(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067175
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】参鶏湯の製造方法及び参鶏湯調理セット
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240510BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20240510BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L7/10 B
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177034
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】523104281
【氏名又は名称】株式会社ゴールドブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】長迫 加代
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
【テーマコード(参考)】
4B022
4B023
4B036
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB02
4B022LJ06
4B022LQ04
4B023LC02
4B023LE02
4B023LG04
4B023LK13
4B023LK15
4B023LL01
4B023LP08
4B023LP15
4B023LP19
4B036LC04
4B036LE05
4B036LF19
4B036LG04
4B036LH34
4B036LH38
4B036LK01
4B036LK06
4B036LP01
4B036LP17
(57)【要約】
【課題】参鶏湯の製造方法及び参鶏湯料理セットを提供する。
【解決手段】容器に骨付き鶏肉、高麗人参、及び温泉水を入れ加熱し煮込む工程と、前記容器から、前記骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程と、前記容器に、穀類を加えてさらに煮込む工程と、を含む参鶏湯の製造方法。温泉水中に、骨付き鶏肉及び高麗人参を入れて煮込むことによって、液状物(スープ)に、高麗人参の有用成分が抽出されるとともに、高麗人参及び鶏肉の食感が良好となる。温泉水としては、アルカリ温泉水(山鹿温泉水)が好適である。
また、製造された参鶏湯を、固形物と液状物とに分離し、それぞれを別個に容器に充填した参鶏湯調理セットとすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に骨付き鶏肉、高麗人参、及び温泉水を入れ加熱し煮込む工程と、
前記容器から、前記骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程と、
前記容器に、穀類を加えてさらに煮込む工程と、を含むことを特徴とする参鶏湯の製造方法。
【請求項2】
温泉水が、アルカリ温泉水である請求項1に記載の参鶏湯の製造方法。
【請求項3】
前記穀類が、もち米である請求項1に記載の参鶏湯の製造方法
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法で得られた参鶏湯を、固形物と液状物とに分離し、それぞれを別個に容器に充填した参鶏湯調理セット。
【請求項5】
冷凍品である、請求項4に記載の参鶏湯料理セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参鶏湯の製造方法及び参鶏湯調理セットに関する。
【背景技術】
【0002】
参鶏湯は、韓国の伝統的な薬膳料理の一つであり、従来、丸鶏の中に、もち米や高麗人参等を詰め、時間をかけて煮込んで製造される。また、参鶏湯には、高麗人参等の漢方が含まれているため、滋養強壮、体力回復、食欲不振、美容に効果がある滋養食として広く知られている。
【0003】
一方、高麗人参にはサポニン等の有用成分が豊富に含まれており、高麗人参は摂取することによって、有用な効果があることが知られ、例えば、高麗人参の実のエタノール抽出物を有用成分として含有する血管炎症治療用組成物(特許文献1)や、ビート、チャーガ、カリン、クコシ、クマザサ、ケツメイシ、高麗人参、サンザシ、月桃葉、甜茶、杜仲茶、マタタビ、松かさ、および紫玄米からなる群から選ばれる1種または2種以上のものについての抽出物を活性成分として含んでなる糖取り込み促進剤(特許文献2)が開示されている。
【0004】
このように、高麗人参を摂取することによって、体に様々な効能をもたらすことが知られているが、高麗人参は、苦味が強く、そのままの状態では、固いため継続的に摂取することが難しい。高麗人参を摂取しやすくするため、従来の参鶏湯の製造方法では、材料を長時間煮込む必要があり、その結果、高麗人参以外の材料(鶏肉やもち米等)の風味や食感が損なわれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-164145号公報
【特許文献2】特開2015-98438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述するように、従来の参鶏湯の製造方法では、鶏肉の食感を優先して煮込むと、煮込み時間が短く、スープ等に高麗人参の風味を感じることが難しくなり、スープ等に高麗人参の風味を感じられるように煮込むと、煮込み時間が長すぎて、鶏肉の食感が低下するという問題があった。このように、従来の参鶏湯の製造方法では、含有する材料(鶏肉、高麗人参やもち米等)の風味や食感を両立することが困難であった。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、高麗人参の有用成分を効率的に抽出でき、高麗人参の繊維質の食感や鶏肉のパサつきを抑え、食味が良好な参鶏湯の製造方法を提供することである。
さらに、得られた参鶏湯の風味や食感等の食味の劣化を抑えた参鶏湯調理セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水(水道水等)ではなく温泉水で骨付き鶏肉や高麗人参を加熱し煮込み、骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除いた後、さらに、穀類を加えて、骨付き鶏肉の鶏骨部分と共に煮込むことによって、高麗人参の有用成分を抽出でき、高麗人参の繊維質の食感や鶏肉のパサつきを抑え、かつ、穀類(もち米)の食感(粒感)が優れることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 容器に骨付き鶏肉、高麗人参、及び温泉水を入れ加熱し煮込む工程と、
前記容器から、前記骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程と、
前記容器に、穀類を加えてさらに煮込む工程と、を含む参鶏湯の製造方法。
<2> 前記温泉水が、アルカリ温泉水である<1>に記載の参鶏湯の製造方法。
<3> 前記穀類が、もち米である<1>又は<2>に記載の参鶏湯の製造方法。
<4> <1>から<3>のいずれかに記載の製造方法で得られた参鶏湯を、固形物と液状物とに分離し、それぞれを別個に容器に充填した参鶏湯調理セット。
<5> 冷凍品である、<4>に記載の参鶏湯調理セット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高麗人参の有用成分を効率的に抽出でき、食味に優れた参鶏湯の製造方法が提供される。
さらに、得られた参鶏湯の食味の劣化を抑えた参鶏湯調理セットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0013】
(1.本発明の参鶏湯の製造方法)
本発明は、容器に骨付き鶏肉、高麗人参、及び温泉水を入れ加熱し煮込む工程と、前記容器から、前記骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程と、前記容器に、穀類を加えてさらに煮込む工程と、を含む参鶏湯の製造方法(以下、「本発明の参鶏湯の製造方法」、又は単に「本発明の製造方法」と称す。)に関する。
【0014】
本発明における参鶏湯は、容器に骨付き鶏肉、高麗人参、及び温泉水を入れ加熱し煮込む工程と、前記容器から、前記骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程と、前記容器に、穀類を加えてさらに煮込む工程と、を含む方法によって製造されたものである。温泉水中で、鶏肉と高麗人参を一緒に加熱することによって、高麗人参の有用成分を抽出できるだけでなく、その有用成分を鶏肉にも付与することができる。
また、温泉水で骨付き鶏肉や高麗人参で煮込み、次いで、骨付き鶏肉の鶏肉部分と高麗人参を取り除き、穀類を加えてさらに煮込むことによって、高麗人参の繊維質の食感や鶏肉のパサつきを抑え、高麗人参の風味(苦味)を改善するだけでなく、穀類(もち米)の食感(粒感)も良好にすることができる。また、骨付き鶏肉の鶏骨(骨付き鶏肉の鶏肉部分以外)を温泉水中でさらに煮込むことによって、骨の中心部からうま味となるエキスを抽出することができる。
【0015】
そして、詳細な理由は完全に明らかではないが、後述する実施例の通り、温泉水中で骨付き鶏肉や高麗人参等の材料を加熱し煮込むことにより、通常、用いられる水(水道水)で加熱するよりも、高麗人参自体の有用成分由来の風味(苦味)が抑えられ、高麗人参や鶏肉の食味(風味や食感)やスープ自体の風味が良好な参鶏湯を得ることができる。さらに、骨付き鶏肉の鶏骨(骨付き鶏肉の鶏肉部分以外)を温泉水中でさらに煮込むことによって、スープ自体の鶏肉の風味をより濃厚にすることができる。
このことから、温泉水中で材料を加熱すると、高麗人参や鶏肉は、温泉水に含まれるミネラル等の様々な成分との相乗効果により、食感が良好になり、かつ、高麗人参自体の有用成分や鶏骨の中心部から得られるうま味成分を液状物(スープ)中に抽出することができると推測される。
【0016】
以下、本発明の参鶏湯の製造方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明の製造方法において、骨付き鶏肉や高麗人参を加熱し煮込む工程の加熱温度は、本発明の効果を損なわない限り制限はなく、骨付き鶏肉や高麗人参の量に応じて適宜選択することができる。例えば、80℃~100℃である。
【0018】
加熱時間は、高麗人参の有用成分を抽出でき、高麗人参の食感が改善され、かつ鶏肉の食感が低下しない時間であればよく、骨付き鶏肉や高麗人参の量、加熱温度等を勘案して決定される。例えば、30分以上3時間以内である。
【0019】
骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程において、骨付き鶏肉の鶏肉部分を取り除く工程では、容器から骨付き鶏肉を取り出し、鶏肉と鶏骨とに分けた後、鶏骨部分のみを容器に戻してもよく、容器の中で、骨付き鶏肉の鶏肉と鶏骨とに分け、鶏肉部分のみを直接取り出してもよい。
【0020】
骨付き鶏肉の鶏肉部分及び高麗人参を取り除く工程において、高麗人参を取り除く工程では、高麗人参の有用成分が抽出された温泉水(スープ)は容器に残し、高麗人参のみを取り除けばよい。
【0021】
本発明の製造方法において、穀類(好適には、もち米)を加えてさらに煮込む工程の加熱温度は、穀類が柔らかくなり、かつ、穀類の食感(粒感)が低下しない温度であればよく、穀類の種類や量に応じて適宜選択することができる。例えば、80℃~100℃である。
【0022】
加熱時間は、穀類が柔らかくなり、かつ、穀類の食感(粒感)が低下しない温度であればよく、穀類の種類や量、加熱温度等を応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の参鶏湯の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を行ってもよい。その他の工程としては、例えば、製造された参鶏湯を固形物と液状物に分けて容器に充填する工程、充填後の容器を封止する工程や充填後の容器をそれぞれ冷凍する工程等が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法で用いられる温泉水としては、飲用可能な温泉水が使用され、その中でも、アルカリ温泉水が好ましい。アルカリ温泉水の好適な一例として、熊本県山鹿市の山鹿温泉から得られる「山鹿温泉水」を挙げることができる。この温泉水は、アルカリ性単純温泉水であり、陽イオンの主成分がナトリウムイオンで、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンの温泉水であり、ミネラル等のその他の成分を含む。
【0025】
本発明における骨付き鶏肉の鶏としては、特に限定されず、例えば国内産、外国産等の産地は問わない。国内産の場合、例えば、一般的な国産食用鶏であるブロイラーの他に、銘柄鶏及び地鶏が挙げられる。
また、銘柄鶏としては、肥後のうまか赤鶏、華味鶏、赤鶏さつま、近江鶏等が挙げられ、地鶏としては、比内地鶏、天草大王、みやざき地頭鶏、名古屋コーチン、烏骨鶏等が挙げられる。
【0026】
本発明の製造方法で用いられる骨付き鶏肉は、骨がついている鶏肉であればよく、丸ごと一羽の鶏(丸鶏)、丸鶏を半分に切ったもの(半身)、丸鶏を適当な大きさに切ったもの(切り身)等が含まれる。
【0027】
本発明の製造方法で用いられる高麗人参は、朝鮮人参やオタネニンジンとも呼ばれ、ウコギ科の多年宿根草である。
本発明の製造方法における高麗人参は天然物であってもよく、人工的に栽培したものであってもよい。通常、高麗人参の可食部である根茎が使用される。また、市販のものを使用してもよい。
【0028】
また、高麗人参には、収穫した生のもの(水参)、水参の皮を剥いて乾燥させたもの(白参)、水参の皮を剥かずに蒸して乾燥したもの(紅参)、水参の皮を剥かずに蒸して乾かす工程を3回以上繰り返したもの(黒参)等があり、本発明の製造方法における高麗人参としては、いずれの高麗人参も使用することができる。本発明の製造方法における加熱時間を考慮すると、使用する高麗人参は、生の高麗人参(水参)であることが好ましい。
【0029】
上述するように、通常、高麗人参は、苦味が強く、そのままの状態では、固いため、食べにくい。食べやすくするためには、従来の参鶏湯の製造方法のように長時間煮込む必要がある。また、従来の参鶏湯の製造方法で得られた参鶏湯では、高麗人参の苦味や繊維質の食感が残り、食べることが難しいという問題がある。
【0030】
本発明の参鶏湯の製造方法では、温泉水中で骨付き鶏肉や高麗人参等の材料を加熱することによって、高麗人参の有効成分を温泉水中に抽出でき、高麗人参の苦味が抑えることができ、さらに、高麗人参の食感が良好となる。このように、本発明の参鶏湯の製造方法によれば、従来の製造方法では食べることが難しかった、高麗人参自体を食べることができる。
【0031】
本発明の製造方法で用いられる穀類としては、例えば、米類(うるち米、もち米、古代米等)、雑穀類(豆類、麦類、イネ科雑穀類等)等が挙げられる。本発明の製造方法における穀類は、産地や品種も特に限定されず、国内産、外国産等の産地は問わない。穀類としては、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の製造方法で用いられる穀類の好適な例として、もち米が挙げられる。穀類として、もち米を使用する場合、生米でもよく、蒸米でもよい。
【0033】
また、参鶏湯には、その他の材料を含んでもよい。その他の材料としては、通常、加工食品の製造に使用される原料であれば、特に制限されないが、例えば、大根、玉ねぎ、長ねぎ、太ねぎ、青ねぎ、人参、にんにく、しょうが等の野菜類、栗、ナツメ、クコの実、松の実等の果実類、油脂類、乳化剤、防腐剤、増粘剤、調味料、食塩等が挙げられる。
【0034】
その他の材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの材料の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されず、使用する材料の種類等に応じて適宜設定される。
【0035】
(2.本発明の参鶏湯料理セット)
本発明の製造方法で得られた参鶏湯は、固形物と液状物とに分離し、それぞれを別個に容器に充填した参鶏湯料理セットとすることができる。
本発明の参鶏湯料理セットにおいて、固形物は、鶏肉、高麗人参、穀類(好適には、もち米)、その他の材料が含まれるものであり、液状物は、固形物を取り除いて得られるスープ(ペーストを含む)である。
【0036】
固形物と液状物を一緒の容器に充填すると、固形物(特に、鶏肉や高麗人参)の食感や風味が劣化するが、本発明の参鶏湯料理セットのように固形物と液状物とに分離し、別個に容器に充填することによって、固形物の食感や風味が劣化を防ぐことができる。
また、固形物を容器に充填する場合、固形物(鶏肉、高麗人参、穀類、その他の材料)全てをひとつに充填してもよく、固形物を種類ごとに小分けにして充填してもよい。
【0037】
また、参鶏湯料理セットは、冷蔵品としてもよいが、長期間保存する場合や輸送する場合は、冷凍品とすることが好ましい。
本発明の製造方法で製造された参鶏湯セットは、冷凍後、解凍したとしても、高麗人参自体の有用成分由来の風味(苦味)が抑えられ、高麗人参や鶏肉の食味(風味や食感)やスープ自体の風味が良好な参鶏湯とすることができる。
【0038】
本発明の参鶏湯料理セットの好適な態様は、固形物と液状物をそれぞれ所定の量になるように充填し、冷凍するものである。このような態様であれば、家庭等で簡単に温めて、手軽に食すことができる。食する際には、必要に応じて、塩等をかけても良い。
【0039】
参鶏湯料理セットを輸送する場合は、固形物と液状物を充填したそれぞれの容器を一緒に箱詰する等して輸送するのが好ましい。
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない
限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
以下の方法で、実施例1、比較例1及び比較例2の参鶏湯を製造した。
なお、参鶏湯に用いた材料は以下の通りである。
温泉水:山鹿温泉水(熊本県山鹿市山鹿温泉から湧出する温泉水:pH9.6)
鶏肉:肥後のうまか赤鶏(熊本県産)
高麗人参:高麗人参(根茎)(株式会社DoDo Aqua Japan)
【0043】
(実施例1)
温泉水1.0Lに対して丸鶏0.3kg、高麗人参0.75本の割合になるように鍋に入れ、沸騰するまで加熱した。沸騰後、1時間煮込んだ。
1時間後、鍋から丸鶏及び高麗人参を取り出した。取り出した丸鶏は、鶏肉と鶏骨に分け、鶏骨のみを鍋の中に戻した。
さらに、鍋にもち米(生米)0.06kg、なつめ1個、栗1個の割合で入れ、もち米が柔らかくなるまで煮込むことによって、実施例1の参鶏湯を得た。実施例1の参鶏湯の写真を
図1に示す。
【0044】
(比較例1)
実施例1の方法において、温泉水の代わりに水道水を使用した以外は同様の方法によって、比較例1の参鶏湯を得た。
【0045】
(比較例2)
実施例1の方法において、温泉水の代わりに市販のミネラル水を使用した以外は同様の方法によって、比較例2の参鶏湯を得た。
【0046】
<評価>
パネラー(30代~50代の男女10名)を対象に、上記の方法で製造された実施例1、比較例1及び2の参鶏湯を食し、高麗人参や鶏肉の風味及び食感についての食味試験を行った。参鶏湯の食味試験を以下の評価基準の通り、評価し、平均点が1.5点以上を合格点とした。また、表1の基になった評価試験のアンケートまとめを
図2に示す。なお、参考例として市販の参鶏湯を用いた。
【0047】
(評価基準:スープの味)
2点:鶏肉と高麗人参の風味を強く感じる。
1点:鶏肉の風味を感じ、高麗人参の風味をわずかに感じる。
0点:鶏肉の風味を感じるが、高麗人参の風味をほとんど感じない。
【0048】
(評価基準:高麗人参の味)
2点:高麗人参自体の苦味をほとんど感じない。
1点:高麗人参自体の苦味をわずかに感じるが、気にならない程度である。
0点:高麗人参自体の苦味を強く感じる。
【0049】
(評価基準:高麗人参の食感)
2点:高麗人参の繊維質な食感がほとんど残らない。
1点:高麗人参の繊維質な食感がわずかに残るが、気にならない程度である。
0点:高麗人参が固く、繊維質な食感が残る。
【0050】
(評価基準:鶏肉の食感)
2点:鶏肉のパサつきを感じない。
1点:鶏肉のパサつきをわずかに感じるが、気にならない程度である。
0点:鶏肉のパサつきを感じる。
【0051】
表1にパネラーの平均点により示した評価結果を示す。
【0052】
【0053】
表1の通り、温泉水を使用しなかった比較例1、比較例2及び参考例の参鶏湯を食したところ、どの参鶏湯もスープに鶏肉の風味は感じるが、高麗人参の風味はわずかに感じる程度だった。また、比較例1及び比較例2の参鶏湯を食したところ、高麗人参の繊維質な食感がわずかに残り、鶏肉のパサつきをわずかに感じたパネラーが多く、参考例の参鶏湯を食したところ、すべてのパネラーが、高麗人参が固く、繊維質な食感が残り、鶏肉のパサつきを感じた。しかしながら、温泉水を使用した実施例1の参鶏湯を食したところ、他の参鶏湯と比較しても圧倒的にスープに鶏肉の風味や高麗人参の風味を感じられ、かつ鶏肉のパサつきや高麗人参の繊維質な食感を感じないパネラーがほとんどだった。
【0054】
また、温泉水を使用した実施例1の参鶏湯は、比較例1及び比較例2の参鶏湯に比べ、とろみがあり、スープに鶏肉及び高麗人参両方の風味を感じ、濃厚であった。さらに、実施例1の参鶏湯に含まれる高麗人参は、繊維質な食感がほとんど感じず、食後の苦味もほとんど感じなかったが、参考例の参鶏湯に含まれる高麗人参は、繊維質な食感が残り、強い苦味を感じた。
【0055】
以下、参鶏湯料理セットの食味評価について示す。なお、参鶏湯料理セットは以下の方法で製造した。
【0056】
実施例1の参鶏湯を固形物(鶏肉、高麗人参、もち米等)と液状物(固形物を取り除いたスープ)とに分離した。その後、1セット当たり、液状物300gとなるように容器に充填し、固形物をそれぞれ、もち米150g、鶏肉50g、高麗人参等30gとなるように小分けにし、それぞれの容器に充填した。充填したそれぞれの容器を封止後、-18℃で冷凍することによって、参鶏湯調理セットを得た。
【0057】
上記の方法で製造された参鶏湯料理セットを容器のまま流水解凍した。その後、食するのに適した温度となるまで加温することによって参鶏湯(以下、「実施例2の参鶏湯」とする。)を得た。
【0058】
参鶏湯料理セットを加温して得た実施例2の参鶏湯を食したところ、冷凍した参鶏湯料理セットを温めた参鶏湯(実施例2の参鶏湯)でも、製造直後の参鶏湯(実施例1の参鶏湯)と同様の食味を得ることができることが確認された。
本発明によれば、高麗人参の有用成分を抽出でき、高麗人参の繊維質の食感や鶏肉のパサつきを抑えた、食味(風味や食感)が良好な参鶏湯の製造方法及び参鶏湯料理セットを提供することができる。