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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067169
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】鋼管柱への足場の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E04G3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177027
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517263446
【氏名又は名称】三恭工業有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】519013825
【氏名又は名称】ソルマーニ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直之
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】進 正英
(72)【発明者】
【氏名】作田 友司
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 智秀
(57)【要約】
【課題】鋼管柱を包囲するように足場板を支持するための枠材を配置しながらも、把持具と足場板との接触を回避し、必要部材数を削減する。
【解決手段】鋼管柱1の対向するフランジ1a、1aの各表面に水平方向に距離を置いて溶接されたプレート2に水平添え材3を接続し、各フランジ1aの表面側に配置された2本の水平添え材3、3の軸方向両端部間に、上下に並列する下部水平材51及び上部水平材52を有するフレーム材5を架設して下部水平材51を水平添え材3に接続し、鋼管柱1を挟んで配置された2本のフレーム材5、5上に水平受け材8を架設して上部水平材52に接続し、水平受け材8と上部水平材52の上に足場板9を配置し、支持させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管柱の対向するフランジの各表面に水平方向に距離を置いて溶接された、開口を有するプレートに前記開口を挿通して水平添え材が接続され、
前記各フランジの表面側に配置された2本の前記水平添え材の軸方向両端部間を通し、上下に並列する下部水平材及び上部水平材とこの両水平材をつなぐ連結材を有するフレーム材が架設され、前記下部水平材において前記水平添え材に接続され、
前記鋼管柱を挟んで配置された2本の前記フレーム材の前記上部水平材上の、前記鋼管柱の両側位置間に水平受け材が架設されて前記上部水平材に接続され、
前記水平受け材と前記フレーム材の前記上部水平材の上に足場板が配置され、支持されていることを特徴とする鋼管柱への足場の支持構造。
【請求項2】
前記水平受け材は前記上部水平材に、前記上部水平材の軸方向の接続位置の調整が自在に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管柱への足場の支持構造。
【請求項3】
前記鋼管柱を挟んで配置された2本の前記フレーム材の前記下部水平材の軸方向両端部間に水平連結材が架設され、前記下部水平材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管柱への足場の支持構造。
【請求項4】
前記フレーム材の軸方向両側の前記連結材の上部は前記上部水平材の上面より上方に突出し、この突出した前記連結材の上部に、前記フレーム材の平面上の隅角部に配置される支柱が直接、もしくは間接的に接続可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼管柱への足場の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管柱の周囲に足場板を支持させた鋼管柱への足場の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱への梁の接合と鋼管柱同士の接合を遂行する上では、鋼管柱の周囲に足場を配置し、鋼管柱に支持させることが必要になる(特許文献1~4参照)。鋼管柱の表面に接合され、足場を鋼管柱に支持させる支持部材は鋼管柱の表面にボルト接合される場合(特許文献1、3)と溶接される場合(特許文献2、4)がある。
【0003】
いずれの例でも足場板はブラケット等の支持部材に直接、もしくは直接的に支持されるため、足場板と支持部材とは、支持部材による足場板の支持に支障のないような取合いにする必要がある。具体的には足場板が支持部材のいずれかの部分に接触(干渉)することがないように足場板を支持部材に組み合わせる必要がある。
【0004】
また足場板を鋼管柱に安定させて支持させるには、支持部材を鋼管柱の対向する側面(フランジ)の表面に接合するだけではなく、足場板を直接、支持する枠材同士を互いに拘束することが適切である。このため、鋼管柱を包囲するように2方向に枠材を配置し、いずれか1方向の枠材を支持部材に支持させることが合理的である(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-219255号公報(公報第2頁下左欄第16行~第4頁上左欄台9行、第1図~第10図)
【特許文献2】実開平3-46651号公報(明細書第3頁第7行~第6頁第13行、第1図~第7図)
【特許文献3】実開平4-20563号公報(明細書第3頁第18行~第6頁第17行、第1図~第3図)
【特許文献4】特開2001-303764号公報(段落0022~0029、図1図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管柱の周囲に2方向に枠材を配置する場合、1方向の枠材に、直交方向の枠材は基本的にはクランプ等の把持具を用いて接合される関係で(段落0028、図4)、把持具が枠材の周囲から突出した状態になり易いため、足場板が把持具に接触し易くなる。
【0007】
また特許文献4の例では鋼管柱の対向する側面に支持された支持部材(吊り材)に1方向の枠材を支持させているが、支持部材が並列する支持桿に分かれ、両支持桿を挿通して1方向の枠材を支持させているため、2方向の枠材を配置するための部品数が多くなっている。
【0008】
本発明は上記背景より、鋼管柱を包囲するように足場板を支持するための枠材を配置しながらも、把持具と足場板との接触を回避し、部品数を削減し得る足場板の支持構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の鋼管柱への足場の支持構造は、鋼管柱の対向するフランジの各表面に水平方向に距離を置いて溶接された、開口を有するプレートに前記開口を挿通して水平添え材が接続され、
前記各フランジの表面側に配置された2本の前記水平添え材の軸方向両端部間を通り、上下に並列する下部水平材及び上部水平材とこの両水平材をつなぐ連結材を有するフレーム材が架設され、前記下部水平材において前記水平添え材に接続され、
前記鋼管柱を挟んで配置された2本の前記フレーム材の前記上部水平材上の、前記鋼管柱の両側位置間に水平受け材が架設されて前記上部水平材に接続され、
前記水平受け材と前記フレーム材の前記上部水平材の上に足場板が配置され、支持されていることを構成要件とする。
【0010】
「鋼管柱の対向するフランジの各表面に水平方向に距離を置いて溶接されたプレート」とは、図1-(a)、(c)に示すように鋼管柱1のいずれかの方向に対向する2枚のフランジ1a、1aの各表面に、複数枚のプレート2、2が水平方向に距離を置いて溶接されることを言う。複数枚のプレート2、2は面内方向が鉛直方向を向き、面が互いに対向してフランジ1aに溶接される。鋼管柱は主に角形鋼管柱である。
【0011】
水平添え材3はプレート2に形成された開口2aを挿通して複数枚のプレート2に支持される。水平添え材3はプレート2には単クランプ等の把持具4で接続される。水平添え材3はプレート2に接続されることで、プレート2に拘束され、鋼管柱1に拘束される。水平添え材3は鋼管柱1の各フランジ1aの各プレート2から、鋼管柱1の外周側へ向け、鋼管柱1の外周側に配置される足場板9の幅に相当する距離分程度以上、張り出す。「鋼管柱の外周側へ向け」とは、鋼管柱1の中心から遠い側へ向けての意味である。
【0012】
水平添え材3は鋼管柱1を挟んで平行に配置され、この2本の水平添え材3、3の端部間を通って図2-(a)に示すようにフレーム材5が架設され、両水平添え材3、3に支持される。「水平添え材の端部間を通り」とは、フレーム材5の軸方向の端部が水平添え材3の端部から軸方向の外側へ張り出した状態でフレーム材5が2本の水平添え材3、3間に架設されることを言う。
【0013】
フレーム材5は図2-(b)に示すように上下に並列する下部水平材51と上部水平材52と、この両水平材51、52をつなぐ連結材53を有し、下部水平材51において水平添え材3に接続され、支持される。下部水平材51は水平添え材3には直交クランプ等の把持具6で接続される。
【0014】
フレーム材5は鋼管柱1を挟んだ両側の水平添え材3、3に接続されることで、水平添え材3、3に拘束され、間接的に鋼管柱1に拘束される。フレーム材5は水平添え材3の端部から、鋼管柱1の外周側へ向け、鋼管柱1の外周側に配置される足場板9の幅に相当する距離分程度以上、張り出す。
【0015】
鋼管柱1を挟んで配置された2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52上間の、鋼管柱1を挟んだ鋼管柱1の両側位置に、図4-(a)に示すように足場板9を支持する水平受け材8が架設され、上部水平材52、52に接続される。「鋼管柱の両側位置」は上部水平材52の軸方向両端部より鋼管柱1寄りの位置を指す。水平受け材8は上部水平材52、52間に架設されるため、上部水平材52、52に直交する方向に架設される。水平受け材8は上部水平材52には単クランプ等の把持具4等で接続される。
【0016】
水平受け材8は上部水平材52に接続されることで、フレーム材5に拘束され、間接的に鋼管柱1に拘束される。水平受け材8はフレーム材5の上部水平材52と実質的な段差がない状態に上部水平材52、52間に架設され、上部水平材52と共に足場板9を支持する。
【0017】
水平受け材8がフレーム材5の上部水平材52に支持されることで、水平添え材3に接続された、フレーム材5の下部水平材51より上部水平材52が上に位置するため、水平添え材3をプレート2に接続する把持具4と水平受け材8との干渉の発生がなくなる。従って水平受け材8上に載置される足場板9と、プレート2及び把持具4との干渉が回避されるため、これらとの干渉が生じる場合のように、足場板9の配置領域が制限されることがなくなる。
【0018】
また足場板9を支持するために必要な部材が、プレート2を除けば、少なくとも水平添え材3とフレーム材5と水平受け材8の3種類の部材で済むため、特許文献4との対比では足場板9支持のための必要部材数が削減される。必要部材数が削減されることで、足場板9支持のための必要部材の組み立て時と解体時の作業数が削減され、それぞれの作業効率が向上する。
【0019】
フレーム材5と水平受け材8が支持対象として想定される足場板9の幅は鋼管柱1の寸法に応じて、または各現場に応じて相違することがある。そこで、上部水平材52に、上部水平材52の軸方向の接続位置の調整が自在な状態に水平受け材8を接続することで(請求項2)、足場板9の幅の相違、すなわち鋼管柱1の寸法や現場の相違に対応することが可能になる。水平受け材8の接続位置が上部水平材52の軸方向に調整自在になることは、水平受け材8を上部水平材52に接続する把持具4が上部水平材52に対して軸方向に移動自在な状態に接続されることで、可能になる。
【0020】
この他、水平受け材8がフレーム材5の上部水平材52に接続されることで、図4-(b)に示すように足場板9を支持する水平受け材8と上部水平材52の上面(上端)のレベルを揃えることができるため、鋼管柱1の周囲に配置される2方向の足場板9、9を同一レベルに敷設し、両足場板9、9の上面を揃えることが可能である。2方向の足場板9、9を同一レベルに敷設できることで、同一レベルに敷設できない場合のように、少なくともいずれかの方向の足場板9の移動を拘束するための、例えば番線による固定が必要でなくなる。足場板9は例えば長手方向の端部に接続されたフック93を上部水平材52等に係合させることで、フレーム材5等に支持される。
【0021】
また水平受け材8が鋼管柱1の両側位置に架設されることで、図4-(a)に示すように平面上、水平受け材8がフレーム材5の軸方向の端部より鋼管柱1寄りに位置し、フレーム材5の端部の、水平受け材8との接続位置からの張り出し長さ(片持ち梁長さ)が大きくなる。結果的に、鋼管柱1を挟んで対向するフレーム材5、5の端部間に足場板9が敷設されたときに、フレーム材5の端部の安定性に不安が生じ得る。このような場合には、図3-(a)に示すように2本のフレーム材5、5の端部間に2本のフレーム材5、5の安定性を確保する水平連結材7が架設され、接続される(請求項3)。
【0022】
水平連結材7は下部水平材51の軸方向両端部間、もしくは上部水平材52の軸方向両端部間に架設されるが、特に図3-(a)、(c)に示すように水平連結材7を下部水平材51の軸方向両端部間に架設すれば(請求項3)、水平連結材7のフレーム材5への接続のための把持具4が足場板9の設置上の障害になることが回避される。この場合、水平連結材7が下部水平材51に接続されることで、接続に使用される把持具4の一部が上部水平材52に影響することが回避されるため、上部水平材52上に足場板9を設置したときに、足場板9が把持具4に干渉することが回避される。水平連結材7は下部水平材51には単クランプ等の把持具4で接続される。
【0023】
またフレーム材5の軸方向両側の連結材53の上部を図2-(b)に示すように上部水平材52の上面より上方に突出させ、この突出した連結材53の上部に、フレーム材5の平面上の隅角部に配置される支柱10を直接、もしくは間接的に接続可能にすれば(請求項4)、フレーム材5上に支柱10を立設し、支柱10の上部間に手摺り材11を架設することが可能になる。
【0024】
ここで、連結材53の、上部水平材52から上方へ突出する上部を例えば筒状(中空形状)に形成すれば、図6-(b)、(c)に示すように連結材53の上方から支柱10を降下させ、支柱10の内周に連結材53を差し込むか、連結材53の内周に支柱10を差し込むか、あるいは双方を互いに螺合させることで、連結材53に支柱10が接続可能になる。
【0025】
支柱10が連結材53に外接する場合には、支柱10は連結材53の外周に接触したまま、降下させられるか、螺合することで、連結材53に接続されるため、連結材53は必ずしも筒状に形成される必要はない。この場合、支柱10を連結材53に上方から落とし込んで接続できることで、両者の接続に把持具を使用する場合との対比では、支柱10の設置と接続の作業が単純化されるため、作業性と安全性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
鋼管柱の対向するフランジの各表面に接続された2本の水平添え材の軸方向両端部間に下部水平材と上部水平材を有するフレーム材を架設して下部水平材を水平添え材に接続し、2本のフレーム材の上部水平材上間に水平受け材を架設して接続するため、水平添え材に接続された下部水平材より上部水平材を上に位置させることができる。従って鋼管柱のフランジに固定されたプレートに水平添え材を接続する把持具と水平受け材との干渉を回避することができる。この結果、水平受け材上に載置される足場板と、プレート及び把持具との干渉が回避され、干渉が生じる場合の、足場板の配置領域の制限をなくすことができる。
【0027】
また足場板を支持するために必要な部材が、プレート以外には、少なくとも水平添え材とフレーム材と水平受け材の3種類の部材で済むため、足場板支持のための必要部材数を削減することができ、足場板を支持するための部材の組み立て時と解体時の作業数が削減され、それぞれの作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は鋼管柱の対向するフランジの表面に溶接されたプレートに水平添え材を接続した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図2】(a)は2本の水平添え材の軸方向両端部間を通し、下部水平材及び上部水平材と両水平材をつなぐ連結材を有するフレーム材を架設し、下部水平材を水平添え材に接続した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図3】(a)は2本のフレーム材の下部水平材の軸方向両端部間に水平連結材を架設し、接続した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図4】(a)は2本のフレーム材の上部水平材上の、鋼管柱の両側位置間に、水平受け材を架設して接続した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図5】(a)は水平受け材とフレーム材の上部水平材の上に足場板を敷設し、支持させた様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図6】(a)はフレーム材の連結材の上部が上部水平材の上面より上方に突出し、この上部に支柱を接続した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図7】(a)は隣接する支柱の上部間に手摺り材を架設した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図8】(a)は2方向の足場板の外周側に幅木を設置した様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図9】(a)は鋼管柱の片側に付き、フレーム材を2本ずつ架設した場合の足場板の設置後の様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
図10】(a)は図9の例において鋼管柱の周囲と足場板との間に空間を確保した場合の足場板の設置後の様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線矢視図、(c)は(a)のy-y線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図4は鋼管柱1の対向するフランジ1a、1aの各表面に水平方向に距離を置いて溶接されたプレート2に水平添え材3が接続され、鋼管柱1のフランジ1a、1aの両側に位置する2本の水平添え材3、3の軸方向両端部間にフレーム材5、5が架設されて接続され、2本のフレーム材5、5間に水平受け材8が架設されて接続されている状況を示している。
【0030】
フレーム材5は図2-(b)に示すように上下に並列する下部水平材51と上部水平材52、及び両水平材51、52をつなぐ縦材(鉛直材)等としての連結材53を有する。水平受け材8は2本のフレーム材5、5の上部水平材52上の鋼管柱1の両側位置間に、水平添え材3と平行に架設される。「両側位置」は鋼管柱1寄りの位置の意味である。フレーム材5は水平添え材3には下部水平材51において載置され、接続される。
【0031】
図1図4は水平添え材3の接続から水平受け材8の架設までの作業手順を、図5は水平受け材8とフレーム材5の上部水平材52の上に足場板9が配置され、支持された状況を示す。
【0032】
ここで、図1図8に基づき、水平添え材3の設置から、足場板9上への支柱10の設置と、支柱10、10間への手摺り材11の架設までの作業手順を説明する。鋼管柱1のいずれかの対向するフランジ1a、1aの各表面に、水平方向に距離を置いて少なくとも2枚のプレート2が溶接されている。
【0033】
プレート2には図1-(a)に示すように開口2aが形成されており、水平添え材3は開口2a内を挿通して鋼管柱1の各フランジ1aに固定された複数枚のプレート2、2に支持される。開口2aはプレート2のいずれの縁にも面しないように、またはいずれかの縁に面するように形成される。各プレート2は面内方向が鉛直方向を向き、各面が互いに対向する状態でフランジ1aに溶接される。
【0034】
図1に示すように各フランジ1aの複数枚のプレート2、2の開口2aを挿通して水平添え材3が各フランジ1aの表面付近に配置され、プレート2、2に支持される。水平添え材3、3は鋼管柱1を幅方向に挟むように配置され、プレート2、2には例えば単クランプ等の把持具4に把持されながら、プレート2と共に保持(挟持)されることで、着脱自在に接続され、拘束される。
【0035】
水平添え材3のプレート2、2への接続後、図2に示すように鋼管柱1を挟んで並列する2本の水平添え材3、3の軸方向両端部間を通り、水平添え材3、3間に上記したフレーム材5、5が架設される。フレーム材5は水平添え材3の軸方向の、鋼管柱1の片側に付き、少なくとも1本、架設される。フレーム材5は図2-(b)、(c)に示すように上記のように下部水平材51において水平添え材3、3上に載置され、下部水平材51と水平添え材3間に跨る直交クランプ等の把持具6に保持されることで、水平添え材3に着脱自在に接続される。
【0036】
水平添え材3上へのフレーム材5の設置後、もしくは設置前、または並行して図3-(a)、(c)に示すように鋼管柱1を挟んで配置された2本のフレーム材5、5の下部水平材51の軸方向両端部間に、2本のフレーム材5、5の軸方向の端部における安定性を確保するために水平連結材7が架設され、下部水平材51に接続される。水平連結材7は上記のようにフレーム材5の上部水平材52と水平受け材8上に足場板9を設置する上で、足場板9と干渉しないよう、フレーム材5の下部水平材51に接続される。水平連結材7は下部水平材51との間に跨る直交クランプ等の把持具6に保持されることで、水平添え材3に接続される。
【0037】
水平連結材7の架設後、図4に示すように鋼管柱1を挟んだ両側に配置された2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52上の、鋼管柱1の両側位置間に水平受け材8、8が架設され、上部水平材52、52に単クランプ等の把持具4で接続される。「鋼管柱1の両側位置」は上部水平材52の軸方向の両端部より鋼管柱1に近い位置を指し、水平受け材8、8はフレーム材5に直交する方向に架設される。
【0038】
上部水平材52と水平受け材8の上面は実質的に同一水平面内に位置し、上部水平材52と水平受け材8は両者に区画される領域に配置される足場板9を支持する役目を果たす。「実質的に」とは、完全に同一水平面内に位置する場合と、足場板9の敷設上、許容される程度の段差がある場合を含む。
【0039】
図4において水平受け材8を上部水平材52に接続する把持具4は、例えば溝形の鋼材41と、鋼材41の対向するフランジ間を貫通するボルトやピン等の棒材42からなり、棒材42が対向するフランジを貫通することで、水平受け材8を上部水平材52に接続する。水平受け材8の軸方向の端面は鋼材41の一方のフランジの外周側に溶接等により固定される。
【0040】
この場合、鋼材41は、例えば両フランジが上部水平材52を挟んだ状態での平常時に、少なくともいずれか一方のフランジが、互いに接近する向きに復元力を発揮する状態になるように製作される。鋼材41は上部水平材52に装着されたときに、両フランジが上部水平材52を挟持することで、水平受け材8を上部水平材52に接続する。棒材42は水平受け材8(鋼材)が上部水平材52から抜け出すことを防止する役目を果たす。この他、棒材42が両フランジを貫通し、少なくともいずれか一方に螺合することで、両フランジを互いに接近させることもある。
【0041】
水平受け材8の架設後、図5に示すように上部水平材52と水平受け材8とで区画された領域に長手方向が水平添え材3の軸方向に長く、2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52間に跨る程度の長さを持つ長手方向の足場板91、91が敷設され、支持される。鋼管柱1の両側位置の、長手方向の足場板91、91間にはそれに直交する方向の短手方向の足場板92、92が敷設され、長手方向両側において水平受け材8、8等に支持される。
【0042】
図面では長手方向の足場板91の長手方向両側から突設したフック93、93を上部水平材52に上側から下向きに係合させることで、足場板91をその長手方向両側のフレーム材5、5の上部水平材52、52に支持させている。短手方向の足場板92も同様にその長手方向両側から突設したフック93、93を水平受け材8、8に上側から下向きに係合させることで、足場板92をその長手方向両側の水平受け材8、8に支持させているが、各足場板91、92のフック93の係合先は他の場合もある。
【0043】
足場板91、92の敷設後、図6に示すように各フレーム材5の軸方向両端部上、すなわち全足場板91、92が敷設された状態の足場板9の四隅位置の上に、作業者の転落防止のための手摺り材11を架設するための支柱10が立設される。支柱10はフレーム材5の軸方向両端部の連結材53上に立設され、これに接続される。
【0044】
支柱10を立設するために、フレーム材5の縦材である軸方向両端部の連結材53の上部は図2図5の各(b)に示すように上部水平材52の上面より上方に突出する状態で上部水平材52に接続されている。この突出した連結材53の上部に、フレーム材5の軸方向両端部に配置される支柱10が直接、もしくは図6-(b)に示すように間接的に接続される。
【0045】
図6-(b)では連結材53の上部に筒状材(スリーブ)54を接続し、筒状材54に支柱10を接続することで、連結材53に支柱10を間接的に接続している様子を示している。この例では、例えば筒状材54の外周面に雄ねじが形成されるか、内周面に雌ねじが形成される。前者の場合、筒状材54の雄ねじは連結材53と支柱10の各内周面の雌ねじに螺合し、後者の場合、筒状材54の雌ねじは連結材53と支柱10の各外周面の雄ねじに螺合する。筒状材54の連結材53と支柱10への接続は螺合に依らない場合もある。
【0046】
連結材53への支柱10の接続後、図7に示すように隣接する支柱10、10の少なくとも上部間に手摺り材11が架設され、接続される。図7では作業者の安全性向上の目的で、支柱10、10の上部間の他、軸方向中間部間にも手摺り材11を架設している。手摺り材11は支柱10には把持具や図示するような楔等の連結具12により接続される。
【0047】
楔の場合、連結具12は例えば手摺り材11の軸方向の端部に予め接続されており、図7-(b)、(c)に示すように連結具12の支柱10側から突出した部分(楔)が支柱10の外周に突設されたフランジ(鍔)内に落とし込まれることで、手摺り材11を支柱10に着脱自在に接続する。
【0048】
支柱1、10間への手摺り材11の架設後、図8に示すように必要により例えば足場板9上に設置されている建築資機材の落下防止のための幅木13が足場板9上に設置され、足場板9、もしくはフレーム材5等に接続される。幅木13は基本的に長手方向の足場板91と短手方向の足場板92の外周(縁)に沿い、足場板9を包囲するように2方向に配置される。
【0049】
図9図10は本発明の参考例として、鋼管柱1の片側に付き、フレーム材5を2本ずつ架設し、水平受け材8を架設することなく、足場板9を敷設した場合の例を示す。水平受け材8の架設以外の足場板9の設置までの作業手順は図1図8の例と同様である。図9図10は足場板9の周囲に幅木13を設置した状態を示している。
【0050】
図9は鋼管柱1の片側で並列する2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52上に両者に跨り、上部水平材52と平行な長手方向の足場板91を敷設し、並列するフレーム材5、5に直交する方向のフレーム材5の両上部水平材52、52にフック93を係合させ、支持させた場合の例を示す。この例では長手方向の足場板91に直交する方向の短手方向の足場板92を長手方向両側に位置する、鋼管柱1に近い側の2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52上に敷設し、両上部水平材52、52にフック93を係合させて支持させている。
【0051】
図10は鋼管柱1の片側で並列する2本のフレーム材5、5の軸方向中間部間に、そのフレーム材5に直交するつなぎ材14を架設し、このつなぎ材14とそれに平行な方向のフレーム材5の上部水平材52、52との間に長手方向の2枚の足場板91、91を敷設し、フック93をつなぎ材14と上部水平材52に係合させ、支持させている。ここでは短手方向の足場板92を鋼管柱1を挟んで並列する、鋼管柱1寄りの2本のフレーム材5、5の上部水平材52、52間に敷設し、長手方向両側のフック93を上部水平材52、52に係合させることで、両上部水平材52、52に支持させている。
【0052】
図10の例では鋼管柱1の片側で並列する2本のフレーム材5、5の軸方向中間部間につなぎ材14を架設することで、長手方向の足場板91と短手方向の足場板92の寸法が統一されている。
【符号の説明】
【0053】
1……鋼管、1a……フランジ、
2……プレート、2a……開口、
3……水平添え材、
4……把持具、41……鋼材、42……棒材、
5……フレーム材、51……下部水平材、52……上部水平材、53……連結材、54a……筒状材(スリーブ)、
6……把持具、
7……水平連結材、
8……水平受け材、
9……足場板、91……長手方向の足場板、92……短手方向の足場板、93……フック、
10……支柱、
11……手摺り材、12……連結具、
13……幅木、
14……つなぎ材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10