(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067177
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】紫外線処理評価装置および紫外線処理評価方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240510BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20240510BHJP
【FI】
C02F1/32
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177042
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】305013910
【氏名又は名称】国立大学法人お茶の水女子大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 雅寛
【テーマコード(参考)】
4B063
4D037
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ18
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS39
4B063QX02
4D037AA01
4D037AA05
4D037AA06
4D037AA08
4D037AA11
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB02
(57)【要約】
【課題】 所望の紫外線感受性を有する物質に対する通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を、簡易且つ精度良く評価することが可能な紫外線処理評価装置を提供する。
【解決手段】 紫外線処理評価装置30Aは、検出数取得部32と検出率算出部33と評価情報生成部34とを備える。検出数取得部32は、紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成した合成DNAを懸濁させた試料水を紫外線処理装置10に通水させた後、検出された変性前の塩基配列の数を取得する。検出率算出部33は、紫外線処理装置10に通水させる前の試料水の塩基配列の数に対する通水後の試料水の塩基配列の検出率を算出する。評価情報生成部34は、算出された塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して所定の反応速度を有する物質に対する、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成した合成DNAを懸濁させた試料水を通水式紫外線処理装置に通水させた後、検出された変性前の前記塩基配列の数を取得する検出数取得部と、
前記通水式紫外線処理装置に通水させる前の前記試料水に含まれる前記塩基配列の数に対する、前記検出数取得部が取得した、通水させた後の前記試料水から検出された変性前の前記塩基配列の数の割合で示される、前記塩基配列の検出率を算出する検出率算出部と、
前記検出率算出部で算出された前記塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して前記所定の反応速度を有する物質に対する、前記通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する評価情報生成部と
を備えた紫外線処理評価装置。
【請求項2】
前記紫外線照射に反応して変性する塩基配列は、チミン-チミン連続対である、請求項1に記載の紫外線処理評価装置。
【請求項3】
前記検出数取得部が取得する、前記変性前の前記塩基配列の数は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて検出された値である、請求項1に記載の紫外線処理評価装置。
【請求項4】
前記検出数取得部は、前記変性前の塩基配列の数が異なる複数の合成DNAを懸濁させた試料水を前記通水式紫外線処理装置に通水させた後、検出された前記複数の合成DNAごとの変性前の前記塩基配列の数を取得し、
前記検出率算出部は、前記複数の合成DNAごとに前記塩基配列の検出率を算出し、
前記評価情報生成部は、前記検出率算出部で算出された、前記複数の合成DNAごとの前記塩基配列の検出率に基づいて、前記複数の合成DNAそれぞれの紫外線照射に対する反応速度と同等の紫外線照射に対する反応速度を有する物質それぞれに対する、前記通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する、請求項1に記載の紫外線処理評価装置。
【請求項5】
前記複数の合成DNAはそれぞれ、前記塩基配列を検出するためのプライマーが他の合成DNAと異なる塩基配列で生成されている、請求項4に記載の紫外線処理評価装置。
【請求項6】
前記通水式紫外線処理装置で、処理対象水に紫外線照射を行った際の、前記通水式紫外線処理装置内における紫外線照射量分布の推定情報を取得する照射量分布推定情報取得部と、
前記照射量分布推定情報取得部で取得された紫外線照射量分布の推定情報に基づいて、前記通水式紫外線処理装置で、紫外線照射に対する前記所定の反応速度を有する物質を含む試料水に紫外線照射を行った際の前記物質の紫外線に対する反応率の推定値を算出する反応率推定値算出部と、
前記反応率推定値算出部で算出された反応率の推定値と、前記検出率算出部で算出された前記塩基配列の検出率に基づく反応率とが予め設定された範囲内にあり近似しているか否かにより、前記照射量分布推定情報取得部で取得された紫外線照射量分布情報の推定情報の妥当性を判断した妥当性判断情報を生成する妥当性判断部と、
をさらに備えた、請求項1に記載の紫外線処理評価装置。
【請求項7】
紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成した合成DNAを懸濁させた試料水を通水式紫外線処理装置に通水させた後、検出された変性前の前記塩基配列の数を取得し、
前記通水式紫外線処理装置に通水させる前の前記試料水に含まれる前記塩基配列の数に対する、通水させた後の前記試料水から検出された変性前の前記塩基配列の数の割合で示される、前記塩基配列の検出率を算出し、
算出した前記塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して前記所定の反応速度を有する物質に対する、前記通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する、紫外線処理評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線処理評価装置および紫外線処理評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を用いて微生物を殺菌する紫外線処理装置が広く用いられている。紫外線処理装置による平均的な紫外線処理効果は、紫外線耐性が既知の微生物を含む試料水を通水させ、その不活化率を測定することで、評価することができる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
また、複数種類の微生物を用いることで、紫外線処理装置による平均的な紫外線処理効果だけでなく、紫外線照射分布の推定情報の妥当性を得ることが可能な技術も開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(Sommer et al.(2008)Disinfection of drinking water by UV irradiation: Basic principles - Specific requirements - International implementations, Ozone Science & Engineering, 30(1), 43-48)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6397362号公報
【特許文献2】国際公開第2007/108332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、微生物を用いて紫外線処理装置による平均的な紫外線処理効果を評価する手法は確立しており、その実用例も多くある。しかし、紫外線耐性が既知の微生物は限られているため、これらの微生物とは紫外線耐性が異なる微生物に対しては紫外線処理効果を評価することができないという問題があった。
【0007】
また、紫外線処理装置に微生物を含む試料水を通水させた後、微生物の不活化率を測定するには丸一日以上の時間が必要であり、紫外線処理効果の評価情報を生成するまでに長時間を要するという問題があった。
【0008】
紫外線処理装置による平均的な紫外線処理効果を評価する他の手法として、通水式紫外線処理装置に紫外線反応色素を塗布したフォトクロミック粒子を通水し、その変色量を測定することで紫外線処理効果を評価する手法も開発されている(例えば、特許文献2)。
【0009】
この手法は、フォトクロミック粒子の扱いが微生物に比べて容易であること、また、粒子の変色量の測定を迅速に実行可能であること等により、微生物を用いて紫外線処理装置による平均的な紫外線処理効果を評価する場合に比べて、簡易且つ短時間で処理を実行できるという利点がある。
【0010】
しかし、このフォトクロミック粒子の紫外線感受性は一定であり、当該紫外線感受性と異なる紫外線感受性を有する物質に応じた紫外線処理効果、言い換えれば、異なる紫外線耐性を有する物質に応じた紫外線処理効果を評価することができないという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、所望の紫外線感受性を有する物質に対する通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を、簡易且つ精度良く評価することが可能な、紫外線処理評価装置および紫外線処理評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための、本発明の紫外線処理評価装置は、紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成した合成DNAを懸濁させた試料水を通水式紫外線処理装置に通水させた後、検出された変性前の前記塩基配列の数を取得する検出数取得部と、前記通水式紫外線処理装置に通水させる前の前記試料水に含まれる前記塩基配列の数に対する、前記検出数取得部が取得した、通水させた後の前記試料水から検出された変性前の前記塩基配列の数の割合で示される、前記塩基配列の検出率を算出する検出率算出部と、前記検出率算出部で算出された前記塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して前記所定の反応速度を有する物質に対する、前記通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する評価情報生成部と
を備える。
【0013】
また本発明の紫外線処理評価方法は、紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成した合成DNAを懸濁させた試料水を通水式紫外線処理装置に通水させた後、検出された変性前の前記塩基配列の数を取得し、前記通水式紫外線処理装置に通水させる前の前記試料水に含まれる前記塩基配列の数に対する、通水させた後の前記試料水から検出された変性前の前記塩基配列の数の割合で示される、前記塩基配列の検出率を算出し、算出した前記塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して前記所定の反応速度を有する物質に対する、前記通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紫外線処理評価装置および紫外線処理評価方法によれば、所望の紫外線感受性を有する物質に対する通水式紫外線処理装置による紫外線処理効果を、簡易且つ精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による紫外線処理評価装置を利用した評価システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】チミン-チミン連続対を含む合成DNAを含む試料水に紫外線を照射し、その後試料水から検出されたチミン-チミン連続対の数を、紫外線照射量ごとおよび初期(照射前)のチミン-チミン連続対数ごとにPCRを用いて計測した結果を示すグラフである。
【
図3】合成DNA中のチミン-チミン連続対の数ごとの紫外線照射に対する反応速度定数を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態による紫外線処理評価装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の他の実施形態による紫外線処理評価装置を利用した評価システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態として、紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価する紫外線処理評価装置について、以下に説明する。
【0017】
〈一実施形態による紫外線処理評価装置を利用した評価システムの構成〉
図1は、本実施形態による紫外線処理評価装置を利用した評価システム1Aの構成を示すブロック図である。本実施形態による評価システム1Aは、紫外線処理装置10と、検出装置20と、紫外線処理評価装置30Aとを備える。
【0018】
紫外線処理装置10は、通水式の紫外線処理装置であり、紫外線照射槽11と、紫外線照射槽11内に設置された紫外線ランプ12とを有する。紫外線照射槽11は、処理対象の試料水を照射槽入口111から流入させ、紫外線ランプ12から紫外線を照射させつつ槽内を通水させて、照射槽出口112から流出させる。
【0019】
本実施形態においては、紫外線照射槽11に通水させる試料水として、合成DNAを懸濁させた試料水を用いる。試料水に投入される合成DNAは、紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように予め生成したものである。試料水に投入される合成DNAの詳細については、後述する。
【0020】
検出装置20は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)の技術を用いて、紫外線処理装置10に通水させた試料水から所定の塩基配列を検出する。
【0021】
紫外線処理評価装置30Aは、試料水情報取得部31と、検出数取得部32と、検出率算出部33と、評価情報生成部34と、出力部35とを備える。
【0022】
試料水情報取得部31は、紫外線処理装置10に通水させる試料水の情報として、当該試料水に懸濁された合成DNA内の所定の塩基配列の数、および紫外線照射に対する当該塩基配列の反応速度の情報を取得する。
【0023】
検出数取得部32は、検出装置20で試料水から検出された、所定の塩基配列の数を取得する。検出率算出部33は、試料水情報取得部31で取得された所定の塩基配列の数に対する、検出数取得部32が取得した当該塩基配列の数の割合で示される、当該塩基配列の検出率を算出する。
【0024】
評価情報生成部34は、検出率算出部33で算出された所定の塩基配列の検出率に基づいて、紫外線照射に対して所定の反応速度を有する物質に対する、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する。
【0025】
出力部35は、例えば表示装置で構成され、評価情報生成部34で生成した評価情報を出力する。
【0026】
〈一実施形態による紫外線処理評価装置を利用した評価システムの動作〉
紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価する際には、一般的には、紫外線耐性が既知の微生物を含む試料水を通水させ、その不活化率を測定することで評価する。しかし、紫外線耐性が既知の微生物は限られているため、これらの微生物とは紫外線耐性が異なる微生物に対しては紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価することができない。
【0027】
そこで本実施形態では、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価するために紫外線処理装置10に通水させる試料水として、予め生成した合成DNAを懸濁させた試料水を用いる。試料水に含める合成DNAは、紫外線照射に反応して変性する塩基配列を、紫外線照射に対する所定の反応速度に応じた数分、含むように生成される。本実施形態においては、紫外線照射に反応して変性する塩基配列として、チミン連続塩基配列であるチミン-チミン連続対を用いる。
【0028】
チミン-チミン連続対は、紫外線が照射されると、不可逆的な反応により二量体を形成する。紫外線照射によるチミン-チミン連続対の反応速度(紫外線感受性)は、処理対象である試料水の合成DNA内のチミン-チミン連続対の数に依存することが実験的に確認されている。
【0029】
チミン-チミン連続対は、PCRを用いた技術により検出可能であるが、紫外線照射に反応して二量体が形成されると検出不可能になる。そのため、所定数のチミン-チミン連続対を含む合成DNAが紫外線照射をどの程度受けたかは、紫外線照射後の合成DNA内のチミン-チミン連続対の数を、PCRを用いて検出することで計測することができる。
【0030】
図2は、チミン-チミン連続対を含む合成DNAを含む試料水に紫外線を照射し、その後試料水から検出されたチミン-チミン連続対の数を、紫外線照射量ごとおよび初期(紫外線照射前)のチミン-チミン連続対数ごとにPCRを用いて計測した結果を示すグラフである。グラフ内で、プロット●は紫外線照射前のチミン-チミン連続対数が最も多い場合の計測結果を示しており、プロット●→〇→■→□の順に、紫外線照射前のチミン-チミン連続対数を少なくした場合の計測結果を示している。
【0031】
図2に示すように、紫外線照射量が大きい程、紫外線照射後の試料水から検出されるチミン-チミン連続対数は少なくなる。また、紫外線照射前のチミン-チミン連続対数が多い程、紫外線照射後の試料水から検出されるチミン-チミン連続対数は多くなる。
【0032】
このように、所定数のチミン-チミン連続対が所定量の紫外線照射量に対して所定の割合で反応することを利用して、任意の紫外線感受性、つまり紫外線照射に対して任意の反応速度定数を有する合成DNAを生成することが可能になる。
【0033】
図3は、
図2に示した計測結果に基づいて算出した、合成DNA中のチミン-チミン連続対の数ごとの紫外線照射に対する反応速度定数を示すグラフである。このように算出した情報を用いることで、紫外線照射に対して所定の反応速度定数を有する微生物に替えて、同程度の反応速度定数を有するように所定数のチミン-チミン連続対を含めて生成した合成DNAを用いて、紫外線処理装置10による紫外線処理効果の評価処理を行うことができる。紫外線照射に対する合成DNAの反応速度定数は、例えば所定の微生物の反応速度定数から所定範囲内にあれば、当該微生物の反応速度定数と同程度と判断することができる。
【0034】
チミン-チミン連続対を含む合成DNAを用いて、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する処理について説明する。
図4は、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する際に、紫外線処理評価装置30Aが実行する処理を示すフローチャートである。
【0035】
まず利用者が、紫外線照射に対する反応速度が異なるように、チミン-チミン連続対の数が異なる複数の合成DNAを生成する。これらの複数の合成DNAはそれぞれ、チミン-チミン連続対をPCRにより検出するためのプライマー部が他の合成DNAと異なる塩基配列で生成される。
【0036】
利用者は、生成した複数の合成DNAを懸濁させた試料水を調製する。利用者は、調製した試料水の情報、具体的には当該試料水に懸濁された合成DNAごとのチミン-チミン連続対の数、および紫外線照射に対する反応速度の情報を、紫外線処理評価装置30Aに入力する。紫外線処理評価装置30Aでは、入力された情報を、試料水情報取得部31が取得する(S1)。
【0037】
利用者は、調製した試料水を紫外線照射槽11の照射槽入口111から流入する。試料水は、紫外線ランプ12からの照射を受けつつ紫外線照射槽11内を通水し、照射槽出口112から流出される。
【0038】
検出装置20は、紫外線処理装置10に通水させた試料水から、合成DNAごとのプライマーに基づいてチミン-チミン連続対を検出し、合成DNAごとの検出数を紫外線処理評価装置30Aに出力する。その際、検出装置20は、試料水内の合成DNA全体を対象として検出処理を実行する。
【0039】
紫外線処理評価装置30Aでは、検出装置20から出力された合成DNAごとのチミン-チミン連続対の検出数を、検出数取得部32が取得する(S2)。次に、検出率算出部33が、試料水情報取得部31で取得された合成DNAごとのチミン-チミン連続対の数に対する、検出数取得部32が取得した対応する合成DNAのチミン-チミン連続対の数の割合で示される、合成DNAごとのチミン-チミン連続対の検出率を算出する。
【0040】
評価情報生成部34は、検出率算出部33で算出された合成DNAごとのチミン-チミン連続対の検出率に基づいて、試料水に懸濁させた複数の合成DNAそれぞれの紫外線照射に対する反応速度と同等の紫外線照射に対する反応速度を有する物質それぞれに対する、紫外線処理装置10による紫外線処理効果を評価した評価情報を生成する。合成DNAの紫外線照射に対する反応速度は、所定物質の紫外線照射に対する反応速度から所定範囲内であれば、当該物質の反応速度と同等であると判断することができる。
【0041】
出力部35は、評価情報生成部34で生成した紫外線照射に対する反応速度ごとの評価情報を出力する(S4)。
【0042】
以上の第1実施形態によれば、微生物に替えて、所定の塩基配列を所定数含む合成DNAを懸濁させた試料水を用いることで、紫外線処理装置による紫外線処理効果を、簡易且つ精度良く評価することができる。
【0043】
PCR検出処理は、一般的にはウィルスから所定の塩基配列を検出する際に多く用いられている。その際、1回のPCR検出処理において処理対象とすることができる塩基数は数百程度であるが、ウィルスの多くは数千の塩基を含むためすべてを処理対象とすることができず、ウィルスの中の一部のみを対象として検出処理を行う。その分、検出精度は低下することになる。
【0044】
これに対し上述した実施形態で用いる合成DNAは100~200程度の塩基で生成されるため、合成DNA全体をPCR検出処理の対象とすることができ、精度の高い検出結果を得ることができる。これにより、紫外線処理評価装置は、精度の高い評価情報を生成することができる。
【0045】
また、従来の方法により、微生物を含む試料水を用いて紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価する場合には、試料水から微生物の濃度を測定するために24時間以上を要する。これに対し、上述した実施形態で説明したように、合成DNAを懸濁させた試料水を用いて紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価する場合には、試料水からPCRを用いて所定の塩基配列を検出するためにかかる時間は、所定の前処理を含めて2~3時間程度である。そのため、本実施形態による紫外線処理評価装置30Aによる紫外線処理効果の評価処理は、従来の方法に比べて大幅に処理時間を短縮させることができる。
【0046】
また、従来の微生物を用いた評価処理方法では、評価処理対象として用いることができる微生物の種類が限られており、これらの微生物とは異なる紫外線感受性を有する微生物に対しては評価情報を生成することができない。これに対し、上述した実施形態で説明したように、合成DNAを懸濁させた試料水を用いて紫外線処理装置による紫外線処理効果を評価する場合には、合成DNAに含めるチミン-チミン連続対の数を調整することで、任意の紫外線感受性を有する合成DNAを生成し、これを用いた評価処理を行うことが可能である。これにより、本実施形態の紫外線処理評価装置30Aによる処理方法では、従来の方法に比べて紫外線処理装置による紫外線処理効果の評価処理の対象とする物質の紫外線感受性の範囲を大幅に拡大することができ、精度の高い評価処理を行うことができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、試料水に懸濁させる合成DNAごとにプライマー部の塩基配列が異なるように生成されるため、1つの試料水に紫外線感受性が異なる複数の合成DNAを懸濁させても、検出装置20はPCRにより合成DNAごとにチミン-チミン連続対の数を検出することができる。これにより、紫外線処理評価装置30Aは、簡易な処理で、紫外線感受性が異なる合成DNAごとに紫外線処理装置による紫外線処理効果の評価情報を生成することができる。
【0048】
また他の形態として、
図5に示すように、紫外線処理評価装置30Bを含む評価システム1Bを構成してもよい。紫外線処理評価装置30Bは、紫外線処理評価装置30Aの構成に加え、照射量分布推定情報取得部36と、反応率推定値算出部37と、妥当性評価部38とをさらに備える。
【0049】
照射量分布推定情報取得部36は、予め紫外線処理装置10について組み込まれた紫外線照射に関する照射量分布計算プログラムと、CFDによる流体解析情報とから生成された、紫外線処理装置10で処理対象水に紫外線照射を行った際の紫外線照射槽11内における紫外線照射量分布の推定情報を取得する。
【0050】
反応率推定値算出部37は、照射量分布推定情報取得部36で取得された紫外線照射量分布の推定情報に基づいて、紫外線処理装置10で紫外線照射に対する所定の反応速度を有する物質を含む試料水に紫外線照射を行った際の当該物質の紫外線に対する平均的な反応率の推定値を算出する。
【0051】
妥当性評価部38は、反応率推定値算出部37で算出された反応率の推定値と、検出率算出部33で算出されたチミン-チミン連続対の検出率に基づく反応率とが予め設定された範囲内にあり近似しているか否かにより、照射量分布推定情報取得部36で取得された紫外線照射量分布情報の推定情報の妥当性を判断した妥当性判断情報を生成する。
【0052】
このような機能部をさらに備えることにより、紫外線処理評価装置30Bはチミン-チミン連続対の検出率を用いて、シミュレーションにより推定された紫外線処理装置10内の紫外線照射槽11内における紫外線照射量分布の妥当性を判断することができる。
【符号の説明】
【0053】
1A、1B 評価システム
10 紫外線処理装置
11 紫外線照射槽
12 紫外線ランプ
20 検出装置
30A、30B 紫外線処理評価装置
31 試料水情報取得部
32 検出数取得部
33 検出率算出部
34 評価情報生成部
35 出力部
36 照射量分布推定情報取得部
37 反応率推定値算出部
38 妥当性評価部
111 照射槽入口
112 照射槽出口