(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067207
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】不動産スコア算出システム、不動産スコア算出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240510BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177094
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】515042052
【氏名又は名称】株式会社MFS
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山田 明
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルを提案するためのシステムを提供する。
【解決手段】利用者の利用者端末と、利用者端末とデータ送受信可能に接続され、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する不動産スコア算出装置と通信ネットワークを経由して接続されているシステムであって、不動産スコア算出装置は、外部から収集した不動産情報を機械学習モデルに入力し、該機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するとともに、利用者端末から不動産情報としてパラメータ情報が入力されたときに、ポイント算定基準に基づきパラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出されたパラメータ毎のポイントからPスコアを算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の利用者端末と、該利用者端末とデータ送受信可能に接続され、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する不動産スコア算出装置と、を備えるシステムであって、
前記不動産スコア算出装置は、
不動産情報源から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機械学習部と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成部と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成部で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出部と、
を備えることを特徴とする不動産スコア算出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の不動産スコア算出システムにおいて、
前記Pスコア算出部で算出されたPスコアと実際の利回り分布図とから求めた近似式を用いて、適正な利回りとしてベースキャップレートを算出するベースキャップレート算出部を備えることを特徴とする不動産スコア算出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の不動産スコア算出システムにおいて、
前記Pスコアモデル作成部は、前記パラメータ毎の最大ポイントを集計した合計値が一定値となるように、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎の最大ポイントを設定するとともに、前記利用者端末から入力された前記パラメータ情報に応じたポイントを算定するようにポイント算定基準を設定することを特徴とする不動産スコア算出システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の不動産スコア算出システムにおいて、
前記Pスコアモデル作成部は、前記パラメータ毎の比重を集計した合計値が100%となるように、前記パラメータ間の相対的な影響度合いを分析して前記パラメータ毎に全体に占める割合を比重として設定することを特徴とする不動産スコア算出システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の不動産スコア算出システムにおいて、
前記Pスコアモデル作成部で設定する各パラメータは、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「ブランド」の全部または一部を含むことを特徴とする不動産スコア算出システム。
【請求項6】
利用者の利用者端末から入力された不動産情報に基づき、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する方法であって、
不動産情報源から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機会学習工程と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成工程と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成工程で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出工程と、
を含むことを特徴とする不動産スコア算出方法。
【請求項7】
利用者の利用者端末から入力された不動産情報に基づき、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出するプログラムであって、
コンピュータに、
不動産情報源から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機会学習手段と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成手段と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成手段で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出手段と、
を実行させることを特徴とする不動産スコア算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルを提案するためのシステム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
投資用不動産の評価方法としては収益還元法や取引事例比較法等が一般的に知られているが、日本の不動産取引では実際の取引データが公に開示されておらず、また価格決定に関する一般的に利用可能な統計モデルもないため、これまで個人投資家が投資用不動産の価格の妥当性を判断することが困難であった。
【0003】
例えば、特許文献1では、投資用不動産の運用実績等に対して多様な観点から分析することを支援する不動産投資分析支援装置が開示されている。また、株式会社MFSから不動産投資サービス(INVASE)として、不動産投資ローンの借り入れ可能額を判定する「バウチャーサービス」や、不動産投資ローンの借り換え先金融機関を紹介する「借り換えサービス」が提供されている。
【0004】
しかしながら、投資用不動産の価格の妥当性を定量的に評価するサービスは提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコア(将来想定した賃料が得られない可能性の程度を定量的に示した数値)を算出する不動産スコア算出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る不動産スコア算出システムは、
利用者の利用者端末と、該利用者端末とデータ送受信可能に接続され、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する不動産スコア算出装置と、を備えるシステムであって、
前記不動産スコア算出装置は、
不動産情報源(外部または内部の不動産情報サイト、不動産会社その他の情報源)から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標(例えば、平米単価や空室率、空室発生から入居者決定までの平均期間など)をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機械学習部と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成部と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成部で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る不動産スコア算出システムは、第1発明において、
請求項1に記載の不動産スコア算出システムにおいて、
前記Pスコア算出部で算出されたPスコアと実際の利回り分布図とから求めた近似式を用いて、適正な利回りとしてベースキャップレートを算出するベースキャップレート算出部を備えることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る不動産スコア算出システムは、第1発明または第2発明において、
前記Pスコアモデル作成部は、前記パラメータ毎の最大ポイントを集計した合計値が一定値となるように、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎の最大ポイントを設定するとともに、前記利用者端末から入力された前記パラメータ情報に応じたポイントを算定するようにポイント算定基準を設定することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る不動産スコア算出システムは、第1発明または第2発明において、
前記Pスコアモデル作成部は、前記パラメータ毎の比重を集計した合計値が100%となるように、前記パラメータ間の相対的な影響度合いを分析して前記パラメータ毎に全体に占める割合を比重として設定することを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る不動産スコア算出システムは、第1発明または第2発明において、
前記Pスコアモデル作成部で設定する各パラメータは、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「ブランド」の全部または一部を含むことを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る不動産スコア算出方法は、
利用者の利用者端末から入力された不動産情報に基づき、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する方法であって、
不動産情報源(外部または内部の不動産情報サイト、不動産会社その他の情報源)から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機会学習工程と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成工程と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成工程で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る不動産スコア算出プログラムは、
利用者の利用者端末から入力された不動産情報に基づき、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出するプログラムであって、
コンピュータに、
不動産情報源(外部または内部の不動産情報サイト、不動産会社その他の情報源)から収集した情報を用いて、賃料の安定性を示す指標である賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する機会学習手段と、
前記機械学習モデルを分析して賃料指標に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、賃料指標と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定するPスコアモデル作成手段と、
前記利用者端末から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、前記Pスコアモデル作成手段で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出するPスコア算出手段と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを用いて、投資用不動産の価格の妥当性を定量的に評価することが可能になる。例えば、利用者は購入希望物件の8項目の情報を選択し賃料を入力することで、当該物件の適正価格を把握することができ、また、立地、築年数、賃貸状況などの条件を変更することで、それらの変化がどの程度価格に影響を与えているかを理解することができるようになる。Pスコアに対する利回りは市場実勢を踏まえて毎月アップデートされるため、価格情報は常に最新のものとなり、投資用不動産の価格の透明性が担保され、売買が促進され、結果として投資用不動産の流動性の向上に繋がることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る不動産スコア算出システムの構成の一例を示したシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る不動産スコア算出装置を説明する機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る不動産スコア算出装置においてPスコア算出処理手順を説明するフローチャート図である。
【
図4】Pスコア算出に必要な各パラメータ定義の一例を示した図である。
【
図5-1】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-2】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-3】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-4】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-5】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-6】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-7】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図5-8】Pスコア算出に必要な各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。
【
図6】ベースキャップレートの算出例を示した図である。
【
図7】ベースキャップレートの算出基準の一例を示した図である。
【
図8】Pスコア及びベースキャップレートを算出した事例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。
【0017】
本発明の実施形態に係る不動産スコア算出システムの利用環境について
図1を参照しながら説明する。
図1は、不動産スコア算出システムの構成の一例を示したシステム構成図である。
図1に示すように、不動産スコア算出装置10は、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコアを算出する装置であり、利用者端末20と通信ネットワークを経由して接続されている。ここでPスコアは、将来想定した賃料が得られない可能性の程度を定量的に示した数値であり、本実施形態におけるPスコアの数値範囲は0~5の範囲に設定されており、Pスコアの数値が低いほど賃料が得られないリスクが高いことを示している。
【0018】
例えば、投資用不動産の情報を取得したい利用者は、利用者端末20から不動産スコア算出装置10にアクセスし、利用者端末20から対象物件となる投資用不動産の不動産情報を入力すると、不動産スコア算出装置10では、その不動産情報を基に対象物件のPスコアを算出し、その結果を利用者端末20に表示する。ここで、上記の不動産情報には、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年数」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「マンションブランド」等の情報が含まれる。
【0019】
また不動産スコア算出装置10では、上記の不動産情報を基に対象物件のPスコアを算出するとともに、対象物件となる投資用不動産の適正利回りや適性価格を算出することもできる。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る不動産スコア算出装置の機能構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、不動産スコア算出装置を説明する機能ブロック図である。
図2に示すように、不動産スコア算出装置10は、機械学習部11と、Pスコアモデル作成部12と、Pスコア算出部13と、ベースキャップレート算出部14と、を備えている。以下に、各機能部について詳細に説明する。
【0021】
<機械学習部>
機械学習部11は、外部の不動産会社(不動産情報源)から収集した情報を用いて賃料指標をターゲットにした不動産情報に加工する処理を行い、その加工した不動産情報を機械学習モデルに入力する(以下、賃料指標の代表例の1つである平米単価を用いて説明する)。
【0022】
<Pスコアモデル作成部>
Pスコアモデル作成部12は、前記機械学習モデルを分析して平米単価に影響度の高い複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量を複数のパラメータとして定義し、平米単価と相関度合に基づき前記パラメータ毎に全体のパラメータに占める割合を比重として設定するとともに、前記パラメータ毎の最大ポイント及びポイント算定基準を設定する。
【0023】
またPスコアモデル作成部12は、前記パラメータ毎の最大ポイントを集計した合計値が一定値となるように、平米単価と相関度合に基づき前記パラメータ毎の最大ポイントを設定するとともに、前記利用者端末から入力された前記パラメータ情報に応じたポイントを算定するようにポイント算定基準を設定する。
【0024】
またPスコアモデル作成部12は、前記パラメータ毎の比重を集計した合計値が100%となるように、前記パラメータ間の相対的な影響度合いを分析して前記パラメータ毎に全体に占める割合を比重として設定する。この比重の数値が大きい程、そのパラメータが平米単価に対して最も影響度の大きい特徴量であることを表しており、また比重の数値にリンクして前記パラメータ毎の最大ポイントが設定されている。
【0025】
次に、
図4及び
図5-1~
図5-8を用いてPスコアモデル作成部12で設定する最大ポイント及びポイント算定基準、ならびに比重について説明する。
【0026】
図4は、前記パラメータ定義の一例を示した図である。
図4の例では、前記パラメータとして、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年数」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「マンションブランド」の8種類の項目が定義されている。
【0027】
図4の例では、それぞれのパラメータ毎に「最大ポイント」と「比重」が設定されており、「最大ポイント」を集計した合計値が「5.0」となり、また「比重」を集計した合計値が「100%」となっている。また「所在地」パラメータについては「最大ポイント=0.94」が設定されており、さらに該パラメータが全体に占める割合として「比重=19%」が設定されている。他パラメータについても
図4に示した通りである。
【0028】
図5-1~
図5-8は、各パラメータに設定されたポイント算定基準の一例を示した図である。ここでは、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年数」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「マンションブランド」のパラメータ毎に、利用者端末20から入力されたパラメータ情報に応じたポイントを算定するようにポイント算定基準が設定されている。
【0029】
図5-1~
図5-8の例では、「所在地」パラメータについては、利用者端末20から入力されたパラメータ情報に応じて、例えば、千代田区の場合は「ポイント=0.87」が算定され、港区の場合は「ポイント=0.94」(最大ポイント)が算定されるように、ポイント算定基準が設定されている。
【0030】
また「最寄り駅」パラメータについては、利用者端末20から入力されたパラメータ情報に応じて、例えば、新宿の場合は「ポイント=0.64」が算定されるように、ポイント算定基準が設定されている。
【0031】
他パラメータについても
図5-1~
図5-8の通り算定されるように、ポイント算定基準が設定されている。
【0032】
<Pスコア算出部>
Pスコア算出部13は、利用者端末20から不動産情報として前記パラメータ情報が入力されたときに、Pスコアモデル作成部12で設定された前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントを算出するとともに、その算出された前記パラメータ毎のポイントを合算したものを前記Pスコアとして算出する。
【0033】
次に、具体例を用いてPスコアの算出例について説明する。例えば、前記パラメータ情報として、「所在地=新宿区」、「最寄り駅=新宿」、「駅との距離=10分」、「築年数=2年」、「専有面積=20m」、「賃貸状況=空室」、「所在階=3階」、「マンションブランド=ガーラ」が入力されたときに、前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき前記パラメータ毎のポイントが次のように算出される。
・「所在地」ポイント=0.73
・「最寄り駅」ポイント=0.64
・「駅との距離」ポイント=0.18
・「築年数」ポイント=1.41
・「専有面積」ポイント=0.21
・「賃貸状況」ポイント=0.25
・「所在階」ポイント=0.06
・「マンションブランド」ポイント=0.16
【0034】
次に、上記で算出された前記パラメータ毎のポイントの数値を合算したものがPスコアとして算出される。したがってPスコアは次のように算出される。
Pスコア=0.73 + 0.64 + 0.18 + 1.41 + 0.21 + 0.25 + 0.06 + 0.16
= 3.64
【0035】
本実施形態におけるPスコアの数値範囲は0~5の範囲に設定されており、この例ではPスコア=3.64 の数値が得られた。利用者は、Pスコアの数値から投資用不動産の価格の妥当性を定量的に評価することが可能になる。なお上述した通り、Pスコアは将来想定した賃料が得られない可能性の程度を定量的に示した数値であり、Pスコアの数値が低いほど賃料低下または賃料が得られないリスクが高いことを示している。
【0036】
<ベースキャップレート算出部>
ベースキャップレート算出部14は、前記Pスコア算出部で算出されたPスコアと実際の利回り分布図とから求めた近似式を用いて、適正な利回りとしてベースキャップレートを算出する。
【0037】
図6は、ベースキャップレートの算出例を示した図である。ベースキャップレート(BCR)は、毎月見直しされる数値であり、例えばPスコア=5.0の場合はBCR=3.28% (2022年10月)と算出される。
【0038】
図7は、ベースキャップレートの算出基準の一例を示した図である。
図7に示すように、毎月収集する不動産情報からPスコアを算出し、Pスコアと実際の利回りを散布図にプロットし、その近似式をベースキャップレートの算出式とする。
【0039】
次に本発明の実施形態に係る不動産スコア算出システムにおいて、利用者端末から不動産情報が入力されたときのデータ処理手順について、
図3のフローチャート図を参照しながら説明する。
【0040】
<データ処理手順>
ステップS10において、利用者端末20から対象物件となる投資用不動産の不動産情報が入力される。ここで、この不動産情報のパラメータ情報として、「所在地」、「最寄り駅」、「駅との距離」、「築年数」、「専有面積」、「賃貸状況」、「所在階」、「マンションブランド」等の情報が含まれる。
【0041】
次にステップS20において、不動産情報として入力された各パラメータ情報からパラメータ毎のポイントを算出する。すなわち、Pスコアモデル作成部12で設定した前記パラメータ毎のポイント算定基準に基づき、利用者端末20から不動産情報として入力された前記パラメータ情報から、前記パラメータ毎のポイントを算出する。
【0042】
次にステップS30において、ステップS20で算出したパラメータ毎のポイントを用いてPスコアを算出する。すなわちパラメータ毎のポイントの数値を合算したものをPスコアとして算出する。また、このフローチャートには示していないが、対象物件となる投資用不動産の適正利回り(ベースキャップレート)や適性価格を算出することもできる。
【0043】
次にステップS40において、ステップS30で算出した算出結果を利用者端末20へ送信する。この算出結果には、対象物件のPスコアの他に対象物件の適正利回り(ベースキャップレート)や適性価格が含まれてもよい。
【0044】
なお、上記で説明したデータ処理手順については、コンピュータによって実行される方法として実現されてもよいし、またコンピュータに実行されるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0045】
最後に、本システムにおける検証結果として、Pスコア及びベースキャップレート(BCR)を算出した事例について説明する。
図8は、対象物件としてMFS大手町マンションの事例を示したものであり、Pスコア=3.31、BCR=3.89%と算出されている。
【0046】
以上から、投資用不動産の賃料の安定性を測る計量モデルとしてPスコア及びベースキャップレート(BCR)を利用することは有効であり、さらに投資用不動産の価格の透明性が担保され、売買が促進され、結果として投資用不動産の流動性の向上に繋がることが期待できる。
【0047】
なお、本実施形態において、賃料の安定性を示す指標である賃料指標として平米単価を用いて説明したが、これに限定されるものではない。上記の説明は「高い賃料を取り続けることができる安定性の高い物件="賃料/利回り=価格"の計算式から、不動産価格が高いはず=平米単価に相関があるはず」という仮説に基づいて分析した結果として、平米単価をターゲットにして生み出したPスコアと実際の利回りには一定の相関関係が見られたため平米単価を例にしているに過ぎない。そのため、平米単価に加えてまたは代えて、例えば空室率や空室発生から入居者決定までの平均期間など、(最も)賃料の安定性を示すと考えられるある特定のデータ(項目、特徴量)をターゲットとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…不動産スコア算出装置
11…機械学習部
12…Pスコアモデル作成部
13…Pスコア算出部
14…ベースキャップレート算出部
20…利用者端末