(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067148
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】軸受抜取装置
(51)【国際特許分類】
B61F 5/26 20060101AFI20240510BHJP
B61F 15/00 20060101ALI20240510BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B61F5/26
B61F15/00
B61K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176985
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】住野 裕
(57)【要約】
【課題】省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる軸受抜取装置を提供すること。
【解決手段】抜き取り可能な軸受部の種類が異なる第1抜取機構40と第2抜取機構50とが、ターンテーブル30の周囲にそれぞれ配置されている。これにより、輪軸10を下方から支持するターンテーブル30を回転させつつ、第1抜取機構40または第2抜取機構50のいずれか一方を動作させることで、輪軸10の車軸11の両端部にそれぞれ取り付けられた同種の一対の軸受部(軸受部13又は軸受15,15a)を両方とも抜き取ることができる。このように、軸受抜取装置100は、ターンテーブル30を共有しつつ、軸受部の種類に応じて第1抜取機構40または第2抜取機構50のいずれか一方を動作させることで、省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の輪軸の車軸から、前記車軸の軸方向の両端部にそれぞれ取り付けられた同種の一対の軸受部を抜き取る軸受抜取装置であって、
下方から支持した前記輪軸を上下の軸線を中心に回転させるターンテーブルと、
前記ターンテーブルの周囲にそれぞれ配置され、前記ターンテーブル上の前記輪軸の前記車軸から前記軸受部を抜き取る第1抜取機構および第2抜取機構と、を備え、
前記第1抜取機構と前記第2抜取機構とは、抜き取り可能な前記軸受部の種類が異なることを特徴とする軸受抜取装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルの前記軸線と、前記車軸の軸心とが直交する位置で前記輪軸を前記ターンテーブル上に固定する固定部を備え、
前記第1抜取機構は、前記固定部によって固定された前記輪軸の前記軸受部に係合する第1係合部と、
前記車軸から前記軸受部を抜き取るために、前記軸受部に係合した前記第1係合部を前記車軸に対し軸方向へ移動させる第1移動部と、を備え、
前記第2抜取機構は、前記固定部によって固定された前記輪軸の前記軸受部であって前記第1係合部とは異なる種類の前記軸受部に係合する第2係合部と、
前記車軸から前記軸受部を抜き取るために、前記軸受部に係合した前記第2係合部を前記車軸に対し軸方向へ移動させる第2移動部と、を備え、
前記第1抜取機構と前記第2抜取機構とは、前記第1係合部を前記軸受部に係合したときの前記車軸の軸心と、前記第2係合部を前記軸受部に係合したときの前記車軸の軸心とが一致するように前記ターンテーブルの両側に向かい合わせて配置されていることを特徴とする請求項1記載の軸受抜取装置。
【請求項3】
前記第1係合部を前記軸受部に係合したときの前記車軸の軸心と、前記第2係合部を前記軸受部に係合したときの前記車軸の軸心とが一致する状態で、上面視において一直線上に並ぶ複数の目印が、前記ターンテーブル、前記第1抜取機構および前記第2抜取機構のそれぞれに設けられることを特徴とする請求項2記載の軸受抜取装置。
【請求項4】
前記ターンテーブル上の前記輪軸に取り付けられた前記軸受部が前記第1抜取機構で抜き取り可能な種類であるかを判別する種別判定センサと、
前記種別判定センサによって前記第1抜取機構で抜き取り可能な種類ではないと判別された場合に、前記第1抜取機構による前記軸受部の抜き取り動作を禁止する第1禁止手段と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軸受抜取装置。
【請求項5】
前記第2抜取機構は、前記軸受部の1種である円筒状の軸受を抜き取るものであって、前記軸受の直径に応じて抜き取り動作を異ならせるものであり、
前記軸受の直径を判断する直径センサと、
前記直径センサによる判断結果と異なる直径に応じた抜き取り動作を禁止する第2禁止手段と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軸受抜取装置。
【請求項6】
前記第2抜取機構は、前記車軸の軸直角方向のうち第1方向に開口部が設けられて前記軸受に係合する第2係合部と、
前記車軸から前記軸受を抜き取るために、前記軸受に係合した前記第2係合部を前記車軸に対し軸方向へ移動させる第2移動部と、
前記第2係合部を前記車軸に対し前記第1方向へ移動させる軸直移動部と、を備え、
前記軸直移動部による前記第1方向への移動により、前記車軸に取り付けられた前記軸受を前記開口部から前記第2係合部の内部へ収容することで、前記第2係合部が前記軸受に係合され、
前記直径センサは、前記第2係合部の前記開口部へ向けて前記開口部の縁部分に設けられ、前記直径センサから、前記車軸の軸直角方向のうち前記第1方向と垂直な第2方向の所定範囲内に対象物が存在するかを検出するセンサによって構成されていることを特徴とする請求項5記載の軸受抜取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の台車の輪軸から軸受部を抜き取る軸受抜取装置に関し、特に省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる軸受抜取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車は、一対の車輪を車軸に固定した輪軸と、車軸の軸方向の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の軸受と、それらの軸受がそれぞれ収容される一対の軸箱と、軸箱に支持されて車体を支持するフレームと、を備える。フレームを軸箱で支持する軸箱支持方式には、様々な種類があり、その種類に応じて軸箱の形状や構造などが異なる。
【0003】
台車の点検時には、軸受が取り付けられた輪軸をフレームから取り外し、その輪軸の車軸から軸受を抜き取る。特許文献1には、軸箱支持方式がウイング式である軸箱と軸受とを一緒に車軸から抜き取る軸受抜取装置が開示されている。この軸受抜取装置は、抜取機構によってターンテーブル上の輪軸の一方から軸箱および軸受を抜き取った後、ターンテーブルにより輪軸を180度回転させ、抜取機構によって輪軸の他方から軸箱および軸受を抜き取る。
【0004】
なお、軸箱支持方式の種類などによっては、先に軸受から軸箱を取り外して、軸受のみを車軸から抜き取る場合がある。以下、車軸から抜き取られる軸受のみ、又は、軸受および軸箱を軸受部と称して説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された軸受抜取装置は、ウイング式の軸箱および軸受(軸受部)を一緒に抜き取るものであるため、他の種類の軸受部(例えば軸受のみ)を抜き取るには、その軸受部用の軸受抜取装置が別途必要となる。しかし、複数種類の軸受抜取装置を独立して設置すると、工場内などの多くのスペースがこれらの装置で占有されてしまうという問題点が生じる。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる軸受抜取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の軸受抜取装置は、鉄道車両の輪軸の車軸から、前記車軸の軸方向の両端部にそれぞれ取り付けられた同種の一対の軸受部を抜き取るものであって、下方から支持した前記輪軸を上下の軸線を中心に回転させるターンテーブルと、前記ターンテーブルの周囲にそれぞれ配置され、前記ターンテーブル上の前記輪軸の前記車軸から前記軸受部を抜き取る第1抜取機構および第2抜取機構と、を備え、前記第1抜取機構と前記第2抜取機構とは、抜き取り可能な前記軸受部の種類が異なる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の軸受抜取装置によれば、抜き取り可能な軸受部の種類が異なる第1抜取機構と第2抜取機構とが、ターンテーブルの周囲にそれぞれ配置されている。これにより、輪軸を下方から支持するターンテーブルを回転させつつ、第1抜取機構または第2抜取機構のいずれか一方を動作させることで、輪軸の車軸の両端部にそれぞれ取り付けられた同種の一対の軸受部を両方とも抜き取ることができる。このように、軸受抜取装置は、ターンテーブルを共有しつつ、軸受部の種類に応じて第1抜取機構または第2抜取機構のいずれか一方を動作させることで、省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる。
【0010】
請求項2記載の軸受抜取装置によれば、請求項1記載の軸受抜取装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。固定部によって、ターンテーブルの軸線と、車軸の軸心とが直交する位置で輪軸がターンテーブル上に固定される。第1抜取機構は、固定部によって固定された輪軸の軸受部に第1係合部を係合させ、その第1係合部を車軸に対し第1移動部によって軸方向に移動させることで、車軸から軸受部を抜き取る。同様に、第2抜取機構は、固定部によって固定された輪軸の軸受部に第2係合部を係合させ、その第2係合部を車軸に対し第2移動部によって軸方向に移動させることで、車軸から軸受部を抜き取る。なお、第2係合部は、第1係合部とは異なる種類の軸受部に係合するように構成されているため、第1抜取機構と第2抜取機構とで、抜き取り可能な軸受部の種類が異なる。
【0011】
第1抜取機構と第2抜取機構とは、第1係合部を軸受部に係合したときの車軸の軸心と、第2係合部を軸受部に係合したときの車軸の軸心とが一致するようにターンテーブルの両側に向かい合わせて配置されている。これにより、ターンテーブルを180度回転させることで、軸受部を抜き取るために動作させる第1抜取機構と第2抜取機構とを選択できる。なお、このターンテーブルの回転量は、第1抜取機構および第2抜取機構のいずれか一方で車軸の両端部からそれぞれ軸受部を抜き取る場合に、途中でターンテーブルを回転させるときの回転量と同一である。よって、第1抜取機構と第2抜取機構とを選択するためにターンテーブルの回転を止める位置を増やさずに済み、ターンテーブルの回転制御を容易にできる。
【0012】
請求項3記載の軸受抜取装置によれば、請求項2記載の軸受抜取装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1係合部を軸受部に係合したときの車軸の軸心と、第2係合部を軸受部に係合したときの車軸の軸心とが一致する状態で、上面視において一直線上に並ぶ複数の目印が、ターンテーブル、第1抜取機構および第2抜取機構のそれぞれに設けられる。この複数の目印によって、ターンテーブル、第1抜取機構および第2抜取機構の設置時の位置決めを容易にできる。加えて、軸受抜取装置の点検時などで、各部の位置ずれの確認を複数の目印によって容易にできる。
【0013】
請求項4記載の軸受抜取装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の軸受抜取装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。種別判定センサは、ターンテーブル上の輪軸に取り付けられた軸受部が第1抜取機構で抜き取り可能な種類であるかを判別する。この種別判定センサによって第1抜取機構で抜き取り可能な種類ではないと判別された場合には、第1禁止手段によって第1抜取機構による軸受部の抜き取り動作を禁止する。これにより、第2抜取機構で抜き取り可能な軸受部を、第1抜取機構で抜き取ろうとすることに起因して、軸受部や第1抜取機構に損傷などが生じることを抑制できる。
【0014】
請求項5記載の軸受抜取装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の軸受抜取装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2抜取機構は、軸受部の1種である円筒状の軸受を抜き取るものであって、軸受の直径に応じて抜き取り動作を異ならせるものである。第2抜取機構は、軸受の直径を直径センサで判断し、その直径センサによる判断結果と異なる直径に応じた抜き取り動作が第2禁止手段によって禁止される。これにより、間違った直径に応じた第2抜取機構の動作による輪軸や軸受、第2抜取機構の損傷などを抑制できる。
【0015】
請求項6記載の軸受抜取装置によれば、請求項5記載の軸受抜取装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2抜取機構は、軸受に係合した第2係合部を第2移動部によって車軸に対し軸方向(例えば左右方向)へ移動させることで、車軸から軸受を抜き取る。この第2係合部の係合のため、第2係合部には車軸の軸直角方向のうち第1方向(例えば上方)に開口部が設けられ、第2抜取機構は軸直移動部を備える。具体的に、軸直移動部によって第2係合部を車軸に対し第1方向へ移動させて、車軸に取り付けられた軸受を開口部から第2係合部の内部へ収容することで、第2係合部が軸受に係合される。
【0016】
直径センサは、第2係合部の開口部へ向けて開口部の縁部分に設けられる。この直径センサは、自身から、車軸の軸直角方向のうち第1方向と垂直な第2方向(例えば前方)の所定範囲内に対象物が存在するかを検出するセンサによって構成されている。そのため、第2係合部を軸受に係合するために開口部へ軸受が向かうときに、直径センサの所定範囲内を軸受の少なくとも一部が通った場合と通らなかった場合とで、直径センサは軸受の直径を判断できる。このように、第2係合部の移動方向と、直径センサによる検出対象との組み合わせによって、軸受の直径を簡易な方法で判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態における軸受抜取装置の平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における軸受抜取装置の断面図である。
【
図4】軸受抜取装置の第1抜取機構による軸受部の抜き取り動作の前半を説明する模式図である。
【
図5】第1抜取機構による軸受部の抜き取り動作の後半を説明する模式図である。
【
図6】
図2のVI-VI線における軸受抜取装置の断面図である。
【
図7】軸受抜取装置の第2抜取機構による軸受部の抜き取り動作の前半を説明する模式図である。
【
図8】第2抜取機構による軸受部の抜き取り動作の後半を説明する模式図である。
【
図9】(a)は
図7(a)のIXa-IXa線における第2抜取機構の断面を示した模式図であり、(b)は第2抜取機構により抜き取る軸受の直径が設定と実際とで異なる場合を示す模式図である。
【
図10】軸受抜取装置の電気的構成を示したブロック図である。
【
図11】軸受抜取装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。
【
図12】第1抜取操作処理のフローチャートである。
【
図13】第2抜取操作処理のフローチャートである。
【
図14】第2片側抜取処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず
図1及び
図2を参照して、一実施形態における軸受抜取装置100について説明する。
図1は、一実施形態における軸受抜取装置100の平面図である。
図2は、軸受抜取装置100の背面図である。各図面の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれ軸受抜取装置100の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、軸受抜取装置100は、鉄道車両の台車の輪軸10から軸受部を抜き取るための装置である。輪軸10は、車軸11の軸方向両側に一対の車輪12を固定したものであり、一対の車輪12の径方向中央をそれぞれ車軸11が貫通している。車軸11のうち車輪12よりも軸方向外側の両端部には、同種で一対の軸受部がそれぞれ取り付けられる。
【0020】
軸受部は、後述の軸箱支持方式の種類などに応じて異なるため、まず1例としての軸受部13を説明する。軸受部13は、車軸11が挿入される円筒状の軸受と、その軸受が収容される軸箱とを備える。この軸受部13の軸箱は、車軸11に対し前後方向の両側にそれぞれ張り出す一対のウイング14を備える。台車のフレームが枕ばね等を介して車体を支持し、ウイング14が弾性体などを介して台車のフレームを支持することで、車輪12によって車体が弾性的に支持される。
【0021】
このように、フレームを軸箱で支持する方式を軸箱支持方式と言う。ウイング14を用いた軸箱支持方式はウイング式と称される。軸箱支持方式には、ウイング式の他に例えば軸梁式が有る。軸梁式では、円筒状の軸受15,15a(
図7,9参照)と軸箱とを容易に分離できるため、軸受15,15aのみが、軸受抜取装置100で抜き取る軸受部とされる。
【0022】
軸受抜取装置100は、輪軸10を下方から支持するターンテーブル30と、ターンテーブル30へ輪軸10を搬入するための一対のレール21と、ターンテーブル30から輪軸10を搬出するための一対のレール22と、輪軸10の車軸11から軸受部13を抜き取る第1抜取機構40と、車軸11から軸受15,15aを抜き取る第2抜取機構50と、軸受抜取装置100の各部に電力または油圧などの駆動力を送る電源・油圧ユニット60と、各部の動作を制御する制御装置70と、を備える。なお、
図1では、制御装置70及び電源・油圧ユニット60と、軸受抜取装置100の各部とを接続する配線の図示が省略されている(
図2から
図9も同様)。
【0023】
一対のレール21,22はいずれも、輪軸10の一対の車輪12間の距離と略同じだけ左右方向に離隔し、床面23上に前後方向に敷かれている。この一対のレール21,22の内側に沿って床面23に左右一対の溝23aが形成されている。車輪12の内側から径方向に張り出したフランジ12aを溝23aに入れ、レール21,22上で車輪12を転がすことにより、ターンテーブル30に対し輪軸10が搬入出される。
【0024】
ターンテーブル30は、輪軸10が載せられる天板31と、床面23の一部を凹ませた凹部24の底面上に固定されるベース32と、ベース32に対し天板31を回転させる回転部33と、輪軸10を左右方向に位置決めする押付部材34と、輪軸10を前後方向に位置決めするローラ35と、を備える。
【0025】
天板31は、上下方向に延びる軸線C1を中心とした略円板状の部材であり、天板31の上面が床面23と略同一平面上に位置する。天板31の上面には、一対のレール21,22と略同じだけ左右方向に離隔して互いに平行な一対のレール31aと、そのレール31aの内側に沿って形成される一対の溝31bと、が形成されている。
【0026】
溝31bの幅は、溝23aと同一である。一方、レール31aの幅は、レール21,22の幅よりも小さい。天板31は、このレール31aよりも左右方向の外側が切り欠かれている。
【0027】
回転部33は、ベース32に対して天板31を、軸線C1を中心に回転させる機器である。この回転によって、天板31のレール31a及び溝31bを前後方向に向けると、レール31aで前後のレール21,22の内側同士が繋がれ、前後の溝23a同士が溝31bで繋がれる。このようなターンテーブル30の状態を以下、搬送可能状態と称す。
【0028】
搬送可能状態において、輪軸10がレール21からレール31aに移り、フランジ12aが溝31b内に入ることで、輪軸10がターンテーブル30(天板31)上に搬入される。また、搬送可能状態において、輪軸10がレール31aからレール22へ移ることにより、輪軸10がターンテーブル30上から搬出される。
【0029】
押付部材34及びローラ35は、天板31上に搬入された輪軸10を位置決めするための部材である。これらの位置決めは、軸受部13や軸受15,15aを抜き取るときに行われ、本実施形態では搬送可能状態で行われる。
【0030】
押付部材34は、一対の溝31bの左右方向内側の壁面のうち前後方向の中央からそれぞれ出没する。左右一対の押付部材34は、溝31bの壁面からの張出量が互いに同一となるように機械的に連動する。これにより、溝31b内における一対のフランジ12aに、左右の押付部材34を押し付けることで、輪軸10が天板31上で左右方向に位置決めされる。
【0031】
ローラ35は、左右方向の回転軸を中心とした円筒状に形成され、その回転軸を中心に回転自在に構成される。ローラ35は、ターンテーブル30の左右両側に2個ずつ計4個が設けられる。ローラ35は、左右対称に設けられているため、以下、基本的に軸線C1よりも左側の2個を説明して右側の説明を一部省略する。
【0032】
2個のローラ35は、レール31aの左右方向外側であってレール21,22の前後方向の間に配置される。更に、2個のローラ35は、軸線C1を通ってレール21,22に垂直な仮想平面Pから前後方向に同じだけ離れている。即ち、仮想平面Pに関して2個のローラ35が前後対称に配置されている。
【0033】
前後のローラ35は、ベース32に固定された支持部材36に回転自在にそれぞれ支持されている。この支持部材36は、前後のローラ35の高さを同一にしつつ、ベース32に対しローラ35を上下に移動させる。上昇(上方へ移動)させた前後のローラ35で車輪12を支持すると、ローラ35上を車輪12が転がって前後のローラ35の中間位置に車輪12の前後方向の中央が位置決めされる。
【0034】
押付部材34及びローラ35を用いた一連の位置決め作業について説明する。この作業における押付部材34及び支持部材36の動作は、制御装置70によって制御され、電源・油圧ユニット60からの駆動力によって実行される。
【0035】
位置決め作業ではまず、ローラ35が天板31よりも下方に位置する状態かつ搬送可能状態で、作業者などが天板31上の前後方向の略中央に輪軸10を搬入する。次いで、押付部材34を車輪12のフランジ12aに押し付け、天板31に対し輪軸10を左右方向に仮で位置決めする。仮の位置決め後、押付部材34による押し付けを解除し、天板31上で輪軸10を移動可能にする。
【0036】
その後、支持部材36によってローラ35を上昇させ、レール31aから車輪12を浮かすように、左右両側とも前後のローラ35で車輪12を支持する。これにより、車軸11及び車輪12の軸心C4が仮想平面P上に位置し(軸心C4と軸線C1とが直交し)、天板31に対し輪軸10が前後方向に位置決めされる。更に、再び押付部材34をフランジ12aに押し付けることで、天板31に対し輪軸10が左右方向にも位置決めされる。
【0037】
次に
図1,2に加え
図3を参照して第1抜取機構40について説明する。
図3は、
図2のIII-III線における軸受抜取装置100の断面図である。なお、
図3では、輪軸10及び支持部材36等の図示を省略している。
【0038】
第1抜取機構40は、ターンテーブル30の周囲のうち左側に配置される。第1抜取機構40の動作は、制御装置70によって制御され、電源・油圧ユニット60からの駆動力によって実行される。
【0039】
第1抜取機構40は、床面23に設けた凹部24の底面上に固定される前後一対のレール41と、一対のレール41上をスライドする前後一対の柱42と、一対の柱42の上端同士を連結する梁43と、一対の柱42間に配置されるベルトコンベア44と、ベルトコンベア44よりも上方で一対の柱42間に配置される第1係合部45と、第1係合部45に支持される油圧シリンダ46と、床面23上に固定される安全柵47と、を備える。
【0040】
一対のレール41は、凹部24内で左右方向に延び、前後方向に離隔して互いに平行に配置されている。一対の柱42と梁43とによって門形状のフレームが形成される。図示しない駆動部によって、このフレーム(柱42及び梁43)がレール41上を左右方向にスライドする。
【0041】
ベルトコンベア44は、軸受部13を下方から支持したり、輪軸10から抜き取った軸受部13を搬送するためのものであり、一対の柱42間の中央に配置される。ベルトコンベア44は、左右方向に延びたコンベア本体44aと、コンベア本体44aに回転可能に取り付けられる複数のローラ44bと、複数のローラ44bに架け渡されてコンベア本体44aの上下両面を覆うベルト44cと、を備える。
【0042】
コンベア本体44aは、一対の柱42から内側へそれぞれ延びたアーム44dの先端に固定される。アーム44dは、図示しない駆動部によって柱42に対し上下方向に移動可能に構成される。このアーム44dの移動によってベルトコンベア44全体が上下方向に移動する。
【0043】
ローラ44bは、少なくともコンベア本体44aの左右方向の両端部にそれぞれ取り付けられ、前後方向の回転軸を中心に回転する。この回転によってベルト44cが動き、ベルト44c上の物品が前後方向に移動する。ベルトコンベア44の左方であって床面23上には、ベルトコンベア44の左端から物品を移される載置台48が配置される。
【0044】
第1係合部45は、輪軸10から軸受部13を抜き取るときに軸受部13に係合する部材であり、軸受15,15a(
図7,9参照)には係合不可能に構成される。第1係合部45は、一対の柱42間に架け渡される架設部45aと、架設部45aから右方へ突出する突出アーム45bと、突出アーム45bの先端に固定される第1引掛部45cと、を備える。
【0045】
架設部45aは、前後方向に延びた板状の部位であり、図示しない駆動部によって柱42に対し上下方向に移動可能に構成される。この架設部45aの移動によって第1係合部45全体が上下方向に移動する。
【0046】
突出アーム45bは、架設部45aの前後方向の中央に固定される。突出アーム45bの左右方向に垂直な断面は、下方に開口した略コ字状に形成されている。このコ字状の内側に軸受部13を収容できるよう、突出アーム45bの各寸法(左右方向の長さや開口部分の前後方向の幅など)が設定されている。
【0047】
第1引掛部45cは、突出アーム45bの先端に形成され、突出アーム45bの各壁面に対し内側へ張り出した板状の部位である。第1引掛部45cは、ベルトコンベア44の右端の直上に位置する。第1引掛部45cの前後方向の中央には、下方に開口した略U字状の切欠が形成されている。この切欠は、車軸11の直径よりも大きい。
【0048】
油圧シリンダ46は、軸受部13を輪軸10から抜き取る駆動力を発生させるアクチュエータである。油圧シリンダ46は、架設部45aを左右方向に貫通して左右方向に延びるシリンダ46aと、そのシリンダ46aから右方へ突出するロッド46bと、を備える。シリンダ46aからのロッド46bの突出量を変化させることで、油圧シリンダ46が伸縮する。ロッド46bの直径は、車軸11の両端部の外径および軸受部13の内径よりも若干小さい。これにより、ロッド46bを軸受部13に挿入できると共に、軸受部13からロッド46bを抜き易くできる。
【0049】
第1抜取機構40は、油圧シリンダ46の軸心C2が仮想平面P上に位置するように、ターンテーブル30に対して位置決めされる。この位置決め方法については後述する。また、油圧シリンダ46の軸心C2は、第1係合部45と共に油圧シリンダ46を上下方向に移動させた場合でも、仮想平面P上に位置し続ける。
【0050】
安全柵47は、稼働中のベルトコンベア44や第1係合部45等に作業者が触れないように、これらの前後左右を囲むためのものである。なお、
図2,3では、安全柵47のフレームのみを図示しているが、実際にはフレームで囲まれた部分が、上面を除いて基本的に網で塞がれている。
【0051】
安全柵47は、床面23から立ち上がる柵本体47aと、柵本体47aの一部から張り出す柵張出部47bと、を備える。柵本体47aは、上面視において一対のレール41の周囲を取り囲むように、前後左右に壁を有している。その左の壁は、前後方向の中央部が省略され、その省略した部分に載置台48が配置されている。
【0052】
柵本体47aの右(ターンテーブル30側)の壁は、前後方向の中央部の網が省略されている。これにより、その右の壁よりも右方へベルトコンベア44や第1係合部45を張り出させることができる。
【0053】
柵張出部47bは、柵本体47aの右の壁のうち網が省略された中央部から右方へ張り出す。柵張出部47bは、床面23から上方へ離れた位置にある。これにより、柵張出部47bの下方へ軸受部13及び車軸11の端部を進入させることができる。加えて、上方の柵張出部47bによって、上方に位置する第1係合部45に作業者を触れさせ難くできる。
【0054】
柵張出部47bの上部には、種別判定センサ49が取り付けられている。柵張出部47bは、この種別判定センサ49をターンテーブル30上の輪軸10の直上に位置させるために、柵本体47aから張り出させられている。
【0055】
種別判定センサ49は、柵張出部47bの下方に位置する軸受部(今から抜き取る軸受部)がウイング式の軸受部13であるか否かを判別するための光電センサである。
【0056】
種別判定センサ49は、ターンテーブル30上に輪軸10が位置決めされた状態において、その輪軸10に取り付けられた軸受部13のウイング14の直上に配置される。種別判定センサ49から直下へ発射した光がウイング14で反射し、その反射光が種別判定センサ49に戻った場合に、種別判定センサ49はオンとなる。
【0057】
これに対し、ターンテーブル30上の輪軸10に軸受15,15a(
図7,9参照)が取り付けられている場合、軸受15,15aにウイング14が無いため、種別判定センサ49はオフとなる。このようにして、種別判定センサ49は、柵張出部47bの下方に軸受部13が位置するか否かを判別する。
【0058】
次に
図2、
図4(a)から
図5(b)を参照して、第1抜取機構40による軸受部13の抜き取り動作について説明する。
図4(a)から
図5(b)には、その順に、第1抜取機構40による軸受部13の抜き取り操作が模式的に示されている。また、
図4(a)から
図5(b)にはそれぞれ、仮想平面P上における軸受抜取装置100の断面が模式的に示されている。
【0059】
第1抜取機構40による抜き取り動作は、押付部材34及びローラ35で輪軸10をターンテーブル30上に位置決めし、輪軸10の軸心C4を仮想平面P上に位置させた状態で行われる。この抜き取り動作を開始する前であって輪軸10をターンテーブル30上に搬送する前には、
図2に示すように、第1係合部45を最上位置まで移動させ、ベルトコンベア44を最下位置まで移動させ、柱42を最右位置まで移動させ、油圧シリンダ46を短縮させておく。この状態を第1抜取機構40の初期状態と称す。
【0060】
なお、第1係合部45の最上位置とは、軸受部13よりも十分に上方へ第1係合部45が離れた位置である。ベルトコンベア44の最下位置とは、軸受部13よりも十分に下方へベルトコンベア44が離れた位置である。柱42の最右位置とは、第1係合部45を最上位置から下方へ移動させたときに、ターンテーブル30上の車輪12と軸受部13との間に第1引掛部45cを挿入可能な位置である。
【0061】
図2に示す第1抜取機構40の初期状態で、輪軸10をターンテーブル30上に位置決めした後、
図4(a)に示すように、まずはベルトコンベア44を上方へ移動させ、軸受部13を下方からベルトコンベア44で支持する。なお、ベルトコンベア44が軸受部13に当たったことを、図示しないセンサで検出したときにベルトコンベア44の移動が停止する。
【0062】
次いで
図4(b)に示すように、最上位置の第1係合部45を下方へ移動させて、第1係合部45を軸受部13に係合させる。この係合した状態では、突出アーム45bの上側壁面に軸受部13が接触し、第1引掛部45cのU字状の切欠内を車軸11が通り、第1引掛部45cが車輪12と軸受部13との間に挿入される。更に、車軸11の軸心C4と油圧シリンダ46の軸心C2とが一致し、油圧シリンダ46のロッド46bと車軸11とが非接触で対向する。なお、突出アーム45bが軸受部13に当たったことを、図示しないセンサで検出したときに第1係合部45の移動が停止する。
【0063】
次いで
図5(a)に示すように、油圧シリンダ46を伸長させて、ロッド46bで車軸11を押す。この押したときの左方への反力がシリンダ46aから架設部45a、柱42へ伝わり、柱42がレール41上を左方へ移動する。柱42と共に移動する第1係合部45の第1引掛部45cが軸受部13に引っ掛かっているため、車軸11から軸受部13を抜き取ることができる。なお、このときロッド46bが軸受部13の内部に挿入され、ベルトコンベア44の左端が載置台48に隣接する。
【0064】
図5(b)に示すように、車軸11から軸受部13を抜き取った後は、油圧シリンダ46を短縮させて第1係合部45を最上位置に戻す。その後、ベルトコンベア44を駆動させ、ベルトコンベア44の右端から左端へ軸受部13を移動させる。更に、押付部材34及びローラ35による輪軸10の位置決めを解除する。
【0065】
次いで、ベルトコンベア44に設けた押出機構(図示せず)によって、ベルトコンベア44から載置台48へ軸受部13を移す。その後、ベルトコンベア44を最下位置まで移動させ、柱42を最右位置まで移動させることで、第1抜取機構40を
図2に示す初期状態に戻す。
【0066】
なお、載置台48に置かれた軸受部13は、ワイヤ81の先端に設けたフック82で吊り下げられて搬送される。ワイヤ81は、上方に架け渡された梁に沿って移動するウインチから下方へ繰り出されたり、ウインチによって上方へ巻き取られる。フック82は、周方向の一部が開口したU字状の部材であり、その開口を開閉する蓋83が取り付けられている。作業者が、蓋83を開けながら軸受部13の内部へフック82を通した後、蓋83を閉じることで、軸受部13がフック82に固定されて搬送可能となる。
【0067】
輪軸10の一方から軸受部13を抜き取って第1抜取機構40を初期状態に戻した後は、第1抜取機構40によって輪軸10の他方からも軸受部13を抜き取る。具体的に、ターンテーブル30の天板31を180度回転させた後、再び押付部材34及びローラ35でターンテーブル30上に輪軸10を位置決めする。次いで、
図4(a)から
図5(b)を用いて説明した通り(一方側の軸受部13を抜き取る場合と同様に)、第1抜取機構40で輪軸10から軸受部13を抜き取る。
【0068】
輪軸10の両方から軸受部13をそれぞれ抜き取った後は、押付部材34及びローラ35による位置決めを解除する。最後に、作業者がターンテーブル30上からレール22上へ輪軸10を搬出することによって、軸受抜取装置100(第1抜取機構40)の一連の抜き取り動作を終了する。
【0069】
次に
図1,2に加え
図6を参照して第2抜取機構50について説明する。
図6は、
図2のVI-VI線における軸受抜取装置100の断面図である。なお、
図6では、輪軸10及び支持部材36等の図示を省略している。
【0070】
第2抜取機構50は、ターンテーブル30の周囲のうち右側に配置され、ターンテーブル30を挟んで第1抜取機構40と向かい合う。第2抜取機構50の動作は、制御装置70によって制御され、電源・油圧ユニット60からの駆動力によって実行される。
【0071】
第2抜取機構50は、床面23に設けた凹部24内で上下方向に移動するベース53と、そのベース53に対して左右方向に移動する第2係合部56と、第2係合部56に支持される油圧シリンダ57と、床面23上に固定される固定柵58aと、固定柵58aに対してスライドする可動柵58dと、を主に備える。
【0072】
ベース53は、前後左右方向に広がる上面視矩形状の土台である。ベース53の後方の端縁の左右両側からそれぞれ下方へ向かって柱部53aが延びる。この柱部53aと対向する位置の凹部24の壁面には、上下に延びる左右一対のレール51が固定される。このレール51上をスライドする複数のスライダ52に柱部53aが固定される。
【0073】
更に、ベース53の下面と凹部24の底面との間には油圧シリンダ54が配設されている。油圧シリンダ54は、シリンダ54aからのロッド54bの張出量を変化させることで上下方向に伸縮する。この油圧シリンダ54の伸縮に応じて凹部24内でベース53が上下方向に移動する。
【0074】
ベース53の上面には、左右方向に延びて互いに平行な前後一対のレール55が設けられる。図示しない駆動部によって、このレール55上を第2係合部56がスライドする。
【0075】
第2係合部56は、輪軸10から軸受15,15a(
図7,9参照)を抜きとるときに軸受15,15aに係合する部材であり、軸受部13には係合不可能に構成される。第2係合部56は、上方に開口部56eを設けた略U字状の断面形状が左右方向に延びて形成され、左端に第2引掛部56aが設けられ、右端が壁部56bで塞がれる。
【0076】
第2引掛部56aは、自身よりも右方の第2係合部56の内面に対し内側へ張り出した板状の部位である。第2引掛部56aの前後方向の中央には、上方に開口した略U字状の切欠が形成されている。この切欠は車軸11の直径よりも大きい。
【0077】
油圧シリンダ57は、軸受15,15aを輪軸10から抜き取る駆動力を発生させるアクチュエータである。油圧シリンダ57は、壁部56bから右方へ延びるシリンダ57aと、そのシリンダ57aから左方へ突出して壁部56bを貫通するロッド57bと、を備える。シリンダ57aからのロッド57bの突出量を変化させることで、油圧シリンダ57が伸縮する。ロッド57bの直径は、車軸11の両端部の外径および軸受15,15aの内径よりも若干小さい。これにより、ロッド57bを軸受15,15aに挿入できると共に、軸受15,15aからロッド57bを抜き易くできる。
【0078】
壁部56bから突出した短縮状態のロッド57bの先端と、第2引掛部56aとの間に軸受15,15aを収容できるように、第2係合部56の各寸法(左右方向の長さや開口部56eの前後方向の幅など)が設定されている。
【0079】
第2抜取機構50は、油圧シリンダ57の軸心C3が仮想平面P上に位置するように、ターンテーブル30に対して位置決めされる。なお、油圧シリンダ57の軸心C3は、ベース53や第2係合部56を上下方向や前後方向に移動させた場合でも、仮想平面P上に位置し続ける。
【0080】
ここで、ターンテーブル30に対する第1抜取機構40及び第2抜取機構50の位置決め方法について具体的に説明する。この位置決めには、複数の目印M1~M5を用いる。
図1に示す通り、ターンテーブル30の左右両側の支持部材36には、それぞれ前後方向の中央の上面に点状の目印M1が設けられている。即ち、目印M1は、仮想平面P上に位置する。
【0081】
また、第1抜取機構40の第1係合部45の突出アーム45bには、上面の前後方向の中央に点状の目印M2が設けられている。更に、
図3に示す通り、第1係合部45の架設部45aには、上面および側面(
図3紙面手前側の面)の角部の前後方向の中央に線状の目印M3が設けられている。
【0082】
また、
図6に示す通り、第2抜取機構50の第2係合部56には、第2引掛部56aの側面(
図6紙面手前側の面)に線状の目印M4が設けられ、壁部56bの側面(
図6紙面手前側の面)に点状の目印M5が設けられている。
【0083】
位置決めのためにはまず、目印M3の位置に既知のレーザ墨出し器を設置し、レーザ墨出し器から照射する鉛直レーザ光の中心を目印M5に合わせる。この鉛直レーザ光上に右側の目印M1と目印M2と目印M4が位置するように、ターンテーブル30に対して第1抜取機構40及び第2抜取機構50の位置や角度を調整する。この調整時には、予め第1係合部45及び第2係合部56を最もターンテーブル30側に移動させ、第1係合部45を最も下方へ移動させ、第2係合部56を最も上方へ移動させておき、軸受部13や軸受15,15aを抜くときの状態に近づける。これにより、それらを抜くときの各部の位置ずれを抑制できる。
【0084】
目印M3にレーザ墨出し器を設置した場合には、第1係合部45に隠れた左側の目印M1に鉛直レーザ光が当たらない。そのため、第2抜取機構50を最も右方に移動させて、ベース53上にレーザ墨出し器を設置する。このレーザ墨出し器から照射する鉛直レーザ光の中心を目印M3に合わせつつ、鉛直レーザ光上に目印M5が位置するようにレーザ墨出し器の位置を調整することで、仮想平面P上の基準Baにレーザ墨出し器を位置させる。その後、鉛直レーザ光上に左側の目印M1が位置するように、ターンテーブル30に対して第1抜取機構40及び第2抜取機構50の位置や角度を調整する。
【0085】
このようにして、軸受抜取装置100の各部の位置決めが完了すると、仮想平面P上に油圧シリンダ46,57の軸心C2,C3が位置する。加えて、輪軸10をローラ35で支持したときに、輪軸10の軸心C4が仮想平面P上に位置する。即ち、第1係合部45を軸受部13に係合したときの車軸11の軸心C4と、第2係合部56を軸受15,15aに係合したときの車軸11の軸心C4とが一致する状態で、上面視において複数の目印M1~M5が一直線上に並ぶ。
【0086】
よって、複数の目印M1~M5を用いることで、ターンテーブル30、第1抜取機構40及び第2抜取機構50の設置時の位置決めを容易にできる。加えて、軸受抜取装置100の点検時などにおいて、各部の位置ずれの確認を複数の目印M1~M5によって容易にできる。
【0087】
更に、油圧シリンダ46を支持する第1係合部45に目印M2,M3がそれぞれ設けられているため、油圧シリンダ46の軸心C2と目印M2,M3とが近い。そのため、目印M2,M3による位置決めにより、仮想平面P上に軸心C2を精度良く位置決めできる。同様に、油圧シリンダ57を支持する第2係合部56に目印M4,M5がそれぞれ設けられているため、目印M4,M5による位置決めにより、仮想平面P上に油圧シリンダ57の軸心C3を精度良く位置決めできる。
【0088】
図1,2,6に戻って固定柵58a及び可動柵58dを説明する。固定柵58a及び可動柵58dは、稼働中の第2係合部56等に作業者が触れないように、これらを囲むための安全柵である。
【0089】
固定柵58aは、ターンテーブル30上を搬送される輪軸10が干渉しない位置で、第2係合部56の前後両側、右側および上側を覆い、左側が開口している。なお、
図1,2,6では、固定柵58aのフレームのみを図示しているが、実際の固定柵58aはフレームで囲まれた部分が、左側を除いて網で塞がれている。
【0090】
固定柵58aの上面には、左右方向に延びる前後一対のレール58bが設けられている。このレール58b上をスライドするスライダ58cに可動柵58dが固定されている。可動柵58dは、固定柵58aの外側に重なるように第2係合部56の前後両側および上側を覆い、左右両側が開口している。なお、
図1,2,6では、可動柵58dのフレームのみを図示しているが、実際の可動柵58dはフレームで囲まれた部分が、左右両側を除いて網で塞がれている。
【0091】
固定柵58aに対し可動柵58dを最も右方に位置させた収納時は、それらの左端の左右方向の位置が略一致し、ターンテーブル30上を搬送される輪軸10と可動柵58dとが干渉し難くなる。固定柵58aに対し可動柵58dを最も左方に位置させた伸長時は、ターンテーブル30上の軸受15の前後両側および上側が可動柵58dで覆われる。
【0092】
次に
図2、
図7(a)から
図9(b)を参照して、第2抜取機構50による軸受15,15aの抜き取り動作について説明する。なお、軸受15の抜き取り動作と、軸受15aの抜き取り動作とは略同一であるため、前者を基本的に説明して後者の説明を一部省略する。
【0093】
図7(a)から
図8(b)には、その順に、第2抜取機構50による軸受15の抜き取り操作が模式的に示されている。また、
図7(a)から
図8(b)にはそれぞれ、仮想平面P上における軸受抜取装置100の断面が模式的に示されている。
図9(a)は
図7(a)のIXa-IXa線における第2抜取機構50の断面を示した模式図である。
図9(b)は第2抜取機構50により抜き取る軸受15,15aの直径R1,R2が設定と実際とで異なる場合を示す模式図である。
【0094】
第2抜取機構50による抜き取り動作は、第1抜取機構40による抜き取り動作と同様に、押付部材34及びローラ35で輪軸10をターンテーブル30上に位置決めし、輪軸10の軸心C4を仮想平面P上に位置させた状態で行われる。なお、この抜き取り動作を開始する前であって輪軸10をターンテーブル30上に搬送する前に、
図2に示すように、油圧シリンダ54を短縮させてベース53を最下位置まで移動させ、第2係合部56を最右位置まで移動させ、油圧シリンダ57を短縮させ、可動柵58dを収納させておく。この状態を第2抜取機構50の初期状態と称す。
【0095】
ベース53の最下位置とは、ベース53上の第2係合部56の第2引掛部56aが軸受15よりも十分に下方へ離れた位置である。第2係合部56の最右位置とは、輪軸10よりも十分に右方へ第2係合部56が離れた位置である。
【0096】
図2に示す第2抜取機構50の初期状態で、軸受15が取り付けられた輪軸10をターンテーブル30上に位置決めした後、
図7(a)に示すように、まずは可動柵58dを伸長させる。次いで、レール55に沿って第2係合部56を左方へ移動させ、車輪12と軸受15との間の直下に第2引掛部56aを位置させる。
【0097】
次いで
図7(b)に示すように、油圧シリンダ54を伸長させて、ベース53及び第2係合部56を上方へ移動させる。これにより、開口部56eから第2係合部56の内部へ軸受15が収容され、第2係合部56が軸受15に係合する。この係合した状態では、第2引掛部56aのU字状の切欠内を車軸11が通り、第2引掛部56aが車輪12と軸受15との間に挿入される。
【0098】
なお、
図9(a)に示すように、第2抜取機構50では、直径R1の軸受15だけでなく、直径R1よりも大きい直径R2の軸受15aも輪軸10から抜き取ることができる。なお、この直径R1,R2の違いに応じてベース53の上方への移動(上昇)量を制御し、軸受15,15aと第2係合部56とを正しく係合させる必要がある。
【0099】
そのため、
図7(a)に示すように、第2係合部56の内部の底面から上方へ大径リミットスイッチ(LS)56c及び小径リミットスイッチ(LS)56dがそれぞれ突出している。大径LS56c及び小径LS56dは、軸受15,15aに当たって下方へ変位し、その変位量が所定値以上となった場合にオンとなる。
【0100】
大径LS56cは、直径R2の軸受15aが取り付けられた輪軸10の軸心C4と油圧シリンダ57の軸心C3とが一致したときにオンとなり、軸心C3よりも軸心C4が下方に位置してもオンのままである。小径LS56dは、直径R1の軸受15が取り付けられた輪軸10の軸心C4と油圧シリンダ57の軸心C3とが一致したときにオンとなり、軸心C3よりも軸心C4が下方に位置してもオンのままである。
【0101】
第2抜取機構50による抜き取り動作の開始前に作業者が直径R1を設定した場合、小径LS56dがオンになったときにベース53の上昇が停止する。一方、作業者が直径R2を設定した場合、大径LS56cがオンになったときにベース53の上昇が停止する。
【0102】
なお、
図9(b)に示すように、実際には直径R1の軸受15を第2抜取機構50で抜き取ろうとして、作業者が間違えて直径R2を設定しまうおそれがある。この場合、大径LS56cがオンになったときにベース53の上昇が停止するため、輪軸10の軸心C4と油圧シリンダ57の軸心C3とが上下方向にずれてしまう。このまま油圧シリンダ57を伸長させると、ロッド57bが軸受15に押し付けられ、軸受15やロッド57b等が損傷するおそれがある。実際が直径R2で、設定が直径R1である場合も同様に、軸受15やロッド57b等が損傷するおそれがある。
【0103】
この直径R1,R2の設定の間違いによる損傷を抑止するため、第2抜取機構50に直径センサ59が設けられている。直径センサ59は、第2係合部56に係合される軸受15,15aが直径R1か直径R2であるかを判断するためのものである。この直径センサ59による判断結果と、直径R1,R2の設定とが異なる場合に、第2抜取機構50による抜き取り動作を停止させることで、直径R1,R2の設定の間違いによる各部の損傷を防止できる。
【0104】
直径センサ59は、第2係合部56の開口部56eを向くように、開口部56eの周囲の縁部分のうち後方側に設けられる。直径センサ59は、直径センサ59から前方の所定範囲内に対象物が存在するかを検出するための光電センサである。具体的に、直径センサ59は、第2係合部56を上昇させるときに開口部56eを通るものが、直径R1の軸受15である場合にオフのままであり、直径R2の軸受15aである場合にオンとなる。このように、第2係合部56の移動方法と、直径センサ59による検出対象との組み合わせによって、軸受15,15aの直径R1,R2を簡易な方法で判断できる。
【0105】
次に、実際と設定とで直径R1が一致して正常に第2係合部56が軸受15に係合した後の第2抜取機構50の抜き取り動作を説明する。
図7(b)の状態から、
図8(a)に示すように、油圧シリンダ57を伸長させて、ロッド57bで車軸11を押す。この押したときの右方への反力がシリンダ57aから第2係合部56へ伝わり、第2係合部56がレール55上を右方へ(最右位置まで)移動する。第2係合部56の第2引掛部56aが軸受15に引っ掛かっているため、車軸11から軸受15を抜き取ることができる。なお、このときロッド57bが軸受15の内部に挿入される。
【0106】
図8(b)に示すように、車軸11から軸受15を抜き取った後は、油圧シリンダ57を短縮させてベース53及び第2係合部56を最下位置に戻し、可動柵58dを収納する。次いで、押付部材34及びローラ35による位置決めを解除し、ターンテーブル30の天板31を90度回転させ、輪軸10と第2抜取機構50との間に作業空間を確保する。
【0107】
固定柵58aの上面部には、短縮した油圧シリンダ57のロッド57bの先端よりも左側を除去して切欠部58eが形成されている。また、可動柵58dの上面部には、可動柵58dを収納したときに切欠部58eと上下方向に対向する左端部に亘って、蓋部58fが形成されている。蓋部58fは、自身よりも右側の可動柵58dの上面部に対して上方へ開くように、その右側とヒンジ58gで連結されている。
【0108】
蓋部58fを開けると、抜き取り後の軸受15の周囲が切欠部58eから上方へ露出する。そのため、軸受部13を搬送するときと同様に、ワイヤ81及びフック82を上方から降ろしてフック82に軸受15を固定した後、ワイヤ81を巻き上げることで、第2係合部56の外部へ軸受15を搬送できる。
【0109】
輪軸10の一方から抜き取った軸受15を搬送した後は、輪軸10の他方の軸受15が第2抜取機構50側に位置するように、ターンテーブル30の天板31を90度回転させる。その後、その他方の軸受15も第2抜取機構50によって輪軸10から抜き取る。具体的に、再び押付部材34及びローラ35でターンテーブル30上に輪軸10を位置決めした後、
図7(a)から
図8(b)を用いて説明した通り(一方側の軸受15を抜き取る場合と同様に)、第2抜取機構50で輪軸10から軸受15を抜き取る。
【0110】
輪軸10の両方から軸受15をそれぞれ抜き取った後は、ターンテーブル30を搬送可能状態に戻し、ターンテーブル30上からレール22上へ輪軸10を搬出することによって、軸受抜取装置100(第2抜取機構50)の一連の抜き取り動作を終了する。
【0111】
以上説明した軸受抜取装置100によれば、ターンテーブル30を回転させつつ、第1抜取機構40又は第2抜取機構50のいずれか一方を動作させることで、車軸11の両端部にそれぞれ取り付けられた同種の一対の軸受部(軸受部13又は軸受15,15a)を両方とも抜き取ることができる。このように、軸受抜取装置100は、ターンテーブル30を共有しつつ、軸受部の種類に応じて第1抜取機構40又は第2抜取機構50のいずれか一方を動作させることで、省スペース化しつつ、異なる種類の軸受部を抜き取ることができる。
【0112】
第1抜取機構40及び第2抜取機構50の各部を駆動させるための電源・油圧ユニット60は、それらの機構に共通して設けられているので、電源・油圧ユニット60を別々に設ける場合と比べて軸受抜取装置100を更に省スペース化できる。同様に、それらの機構の各部を制御するための制御装置70も共通して設けられているので、軸受抜取装置100を更に省スペース化できる。
【0113】
第1抜取機構40と第2抜取機構50とは、第1係合部45を軸受部13に係合したときの車軸11の軸心C4と、第2係合部56を軸受15に係合したときの車軸11の軸心C4とが一致するように、ターンテーブル30の両側に向かい合わせて配置されている。これにより、ターンテーブル30の天板31を180度回転させることで、軸受部(軸受部13又は軸受15,15a)を抜き取るために動作させる第1抜取機構40と第2抜取機構50とを選択できる。
【0114】
なお、このターンテーブル30の回転量は、第1抜取機構40及び第2抜取機構50のいずれか一方で車軸11の両端部からそれぞれ軸受部を抜き取る場合に、途中でターンテーブル30を回転させるときの回転量と同一である。よって、第1抜取機構40と第2抜取機構50とを選択するためにターンテーブル30の回転を止める位置を増やさずに済み、ターンテーブル30の回転制御を容易にできる。
【0115】
次に
図10から
図14を参照して軸受抜取装置100の各部の制御についてより詳しく説明する。
図10は、軸受抜取装置100の電気的構成を示したブロック図である。軸受抜取装置100の制御装置70は、CPU71と、ROM72と、RAM73とを備える。これらは、バスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。入出力ポート75には更に、電源・油圧ユニット60と、操作盤76と、表示灯77と、ターンテーブル30と、第1抜取機構40と、第2抜取機構50と、輪軸センサ78と、種別判定センサ49と、柵伸長センサ58hと、直径センサ59と、大径LS56cと、小径LS56dと、がそれぞれ接続されている。
【0116】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え不可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム72aが設けられる。なお、ROM72の代わりに、フラッシュROMやSSD、HDD等の記憶装置を用いても良い。
【0117】
CPU71により制御プログラム72aが実行されると、
図11のメイン処理が実行され、作業者による操作盤76の操作に応じて
図12の第1抜取操作処理や
図13の第2抜取操作処理が実行される。
【0118】
RAM73は、CPU71のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、第1抜取フラグ73aと、第2抜取フラグ73bと、が設けられる。第1抜取フラグ73a及び第2抜取フラグ73bは、軸受抜取装置100の電源投入時にオフに設定される。第1抜取機構40の動作が許可される場合に第1抜取フラグ73aがオンに切り換えられ、第2抜取機構50の動作が許可される場合に第2抜取フラグ73bがオンに切り換えられる。
【0119】
操作盤76は、作業者からの操作を受け付ける入力装置である。操作盤76には、図示しないが、第1抜取機構40を選択するスイッチと、第2抜取機構50を選択するスイッチと、それら選択した方を動作させるスイッチと、その動作中に一時停止した後で動作を再開させるスイッチと、直径R1を選択するスイッチと、直径R2を選択するスイッチと、が設けられている。
【0120】
表示灯77は、ターンテーブル30上に輪軸10を搬入可能であるか否かを周囲の作業者に報知するためのものである。表示灯77は、ターンテーブル30上に輪軸10を搬入可能である場合に緑色に発光し、それ以外は赤色に発光する。
【0121】
輪軸センサ78は、ターンテーブル30上に輪軸10が位置する場合にオンとなり、輪軸10が位置しない場合にオフとなるセンサである。柵伸長センサ58hは、可動柵58dが収納されている場合に「収納」を示し、可動柵58dが伸長されている場合に「伸長」を示す。
【0122】
次に
図11を参照して、制御装置70のCPU71で実行されるメイン処理を説明する。
図11は、メイン処理のフローチャートである。このメイン処理は、軸受抜取装置100の電源が投入されている間、所定時間毎(例えば0.1秒毎)に実行される。
【0123】
図11に示すように、メイン処理では、まず、輪軸センサ78がオフであるかを確認する(S11)。輪軸センサ78がオフである場合には(S11:Yes)、第1抜取機構40や第2抜取機構50で抜き取る対象物がターンテーブル30上に存在しないので、第1抜取フラグ73a及び第2抜取フラグ73bをオフにする(S12)。
【0124】
次いで、柵伸長センサ58hが「収納」を示すかを確認する(S13)。輪軸センサ78がオフであって柵伸長センサ58hが「収納」を示す場合には(S11:Yes、S13:Yes)、ターンテーブル30上に別の輪軸10が存在せず、搬入出時の輪軸10が干渉しない位置に可動柵58dがあるので、表示灯77を緑色に点灯する(S14)。これにより、ターンテーブル30上に輪軸10を搬入可能であることを、周囲の作業者へ報知できる。
【0125】
なお、S13の処理で柵伸長センサ58hが「収納」を示さない場合には(S13:No)、ターンテーブル30上へ輪軸10を搬入するときに、輪軸10が可動柵58dに干渉するおそれがあるため、表示灯77を赤色に点灯する(S17)。これにより、ターンテーブル30上に輪軸10を搬入不可能であることを、周囲の作業者へ報知できる。
【0126】
S14,S17の処理後はいずれもS11の処理に戻る。表示灯77が緑色に点灯していることを確認した作業者が、輪軸10をターンテーブル30上に搬入すると、輪軸センサ78がオンとなる。この状態でS11の処理が実行された場合には(S11:No)、S15等の処理後にS17の処理を実行して、赤色の表示灯77により既にターンテーブル30上に輪軸10が存在することを、周囲の作業者へ報知する。
【0127】
S15の処理では、種別判定センサ49がオンであるかを確認する(S15)。種別判定センサ49がオンである場合には(S15:Yes)、ターンテーブル30上の輪軸10に軸受部13が取り付けられていることを示す。よって、軸受部13を抜き取る第1抜取機構40の動作を許可するために、第1抜取フラグ73aをオンにし(S16)、S17の処理に移行する。
【0128】
一方、S15の処理で種別判定センサ49がオフである場合には(S15:No)、ターンテーブル30上の輪軸10に軸受15,15aが取り付けられていることを示す。軸受15,15aを抜き取る第2抜取機構50を動作させる場合、作業者の安全確保のために可動柵58dを伸長させることが好ましいため、柵伸長センサ58hが「伸長」を示すかを確認する(S18)。
【0129】
柵伸長センサ58hが「伸長」を示す場合には(S18:Yes)、軸受15,15aを抜き取る第2抜取機構50の動作を許可するために、第2抜取フラグ73bをオンにし(S19)、S17の処理に移行する。
【0130】
一方、S18の処理で柵伸長センサ58hが「伸長」を示さない場合には(S18:No)、作業者に可動柵58dを伸長させるために、S19の処理をスキップしてS17の処理に移行する。
【0131】
次に
図12を参照して、CPU71で実行される第1抜取操作処理を説明する。
図12は、第1抜取操作処理のフローチャートである。第1抜取操作処理は、作業者が操作盤76で第1抜取機構40の選択後に抜き取り動作の開始を操作した場合に実行される。
【0132】
図12に示すように、第1抜取操作処理では、まず第1抜取フラグ73aがオンであるかを確認する(S21)。第1抜取フラグ73aがオンである場合には(S21:Yes)、
図4(a)から
図5(b)を参照して説明した通り、輪軸10の片側から軸受部13を抜き取る第1片側抜取処理を実行する(S22)。
【0133】
第1片側抜取処理S22の終了時には、抜き取った軸受部13をベルトコンベア44の左端まで移動させ、押付部材34及びローラ35による輪軸10の位置決めを解除した状態で、第1抜取操作処理が一時停止する。この停止時に、作業者による操作盤76の操作などによって、軸受部13がベルトコンベア44から載置台48へ移される。
【0134】
第1片側抜取処理S22の終了後は、軸受部13を載置台48へ移す時間を確保するため、操作盤76で抜取再開の操作がされたかを確認する(S23)。抜取再開の操作がされていない場合は(S23:No)、S23の処理を繰り返し、抜取再開の操作がされるまで待つ。
【0135】
一方、操作盤76で抜取再開の操作がされた場合には(S23:Yes)、軸受部13が載置台48へ移されたものと判断し、もう片方の軸受部13を抜き取るために、まずは柵伸長センサ58hが「収納」を示すかを確認する(S24)。
【0136】
柵伸長センサ58hが「収納」を示さない場合には(S24:No)、ターンテーブル30の天板31を回転させるときに、輪軸10が可動柵58dに干渉するおそれがあるため、「エラー」となり(S27)、S23の処理に戻る。なお、S27の処理に限らず「エラー」となった場合には、図示しない報知部によってエラー内容を作業者に報知しても良い。
【0137】
可動柵58dを収納して抜取再開の操作をした後(S23:Yes)、その収納を柵伸長センサ58hで確認した場合(S24:Yes)、ターンテーブル30の天板31を180度回転させ(S25)、もう片方の軸受部13を第1抜取機構40側に向ける。最後に、その軸受部13を抜き取る第1片側抜取処理を実行し(S26)、第1抜取操作処理を終了する。第1片側抜取処理S26は、第1片側抜取処理S22と略同一である。
【0138】
なお、S21の処理で、第1抜取フラグ73aがオフである場合には(S21:No)、第1抜取機構40で抜き取り可能な軸受部13がターンテーブル30上に存在しないと種別判定センサ49によって判断されているため、「エラー」となり(S28)、第1抜取操作処理を終了する。
【0139】
このように、制御装置70は、第1抜取機構40の抜き取り動作を開始する操作がされても、種別判定センサ49の判別結果に応じたフラグのオンオフによって、抜き取り不可能な軸受15,15aに対する第1抜取機構40の抜き取り動作を禁止する。これにより、軸受15,15aを第1抜取機構40で抜き取ろうとすることに起因して、軸受15,15aや第1抜取機構40に損傷などが生じることを抑制できる。
【0140】
次に
図13及び
図14を参照して、CPU71で実行される第2抜取操作処理を説明する。
図13は、第2抜取操作処理のフローチャートである。作業者が操作盤76で、第2抜取機構50を選択して直径R1,R2のいずれかを選択した後、抜き取り動作の開始を操作した場合に第2抜取操作処理が実行される。
図14は、第2片側抜取処理S32,S42のフローチャートである。第2片側抜取処理S32,S42は、第2抜取操作処理中に実行される。
【0141】
図13に示すように、第2抜取操作処理では、まず第2抜取フラグ73bがオンであるかを確認する(S31)。第2抜取フラグ73bがオンである場合には(S31:Yes)、
図7(a)から
図8(b)を参照して説明した通り、輪軸10の片側から軸受15,15aを抜き取る第2片側抜取処理を実行する(S32)。
【0142】
図14に示すように、第2片側抜取処理S32では、まず芯出し処理を実行する(S51)。芯出し処理S51では、押付部材34及びローラ35による輪軸10の位置決めによって、輪軸10の軸心C4を仮想平面P上に位置させる。
【0143】
芯出し処理S51の後は、第2係合部56を車輪12側へ移動させる(S52)。次いで、第2係合部56の上昇を開始させ(S53)、直径R1を選択中であるかを確認する(S54)。
【0144】
直径R1を選択中である場合には(S54:Yes)、第2係合部56の上昇中に直径センサ59がオフであるかを確認する(S55)。直径センサ59がオフである場合は(S55:Yes)、小径LS56dがオンであるかを確認する(S56)。
【0145】
小径LS56dがオフであれば(S56:No)、第2係合部56が直径R1の軸受15に係合するまで上昇していないので、第2係合部56の上昇を待ちながらS55,S56の処理を繰り返す。
【0146】
第2係合部56の上昇によって、直径センサ59がオフのまま(S55:Yes)、小径LS56dがオンになれば(S56:Yes)、第2係合部56が軸受15に係合して油圧シリンダ57の軸心C3と輪軸10の軸心C4とが一致したので、第2係合部56の上昇を停止する(S57)。
【0147】
次いで、油圧シリンダ57を伸長させて輪軸10から軸受15を抜き取る(S58)。その後、第2係合部56を最下位置まで下降させ(S59)、押付部材34及びローラ35による輪軸10の位置決めを解除する芯出し解除処理を実行して(S60)、第2片側抜取処理S32を終了する。
【0148】
なお、第2係合部56の上昇中かつ直径R1の選択中であって(S54:Yes)、小径LS56dがオンになるまでの間に(S56:No)、直径センサ59がオンになった場合には(S55:No)、選択した直径R1とは異なる直径R2の軸受15aが第2係合部56に係合されようとしているとCPU71が判断する。この場合には、「エラー」とし(S61)、S56~S58の処理をスキップしてS59,S60の処理を実行し、第2片側抜取処理S32を終了する。
【0149】
即ち、制御装置70は、直径センサ59の判断結果である実際の直径R1,R2と、抜き取り対象として設定した直径R1,R2とが異なることが判明した場合に、第2抜取機構50による抜き取り動作を禁止する。これにより、間違った直径に応じた第2抜取機構50の動作による輪軸10や軸受15,15a、第2抜取機構50の損傷などを抑制できる。
【0150】
S54の処理で直径R2を選択中である場合には(S54:No)、第2係合部56の上昇中に直径センサ59がオンであるかを確認する(S62)。直径センサ59がオフである場合は(S62:No)、第2係合部56の上昇開始から所定時間が経過したかを確認する(S64)。
【0151】
所定時間の経過前は(S64:No)、S62の処理に戻って第2係合部56の上昇を待つ。第2係合部56の上昇によって、第2係合部56に取り付けた直径センサ59が直径R2の軸受15aを検出してオンになった場合には(S62:Yes)、大径LS56cがオンであるかを確認する(S63)。
【0152】
大径LS56cがオフであれば(S63:No)、第2係合部56が軸受15aに係合するまで上昇していないので、第2係合部56の上昇を待ちながらS63の処理を繰り返す。
【0153】
第2係合部56の上昇によって、大径LS56cがオンになれば(S63:Yes)、第2係合部56が軸受15aに係合して油圧シリンダ57の軸心C3と輪軸10の軸心C4とが一致したので、第2係合部56の上昇を停止して(S57)、輪軸10から軸受15aを抜き取る(S58)。次いで、S59,S60の処理を実行し、第2片側抜取処理S32を終了する。
【0154】
一方、直径センサ59がオフのまま(S62:No)、所定時間が経過した場合には(S64:Yes)、選択した直径R2とは異なる直径R1の軸受15が第2係合部56に係合されようとしているとCPU71が判断する。この場合には、「エラー」とし(S65)、S63,S57,S58の処理をスキップしてS59,S60の処理を実行し、第2片側抜取処理S32を終了する。なお、S64の処理では、所定時間の経過の確認に代えて、大径LS56c又は小径LS56dの少なくとも一方がオンになったかを確認しても良い。
【0155】
このように、制御装置70は、直径R1の選択時と同様に、直径センサ59の判断結果と、抜き取り対象とが異なることが判明した場合に、第2抜取機構50による抜き取り動作を禁止する。これにより、間違った直径に応じた第2抜取機構50の動作による輪軸10や軸受15,15a、第2抜取機構50の損傷などを抑制できる。
【0156】
図13に示すように、第2片側抜取処理S32の終了後は、その処理が正常に終了したかを判断する(S33)。第2片側抜取処理S32の処理中に「エラー」があった場合には(S33:No)、即ち直径R1,R2の設定が実際と異なっていた場合には、第2抜取処理を終了して第2抜取機構50による抜き取り動作を中止(禁止)する。
【0157】
一方、第2片側抜取処理S32が正常に終了した場合には(S33:Yes)、抜き取った軸受15,15aをワイヤ81及びフック82で外部へ搬送するための作業を、作業者に行わせる必要がある。そこで、第2抜取操作処理を一時停止し、操作盤76で抜取再開の操作がされたかを確認する(S34)。操作盤76で抜取再開の操作がされていない場合は(S34:No)、S34の処理を繰り返し、抜取再開の操作がされるまで待つ。
【0158】
操作盤76で抜取再開の操作がされた場合には(S34:Yes)、まず柵伸長センサ58hが「収納」を示すかを確認する(S35)。柵伸長センサ58hが「収納」を示さない場合には(S35:No)、ターンテーブル30の天板31を回転させるときに、輪軸10が可動柵58dに干渉するおそれがあるため、「エラー」となり(S43)、S34の処理に戻る。
【0159】
可動柵58dを収納して抜取再開が操作された後(S34:Yes)、その収納を柵伸長センサ58hで確認した場合(S35:Yes)、ターンテーブル30の天板31を90度回転させる(S36)。これにより、第2抜取機構50と輪軸10との間に作業スペースを確保できる。
【0160】
S36の処理後、再び第2抜取操作処理を一時停止し、確保した作業スペースで作業者に、抜き取った軸受15,15aをフック82に固定させる。その軸受15,15aを第2係合部56から外部へ搬送した後、作業者に操作盤76で抜取再開の操作をさせる。
【0161】
よって、S36の処理後は、再び操作盤76で抜取再開の操作がされたかを確認する(S37)。操作がされていない場合は(S37:No)、S37の処理を繰り返し、抜取再開の操作がされるまで待つ。一方、操作盤76で抜取再開の操作がされた場合には(S37:Yes)、柵伸長センサ58h、大径LS56c及び小径LS56dが全てオフであるかを確認する(S38)。なお、S38の処理では、柵伸長センサ58hが「収納」を示すことをオフと言う。
【0162】
柵伸長センサ58hがオフ(収納)でない場合には(S38:No)、ターンテーブル30の回転時に、輪軸10が可動柵58dに干渉するおそれがあるため、「エラー」となり(S44)、S37の処理に戻る。また、大径LS56c及び小径LS56dがオンである場合には(S38:No)、抜き取った軸受15,15aが第2係合部56内に残っているため、「エラー」となり(S44)、S37の処理に戻る。
【0163】
可動柵58dを収納して第2係合部56から軸受15,15aを外部へ搬送し、抜取再開が操作された後(S37:Yes)、それらを柵伸長センサ58h、大径LS56c及び小径LS56dで確認できた場合(S38:Yes)、ターンテーブル30の天板31を、S36の処理時と同じ方向へ更に90度回転させる(S39)。これにより、S32の処理で抜き取った方とは逆側の軸受15,15aを第2抜取機構50側に向ける。
【0164】
S39の処理後、可動柵58dを再び伸長させるため、第2抜取操作処理を一時停止し、操作盤76で抜取再開の操作がされたかを確認する(S40)。操作盤76で抜取再開の操作がされていない場合は(S40:No)、S40の処理を繰り返し、抜取再開の操作がされるまで待つ。
【0165】
操作盤76で抜取再開の操作がされた場合には(S40:Yes)、柵伸長センサ58hが「伸長」を示すかを確認する(S41)。柵伸長センサ58hが「伸長」を示さない場合には(S41:No)、作業者に対する安全確保のための可動柵58dが伸長していないので、「エラー」となり(S45)、S40の処理に戻る。
【0166】
可動柵58dを伸長して抜取再開が操作された後(S40:Yes)、その収納を柵伸長センサ58hで確認した場合(S41:Yes)、逆側の軸受15,15aを輪軸10から抜き取る第2片側抜取処理を実行し(S42)、第2抜取操作処理を終了する。なお、第2片側抜取処理S42は、
図14に示す通り第2片側抜取処理S32と同一である。
【0167】
なお、第2抜取操作処理のS31の処理で、第2抜取フラグ73bがオフである場合には(S31:No)、第2抜取機構50で抜き取り可能な軸受15,15aがターンテーブル30上に存在しないため、「エラー」となり(S46)、第2抜取操作処理を終了する。
【0168】
このように、制御装置70は、第2抜取機構50の抜き取り動作を開始する操作がされても、種別判定センサ49の判別結果に応じたフラグのオンオフによって、抜き取り不可能な軸受部13に対する第2抜取機構50の抜き取り動作を禁止する。これにより、軸受部13を第2抜取機構50で抜き取ろうとすることに起因して、軸受部13や第2抜取機構50に損傷などが生じることを抑制できる。
【0169】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推測できるものである。例えば目印M1~M5の位置や形状を適宜変更しても良い。
【0170】
上記実施形態では、第1抜取機構40がウイング式の軸受部13を抜き取るものであり、第2抜取機構50が軸梁式の軸受15,15a(軸受部)を抜き取るものである場合を説明したが、これに限られない。第1抜取機構40と第2抜取機構50とで抜き取り可能な軸受部の種類が異なれば良い。軸受部の種類としては、軸受単品と、軸受及び軸箱が一体化されたものとがある。その軸箱の種類としては、ウイング式用および軸梁式用の他に、単支持ペデスタル式用、円筒案内式用、リンク式用、ミンデン式用、積層ゴム式用のものがそれぞれ有る。種別判定センサ49は、この軸受部の種類を判別できれば上記実施形態で説明したものに限らない。
【0171】
上記実施形態では、第1抜取機構40と第2抜取機構50とがターンテーブル30の両側に向かい合わせて(軸線C1まわりに180度ずらして)配置される場合を説明したが、これに限られない。例えば、第1抜取機構40と第2抜取機構50とを、ターンテーブル30の軸線C1のまわりに90度ずらして配置しても良く、その角度を90度や180度以外としても良い。
【0172】
但し、上記実施形態の通り、第1抜取機構40と第2抜取機構50とが180度ずれて、それらが向かい合う左右方向と直交する前後方向にレール21,22が延びていることが好ましい。この場合には、レール21からターンテーブル30に搬入した輪軸10の向きを変えることなく、片側の軸受部(軸受部13又は軸受15,15a)を第1抜取機構40又は第2抜取機構50で抜き取ることができる。更に、輪軸10の両側から軸受部を抜き取った後は、輪軸10の向きを変えることなく、ターンテーブル30からレール22へ輪軸10を搬出できる。
【0173】
なお、例えば、レール21の向きとレール22の向きとが90度異なり、レール21からレール22へ移すときにターンテーブル30で輪軸10を90度回転させる場合がある。この場合には、ターンテーブル30の周囲に第1抜取機構40と第2抜取機構50とを180度ずらして配置することが困難である。よってこの場合、レール21,22同士の角度と同じだけ、ターンテーブル30を挟んでレール21,22と向かい合うように、第1抜取機構40と第2抜取機構50とを90度ずらして配置することが好ましい。
【0174】
上記実施形態では、第1抜取機構40又は第2抜取機構50を選択して軸受部の抜き取り動作を開始した場合に、選択した方で抜き取り可能な軸受部の種類と、種別判定センサ49の判別結果(実際に抜き取る対象の軸受部の種類)とが異なる場合に、その抜き取り動作の処理を実行しないことで抜き取り動作を禁止している。しかしこれに限らず、例えば、種別判定センサ49の判別結果と一致する種類の軸受部を抜き取り可能な第1抜取機構40又は第2抜取機構50を自動的に動作させることで、抜き取り不可能な第1抜取機構40又は第2抜取機構50の動作を禁止しても良い。
【0175】
上記実施形態では、直径R1,R2を選択して第2抜取機構50による軸受15,15aの抜き取り動作を開始した後、選択した方と、直径センサ59の判断結果(実際に抜き取る対象の直径R1,R2)とが異なる場合に、その抜き取り動作を中止することで抜き取り動作を禁止している。しかしこれに限らず、例えば、直径センサ59の判断結果と一致する直径R1,R2の軸受15,15aに第2係合部56が自動的に係合するよう、第2係合部56の移動を制御することで、一致しない場合の第2抜取機構50による抜き取り動作を禁止しても良い。
【0176】
上記実施形態では、直径センサ59が、自身から所定範囲内に対象物が存在するかを検出する光電センサである場合を説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自身から対象物までの距離を計測する測距センサで直径センサを構成し、その直径センサを上記実施形態と同一の位置に設置しても良い。この場合、開口部56eへ収容される軸受15,15aの側面をなぞりつつ、その側面と直径センサとの距離を計測できるので、計測結果から側面の曲がり具合を、即ち軸受15,15aの直径を算出できる。また、直径センサ59や種別判定センサ49を画像センサやレーザセンサ、近接センサなどで構成し、そのセンサの種類に応じて配置や計測方法を適宜変更しても良い。
【0177】
上記実施形態では、第1係合部45を軸受部13に係合した状態において、油圧シリンダ46で車軸11を押すことにより、車軸11から軸受部13を抜き取る場合を説明した。しかし、車軸11に対し第1係合部45を移動させる第1移動部は、油圧シリンダ46に限らず、エアシリンダや電動シリンダとしても良い。また、第1移動部は、車軸11を押すものに限らず、例えばレール41上で柱42を移動させるアクチュエータによって構成しても良い。
【0178】
同様に、軸受15,15aに係合した第2係合部56を車軸11に対し移動させる第2移動部は、油圧シリンダ57に限らず、エアシリンダや電動シリンダ、その他のアクチュエータとしても良い。また、第2係合部56を上下方向に移動させる油圧シリンダ54を、エアシリンダや電動シリンダ、その他のアクチュエータに代えても良い。
【0179】
上記実施形態では、軸受抜取装置100が輪軸センサ78を備える場合について説明したが、輪軸センサ78を省略しても良い。この場合のメイン処理では、第1抜取機構40及び第2抜取機構50がいずれも初期状態であってターンテーブル30が搬送可能状態であるときに、表示灯77を緑色に点灯させ、それ以外の状態では表示灯77を赤色に点灯させる。
【0180】
更に、第1抜取フラグ73a及び第2抜取フラグ73bも省略しても良い。この場合、
図12のS21の処理では、種別判定センサ49がオンであるかを確認して、オンである場合にS22の処理に移行し、オフである場合にS28の処理に移行すれば良い。同様に、
図13のS31の処理では、種別判定センサ49がオフであるかを確認して、オフである場合にS32の処理に移行し、オンである場合にS46の処理に移行すれば良い。
【0181】
また、輪軸センサ78や第1抜取フラグ73a、第2抜取フラグ73bを省略した場合には、輪軸10がターンテーブル30上に無い状態で、
図12の第1片側抜取処理S22や、
図13,14の第2片側抜取処理S32が実行されるおそれがある。そこで、例えば、輪軸10の位置決めのために作動させた押付部材34やローラ35が、車輪12からの反力を受けなかった場合に、第1片側抜取処理S22や第2片側抜取処理S32を中止させても良い。
【符号の説明】
【0182】
100 軸受抜取装置
10 輪軸
11 車軸
13 軸受部
15,15a 軸受(軸受部の一種)
30 ターンテーブル
34 押付部材(固定部の一部)
35 ローラ(固定部の一部)
40 第1抜取機構
45 第1係合部
46 油圧シリンダ(第1移動部)
49 種別判定センサ
50 第2抜取機構
54 油圧シリンダ(軸直移動部)
56 第2係合部
56e 開口部
57 油圧シリンダ(第2移動部)
59 直径センサ
C1 軸線
C4 軸心
M1~M5 目印
S21,S28 第1禁止手段
S54,S55,S61,S62,S64,S65 第2禁止手段