(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067099
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 13/621 20060101AFI20240510BHJP
H01R 13/595 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01R13/621
H01R13/595
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176931
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】兼松 佑多
(72)【発明者】
【氏名】ビョン ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】廣脇 宣和
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC02
5E021FC03
5E021GA05
5E021HC19
5E021LA09
(57)【要約】
【課題】螺子部の回転力による影響を抑制できる、コネクタを開示する。
【解決手段】コネクタ10が、電線引出口20を有するコネクタハウジング22と、コネクタハウジング22に収容された端子16と、端子16に接続されて電線引出口20からコネクタハウジング22の外部に引き出される電線24と、相手方コネクタ14の側に設けられた相手方螺子部30に螺合して、相手方螺子部30との間に作用する軸力により、相手方コネクタ14への嵌合力を発生させる螺子部26と、相手方コネクタ14の側に設けられた被当接部32に当接可能な当接部28と、を備え、当接部28は、螺子部26よりも電線24側に設けられており、螺子部26の回転に伴い、当接部28が被当接部32に当接して螺子部26の回転方向におけるコネクタハウジング22の変位を阻止する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線引出口を有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに収容された端子と、
前記端子に接続されて前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、
相手方コネクタの側に設けられた相手方螺子部に螺合して、前記相手方螺子部との間に作用する軸力により、前記相手方コネクタへの嵌合力を発生させる螺子部と、
前記相手方コネクタの側に設けられた被当接部に当接可能な当接部と、を備え、
前記当接部は、前記螺子部よりも前記電線側に設けられており、
前記螺子部の回転に伴い、前記当接部が前記被当接部に当接して前記螺子部の回転方向における前記コネクタハウジングの変位を阻止する、コネクタ。
【請求項2】
前記当接部および前記被当接部の一方は、前記螺子部の軸方向で前記相手方コネクタの側に向かって突出する凸部の外周面を含んで構成され、
前記当接部および前記被当接部の他方は、前記相手方コネクタの側に設けられて前記凸部を収容する凹部の内周面を含んで構成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングに連結されて、前記電線引出口から引き出された前記電線を保持する金属リテーナをさらに備え、
前記金属リテーナに前記当接部が一体的に設けられている、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングを覆って前記コネクタハウジングに連結された金属製のシールドシェルをさらに備え、
前記シールドシェルは、前記螺子部を有する第1ボルトを挿通する第1ボルト挿通孔が設けられた第1締結部を有し、
前記金属リテーナは、前記相手方コネクタの固定壁部に対して締結される第2締結部を有し、
前記シールドシェルと前記金属リテーナとは、一方に設けられた組付部が他方に設けられた被組付部に組み合うことで相互に組み付けられており、
前記組付部と前記被組付部の対向面間は、第1方向に広がる第1公差吸収隙間を有しており、前記第2締結部を貫通する第2ボルト挿通孔は、前記第1方向に広がる前記第1公差吸収隙間を構成しており、前記金属リテーナは、前記シールドシェルに対して前記第1公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記金属リテーナは、前記相手方コネクタの固定壁部に対して締結される第2締結部を有し、
前記第2締結部は、前記固定壁部に向かって前記螺子部の軸方向に沿って突出しており、
前記当接部は、前記第2締結部の外周面によって構成されつつ、前記固定壁部に設けられた前記被当接部に当接可能である、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記組付部と前記被組付部の対向面間は、前記第2締結部のボルト締結方向に広がる第2公差吸収隙間を有しており、前記金属リテーナは、前記シールドシェルに対して前記第2公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
コネクタと相手方コネクタが嵌合されるコネクタユニットであって、
前記コネクタは、請求項1または請求項2に記載のコネクタであり、
前記相手方コネクタは、前記螺子部が螺合される前記相手方螺子部と、前記当接部が当接可能な前記被当接部を有している、コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびコネクタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載機器間を電気的に接続するために、一方の機器側に接続されたコネクタを、他方の機器側に接続された相手方コネクタに嵌合させる、コネクタユニットが用いられている。近年、車載機器の大電流化等によりコネクタが大型化して、コネクタ嵌合に必要な嵌合力も増大している。そこで、特許文献1には、コネクタを相手方コネクタに嵌合する際に、コネクタに設けられた螺子部(ボルト等)を相手方コネクタ側に設けられた相手方螺子部(ねじ穴)に螺合させ、双方の螺子部の間に作用する軸力を嵌合力として利用する構造が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、大型のコネクタ同士の嵌合力として利用し得る軸力を生じさせるためには、双方の螺子部も大型化して、螺合の際に生じる回転力も大きくなる。それゆえ、コネクタを相手方コネクタに嵌合する際に、螺子部の回転力によりコネクタ全体が回転し、各コネクタの樹脂ハウジングや端子部に螺子部の回転力が作用するおそれがあった。特に、車載部品の大電流化等により電線が大径化したり、端子の電線圧着部が電線の延び出し方向で長くなる場合には、螺子部よりも電線側が螺子部の回転力により振れ易くなる。
【0005】
そこで、螺子部の回転力による影響を抑制できる、コネクタおよびコネクタユニットを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、電線引出口を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容された端子と、前記端子に接続されて前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、相手方コネクタの側に設けられた相手方螺子部に螺合して、前記相手方螺子部との間に作用する軸力により、前記相手方コネクタへの嵌合力を発生させる螺子部と、前記相手方コネクタの側に設けられた被当接部に当接可能な当接部と、を備え、前記当接部は、前記螺子部よりも前記電線側に設けられており、前記螺子部の回転に伴い、前記当接部が前記被当接部に当接して前記螺子部の回転方向における前記コネクタハウジングの変位を阻止する、ものである。
【0007】
本開示のコネクタユニットは、コネクタと相手方コネクタが嵌合されるコネクタユニットであって、前記コネクタは、本開示のコネクタであって、前記相手方コネクタは、前記螺子部が螺合される相手方螺子部と、前記当接部が当接される被当接部を有している、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のコネクタおよびコネクタユニットによれば、螺子部の回転力による影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るコネクタユニットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたコネクタユニットにおける背面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示されたコネクタユニットを構成するコネクタと相手方コネクタとを非接続状態で示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されたコネクタと相手方コネクタとの接続途中の状態を示す縦断面図であって、
図4に対応する図である。
【
図10】
図10は、
図7に示されたコネクタを部分的に分解して示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、
図7に示されたコネクタを構成する第1保持部を背面側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)電線引出口を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容された端子と、前記端子に接続されて前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、相手方コネクタの側に設けられた相手方螺子部に螺合して、前記相手方螺子部との間に作用する軸力により、前記相手方コネクタへの嵌合力を発生させる螺子部と、前記相手方コネクタの側に設けられた被当接部に当接可能な当接部と、を備え、前記当接部は、前記螺子部よりも前記電線側に設けられており、前記螺子部の回転に伴い、前記当接部が前記被当接部に当接して前記螺子部の回転方向における前記コネクタハウジングの変位を阻止する、ものである。
【0011】
本開示のコネクタによれば、相手方コネクタへの嵌合力を発生させる螺子部よりも電線側に設けられた当接部が、螺子部の回転に伴い相手方コネクタの側に設けられた被当接部に当接することにより、螺子部の回転方向におけるコネクタハウジングの変位を阻止することができる。これにより、螺子部と相手方螺子部との間に作用する軸力を、コネクタの相手方コネクタへの嵌合力として利用するタイプ(所謂ボルトアシストタイプ)のコネクタにおいて、螺子部の螺合による嵌合力を利用しつつ、従来問題となっていた螺子部の回転に伴う影響を抑制することができる。特に、当接部が螺子部よりも電線側に設けられていることにより、螺子部の回転に伴う振れが大きくなり易い電線側での変位を有利に阻止することができ、螺子部の回転に伴うコネクタハウジングの変位をより確実に阻止することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記当接部および前記被当接部の一方は、前記螺子部の軸方向で前記相手方コネクタの側に向かって突出する凸部の外周面を含んで構成され、前記当接部および前記被当接部の他方は、前記相手方コネクタの側に設けられて前記凸部を収容する凹部の内周面を含んで構成されている、ことが好ましい。螺子部の軸方向で相手方コネクタの側に向かって突出する凸部の外周面を用いて構成された当接部または被当接部は、凸部を収容する凹部の内周面を用いて構成された被当接部または当接部により周方向の全周に亘って囲われている。それゆえ、螺子部の回転に伴うコネクタハウジングの変位が何れの方向においても当接部の被当接部に対する当接によって阻止され、簡単な構造により、螺子部の回転に伴うコネクタハウジングの変位を一層安定して阻止することができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、前記コネクタハウジングに連結されて、前記電線引出口から引き出された前記電線を保持する金属リテーナをさらに備え、前記金属リテーナに前記当接部が一体的に設けられている、ことが好ましい。電線引出口から引き出された電線を保持する金属リテーナに当接部が一体的に設けられていることから、金属リテーナを利用して螺子部よりも電線側に離隔した部位に当接部を有利に設けることができる。加えて、電線引出口から引き出された電線を保持するリテーナが金属製であるため、そこに一体的に設けられる当接部も金属により形成できる。それゆえ、螺子部の回転により被当接部に当接した際の反力による影響も有利に回避することができ、当接部の被当接部に対する当接によるコネクタハウジングの変位阻止性能を安定して担保することができる。
【0014】
(4)上記(3)において、前記コネクタハウジングを覆って前記コネクタハウジングに連結された金属製のシールドシェルをさらに備え、前記シールドシェルは、前記螺子部を有する第1ボルトを挿通する第1ボルト挿通孔が設けられた第1締結部を有し、前記金属リテーナは、前記相手方コネクタの固定壁部に対して締結される第2締結部を有し、前記シールドシェルと前記金属リテーナとは、一方に設けられた組付部が他方に設けられた被組付部に組み合うことで相互に組み付けられており、前記組付部と前記被組付部の対向面間は、第1方向に広がる第1公差吸収隙間を有しており、前記第2締結部を貫通する第2ボルト挿通孔は、前記第1方向に広がる前記第1公差吸収隙間を構成しており、前記金属リテーナは、前記シールドシェルに対して前記第1公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている、ことが好ましい。
【0015】
外部からのノイズの侵入を抑制するシールドシェルがコネクタハウジングを覆って連結される場合には、金属リテーナをシールドシェルに対して、組付部の被組付部への組み合いにより組み付けることができ、金属リテーナのシールドシェルからの離脱を有利に阻止することができる。また、金属リテーナは、第2締結部において相手方コネクタの固定壁部(例えば相手方コネクタが収容されて固定されている機器の筐体等)へ締結されることから、電線から伝わる外力が金属リテーナから端子側に伝達されることを有利に抑制または阻止することができる。加えて、組付部と被組付部の対向面間は第1方向に広がる第1公差吸収隙間を有しており、第2締結部を貫通する第2ボルト挿通孔は第1方向に広がる第1公差吸収隙間を構成しており、金属リテーナがシールドシェルに対して第1公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている。これにより、コネクタを相手方コネクタへ螺子部の回転により嵌合させて、第1締結部において締結した後に、第2締結部を相手方の固定壁部へ締結する際に、第1公差吸収隙間により公差を吸収することができ、金属リテーナの固定壁部へのボルト締結を有利に行うことが可能となる。
【0016】
なお、組付部と被組付部は、金属リテーナのシールドシェルへの組み付けを実現し得るものであれば任意の形状や構造が採用され得る。また、第1公差吸収隙間の広がる方向(第1方向)は、例えば、電線の延出方向と同じ方向や、電線の延出方向に直交する方向など、公差が生じ得る方向で任意に設定することができる。第1公差吸収隙間の広がる第1方向は1つの方向に設定されてもよいし、複数の方向に設定されてもよい。
【0017】
(5)上記(3)または(4)において、前記金属リテーナは、前記相手方コネクタの固定壁部に対して締結される第2締結部を有し、前記第2締結部は、前記固定壁部に向かって前記螺子部の軸方向に沿って突出しており、前記当接部は、前記第2締結部の外周面によって構成されつつ、前記固定壁部に設けられた前記被当接部に当接可能である、ことが好ましい。金属リテーナは、第2締結部において相手方コネクタの固定壁部(例えば相手方コネクタが収容されて固定されている機器の筐体等)へ締結されることから、電線から伝わる外力が金属リテーナから端子側に伝達されることを有利に抑制または阻止することができる。しかも、このような電線から端子側に伝わる外力の伝搬を抑制する外力遮断性能を発揮する第2締結部の外周面を巧く利用して、相手方コネクタの固定壁部に設けられた被当接部に当接可能な当接部を設けることができる。これにより、少ない部品点数で、螺子部の回転方向におけるコネクタハウジングの変位を阻止しつつ、電線から伝達される外力の遮断性能に優れたコネクタを、提供することができる。
【0018】
(6)上記(4)において、前記組付部と前記被組付部の対向面間は、前記第2締結部のボルト締結方向に広がる第2公差吸収隙間を有しており、前記金属リテーナは、前記シールドシェルに対して前記第2公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている、ことが好ましい。組付部と被組付部の対向面間に、第2締結部のボルト締結方向に広がる第2公差吸収隙間が設けられており、金属リテーナがシールドシェルに対して第2公差吸収隙間の分だけ変位可能に組み付けられている。これにより、コネクタを相手方コネクタへ螺子部の回転により嵌合させて、第1ボルト締結部において締結した後に、第2ボルト締結部を接続相手側へ接続する際に、第2公差吸収隙間により公差を吸収することができ、金属リテーナの接続相手側へのボルト締結を有利に行うことが可能となる。
【0019】
本開示のコネクタユニットは、
(7)コネクタと相手方コネクタが嵌合されるコネクタユニットであって、前記コネクタは、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のコネクタであり、前記相手方コネクタは、前記螺子部が螺合される前記相手方螺子部と、前記当接部が当接可能な前記被当接部を有している、ものである。本開示に係るコネクタを採用することで、上記(1)から(6)のいずれか1つの効果を発揮することができるコネクタユニットが提供され得る。
【0020】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のコネクタユニット10について、
図1から
図13を用いて説明する。コネクタユニット10は、コネクタ12と相手方コネクタ14とが嵌合することで構成される。コネクタ12は端子16を備えているとともに、相手方コネクタ14は相手方端子18を備えており、端子16と相手方端子18とが相互に接触することで、コネクタユニット10においてコネクタ12と相手方コネクタ14とが電気的に導通状態となるようになっている。なお、コネクタユニット10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図2中の上方、下方とは
図2中の下方、前方とは
図3中の左方、後方とは
図3中の右方、左方とは
図2中の左方、右方とは
図2中の右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0022】
<コネクタ12>
コネクタ12は、電線引出口20を有するコネクタハウジング22と、コネクタハウジング22に収容された端子16と、端子16に接続されて電線引出口20からコネクタハウジング22の外部に引き出される電線24と、を含んでいる。また、コネクタ12は、相手方コネクタ14の側に設けられた後述する相手方螺子部30に螺合して、相手方螺子部30との間に作用する軸力により、相手方コネクタ14への嵌合力を発生する螺子部26と、相手方コネクタ14の側に設けられた後述する被当接部32に当接可能な当接部28と、を備えている。実施形態1では、一対の端子16,16が設けられており、各端子16がそれぞれコネクタハウジング22に収容されている。
図2に示されるように、これら一対の端子16,16および一対のコネクタハウジング22,22は、左右方向で相互に離隔して配置されている。
【0023】
<相手方コネクタ14>
相手方コネクタ14は、
図13等にも示されるように、端子16と接続される相手方端子18と、コネクタ12側の螺子部26が螺合される相手方螺子部30と、コネクタ12側の当接部28が当接可能な被当接部32と、を備えている。また、相手方コネクタ14は、相手方端子18を収容して保持する相手方ハウジング34と、相手方ハウジング34が固定される金属製の固定壁部36と、を有している。実施形態1では、コネクタ12において一対の端子16,16が設けられていることから、相手方コネクタ14は一対の相手方端子18,18を備えており、これら各相手方端子18が左右方向で相互に離隔して配置されている。これら各相手方端子18が保持される相手方ハウジング34は、図示しない機器の筐体等から構成される固定壁部36に固定される。そして、固定壁部36に固定される相手方ハウジング34において、各相手方端子18が後方に突出した状態で保持されている。
【0024】
実施形態1では、各相手方端子18がそれぞれピン端子とされており、各相手方端子18は柱状接続部38を備えている。また、各相手方端子18の基端部(前端部)にはそれぞれボルト挿通孔40が設けられており(
図1,
図3,
図6等参照)、例えばボルト挿通孔40に挿通される図示しないボルトにより各相手方端子18が図示しない機器等の端子部に対して固定されるようになっている。
【0025】
これら各相手方端子18は、相手方ハウジング34に固定的に保持されている。なお、各相手方端子18と相手方ハウジング34との固定方法は限定されるものではないが、実施形態1では、相手方ハウジング34の成形時に成形キャビティ内に各相手方端子18をインサートした状態で成形することで、相手方ハウジング34が各相手方端子18を備えた一体成形品として形成されている。この相手方ハウジング34は、
図13等にも示されるように下方に突出する一対の脚部42,42を一体的に備えており、各脚部42に挿通されるボルト44により、各相手方端子18が固定された相手方ハウジング34が固定壁部36に固定されるようになっている。また、相手方ハウジング34の外周面において、固定壁部36における後述する挿通孔50に挿通される部分には、環状の防水ゴム46が外挿されて取り付けられている。
【0026】
固定壁部36は、図示しない機器の筐体等から構成されており、平面視において平板状に広がっている。各図に示された固定壁部36は、便宜上、要部を矩形状に切り出した矩形板部48として示している。矩形板部48の上方部分には、相手方ハウジング34が挿通される挿通孔50が形成されている。また、矩形板部48において挿通孔50よりも下方部分における左右方向中央には、後述する第1ボルト108における螺子部26が挿入される第1ボルト固定部52が設けられている。第1ボルト固定部52は後方に開口する略筒状の部分であり、所定の前後方向寸法を有しているとともに、内周面には、雄螺子である螺子部26に螺合する雌螺子としての相手方螺子部30が形成されている。
【0027】
さらに、矩形板部48において第1ボルト固定部52よりも下方部分における左右方向中央には、後述する第2ボルト184の雄螺子188が挿入される第2ボルト固定部54が設けられている。第2ボルト固定部54は後方に開口する略筒状の部分であり、所定の前後方向寸法を有しているとともに、内周面に雌螺子56が形成されている。これら第1ボルト固定部52と第2ボルト固定部54とは、上下方向で相互に所定の距離だけ離隔して設けられている。
【0028】
特に、矩形板部48の後端面において、第2ボルト固定部54における開口部の周囲には後方に開口する凹部58が設けられており、第2ボルト固定部54は、凹部58の底面59の略中央に開口して設けられている。この凹部58は、第2ボルト固定部54における開口部よりも大きな開口面積をもって形成されており、実施形態1では、凹部58が左右方向寸法に比して上下方向寸法の大きな略長円形状をもって形成されている。そして、後述するように、この凹部58の内周面を含んで、コネクタ12側の当接部28が当接可能な被当接部32が構成されている。また、凹部58の底面59は、所定の径方向寸法を有する環状の平坦面とされている。
【0029】
<端子16>
実施形態1では、相手方端子18がピン端子とされており、端子16は、相手方端子18における柱状接続部38が圧入される筒状接続部60を有していればその具体的な構造は限定されるものではないが、例えば特開2021-28899号公報に記載の雌端子(10)のような構造が採用され得る。より詳細には、実施形態1の端子16は、端子本体62と、端子本体62の先端部(上端部)に取り付けられる弾性部材としてのクリップばね64とを含んで構成されている。そして、各端子本体62の基端部(下端部)に、各電線24が固着される電線固着部66が設けられている。
【0030】
各電線24は被覆電線であり、芯線68と、芯線68を略全長にわたって被覆する合成樹脂製の絶縁被覆70とから構成されている。そして、各電線24の端末において絶縁被覆70が剥がされて芯線68が露出しているとともに、露出された芯線68が各端子本体62の電線固着部66に固着されることで、各端子本体62と各電線24とが接続されている。なお、電線固着部66と芯線68との固着方法は限定されるものではなく、接着や溶着等でもよいし、圧着片による圧着等であってもよい。
【0031】
<コネクタハウジング22>
コネクタハウジング22は、
図2,3に示されるように、各電線24の上端部分および各電線24の端末に固着される各端子16が収容される略矩形筒状の端子収容部72を有している。前述のように、実施形態1では、一対のコネクタハウジング22,22が設けられており、各コネクタハウジング22がそれぞれ端子収容部72を有している。各コネクタハウジング22(各端子収容部72)は左右方向で相互に離隔するとともに、それぞれ上下方向に延びて下方に開口している。そして、各端子収容部72に収容される各電線24は、各コネクタハウジング22(各端子収容部72)の下方開口部を通じて外部空間へ引き出されており、各コネクタハウジング22の下方開口部により各電線24が引き出される電線引出口20が構成されている。すなわち、2つのコネクタハウジング22,22のそれぞれに端子16が収容され、2つの端子16にそれぞれ接続された2つの電線24,24が、各電線引出口20からコネクタハウジング22の外部に引き出されている。
【0032】
実施形態1では、
図3に示されるように、各コネクタハウジング22が、コネクタハウジング本体74と、コネクタハウジング本体74に組み付けられるコネクタハウジング蓋部76とから構成されている。すなわち、コネクタハウジング本体74における前側の壁部の上方部分には厚さ方向(前後方向)で貫通する窓部が設けられており、この窓部を覆蓋するようにコネクタハウジング蓋部76が組み付けられるようになっている。そして、コネクタハウジング蓋部76において端子16における筒状接続部60と対応する位置には、後述するコネクタ12と相手方コネクタ14との接続時において、相手方端子18における柱状接続部38が挿通される挿通孔78が形成されている。
【0033】
<シールドシェル80>
また、コネクタ12は、各コネクタハウジング22を覆って各コネクタハウジング22に連結される金属製のシールドシェル80をさらに備えている。各コネクタハウジング22とシールドシェル80との固定方法は限定されるものではないが、実施形態1では、後述するように、各コネクタハウジング22はシールドシェル80の下方開口部から内部に挿入される。そして、例えば各コネクタハウジング22の外面とシールドシェル80の内面に設けられる凹凸の嵌合により、各コネクタハウジング22がシールドシェル80に連結されて固定されるようになっている。
【0034】
なお、上記のように各コネクタハウジング22の電線引出口20から下方に引き出される各電線24には、環状の防水ゴム82が外挿されて取り付けられており、各防水ゴム82がシールドシェル80の下方開口部から内部に挿入されている。そして、これら各防水ゴム82の下方に、各電線引出口20から引き出された各電線24を保持する後述する金属リテーナ128が設けられている。実施形態1では金属リテーナ128がシールドシェル80の下方開口部に組み付けられており、金属リテーナ128により各防水ゴム82の脱落も防止されている。
【0035】
シールドシェル80は、一対のコネクタハウジング22,22の略全体を覆う形状とされている。すなわち、シールドシェル80は、各コネクタハウジング22の後方を覆う後方壁部84と、各コネクタハウジング22の前方を覆う前方壁部86と、左側のコネクタハウジング22を左方から覆う左方壁部88と、右側のコネクタハウジング22を右方から覆う右方壁部90と、各コネクタハウジング22の上方を覆う上方壁部92と、を備えている。また、シールドシェル80は、各コネクタハウジング22の左右方向間に設けられて、シールドシェル80の内部空間を左右方向で仕切る仕切部94を備えている。
【0036】
シールドシェル80の前方壁部86における上方部分には、前方壁部86を前後方向で貫通する貫通窓96が形成されているとともに、貫通窓96の周縁部には、内側筒部98および外側筒部100が設けられている。また、内側筒部98には、貫通孔102を有するフロントリテーナ104が組み付けられている。これにより、コネクタ12と相手方コネクタ14とを接続する際には、各相手方端子18における柱状接続部38が、貫通孔102、貫通窓96および挿通孔78を通じて、各端子16における筒状接続部60へ圧入されるようになっている。なお、内側筒部98には環状の防水ゴム106が外挿されて取り付けられている。
【0037】
ここで、シールドシェル80の仕切部94において外側筒部100の下方部分よりも下方には、螺子部26を有する第1ボルト108が挿通される第1ボルト挿通孔110が前後方向で貫通して形成されている。そして、この第1ボルト挿通孔110に対して第1ボルト108を挿通して、接続相手側である固定壁部36における第1ボルト固定部52に対して固定することで、シールドシェル80が固定壁部36に対してボルト締結されるようになっている。したがって、第1ボルト108の締結に伴って、シールドシェル80における特に第1ボルト挿通孔110の周囲の部分が固定壁部36に対して固定されるようになっている。それゆえ、シールドシェル80において螺子部26(第1ボルト108)が挿通されて固定壁部36へボルト締結される第1締結部111が、第1ボルト挿通孔110の周囲の部分により構成されている。換言すれば、シールドシェル80における第1締結部111を前後方向で貫通して第1ボルト挿通孔110が形成されており、第1締結部111が、第1ボルト108が挿通される第1ボルト挿通孔110を有している。
【0038】
なお、実施形態1では、第1ボルト挿通孔110の形成位置において前方壁部86から前方に突出する接触部112が設けられており、接触部112が略矩形の外周面形状を有している。そして、接触部112の略中央部分において略円形の凹所114が前方に開口して形成されている。この接触部112の突出先端面(前端面)は、略環状の平坦面116とされている。
【0039】
また、第1ボルト108の長さ方向中間部分には、外周側に開口する環状のリング装着溝118が設けられており、実施形態1では、このリング装着溝118にCリング120が装着されている。Cリング120が第1ボルト108に装着された状態において、Cリング120は第1ボルト108の外周面から外周側に略環状に、所定の径寸法幅寸法をもって突出している。これにより、第1ボルト108が第1ボルト挿通孔110に対して前後方向で変位可能とされつつ、第1ボルト挿通孔110からの第1ボルト108の脱落が防止され得る。また、Cリング120における第1ボルト108の外周面からの外周側への突出寸法は、凹所114における径方向幅寸法よりも小さくされている。これにより、第1ボルト挿通孔110に対して第1ボルト108が後方へ変位する際には、Cリング120の後端が凹所114の底面に当接することで、第1ボルト挿通孔110に対する第1ボルト108の変位が制限されるようになっている。なお、実施形態1では、第1ボルト108において、Cリング120の装着位置(リング装着溝118の形成位置)よりも先端側(前端側)に、雄螺子である螺子部26が設けられている。
【0040】
特に、実施形態1では、第1締結部111を接続相手側である固定壁部36へボルト締結する際の第1ボルト108の締付力を利用して、各相手方端子18の柱状接続部38が各端子16の筒状接続部60へ圧入されるようになっている。すなわち、実施形態1のコネクタ12は、所謂ボルトアシストタイプのコネクタとされており、第1締結部111を接続相手側である固定壁部36へボルト締結することにより、各端子16が各相手方端子18へ嵌合されるようになっている。そして、第1ボルト108が第1ボルト挿通孔110に対して変位可能、且つ脱落不能とされていることにより、第1ボルト108が第1ボルト固定部52の開口部に当接した際に第1ボルト108が後方へ変位することができる。それゆえ、第1ボルト108において前方に突出する部分が、各端子16における各相手方端子18への圧入作業に干渉するおそれが低減され得る。また、第1ボルト108を第1ボルト固定部52にある程度螺合させた状態で、各端子16における各相手方端子18への圧入作業を開始させることができて、圧入作業に伴って第1ボルト固定部52の開口部が破損するおそれ等が低減され得る。
【0041】
<被組付部122>
ここにおいて、シールドシェル80における後方壁部84および前方壁部86の下端部には、後述する金属リテーナ128における各組付部150と組み合わされる被組付部122が設けられている。具体的には、後方壁部84および前方壁部86における下端部分において、左右方向中央部分に、前後方向外方に開口する凹状の収容部124が形成されており、収容部124の底面における下端部において前後方向外方に突出する略矩形ブロック状の組付凸部126が設けられている。そして、後述するように、シールドシェル80の下端部に対して、前後方向外方から第1保持部130と第2保持部132が重ね合わされて、各収容部124に各組付部150が収容されるとともに、各組付領域156内に各組付凸部126が挿入されるようになっている。したがって、実施形態1では、収容部124と組付凸部126を含んで、組付部150と組み合わされる被組付部122が構成されている。これら収容部124および組付凸部126は、上下、左右、前後の各方向においてそれぞれ所定の寸法を有している。
【0042】
<金属リテーナ128>
また、コネクタ12は、各コネクタハウジング22に連結されて、各電線引出口20から引き出された各電線24を保持する金属リテーナ128をさらに備えている。実施形態1では、金属リテーナ128が、シールドシェル80を介して各コネクタハウジング22に連結されている。金属リテーナ128は、各電線24の軸直角方向両側(前後方向両側)から各電線24を挟み込んで保持して相互に固定される後側の第1保持部130と前側の第2保持部132とを有している。また、金属リテーナ128は、後述する第2ボルト184により、接続相手側となる固定壁部36へボルト締結される第2締結部134を備えている。
【0043】
図11,12等にも示されるように、第1保持部130は正面視または背面視において上下方向寸法に比して左右方向寸法の方が大きくされた略矩形ブロック状の第1本体部136を備えており、第1本体部136の前面には、略半円形断面形状をもって前方に開口する凹溝138が形成されている。この凹溝138は上下方向に延びており、金属リテーナ128を各電線24に対して固定した状態において、凹溝138の内周面が各電線24の外周面(絶縁被覆70の外周面)に密接するようになっている。実施形態1では一対の電線24,24が左右方向で相互に離隔して設けられていることから、第1保持部130には、一対の凹溝138,138が左右方向で相互に離隔して設けられている。そして、第1本体部136における左右方向中央部分において、一対の凹溝138,138が連結部140により連結されている。なお、各凹溝138は第1本体部136よりも大きな上下方向寸法を有しており、各凹溝138を構成する半円筒形状とされた部分が、第1本体部136から下方に突出して一体的に形成されている。
【0044】
また、実施形態1では、
図3にも示されるように、各凹溝138の内周面における上方部分において、内周側(径方向内方)に突出する押圧突部142が設けられている。各押圧突部142は、所定の上下方向寸法および周方向寸法をもって形成されている。
【0045】
そして、第1本体部136における左右方向中央部分(連結部140)には、後述する第2ボルト184が挿通される後側挿通孔144が形成されている。後側挿通孔144は連結部140を前後方向で貫通しており、
図12にも示されるように、左右方向寸法に比して上下方向寸法の方が大きな略長円とされた内周面形状を有している。なお、
図12において、後側挿通孔144に挿通される第2ボルト184を二点鎖線で示す。後側挿通孔144の内径寸法は第2ボルト184の外径寸法よりも大きくされており、後側挿通孔144の内周面と第2ボルト184の外周面との対向面間の隙間が、略環状とされた後側隙間146である。後側隙間146の径方向幅寸法は、左右方向寸法α(
図12参照)に比して上下方向寸法β(
図12参照)の方が大きくされている。また、第1本体部136における後面には後方に開口する円形凹部148が形成されており、円形凹部148の底面において後側挿通孔144と連通している。そして、後側挿通孔144に第2ボルト184が挿通される際には、第2ボルト184の頭部185が円形凹部148に収容されるようになっている。
【0046】
<組付部150>
また、第1本体部136における後端部分において、左右方向中央部分には、シールドシェル80における被組付部122と組み合う組付部150が上方に突出して設けられている。そして、これら組付部150と被組付部122とが組み合うことで金属リテーナ128がシールドシェル80に組み付けられるようになっている。実施形態1では、組付部150が略矩形枠形状であり、第1本体部136から上方に突出する左右両側の上方突出部152と、各上方突出部152の突出端部(上端部)を接続する接続部154とを備えている。これにより、第1本体部136、各上方突出部152、接続部154によって囲まれた領域には正面視において略矩形とされた組付領域156が形成されており、組付領域156は、上下方向寸法に比して左右方向寸法の方が大きくされている。
【0047】
さらに、第1本体部136の後面において円形凹部148を挟んだ左右両側には、後方に突出する係止凸部158が設けられている。また、第1本体部136における左右方向両端部、すなわち各凹溝138よりも左右方向外側には、後述する固定ボルト178が固定される後側固定部160が設けられている。各後側固定部160は前方に開口する略筒状であり、第1本体部136における左右方向両端部から左右方向外方に突出している。これら各後側固定部160の内周面には、固定ボルト178の雄螺子と螺合する雌螺子が形成されている。
【0048】
第2保持部132は、全体としては第1保持部130と略同様の形状であり、平面視において略矩形状とされた第2本体部162を備えている。第2本体部162の後面における左右方向両側には一対の凹溝138,138が設けられているとともに、これら各凹溝138が連結部140により連結されている。実施形態1では、第2保持部132においても、各凹溝138の内周面における上方部分に、内周側(径方向内方)に突出する各押圧突部142が設けられている。
【0049】
そして、第2本体部162における左右方向中央部分(連結部140)には、後述する第2ボルト184が挿通される前側挿通孔164が形成されている。特に、第2本体部162における連結部140には、螺子部26の軸方向となる前後方向で前方に位置する固定壁部36に向かって突出する凸部としての筒状部166が一体的に設けられている。さらに、これら連結部140および筒状部166を前後方向で貫通して前側挿通孔164が形成されている。前側挿通孔164は後側挿通孔144と同様の内周面形状を有しており、左右方向寸法に比して上下方向寸法の方が大きな略長円形状とされている。これにより、前側挿通孔164の内周面と第2ボルト184の外周面との対向面間の隙間が略環状とされた前側隙間168であり、前側隙間168の径方向幅寸法は左右方向寸法αに比して上下方向寸法βの方が大きくされている。また、実施形態1では、筒状部166の突出先端面(前端面)が略環状の平坦面170とされている。
【0050】
さらに、第2本体部162における前端部分において、左右方向中央部分には、第1保持部130と同様に組付部150が設けられている。すなわち、第2保持部132においても、組付部150が、左右両側の各上方突出部152と、各上方突出部152の突出端部(上端部)を接続する接続部154とを備えており、これら第2本体部162、各上方突出部152、接続部154によって囲まれた領域により正面視において略矩形とされた組付領域156が形成されている。
【0051】
また、第2本体部162の前面において筒状部166を挟んだ左右両側には、後述する固定螺子204が締結される螺子固定部172が設けられている。そして、第2本体部162における左右方向両端部、すなわち各凹溝138よりも左右方向外側には、後述する固定ボルト178が固定される前側固定部174が設けられている。各前側固定部174には固定ボルト178が挿通されるボルト挿通孔が前後方向で貫通して形成されており、各前側固定部174が第2本体部162における左右方向両端部から左右方向外方に突出している。第2本体部162の外周面において左右方向両端部には、各固定ボルト178の頭部が収容される収容凹部176が形成されている。
【0052】
上記のような形状とされた第1保持部130と第2保持部132とを各電線24を前後方向両側から挟んだ状態で重ね合わせて、固定ボルト178によりボルト固定することで金属リテーナ128が構成されている。すなわち、第1保持部130における各後側固定部160と第2保持部132における各前側固定部174とが前後方向で相互に重ね合わされて、各固定ボルト178が各前側固定部174に挿通されるとともに各後側固定部160に締結されることで、第1保持部130と第2保持部132とが相互に固定される。これにより、各後側固定部160と各前側固定部174とを含んで、各固定ボルト178が固定されるリテーナボルト固定部180が構成されている。
【0053】
また、このように第1保持部130と第2保持部132とが相互に固定されることで、第1保持部130における各凹溝138の周方向端面と第2保持部132における各凹溝138の周方向端面とが前後方向で相互に突き合わされており、前後両側の各凹溝138により電線24を挟持する電線収容孔182が構成されている。すなわち、第1保持部130と第2保持部132とが相互に固定されることで、2つの電線24,24のそれぞれを挟持する2つの電線収容孔182,182が左右方向で並列配置されている。そして、これら2つの電線収容孔182,182の並列方向(左右方向)で、各電線収容孔182の両側に各リテーナボルト固定部180が設けられている。
【0054】
ここで、第1保持部130と第2保持部132とが各電線24を挟持した状態で固定されることで、第1および第2保持部130,132における各押圧突部142が各電線24の各絶縁被覆70を押圧して、各絶縁被覆70の前後両側部分を弾性変形させるようになっている。なお、各押圧突部142により押圧されて弾性変形する前の各絶縁被覆70を、
図6において二点鎖線で示す。各押圧突部142により弾性変形させられた各絶縁被覆70は、例えば左右方向両側へ膨出変形させられるようになっていてもよく、左右方向両側へ膨出変形させられた各絶縁被覆70が、各電線収容孔182における左右両側の内周面に密接するようになっていてもよい。
【0055】
さらに、第1保持部130と第2保持部132とが相互に固定されることで、第1保持部130における後側挿通孔144と第2保持部132における前側挿通孔164とが前後方向で相互に連通して、第2ボルト184が挿通される第2ボルト挿通孔186が構成されるようになっている。そして、この第2ボルト挿通孔186に対して第2ボルト184を挿通して、接続相手側である固定壁部36における第2ボルト固定部54に対して固定することで、金属リテーナ128が固定壁部36に対してボルト締結されるようになっている。すなわち、第2ボルト184における先端側(前端側)の部分には、第2ボルト固定部54における雌螺子56と螺合する雄螺子188が形成されている。したがって、第2ボルト184の締結に伴って、金属リテーナ128における特に第2ボルト挿通孔186の周囲の部分が固定壁部36に対して固定されるようになっている。それゆえ、金属リテーナ128において固定壁部36へボルト締結される第2締結部134が、第2ボルト挿通孔186の周囲の部分、例えば第1保持部130における連結部140や第2保持部132における連結部140、筒状部166等により構成されている。換言すれば、金属リテーナ128における第2締結部134を前後方向で貫通して第2ボルト挿通孔186が形成されている。
【0056】
なお、第2ボルト挿通孔186へ第2ボルト184を挿通して第2締結部134を固定壁部36へ締結する際には、第2保持部132における筒状部166の突出先端(前端)が固定壁部36における凹部58へ入り込んで、筒状部166の突出先端面である平坦面170と凹部58の底面59とが相互に重ね合わされるようになっている。ここで、筒状部166の突出先端における凹部58への入り込みは、第1ボルト108における螺子部26と第1ボルト固定部52における相手方螺子部30との螺合によって達成される。そして、筒状部166が凹部58へ入り込むことで、第1ボルト108(螺子部26)の回転に伴って各コネクタハウジング22、すなわち各コネクタハウジング22に連結されるシールドシェル80および金属リテーナ128が回転変位することが、凹部58の内周面(被当接部32)と筒状部166の外周面とが当接することにより阻止される。すなわち、被当接部32と当接可能な当接部28が、第2締結部134を構成する筒状部166の外周面により構成されている。この当接部28は、シールドシェル80の下端に連結される金属リテーナ128に設けられており、シールドシェル80の上下方向中間部分に設けられている第1締結部111(要するに、螺子部26)よりも各電線24側に位置している。
【0057】
<第1公差吸収隙間190,192>
そして、第2ボルト挿通孔186に第2ボルト184が挿通された状態では、後側隙間146と前側隙間168とが前後方向で相互に連通しており、第2ボルト挿通孔186の内周面と第2ボルト184の外周面との対向面間において略環状または略筒状の第1公差吸収隙間190が構成されている。すなわち、実施形態1では、第2ボルト挿通孔186が、第1公差吸収隙間190を有している。そして、この第1公差吸収隙間190の広がる方向が第1方向であり、実施形態1では、第1方向が、第2ボルト184の締結方向と直交する方向(左右方向および上下方向)とされている。これにより、第2ボルト184を第2ボルト固定部54に対して固定する際に、第2ボルト挿通孔186と第2ボルト固定部54とがずれている際にも第1公差吸収隙間190内で第2ボルト184を変位させることで公差が吸収され得る。特に、前述のように、第1公差吸収隙間190(後側隙間146および前側隙間168)は、左右方向の径方向幅寸法αに比して上下方向の径方向幅寸法βが大きくされていることから、左右方向に比して上下方向の公差がより効果的に吸収され得る。
【0058】
また、前述のように、シールドシェル80に対して金属リテーナ128が組み付けられる際には、金属リテーナ128における前後両側の各組付部150とシールドシェル80における前後両側の各被組付部122とが組み合わされる。具体的には、各組付部150における組付領域156内に各組付凸部126が挿入されるようになっている。ここで、各組付部150(組付領域156を含む)は、上下、左右、前後の各方向においてそれぞれ所定の寸法を有している。
【0059】
すなわち、
図4に示されるように、収容部124における上方の内面と組付凸部126との上下方向における離隔距離D1は、組付部150における接続部154の上下方向寸法D2よりも大きくされている。これにより、各組付部150と各被組付部122とが組み合わされて、各組付領域156内に各組付凸部126が挿入された状態において、組付部150と被組付部122の対向面間191(収容部124における上方の内面124aと接続部154の上端面154aとの対向面間、または接続部154の下端面154bと組付凸部126の上端面126aとの対向面間)には、上下方向で所定の大きさA1やA2(何れも
図4参照)の隙間が形成される。この隙間が、各組付部150と各被組付部122との対向面間における第1公差吸収隙間192である。
【0060】
また、
図5における左側の拡大図に示すように、左右方向のいずれか一方の側において、収容部124の左右方向の内面(例えば左方の内面)と組付凸部126との左右方向における離隔距離D3は、組付部150における上方突出部152の左右方向寸法D4よりも大きくされている。これにより、各組付部150と各被組付部122とが組み合わされて、各組付領域156内に各組付凸部126が挿入された状態において、組付部150と被組付部122との対向面間191(収容部124における左右方向外方の内面124bと上方突出部152における左右方向外面152aとの対向面間、または上方突出部152における左右方向内面152bと組付凸部126における左右方向外面126bとの対向面間)には、左右方向で所定の大きさB1やB2(何れも
図5参照)の隙間が形成される。この隙間も、各組付部150と各被組付部122との対向面間における第1公差吸収隙間192である。
【0061】
このように、各組付部150と各被組付部122との間には、第2ボルト184と第2ボルト挿通孔186との間の第1公差吸収隙間190と同じ方向である第1方向(上下方向および左右方向)に広がる第1公差吸収隙間192が設けられている。これにより、各組付部150と各被組付部122とが組み合わされて金属リテーナ128がシールドシェル80に組み付けられた状態において、特に、金属リテーナ128における筒状部166が固定壁部36における凹部58に入り込む前の状態において、組付領域156内で組付凸部126が上下方向や左右方向で変位可能である。そして、組付領域156内で組付凸部126が変位可能である分だけ、例えば上下方向では隙間の大きさA2の分だけ、あるいは左右方向では隙間の大きさB2の分だけ、シールドシェル80に対して金属リテーナ128が上下方向および/または左右方向で変位可能である。したがって、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して第1公差吸収隙間192の分だけ変位可能に組み付けられている。
【0062】
また、コネクタ12と相手方コネクタ14との嵌合に際して筒状部166が凹部58に入り込んだ後には、シールドシェル80に対する金属リテーナ128の変位は、例えば凹部58の内周面(被当接部32)と筒状部166の外周面(当接部28)との当接によっても制限される。すなわち、
図4に示されるように、筒状部166が凹部58に入り込んだ状態では、被当接部32と当接部28との上下方向間の隙間の大きさA3やA4の分だけ、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して変位可能とされる場合もある。具体的には、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して接近方向(上方)に変位する場合、隙間A1とA3のうち、小さい方の大きさの分だけ変位可能とされる。同様に、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して離隔方向(下方)に変位する場合、隙間A2とA4のうち、小さい方の大きさの分だけ変位可能とされる。
【0063】
さらに、左右方向についても、シールドシェル80に対する金属リテーナ128の変位は、例えば凹部58の内周面(被当接部32)と筒状部166の外周面(当接部28)との当接によって制限される場合もある。すなわち、
図6に示されるように、筒状部166が凹部58に入り込んだ状態では、被当接部32と当接部28との左右方向間においてB3やB4の隙間が形成されている。そして、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して左方に変位する場合、隙間B1とB2とB3のうち、最も小さい大きさの分だけ変位可能とされる。同様に、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して右方に変位する場合、隙間B1とB2とB4のうち、最も小さい大きさの分だけ変位可能とされる。
【0064】
なお、例えば被当接部32と当接部28との左右方向間の隙間(B3およびB4)を十分に小さくする(0に近づける)ことで、筒状部166が凹部58に入り込んだ状態では、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して左右方向で略変位不能とすることも可能である。このように、金属リテーナ128をシールドシェル80に対して左右方向で変位不能とすることで、第1ボルト108(螺子部26)の回転に伴う各コネクタハウジング22(および各コネクタハウジング22に連結されるシールドシェル80と金属リテーナ128)の回転変位をより効果的に抑制することができる。
【0065】
<第2公差吸収隙間194>
さらに、
図5における右側の拡大図に示すように、収容部124における深さ寸法(前後方向寸法)D5は、組付部150(上方突出部152および接続部154)の前後方向寸法D6よりも大きくされている。これにより、各組付部150と各被組付部122とが組み合わされて、各組付領域156内に各組付凸部126が挿入された状態において、組付部150と被組付部122との対向面間193(収容部124における底面124cと上方突出部152および接続部154の前後方向内面152c,154cとの対向面間)には、前後方向で所定の大きさC(
図5参照)の隙間が形成される。この隙間が、第2締結部134における第2ボルト184のボルト締結方向(前後方向)に広がる第2公差吸収隙間194である。
【0066】
この結果、各組付部150と各被組付部122とが組み合わされて金属リテーナ128がシールドシェル80に組み付けられた状態において、特に、金属リテーナ128における筒状部166が固定壁部36における凹部58に入り込む前の状態において、第2公差吸収隙間194の大きさCの分だけ、シールドシェル80に対して金属リテーナ128が前後方向で変位可能である。したがって、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して第2公差吸収隙間194の分だけ変位可能に組み付けられている。
【0067】
なお、コネクタ12と相手方コネクタ14との嵌合に際して筒状部166が凹部58に入り込んだ後には、シールドシェル80に対する金属リテーナ128の前後方向の変位は、例えば凹部58の底面59と筒状部166の突出先端面(平坦面170)との当接によっても制限される。換言すれば、コネクタ12と相手方コネクタ14とを嵌合させた場合に、金属リテーナ128をシールドシェル80に対して前後方向で変位可能とすることで、
図4や
図6に示されるように、凹部58の底面59と筒状部166の突出先端面(平坦面170)とをより確実に当接させることができる。これにより、凹部58の底面59と筒状部166の突出先端面(平坦面170)が当接する箇所においてもシールド経路を形成することができて、シールド性能の向上が図られる。特に、実施形態1では、底面59と平坦面170が何れも平坦に広がっていることから、これらの当接面積を十分に広く確保することができて、シールド性能のさらなる向上が図られている。
【0068】
また、実施形態1では、金属リテーナ128の下方部分が金属製のシールドブラケット196により覆われている。シールドブラケット196は、段差を有する筒壁部198を備えており、筒壁部198の後端部における左右方向両側には上方に突出する係止枠体200が設けられている。また、筒壁部198の前端部における左右方向両側には上方に突出する部分が設けられており、上方への突出端部において螺子孔202が形成されている。そして、金属リテーナ128の下方部分に対してシールドブラケット196の筒壁部198を外挿して、各係止凸部158を各係止枠体200に係止するとともに、各螺子孔202を通じて固定螺子204を各螺子固定部172に固定することにより、シールドブラケット196が金属リテーナ128に対して固定されるようになっている。なお、シールドブラケット196の筒壁部198には、各電線24を覆う図示しない金属製の編組線等のシールド部材が固定されるようになっていてもよい。
【0069】
<コネクタユニット10の組立て>
以下、コネクタ12と相手方コネクタ14とを嵌合させてコネクタユニット10を組み立てる方法の具体的な一例を説明する。なお、コネクタユニット10の組立方法は、以下に記載の態様に限定されるものではない。
【0070】
先ず、各電線24における端末において絶縁被覆70を剥いで露出させた芯線68を各端子本体62の電線固着部66に固着するとともに、各端子本体62の上端部に各クリップばね64を取り付ける。これにより、各電線24の端末に各端子16が固定された状態とされる。そして、各電線24に各防水ゴム82を外挿する。
【0071】
次に、各端子16および各防水ゴム82が組み付けられた各電線24を、各コネクタハウジング本体74の下方開口部から挿入する。各端子16を所定位置まで挿入した後、コネクタハウジング本体74に対してコネクタハウジング蓋部76を組み付けることで、各端子16が各コネクタハウジング22における各端子収容部72内の所定位置に固定される。そして、各端子16が組み付けられた各コネクタハウジング22をシールドシェル80の下方開口部から挿入して、例えば凹凸嵌合により各コネクタハウジング22をシールドシェル80に連結して固定する。また、シールドシェル80の内側筒部98に対して前方からフロントリテーナ104を組み付ける。
【0072】
続いて、
図10に示されるように、シールドシェル80から下方に延び出す各電線24を前後両側から挟むように、第1保持部130と第2保持部132とを前後方向で対向配置する。その後、シールドシェル80における各被組付部122に対して第1および第2保持部130,132における各組付部150を組み合わせつつ、第1保持部130における第1本体部136と第2保持部132における第2本体部162とを重ね合わせる。そして、各前側固定部174に各固定ボルト178を挿通して各後側固定部160に締結することで、各リテーナボルト固定部180においてボルト締結されて第1保持部130と第2保持部132とが相互に固定される。これにより、シールドシェル80に対して金属リテーナ128が組み付けられる。次に、シールドブラケット196の筒壁部198に各電線24を挿通して金属リテーナ128の下方部分を筒壁部198で覆い、各係止凸部158を各係止枠体200に係止するとともに各固定螺子204を各螺子孔202を介して各螺子固定部172に固定する。
【0073】
また、シールドシェル80における第1ボルト挿通孔110に対して後方から第1ボルト108を挿通する。これにより、第1ボルト108の前方部分がシールドシェル80から前方に突出することとなり、第1ボルト108におけるリング装着溝118に対して側方(前後方向に対して直交する方向)からCリング120を組み付ける。これにより、コネクタ12が完成する。
【0074】
さらに、各相手方端子18と相手方ハウジング34とを一体的に形成した後、固定壁部36の挿通孔50に対して相手方ハウジング34を挿通して、相手方ハウジング34を固定壁部36に対して各ボルト44により固定する。これにより、相手方コネクタ14が完成する。
【0075】
このようにして組み立てられたコネクタ12と相手方コネクタ14とを、
図7に示されるように、前後方向で対向配置させる。そして、コネクタ12と相手方コネクタ14とを相互に接近させて、第1ボルト108の螺子部26を固定壁部36における第1ボルト固定部52の相手方螺子部30に螺合させ始める。その後、これら螺子部26と相手方螺子部30とがある程度螺合した状態で、各相手方端子18の柱状接続部38が各端子16の筒状接続部60に圧入され始める。また、螺子部26と相手方螺子部30との螺合(すなわち、柱状接続部38における筒状接続部60への圧入)がある程度進行することで、コネクタ12と相手方コネクタ14とが相互にさらに接近して、
図8に示されるように、金属リテーナ128における筒状部166が固定壁部36における凹部58に入り込み始める。
図8に示す状態では、螺子部26と相手方螺子部30との相互の接触面積も増大しており、螺合の際に生じる回転力や、螺子部26と相手方螺子部30の間に作用する軸力も徐々に増大する。それゆえ、
図8に示す状態以降において、螺子部26と相手方螺子部30との螺合の際に生じる回転力により、コネクタ12が相手方コネクタ14に対して回転変位するおそれがある。その場合でも、金属リテーナ128における筒状部166が固定壁部36における凹部58内に配置されることにより、
図9に示すように、筒状部166の外周面によって構成される当接部28が凹部58の内周面によって構成される被当接部32に、矢印aに示す回転方向に変位して当接することにより、当該回転変位を抑制または阻止することができる。そして、さらに螺子部26と相手方螺子部30との螺合を進行させることで、コネクタ12と相手方コネクタ14とが相互に接触して、第1ボルト108の締付けを終了する。この段階で、柱状接続部38における筒状接続部60への圧入は完了しており、コネクタ12と相手方コネクタ14とは電気的に導通した状態となる。
【0076】
また、この段階で、コネクタ12における第2ボルト挿通孔186と固定壁部36における第2ボルト固定部54とが上下方向や左右方向でずれている場合には、第1公差吸収隙間192を利用して、シールドシェル80に対して金属リテーナ128を変位させて、第2ボルト挿通孔186と第2ボルト固定部54とを位置合わせする。さらに、この段階で凹部58における底面59と筒状部166における平坦面170とが前後方向で離隔している場合には、第2公差吸収隙間194を利用して、シールドシェル80に対して金属リテーナ128を前方へ変位させて、底面59と平坦面170とを当接させる。なお、底面59と平坦面170とを当接させる操作は必要ではなく、第2ボルト184における第2ボルト固定部54への締結により、第2ボルト184の頭部185により金属リテーナ128が前方へ押し出されて、底面59と平坦面170とが自然と当接するようになっていてもよい。
【0077】
その後、金属リテーナ128における第2ボルト挿通孔186に第2ボルト184を挿通して、固定壁部36における第2ボルト固定部54に固定する。これにより、金属リテーナ128における第2締結部134が固定壁部36に対してボルト締結される。この結果、コネクタ12と相手方コネクタ14との接続が完了して、コネクタユニット10が完成する。
【0078】
コネクタ12と相手方コネクタ14との接続が完了した状態では、
図4にも示されるように、金属リテーナ128から前方に突出する筒状部166の前端面(平坦面170)が凹部58の底面59に当接するとともに、シールドシェル80から前方に突出する接触部112の前端面(平坦面116)とシールドシェル80の上方部分における外側筒部100の前端面とが、固定壁部36における矩形板部48の後面に対して略隙間なく密接する。すなわち、コネクタ12側の金属製の部材であるシールドシェル80および金属リテーナ128と、相手方コネクタ14側の金属製の部材である固定壁部36とが相互に離隔する複数箇所で当接している。これにより、金属リテーナ128やシールドシェル80から固定壁部36へ至るシールド経路が安定して確保されるようになっている。特に、これらの当接箇所では、コネクタ12と相手方コネクタ14との重ね合わせ面が何れも平坦面により構成されていることから、十分な当接面積を確保することができて、シールド性能の向上が図られる。
【0079】
上記のような構造とされたコネクタユニット10では、ボルトアシストタイプのコネクタ12において、各相手方端子18を各端子16に圧入する圧入力(嵌合力)を得るために螺子部26と相手方螺子部30を螺合させる必要があり、螺子部26(第1ボルト108)を回転させることで、螺子部26とともに各コネクタハウジング22(および各コネクタハウジング22に連結されるシールドシェル80と金属リテーナ128)も相手方コネクタ14に対して回転変位してしまうおそれがあった。ここで、コネクタ12と相手方コネクタ14において、螺子部26の回転に伴って相互に当接する当接部28と被当接部32とを設けることで、それ以上の各コネクタハウジング22の回転変位を防止することができる。これにより、螺子部26の螺合を安定して行うことができるとともに、意図せず各コネクタハウジング22が回転変位してコネクタ12や相手方コネクタ14が損傷することも回避され得る。
【0080】
当接部28が凸部としての筒状部166の外周面を含んで構成されているとともに、被当接部32が凹部58の内周面を含んで構成されている。これにより、当接部28と被当接部32とが周方向の全周にわたって当接することができて、例えば螺子部26を何れの周方向に回転させる場合でも当接部28と被当接部32とを当接させることができて、それ以上の各コネクタハウジング22の回転変位が抑制され得る。
【0081】
コネクタハウジング22に連結されて、電線引出口20から引き出された各電線24を保持する金属リテーナ128を備えており、金属リテーナ128に当接部28が一体的に設けられている。各電線24を保持するリテーナが金属製とされることで、例えばリテーナが合成樹脂製とされる場合に比べて部材のへたり等が抑制されて、各電線24の保持効果を安定して発揮することができる。また、金属リテーナ128に当接部28を一体的に設けることで、部品点数の増加が回避されるとともに、被当接部32との当接時における当接部28の変形を回避することができる。これにより、螺子部26の回転に伴う各コネクタハウジング22の変位阻止効果も安定して発揮され得る。
【0082】
金属リテーナ128において第2締結部134が設けられており、第2締結部134を構成する筒状部166の外周面によって当接部28が構成されている。コネクタ12を相手方コネクタ14に対して、相互に離隔する第1締結部111と第2締結部134とで固定することができる。これにより、各電線24から振動等の外力が入力される場合にも、コネクタ12自体が相手方コネクタ14に対して振れてしまうことが防止されて、各電線24から入力される外力が各端子16側へ伝達されることが抑制される。特に、第2締結部134を巧く利用して当接部28を構成することで、部品点数の増加も回避される。
【0083】
各コネクタハウジング22を覆って各コネクタハウジング22に連結されるシールドシェル80を備えているとともに、シールドシェル80に対して金属リテーナ128が第1公差吸収隙間190,192を有して組み付けられている。これにより、第2ボルト184を第2ボルト固定部54に締結する場合に第2ボルト挿通孔186と第2ボルト固定部54とがずれている際にも、第1公差吸収隙間190,192を利用して、シールドシェル80に対して金属リテーナ128を変位させることで、第2ボルト挿通孔186と第2ボルト固定部54とを相互に位置合わせすることができる。この結果、第2ボルト184の締結を安定して行うことができて、コネクタ12と相手方コネクタ14とがより効率的に嵌合され得る。なお、シールドシェル80に対する金属リテーナ128の変位に合わせて筒状部166が凹部58内で変位できるように、凹部58は筒状部166の外形状よりも大きくされていることが好ましく、凹部58は、例えば第1公差吸収隙間190,192の延出方向に広がる長円形状や楕円形状とされ得る。
【0084】
シールドシェル80における各被組付部122と金属リテーナ128における各組付部150との対向面間には第2公差吸収隙間194が設けられており、金属リテーナ128がシールドシェル80に対して第2公差吸収隙間194の分だけ前後方向で変位可能とされている。これにより、さらに確実に筒状部166における平坦面170と凹部58における底面59とを接触させることができて、シールド性能の向上が図られる。
【0085】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0086】
(1)前記実施形態では、螺子部26が第1締結部111に配置される第1ボルト108に設けられた雄螺子によって構成され、相手方螺子部30が第1ボルト固定部52の内周面に設けられた雌螺子によって構成されていたが、各螺子部の具体的な構造は、任意の構造が採用可能であり、これに限定されない。例えば相手方コネクタが設けられる機器の構造等によっては、螺子部26が第1ボルト挿通孔110の内周面に設けられた雌螺子によって構成され、相手方螺子部30が第1ボルト挿通孔110に挿通されるボルトの外周面に設けられた雄螺子によって構成されてもよい。
【0087】
(2)前記実施形態では、螺子部26と相手方螺子部30との螺合がある程度進行した状態(
図8,9に示される状態)で筒状部166の突出先端が固定壁部36側の凹部58に入り込み、筒状部166の外周面(当接部28)と凹部58の内周面(被当接部32)との当接により各コネクタハウジング22の回転阻止効果が発揮されるようになっていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、例えば当接部を構成する凸部を第2ボルトが挿通される第2締結部とは別個に設けたり、または第2ボルトによる金属リテーナにおける固定壁部への固定を採用しない場合、例えば固定壁部側に突出する中実の略円柱状または略円錐台形状の凸部を設けるとともに、固定壁部側に当該凸部の外径寸法よりも大きな内径寸法を有する凹部を設けて、第1ボルトにおける螺子部と固定壁部側の相手方螺子部の螺合が始まると略同時に凸部が凹部内に入り込むようになっていてもよい。これにより、螺子部(第1ボルト)の回転の始まりと略同時に各コネクタハウジングの回転阻止効果が発揮されることから、回転阻止に伴う各コネクタハウジング等の損傷回避等の効果がより確実に発揮され得る。
【0088】
(3)前記実施形態では、金属リテーナ128に固定壁部36側に突出する凸部としての筒状部166が設けられるととともに、固定壁部36に凹部58が設けられて、コネクタ12と相手方コネクタ14との嵌合時に凹部58内に筒状部166が入り込むようになっていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、例えば固定壁部に金属リテーナ側に突出する凸部を設けるとともに、金属リテーナに凸部が入り込む凹部を設けて、凸部の外周面から構成される当接部と凹部の内周面から構成される被当接部との当接により、コネクタの回転変位が阻止されるようになっていてもよい。なお、前記実施形態では、凸部(筒状部166)の外周面により当接部28が構成されるとともに、凹部58の内周面により被当接部32が構成されていたが、凸部の外周面により被当接部が構成されて、凹部の内周面により当接部が構成されてもよい。
【0089】
(4)前記実施形態では、第1公差吸収隙間190,192が、第2ボルト挿通孔186および組付部150と被組付部122との対向面間の両方に設けられていたが、第1公差吸収隙間は、第1ボルト挿通孔および組付部と被組付部との対向面間の何れか一方に設けられるだけでもよいし、何れにも設けられなくてもよい。また、前記実施形態では、組付部150と被組付部122との対向面間に設けられる第1公差吸収隙間192と、第2ボルト挿通孔186に設けられる第1公差吸収隙間190とは何れも上下方向および左右方向に広がっていたが、例えば上下方向と左右方向の何れか一方向に広がっているだけでもよい。なお、組付部と被組付部との対向面間に設けられる第1公差吸収隙間と第1ボルト挿通孔に設けられる第1公差吸収隙間とは、相互に異なる方向に広がっていてもよい。また、前記実施形態では、組付部150と被組付部122との対向面間において前後方向に広がる第2公差吸収隙間194が設けられていたが、本開示に係るコネクタおよびコネクタユニットにおいて第2公差吸収隙間は必須なものではない。さらに、上下方向および左右方向に広がる第1公差吸収隙間に合わせて、凹部を筒状部よりも上下方向および左右方向に広がる形状としてもよいが、例えば前記実施形態のように、筒状部と凹部との左右方向の隙間を小さくすることで、コネクタの振れを一層防止できるようになっていてもよいし、凹部を、例えば左右方向に延びる長円形状とすることで、左右方向で第2ボルト挿通孔と第2ボルト固定部との位置合わせが行いやすくなるようになっていてもよい。
【0090】
(5)前記実施形態では、第2ボルト挿通孔186に対して後方から前方に向かって第2ボルト184が挿通されて固定壁部36における第2ボルト固定部54に締結されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、固定壁部において後方に突出するスタッドボルトを設けたり、固定壁部を貫通して前方から後方に突出するボルトを設けてもよく、当該ボルトが第2ボルト挿通孔に挿通されて、金属リテーナの後方においてナットに締結されるようになっていてもよい。また、金属リテーナを固定壁部に固定する構造はボルト‐ナット構造に限定されるものではなく、凹凸による嵌合や圧入等、従来公知の固定構造が採用され得る。なお、本開示のコネクタおよびコネクタユニットにおいて、金属リテーナは固定壁部に固定される必要はない。すなわち、前記実施形態では、当接部28が、第2ボルト184が挿通される筒状部166の外周面により構成されていたが、金属リテーナを固定壁部に固定する第2ボルトは必須なものではなく、例えば金属リテーナから固定壁部側に突出する中実の略円柱状または略円錐台形状の凸部が設けられて、当該凸部の外周面により固定壁部側の被当接部と当接可能な当接部が構成されてもよい。
【0091】
(6)前記実施形態では、シールドシェル80に組み付けられるリテーナが金属製(金属リテーナ128)とされていたが、リテーナは金属製である必要はなく、例えば合成樹脂製であってもよい。なお、本開示に係るコネクタおよびコネクタユニットにおいてリテーナは必須なものではない。また、前記実施形態では、各コネクタハウジング22を覆って各コネクタハウジング22に連結されるシールドシェル80が設けられていたが、この態様に限定されるものではなく、本開示に係るコネクタおよびコネクタユニットにおいてシールドシェルは必須なものではない。すなわち、前記実施形態では当接部28が金属リテーナ128に設けられていたが、例えばシールドシェルやコネクタハウジングの下端部において前方に突出する当接部を設けて、相手方コネクタに設けられた被当接部と当接することで、コネクタの回転変位が阻止されるようになっていてもよい。
【0092】
(7)前記実施形態では、第1保持部130と第2保持部132とは固定ボルト178により固定されていたが、この態様に限定されるものではない。第1保持部と第2保持部とはボルト固定の他、カシメ固定やロック嵌合等、任意の方法で固定され得る。また、前記実施形態のように固定ボルトを採用する場合でも、固定ボルトは、前記実施形態とは反対向きに(後方から前方へ向かって)挿通されてもよい。また、第1保持部と第2保持部とは相互に別体である必要はなく、第1保持部と第2保持部とは一体として形成されてもよい。例えば、第1保持部と第2保持部との周方向一方の端部にヒンジ部を設けて第1保持部と第2保持部とを開閉可能とし、電線を挟み込んだ後、第1保持部と第2保持部との周方向他方の端部に設けた固定機構等により、第1保持部と第2保持部とが相互に固定されるようになっていてもよい。
【0093】
(8)前記実施形態における端子16の形状は単なる例示であり、限定されるものではない。すなわち、前記実施形態では、端子16がピン状の相手方端子18が挿入される筒状接続部60を有していたが、この態様に限定されない。相手方端子は、例えば国際公開2021/145197号に記載のように平タブ状であってもよいし、その場合、端子は、略矩形の端子挿通隙間を有していればよい。
【0094】
(9)前記実施形態では、一対のコネクタハウジング22,22が設けられて、各コネクタハウジング22のそれぞれに各端子16が収容されていたが、コネクタハウジングは単一の部材により構成されてもよく、1つのコネクタハウジングに複数(例えば、一対)の端子が収容されるようになっていてもよい。なお、本開示に係るコネクタにおいて、端子や電線の数は限定されるものではなく、それぞれ1つずつでもよいし、それぞれ3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 コネクタユニット
12 コネクタ
14 相手方コネクタ
16 端子
18 相手方端子
20 電線引出口
22 コネクタハウジング
24 電線
26 螺子部
28 当接部
30 相手方螺子部
32 被当接部
34 相手方ハウジング
36 固定壁部
38 柱状接続部
40 ボルト挿通孔
42 脚部
44 ボルト
46 防水ゴム
48 矩形板部
50 挿通孔
52 第1ボルト固定部
54 第2ボルト固定部
56 雌螺子
58 凹部
59 底面
60 筒状接続部
62 端子本体
64 クリップばね
66 電線固着部
68 芯線
70 絶縁被覆
72 端子収容部
74 コネクタハウジング本体
76 コネクタハウジング蓋部
78 挿通孔
80 シールドシェル
82 防水ゴム
84 後方壁部
86 前方壁部
88 左方壁部
90 右方壁部
92 上方壁部
94 仕切部
96 貫通窓
98 内側筒部
100 外側筒部
102 貫通孔
104 フロントリテーナ
106 防水ゴム
108 第1ボルト
110 第1ボルト挿通孔
111 第1締結部
112 接触部
114 凹所
116 平坦面
118 リング装着溝
120 Cリング
122 被組付部
124 収容部
124a 上方の内面
124b 左右方向外方の内面
124c 底面
126 組付凸部
126a 上端面
126b 左右方向外面
128 金属リテーナ
130 第1保持部
132 第2保持部
134 第2締結部
136 第1本体部
138 凹溝
140 連結部
142 押圧突部
144 後側挿通孔
146 後側隙間
148 円形凹部
150 組付部
152 上方突出部
152a 左右方向外面
152b 左右方向内面
152c 前後方向内面
154 接続部
154a 上端面
154b 下端面
154c 前後方向内面
156 組付領域
158 係止凸部
160 後側固定部
162 第2本体部
164 前側挿通孔
166 筒状部(凸部)
168 前側隙間
170 平坦面
172 螺子固定部
174 前側固定部
176 収容凹部
178 固定ボルト
180 リテーナボルト固定部
182 電線収容孔
184 第2ボルト
185 頭部
186 第2ボルト挿通孔
188 雄螺子
190 第1公差吸収隙間
191 対向面間
192 第1公差吸収隙間
193 対向面間
194 第2公差吸収隙間
196 シールドブラケット
198 筒壁部
200 係止枠体
202 螺子孔
204 固定螺子