213)に直接設けるものとしてもよいし、第3の実施形態の上側区隔壁217のように下側区隔壁214に接続してもよい。
【0072】
なお、以上の各実施形態において、前記第2の区画部K2は、区隔壁214により上側容器21の高さ(上端部から底部21aの上面までの高さ)の20%~50%の高さとなるように構成されるのが好ましい。これによれば、第2の区画部K2が上側容器21の高さの20%以上の高さに形成されているため、粉末状原料Fを上側容器21の第1の区画部K1に収容する際、粉末状原料Fが第2の区画部K2に誤って侵入することを防止することができる。また、第2の区画部K2が上側容器21の高さの50%以下の高さに形成されているため、上側容器21内で粉末状原料Fと熱湯が混合した飲食用液体が第2の区画部K2内に上方から速やかに流入することができる。
【0073】
また、前記第2の区画部K2は、区隔壁214により第1の区画部K1の開口面積の10%~30%の開口面積となるように構成されるのが好ましい。これによれば、第2の区画部K2の開口面積が第1の区画部K1の開口面積10%以上に形成されているため、上側容器21内の飲食用液体の一部は第2の区画部K2から下側容器22にスムーズに流れ落ちることができる。また、第2の区画部K2の開口面積が第1の区画部K1の開口面積の30%以下に形成されているため、上側容器21内の飲食用液体の大部分は第1の区画部K1の底部21aからペースト状の粉末状原料Fを通過しながら下側容器22に流れ落ちるため、飲食用液体を所定の濃度に維持することが可能となる。
【0074】
また、前記第2の区画部K2は、区隔壁214の上端部に流入口214aが形成されるものとしたが、区隔壁214の上部側面に流入口が形成されてもよい。
【0075】
また、前記第2の区画部K2は、区隔壁214の流入口214aに網状部材が設けられてもよい。
【0076】
また、前記第2の区画部K2は、円筒状の区隔壁214の内側に構成されるものとしたが、その他の角筒状等のその他の形状の区隔壁の内側に構成されてもよいし、あるいは区隔壁と上側容器21の側面部21bからなる内側空間に構成されてもよい。要は区隔壁により上側容器21の内部が第1の区画部K1と第2の区画部K2に区画されるものであれば、区隔壁の形状や構造は特に限定されるものではない。
【0077】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・給湯部
11…タンク部
12…給湯弁
13…給湯管
14…熱湯噴射部
15…ステンレス板
2・・・混合部
21…上側容器
211…支承板
212…フィルタ
213…押さえ板
214…区隔壁
215…ゴムパッキン
22…下側容器
23…吐出部材
24…取手
3・・・吐出部
31…吐出管
32…吐出弁
33…吐出チューブ
4・・・操作パネル
5・・・制御部
F・・・粉末状原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9