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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067197
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】成形機の樹脂替え支援方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177075
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 誠
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM10
4F206AR06
4F206AR17
4F206AR20
4F206JA07
4F206JF06
4F206JF46
4F206JL04
4F206JL08
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP17
4F206JP22
4F206JP27
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】 生産能率の向上及び生産コストの削減を図るとともに、安定性及び信頼性の高いパージ樹脂所要量を容易かつ迅速に求める。
【解決手段】 異なる樹脂R…毎にMFRと加熱筒2の設定温度をパラメータとした変換関数式から各樹脂のゼロせん断粘度ηo…を求めて登録するとともに、前樹脂Rf…のゼロせん断粘度ηof…と後樹脂Rs…のゼロせん断粘度ηos…の粘度差ηd…に対応するパージ樹脂所要量Wu…を登録し、樹脂替えを行う際に、前樹脂RfのMFRと後樹脂RsのMFRを成形機コントローラ3に入力することにより、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosを得るとともに、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηdを得、樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求めることにより、少なくとも表示処理を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒から前樹脂を排出した後に後樹脂を供給して樹脂替えを行う際の成形機の樹脂替え支援方法であって、予め、異なる樹脂毎にメルトフローレート(MFR)と加熱筒の設定温度をパラメータとした変換関数式により各樹脂のゼロせん断粘度を推測し、第一データベースとして成形機コントローラに登録するとともに、前記前樹脂のゼロせん断粘度と前記後樹脂のゼロせん断粘度の粘度差に対応するパージ樹脂所要量を、第二データベースとして成形機コントローラに登録し、樹脂替えを行う際に、前記前樹脂のMFRと前記後樹脂のMFRを成形機コントローラに入力することにより、前記第一データベースから前記前樹脂のゼロせん断粘度と前記後樹脂のゼロせん断粘度を得るとともに、前記前樹脂のゼロせん断粘度と前記後樹脂のゼロせん断粘度の粘度差を得、前記第二データベースから樹脂替え時のパージ樹脂所要量を求めることにより、少なくとも表示処理を行うことを特徴とする成形機の樹脂替え支援方法。
【請求項2】
前記後樹脂には、中間材を含むことを特徴とする請求項1記載の成形機の樹脂替え支援方法。
【請求項3】
前記前樹脂のゼロせん断粘度に対して前記後樹脂のゼロせん断粘度が低いときは、パージ剤が必要である旨を表示処理することを特徴とする請求項1又は2記載の成形機の樹脂替え支援方法。
【請求項4】
前記加熱筒の設定温度は、加熱筒を、軸方向へ、前部,中部,後部の三領域に分けたとき、前部以前を高温側領域とし、中部以後を低温側領域に設定するとともに、高温側領域と低温側領域の温度差を0-50〔℃〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の成形機の樹脂替え支援方法。
【請求項5】
前記樹脂には、汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック,コンポジット材料,パージ剤,パージ剤を除く特殊樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の成形機の樹脂替え支援方法。
【請求項6】
加熱筒から前樹脂を排出するとともに後樹脂を供給して樹脂替えを行う成形機の樹脂替え支援装置であって、異なる樹脂毎にMFRと加熱筒の設定温度をパラメータとした変換関数式により推測した各樹脂のゼロせん断粘度を登録した第一データベースと、前記前樹脂のゼロせん断粘度と前記後樹脂のゼロせん断粘度の粘度差に対応するパージ樹脂所要量を登録した第二データベースと、前記前樹脂のMFRと前記後樹脂のMFRを入力するMFR入力機能部と、入力された各MFRに基づいて前記第一データベースから前記前樹脂のゼロせん断粘度と前記後樹脂のゼロせん断粘度の粘度差を得る粘度差演算機能部と、得られた粘度差に基づいて前記第二データベースから樹脂替え時のパージ樹脂所要量を求める所要量演算機能部と、求めたパージ樹脂所要量を少なくとも表示処理する表示処理機能部とを有する成形機コントローラを備えてなることを特徴とする成形機の樹脂替え支援装置。
【請求項7】
前記粘度差演算機能部は、前記前樹脂のゼロせん断粘度に対して前記後樹脂のゼロせん断粘度が低いときは、パージ剤が必要である旨を出力する処理を行うとともに、前記表示処理機能部は、前記パージ剤が必要である旨を表示するパージ剤推奨表示部をディスプレイに設けることを特徴とする請求項6記載の成形機の樹脂替え支援装置。
【請求項8】
前記成形機として射出成形機に適用することを特徴とする請求項6記載の成形機の樹脂替え支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱筒から前樹脂を排出した後に後樹脂を供給して樹脂替えを行う際の成形機の樹脂替え支援方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機では、樹脂の種別や色の異なる成形品を引き続いて生産する場合、前生産に使用した前樹脂から次の生産に使用する後樹脂に切替える必要があるため、前生産終了後、樹脂替え工程により樹脂の入れ替えを行っている。樹脂替え工程では、通常、加熱筒内の残留樹脂(前樹脂)を排出した後、次の生産に使用する後樹脂を供給するため、次の生産開始時には前樹脂の残留分を混入させないことが求められる。
【0003】
従来、このような樹脂替え工程を支援する関連技術としては、既に本出願人が提案した特許文献1に記載される成形機の樹脂替え支援方法(支援装置)が知られている。同文献1に記載される成形機の樹脂替え支援方法は、オペレータが中間材の必要性を的確(正確)に知ることにより、材料コストの削減及び樹脂替え時間の短縮、更には無用な不良品発生の抑制に寄与することを目的としたものであり、具体的には、加熱筒から前樹脂を排出した後に後樹脂を供給して樹脂替えを行うに際し、予め、樹脂の種類毎に、成形機における所定の動作物理量に相関性を有する見掛粘度を求め、求めた見掛粘度をデータベースとして設定するとともに、成形機の樹脂替え時に、成形機コントローラにより、データベースにおける樹脂替え対象となる後樹脂の見掛粘度から前樹脂の見掛粘度を減じて得られる粘度差に係わる粘度差指数を演算処理により求め、求めた粘度差指数の正負判定を行うことにより、少なくとも負の判定時には中間材を要する旨の判定結果を出力するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-222144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の樹脂替えに係わる技術は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、ユーザーの所有する成形機を、一旦、試験機として利用し、樹脂毎に試験を行なうとともに、相対的な粘度となる見掛粘度を求める必要がある。このため、試験を行う際には成形機が使用できなくなるなど、生産に支障を生じる課題が存在した。しかも、具体的な演算処理等は、成形機コントローラに内蔵されているソフトウェアにより実行可能であるとしても、試験作業自体は、樹脂を使用して成形機を稼働させるとともに、ユーザー(オペレータ)自身が樹脂替え工程に準じた試験作業を生産現場で行う必要があるため、試験作業に伴う労力と時間が費やされる課題も存在した。
【0007】
結局、現場における試験作業を伴う従来の手法は、不慣れな初心者等にとっては、必ずしも望ましい方法とはいえず、生産能率(生産効率)の低下や生産コストの上昇を招く要因になるとともに、試験作業のバラツキなどにより支援手法の安定性及び信頼性を十分に確保できない虞れもあった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した成形機の樹脂替え支援方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る成形機の樹脂替え支援方法は、上述した課題を解決するため、加熱筒2から前樹脂Rfを排出した後に後樹脂Rsを供給して樹脂替えを行うに際し、予め、異なる樹脂R…毎にメルトフローレート(MFR)と加熱筒2の設定温度をパラメータとした変換関数式により各樹脂R…のゼロせん断粘度ηo…を推測し、第一データベースDB1として成形機コントローラ3に登録するとともに、前樹脂Rf…のゼロせん断粘度ηof…と後樹脂Rs…のゼロせん断粘度ηos…の粘度差ηd…に対応するパージ樹脂所要量Wu…を、第二データベースDB2として成形機コントローラ3に登録し、樹脂替えを行う際に、前樹脂RfのMFRと後樹脂RsのMFRを成形機コントローラ3に入力し、第一データベースDB1から前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosを得るとともに、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηdを得、第二データベースDB2から樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求めることにより、少なくとも表示処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る成形機の樹脂替え支援装置1は、上述した課題を解決するため、加熱筒2から前樹脂Rfを排出するとともに後樹脂Rsを供給して樹脂替えを行う支援装置を構成するに際して、異なる樹脂R…毎にMFRと加熱筒2の設定温度をパラメータとした変換関数式により推測した各樹脂R…のゼロせん断粘度ηo…を登録した第一データベースDB1と、前樹脂Rf…のゼロせん断粘度ηof…と後樹脂Rs…のゼロせん断粘度ηos…の粘度差ηd…に対応するパージ樹脂所要量Wu…を登録した第二データベースDB2と、前樹脂RfのMFRと後樹脂RsのMFRを入力するMFR入力機能部Fiと、入力された各MFRに基づいて第一データベースDB1から前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηdを得る粘度差演算機能部Fsと、得られた粘度差ηdに基づいて第二データベースDB2から樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求める所要量演算機能部Fwと、求めたパージ樹脂所要量Wuを少なくとも表示処理する表示処理機能部Foとを有する成形機コントローラ3を備えてなることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明は、発明の好適な態様により、後樹脂Rsには、中間材Rmsを含めることができる。また、加熱筒2の設定温度は、加熱筒2を、軸方向へ、前部2f,中部2m,後部2rの三領域に分けたとき、前部2f以前を高温側領域ZAuとし、中部2m以後を低温側領域ZAdに設定するとともに、高温側領域ZAuと低温側領域ZAdの温度差を0-50〔℃〕の範囲に設定することが望ましい。さらに、樹脂R…には、汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック,コンポジット材料,パージ剤,パージ剤を除く特殊樹脂を含ませることができる。他方、支援装置1において、粘度差演算機能部Fsは、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofに対して後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosが低いときは、パージ剤が必要である旨を出力する処理を行うとともに、表示処理機能部Foは、パージ剤が必要である旨を表示するパージ剤推奨表示部4pをディスプレイ4に設けることができる。なお、成形機としては、射出成形機Mに適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る成形機の樹脂替え支援方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 前樹脂RfのMFRと後樹脂RsのMFRを成形機コントローラ3に入力することにより、第一データベースDB1から前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosを得るとともに、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηdを得、第二データベースDB2から樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求めることにより、少なくとも表示処理を行うようにしたため、従来のように、ユーザーの所有する成形機を使用し、実際の樹脂を使用した樹脂替え工程に準じた試験作業を排除することができる。この結果、生産能率(生産効率)の向上及び生産コストの削減を図ることができるとともに、安定性及び信頼性の高い支援手法により、的確なパージ樹脂所要量Wuを得ることができる。これにより、不慣れな初心者等にとって最適な支援方法として構築できるとともに、必要とするパージ樹脂所要量Wuを容易かつ迅速に求めることができる。
【0014】
(2) 好適な態様により、後樹脂Rsに、中間材Rmsを含めれば、中間材Rmsに対しても、必要なパージ樹脂所要量Wuを知ることができるため、中間材Rmsにおいても、後樹脂Rsに対する効果と同様の効果を得ることができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofに対して後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosが低いときは、パージ剤が必要である旨の出力処理を行うようにすれば、パージ剤が必要性であるか否かの実質的な判定が行われるため、オペレータはパージ剤の必要性を迅速に知ることができるとともに、材料コストの削減及び樹脂替え時間の短縮、更には無用な不良品発生の抑制に寄与することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、加熱筒2の温度を設定するに際し、加熱筒2を、軸方向へ、前部2f,中部2m,後部2rの三領域に分けたとき、前部2f以前を高温側領域ZAuとし、中部2m以後を低温側領域ZAdに設定するとともに、高温側領域ZAuと低温側領域ZAdの温度差を0-50〔℃〕の範囲に設定するようにすれば、成形機(射出成形機)Mの動作環境を効率的な動作状態に設定できるため、より効率性の高い的確なパージ樹脂所要量Wuを得ることができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、樹脂として、汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック,コンポジット材料,パージ剤,パージ剤を除く特殊樹脂を含ませれば、広範囲の各種樹脂材料に適用できるため、汎用性の高い手法として構築することができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、支援装置1の粘度差演算機能部Fsにより、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofに対して後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosが低いときに、パージ剤が必要である旨を出力する処理を行うとともに、表示処理機能部Foに、パージ剤が必要である旨を表示するパージ剤推奨表示部4pをディスプレイ4に設ければ、オペレータ(ユーザー)は、パージ剤が必要である旨をディスプレイ4の目視により確実に確認できるため、パージ剤に係わる準備等の対応処理を迅速に行うことができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、成形機として射出成形機に適用すれば、必要性の高い射出成形機に利用できるため、最も望ましいパフォーマンスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係る樹脂替え支援方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
図2】同樹脂替え支援方法の実施に用いる支援装置のブロック系統図を含む射出成形機の全体構成図、
図3】同樹脂替え支援方法の実施に用いる支援装置に備えるディスプレイに表示される一部を省略した設定画面の表示画面図、
図4】同ディスプレイに表示される一部を省略した条件表表示画面図、
図5】同試験における設定温度を説明するための加熱筒の概要図、
図6】同樹脂替え支援方法におけるゼロせん断粘度を求める変換関数式の係数を説明するためのせん断速度対せん断粘度の特性図、
図7】同樹脂替え支援方法の有効性を検証する試験のゼロせん断粘度とパージ樹脂所要量の結果を示すデータ表、
図8】同試験のゼロせん断粘度とパージ樹脂所要量の結果を示すグラフ、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る樹脂替え支援方法を実施できる射出成形機M(成形機)の構成について、図2図4を参照して説明する。
【0023】
図2中、Mは射出成形機、特に、型締装置を省略した射出装置Miを示す。射出装置Miにおいて、2は加熱筒であり、この加熱筒2の前端部にはヘッド部2hを介してノズル2nを取付固定するとともに、加熱筒2の後端上部にはホッパー11を備える。ノズル2nは加熱筒2の内部における溶融した樹脂を金型(型締装置)に対して射出する機能を有するとともに、ホッパー11は、樹脂(成形材料)R…、即ち、後述する前樹脂Rf,中間材Rmsを含む後樹脂Rsを加熱筒2の内部に供給する機能を有する。
【0024】
このように、本実施形態に係る樹脂替え支援方法を、成形機として射出成形機に適用すれば、必要性の高い射出成形機に利用できるため、最も望ましいパフォーマンスを得ることができる。また、後樹脂Rsには、中間材Rmsを含めることができるため、中間材Rmsに対しても、必要なパージ樹脂所要量Wuを知ることができる。これにより、中間材Rmsにおいても、後樹脂Rsに対する効果と同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、加熱筒2の内部にはスクリュ12を回転自在及び進退自在に装填する。このスクリュ12は、螺旋状のフライト部12mpが形成されたスクリュ本体部12mを備えるとともに、このスクリュ本体部12mの前端にトピード部12t及びスクリュ先端部12sを備える。スクリュ本体部12mは、前側から後側に、メターリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを有する。一方、スクリュ12の後端部はスクリュ駆動部13に結合する。スクリュ駆動部13は、スクリュ12を回転させるスクリュ回転機構13r及びスクリュ12を前進及び後退させるスクリュ進退機構13mを備える。なお、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mの駆動方式は、油圧回路を用いた油圧方式であってもよいし電動モータを用いた電気方式であってもよく、その駆動方式は問わない。
【0026】
さらに、加熱筒2は、前側(ノズル2n側)から後側へ、加熱筒前部2f,加熱筒中部2m,加熱筒後部2rを有し、各部2f,2m,2rの外周面には、前部加熱部14f,中部加熱部14m,後部加熱部14rをそれぞれ付設する。同様に、ヘッド部2hの外周面には、ヘッド加熱部14hを付設するとともに、ノズル2nの外周面には、ノズル加熱部14nを付設する。これらの各加熱部14f,14m,14r,14h,14nはバンドヒータ等により構成できる。
【0027】
一方、3は、射出成形機M全体の制御を司る成形機コントローラを示す。成形機コントローラ3は、CPU及び付属する内部メモリ15m等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有するコントローラ本体15を備えるとともに、このコントローラ本体15に接続したディスプレイ4を備える。ディスプレイ4は、タッチパネルが付属するため、ディスプレイ4を用いて、設定,選択,入力等の各種操作を行うことができるとともに、各種表示を行うことができる。特に、本実施形態に関連して、図3に示す樹脂替え設定画面Hc及び図4に示す条件表表示画面Hmを表示する。
【0028】
さらに、コントローラ本体15には、ドライバ16を介して前述したスクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mを接続するとともに、各加熱部14f,14m,14r,14h,14nを接続する。これにより、コントローラ本体15はドライバ16を通してスクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mを駆動制御できるとともに、各加熱部14f,14m,14r,14h,14nを通電制御できる。
【0029】
したがって、成形機コントローラ3は、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)制御系及びPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)制御系を包含し、内部メモリ15mには、PLCプログラムとHMIプログラムを格納する。なお、PLCプログラムは、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等を実現するためのソフトウェアである。そして、この成形機コントローラ3は本実施形態に係る樹脂替え支援装置1を構成する(兼用する)。
【0030】
次に、本実施形態に係る樹脂替え支援方法の基本的な支援手法について、表1-表2及び図5図8を参照して説明する。
【0031】
この樹脂替え支援方法は、樹脂替え(同一樹脂の色替えを含む)を実行するに際し、樹脂替えに必要となるパージ樹脂所要量Wuを推測する手法となる。従来では、成形機自身を試験機として使用し、樹脂の粘度(見掛粘度)を実際に求め、この試験結果からパージ樹脂所要量Wuを予測していた。本実施形態に係る樹脂替え支援方法では、カタログ等により既知であるMFR値をそのまま利用、即ち、単なる数値入力により、対応する的確なパージ樹脂所要量Wuを推測できるようにした。
【0032】
まず、その有為性を確認するため、本実施形態に係る樹脂替え支援方法に係る検証試験を実施した。
【0033】
検証試験では、φ26標準スクリュを用いた射出成形機により樹脂替え試験を行った。樹脂替え試験におけるパージ処理条件の一覧を[表1]に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
[表1]中、高温側領域(図5中のZAu)の温度は、加熱筒2のノズル2n,ヘッド部2h及び前部2fの温度が含まれるとともに、低温側領域(図5中のZAd)の温度は、加熱筒2の中部2m及び後部2rの温度が含まれる。
【0036】
検証試験に際し、まず、前樹脂Rfは、マスターバッチが1〔wt%〕になるように調整し、加熱筒2内に黒色の前樹脂Rfを充填させた。この後、[表1]のパージ処理条件により、後樹脂Rs(LDPE)によりパージ処理した後、スクリュを引き抜き、冷却後、樹脂を剥ぎ取ることにより、目視により前樹脂Rfの残留状態の有無を確認した。この際、前樹脂Rfが確認されたなら、後樹脂Rsを500〔g〕追加してパージ処理を継続し、前樹脂Rfが無くなるまで繰り返した。そして、前樹脂Rfが完全に無くなったときのパージ樹脂量を求めた。
【0037】
一方、ゼロせん断粘度の演算には、[数1]に示す(式101)を用いた。
【0038】
【数1】
【0039】
(式101)中、ηはせん断粘度〔Pa・s〕,ηoはゼロせん断粘度〔Pa・s〕,γはせん断速度〔1/sec〕,nは粘度指数,Cは温度定数,Tは測定温度〔℃〕,Trは基準温度〔℃〕を示す。
【0040】
各樹脂R…の温度(200〔℃〕,250〔℃〕)別のゼロせん断粘度ηoの一覧を[表2]に示すとともに、加熱筒2の温度範囲を図5に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
そして、これらに基づくパージ樹脂所要量Wumを、[数2]に示す(式102)の演算式を使用して求めた。
【0043】
【数2】
【0044】
この場合、加熱筒2を、軸方向へ、前部2f,中部2m,後部2rの三領域に分け、前部2f以前を高温側領域ZAu、中部2m以後を低温側領域ZAdに設定するとともに、例示のように、高温側領域ZAuの温度を250〔℃〕、低温側領域ZAdの温度を200〔℃〕に設定すれば、後樹脂Rsの必要樹脂量であるパージ樹脂所要量Wumは、(式102)のように、ηos,ηof,ηofeから得る各差分値を加算した値に比例するものと予想される。
【0045】
なお、高温側領域ZAuと低温側領域ZAdの温度差は0-50〔℃〕の範囲に設定することが望ましい。このように設定すれば、成形機(射出成形機)Mの動作環境を効率的な動作状態に設定できるため、より効率性の高い的確なパージ樹脂所要量Wuを得ることができる。
【0046】
高温側領域ZAuの前樹脂Rfの排出理論として、後方からの低温側領域ZAdのゼロせん断粘度を有する後樹脂Rsに対して、ゼロせん断粘度の差が大きい程、排出され易く、また、低温側領域ZAdにおいては、その温度における後樹脂Rsと前樹脂Rfとのゼロせん断粘度の差が大きいほど、前樹脂Rfは排出され易くなると考えられる。なお、同一樹脂同士の色替えでは、低温側領域ZAdの見掛粘度の差は常に0になるため、樹脂替えと比較して多くのパージ樹脂所要量が必要になる。よって、(式102)の右辺の値が正側に大きくなるほど、パージ樹脂所要量Wumは少なくなる。
【0047】
一方、MFR値を用いて、前樹脂Rfと後樹脂Rs(中間材Rms)のゼロせん断粘度ηoを演算により予測した。
【0048】
即ち、各樹脂R…のMFR値(カタログ掲載値)に基づき、以下に示す(式103)の関数式から、せん断粘度の変化特性、更には、ゼロせん断粘度ηoを予測した。
【0049】
ηo=f(kx,MFR値,Th) … (式103)
【0050】
ここで、kxは、加熱筒温度Th,MFR値に比例する係数である。(式103)は、各樹脂R…のゼロせん断粘度ηoは、各樹脂R…毎に異なるパラメータとなるMFR値と加熱筒温度Thに対応して設定されるため、係数kxは、樹脂R…毎に、kx=a,b,c,d…として個別に設定される。各係数kx=a,b,c,d…の相違により、せん断速度γ〔1/sec〕に対するせん断粘度η〔Pa・s〕の関係は、図6に示すようになる。このため、kxの係数値は、適切な値になるように予め実験等により設定することができる。
【0051】
そして、得られたゼロせん断粘度ηoの粘度差ηd、即ち、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηd(=ηof-ηos)を求めた。求めた粘度差ηdを図7に一覧表により示す。
【0052】
検証試験により得られた完全に排出した時の後樹脂Rsのパージ樹脂所要量Wuとの関係を考察した。図8は、粘度差ηdとパージ樹脂所要量Wuの関係を示す相関グラフである。なお、パージ樹脂所要量Wumは、前述した検証試験において前樹脂Rsが完全に排出するまでの後樹脂Rsのパージ樹脂所要量である。図8から明らかなように、MFRに基づくパージ樹脂所要量は有為性を有していることを確認できた。
【0053】
実際に必要となる後樹脂量Wuは、[数3]に示す算出式(式104)により求めることができる。
【0054】
【数3】
【0055】
(式104)は、(式102)を他の成形機に適用した場合の必要となる後樹脂量Wuの算出式(予測式)となる。(式104)中の係数値は、図7の結果をプロットした図8から得られる値であり、データ数が増えることにより係数値は変更される。
【0056】
次に、本実施形態に係る樹脂替え支援装置1の具体的な構成について、図2図4を参照して説明する。
【0057】
樹脂替え支援装置1は、図2に示すように、成形機コントローラ3に備える内部メモリ15mが付属するコントローラ本体15及びタッチパネルが付属するディスプレイ4を利用する。基本的な構成として、内部メモリ15mに登録した第一データベースDB1及び第二データベースDB2を備えるとともに、成形機コントローラ3として機能するMFR入力機能部Fi,粘度差演算機能部Fs,所要量演算機能部Fw及び表示処理機能部Foを備える。
【0058】
ディスプレイ4には、本発明に関連して、図3に示す樹脂替え設定画面Hc及び図4に示す条件表表示画面Hmを表示する。樹脂替え設定画面Hcは、基本的に、パージ条件等の樹脂替えに係わる各種動作条件を設定することができるとともに、条件表表示画面Hmは、樹脂替えに係わる条件表を表示することができる。
【0059】
図3に示す樹脂替え設定画面Hcにおいて、上部エリアAuの左側には、成形機(スクリュ)設定欄31,この設定欄31の右側に温度設定選択欄32,この選択欄32の右側に「条件表表示」キー33をそれぞれ配置する。また、中部エリアAmの左側に粘度情報選択欄34を配置し、この粘度情報選択欄34により、34aの「なし」,本発明で使用する34bの「MFR」,34cの「成形機粘度」を選択することができる。
【0060】
また、選択欄34の右側には、樹脂選択部35を配置する。樹脂選択部35は、左側に、現在樹脂(前樹脂Rf)選択欄35fを配置し、かつ右側に、置換樹脂(後樹脂Rs)選択欄35sを配置するとともに、選択欄35fと35sの間には、「START」キー37を配置する。そして、現在樹脂選択欄35fの下側に、選択した樹脂のMFR値を入力するMFR入力部21fを設けるとともに、置換樹脂選択欄35sの下側に、選択した樹脂のMFR値を入力するMFR入力部21sを設ける。このMFR入力部21fと21sは、前述したMFR入力機能部Fiを構成する。
【0061】
この場合、選択できる樹脂には、汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック,コンポジット材料,パージ剤,パージ剤を除く特殊樹脂を含ませることができる。このように、本実施形態に係る樹脂替え支援方法は、広範囲の各種樹脂材料に適用できるため、汎用性の高い手法として構築することができる。
【0062】
下部エリアAdには、成形機の加熱筒のイメージを象った設定温度表示部38を設ける。したがって、この設定温度表示部38は、前側から、加熱筒における、ノズル温度,ヘッド温度,加熱筒前部温度,加熱筒中部温度,加熱筒後部温度をそれぞれ表示する。
【0063】
また、樹脂替え設定画面Hcの「条件表表示」キー33をONすることにより、図4に示す条件表表示画面Hmを表示させることができる。
【0064】
一方、図4に示す条件表表示画面Hmにおいて、上部エリアASuには、パージ剤推奨表示部4pを設ける。パージ剤推奨表示部4pは、粘度差演算機能部Fsにより、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofに対して後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosが低いときに、パージ剤推奨表示部4pを点灯又は点滅等により報知し、パージ剤が必要である旨を出力することができる。このように、表示処理機能部Foに、パージ剤が必要である旨を表示するパージ剤推奨表示部4pを設ければ、オペレータ(ユーザー)は、パージ剤が必要である旨をディスプレイ4により確実に確認できるため、パージ剤に係わる準備を迅速に行うことができる。
【0065】
さらに、条件表表示画面Hmの中部エリアASmには、左側から右側へ、計量回転数表示欄41,パージ速度表示欄42,背圧表示欄43,材料切れ監視時間表示欄44、さらに、「OK」キー45を配置する。条件表表示画面Hmの下部エリアASdには、前パージ条件表示欄46a,後パージ条件表示欄46b,空パージ条件表示欄46cを設け、それぞれに移動ストロークと回数を表示する。そして、下部エリアASdの右端には、投入樹脂量表示部47を設ける。
【0066】
樹脂替え支援装置1を構成する各機能部において、第一データベースDB1には、異なる樹脂R…(樹脂種,色)毎に、MFR値と加熱筒2の設定温度をパラメータとした関数式(式103)から得られる各樹脂R…のゼロせん断粘度ηo…を求めて登録する。MFR値〔g/10min〕は、溶融樹脂の流動性を表す樹脂特性の一つであり、成形材料(樹脂R)のカタログ等に記載されている数値を用いることができる。
【0067】
第二データベースDB2には、前樹脂Rf…のゼロせん断粘度ηof…と後樹脂Rs…のゼロせん断粘度ηos…の粘度差ηd(=ηof-ηos)…に対応するパージ樹脂所要量Wu…を登録する。
【0068】
一方、MFR入力機能部Fiは、前樹脂RfのMFR値と後樹脂RsのMFR値を入力する機能を有し、図3に示すディスプレイ4に表示される樹脂替え設定画面Hcにおける現在樹脂(前樹脂Rf)のMFR値を入力するMFR入力部21f及び置換樹脂(後樹脂Rs)のMFR値を入力するMFR入力部21sを有するMFR入力部21を備える。
【0069】
粘度差演算機能部Fsは、MFR入力部21から入力された各MFRに基づいて第一データベースDB1から前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosを読み出し、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηd(=ηof-ηos)を求める演算機能を備える。
【0070】
さらに、所要量演算機能部Fwは、得られた粘度差ηdに基づいて第二データベースDB2から樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求める機能を備える。表示処理機能部Foは、求めたパージ樹脂所要量Wuを、ディスプレイ4に表示される図4の条件表表示画面Hmにおける投入樹脂量表示部47に表示する機能を備える。
次に、本実施形態に係る樹脂替え支援装置1を用いた樹脂替え支援方法について、図2図8を参照しつつ図1に示すフローチャートに基づき具体的に説明する。
【0071】
今、所定の樹脂(前樹脂Rf)を用いた一連の生産が終了し、次の樹脂(後樹脂Rs)に樹脂替えすることにより、次の生産に移行する場合を想定する。オペレータは、前樹脂Rfを用いた生産が終了したことに伴い、図3に示す樹脂替え設定画面Hcをディスプレイ4に表示させる(ステップS1)。そして、最初に、各種設定項目の選択又は入力を行う(ステップS2)。例示の場合、スクリュの大きさを含む成形機設定欄31により使用する成形機の機種の選択,温度設定選択欄32による使用する温度の設定モードの選択等を行うことができる。
【0072】
次いで、粘度情報選択欄34により粘度情報の選択を行う。本実施形態ではMFRの情報を使用するため、「MFR」34bを選択する(ステップS3)。また、樹脂選択部35の現在樹脂選択欄35fから使用した現在樹脂、即ち、前樹脂Rfに係わる樹脂種の選択を行う(ステップS4)。例示は、「HDPE」選択した状態を示す。そして、MFR入力欄21fに、現在樹脂(前樹脂Rf)のMFR値を入力する(ステップS5)。例示は、「10」を入力した状態を示している。
【0073】
さらに、置換樹脂選択欄35sから置換する置換樹脂、即ち、後樹脂Rsに係わる樹脂種の選択を行う(ステップS6)。例示は、「PMMA」選択した場合を示す。そして、MFR入力欄21sに、置換樹脂(後樹脂Rs)のMFR値を入力する(ステップS7)。例示は、「10」を入力した状態を示している。
【0074】
以上の設定が終了したなら、「START」キー37をONにする。これにより、対応する加熱筒2の加熱温度が決定されるとともに、設定温度として設定温度表示部38に表示される(ステップS9)。即ち、設定温度表示部38の各表示欄に、ノズル温度,ヘッド温度,加熱筒前部温度,加熱筒中部温度,加熱筒後部温度がそれぞれ表示される。
【0075】
次いで、「条件表表示」キー33をONにする(ステップS10)。これにより、パージ処理時の動作条件が決定されるとともに、パージ処理条件が決定され、図4に示す条件表表示画面Hmに、動作条件及びパージ処理条件が表示される(ステップS11,S12)。この動作条件には、計量回転数,パージ速度,背圧,材料切れ監視時間等が含まれるとともに、パージ処理条件として、スクリュの移動ストロークと回数が、それぞれ前パージ条件表示欄46a,後パージ条件表示欄46b及び空パージ条件表示欄46cに表示される。また、投入樹脂量表示部47に、パージ処理時に必要な投入樹脂量〔kg〕が表示される(ステップS13)。
【0076】
他方、条件表表示画面Hmには、パージ剤推奨表示部4pを備える。パージ剤推奨表示部4pは、粘度差演算機能部Fsにより、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofに対して後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosが低いときに、パージ剤が必要である旨を出力し、パージ剤推奨表示部4pを点灯又は点滅等により報知する。
【0077】
これにより、パージ剤が必要性であるか否かの実質的な判定が行われ、オペレータ(ユーザー)はパージ剤の必要性をディスプレイ4の目視により迅速かつ確実に確認できるため、パージ剤に係わる準備等の対応処理を迅速に行うことができる(ステップS14,S15)。この結果、材料コストの削減及び樹脂替え時間の短縮、更には無用な不良品発生の抑制に寄与することができる。
【0078】
以上の準備が終了したなら、オペレータは、最終的な確認を行い、問題なしと判断すれば、「OK」キー45をONにする(ステップS16)。これにより、一連の樹脂替え工程が行われる(ステップS17)。
【0079】
よって、このような本実施形態に係る樹脂替え支援方法(装置)によれば、基本的な手法として、予め、樹脂R…の種別毎にメルトフローレート(MFR)と加熱筒2の設定温度をパラメータとした変換関数式から各樹脂のゼロせん断粘度ηo…を求め、第一データベースDB1として成形機コントローラ3に登録するとともに、前樹脂Rf…のゼロせん断粘度ηof…と後樹脂Rs…のゼロせん断粘度ηos…の粘度差ηd…に対応するパージ樹脂所要量Wu…を、第二データベースDB2として成形機コントローラ3に登録し、樹脂替えを行う際に、前樹脂RfのMFRと後樹脂RsのMFRを成形機コントローラ3に入力することにより、第一データベースDB1から前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosを得るとともに、前樹脂Rfのゼロせん断粘度ηofと後樹脂Rsのゼロせん断粘度ηosの粘度差ηdを得、第二データベースDB2から樹脂替え時のパージ樹脂所要量Wuを求めることにより、少なくとも表示処理を行うようにしたため、従来のように、ユーザーの所有する成形機を使用し、実際の樹脂を使用した樹脂替え工程に準じた試験作業を排除することができる。この結果、生産能率(生産効率)の向上及び生産コストの削減を図ることができるとともに、安定性及び信頼性の高い支援手法により、的確なパージ樹脂所要量Wuを得ることができる。これにより、不慣れな初心者等にとって最適な支援方法として構築できるとともに、必要とするパージ樹脂所要量Wuを容易かつ迅速に求めることができる。
【0080】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,材料,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0081】
例えば、樹脂替えとは、種別の異なる樹脂を変更することは勿論のこと、色が異なる同一樹脂を変更することも含む概念である。MFR(MFR値)は、樹脂のカタログ値を利用した例を示したが、各種資料の数値や自ら実験等で求めた数値など、各種数値を利用可能である。また、後樹脂Rsには、中間材Rmsを含めることができる。したがって、この場合には、後樹脂Rsを中間材Rmsに置換することにより同様に実施することができる。一方、加熱筒2の設定温度は、加熱筒2を、軸方向へ、前部2f,中部2m,後部2rの三領域に分けたとき、前部2f以前を高温側領域ZAuとし、中部2m以後を低温側領域ZAdに設定するとともに、高温側領域ZAuと低温側領域ZAdの温度差を0-50〔℃〕の範囲に設定することが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。さらに、樹脂には、汎用樹脂は勿論のこと、エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック,コンポジット材料,パージ剤,パージ剤を除く特殊樹脂をはじめ、各種樹脂を含ませることができる。また、表示処理機能部Foとして、パージ剤が必要である旨を表示するパージ剤推奨表示部4pをディスプレイ4に設けた場合を例示したが、音声(音)やディスプレイ以外の表示手段など、パージ剤が必要である旨を報知する他の各種手段を利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る樹脂替え支援方法及び装置は、成形に使用する樹脂を前樹脂から異なる後樹脂に入替える樹脂替え工程を実施する射出成形機を含む各種成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1:樹脂替え支援装置,2;加熱筒,2f:前部,2m:中部,2r:後部,3:成形機コントローラ,4:ディスプレイ,4p:パージ剤推奨表示部,R:樹脂,Rf:前樹脂,Rs:後樹脂,Rms:中間材,ηo:ゼロせん断粘度,DB1:第一データベース,DB2:第二データベース,Wu:パージ樹脂所要量,Fi:MFR入力機能部,Fs:粘度差演算機能部,Fw:所要量演算機能部,Fo:表示処理機能部,ZAu:高温側領域,ZAd:低温側領域,M:射出成形機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
【数2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7