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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067164
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】索条牽引式傾斜輸送設備の車両
(51)【国際特許分類】
   B61B 9/00 20060101AFI20240510BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B61B9/00 D
F16D63/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177013
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 修次
(72)【発明者】
【氏名】杉本 渉
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB25
3J058BA12
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC78
3J058FA19
(57)【要約】
【課題】車両を確実に停止させるとともに、車両の停車位置を保持することのできる索条牽引式傾斜輸送設備の車両を提供することにある。
【解決手段】高低差を有する停留場10、11間に車両14の両側方の位置において平行して敷設した走行レール17と、走行レール17の間に敷設した案内レール18とを有し、走行レール上17を案内レール18に案内されて走行する車両14に1条の索条15を巻き掛け、索条15の両端を停留場11に設けた巻き上げ装置16の巻き上げドラム30a、30bに掛止して、巻き上げドラム30a、30bを回転駆動することにより索条15が車両14を牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、車両14には、案内レール18に作用して制動を行う車両制動機27を備えた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する停留場間に車両の両側方の位置において平行して敷設した走行レールと、該走行レールの間に敷設した案内レールとを有し、前記走行レール上を前記案内レールに案内されて走行する前記車両に一条の索条を巻き掛け、該索条の両端を前記停留場に設けた巻き上げ装置の巻き上げドラムに掛止して、該巻き上げドラムを回転駆動することにより前記索条が前記車両を牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、前記車両には、前記案内レールに作用して制動を行う車両制動機を備えたことを特徴とする索条牽引式傾斜輸送設備の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地において索条により車両を牽引して乗客や物資を輸送する索条牽引式傾斜輸送設備の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜地において索条により客車や台車(以下、これらをまとめて車両という)を牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備は、旅客設備として人員の輸送を行うケーブルカーや、産業用設備として物資の輸送を行うインクライン等として知られている。索条牽引式傾斜輸送設備の一般的な構成としては、敷設されたレール上に車両を移動可能に設置し、この車両に接続された索条をウインチや滑車によって巻き掛け駆動することにより、車両がレールに沿って移動するように構成している。
【0003】
索条牽引式傾斜輸送設備の一般的な構成としては、山頂側の停留場に索条駆動用の滑車を配設してこの滑車に索条を巻き掛けて索条の両端に車両を連結するか、または索条の一端に車両を連結し他端にはカウンターウエイトを連結して、いわゆるつるべ式に運行を行う方式が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、このようなつるべ方式によらず、索条の端部に車両を連結し、山頂側の停留場に備えたウインチにより索条を巻き取り、または繰り出して運行を行う方式もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記の索条駆動用の滑車やウインチドラムは、減速機を介して電動機に連結されており、電動機の回転数を制御することにより滑車を回転させ、索条により車両を牽引して運行が行われる。減速機の入力軸あるいは電動軸の出力軸には、ドラム式やディスク式の制動装置を備えており、車両が停留場に到着すると制動装置が動作するとともに、この制動装置の動作を検知して電動機への電力供給が遮断され、制動機の制動力によって索条ないし車両の停止状態が保持される(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
このような索条牽引式傾斜輸送設備のうち比較的大型の輸送設備において、外周部を手摺で囲っただけの簡易な構成とした車両を用い、この車両に多くの人員を搭乗させて津波の発生時に人員を高台に避難させる輸送設備も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-219131号公報
【特許文献2】特開2007-190962号公報
【特許文献3】特開2008-201390号公報
【特許文献4】特開2013-224200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような索条牽引式傾斜輸送設備においては、車両は索条に牽引されて移動することから、索条の破断や機器の故障等による車両の逸走を防止することや、車両を確実に停車させて停車位置に保持することなどの安全性が要求される。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両を確実に停止させるとともに、車両の停車位置を保持することのできる索条牽引式傾斜輸送設備の車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、高低差を有する停留場間に車両の両側方の位置において平行して敷設した走行レールと、該走行レールの間に敷設した案内レールとを有し、前記走行レール上を前記案内レールに案内されて走行する前記車両に一条の索条を巻き掛け、該索条の両端を前記停留場に設けた巻き上げ装置の巻き上げドラムに掛止して、該巻き上げドラムを回転駆動することにより前記索条が前記車両を牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、前記車両には、前記案内レールに作用して制動を行う車両制動機を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、索条牽引式傾斜輸送設備の車両を確実に停止させるとともに、車両の停車位置を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】索条牽引式傾斜輸送設備の全体を示す側面図
図2】巻き上げ装置の平面図
図3】車両の側面図
図4】車両の正面図
図5図3におけるA-A矢視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、索条牽引式傾斜輸送設備の全体を示す側面図である。低地側停留場10と高台側停留場11との間には、軌道13が敷設されており、この軌道13上には貨物や人員を搭載する車両14を移動可能に備えている。軌道13に沿っては、高台側停留場11に備えた巻き上げ装置16に接続された索条15が延線されており、後述するように索条15は、車両14の下部に巻き回されている。そして、巻き上げ装置16を駆動すると、索条15が高台側停留場11方向へと巻き上げられ、貨物や人員を搭載した車両14は、索条15に牽引されて低地側停留場10から高台側停留場11へと移動する。
【0012】
図2は巻き上げ装置16の平面図である。図に示された巻き上げ装置16は、索条15の一端を一方の巻き上げドラム30aに掛止し、この索条15を車両14方向へと延伸させて平衡滑車26に巻き掛けて折返した後、再び高台側停留場11へ延伸させて、他端を他方の巻き上げドラム30bに掛止して、両巻き上げドラム30a、30bを回転駆動することにより索条15を巻き上げるようにした、いわゆるウィンチ式の巻き上げ装置16である。
【0013】
巻き上げドラム30aと30bとを駆動する構成は同一であるので、以下、巻き上げドラム30aを駆動する構成について説明する。巻き上げドラム30aの回転中心には、ドラム軸34を嵌挿して固着し、このドラム軸34はドラムフレーム33上に固設した軸受け44により回転自在に支持されている。ドラム軸34の減速機31側は、軸受け44より突出しており、この突出部がカップリング36を介して減速機31の出力軸35に連結されている。減速機31の入力軸には、自在継手38を介して電動機32が連結されており、この電動機32によって巻き上げドラム30が回転駆動される。また、減速機31の入力軸には、ディスク式の制動機37を備えており、これにより制動及び停止保持を行う。
【0014】
図3は車両14の側面図、図4は車両14の正面図、図5図3におけるA-A矢視図である。車両14は、左右両側に5輪ずつ計10輪の車輪22を備えた下部フレーム20と、貨物や人員を搭載する上部フレーム21と、下部フレーム20上に上部フレーム21を支持するための支持フレーム23とから構成されている。側面視において下部フレーム20は、軌道13と平行となるように傾斜しており、上部フレーム21は水平となっている。上部フレーム21の上面は、全面が平板状となっており、また、上部フレーム21の外周には、手摺24を備えている。低地側停留場10と高台側停留場11とにおいて車両14の停止位置には、上部フレーム21の上面と略面一となるように乗降プラットホームが形成されており、貨物の積み下ろしや人員の乗降が行われる。
【0015】
軌道13は車両14の中央位置で延伸する案内レール18と、左右の側部位置で延伸する走行レール17とで構成されている。走行レール17は、H形鋼の上部に普通レールを固定した構成であり、この普通レール上を車輪22が転動する。また、案内レール18は、H形鋼の上面中央部に平板状の突出部を形成した構成であり、この突出部に後述する車両14の車両制動機27が作用する。下部フレーム20の下部には、前部と後部に左右に対向して案内輪25を回転自在に備えており、前部及び後部の案内輪25は、それぞれ案内レール18のH形鋼のウェブを両側方から挟み込んでいる。これによって、車両14は、案内レール18にガイドされて移動するようになっている。
【0016】
さらに、下部フレーム20の下部には、2個の平衡滑車26を回転自在に備えている。平衡滑車26は、左右方向の対称位置に配置されており、それぞれ案内レール18と走行レール17との略中央に位置している。各平衡滑車26には、高台停留場11方向へ延びる索条15が巻き掛け折り返されており、左右の索条15を等速で巻き上げることにより車両14が牽引される。このとき、左右の索条15の巻き上げ速度が相違しても、これによる牽引力の差は、平衡滑車26が回転して索条15が左右いずれかに移動することにより吸収され、左右の索条15は同一の牽引力によって車両14を牽引する。したがって、索条15の牽引力によっては車両14のヨーイングが誘発されることがない。
【0017】
次に、下部フレーム20の高台停留場11方向側には、4台の車両制動機27を備えている。車両制動機27は、油圧開放式の車両制動機27であって、ばねの作動力によって案内レール18の上部突出部をパッドで挟み込んで制動し、車両制動機27に備えた油圧シリンダーを動作させることにより制動力を開放する。この油圧シリンダーは、別途備えた油圧ユニットや手動ポンプで発生する油圧により動作する。
【0018】
このように構成した車両制動機27は、次のような場合に動作する。まず、索条15の破断や巻き上げ装置16の故障等により索条が弛緩した場合には、これを機械的又は電気的に検知して車両制動機27を動作させ、車両14の制動を行うとともに車両14を停止位置に固定し車両14の逸走を防止する。また、車両14が停留場10、11に到着した場合には、巻き上げ装置16の巻き上げドラム30a、30bの駆動を停止して制動機37を動作させるとともに、車両14においても車両制動機27を動作させる。このようにすることで、車両14に搭載する荷重が変化しても車両14を常に同一位置で停車させておくことができる。
【符号の説明】
【0019】
10 低地側停留場
11 高台側停留場
13 軌道
14 車両
15 索条
16 巻き上げ装置
17 走行レール
18 案内レール
20 下部フレーム
21 上部フレーム
22 車輪
23 支持フレーム
24 手摺
25 案内輪
26 平衡滑車
27 車両制動機
30a 巻き上げドラム
30b 巻き上げドラム
31 減速機
32 電動機
33 ドラムフレーム
34 ドラム軸
35 出力軸
36 カップリング
37 制動機
38 自在継手
図1
図2
図3
図4
図5