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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067204
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20240510BHJP
   C12C 3/00 20060101ALI20240510BHJP
   C12C 11/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C3/00 Z
C12C11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177090
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】丸海老 純也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 梓
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128CP11
4B128CP16
4B128CP38
4B128CP39
(57)【要約】
【課題】乳酸が高含有でありながらスムースさおよびドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料を提供する。
【解決手段】乳酸を2500mg/L超含有し、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有し、さらに乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))が0.005以上0.035以下であるビールテイスト飲料により、前記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を2500mg/L超含有するビールテイスト飲料であって、
リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有し、前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))が0.005以上0.035以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記乳酸の含有量が4000mg/L以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記リナロールの含有量が50μg/L以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
さらに4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)を0.03ng/L以上含有する、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
麦芽使用比率が50質量%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
乳酸を2500mg/L超含有させる工程、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有させる工程、および前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする工程を備える、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項7】
乳酸の含有量が2500mg/L超であるビールテイスト飲料において、リナロールの含有量を15μg/L以上150μg/L未満とし、さらに前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とすることを特徴とする、ビールテイスト飲料におけるスムースさおよびドリンカビリティーの付与または向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料、その製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒などに代表されるビールテイスト飲料は、独特の苦味や焙煎香などを有するものであるが、その設計等により、さらにスムースさを備えるものが求められる場合がある。
【0003】
例えば特許文献1には、ガス圧が2.7kg/cm以上であり、リナロールの含有量が25.0ppb以上である、口内に広がる刺激(溶存ガスに基づく刺激)が低減するとともにスムース感が増強したビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-036553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、乳酸の含有量が高いビールテイスト飲料においては、この乳酸の酸味や酸臭が強く影響してスムースさが失われ易いという課題がある。また、このような乳酸の含有量が高いビールテイスト飲料では、ドリンカビリティーも失われ易い。
【0006】
そこで本発明は、乳酸が高含有でありながらスムースさおよびドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、リナロール含有量、および乳酸含有量とリナロール含有量との比が、乳酸高含有のビールテイスト飲料におけるスムースさおよびドリンカビリティーに影響することを明らかにした。この知見から、乳酸を2500mg/L超含有し、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有し、この乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))が0.005以上0.035以下であるビールテイスト飲料とすることにより、乳酸が高含有でありながらスムースさおよびドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の<1>~<7>である。
<1>乳酸を2500mg/L超含有するビールテイスト飲料であって、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有し、前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))が0.005以上0.035以下である、ビールテイスト飲料。
<2>前記乳酸の含有量が4000mg/L以上である、<1>に記載のビールテイスト飲料。
<3>前記リナロールの含有量が50μg/L以上である、<1>または<2>に記載のビールテイスト飲料。
<4>さらに4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)を0.03ng/L以上含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
<5>麦芽使用比率が50質量%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
<6>乳酸を2500mg/L超含有させる工程、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有させる工程、および前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする工程を備える、ビールテイスト飲料の製造方法。
<7>乳酸の含有量が2500mg/L超であるビールテイスト飲料において、リナロールの含有量を15μg/L以上150μg/L未満とし、さらに前記乳酸の含有量に対する前記リナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とすることを特徴とする、ビールテイスト飲料におけるスムースさおよびドリンカビリティーの付与または向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乳酸が高含有でありながらスムースさおよびドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、乳酸を2500mg/L超含有し、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有し、この乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))が0.005以上0.035以下であるビールテイスト飲料(以下においては「本発明に係るビールテイスト飲料」という場合もある)、ならびに、乳酸を2500mg/L超含有させる工程、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有させる工程、およびこの乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする工程を備えるビールテイスト飲料の製造方法(以下においては「本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法」という場合もある)である。
【0011】
なお、本発明において「ビールテイスト飲料」とは、ビールらしい香味、つまりビール様の香味を有する飲料を意味する。したがって、本発明に係るビールテイスト飲料には、酒税法(令和元年法律第六十三号)により定義される発泡性酒類(ビール、発泡酒、その他醸造酒やリキュールなどに属するその他の発泡性酒類)に属するビール様の香味を有するアルコール飲料や、上記した酒税法により定義される発泡性酒類には属さないがビール様の香味を有するアルコール飲料(例えば非発泡性アルコール飲料等)、ビール様の香味を有するノンアルコール飲料(ビールテイストノンアルコール飲料)などが包含される。
【0012】
また、本発明において「アルコール飲料」とは、上記した酒税法において定義される発泡性酒類などの、アルコール度数が1v/v%以上である飲料を意味する。一方、「ノンアルコール飲料」とは、アルコール度数が1v/v%未満である飲料を意味し、このアルコール度数は0.7v/v%未満、さらには0.5v/v%未満、さらには0.1v/v%未満、さらには0.05v/v%未満、さらには0.005v/v%以下であってもよい。
なお、この「アルコール度数(v/v%)」とは、改訂BCОJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3 アルコール」に記載されている方法(アルコール飲料は8.3.6アルコライザー法、ノンアルコール飲料は8.3.7ヘッドスペースGC-FID法)によって測定される値である(以下においても同様である)。そして、本発明において「アルコール」とは、エタノールを意味する。
【0013】
以下、本発明に係るビールテイスト飲料について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係るビールテイスト飲料は、乳酸(Lactic acid:C)を2500mg/L超含有するものである。この乳酸は、一定量以上含有させると特徴的な酸味を有するビールテイスト飲料とすることができる成分である。
ここで、この「超」とは、その数値を超えること(その数値より多いこと)を表す。以下においても同様である。
【0015】
本発明に係るビールテイスト飲料の乳酸含有量は上記したように2500mg/L超であるが、この下限は2600mg/L超であってもよく、3000mg/L以上であってもよく、3500mg/L以上であってもよく、3800mg/L以上であってもよく、4000mg/L以上であってもよい。上限は、本発明の効果が発揮され易くなることから、30000mg/L未満であるのが好ましく、20000mg/L以下であるのがより好ましく、15000mg/L以下であるのがさらに好ましく、12000mg/L以下であるのがさらに好ましく、10000mg/L以下であるのがさらに好ましく、9000mg/L以下であるのがさらに好ましく、8500mg/L以下であるのがさらに好ましく、8000mg/L以下であるのがさらに好ましく、7700mg/L以下であるのがさらに好ましい。例えば、この乳酸の含有量は、4000mg/L以上10000mg/L以下であると本発明の効果がより発揮され易いため好適である。なお、この乳酸の含有量は、市販されている乳酸(例えば純品や精製品など)や乳酸含有原料(酸味料、発酵調味料など)の使用により調整することができ、これらを複数併用してもよい。また、発酵ビールテイスト飲料においては、使用原料だけでなく使用する酵母の種類、発酵条件などによって調整することもできる。
【0016】
本発明に係るビールテイスト飲料は、上記した所定量の乳酸とともに、リナロール(Linalool:C1018O)を15μg/L以上150μg/L未満含有する。そして、このリナロール含有量を上記範囲内に調整するとともに、乳酸含有量とリナロール含有量との比を後述する範囲内に調整することによって、つまりこれらをいずれも厳密に調整することによって、乳酸の酸味や酸臭が一定程度マスキングされて乳酸が高含有でありながらスムースさが備わったビールテイスト飲料とすることができ、且つ、ドリンカビリティー(飲み飽きないようなバランスのよい味および香り)も備わったビールテイスト飲料とすることができる。特に、後述する比を満たしつつリナロール含有量を150μg/L未満とすることにより、醸造香(エステル香など)や麦芽香等に対してホップ香などが突出してドリンカビリティーが失われることを防ぐことが可能となっている。なお、このリナロールは香気成分の一つである。
【0017】
本発明に係るビールテイスト飲料のリナロール含有量は、上記したように15μg/L以上150μg/L未満とするが、この下限は、乳酸の酸味や酸臭をよりマスキングし易くなることから、20μg/L以上であるのがより好ましく、25μg/L以上であるのがさらに好ましく、30μg/L以上であるのがさらに好ましく、35μg/L以上であるのがさらに好ましく、40μg/L以上であるのがさらに好ましく、45μg/L以上であるのがさらに好ましく、50μg/L以上であるのがさらに好ましい。また、この上限は、後述する比との相乗効果などによりドリンカビリティーがより優れたものとし易いことから、140μg/L以下であるのが好ましく、130μg/L以下であるのがより好ましく、125μg/L以下であるのがさらに好ましく、120μg/L以下であるのがさらに好ましく、110μg/L以下であるのがさらに好ましく、100μg/L以下であるのがさらに好ましく、90μg/L以下であるのがさらに好ましい。例えば、このリナロール含有量は、50μg/L以上125μg/L以下であると上記した効果が十分に発揮され易いためより好適である。なお、このリナロールの含有量は、市販されているリナロール(例えば純品や精製品など)やリナロール含有原料(ホップ、香料など)の使用により調整することができ、これらを複数併用してもよい。また、発酵ビールテイスト飲料においては、使用原料だけでなくホップの添加タイミングなどによって調整することもできる。
【0018】
そして、本発明に係るビールテイスト飲料は、上記した所定量の乳酸およびリナロールを含有するとともに、この乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比が所定の範囲内となっている。これにより、上記したように、乳酸が高含有でありながらスムースさが備わるとともに、ドリンカビリティーも備わったビールテイスト飲料とすることができる。
具体的には、本発明に係るビールテイスト飲料では、上記した乳酸含有量(mg/L)に対するリナロール含有量(μg/L)の比((リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする。この下限は、0.006以上とするのがより好ましく、0.007以上とするのがさらに好ましく、0.010以上とするのがさらに好ましく、0.015以上とするのがさらに好ましく、0.018以上とするのがより好ましい。上限は、0.032以下とするのが好ましく、0.030以下とするのがより好ましく、0.028以下とするのがさらに好ましく、0.025以下とするのがさらに好ましく、0.023以下とするのがさらに好ましい。
【0019】
なお、これは、本発明に係るビールテイスト飲料に含まれる乳酸に対するリナロールの質量比として表すこともできる。具体的には、本発明に係るビールテイスト飲料は、含まれる乳酸に対するリナロールの質量比(リナロール(μg)/乳酸(μg))が0.000005以上0.000035以下となっているとも言える。そして、より好ましい質量比の範囲についても、上記から同様に換算して示すことができる。
【0020】
さらに、本発明に係るビールテイスト飲料は、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP、4-methyl-4-sulfanylpentan-2-one:C12OS)を0.03ng/L以上含有すると好ましい。リナロールとの相乗効果などにより乳酸の酸味や酸臭をよりマスキングし易くなり、スムースさを備えたビールテイスト飲料とし易くなるからである。また、ドリンカビリティーもより高め易い。この4MSPは、下記式(1)で表される化合物であって、これも香気成分の一つである。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明に係るビールテイスト飲料においては、4MSPの含有量は上記したように0.03ng/L以上とするのが好ましいが、この下限は0.05ng/L以上とするのがより好ましく、0.08ng/Lとするのがさらに好ましく、0.1ng/L以上とするのがさらに好ましく、0.5ng/L以上とするのがさらに好ましく、1.0ng/L以上とするのがさらに好ましい。上記したリナロールとの相乗効果などをより発揮させることができるからである。この上限は、酸っぱい甘ったるい香りを感じ難くしてビールテイスト飲料としての味と香りとのバランスを高度に保ち易いことから、35ng/L以下であるのが好ましく、30ng/L以下であるのがより好ましく、25ng/L以下であるのがさらに好ましく、20ng/L以下であるのがさらに好ましく、15ng/L以下であるのがさらに好ましく、12ng/L以下であるのがさらに好ましく、10ng/L以下であるのがさらに好ましく、8.0ng/L以下であるのがさらに好ましい。例えば、この4MSPの含有量は、0.05ng/L以上20ng/L以下であると上記したリナロールとの相乗効果などの観点からより好適である。なお、この4MSPの含有量も、市販されている4MSP(例えば純品や精製品など)や4MSP含有原料(フレーバーホップ、香料など)の使用により調整することができ、これらを複数併用してもよい。また、発酵ビールテイスト飲料においては、使用原料だけでなくフレーバーホップの添加タイミングなどによって調整することもできる。
【0023】
ここで、本発明に係るビールテイスト飲料における乳酸含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.24.2 キャピラリー電気泳動法」及び「8.12 無機物」に記載されている方法によって測定することができる。また、リナロール含有量は、サンプルを適宜希釈して、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GC/MS)により測定することができる。さらに、4MSP含有量は、高澄らの方法(Takazumi.K et al. :Anal. Chem. 2017, 89, 11598-11604)に従って測定することができる。
【0024】
本発明に係るビールテイスト飲料は、原料として麦または麦加工物、米、とうもろこし、豆類、果実、香辛料などを任意に使用することができる。なお、この「原料」とは、本発明に係るビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水およびホップ以外のものを指す。
【0025】
上記した麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。また、麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。この麦エキスは、麦から糖分および窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。また、麦芽は、麦(特に大麦)を発芽させ焙燥した後に根を除くことにより得られるものであり、濃色麦芽や淡色麦芽などが含まれる。そして、モルトエキスは、この麦芽から糖分および窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0026】
これらの原料は、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲であれば、使用量等に特段の制限はないが、特に麦芽香をより高め易くなり、ドリンカビリティーもより好ましくなり易いことから、本発明に係るビールテイスト飲料においては麦芽を原料として使用するのが好ましく、麦芽使用比率を50質量%以上とするのがより好ましく、60質量%以上とするのがさらに好ましく、70質量%以上とするのがさらに好ましく、80質量%以上とするのがさらに好ましく、90質量%以上とするのがさらに好ましく、100質量%(オールモルト)とするのがさらに好ましい。この「麦芽使用比率」とは、水およびホップ以外の原料に占める麦芽の割合を意味する。
【0027】
本発明に係るビールテイスト飲料にホップを使用する場合には、このホップの種類としては、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスなどが例示される。また、このホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特段限定されない。なお、このホップの種類や使用量、添加タイミングなどにより、本発明に係るビールテイスト飲料のリナロール含有量を調整してもよい。また、本発明に係るビールテイスト飲料にリナロールとともに4MSPを含有させる場合には、例えば、Amarillo種、Apollo種、Cascade種、Citra種、Mosaic種、Nelson Sauvin種、およびSimcoe種からなる群より選択される1以上などのフレーバーホップを使用してもよい。
【0028】
そして、本発明に係るビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、10以上であってもよく、15以上であってもよい。また、上限は、50以下であってもよく、45以下であってもよく、40以下であってもよく、35以下であってもよく、30以下であってもよく、25以下であってもよい。この苦味価(BU)は、ホップ等の原料の使用量、種類、添加のタイミングなどによって調整することができる。ここで、この苦味価(BU)とは、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定される値である。
【0029】
さらに、本発明に係るビールテイスト飲料には、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、飲料に使用可能な原料、例えば酸味料、苦味料、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、塩類、香料等を含んでいてもよい。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウムなどが挙げられる。なお、乳酸を含む酸味料を用いる場合には、本発明に係るビールテイスト飲料における乳酸含有量等が上記範囲内となるように使用量を調整すればよい。苦味料としては、例えば、カフェイン、ナリンジン、イソα酸などが挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などが挙げられる。甘味料としては、例えば、糖類や糖アルコールが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどが挙げられる。塩類としては、例えば、食塩(塩化ナトリウム)、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
また、本発明に係るビールテイスト飲料は、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲であれば、上記以外の任意の成分をさらに含んでいてもよい。
【0030】
また、本発明に係るビールテイスト飲料がアルコール飲料である場合、その製造において、酵母によるアルコール発酵工程(酵母が糖類などの有機物から代謝産物であるアルコールを生成する工程)を経て製造された発酵アルコール飲料であってもよく、あるいは、その製造において、アルコール発酵工程を行うことなく製造された非発酵アルコール飲料(例えば蒸留酒等の酒類を原料として用いて調合により製造されたアルコール飲料など)であってもよい。さらには、発酵アルコール飲料からアルコール分を除去したノンアルコールビールテイスト飲料としてもよい。
ここで、この本発明に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、その製造工程において、アルコール発酵条件を制御する方法や、各種スピリッツ(ウォッカ等)、焼酎、ブランデー、発泡酒、醸造用アルコールなどを添加する方法、発酵液を蒸留または希釈する方法などによって調整することができる。
【0031】
本発明に係るビールテイスト飲料は、上記したようにアルコール飲料であってもよく、あるいはノンアルコール飲料であってもよいが、ドリンカビリティーがより高まり易くなることなどから、そのアルコール度数は比較的低い範囲にある方がより好ましい。よって、このアルコール度数の上限は15v/v%以下であるのがより好ましく、12v/v%以下であるのがさらに好ましく、10v/v%以下であるのがさらに好ましく、8v/v%未満であるのがさらに好ましく、7v/v%以下であるのがさらに好ましく、6v/v%以下であるのがさらに好ましい。また、下限は0.05%v/v%以上、さらには0.1v/v%以上、さらには0.5v/v%以上、さらには0.7v/v%以上、さらには1v/v%以上、さらには2v/v%以上、さらには3v/v%以上、さらには4v/v以上が例示される。特に、このアルコール度数が4v/v以上6v/v%以下であると、ドリンカビリティーの観点などからより好適である。
【0032】
さらに、本発明に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよいが、本発明に係るビールテイスト飲料が発泡性であると本発明の効果が発揮され易いためより好適である。ここで、本発明において「発泡性」とは、20℃における炭酸ガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることを意味し、「非発泡性」とは、20℃における炭酸ガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることを意味する。この炭酸ガス圧は、国税庁所定分析法(訓令)「8-3ガス圧」に基づいて測定することができる。そして、発泡性飲料である場合においては、この炭酸ガス圧は0.245MPa(2.5kg/cm)以下としてもよい。なお、この炭酸ガスは、発酵により生成されたものであってもよいし、炭酸水やカーボネーション(炭酸ガス圧入)工程により付与されたものであってもよい。そして、このカーボネーション工程は、バッチ式で行ってもよいし、配管路に炭酸ガス圧入システム(カーボネーター)が組み込まれたインライン方式で連続的に行ってもよい。また、このカーボネーション工程は、フォーミング(泡噴き)の発生等を避けるために、液温を10℃以下(より好ましくは4℃以下)として行うのが好適である。
【0033】
本発明に係るビールテイスト飲料の色度は、限定されるものではないが、4°EBC以上50°EBC以下であってよい。この下限は、5°EBC以上であってもよく、8°EBC以上であってもよく、また上限は、40°EBC以下であってもよく、30°EBC以下であってもよく、20°EBC以下であってもよく、15°EBC以下であってもよく、10°EBC以下であってもよく、9°EBC以下であってもよい。
この「色度(°EBC)」とは、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.8 色度 8.8.2吸光度法」に記載されている方法によって測定される値である。
【0034】
以上のような構成である本発明に係るビールテイスト飲料は、乳酸が高含有(2500mg/L超)でありながら、スムースさおよびドリンカビリティーがいずれも備わったものとなる。
なお、本発明は、乳酸の含有量が2500mg/L超であるビールテイスト飲料において、リナロールの含有量を15μg/L以上150μg/L未満とし、さらに乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする、ビールテイスト飲料(乳酸含有量が2500mg/L超であるビールテイスト飲料)におけるスムースさおよびドリンカビリティーの付与または向上方法を提供するものであるとも言える。
【0035】
次に、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法について詳細に説明する。
【0036】
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、乳酸を2500mg/L超含有させる工程と、リナロールを15μg/L以上150μg/L未満含有させる工程と、乳酸の含有量に対するリナロールの含有量の比(リナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L))を0.005以上0.035以下とする工程と、を備えていれば、その他の工程については常法にしたがえばよく、特段限定はされない。また、4MSPを0.03ng/L以上含有させる工程をさらに備えていてもよい。そして、これらは前述したような乳酸含有量、リナロール含有量、これらの比、あるいは4MSP含有量とする工程であってもよく、例えば、乳酸含有量を4000mg/L以上10000mg/L以下とする工程やリナロール含有量を50μg/L以上125μg/L以下とする工程などであってもよい。なお、上記した各工程は1工程において併せて行ってもよく、あるいは各工程の少なくとも1つを2工程以上に分けて行ってもよい。
そして、上記した各工程は、後述するように、所定の原料などを添加する工程や、発酵ビールテイスト飲料製造における煮沸工程および/または発酵工程などにより行うことができる。
【0037】
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法の一例としては、非発酵飲料(非発酵アルコール飲料、非発酵ノンアルコール飲料)を製造する場合、まず調合工程として、乳酸含有原料(例えば酸味料や発酵調味料)およびリナロール含有原料(例えばホップや香料)などを使用して、所定量の乳酸およびリナロールを含み且つこれらの含有量の比が所定の範囲内である調合液を調製する。さらに必要であれば4MSP含有原料(例えばフレーバーホップや香料)などをこの調合液に添加し、これも必要に応じてスピリッツや発泡酒などの添加によるアルコール度数の調整や、炭酸水の添加、カーボネーション等による炭酸ガス圧の調整などを行う。その後、濾過工程(フィルター濾過、ストレーナー濾過等)、殺菌工程(プレート殺菌等)などを行って、最終的に、乳酸の含有量が2500mg/L超であり、リナロール含有量が15μg/L以上150μg/L未満であり、且つこれらの含有量の比が0.005以上0.035以下であるビールテイスト飲料とする。さらに、このビールテイスト飲料をアルミニウム製やスチール製などの金属製容器、ガラス製容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ(プラスチックパウチ)容器、樽容器などに充填して密封する容器充填工程を行ってもよい。このような容器詰飲料とすることにより、香味などの経時劣化を抑制しやすいだけでなく、流通や販売などにおける利便性がより高まる。特に、気体、水分、光線などの遮断性が高く、長期間常温において品質を維持することが可能であることから、金属製容器に充填され密封された構成とするのがより好ましい。
【0038】
また、発酵飲料(発酵アルコール飲料等)を製造する場合、まず、麦芽、大麦、小麦、糖質原料、酵素、各種添加剤、副原料等を適宜使用して常法により糖化液(仕込液、例えば麦汁など)を調製する糖化工程を行う。必要に応じて、この糖化液をろ過処理してもよい。次に、この糖化液を煮沸する煮沸工程を行う。必要であれば、前述したホップやフレーバーホップなどをこの煮沸工程において所定のタイミングで添加する。そして、この煮沸工程後の煮沸後液を静置して沈殿物を除去する静置工程(沈殿工程、除去工程)を行って発酵前液を取得し、必要であれば冷却工程を行って発酵前液を冷却し、さらにこの発酵前液に酵母を添加して所定の条件(例えば0~40℃の温度範囲など)においてアルコール発酵する発酵工程を行う。添加する酵母は、特に発酵工程のアルコール発酵において乳酸を比較的多く生成する酵母を用いるのが好ましい。アルコール発酵後は、発酵後工程として、必要に応じて貯酒(熟成)、ろ過、殺菌などを行う。さらに必要であれば、この発酵後工程などにおいて、スピリッツや発泡酒等の添加、アルコールの除去などによるアルコール度数の調整(例えば高アルコール飲料とする場合やノンアルコール飲料とする場合など)や、炭酸ガス圧の調整を行ってもよい。また、非発酵飲料と同様に、ビールテイスト飲料製品を金属製容器などに充填して密封する容器充填工程を行ってもよい。
そして、これらのいずれか1以上の工程において、乳酸含有量、リナロール含有量、およびこれらの含有量の比を調整し(例えば使用酵母の選択、発酵条件の調整、ホップや香料、酸味料等の添加など)、必要であれば4MSP含有量なども調整し、最終的に、乳酸の含有量が2500mg/L超であり、リナロール含有量が15μg/L以上150μg/L未満であり、且つこれらの比が0.005以上0.035以下であるビールテイスト飲料とする。
【0039】
以上のような構成である本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法により製造されたビールテイスト飲料は、前述したように、乳酸が高含有(2500mg/L超)でありながら、スムースさおよびドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料となる。
【0040】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0041】
<ビールテイスト飲料の調製および官能評価(試験I)>
乳酸を100mg/Lおよびリナロールを3μg/L含有する市販ビール(アルコール度数5v/v%、炭酸ガス圧2.2kg/cm、麦芽使用比率50質量%以上)に、乳酸およびリナロールを下記表1上段に記載の含有量となるように添加して(サンプル1は乳酸のみ添加)、リナロールの含有量が異なる5種類のビールテイストアルコール飲料サンプル(サンプル1~5)を調製した。
【0042】
そして、この各サンプルにおけるエステル香、麦芽香、ドリンカビリティー、スムースさ(酸味・酸臭のマスキング)、ならびに総合評価(乳酸高含有ビールテイスト飲料としての総合評価)について、訓練された官能的識別能力を備えた5名のパネリストにより、以下に示す評価基準を用いて各サンプルを官能評価した。
【0043】
[エステル香および麦芽香の評価基準]
サンプル1におけるエステル香および麦芽香の評価をいずれも2(やや感じる)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(感じない)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
【0044】
[ドリンカビリティーおよびスムースさの評価基準]
サンプル1におけるドリンカビリティーおよびスムースさの評価をいずれも1(感じない)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(感じない:サンプル1と同等)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
【0045】
[総合評価の評価基準]
乳酸高含有ビールテイスト飲料としての総合評価を、1(悪い)から5(とても良い)の5段階によって絶対評価を行った。
【0046】
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表1下段に示した。
この結果から、乳酸を4000mg/L含有し、さらにリナロール含有量が43~123μg/Lであり且つリナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L)が0.011~0.031であるサンプル2~4は、乳酸が高含有でありながら酸味や酸臭が一定程度マスキングされてスムースさが備わり、且つ、エステル香および麦芽香も高まりつつこれらを含めてドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料となっていることが明らかとなった。
【0047】
【表1】
【0048】
<ビールテイスト飲料の調製および官能評価(試験II)>
乳酸を100mg/L含有し且つリナロールを3μg/L含有する市販ビール(アルコール度数5v/v%、炭酸ガス圧2.2kg/cm、麦芽使用比率50質量%以上)に、乳酸、リナロール、および4MSPを下記表2上段に記載の含有量となるように添加して(サンプル6は乳酸およびリナロールのみ添加)、乳酸、リナロール、または4MSPの含有量が異なる6種類のビールテイストアルコール飲料サンプル(サンプル6~10、12)を調製した。なお、サンプル6は上記試験Iのサンプル3と同じものである。また、下記表2中では、比較をし易くするためにサンプル8を2箇所で示している(1箇所では補足的にサンプル8をサンプル11とも表記している)。
【0049】
そして、この各サンプルにおけるエステル香、麦芽香、ドリンカビリティー、スムースさ(酸味・酸臭のマスキング)、酸っぱい甘ったるい香り、ならびに総合評価(乳酸高含有ビールテイスト飲料としての総合評価)について、訓練された官能的識別能力を備えた5名のパネリストにより各サンプルを官能評価した。なお、エステル香、麦芽香、ドリンカビリティー、スムースさ、ならびに総合評価については試験Iと同様の評価基準によって各サンプルを官能評価し、酸っぱい甘ったるい香りについては以下に示す評価基準を用いて各サンプルを官能評価した。
【0050】
[酸っぱい甘ったるい香りの評価基準]
サンプル6における酸っぱい甘ったるい香りの評価を1(感じない)とし、このサンプル6との対比として、それぞれ、1(感じない:サンプル6と同等)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。なお、この項目は点数が低いほど好ましい評価となる。
【0051】
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表2下段に示した。
この結果から、乳酸を4000mg/Lおよびリナロールを83μg/L含有する、つまりリナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L)が0.021であるサンプル6~10は、同様に、乳酸が高含有でありながら酸味や酸臭が一定程度マスキングされてスムースさが備わり、且つドリンカビリティーも備わったビールテイスト飲料となっていることが明らかとなった。そして、さらに4MSPを0.05ng/L以上含有するサンプル7~10は、特にスムースさがより向上していた。また、サンプル8(サンプル11)から乳酸およびリナロールをさらに増量したサンプル12は、サンプル8(サンプル11)と同様にリナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L)を0.021に保つことによって、サンプル8(サンプル11)とほぼ同等の官能評価結果となっていた。つまり、乳酸含有量がより高いビールテイスト飲料でも、所定のリナロール含有量および所定の乳酸含有量とリナロール含有量との比とすることによって、同様の結果が得られることが明らかとなった。
【0052】
【表2】
【0053】
<ビールテイスト飲料の調製および官能評価(試験III)>
大麦麦芽を原料として使用し且つ所定のフレーバーホップも使用し、さらに所定の酵母(アルコール発酵において乳酸を比較的多く生成する酵母)を用いて、常法の醸造で発酵条件などを調整して、アルコール度数が4v/v%である2種類の発酵ビールテイストアルコール飲料サンプル(サンプル13:炭酸ガス圧2.2kg/cm、麦芽使用比率100質量%、苦味価(BU)17、色度9°EBC,およびサンプル14:炭酸ガス圧2.3kg/cm、麦芽使用比率100質量%、苦味価(BU)22、色度9°EBC)を製造した。このサンプル13および14の乳酸含有量、リナロール含有量、および4MSP含有量は下記表3上段に示した。
【0054】
そして、この各サンプルにおけるエステル香、麦芽香、ドリンカビリティー、スムースさ(酸味・酸臭のマスキング)、酸っぱい甘ったるい香り、ならびに総合評価(乳酸高含有ビールテイスト飲料としての総合評価)について、訓練された官能的識別能力を備えた5名のパネリストにより、試験IIと同様の評価基準によって各サンプルを官能評価した。
【0055】
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表3下段に示した。
この結果から、乳酸を所定量以上含有する発酵ビールテイスト飲料においても、リナロール含有量およびリナロール含有量(μg/L)/乳酸含有量(mg/L)が所定の範囲内であると、酸味や酸臭が一定程度マスキングされてスムースさが備わり、且つ、エステル香および麦芽香も高まりつつこれらを含めてドリンカビリティーが備わったビールテイスト飲料となっていることが明らかとなった。
【0056】
【表3】