(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067167
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】マウスピースジスクおよびマウスピースジスク用金型およびマウスピースジスク用製造装置およびマウスピースジスク製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177020
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】524030721
【氏名又は名称】ELEBON株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳伸
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ01
4C052JJ10
(57)【要約】
【課題】 接着剤を使用せず、樹脂層と樹脂層の間の密着性が高く、奥歯の部分と前歯の部分で厚さを調節したマウスピースジスクの製造方法およびマウスピースジスクを提供すること。
【解決手段】 第1の樹脂からなる第1樹脂層1と、第2の樹脂からなり、第1樹脂層1と接合された第2樹脂層2とを具備するマウスピースジスク100であって、第2樹脂層2は、所定の領域がその周囲より厚い肉厚部21を有する。また、第3の樹脂からなり、第2樹脂層2の第1樹脂層1とは反対側に接合された第3樹脂層3を更に有していてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂からなる第1樹脂層と、第2の樹脂からなり、前記第1樹脂層と接合された第2樹脂層とを具備するマウスピースジスクであって、
前記第2樹脂層は、所定の領域がその周囲より厚い肉厚部を有することを特徴とするマウスピースジスク。
【請求項2】
第3の樹脂からなり、前記第2樹脂層の前記第1樹脂層とは反対側に接合された第3樹脂層を具備することを特徴とする請求項1記載のマウスピースジスク。
【請求項3】
前記肉厚部は、前記マウスピースジスクの中心側から外縁側にいくほど広がる形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のマウスピースジスク。
【請求項4】
前記肉厚部は周囲より0.1mm以上0.3mm以下の範囲で厚く形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のマウスピースジスク。
【請求項5】
前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂より弾性率が低いことを特徴とする請求項1又は2記載のマウスピースジスク。
【請求項6】
前記第2の樹脂は、前記第3の樹脂より弾性率が低いことを特徴とする請求項1又は2記載のマウスピースジスク。
【請求項7】
少なくとも表面のいずれか一方に所定の機能をもった機能形状を有することを特徴とする請求項1又は2記載のマウスピースジスク。
【請求項8】
奥歯の咬合部の厚さに対して、奥歯の咬合部と前歯の咬合部の厚さの違いが15%以下であることを特徴とするマウスピース。
【請求項9】
第1フィルム上に樹脂を供給してマウスピースジスクを製造するための第1金型と第2金型からなる金型であって、
前記第1金型は、当該第1金型の内面と前記第1フィルムの外面との間を密閉するための第1密閉手段と、当該第1金型の外面から内面まで貫通する第1吸気路と、を有し、
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部を有することを特徴とする金型。
【請求項10】
第1フィルムと第3フィルムの間に樹脂を供給してマウスピースジスクを製造するための第1金型と第2金型からなる金型であって、
前記第1金型は、
当該第1金型の内面と前記第1フィルムの外面との間を密閉するための第1密閉手段と、外面から内面まで貫通する第1吸気路と、を有し、
前記第2金型は、前記第3フィルムに形成された樹脂供給用穴を介して前記樹脂を供給するための樹脂供給流路と、当該第2金型の内面と前記第3フィルムの外面との間を密閉するための第2密閉手段と、当該第2金型の外面から内面まで貫通する第2吸気路と、を有し、
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部を有することを特徴とする金型。
【請求項11】
前記凹部は、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の中心側から外縁側にいくほど広がる形状であることを特徴とする請求項9記載の金型。
【請求項12】
前記凹部は、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の中心側から外縁側にいくほど広がる形状であることを特徴とする請求項10記載の金型。
【請求項13】
前記樹脂供給流路は、前記第1フィルムと前記第3フィルムの間に樹脂を供給するための吐出孔が円周上の均等な角度で2以上配置されていることを特徴とする請求項10記載の金型。
【請求項14】
前記第2金型は、前記第3フィルムに形成された樹脂供給用穴に嵌合可能な凸部を有することを特徴とする請求項9ないし13のいずれかに記載の金型。
【請求項15】
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、マウスピースジスクの表面に所定の機能をもった機能形状を形成するための凹凸部を有することを特徴とする請求項9ないし13のいずれかに記載の金型。
【請求項16】
マウスピースジスクを製造するための製造装置であって、
請求項11ないし14のいずれかに記載の金型と、
前記樹脂供給流路を介して前記金型内に樹脂を供給する樹脂供給手段と、
第1吸気路を介して前記第1金型の内面と前記第1フィルムの外面の間を減圧する減圧手段と、
前記金型の第1金型と第2金型を開閉させるための金型開閉手段と、
を具備することを特徴とする製造装置。
【請求項17】
マウスピースジスクの製造方法であって、
第1の樹脂からなる第1フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第1フィルム表面改質工程と、
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面であって、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する金型内に前記第1フィルムを配置し、前記凹部に沿った肉厚部が形成されるまで前記第1フィルムの第1表面に第2の樹脂を加圧して供給する樹脂供給工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項18】
マウスピースジスクの製造方法であって、
第1の樹脂からなる第1フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第1フィルム表面改質工程と、
第3の樹脂からなり樹脂供給用穴を有する第3フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第3フィルム表面改質工程と、
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面であって、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する金型内に前記第1フィルムと第3フィルムを配置し、前記凹部に沿った肉厚部が形成されるまで前記第1フィルムの第1表面と前記第3フィルムの第1表面との間に第2の樹脂を加圧して供給する樹脂供給工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項19】
前記凹部は、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の中心側から外縁側にいくほど広がる形状であることを特徴とする請求項17又は18記載の製造方法。
【請求項20】
前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、マウスピースジスクの表面に所定の機能をもった機能形状を形成するための凹凸部を有することを特徴とする請求項17又は18記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピースジスク製造方法およびマウスピースジスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歯列矯正において、マウスピース矯正の認知度が向上している。その理由は、マウスピースによる歯列矯正は痛みが少ない、矯正していることが目立たない、金属を使用しないため金属アレルギー等の心配がない、食事の時や歯磨きの時に取り外すことができる、通院回数が少なくてすむ、などの多くの利点があるためである。
【0003】
マウスピース矯正に使用されるマウスピースジスクに要求される機能としては、歯列矯正による歯の移動を円滑化すること、歯の位置を安定させること以外にも、簡単に離脱しないような歯への装着性、噛み締めに対する耐久性、成形形状の持続性などがあるが、エンジニアリングプラスチックのような一般的な材料と相反する特性もあり、一つの樹脂で製作した場合には上述した基本的な機能を全て満足することは難しい。
【0004】
そこで、樹脂材の特徴を個々に活かす方法として、マウスピースの形状を保持する形態保持部を形成するための弾性率の高い樹脂と、歯の移動のための弾性率の低い樹脂の2層構造とした2層式のものや、弾性率の低い樹脂を弾性率の高い樹脂で挟んで3層構造とした3層式のもの(例えば、特許文献1)が考案されている。ここで、このようなマウスピースは、2層構造や3層構造のマウスピースジスクを加熱して成形されている。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマウスピースジスクは2層構造や3層構造とするために、弾性率の低い樹脂と弾性率の高い樹脂を接着剤等で接着していたため、接着剤に含まれる有害物質の人体への影響が懸念されるという問題があった。また、接着剤を用いたものは剥がれやすいという問題もあった。更に、接着剤を用いるとコストがかかる他、マウスピースジスクの厚みも大きくなるため、市場に流通している多層マウスピースの材料と厚みの選択肢は、必ずしも広くなかった。
【0007】
また、共押出成形によって3層を同時に成形する方法もあるが、融点の異なる樹脂を用いる場合、各層の材料同士の融点が違い過ぎると、熱融着による接着強度が弱くなったり、層表面の材料が劣化したりするという問題があった。また、各層の侵食によって厚みが不均一になるという問題もあった。接着強度が弱くなるとマウスピースの復元力がなくなり、歯の移動量も減少する。また、材料が劣化すると復元力を継続的に活かすことができなくなる。更に、各層の厚みが不均一であると、復元力も不均一になるため、歯の移動を制御することができなくなる。
【0008】
また、従来のマウスピースジスクの各層の厚さは均一であったため、マウスピースを成形すると奥歯の部分より前歯の部分の厚みが薄くなる。このため奥歯が沈み込み、治療後の噛み合わせが悪くなったり、顎関節症になったりするという問題もあった。
【0009】
そこで本発明は、接着剤を使用せず、樹脂層と樹脂層の間の密着性が高く、奥歯の部分と前歯の部分で厚さを調節したマウスピースジスクの製造方法およびマウスピースジスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のマウスピースジスクは、第1の樹脂からなる第1樹脂層と、第2の樹脂からなり、前記第1樹脂層と接合された第2樹脂層とを具備するマウスピースジスクであって、前記第2樹脂層は、所定の領域がその周囲より厚い肉厚部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のマウスピースジスクは、第3の樹脂からなり、前記第2樹脂層の前記第1樹脂層とは反対側に接合された第3樹脂層を具備してもよい。
【0012】
ここで、前記肉厚部は周囲より0.1mm以上0.3mm以下の範囲で厚く形成される方がよい。
【0013】
また、前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂より弾性率が低い方がよい。
【0014】
また、前記第2の樹脂は、前記第3の樹脂より弾性率が低い方がよい。
【0015】
また、少なくとも表面のいずれか一方に所定の機能をもった機能形状を有する方がよい。
【0016】
また、本発明のマウスピースは、奥歯の咬合部の厚さに対して、奥歯の咬合部と前歯の咬合部の厚さの違いが15%以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の金型は、第1フィルム上に樹脂を供給してマウスピースジスクを製造するための第1金型と第2金型からなる金型であって、前記第1金型は、当該第1金型の内面と前記第1フィルムの外面との間を密閉するための第1密閉手段と、当該第1金型の外面から内面まで貫通する第1吸気路と、を有し、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する。
【0018】
また、本発明の金型は、第1フィルムと第3フィルムの間に樹脂を供給してマウスピースジスクを製造するための第1金型と第2金型からなる金型であって、前記第1金型は、当該第1金型の内面と前記第1フィルムの外面との間を密閉するための第1密閉手段と、外面から内面まで貫通する第1吸気路と、を有し、前記第2金型は、前記第3フィルムに形成された樹脂供給用穴を介して前記樹脂を供給するための樹脂供給流路と、当該第2金型の内面と前記第3フィルムの外面との間を密閉するための第2密閉手段と、当該第2金型の外面から内面まで貫通する第2吸気路と、を有し、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する。
【0019】
ここで、前記凹部は、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の中心側から外縁側にいくほど広がる形状である方が好ましい。
【0020】
ここで、前記樹脂供給流路は、前記第1フィルムと前記第3フィルムの間に樹脂を供給するための吐出孔が円周上の均等な角度で2以上配置されている方がよい。
【0021】
また、第2金型は、前記第3フィルムに形成された樹脂供給用穴に嵌合可能な凸部を有する方が好ましい。
【0022】
また、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、マウスピースジスクの表面に所定の機能をもった機能形状を形成するための凹凸部を有してもよい。
【0023】
また、本発明の製造装置は、マウスピースジスクを製造するための製造装置であって、金型と、前記金型内に樹脂を供給する樹脂供給手段と、第1吸気路を介して前記第1金型の内面と前記第1フィルムの外面の間を減圧する減圧手段と、前記金型の第1金型と第2金型を開閉させるための金型開閉手段と、を具備する。
【0024】
本発明の製造方法は、マウスピースジスクの製造方法であって、第1の樹脂からなる第1フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第1フィルム表面改質工程と、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面であって、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する金型内に前記第1フィルムを配置し、前記凹部に沿った肉厚部が形成されるまで前記第1フィルムの第1表面に第2の樹脂を加圧して供給する樹脂供給工程と、を有する。
【0025】
また、本発明の製造方法は、マウスピースジスクの製造方法であって、第1の樹脂からなる第1フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第1フィルム表面改質工程と、第3の樹脂からなり樹脂供給用穴を有する第3フィルムの第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す第3フィルム表面改質工程と、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面であって、所定の領域がその周囲より深い凹部を有する金型内に前記第1フィルムと第3フィルムを配置し、前記凹部に沿った肉厚部が形成されるまで前記第1フィルムの第1表面と前記第3フィルムの第1表面との間に第2の樹脂を加圧して供給する樹脂供給工程と、を有する。
【0026】
ここで、前記凹部は、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の中心側から外縁側にいくほど広がる形状であることを特徴とする。
【0027】
ここで、前記第1金型と前記第2金型の少なくともいずれか一方の内面には、マウスピースジスクの表面に所定の機能をもった機能形状を形成するための凹凸部を有してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、接着剤を使用せず、樹脂層と樹脂層の間の密着性が高く、奥歯の部分と前歯の部分で厚さが変わらないマウスピースジスクの製造方法およびマウスピースジスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のマウスピースジスクを示す(a)2層式の断面図および(b)3層式の断面図である。
【
図2】本発明のマウスピースジスクの(a)平面図、および(b)その構成を説明するため分解斜視図である。
【
図3】本発明の金型を示す(a)内面側平面図、(b)断面図である。
【
図4】本発明の金型を示す(a)内面側平面図、(b)断面図、(c)外面側平面図、である。
【
図7】本発明のマウスピースジスクの(a)400倍の断面写真(b)2000倍の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明のマウスピースジスク100について
図1、
図2を用いて説明する。本発明のマウスピースジスク100は、例えば
図1(a)に示すように、第1の樹脂からなる第1樹脂層1と、第2の樹脂からなり第1樹脂層1と接合された第2樹脂層2と、で構成される。
【0031】
ここで、第1樹脂層1は、主にマウスピースの形状を保持する形態保持部を構成するためのものである。口腔内で使用されることから、第1樹脂層1に用いられる第1の樹脂は、毒性のないものがよい。このような樹脂としては、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又はグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)又はポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
【0032】
また、第2樹脂層2は、主に復元力をもたらすもので、歯に応力を付加し、歯の移動を促すためのものである。第2樹脂層2に用いられる第2の樹脂は、歯に応力を付加して歯の移動を促すだけの復元力を有すればどのようなものでもよいが、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又は熱可塑性ポリエステル(TPC)等をもちいることができる。また、第2の樹脂も、毒性のないものである方が好ましい。
【0033】
また、従来のマウスピースジスクは、各層の厚さが均一であったため、マウスピースを成形すると奥歯の部分より前歯の部分の厚みが薄くなる。このためマウスピースを装着していると厚みの違いにより奥歯が沈み込み、治療後の噛み合わせが悪くなったり、顎関節症になったりするという問題があった。そこで、第2樹脂層2は、
図1に示すように、所定の領域がその周囲より厚い肉厚部21を有する方が好ましい。これにより、マウスピースを成形した際に、この肉厚部21を前歯の部分にすると奥歯と前歯の咬合部の厚さの違いを小さくすることができ、噛み合わせや顎関節症の問題を防止することができる。
【0034】
また、
図1(b)に示すように、第3の樹脂からなり、第2樹脂層2の第1樹脂層1とは反対側に接合された第3樹脂層3を具備していてもよい。ここで、第3樹脂層3も、主にマウスピースの形状を保持する形態保持部を構成するためのものである。口腔内で使用されることから、第3樹脂層3に用いられる第3の樹脂は、毒性のないものがよい。このような樹脂としては、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又はグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)又はポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
【0035】
ここで、第2の樹脂は、第1の樹脂および第3の樹脂より弾性率が低い方が好ましい。
【0036】
なお、肉厚部21の平面形状は、マウスピースを成形する際の前歯の部分の厚みを大きく、小臼歯や大臼歯のような奥歯の部分の厚みを小さくできればどのようなものでもよい。好ましくは、例えば、
図2(a)に示す扇状のように、マウスピースジスクの中心側から外縁側にいくほど広がる形状にする方がよい。これにより、前歯の幅が小さい場合にはマウスピースジスクの中心側を使用し、前歯の幅が大きい場合にはマウスピースジスクの外縁側を使用することで、前歯の大きさに合わせたマウスピースを製造することができる。また、肉厚部21の厚みは、マウスピースを形成した際に奥歯と前歯の咬合部の厚さの違いを小さくすることができればどのような厚みでもよいが、例えば、肉厚部21を周囲より0.1mm以上0.3mm以下の範囲で大きく形成すればよい。
【0037】
また、本発明のマウスピースジスク100の形状は、シート状又は板状のもので、マウスピースを成形するのに適した大きさであればどのようなものでもよい。例えば、半径が60~70mmの円盤状とすることができる。
【0038】
また、第1樹脂層1と第3樹脂層3の厚さは、マウスピースの形状を保持する形態保持部としての役割を果たせればどのような厚さでもよいが、口の中に入れるもののため薄ければ薄いほど違和感なく装着でき、例えば、0.1mm~1mmのものを使用することができる。また、第2樹脂層2の厚さは、復元力をもたらし、歯に応力を付加できればどのような厚さでもよいが口の中に入れるもののため薄ければ薄いほど違和感なく装着でき、例えば、0.1mm~1mmのものを使用することができる。
【0039】
なお、本発明のマウスピースジスク100は樹脂層が2層や3層である必要はなく、上述した第1樹脂層1、第2樹脂層2、第3樹脂層3を含む4層以上の樹脂層から構成されていてもよい。
【0040】
また、本発明のマウスピースジスク100は、少なくとも表面のいずれか一方に所定の機能をもった機能形状を有していてもよい。ここで表面とはマウスピースジスク100の最外面を意味し、マウスピースジスク100が第1樹脂層1、第2樹脂層2、第3樹脂層3の3層で構成されている場合には、第1樹脂層1および第3樹脂層3の外部側の面が該当する。
【0041】
機能形状とは、例えば、歯をグリップする性能を向上させたり、光を反射、散乱、屈折、回折等させて審美性を向上させたりするような、特定の機能を有する形状を意味する。機能形状の具体例としては、プリズム状やレンチキュラー状、リニアフレネル状、マイクロレンズ状、ピラミッド状等の形状がある。
【0042】
また、人によっては歯並びが悪く、前歯の位置が正面からずれている人がいる。この場合、マウスピースを成形する際に、肉厚部21を歯に合わせて回転させるためのアライメントマーク110があると便利である。したがって、
図2(a)のように、機能形状として、アライメントマーク110として機能する凹部又は凸部を形成してもよい。
【0043】
次に本発明のマウスピースについて説明する。本発明のマウスピースは奥歯の咬合部の厚さに対して、奥歯の咬合部と前歯の咬合部の厚さの違いが15%以下であることを特徴とする。
【0044】
これにより、奥歯と前歯の咬合部の厚さの違いが小さいため、噛み合わせや顎関節症の問題を防止することができる。
【0045】
次に本発明の金型200について説明する。本発明の金型200は、第1フィルム11上に樹脂を供給してマウスピースジスク100を製造するための第1金型201と第2金型202からなる。
【0046】
第1金型201は、
図3に示すように、当該第1金型201の内面と第1フィルム11の外面との間を密閉するための第1密閉手段211と、当該第1金型201の外面から内面まで貫通する第1吸気路212と、を有する。
【0047】
また、第1金型201と第2金型202の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部230を有する。
【0048】
第1金型201および第2金型202はどのような材質のものであってもよいが、例えばプリハードン鋼などの一般的なものを用いればよい。大きさは所望のマウスピースジスク100が内部で作製できればどのような大きさでもよい。
【0049】
第1密閉手段211は、第1金型201の内面と第1フィルム11の外面との間を密閉できればどのようなものでもよいが、例えば、第1金型201に密着させたOリングなどを用いればよい。
【0050】
また、第1吸気路212は、第1フィルム11および第1金型201および第1密閉手段211で囲まれた空間の気体を吸気し、第1フィルム11を吸着して固定するためのものである。第1吸気路212は、第1フィルム11、第1金型201および第1密閉手段211で囲まれた空間の気体を吸気できればどのような大きさや形状、位置に形成されてもよい。
【0051】
また、凹部230は樹脂を供給した際にマウスピースジスク100に所定の領域がその周囲より厚い肉厚部21を作製するためのものである。具体的には、凹部230は周囲より0.1mm以上0.3mm以下の範囲で深く形成される方が好ましい。また、凹部230の形状は、マウスピースを成形する際の前歯の部分の厚みを大きく、小臼歯や大臼歯のような奥歯の部分の厚みを小さくできればどのようなものでもよい。好ましくは、例えば、
図3(a)に示す扇状のように、金型の中心側から外縁側にいくほど広がる形状にする方がよい。
【0052】
また、本発明の別の形態の金型200について説明する。本発明の金型200は、第1フィルム11と第3フィルム31の間に樹脂を供給してマウスピースジスク100を製造するための第1金型201と第2金型202からなる。
【0053】
第1金型201は、
図3に示すように、当該第1金型201の内面と第1フィルム11の外面との間を密閉するための第1密閉手段211と、当該第1金型201の外面から内面まで貫通する第1吸気路212と、を有する。
【0054】
また、第2金型202は、
図4に示すように、第3フィルム31に形成された樹脂供給用穴31aを介して樹脂を供給するための樹脂供給流路223と、当該第2金型202の内面と第3フィルム31の外面との間を密閉するための第2密閉手段221と、当該第2金型202の外面から内面まで貫通する第2吸気路222と、を有する。
【0055】
また、第1金型201と第2金型202の少なくともいずれか一方の内面には、所定の領域がその周囲より深い凹部230を有する。
【0056】
第1金型201および第2金型202はどのような材質のものであってもよいが例えばプリハードン鋼などの一般的なものを用いればよい。大きさは所望のマウスピースジスク100が内部に収納できればどのような大きさでもよい。
【0057】
第1密閉手段211は、第1金型201の内面と第1フィルム11の外面との間を密閉できればどのようなものでもよいが、例えば、第1金型201に密着させたOリングなどを用いればよい。
【0058】
また、第1吸気路212は、第1フィルム11、第1金型201および第1密閉手段211で囲まれた空間の気体を吸気し、第1フィルム11を吸着して固定するためのものである。第1吸気路212は、第1フィルム11、第1金型201および第1密閉手段211で囲まれた空間の気体を吸気できればどのような大きさや形状、位置に形成されてもよい。
【0059】
第2密閉手段221は、第2金型202の内面と第3フィルム31の外面との間を密閉できればどのようなものでもよいが、例えば、第2金型202に密着させたOリングなどを用いればよい。
【0060】
また、第2吸気路222は、第3フィルム31、第2金型202および第2密閉手段221で囲まれた空間の気体を吸気し、第3フィルム31を吸着して固定するためのものである。第2吸気路222は、第3フィルム31、第2金型202および第2密閉手段221で囲まれた空間の気体を吸気できればどのような大きさや形状、位置に形成されてもよい。
【0061】
また、凹部230は樹脂を供給した際にマウスピースジスク100に所定の領域がその周囲より厚い肉厚部21を作成するためのものである。具体的には、凹部230は周囲より0.1mm以上0.3mm以下の範囲で深く形成される方が好ましい。また、凹部230の形状は、マウスピースを成形する際の前歯の部分の厚みを大きく、小臼歯や大臼歯のような奥歯の部分の厚みを小さくできればどのようなものでもよい。好ましくは、例えば、
図3(a)に示す扇状のように、金型内面の中心側から外縁側にいくほど広がる形状にする方がよい。
【0062】
樹脂供給流路223は、
図4に示すように、第1フィルム11と第3フィルム31の間に吐出孔223aから樹脂を供給するためのものである。当該樹脂供給流路223は、
図4(a)に示すように、第1フィルム11と第3フィルム31の間に樹脂を供給するための吐出孔223aが、円周上の均等な角度で2以上、好ましくは3以上、更に好ましくは6以上配置されているほうが好ましい。
【0063】
また、第2金型202は、第3フィルム31に形成された樹脂供給用穴31aに嵌合可能な凸部224を有する方が好ましい。ここで、樹脂供給流路223の吐出口223aは凸部224の上面に形成される。また、凸部224の上面の高さは、
図4(b)に示すように、第1フィルム11と第3フィルム31の間、より好ましくは、第3フィルム31の内面の高さに位置するように形成される。これにより、第1フィルム11と第3フィルム31への樹脂供給時に、第3フィルム31の金型側の表面に樹脂が回り込むのを防ぐことができ、効率よく第1フィルム11と第3フィルム31間に樹脂を供給できる。
【0064】
また、第1金型201と第2金型202の少なくともいずれか一方の内面には、マウスピースジスク100の表面に所定の機能をもった機能形状を形成するための凹凸部を有していてもよい。これにより、マウスピースジスク100に前述した機能形状を付与することができる。機能形状の具体例としては、プリズム状やレンチキュラー状、リニアフレネル状、マイクロレンズ状、ピラミッド状等の形状がある。
【0065】
次に本発明の製造装置について説明する。本発明の製造装置は、マウスピースジスク100を製造するためのものであって、本発明の金型200と、樹脂供給手段と、減圧手段と、金型200の第1金型201と第2金型202を開閉させるための金型開閉手段と、で主に構成される。
【0066】
樹脂供給手段は、樹脂供給流路を介して金型200内に樹脂を供給するためのものである。樹脂供給手段は、金型200内に樹脂を供給できればどのようなものでもよいが、例えば金型200の樹脂供給流路223にポンプで樹脂を加圧して供給するように構成すればよい。
【0067】
また、減圧手段は、第1吸気路212を介して第1金型201の内面と第1フィルム11の外面の間を減圧し、第1フィルム11を第1金型201の内面に固定するためのものである。減圧手段は、第1フィルム11を第1金型201の内面に固定できればどのようなものでもよいが、例えば、第1吸気路212を介して減圧ポンプやエジェクターで第1金型201の内面と第1フィルム11の外面の間の気体を吸気するように構成すればよい。
【0068】
また、金型開閉手段は、第1金型201と第2金型202の開閉を行うためのものである。第1金型201と第2金型202の開閉ができればどのようなものでもよいが、例えば一方の金型を固定し、他方の金型を油圧ポンプや電動モータ等により動かして開閉すればよい。
【0069】
次に本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、マウスピースジスク100の製造方法であって、第1フィルム表面改質工程と、樹脂供給工程と、で主に構成される。
【0070】
ここで、第1フィルム表面改質工程は、第1の樹脂からなる第1フィルム11の第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す工程である。これにより第1表面の濡れ性等を向上させることができるので、当該第1表面と後述する樹脂供給工程で供給された第2の樹脂との接着性を向上させることができる。
【0071】
ここで、第1フィルム表面改質工程における表面処理としては、第1フィルム11の第1表面と第2の樹脂の接着性を向上させることができればどのようなものでもよいが、例えば、光学処理を用いることができる。光学処理とは、エキシマランプやプラズマなどを使用して第1フィルム11の第1表面を改質する方法のことである。例えば、酸素プラズマによって材料表面にカルボニル基、カルボキシル基といった親水性の高い官能基(OH基)を形成し、化学的に親水性を向上させることができる。これにより第1フィルム11の第1表面と第2の樹脂との接着性や濡れ性を向上させることができる。
【0072】
また、樹脂供給工程は、まず、第1金型201と第2金型202の少なくともいずれか一方の内面であって、所定の領域がその周囲より深い凹部230を有する金型を用意する。ここで金型とは、上述した本発明の金型を意味する。
図5(a)は、第1金型201側に凹部230を有する金型を示すものである。次に、当該第1金型201と第2金型202からなる金型内に第1フィルム11を配置する(
図5(b)参照)。次に、形成する第2樹脂層の厚み分の隙間を第1フィルム11上に空けて第1金型201と第2金型202を配置する(
図5(c)参照)。次に、凹部230に沿った肉厚部21が形成されるまで第1フィルム11の第1表面に第2の樹脂を加圧して供給する(
図5(d)参照)。その後、第2の樹脂が冷却されて固化され、第1フィルム11の第1表面に第2樹脂層2が形成されたら、第2金型202を取り外す(
図5(e)参照)。最後に、第1金型201からマウスピースジスクを取り外せばよい(
図5(f)参照)。なお、第1フィルム11はマウスピースジスクの第1樹脂層になる。
【0073】
ここで、第1フィルム11は、主にマウスピースの形状を保持する形態保持部を構成するためのものである。口腔内で使用されることから、第1フィルム11に用いられる第1の樹脂は、毒性のないものがよい。このような樹脂としては、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又はグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)又はポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
【0074】
また、第2樹脂は、主に復元力をもたらすもので、歯に応力を付加し、歯の移動を促すためのものである。第2樹脂層2の形成に用いられる第2の樹脂は、歯に応力を付加して歯の移動を促すだけの復元力を有すればどのようなものでもよいが、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又は熱可塑性ポリエステル(TPC)等をもちいることができる。また、第2の樹脂も、毒性のないものである方が好ましい。
【0075】
また、本発明の3層構造のマウスピースジスクの製造方法について説明する。当該製造方法は、第1フィルム表面改質工程と、第3フィルム表面改質工程と、樹脂供給工程と、で主に構成される。
【0076】
第1フィルム表面改質工程は、第1の樹脂からなる第1フィルム11の第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す工程である。これにより第1の表面の濡れ性を向上させることができるので、当該第1の表面と後述する樹脂供給工程で供給された第2の樹脂との接着性を向上させることができる。
【0077】
また、第3フィルム表面改質工程は、第3の樹脂からなる樹脂供給用穴31aのある第3フィルム31の第1表面に物理的又は化学的な表面処理を施す工程である。これにより第1表面の濡れ性を向上させることができるので、当該第1表面と後述する樹脂供給工程で供給された第2の樹脂との接着性を向上させることができる。
【0078】
第1フィルム表面改質工程および第3フィルム表面改質工程における表面処理としては、第1フィルム11の第1表面と第2の樹脂、第3フィルム31の第1表面と第2の樹脂の接着性を向上させることができればどのようなものでもよいが、例えば、光学処理を用いることができる。光学処理とは、エキシマランプやプラズマなどを使用して第1フィルム11の第1表面を改質する方法のことである。例えば、酸素プラズマによって材料表面にカルボニル基、カルボキシル基といった親水性の高い官能基(OH基)を形成し、化学的に親水性を向上させることができる。これにより第1フィルム11の第1表面と第2の樹脂、第3フィルム31の第1表面と第2の樹脂の接着性や濡れ性を向上させることができる。
【0079】
また、樹脂供給工程は、第1金型201と第2金型202の少なくともいずれか一方の内面でであって、所定の領域がその周囲より深い凹部230を有する金型を用意する。ここで金型とは、上述した本発明の金型を意味する。
図6(a)は、第1金型201側に凹部230を有する金型を示すものである。次に、当該第1金型201と第2金型202からなる金型内に第1フィルムと第3フィルムを配置する。例えば、第1フィルム11は第1金型側に、第3フィルム31は第2金型側に吸着させて配置すればよい(
図6(b)参照)。次に、形成する第2樹脂層の厚み分の隙間を第1フィルム11と第3フィルムの間に空けて第1金型201と第2金型202を配置する(
図6(c)参照)。次に、凹部230に沿った肉厚部21が形成されるまで第1フィルム11の第1表面と第3フィルム31の第1表面の間に第2の樹脂を加圧して供給する(
図6(d)参照)。その後、第2の樹脂が冷却されて固化され、第1フィルム11の第1表面と第3フィルム31の第1表面の間に第2樹脂層2が形成されたら、第2金型202を取り外す(
図6(e)参照)。最後に第1金型201からマウスピースジスクを取り外せばよい(
図6(f)参照)。なお、第1フィルム11はマウスピースジスクの第1樹脂層1に、第3フィルム31はマウスピースジスクの第3樹脂層3になる。
【0080】
ここで、第1フィルム11は、主にマウスピースの形状を保持する形態保持部を構成するためのものである。口腔内で使用されることから、第1フィルム11に用いられる第1の樹脂は、毒性のないものがよい。このような樹脂としては、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又はグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)又はポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
【0081】
また、第3フィルム31は、主にマウスピースの形状を保持する形態保持部を構成するためのものである。口腔内で使用されることから、第3フィルム31に用いられる第3の樹脂は、毒性のないものがよい。このような樹脂としては、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)又はグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)又はポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
【0082】
また、第2樹脂層2は、主に復元力をもたらすもので、歯に応力を付加し、歯の移動を促すためのものである。第2樹脂層2の形成に用いられる第2の樹脂は、歯に応力を付加して歯の移動を促すだけの復元力を有すればどのようなものでもよいが、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又は熱可塑性ポリエステル(TPC)等をもちいることができる。また、第2の樹脂も、毒性のないものである方が好ましい。
【0083】
[実施例]
次に、本発明のマウスピースジスクの製造法に関する実施例を示す。本実施例のマウスピースジスクは、次の方法で製造した。まず、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)からなる厚さ0.3mmの第1フィルム11および第3フィルム31の表面に65mW/cm2のエキシマランプの光を42秒間照射して改質する(第1フィルム表面改質工程および第3フィルム表面改質工程)。次に、内面の所定の領域がその周囲より深い凹部を有する第1金型内に第1フィルムを、第2金型に第3フィルムを配置した。そして、第1金型の凹部に沿った肉厚部が形成されるまで第1フィルム11の第1表面と第3フィルム31の第1表面との間に230℃に加熱した熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる第2の樹脂を加圧して供給し(樹脂供給工程)、射出成形を行った。このようにして製造されたマウスピースジスクの第2樹脂層22は、肉厚部の厚みが0.6mm、その他の部分の厚みが0.3mmであった。
【0084】
本発明のマウスピースジスクについてデジタルマイクロスコープを用いて400倍および2000倍で撮った断面写真を
図7(a)、(b)に示す。
図7に示すように、本発明のマウスピースジスクは樹脂層の接合面に隙間がなく、完全に接合されていることがわかる。したがって、第2樹脂層2の復元力を十分に活かすことができる。また、隙間がないことから、唾液等の影響によって剥離等することがなく、第2樹脂層2の復元力を継続的に活かすことができる。
【符号の説明】
【0085】
1:第1樹脂層
2:第2樹脂層
3:第3樹脂層
11:第1フィルム
21:肉厚部
31:第3フィルム
31a:樹脂供給用穴
100:マウスピースジスク
110:アライメントマーク
200:金型
201:第1金型
202:第2金型
211:第1密閉手段
212:第1吸気路
221:第2密閉手段
222:第2吸気路
223:樹脂供給流路
223a:吐出孔
224:凸部
230:凹部