(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067189
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20240510BHJP
B60P 3/16 20060101ALI20240510BHJP
C01F 11/18 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B01D53/92 240
B01D53/92 ZAB
B60P3/16 Z
C01F11/18 B
B01D53/92 340
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177058
(22)【出願日】2022-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
(72)【発明者】
【氏名】八木 利之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
【テーマコード(参考)】
4D002
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA12
4D002DA66
4D002FA02
4G076AA16
4G076AB06
4G076AB09
4G076BA34
4G076CA02
4G076CA26
4G076DA29
(57)【要約】
【課題】熱機関を動力とする移動体の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で固定化できる二酸化炭素固定化装置及びこれを備えた移動体を提供する。
【解決手段】二酸化炭素固定化装置10は、熱機関を動力とする移動体に用いられる二酸化炭素固定化装置である。二酸化炭素固定化装置10は、移動体1の本体3に配置され、セメントスラッジ水を貯留するタンク12と、熱機関の排気の少なくとも一部をタンク12に導く配管14と、配管14により導いた排気をタンク12内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させることで炭酸カルシウムを生じさせるための反応手段16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関を動力とする移動体に用いられる二酸化炭素固定化装置であって、
前記移動体の本体に配置され、セメントスラッジ水を貯留するタンクと、
前記熱機関の排気の少なくとも一部を前記タンクに導く配管と、
前記配管により導いた排気を前記タンク内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させることで炭酸カルシウムを生じさせるための反応手段と、
を備えたことを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
配管は、タンクの下部に排気を導くように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項3】
熱機関を動力とする移動体であって、
移動可能な本体と、
請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置と、
を備えたことを特徴とする移動体。
【請求項4】
本体に設けられ生コンクリートを収容するためのドラムを備えたトラックミキサである
ことを特徴とする請求項3記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを生じさせることで二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置及びこれを備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジ(セメントスラリー)のカルシウム分に二酸化炭素を反応させて、炭酸カルシウムを得る二酸化炭素固定化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の二酸化炭素固定化装置の場合、装置規模が大きく、カルシウム分に反応させる二酸化炭素は、主としてボイラや発電所などから供給される排ガスに含まれるものである。
【0005】
他方、内燃機関などの熱機関を動力とする車両などの移動体の排気に含まれる二酸化炭素を固定化したいというニーズがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱機関を動力とする移動体の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で固定化できる二酸化炭素固定化装置及びこれを備えた移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の二酸化炭素固定化装置は、熱機関を動力とする移動体に用いられる二酸化炭素固定化装置であって、前記移動体の本体に配置され、セメントスラッジ水を貯留するタンクと、前記熱機関の排気の少なくとも一部を前記タンクに導く配管と、前記配管により導いた排気を前記タンク内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させることで炭酸カルシウムを生じさせるための反応手段と、を備えたものである。
【0008】
請求項2記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1記載の二酸化炭素固定化装置において、配管は、タンクの下部に排気を導くように構成されているものである。
【0009】
請求項3記載の移動体は、熱機関を動力とする移動体であって、移動可能な本体と、請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置と、を備えたものである。
【0010】
請求項4記載の移動体は、請求項3記載の移動体において、本体に設けられ生コンクリートを収容するためのドラムを備えたトラックミキサであるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱機関を動力とする移動体の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で固定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態の二酸化炭素固定化装置及びこれを備えた移動体を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、
図1を参照して説明する。
【0014】
図1において、1は移動体を示す。移動体1は、熱機関を動力とするもので、本実施の形態では、特にガソリンや軽油などの燃料を燃焼させる内燃機関(エンジン)を動力とするものを例に挙げて示す。
【0015】
図示される例では、移動体1は、走行体としての車両である。例えば、移動体1としては、トラックミキサ(アジテータ車またはミキサー車)が好適に用いられる。すなわち、本実施の形態の移動体1は、複数の車輪2を下部に備えて移動可能または走行可能な本体3に、生コンクリートを収容するためのドラム4を回転可能に備える。
【0016】
本体3は、乗員が搭乗する運転室およびエンジン(例えばディーゼルエンジン)などを有して自走する。本体3の後部の荷台5にドラム4が架装されている。荷台5は、本体3と一体のシャシーにより構成されていてもよいし、本体3に連結されて牽引されるものでもよい。
【0017】
ドラム4は、例えば太鼓型に形成された中空体である。ドラム4は、その回転軸(中心軸)が後方に向かって上方に傾斜した状態で本体3に配置されている。ドラム4は、エンジンから動力を得る油圧装置などにより回転され、レバーやリモコンなどの操作手段の操作に応じて回転方向及び回転速度などが制御される。ドラム4の内部には、ドラム4の回転に伴い生コンクリートを撹拌する撹拌翼、及び、撹拌された生コンクリートをドラム4の逆回転に伴いドラム4から排出する排出翼が設けられている。
【0018】
ドラム4の後部の上部には、生コンクリートあるいはその原材料などをドラム4内に投入するホッパ7が設けられている。また、ホッパ7の下方には、ドラム4から排出された生コンクリートを目的位置へと導くシュート8が可動的に設けられている。
【0019】
そして、移動体1には、熱機関からの排気に含まれる二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置10が搭載されている。
【0020】
二酸化炭素固定化装置10は、タンク12を備える。タンク12には、セメントスラッジ水が貯留される。ここで、本実施の形態のセメントスラッジ水は、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)処理時に発生するもの、あるいは、ドラム4などの洗浄により発生するものである。このセメントスラッジ水は、セメントスラッジに含まれるカルシウム分が飽和濃度となるまで溶出した、カルシウム飽和な水酸化カルシウム水溶液、つまりカルシウム飽和水である。セメントスラッジは、セメント由来のカルシウム(Ca)分を豊富に含む、高アルカリ性の材料であり、当該カルシウム分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。
【0021】
タンク12は、本体3に設けられている。図示される例では、タンク12は、荷台5上においてドラム4の前方、かつ、運転室またはエンジンの後方に配置されている。本実施の形態のように、移動体1がトラックミキサである場合、タンク12としては、荷下ろし後にドラム4、ホッパ7、及び、シュート8などを洗浄するための洗浄水の貯留用として予め備えられている水タンクを利用することが好ましい。例えば、タンク12は、100L~200L程度の容量を有する。
【0022】
また、二酸化炭素固定化装置10は、熱機関の排気をタンク12に導く配管14を備える。配管14は、例えば熱機関からの排気を排出する排気システムから分岐されている。例えば、排気システムは、エンジンから出た排気を浄化及び静音化するとともに、排気温度を低下させるものである。本実施の形態では、配管14は、排気に抵抗を与えて静音化するためのマフラから分岐されている。配管14は、タンク12に対して下部から接続されている。すなわち、タンク12の内部のセメントスラッジ水に対して、排気が下部から供給される。
【0023】
さらに、二酸化炭素固定化装置10は、反応手段16を備える。反応手段16は、配管14により導いた排気をタンク12内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させるためのものである。反応手段16は、配管14からタンク12に吹き込まれるに排ガスをタンク12内でバブリングさせる、エアレータ機能を有するものである。例えば、反応手段16は、配管14に接続されてタンク12内に配置される散気管などが好適に用いられる。
【0024】
次に、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置10による二酸化炭素の固定化方法(炭酸カルシウムの製造方法)について説明する。
【0025】
移動体1は、タンク12内に、セメントスラッジ水を貯留する。
【0026】
移動体1を移動(走行)させたり、生コンクリートを撹拌したり、生コンクリートを荷下ろししたりしている間、つまり移動体1を運転している間(移動体1を稼働させている間)、熱機関、例えばエンジンから燃料の燃焼により二酸化炭素を含む排気が生じる。その排気が、エンジンから排気システムを介して排出されるとき、その排気の少なくとも一部が、配管14を介してタンク12に分岐される。
【0027】
そして、二酸化炭素固定化装置10では、配管14によってタンク12に導かれた排気を、反応手段16によって、タンク12内のセメントスラッジ水に対し下部から所定時間バブリングして以下の化学反応を生じさせる。反応手段16は、配管14によって導かれた排気とタンク12内のセメントスラッジ水とをミキシングしてタンク12内に送り込む。例えば、バブリングの時間は60分程度とする。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
この反応過程で、炭酸カルシウムが形成され、タンク12内に沈澱する。つまり、タンク12は、反応槽及び沈殿槽の機能を兼ねる。この炭酸カルシウムには、重量当たり44%の二酸化炭素が固定可能である。このときの炭酸カルシウムの粒度分布は、7μm~30μmであり、その純度は85%である。
【0028】
形成された炭酸カルシウムは、タンク12から排出し、適宜乾燥させることにより、粉体として取り出される。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、セメントスラッジ水を移動体1の本体3に設けられたタンク12に貯留し、そのタンク12中のセメントスラッジ水に対して移動体1の排気を配管14によって導入し、反応手段16によって排気中の二酸化炭素をセメントスラッジ水のカルシウム成分に反応させることで炭酸カルシウムを製造することにより、熱機関を動力とする移動体1の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で容易に固定化できる。
【0030】
また、配管14をタンク12に対して下部から接続することにより、タンク12内に導入された排気によりタンク12内のセメントスラッジ水を下方から上方へと持ち上げて対流を生じさせることができるので、そのカルシウム分に対して二酸化炭素を効率よく反応させることができる。
【0031】
この二酸化炭素固定化装置10により、熱機関からの排気に含まれる二酸化炭素を削減した移動体1を実現できる。
【0032】
しかも、移動体1が、ドラム4を備えるトラックミキサの場合、ドラム4などの洗浄用の洗浄水を貯留するために予め備えられている水タンクを、二酸化炭素固定化装置10のタンク12として有効利用できるので、一般的なトラックミキサに対して基本的に配管14及び反応手段16を付加するだけで、二酸化炭素固定化装置10を容易に構成できる。
【0033】
また、移動体1の排気に黒煙等の未燃カーボンが含まれている場合であっても、排気の一部をタンク12に導くことで、その未燃カーボンをセメントスラッジ水中に取り込むことができ、未燃カーボンが大気中に放出されることを抑制できる。
【0034】
さらに、移動体1の排気に仮に硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が含まれる場合であっても、排気の一部をタンク12に導いて反応手段16によってバブリングすることにより、これら硫黄酸化物や窒素酸化物がセメントスラッジ水に溶け込むことで除去されるため、これら酸化物を除去するための大掛かりな装置を別途用いることなく、移動体1から大気中に排出される排気に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物の総量を低減できる。
【0035】
また、例えば生コンクリートの荷下ろし後、洗浄水によってドラム4などを洗浄したときに生じるセメントスラッジ水の少なくとも一部をタンク12に溜めることにより、このセメントスラッジ水を二酸化炭素固定化装置10による二酸化炭素の固定化に利用可能となるとともに、生コンクリートの荷下ろし後に工場などに帰還する時間、つまりドラム4を使用しない時間を有効利用して、二酸化炭素を固定化でき、高純度の炭酸カルシウムを製造できる。
【0036】
そして、本実施の形態により得られた炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムであって、二酸化炭素を重量当たり44%以上固定した微粉体であり、コンクリートの混和材、清掃工場などの排煙脱硫剤、アスファルト舗装材のフィラー、トンネルなどの裏込注入材の副剤などとして好適に利用可能である。また、二酸化炭素を固定した固体である炭酸カルシウムによって、二酸化炭素を安定的に取り扱うことができる。
【0037】
なお、一実施の形態において、移動体1は、トラックミキサに限らず、その他の任意の車両などとしてよい。
【符号の説明】
【0038】
1 移動体
3 本体
4 ドラム
10 二酸化炭素固定化装置
12 タンク
14 配管
16 反応手段
【手続補正書】
【提出日】2023-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを生じさせることで二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置を備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジ(セメントスラリー)のカルシウム分に二酸化炭素を反応させて、炭酸カルシウムを得る二酸化炭素固定化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の二酸化炭素固定化装置の場合、装置規模が大きく、カルシウム分に反応させる二酸化炭素は、主としてボイラや発電所などから供給される排ガスに含まれるものである。
【0005】
他方、内燃機関などの熱機関を動力とする車両などの移動体の排気に含まれる二酸化炭素を固定化したいというニーズがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱機関を動力とする移動体の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で固定化できる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の移動体は、熱機関を動力とするトラックミキサである移動体であって、移動可能な本体と、この本体に設けられ、生コンクリートを収容するためのドラムと、二酸化炭素固定化装置と、を備え、前記二酸化炭素固定化装置は、前記本体にて前記ドラムの前方に配置され、セメントスラッジ水を貯留するタンクと、前記熱機関の排気の少なくとも一部を前記タンクに導く配管と、前記配管により導いた排気を前記タンク内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させることで炭酸カルシウムを生じさせるための反応手段と、を備えたものである。
【0008】
請求項2記載の移動体は、請求項1記載の移動体において、配管は、タンクの下部に排気を導くように構成されているものである。
【0009】
請求項3記載の移動体は、請求項1または2記載の移動体において、タンクに貯留されるセメントスラッジ水が、生コンプラントの残コンまたは戻りコンの処理時に発生するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱機関を動力とする移動体の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で固定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態の二酸化炭素固定化装置及びこれを備えた移動体を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、
図1を参照して説明する。
【0013】
図1において、1は移動体を示す。移動体1は、熱機関を動力とするもので、本実施の形態では、特にガソリンや軽油などの燃料を燃焼させる内燃機関(エンジン)を動力とするものを例に挙げて示す。
【0014】
図示される例では、移動体1は、走行体としての車両である。例えば、移動体1としては、トラックミキサ(アジテータ車またはミキサー車)が好適に用いられる。すなわち、本実施の形態の移動体1は、複数の車輪2を下部に備えて移動可能または走行可能な本体3に、生コンクリートを収容するためのドラム4を回転可能に備える。
【0015】
本体3は、乗員が搭乗する運転室およびエンジン(例えばディーゼルエンジン)などを有して自走する。本体3の後部の荷台5にドラム4が架装されている。荷台5は、本体3と一体のシャシーにより構成されていてもよいし、本体3に連結されて牽引されるものでもよい。
【0016】
ドラム4は、例えば太鼓型に形成された中空体である。ドラム4は、その回転軸(中心軸)が後方に向かって上方に傾斜した状態で本体3に配置されている。ドラム4は、エンジンから動力を得る油圧装置などにより回転され、レバーやリモコンなどの操作手段の操作に応じて回転方向及び回転速度などが制御される。ドラム4の内部には、ドラム4の回転に伴い生コンクリートを撹拌する撹拌翼、及び、撹拌された生コンクリートをドラム4の逆回転に伴いドラム4から排出する排出翼が設けられている。
【0017】
ドラム4の後部の上部には、生コンクリートあるいはその原材料などをドラム4内に投入するホッパ7が設けられている。また、ホッパ7の下方には、ドラム4から排出された生コンクリートを目的位置へと導くシュート8が可動的に設けられている。
【0018】
そして、移動体1には、熱機関からの排気に含まれる二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置10が搭載されている。
【0019】
二酸化炭素固定化装置10は、タンク12を備える。タンク12には、セメントスラッジ水が貯留される。ここで、本実施の形態のセメントスラッジ水は、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)処理時に発生するもの、あるいは、ドラム4などの洗浄により発生するものである。このセメントスラッジ水は、セメントスラッジに含まれるカルシウム分が飽和濃度となるまで溶出した、カルシウム飽和な水酸化カルシウム水溶液、つまりカルシウム飽和水である。セメントスラッジは、セメント由来のカルシウム(Ca)分を豊富に含む、高アルカリ性の材料であり、当該カルシウム分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。
【0020】
タンク12は、本体3に設けられている。図示される例では、タンク12は、荷台5上においてドラム4の前方、かつ、運転室またはエンジンの後方に配置されている。本実施の形態のように、移動体1がトラックミキサである場合、タンク12としては、荷下ろし後にドラム4、ホッパ7、及び、シュート8などを洗浄するための洗浄水の貯留用として予め備えられている水タンクを利用することが好ましい。例えば、タンク12は、100L~200L程度の容量を有する。
【0021】
また、二酸化炭素固定化装置10は、熱機関の排気をタンク12に導く配管14を備える。配管14は、例えば熱機関からの排気を排出する排気システムから分岐されている。例えば、排気システムは、エンジンから出た排気を浄化及び静音化するとともに、排気温度を低下させるものである。本実施の形態では、配管14は、排気に抵抗を与えて静音化するためのマフラから分岐されている。配管14は、タンク12に対して下部から接続されている。すなわち、タンク12の内部のセメントスラッジ水に対して、排気が下部から供給される。
【0022】
さらに、二酸化炭素固定化装置10は、反応手段16を備える。反応手段16は、配管14により導いた排気をタンク12内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させるためのものである。反応手段16は、配管14からタンク12に吹き込まれるに排ガスをタンク12内でバブリングさせる、エアレータ機能を有するものである。例えば、反応手段16は、配管14に接続されてタンク12内に配置される散気管などが好適に用いられる。
【0023】
次に、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置10による二酸化炭素の固定化方法(炭酸カルシウムの製造方法)について説明する。
【0024】
移動体1は、タンク12内に、セメントスラッジ水を貯留する。
【0025】
移動体1を移動(走行)させたり、生コンクリートを撹拌したり、生コンクリートを荷下ろししたりしている間、つまり移動体1を運転している間(移動体1を稼働させている間)、熱機関、例えばエンジンから燃料の燃焼により二酸化炭素を含む排気が生じる。その排気が、エンジンから排気システムを介して排出されるとき、その排気の少なくとも一部が、配管14を介してタンク12に分岐される。
【0026】
そして、二酸化炭素固定化装置10では、配管14によってタンク12に導かれた排気を、反応手段16によって、タンク12内のセメントスラッジ水に対し下部から所定時間バブリングして以下の化学反応を生じさせる。反応手段16は、配管14によって導かれた排気とタンク12内のセメントスラッジ水とをミキシングしてタンク12内に送り込む。例えば、バブリングの時間は60分程度とする。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
この反応過程で、炭酸カルシウムが形成され、タンク12内に沈澱する。つまり、タンク12は、反応槽及び沈殿槽の機能を兼ねる。この炭酸カルシウムには、重量当たり44%の二酸化炭素が固定可能である。このときの炭酸カルシウムの粒度分布は、7μm~30μmであり、その純度は85%である。
【0027】
形成された炭酸カルシウムは、タンク12から排出し、適宜乾燥させることにより、粉体として取り出される。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、セメントスラッジ水を移動体1の本体3に設けられたタンク12に貯留し、そのタンク12中のセメントスラッジ水に対して移動体1の排気を配管14によって導入し、反応手段16によって排気中の二酸化炭素をセメントスラッジ水のカルシウム成分に反応させることで炭酸カルシウムを製造することにより、熱機関を動力とする移動体1の排気に含まれる二酸化炭素を簡素な構成で容易に固定化できる。
【0029】
また、配管14をタンク12に対して下部から接続することにより、タンク12内に導入された排気によりタンク12内のセメントスラッジ水を下方から上方へと持ち上げて対流を生じさせることができるので、そのカルシウム分に対して二酸化炭素を効率よく反応させることができる。
【0030】
この二酸化炭素固定化装置10により、熱機関からの排気に含まれる二酸化炭素を削減した移動体1を実現できる。
【0031】
しかも、移動体1が、ドラム4を備えるトラックミキサの場合、ドラム4などの洗浄用の洗浄水を貯留するために予め備えられている水タンクを、二酸化炭素固定化装置10のタンク12として有効利用できるので、一般的なトラックミキサに対して基本的に配管14及び反応手段16を付加するだけで、二酸化炭素固定化装置10を容易に構成できる。
【0032】
また、移動体1の排気に黒煙等の未燃カーボンが含まれている場合であっても、排気の一部をタンク12に導くことで、その未燃カーボンをセメントスラッジ水中に取り込むことができ、未燃カーボンが大気中に放出されることを抑制できる。
【0033】
さらに、移動体1の排気に仮に硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が含まれる場合であっても、排気の一部をタンク12に導いて反応手段16によってバブリングすることにより、これら硫黄酸化物や窒素酸化物がセメントスラッジ水に溶け込むことで除去されるため、これら酸化物を除去するための大掛かりな装置を別途用いることなく、移動体1から大気中に排出される排気に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物の総量を低減できる。
【0034】
また、例えば生コンクリートの荷下ろし後、洗浄水によってドラム4などを洗浄したときに生じるセメントスラッジ水の少なくとも一部をタンク12に溜めることにより、このセメントスラッジ水を二酸化炭素固定化装置10による二酸化炭素の固定化に利用可能となるとともに、生コンクリートの荷下ろし後に工場などに帰還する時間、つまりドラム4を使用しない時間を有効利用して、二酸化炭素を固定化でき、高純度の炭酸カルシウムを製造できる。
【0035】
そして、本実施の形態により得られた炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムであって、二酸化炭素を重量当たり44%以上固定した微粉体であり、コンクリートの混和材、清掃工場などの排煙脱硫剤、アスファルト舗装材のフィラー、トンネルなどの裏込注入材の副剤などとして好適に利用可能である。また、二酸化炭素を固定した固体である炭酸カルシウムによって、二酸化炭素を安定的に取り扱うことができる。
【0036】
なお、一実施の形態において、移動体1は、トラックミキサに限らず、その他の任意の車両などとしてよい。
【符号の説明】
【0037】
1 移動体
3 本体
4 ドラム
10 二酸化炭素固定化装置
12 タンク
14 配管
16 反応手段
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関を動力とするトラックミキサである移動体であって、
移動可能な本体と、
この本体に設けられ、生コンクリートを収容するためのドラムと、
二酸化炭素固定化装置と、を備え、
前記二酸化炭素固定化装置は、
前記本体にて前記ドラムの前方に配置され、セメントスラッジ水を貯留するタンクと、
前記熱機関の排気の少なくとも一部を前記タンクに導く配管と、
前記配管により導いた排気を前記タンク内のセメントスラッジ水のカルシウム分と反応させることで炭酸カルシウムを生じさせるための反応手段と、を備えた
ことを特徴とする移動体。
【請求項2】
配管は、タンクの下部に排気を導くように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の移動体。
【請求項3】
タンクに貯留されるセメントスラッジ水は、生コンプラントの残コンまたは戻りコンの処理時に発生するものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の移動体。