(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067095
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】トンネル連絡坑の構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E21D9/06 301D
E21D9/06 301E
E21D9/06 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176927
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599111965
【氏名又は名称】株式会社アルファシビルエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】酒井 栄治
(72)【発明者】
【氏名】松元 文彦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 政隆
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA03
2D054AA04
2D054AC20
2D054AD28
2D054EA07
2D054EA09
(57)【要約】
【課題】掘進機が到達側のトンネルに貫通することなく、到達側のトンネル内部に影響を与えにくいとともに、作業効率の向上を図る。
【解決手段】鋼殻エレメント4は、先端に掘進機30が搭載され、後続するエレメントに対して中間ジャッキ31によって前方にスライド可能な先導エレメント32を備え、到達側トンネル3から所定距離だけ離隔した位置で掘進機30による掘進を完了する工程と、掘進機30を解体し鋼殻エレメント4内を通じて発進部2に回収する工程と、先導エレメント32の先端を到達側トンネル3の外面形状に沿うように切断する工程と、中間ジャッキ31を伸長して先導エレメント32を到達側トンネル3の外面に当接するまで押し出す工程と、元押しジャッキによって先導エレメント32に後続する鋼殻エレメント4を押し込む工程とを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、後続するエレメントに対して中間ジャッキによって前方にスライド可能な先導エレメントを備え、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記先導エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断する工程と、
前記中間ジャッキを伸長して前記先導エレメントを到達側のトンネルの外面に当接するまで押し出す工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法。
【請求項2】
発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記鋼殻エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断する工程と、
元押しジャッキによって前記鋼殻エレメントを到達側のトンネルの外面に当接するまで押し込む工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法。
【請求項3】
発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記鋼殻エレメントの先端から到達側のトンネルの外面までの間の土砂を掘削する工程と、
掘削した部分に土留め板を配置し、この土留め板を前記鋼殻エレメントに固定する工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進部から到達側のトンネルに向けて連絡坑を構築するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上り線と下り線のように2本のトンネルが並設される場合においてトンネル同士を連絡する連絡坑や、トンネル近傍に構築した立坑から該トンネルに延びる連絡坑などのように、発進部から到達側のトンネルに連絡坑を構築する方法として種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、トンネル掘進機を使用して、並設した既設トンネル間に複数の連絡トンネルを構築する、連絡トンネルの施工方法において、掘削径の調整可能なトンネル掘進機を使用し、一方の既設トンネル内に前記トンネル掘進機と推進ジャッキを配置し、推進ジャッキの推力を連結トンネルを介してトンネル掘進機に伝えながら、トンネル掘進機の発進側の既設トンネル内で連絡トンネルのトンネル躯体を接続して他方の既設トンネルへ向けて連絡トンネルを構築する方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、前縁部の複数箇所に切断ビットが突設されたカッタリングが設けられ、このカッタリングが前後方向に摺動自在に支持されており、既設トンネルに小径トンネル掘削用のシールド機が近づくと、このシールド掘進機の掘進を所定の位置で停止させた後、前記カッタリングを高速回転させながら低速で前方へ突出させることにより、前記カッタリングを既設トンネル側に押し付けて、既設トンネルの側壁部を掘削した後、シールド本体と既設トンネルとをカッタリングにより接続した状態とし、カッタリングやスキンプレートを残した状態でシールド掘進機を解体し撤去したのち、これらカッタリングやスキンプレートの内側にコンクリートを打設して連絡坑を構築する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-148296号公報
【特許文献2】特開2001-32678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に開示される構築方法では、到達側のトンネルに到達したら、そのまま到達側のトンネルの内部まで掘進して貫通させるようにしているが、到達側のトンネルが未だ施工中の場合や、既に運用中で長期間の交通規制が困難な場合などにおいては、到達側のトンネル内部に入れない(貫通できない)という問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1、2に開示される構築方法では、掘進機の大きさによって構築される連絡坑の断面の大きさが決まってしまい、大きな断面形状の連絡坑を構築したい場合には、大型の掘進機を使用しなければならず、掘進機の搬入搬出作業に手間が掛かるなど、作業効率が悪くなる問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、掘進機が到達側のトンネルに貫通することなく、到達側のトンネル内部に影響を与えにくいとともに、作業効率の向上を図ったトンネル連絡坑の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、後続するエレメントに対して中間ジャッキによって前方にスライド可能な先導エレメントを備え、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記先導エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断する工程と、
前記中間ジャッキを伸長して前記先導エレメントを到達側のトンネルの外面に当接するまで押し出す工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明は、トンネル連絡坑の構築方法の第1形態例である。第1形態例では、到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で掘進機による掘進を完了し、掘進機を解体し鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収した後、先導エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断し、中間ジャッキを伸長して前記先導エレメントを到達側のトンネルの外面に当接するまで押し出す。このように、本発明に係る構築方法では、掘進機によって到達側のトンネルを貫通するまで掘進するのではなく、到達側のトンネルの外面形状に沿うように先端を加工処理した上で、鋼殻エレメントを到達側のトンネルの外面に当接させているため、到達側のトンネルに入れない(貫通できない)という条件においても、到達側のトンネル内部に影響を与えることなく連絡坑を構築することができる。なお、先導エレメント先端の切断加工の際、作業者は周囲が鋼殻エレメントで囲われた内部で作業を行うことができるので、安全性が確保できる。
【0011】
また、鋼殻エレメントの掘進には小型の掘進機が用いられているため、掘進機の搬入・搬出の作業が簡単にできるとともに、鋼殻エレメントの配置によって連絡坑の断面の大きさが任意に変えられるので、作業効率の向上が図れるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記鋼殻エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断する工程と、
元押しジャッキによって前記鋼殻エレメントを到達側のトンネルの外面に当接するまで押し込む工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、トンネル連絡坑の構築方法の第2形態例である。第2形態例では、掘進機による掘進が完了し、掘進機を回収して、鋼殻エレメントの先端を到達側のトンネルの外面形状に沿うように切断した後、鋼殻エレメント全体を、元押しジャッキによって到達側のトンネルの外面に向けて押し込むようにしている。第2形態例では、元押しジャッキによって鋼殻エレメント全体を押し込んでいるため、中間ジャッキによって先導エレメントを押し込む第1形態例と比較して、設備の簡略化を図ることができる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、発進部から到達側のトンネルに向けて、断面視で周方向に閉合するように、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメントを推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体からなる連絡坑を構築する方法であって、
前記鋼殻エレメントは、先端に掘進機が搭載され、
到達側のトンネルから所定距離だけ離隔した位置で前記掘進機による掘進を完了する工程と、
前記掘進機を解体し前記鋼殻エレメント内を通じて発進部に回収する工程と、
前記鋼殻エレメントの先端から到達側のトンネルの外面までの間の土砂を掘削する工程と、
掘削した部分に土留め板を配置し、この土留め板を前記鋼殻エレメントに固定する工程と、を含むことを特徴とするトンネル連絡坑の構築方法が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明は、トンネル連絡坑の構築方法の第3形態例である。第3形態例では、掘進機による掘進が完了し、掘進機を回収した後、鋼殻エレメントの先端から到達側のトンネルの外面までの間の土砂を手掘りし、掘削した部分に土留め板を配置し、この土留め板を鋼殻エレメントに固定している。このように掘進機による掘進の完了後は、鋼殻エレメントを移動させることなく、鋼殻エレメント先端の切断加工作業も不要となるので、作業の簡略化を図ることができる。なお、鋼殻エレメントの貫入部には全断面に亘って地盤改良を施すことで、鋼殻エレメント先端より前方の到達側のトンネルまでの間の掘削時における地山からの出水や土砂の崩落事故を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、掘進機が到達側のトンネルに貫通することなく、到達側のトンネル内部に影響を与えにくいとともに、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その1)である。
【
図6】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その2)である。
【
図7】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その3)である。
【
図8】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その4)である。
【
図9】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その5)である。
【
図10】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その6)である。
【
図11】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その7)である。
【
図12】第1形態例に係る構築方法を示す手順図(その8)である。
【
図13】第2形態例に係る構築方法を示す手順図(その1)である。
【
図14】第2形態例に係る構築方法を示す手順図(その2)である。
【
図15】第2形態例に係る構築方法を示す手順図(その3)である。
【
図16】第2形態例に係る構築方法を示す手順図(その4)である。
【
図17】第2形態例に係る構築方法を示す手順図(その5)である。
【
図18】第3形態例に係る構築方法を示す手順図(その1)である。
【
図19】第3形態例に係る構築方法を示す手順図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
トンネル連絡坑1は、
図1及び
図2に示されるように、発進立坑やトンネルなどの発進部2から到達側トンネル3に向けて、断面視で周方向に閉合するように、例えば
図2に示される長方形状に、継手を介して相互に連結された多数の鋼殻エレメント4、4…を推進工法により地中に設置した後、前記鋼殻エレメント4…内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、地中に外殻構造体を構築することによって形成されるものである。
【0020】
前記推進工法は、発進部2として発進立坑やトンネルなど(図示例では発進立坑)を設け、推進設備を備えた発進部2から元押しジャッキ(油圧ジャッキ)により掘進機を地中に押し出し、掘進機の後続に設置管を順次継ぎ足し、管列を推進することで、到達側トンネル3に向けて、地中に連続した管体を設置する工法であり、下水道、水道、ガス、電力、通信等のライフラインのための管きょを地中に設置したり、トンネル状に大断面の地中外殻構造体を構築する際、前記地中外殻構造体を構成する鋼殻エレメントを地中に設置するために採用されている工法である。
【0021】
以下、具体的に本発明に係るトンネル連絡坑1の構築方法について詳述する。
【0022】
〔鋼殻エレメント4の構造〕
前記鋼殻エレメント4は、
図3に示されるように、頂版10、底版11及び側壁12によって構成される矩形断面のエレメントであり、前記頂版10及び底版11がそれぞれ前記側壁12より外側に延在し、その一方側の先端に隣接する鋼殻エレメント4側に開口を向けたコ字状断面の凹継手13が備えられるとともに、他方側の先端に隣接する鋼殻エレメント4に備えられた凹継手13に嵌挿される凸継手14が備えられている。
【0023】
前記凹継手13は、
図4に示されるように、凹継手13の開口部に止水部Sを備えている。この止水部Sは、前記開口の両側からそれぞれ開口中央方向に向けて延びる板バネ状のパッキン15A、15Bを備え、前記凹継手13と凸継手14との嵌合時に、板状の凸継手14の基端部が前記パッキン15A、15Bを拡開させるように変形させながら前記両側のパッキン15A、15Bの間に嵌挿されるようにしてある。
【0024】
前記パッキン15A、15Bは、両側からそれぞれ開口中央方向に向けて延びる板厚約0.3~1.0mm程度の2枚の屈曲板状体を対向させることによって構成され、外側端部が凹継手13の開口縁に固定され、中央端側が自由端とされることにより板バネとして作用するものである。前記パッキン15A、15Bの自由端同士は、突き合わされるように設けられている。隣接する鋼殻エレメント4の凸継手14を嵌合させたときに、パッキン15A、15Bが凹継手13の溝部内側に向けて拡開するようになる。
【0025】
更に、図示されるように、前記パッキン15A、15Bの外側には、前記開口の両側からそれぞれ開口中央方向に向けて延びる板バネ状の補助パッキン16A、16Bを設けることもできる。前記止水部Sを二重のパッキンによって構成することにより、確実な止水を図ることができる。また、これら二重のパッキンの間に、シール材22を注入しておくことにより、更に確実な止水を図ることができる。
【0026】
前記パッキン15A、15B及び補助パッキン16A、16Bの取り付けは、外側に配設された押え金具17A(17B)を介して、ボルト18A(18B)によって固設されている。
【0027】
一方、前記凸継手14は、鋼殻エレメント4の頂版10又は底版11の側方延出部分から連続して延びる板状の基端部19と、この基端部19の先端において両側に突出する突部20とから構成された、断面略T字状に形成されている。
【0028】
T字状断面の前記凸継手14の先端に備えられた前記突部20が前記凹継手13の溝底部に嵌挿されることにより、凹継手13から凸継手14が抜け出るのが防止でき、凹継手13と凸継手14との確実な嵌合が維持できる。
【0029】
〔連絡坑1の構築方法〕
連絡坑1の構築方法のうち、特に鋼殻エレメント4の設置方法について詳細に説明する。
【0030】
(第1形態例)
第1形態例に係る構築方法では、
図5に示されるように、先端に掘進機30が搭載され、後続する後続エレメント4Aに対して中間ジャッキ31によって前方にスライド可能に構成された先導エレメント32を備えた鋼殻エレメント4が使用される。
【0031】
前記先導エレメント32は、前記鋼殻エレメント4と同様に、頂版、底版及び側壁によって構成される矩形断面のエレメントであり、前記頂版及び底版がそれぞれ前記側壁より外側に延在し、その一方側の先端に隣接する鋼殻エレメント4側に開口を向けたコ字状断面の凹継手が備えられるとともに、他方側の先端に隣接する鋼殻エレメントに備えられた凹継手に嵌挿される凸継手が備えられている。
【0032】
後続エレメント4Aの先端には、前記先導エレメント32に内接する内函33が設けられており、この内函33に先導エレメント32が外嵌することにより、所定の軸方向区間において二重管構造となっている。外函である先導エレメント32は、前記内函33に対して掘進方向にスライド可能となっている。
【0033】
前記中間ジャッキ31は、ピストン式の油圧ジャッキが用いられ、一端が前記内函33の内面に固定され、他端が前記先導エレメント32の内面に固定されている。これにより、中間ジャッキ31を伸長させると、先導エレメント32が後続エレメント4Aの内函33を摺動して、掘進方向の前方にスライドできるようになっている。前記中間ジャッキ31は、内函33の四隅にそれぞれ配置されている。内函33に対する中間ジャッキ31の固定位置は、掘進方向に所定の間隔で複数配置されている。これにより、中間ジャッキ31を伸長して所定長さだけ先導エレメント32をスライド前進させた後、内函33に対する固定を取り外し、ジャッキを収縮して掘進方向の次の固定位置に盛り替えた後、再度伸長させることにより、先導エレメント32を更に前進させることができ、中間ジャッキ31としてストロークのあまり長くないものを用いても、先導エレメント32を所望の長さだけスライド前進させることができるようになる。
【0034】
前記掘進機30は、前面部分に、鋼殻エレメント4の断面形状で掘削するために、回転式掘削ヘッドと遊星カッターとを備えたカッター部34を備える。また、前面部分に、掘削面の四隅に前記凹継手13及び凸継手14を含む領域を掘削するための継手部カッター35が装備されている。
【0035】
発進部2からの掘削の前に、連絡坑1の構築予定路線を含む領域に対し、発進部2からの薬液注入による地盤改良を行う。ただし、この地盤改良は、地山の性状に応じて省略することができる。
【0036】
先ずはじめに、発進部2から到達側トンネル3に向けて、先導エレメント32を先頭に、これに後続して鋼殻エレメント4を推進工法により地中に設置する。鋼殻エレメント4を推進工法により地中に設置するには、掘進機30を稼働させながら発進部2から先導エレメント32を発進させるとともに、この先導エレメント32の後部に所定長さの鋼殻エレメント4を順次継ぎ足しながら後続させ、かつ発進部2に設置された元押しジャッキにより鋼殻エレメント4の後部から推力を与えるようにする。
【0037】
掘進機30が到達側トンネル3に近づいたら、
図5に示されるように、到達側トンネル3から所定距離だけ離隔した位置で、掘進機30を停止するとともに、元押しジャッキによる推力負荷を停止し、掘進機30による掘進を完了する。到達側トンネル3からの離隔距離は任意に設定することができるが、施工誤差による到達側トンネル3に対する影響を低減するとともに、中間ジャッキ31によるスライド可能な長さなどを考慮すると、0.5m~2m、好ましくは1m程度とするのがよい。
【0038】
掘進機30による掘進を停止したら、
図6に示されるように、掘進機30を解体し鋼殻エレメント4内を通じて発進部2に回収する。回収した掘進機30は、次回以降の鋼殻エレメント4の掘進に転用することができる。
【0039】
次いで、
図7に示されるように、先導エレメント32の先端を到達側トンネル3の外面形状に沿うように切断する。つまり、先導エレメント32をそのまま前進させたとき、先導エレメント32の先端が到達側トンネル3の外面形状に沿って当接するように先導エレメント32の先端を切断する。切断手段としては、ガス切断やアーク切断、レーザカッティングなどの溶断や、ディスクグライダなどによる切断などを用いることができる。この切断作業において、作業員は、周囲が先導エレメント32で囲まれた領域内で作業を行うことができるため、地山の崩落などの危険性を低く抑えることができる。到達側トンネル3の外面形状が円形断面からなる場合、鋼殻エレメント4の貫入位置によって切断する形状が異なるため、先導エレメント32の先端部の内面に、到達側トンネル3の外面形状に合わせた切断ラインを予め施しておくのが好ましい。
【0040】
先導エレメント32の先端部の切断作業が終了したら、
図8~
図10に示されるように、前記中間ジャッキ31を伸長して前記先導エレメント32を到達側トンネル3の外面に当接するまで押し出す。前記中間ジャッキ31によって先導エレメント32を押し出す際は、1ストロークで先導エレメント32の先端が到達側トンネル3の外面に当接する長さの中間ジャッキ31を用いてもよいが、図示例のように中間ジャッキ31の固定を盛り替えて複数のストロークで先導エレメント32の先端が到達側トンネル3の外面に当接するような長さの中間ジャッキ31を用いることにより、設備のコンパクト化を図るのが好ましい。
【0041】
押出し作業の手順は、
図8に示されるように、中間ジャッキ31を伸長して先導エレメント32を所定の長さだけ前方に押し出す。このとき、到達側トンネル3の外面までの地盤は、少なくとも上部地盤を先掘りしておくのが好ましい。このときの中間ジャッキ31のストロークは、1回の伸長で到達側トンネル3の外面までの距離の約半分の長さを押し出すことが可能な長さとするのがよい。
【0042】
次いで、
図9に示されるように、中間ジャッキ31の一方の固定を取り外し、伸長した中間ジャッキ31を収縮させ、ストロークを収縮させた位置に形成された固定部に盛り替える。
【0043】
その後、
図10に示されるように、再度中間ジャッキ31を伸長して先導エレメント32を更に前方に押し出す。先導エレメント32の先端が到達側トンネル3の外面に当接した状態では、先導エレメント32に後続する後続エレメント4Aの先端に設けられた内函33の先端部のみが先導エレメント32に内接し、その大半が外部に露出した状態となる。
【0044】
先導エレメント32の先端が到達側トンネル3の外面に当接したら、
図11に示されるように、中間ジャッキ31を取り外し鋼殻エレメント4内を通じて発進部2に回収する。回収した中間ジャッキ31は、次回以降に貫入する鋼殻エレメント4に転用することができる。
【0045】
先導エレメント32が後続エレメント4Aの内函33から突出した状態で、先導エレメント32と内函33との接続部をエレメント内側からの全周に亘る溶接によって固定した後、鋼殻エレメント4内にコンクリートを充填してもよいし、元押しジャッキによって先導エレメント32に後続する鋼殻エレメント4(後続エレメント4A)を押し込み、後続エレメント4Aの先端に設けられた内函33を先導エレメント32に収容した上で、
図12に示されるように、先導エレメント32と後続エレメント4Aの内函33の接続部を、エレメント内側からの全周に亘る溶接によって固定した後、鋼殻エレメント4内にコンクリートを充填してもよい。
【0046】
以上によって、1本の鋼殻エレメント4の建込みが終了し、この設置済みの鋼殻エレメント4と継手を連結させながら、順次多数の鋼殻エレメント4を地中に設置する作業を繰り返した後、前記鋼殻エレメント4内にコンクリートを充填して構造体を構築し、その後に構造体の内部の土砂を掘削し、断面視で周方向に閉合する外殻構造体からなる連絡坑1を構築する。しかる後、適切な時期に、連絡坑1の開口形状に合わせて到達側トンネル3の壁面に開口を形成し、連絡坑1を到達側トンネル3に貫通させる。
【0047】
(第2形態例)
第2形態例に係る構築方法では、
図13に示されるように、先端に掘進機30が搭載された鋼殻エレメント4が使用される。
【0048】
先ずはじめに、発進部2から到達側トンネル3に向けて、鋼殻エレメント4を推進工法により地中に設置する。鋼殻エレメント4を推進工法により地中に設置するには、掘進機30を稼働させながら発進部2から鋼殻エレメント4を発進させるとともに、この鋼殻エレメント4の後部に所定長さの鋼殻エレメント4を順次継ぎ足しながら後続させ、かつ発進部2に設置された元押しジャッキにより鋼殻エレメント4の後部から推力を与えるようにする。
【0049】
掘進機30が到達側トンネル3に近づいたら、
図13に示されるように、到達側トンネル3から所定距離だけ離隔した位置で、掘進機30を停止するとともに、元押しジャッキによる推力負荷を停止し、掘進機30による掘進を完了する。
【0050】
掘進機30による掘進を停止したら、
図14に示されるように、掘進機30を解体し鋼殻エレメント4内を通じて発進部2に回収する。
【0051】
次いで、
図15に示されるように、鋼殻エレメント4の先端を到達側トンネル3の外面形状に沿うように切断する。
【0052】
鋼殻エレメント4の先端部の切断作業が完了したら、
図16及び
図17に示されるように、元押しジャッキによって鋼殻エレメント4を到達側トンネル3の外面に当接するまで押し込む。このとき、到達側トンネル3の外面までの地盤は、少なくとも上部地盤を先掘りしておくのが好ましい。
【0053】
以上によって、1本の鋼殻エレメント4の建込みが終了し、この設置済みの鋼殻エレメント4と継手を連結させながら、順次多数の鋼殻エレメント4を地中に設置する手順を繰り返し、断面視で周方向に閉合する外殻構造体からなる連絡坑1を構築する。
【0054】
第2形態例では、鋼殻エレメント4の先端を到達側トンネル3の外面に当接させる際、上記第1形態例のように中間ジャッキ31によって先導エレメント32のみを先行的に前進させるのではなく、鋼殻エレメント4全体を元押しジャッキによって押し込むことにより行っているため、細かな微調整を行いにくくなるが、中間ジャッキが不要な分だけ設備が簡略化できる利点がある。
【0055】
(第3形態例)
第3形態例に係る構築方法では、上記第2形態例に係る構築方法と同様に、
図13に示されるように、先端に掘進機30が搭載された鋼殻エレメント4が使用される。
【0056】
上記第2形態例に係る構築方法と同様に、発進部2から到達側トンネル3に向けて、鋼殻エレメント4を推進工法により地中に設置する。掘進機30が到達側トンネル3に近づいたら、
図13に示されるように、到達側トンネル3から所定距離だけ離隔した位置で、掘進機30を停止するとともに、元押しジャッキによる推力負荷を停止し、掘進機30による掘進を完了する。その後、
図14に示されるように、掘進機30を解体し鋼殻エレメント4内を通じて発進部2に回収する。
【0057】
次に、
図18に示されるように、鋼殻エレメント4の先端から到達側トンネル3の外面までの間の土砂を掘削する。掘削は、スコップやハンドブレーカーなどを用いた手掘りで行う。
【0058】
その後、
図19に示されるように、掘削した部分に土留め板36を配置し、この土留め板36を鋼殻エレメント4に溶接などの固定手段によって固定する。
【0059】
第3形態例では、上述の第1形態例や第2形態例のように、鋼殻エレメント4の先端部を到達側トンネル3の外面の形状に沿って切断する必要がないという利点を有するが、鋼殻エレメント4の先端から到達側トンネル3の外面までの間の土砂を掘削する際、地山からの出水や崩落の危険性があり、作業員が長期間危険にさらされた状態となるため、地山が安定し、出水のおそれが低い場所での適用が好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1…トンネル連絡坑、2…発進部、3…到達側トンネル、4…鋼殻エレメント、10…頂版、11…底版、12…側壁、13…凹継手、14…凸継手、15A・15B…パッキン、16A・16B…補助パッキン、17A・17B…押え金具、18A・18B…ボルト、19…基端部、20…突部、30…掘進機、31…中間ジャッキ、32…先導エレメント、33…内函、34…カッター部、35…継手部カッター部、36…土留め板