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  • 特開-ゴム押出物の製造方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067182
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ゴム押出物の製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20240510BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240510BHJP
   B29C 48/505 20190101ALI20240510BHJP
   B29K 7/00 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/305
B29C48/505
B29K7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177050
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 翼
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰介
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AG02
4F207AH20
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP05
4F207AP08
4F207AR06
4F207AR09
4F207AR15
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL84
4F207KM04
4F207KM14
(57)【要約】
【課題】装置を複雑化せずに、ゴム材料の押出の再開時からゴム押出物の重量バラつきを抑制して安定した品質を維持できるゴム押出物の製造方法および装置を提供する。
【解決手段】押出機2のスクリュー4を仕様値Vcの回転数で回転させて、ゴム材料Rを押出口7aから一定重量状態で連続的にゴム押出物Rxとして押出す工程を一時停止した後に再開する場合に、一定重量状態で連続的に押出されるゴム材料Rの押出し時の予め把握されている温度tpと押出しを再開する直前のヘッド6でのゴム材料Rの温度trとの温度差tx、または、一時停止の時間の長さLに基づいて、演算部10により決定された回転増加率αを仕様値Vcに乗じて再開回転数V1を算出し、押出しの再開からの所定期間Tで、制御部9により回転数を再開回転数V1から仕様値Vcに向かって低減させる制御を行ってゴム材料Rを連続的に押出口7aから押出す。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のスクリューを、設定された仕様値の回転数で回転させることにより、未加硫のゴム材料を前記押出機のヘッドに取付けられたダイスの押出口から一定重量状態で連続的にゴム押出物として押出すゴム押出物の製造方法において、
前記ゴム材料の押出しを一時停止後に再開する場合に、前記押出口から一定重量状態で連続的に押出される前記ゴム材料の押出し時の予め把握されている温度と前記押出しを再開する直前の前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度との温度差、または、前記一時停止の時間の長さに基づいて、前記仕様値に対する回転増加率を決定し、この回転増加率を前記仕様値に乗じた再開回転数を算出して、前記押出しの再開からの所定期間で、前記回転数を算出した前記再開回転数から前記仕様値に向かって低減させる制御を行って前記ゴム材料を連続的に押出すゴム押出物の製造方法。
【請求項2】
前記所定期間を、前記ゴム材料の押出しの一時停止時に前記押出機に残存している前記ゴム材料の量に基づいて決定する請求項1に記載のゴム押出物の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム材料の種類毎に、前記押出口から一定重量状態で連続的に押出される前記ゴム材料の押出し時の前記温度を予め把握しておき、前記ゴム材料の押出しを一時停止後に再開する場合に、予め把握されている前記温度と前記押出しを再開する直前の前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度との温度差に基づいて、前記回転増加率を決定する請求項1または2に記載のゴム押出物の製造方法。
【請求項4】
前記ゴム材料の種類毎に、前記一時停止の時間の長さに応じた前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度変化具合を予め把握しておき、前記ゴム材料の押出しを一時停止後に再開する場合に、前記一時停止の時間の長さに基づく前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度変化具合に基づいて、前記仕様値に対する回転増加率を決定する請求項1または2に記載のゴム押出物の製造方法。
【請求項5】
スクリューとこのスクリューが内設されたシリンダとこのシリンダの先端部のヘッドに取付けられるダイスとを有する押出機と、前記スクリューの回転数を制御する制御部とを有し、前記制御部により前記回転数が仕様値に制御されて回転する前記スクリューにより、未加硫のゴム材料が前記ダイスに形成されている押出口から一定重量状態で連続的にゴム押出物として押出されるゴム押出物の製造装置において、
前記ゴム材料の押出しが一時停止後に再開される場合に、前記押出口から一定重量状態で連続的に押出される前記ゴム材料の押出し時の予め把握されている温度と前記押出しが再開される直前の前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度との温度差、または、前記一時停止の時間の長さに基づいて、演算部により前記仕様値に対する回転増加率が決定され、前記回転増加率を前記仕様値に乗じて再開回転数が算出されて、前記押出しの再開からの所定期間で、前記制御部により前記回転数が前記再開回転数から前記仕様値に向かって低減される制御が行われて前記ゴム材料が連続的に押出される構成にしたゴム押出物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出物の製造方法および装置に関し、さらに詳しくは、装置を複雑化することなく、ゴム材料の押出を再開させた時からゴム押出物の重量バラつきを抑制して安定した品質を維持できるゴム押出物の製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、押出機を用いて、未加硫のゴム材料を所定形状に型付けしてゴム押出物として押出す押出工程がある。押出工程では、設備の段替えや前工程や後工程の都合に起因して、ゴム材料の押出を一時停止させることがある。ゴム材料の押出の一時停止中には、押出機の内部に残存しているゴム材料の温度が低下する。温度低下したゴム材料をそのまま押出すと、温度低下する前のゴム材料を押出す場合に比してゴム材料の押出量は減少する。その結果、押出の再開初期とそれ以降とでは、ゴム材料の押出量の差が大きくなる。即ち、押出機の内部のゴム材料が温度低下する前の温度に上昇するまではゴム押出物の重量のバラつきが大きくなり、これに伴って品質にもバラつきが生じる。
【0003】
ゴム材料の押出を再開させた時からゴム押出物の品質を安定させる方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案では、押出機に対して、押出流路の断面積を変化させる流量調整体、流量調整体の上流側および下流側でゴム材料の温度を検知する温度センサ、押出流路の内圧を検知する圧力センサ、押出口の近傍で押出流路を開閉する開閉部を設ける必要があるため製造装置が複雑化する。それ故、装置を複雑化することなく、ゴム材料の押出を再開させた時からゴム押出物の重量バラつきを抑制して安定した品質を維持する改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-44773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、装置を複雑化することなく、ゴム材料の押出を再開させた時からゴム押出物の重量バラつきを抑制して安定した品質を維持できるゴム押出物の製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のゴム押出物の製造方法は、押出機のスクリューを、設定された仕様値の回転数で回転させることにより、未加硫のゴム材料を前記押出機のヘッドに取付けられたダイスの押出口から一定重量状態で連続的にゴム押出物として押出すゴム押出物の製造方法において、前記ゴム材料の押出しを一時停止後に再開する場合に、前記押出口から一定重量状態で連続的に押出される前記ゴム材料の押出し時の予め把握されている温度と前記押出しを再開する直前の前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度との温度差、または、前記一時停止の時間の長さに基づいて、前記仕様値に対する回転増加率を決定し、この回転増加率を前記仕様値に乗じた再開回転数を算出して、前記押出しの再開からの所定期間で、前記回転数を算出した前記再開回転数から前記仕様値に向かって低減させる制御を行って前記ゴム材料を連続的に押出すことを特徴とする。
【0007】
本発明のゴム押出物の製造装置は、スクリューとこのスクリューが内設されたシリンダとこのシリンダの先端部のヘッドに取付けられるダイスとを有する押出機と、前記スクリューの回転数を制御する制御部とを有し、前記制御部により前記回転数が仕様値に制御されて回転する前記スクリューにより、未加硫のゴム材料が前記ダイスに形成されている押出口から一定重量状態で連続的にゴム押出物として押出されるゴム押出物の製造装置において、前記ゴム材料の押出しが一時停止後に再開される場合に、前記押出口から一定重量状態で連続的に押出される前記ゴム材料の押出し時の予め把握されている温度と前記押出しが再開される直前の前記ヘッドでの前記ゴム材料の温度との温度差、または、前記一時停止の時間の長さに基づいて、演算部により前記仕様値に対する回転増加率が決定され、前記回転増加率を前記仕様値に乗じて再開回転数が算出されて、前記押出しの再開からの所定期間で、前記制御部により前記回転数が前記再開回転数から前記仕様値に向かって低減される制御が行われて前記ゴム材料が連続的に押出される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記ゴム材料の押出の再開時に前記スクリューを前記仕様値に比して増加させた回転数で回転させることで、押出しの一時停止によって温度低下したゴム材料の押出量の減少を補うことができる。そして、前記所定期間で前記スクリューの前記回転数を前記再開回転数から前記仕様値に向かって低減させることで、前記ゴム材料を前記押出口から一定重量状態で連続的に前記ゴム押出物として押出す状態に円滑に移行させることができる。このように前記スクリューの前記回転数をフィードフォワ―ド制御すればよいので、装置を複雑化することなく、前記ゴム材料の押出を再開させた時から前記ゴム押出物の重量バラつきを抑制して安定した品質を維持するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のゴム押出物の製造装置を平面視で例示する説明図である。
図2図1のゴム押出物の製造装置を側面視で例示する説明図である。
図3】押出再開後のスクリューの回転数の制御を例示するグラフ図である。
図4】回転増加率を決定するためのデータを例示するグラフ図である。
図5】押出再開後のゴム押出物の押出し重量の経時変化を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゴム押出物の製造方法および装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図2に例示するゴム押出物の製造装置1(以下、製造装置1という)は、押出機2と、押出機2を制御する制御部9と、制御部9と通信可能に接続された演算部10とを備えている。演算部10は入力されたデータ等を用いて様々な演算処理を行う。制御部9および演算部10としてはそれぞれ、公知のコンピュータなどが採用される。この実施形態では、制御部9と演算部10とが個別に設けられているが、例えば、1台のコンピュータを制御部9および演算部10として用いることもできる。
【0012】
押出機2は、筒状のシリンダ3と、シリンダ3に内設されたスクリュー4と、シリンダ3の先端部に設置されたヘッド6と、ヘッド6に設置されたダイス7とを有している。シリンダ3の後端部にはスクリュー4を回転駆動する駆動モータ5が配置されている。シリンダ3の後端側上面には投入口3aが形成されていて、投入口3aを囲むようにホッパ3bが取付けられている。スクリュー4は、スクリュー軸の軸方向(シリンダ3の長手方向)に間隔をあけて配置された螺旋状のスクリュー刃を有している。ヘッド6には押出流路6aが形成されていて、ダイス7は押出流路6aに連通する押出口7aを有している。所望形状の押出口7aを有するダイス7は、ヘッド6に対して着脱自在になっている。
【0013】
この実施形態では、製造装置1はさらに、押出機2の前方の配置された引取りコンベヤ11と、ヘッド6に配置された温度センサ8aと、引取りコンベヤ11の上流側端部に配置された非接触タイプの温度センサ8bとを有している。温度センサ8a、8bはそれぞれ、配置された位置でゴム材料Rの温度を逐次検知する。ゴム材料Rの温度を検知できれば、公知の種々の温度センサを用いることができる。温度センサ8a、8bにより検知された温度データは演算部10に逐次入力される。
【0014】
次に、本発明のゴム押出物の製造方法の手順の一例を説明する。
【0015】
この製造装置1では、投入口3aを通じてシリンダ3の内部に投入された未加硫のゴム材料Rが、回転するスクリュー4により熱入れおよび練られつつヘッド6に送られる。ヘッド6に送られたゴム材料Rは、押出流路6aを通じて押出口7aからゴム押出物Rxとして連続的に押出される。ゴム材料Rは押出口7aを通過する際に、所望の断面形状に型付けされた長尺のゴム押出物Rxになる。タイヤ製造においては、ゴム押出物Rxとしてトレッドゴム、サイドゴム、ビードフィラーなどの様々なタイヤ部材が例示される。このゴム押出物Rxは、押出機2の前方に配置された引取りコンベヤ11によって別工程に搬送される。
【0016】
詳述すると、ゴム材料Rの種類毎に、スクリュー4の回転数に対して一定の仕様値Vcが設定されていて、演算部10にはこの仕様値Vcが入力、記憶されている。制御部9は、ゴム材料Rのゴム種毎に、演算部10に記憶されている仕様値Vcでスクリュー4を回転させることで、シリンダ3の内部のゴム材料Rを押出口7aから一定重量状態でゴム押出物Rxとして連続的に押出す。即ち、仕様値Vcでスクリュー4を回転させることで、押出口7aから単位時間当たりのゴム押出物Rxの押出し重量(押出量)が一定範囲になるように設定されている。このように一定重量状態でゴム押出物Rxを連続的に押出す期間を、以後、定常押出期間Ntという。
【0017】
ところで、ゴム材料Rを押出口7aから押出してゴム押出物Rxを製造していた時に、設備の段替えや前工程や後工程の都合に起因して、ゴム材料Rの押出を一時停止することがある。押出の一時停止中はスクリュー4の回転も停止され、シリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rの温度は徐々に低下する。
【0018】
その後、スクリュー4を回転させてゴム材料Rの押出しを再開し、定常押出期間Ntに移行してゴム押出物Rxを製造するが、シリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rの温度は、定常押出期間Ntでのシリンダ3の内部のゴム材料Rの温度に比して低下している。そのため、ゴム材料Rの押出しを再開する際に、仕様値Vcでスクリュー4を回転させてもゴム押出物Rxの押出し重量が定常押出期間Ntに比して不足する。その理由は、仕様値Vcでスクリュー4を回転させてゴム材料Rに対して同じエネルギを付与しても、ゴム材料Rの温度がより低い場合は、ゴム材料Rに対する熱入れにより多くのエネルギが消費されるので、そのエネルギ消費が多くなる分に応じて、押出口7aからのゴム押出物Rxの押出し重量が減少すると考えられる。
【0019】
したがって、ゴム材料Rの押出しを再開してからシリンダ3の内部のゴム材料Rの温度が、定常押出期間Ntのシリンダ3の内部のゴム材料Rの温度まで上昇するまでは、ゴム押出物Rxの押出し重量が定常押出期間Ntに比して小さくなる。その結果、ゴム材料Rの押出再開から定常押出期間Ntに至るまでの所定期間Tと、その後の定常押出期間Ntとではゴム押出物Rxの重量にバラつきが生じ、これに伴って品質にもバラつきが生じる。
【0020】
そこで、このゴム押出物Rxの重量のバラつきを抑制するために、本発明では特別な工夫をしている。即ち、ゴム材料Rの押出しを一時停止後に再開する場合に、シリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rの温度低下に起因するゴム押出物Rxの押出し重量の不足を補うために、図3に例示するように定常押出期間Ntになるまでは、スクリュー4の回転数を仕様値Vcに対して増加させるフィードフォワード制御を行う。即ち、ゴム材料Rの押出再開から定常押出期間Ntに至るまでの所定期間Tでは、スクリュー4の回転数は一定の仕様値Vcに維持するのでははく、仕様値Vcよりも速い速度になるようにフィードフォワード制御する。
【0021】
このフィードフォワード制御について詳述すると、まず、定常押出期間Ntでのゴム材料Rの押出し時の温度tpを予め把握しておく。そのため、定常押出期間Ntで温度センサ8bによりゴム押出物Rxの温度を検知して、検知したその温度tpを演算部10に記憶する。尚、この温度tpとして、定常押出期間Ntに温度センサ8aによって検知したヘッド6でのゴム材料Rの温度を用いることもできる。
【0022】
そして、ゴム材料Rの押出しを一時停止後に再開する場合には、押出しを再開する直前のヘッド6でのゴム材料Rの温度trを検知する。そのため、温度センサ8aによりヘッド6に残存しているゴム材料Rの温度trを検知して、検知したその温度trを演算部10に入力する。ゴム材料Rの押出しの一時停止によって、温度trは温度tpよりも低くなっている(tr<tp)。
【0023】
次いで、演算部10は、予め把握されている温度tpと検知した温度trとの温度差tx(=tp―tr)を算出し、この温度差txに基づいて、仕様値Vcに対する回転増加率αを決定する。回転増加率αは1よりも大きな値である(α>1)。
【0024】
図4に例示するように、回転増加率αと温度差txとの相関関係データ(または回転増加率αと押出の一時停止の時間の長さLとの相関関係データ)が予め把握されていて、この相関関係データが演算部10に入力、記憶されている。演算部10に回転増加率αと温度差txとの相関関係データが記憶されている場合は、演算部10はこの相関関係データと温度差txとを用いて、破線の矢印で示すように温度差txに対応する回転増加率αを決定する。
【0025】
図4に例示する回転増加率αと温度差txとの相関関係データは、この押出機2または同種の押出機を用いて事前テストを行って取得する。具体的には、温度差txの大きさに応じて、ゴム押出物Rxの押出し重量がどの程度変化するかを把握する(データ1を取得する)。そして、スクリュー回転数の変化に応じて、ゴム押出物Rxの押出し重量がどの程度変化するかを把握する(データ2を取得する)。取得したデータ1とデータ2との関係に基づいて、図4に例示する回転増加率αと温度差txとの相関関係データを取得することができる。
【0026】
押出定常期間Ntでのゴム材料Rの押出し時の温度tpは、代表的な1種類のゴム材料Rを用いて検知したデータでもよいが、この温度tpはゴム材料Rの種類毎に若干異なる。そこで、ゴム材料Rの種類毎に、この温度tpを予め把握しておくことが好ましい。そして、ゴム材料Rの押出しを一時停止後に再開する場合に、予め把握されている温度tpと既述した温度trとの温度差txに基づいて回転増加率αを決定すると、それぞれの種類のゴム材料Rについて、押出を再開させた時からゴム押出物Rxの重量バラつきをより小さくするには有利になる。したがって、図4に例示する回転増加率αと温度差txとの相関関係データも、ゴム材料Rの種類毎に取得することが好ましい。
【0027】
回転増加率αは、押出の一時停止の時間の長さLに基づいて決定することもできる。即ち、図4に例示する回転増加率αと押出の一時停止の時間の長さLとの相関関係データが演算部10に記憶されている場合は、演算部10はこの相関関係データと押出の一時停止の時間の長さLとを用いて、破線の矢印で示すように押出の一時停止の時間の長さLに対応する回転増加率αを決定する。
【0028】
図4に例示する回転増加率αと押出の一時停止の時間の長さLとの相関関係データは、この押出機2または同種の押出機を用いて事前テストを行って取得する。具体的には、押出の一時停止の時間の長さLに応じて、ヘッド6でのゴム材料Rの温度はどの程度変化するのかを把握する(データ3を取得する)。このデータ3は、押出の一時停止の時間の長さLに応じて、温度差txがどの程度になるかを把握したデータでもよい。
【0029】
そして、上述したようにデータ1およびデータ2を取得する。取得したデータ1とデータ2とデータ3の関係に基づいて、図4に例示する回転増加率αと押出の一時停止の時間の長さLとの相関関係データを取得することができる。
【0030】
ゴム材料Rの押出の一時停止の時間の長さLに応じたヘッド6でのゴム材料Rの温度の変化具合は、代表的な1種類のゴム材料Rを用いて検知したデータでもよいが、この温度変化具合はゴム材料Rの種類毎に若干異なる。そこで、ゴム材料Rの種類毎に、ゴム材料Rの押出の一時停止の時間の長さLに応じたヘッド6でのゴム材料Rの温度変化具合を予め把握しておくことが好ましい。そして、ゴム材料Rの押出しを一時停止後に再開する場合に、一時停止の時間の長さLに基づくヘッド6でのゴム材料Rの温度変化具合に基づいて、仕様値Vcに対する回転増加率αを決定すると、それぞれの種類のゴム材料Rについて、押出を再開させた時からゴム押出物Rxの重量バラつきをより小さくするには有利になる。したがって、図4に例示する回転増加率αと押出の一時停止の時間の長さLとの相関関係データも、ゴム材料Rの種類毎に取得することが好ましい。
【0031】
上述したように回転増加率αを決定した後は、演算部10は、決定した回転増加率αを仕様値Vcに乗じた再開回転数V1(=α×Vc)を算出する。決定された再開回転数V1は制御部9に入力される。制御部9は図3に例示するように、押出しの再開からの所定期間Tで、スクリュー4の回転数を算出した再開回転数V1から仕様値Vcに向かって低減させるフィードフォワード制御を行う。図3では、押出しの再開時点から定常押出期間Ntの開始時点に向かって、スクリュー4の回転数を再開回転数V1から仕様値Vcに一様に(リニアに)低減させている。スクリュー4の回転数は、図3に例示するように、押出しの再開時点から定常押出期間Ntの開始時点の間でリニアに低減させるだけでなく、若干曲線状に低減させることもできる。
【0032】
この所定期間Tは1分~2分程度なので、この範囲で適切に決定する。所定時間Tは、ゴム材料Rの押出しの一時停止時にシリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rの量に基づいて決定するとよい。具体的には、押出の一時停止時にシリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rのすべてが、押出を再開してからゴム押出物Rxとして押出されるまでに要する時間と同等程度に所定時間Tを設定する。シリンダ3の容積(シリンダ3に充填できるゴム材料Rの量)は既知である。また、スクリュー4の回転数とゴム押出物Rxの押出し量も既知になる。そこで、図3に例示する所定時間Tでのスクリュー4の回転数に基づいて所定時間Tでのゴム押出物Rxの押出し量を算出し、この算出したゴム押出物Rxの押出し量と押出の一時停止時にシリンダ3の内部に残存しているゴム材料Rの量とが同じになるように所定時間Tを設定する。
【0033】
ゴム材料Rの押出再開から定常押出期間Ntに至るまでの所定時間Tでは、制御部9が図3に例示するようにスクリュー4の回転数を制御して、ゴム材料Rを押出口7aから連続的にゴム押出物とRxして押出す。この所定時間Tの経過後は、定常押出期間Ntに移行する。
【0034】
図5には、スクリュー4の回転数を上述したようにフィードフォワード制御した場合のゴム押出物Rxの押出し重量を太線実線で示している。また、スクリュー4の回転数をフィードフォワード制御せずに、仕様値Vcで押出を再開のゴム押出物Rxの押出し重量を太線破線で示している。また、図5ではゴム押出物Rxの押出し重量の目標値Gおよびその許容範囲Awも示している。
【0035】
この実施形態によれば、ゴム材料Rの押出の再開時にスクリュー4を仕様値Vcに比して増加させた回転数で回転させることで、押出しの一時停止によって温度低下したシリンダ3の内部に残存するゴム材料Rを押出す時の押出量の減少を補うことができる。そして、所定期間Tでスクリュー4の回転数を再開回転数V1から仕様値Vcに向かって低減させることで、所定期間Tから定常押出期間Ntに円滑に移行させることができる。
【0036】
この製造装置1は、上述したようにスクリュー4の回転数をフィードフォワ―ド制御すればよいので、押出を再開させた時のゴム押出物Rxの重量バラつきを抑制するために様々な機器を装備する必要がなく、装置の複雑化を回避するには有利になる。これに伴い、既存の押出機2に本発明を適用し易くなる。
【0037】
そして、図5の実線太線で例示するように、ゴム材料Rの押出を再開させた時からゴム押出物Rxの重量バラつきを抑制して安定した品質を維持するには有利になる。即ち、本発明によれば、ゴム材料Rの押出を再開させた時からゴム押出物Rxの押出し重量を、目標値Gの許容範囲Awに維持するには有利になる。
【0038】
既述した製造装置1およびゴム押出物Rxの製造方法は、タイヤなど種々のゴム製品の部材となるゴム押出物Rxを製造する際に用いることができる。また、この製造装置1は、加硫系配合剤が含有されていないゴム材料Rをゴム押出物Rxとして押出す場合にも、加硫系配合剤が含有されているゴム材料Rをゴム押出物Rxとして押出す場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ゴム押出物の製造装置
2 押出機
3 シリンダ
3a 投入口
3b ホッパ
4 スクリュー
5 駆動モータ
6 ヘッド
6a 押出流路
7 ダイス
7a 押出口
8a、8b 温度センサ
9 制御部
10 演算部
11 引取りコンベヤ
R 未加硫のゴム材料
Rx ゴム押出物
図1
図2
図3
図4
図5