(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067188
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/02 20060101AFI20240510BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240510BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240510BHJP
B01D 53/80 20060101ALI20240510BHJP
C01B 32/55 20170101ALI20240510BHJP
【FI】
B01D53/02
B01D53/18 110
B01D53/62 ZAB
B01D53/80
C01B32/55
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177057
(22)【出願日】2022-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
(72)【発明者】
【氏名】八木 利之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA35
4D002DA66
4D002DA70
4D002EA06
4D002EA13
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB08
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB11
4D012CE03
4D012CF10
4D020AA03
4D020BA02
4D020BA23
4D020BA30
4D020BB05
4D020BC06
4D020CB01
4D020DA03
4D020DB07
4G146JA02
4G146JB08
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を効率よく固定化できる二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素固定化装置1は、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジ2に対し撹拌しつつ加水した第一中間体6を固液分離した固形分14に対し撹拌しつつ加水した第二中間体17を得る加水撹拌手段15と、第二中間体17に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体25を得る反応手段22と、第三中間体25を脱水して粉体3を製造する脱水手段35と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離した固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌手段と、
前記第二中間体に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応手段と、
前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水手段と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
加水撹拌手段は、固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項3】
固形分の含水率は、40%以上60%以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項4】
粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離した固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌工程と、
前記第二中間体に対して二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応工程と、
前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水工程と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化方法。
【請求項5】
加水撹拌工程では、固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項4記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項6】
固形分の含水率は、40%以上60%以下である
ことを特徴とする請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラッジから粉体を製造する二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジのカルシウム成分に二酸化炭素を反応させて、炭酸カルシウムを得る二酸化炭素固定化装置が知られている。この二酸化炭素固定化装置では、コンクリートスラッジに対して撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離し、その液体分から二酸化ケイ素を分離して二酸化炭素を反応させることで炭酸カルシウムを製造する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水に可溶なカルシウム成分は飽和濃度で決まっていることから、第一中間体が固液分離された固体分にはカルシウム成分が多量に残存している。そのため、この固形分に残存するカルシウム成分を有効利用して、より多くの二酸化炭素を固定することが望まれる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、二酸化炭素を効率よく固定化できる二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の二酸化炭素固定化装置は、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離した固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌手段と、前記第二中間体に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応手段と、前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水手段と、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1記載の二酸化炭素固定化装置において、加水撹拌手段は、固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加えるものである。
【0008】
請求項3記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置において、固形分の含水率は、40%以上60%以下であるものである。
【0009】
請求項4記載の二酸化炭素固定化方法は、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離した固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌工程と、前記第二中間体に対して二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応工程と、前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水工程と、を備えるものである。
【0010】
請求項5記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4記載の二酸化炭素固定化方法において、加水撹拌工程では、固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加えるものである。
【0011】
請求項6記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法において、固形分の含水率は、40%以上60%以下であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化炭素を効率よく固定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態の二酸化炭素固定化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、
図1を参照して説明する。
【0015】
図1において、1は二酸化炭素固定化装置である。二酸化炭素固定化装置1は、原素材となるコンクリートスラッジ2を用い、二酸化炭素を固定化した乾燥状態の粉体3を製造する粉体製造装置である。
【0016】
コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品製造時に発生するコンクリートスラッジである。コンクリート二次製品とは、セメント、水、細骨材、粗骨材、混和材からなるコンクリート材料を固化させた、例えばコンクリート柱、コンクリート杭などの製品をいう。特に、コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程にて発生するものである。遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジは、品質的にモルタルスラッジ、さらにはセメントペーストスラッジと同等のものである。そのため、コンクリートスラッジ2及び粉体3は、粗骨材及び細骨材が除去されている。本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1で製造される粉体3は、粒子径0.5mm以上の骨材(石粉など)を含んでいない。粉体3は、二酸化炭素を固定化した二酸化炭素固定化粉体であって、かつ、二酸化炭素吸着機能を有する二酸化炭素吸着材である。
【0017】
コンクリートスラッジ2は、セメント由来のカルシウム(Ca)成分を豊富に含む、高アルカリ性の材料である。当該カルシウム成分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。
【0018】
また、本実施の形態で用いられるコンクリートスラッジ2は、水セメント比(W/C)が略1である。例えば、コンクリートスラッジ2は、成分比が、セメント分49.9%、水49.9%、及び、微細砂分0.2%のものである。セメント分には、約30%程度のカルシウム成分が含有されている。
【0019】
なお、コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品工場で発生するコンクリートスラッジ、あるいは、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)について、粗骨材及び細骨材を分離したものを用いてもよい。すなわち、コンクリートスラッジ2は、いずれもフレッシュコンクリートの余剰分である。
【0020】
二酸化炭素固定化装置1は、加水手段5を備える。加水手段5は、コンクリートスラッジ2に対して撹拌しつつ水WI1を加えることで、第一中間体6を得るものである。一例として、加水手段5は、溶出槽8と、溶出槽8に設置された撹拌手段9と、を有する。撹拌手段9としては、例えば回転翼が用いられる。コンクリートスラッジ2の重量に対して、加水量が小さいほど二酸化炭素の吸着量の効率は高く、加水量が多いほど水和反応による強度発現が抑制される。本実施の形態において、加水手段5では、コンクリートスラッジ2の重量の4倍以上10倍以下の水WI1が加えられる。加水量がコンクリートスラッジ2の重量の4倍未満の場合、コンクリートスラッジ2の粘着性が高くなり、10倍より大きい場合、カルシウムイオン濃度が下がり、それぞれ二酸化炭素の吸着効率が低下する。そのため、例えば加水量がコンクリートスラッジ2の重量の10倍の場合には、第一中間体6の成分比は、セメント5%、水95%、微細砂分0%となる。
【0021】
また、二酸化炭素固定装置1は、第一中間体6を固液分離する分離手段11を備える。分離手段11は、フィルタプレスなどの手段である。分離手段11により加水手段5の溶出槽8から排出部12を介して排出された第一中間体6は、液体分13と、固形分14と、に分離される。
【0022】
液体分13は、コンクリートスラッジ2に含まれるカルシウム成分の一部が溶出した高アルカリ性の液体である。コンクリートスラッジ2を加水手段5にて加水撹拌したことにより、コンクリートスラッジ2中のセメント分に含まれるカルシウム成分が水に溶出し、そのカルシウム成分が溶出した水が、分離手段11により分離された液体分13である。液体分13に溶出するカルシウム成分は、飽和濃度で決まっており、例えば水酸化カルシウムの場合、カルシウム飽和濃度は約0.1%であって、液体分13には、コンクリートスラッジ2中のセメント分に含まれるカルシウム成分のうち、飽和濃度によって予め決まっている量のカルシウム成分が溶出している。この液体分13には、図示しないが、二酸化炭素を含むガス、例えばボイラや発電所などのガス供給源からの排ガスをカルシウム成分に反応させることで、軽質炭酸カルシウムを生成させ、二酸化炭素を固定化することが可能である。
【0023】
固形分14は、スラッジケーキなどとも呼ばれ、水酸化カルシウムを主成分とする高アルカリ性のものである。分離手段11により分離された固形分14は、含水率が40%以上60%以下、好ましくは50%となっている。例えば、固形分14の含水率が40%未満の場合、加水撹拌手段15において固形分14からのカルシウム溶出速度が低くなる。また、固形分14の含水率が60%より大きい場合、固形分14はスラリー状であり、工業的に取り扱いにくい。この固形分14には、加水手段5における加水撹拌処理によって水に溶出できなかったカルシウム成分が多量に含まれている。
【0024】
また、二酸化炭素固定化装置1は、加水撹拌手段15を備える。加水撹拌手段15は、分離手段11に接続されていてもよいし、加水手段5及び分離手段11を有する工場などの設備から車両などの運搬手段により運搬された固形分14が投入されるように構成されていてもよい。
【0025】
加水撹拌手段15は、固形分14に対して撹拌しつつ水WI2を加えることで、第二中間体17を得るものである。一例として、加水撹拌手段15は、溶出槽20と、溶出槽20に設置された撹拌手段21と、を有する。撹拌手段21としては、例えば回転翼が用いられる。固形分14の重量に対して、加水量が小さいほど二酸化炭素の吸着量の効率は高く、加水量が多いほど水和反応による強度発現が抑制される。本実施の形態において、加水撹拌手段15では、固形分14の重量の4倍以上10倍以下の水WI2が加えられる。加水量が固形分14の重量の4倍未満の場合、固形分14の粘着性が高くなり、10倍より大きい場合、カルシウムイオン濃度が下がり、それぞれ二酸化炭素の吸着効率が低下する。
【0026】
さらに、二酸化炭素固定化装置1は、反応手段22を備える。反応手段22は、加水撹拌手段15と直接接続され、加水撹拌手段15から直接得た第二中間体17に対し二酸化炭素を含むガスGを供給することで、第三中間体25を得るものである。一例として、反応手段22は、反応槽27と、反応槽27に設置されたガス供給手段28と、を有する。
【0027】
反応槽27は、上下方向に長手状に形成されている。反応槽27には、加水撹拌手段15の溶出槽20から排出部30を介して第二中間体17が上部から投入される。本実施の形態において、反応槽27は、外面が円筒状の反応槽本体部32と、外面が円錐状の縮小部33と、を上下に一体的に有し、軸方向を上下方向に沿わせて配置されている。反応槽本体部32は、一定または略一定の径寸法を有する円筒状である。縮小部33は、反応槽本体部32の下部に同軸状に連なり、下方に向かって縮径している。
【0028】
ガス供給手段28は、ガスG中の二酸化炭素を第二中間体17に含まれる固形分14のカルシウム成分に反応させることで、炭酸カルシウムを生成させ、二酸化炭素を固定化させるものである。ガス供給手段28は、ガス供給源と接続された配管、バルブ、及び、ノズルなどを有する。ガス供給手段28は、反応槽27の下部に接続され、ガスGを反応槽27の下部から所定時間に亘り噴出させる。ガス供給手段28によるガスGの噴出は、連続的でもよいし断続的でもよい。
【0029】
ガス供給手段28により供給されるガスGは、ボイラや発電所などのガス供給源からの排ガスが好適に利用される。このガスGは、一例として、二酸化炭素を5%以上25%以下含む。
【0030】
さらに、二酸化炭素固定化装置1は、脱水手段35を備える。脱水手段35は、反応手段22から第三中間体25を直接得て、この第三中間体25を脱水して粉体3を製造するものである。本実施の形態において、脱水手段35は、第三中間体25をこの第三中間体25の自重により水切り(自然脱水)する。すなわち、本実施の形態の脱水手段35は、動力や熱源などを備えない、非駆動のものである。脱水手段35としては、例えばフレキシブルコンテナバッグなどが好適に用いられる。すなわち、脱水手段35は、化学繊維などからなる不織布により袋状に形成され、粉体3を内部に保持しつつ、粉体3よりも粒子が小さい水WOなどを底部や周辺部から排出するものである。脱水手段35には、反応手段22の反応槽27の下部の導出部38から反応槽27の外部に導出された第三中間体25が供給される。なお、脱水手段35は、製造される粉体3の用途によっては、強制乾燥させてもよい。
【0031】
次に、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1による二酸化炭素固定化方法(粉体3の製造方法)について説明する。
【0032】
まず、コンクリートスラッジ2を加水手段5の溶出槽8に導入する。所定量のコンクリートスラッジ2が溶出槽8に導入されると、加水手段5では、溶出槽8内のコンクリートスラッジ2に対し、所定量の水WI1を加えつつ撹拌手段9によって撹拌して第一中間体6を得る。
【0033】
続いて、この第一中間体6を、分離手段11により液体分13と固形分14とに固液分離する。本実施の形態では、固形分14を加水撹拌手段15へと運搬し、溶出槽20に導入する。なお、液体分13については、別途、二酸化炭素を含むガスをカルシウム成分に反応させることで、二酸化炭素を固定化させ、軽質炭酸カルシウムを生成させることが可能である。
【0034】
所定量の固形分14が溶出槽20に導入されると、加水撹拌手段15では、溶出槽20内の固形分14に対し、所定量の水WI2を加えつつ撹拌手段21によって撹拌して第二中間体17を得る。
【0035】
さらに、この第二中間体17を、排出部30を介して反応手段22の反応槽27へと上部から導入する。反応手段22では、反応槽27内の第二中間体17に二酸化炭素を含むガスGをガス供給手段15により加圧供給することで、第二中間体17に含まれる二酸化炭素吸着機能(DAC(Direct Air Capture)機能)によって、第二中間体17に含まれるカルシウム成分が二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムが生成されて、二酸化炭素が第二中間体17に固定化された第三中間体25が生成されていく。
【0036】
そして、二酸化炭素固定化装置1の所定時間の稼働により、コンクリートスラッジ2に二酸化炭素が吸着された第三中間体25が反応槽27内に製造される。この後、第三中間体25は、反応手段22の反応槽27の導出部38を介して脱水手段35へと導入され、脱水手段35により水WOが脱水されて粉体3が製造される。脱水手段35を経て製造された粉体3は、二酸化炭素吸着率が25%程度であり、含水率が4%以上40%以下の幅を有し、粉体3の用途に応じて設定できる。
【0037】
製造された粉体3は、カルシウム飽和溶液が二酸化炭素に反応して生成される軽質炭酸カルシウムと、表面が炭酸カルシウムで被覆されたセメント成分であるセメント分炭酸塩化粉体と、炭酸化されなかったセメント固形分であるセメント分炭酸塩化未反応粉体と、の3種を含む、複合的な二酸化炭素固定化粉体である。なお、粉体3には、微細砂分が極少量含まれるが、成分比としては実質的に無視できる。
【0038】
なお、製造された粉体3は、製造過程で二酸化炭素が固定化されているだけでなく、その内部においてさらなる二酸化炭素吸着機能を備え、時間経過とともに二酸化炭素を吸着する機能、つまり緩速的な二酸化炭素吸着機能を発揮する。
【0039】
例えば、本実施の形態により製造される粉体3は、コンクリート混練時の混和材、アスファルト舗装フィラー材、土壌改良材の補助材、及び、トンネルなどの裏込め注入材の補助材、などとして適用でき、使い勝手が良好であるとともに、これらの適用により二酸化炭素を固定化した固定物の利活用が可能となる。
【0040】
したがって、従来産業廃棄物として廃棄されてきて年間300万トン以上の排出があるコンクリートスラッジ2を有効利用して粉体を製造できるだけでなく、二酸化炭素に起因する地球温暖化対策にも有効であるとともに、二酸化炭素を回収し有効利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)に好適に用いることができる。
【0041】
このように、一実施の形態によれば、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジ2に対し撹拌しつつ加水した第一中間体6を固液分離した固形分14に対し撹拌しつつ加水した第二中間体17を得て、その第二中間体17に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体25を得た後、第三中間体25を脱水して粉体3を製造することで、第一中間体6を固液分離した固形分14に多量に残留したカルシウム成分をさらに利用して、二酸化炭素を効率よく固定化できる。したがって、固形分14をそのまま乾燥などさせて脱リン材やセメント混和材などとして利用する場合と比較して、固定化できる二酸化炭素量を大幅に増やすことが可能となるとともに、二酸化炭素を固定化した粉体3を生産でき、より効率的なフローとなる。
【0042】
加水撹拌時に、固形分14の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加えることで、適切な水分量で固形分14を撹拌して反応手段22に送る第二中間体17を製造できる。
【0043】
また、脱水手段35は、第三中間体25をその自重により水切りすることで、動力などを用いる必要がなく、二酸化炭素の固定化に当たり、電力消費による二酸化炭素排出量の増加を抑制できる。
【0044】
固形分14の含水率が40%以上であるため、加水撹拌手段15での加水撹拌時のカルシウム成分の溶出速度を確保できるとともに、固形分14の含水率が60%以下であるため、加水撹拌手段15への運搬などの際に、固形分14を取り扱いやすい。
【0045】
なお、上記の一実施の形態において、第二中間体17をさらに固液分離し、その液体分に対して二酸化炭素を含むガスを反応させて軽質炭酸カルシウムを生成し、その固形分を再度加水撹拌して第二中間体17を生成してもよい。つまり、水に可溶なカルシウム量は上限があるため、固形分にカルシウム成分が残留している場合には、第二中間体17の生成とその固液分離、液体分への二酸化炭素の反応、及び、固形分への加水撹拌による第二中間体17の生成、を任意回数繰り返すことで、コンクリートスラッジ2に含まれるカルシウム成分を有効利用して二酸化炭素の固定量をより増加させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 二酸化炭素固定化装置
2 コンクリートスラッジ
3 粉体
6 第一中間体
14 固形分
15 加水撹拌手段
17 第二中間体
22 反応手段
25 第三中間体
35 脱水手段
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
請求項1記載の二酸化炭素固定化装置は、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離したスラッジケーキである固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌手段と、前記第二中間体に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応手段と、前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水手段と、を備えるものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1記載の二酸化炭素固定化装置において、前記加水撹拌手段は、前記固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加えるものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項3記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置において、前記固形分の含水率は、40%以上60%以下であるものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項4記載の二酸化炭素固定化方法は、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離したスラッジケーキである固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌工程と、前記第二中間体に対して二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応工程と、前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水工程と、を備えるものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項5記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4記載の二酸化炭素固定化方法において、前記加水撹拌工程では、前記固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加えるものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項6記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法において、前記固形分の含水率は、40%以上60%以下であるものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離したスラッジケーキである固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌手段と、
前記第二中間体に対し二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応手段と、
前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水手段と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
前記加水撹拌手段は、前記固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項3】
前記固形分の含水率は、40%以上60%以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項4】
粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジに対し撹拌しつつ加水した第一中間体を固液分離したスラッジケーキである固形分に対し撹拌しつつ加水した第二中間体を得る加水撹拌工程と、
前記第二中間体に対して二酸化炭素を反応させて第三中間体を得る反応工程と、
前記第三中間体を脱水して粉体を製造する脱水工程と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化方法。
【請求項5】
前記加水撹拌工程では、前記固形分の重量に対し4倍以上10倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項4記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項6】
前記固形分の含水率は、40%以上60%以下である
ことを特徴とする請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法。