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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067220
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】プレススルー蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20240510BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B65D77/20 E
B65D75/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177116
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 海里
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB41
3E067AB81
3E067AB83
3E067AC04
3E067BA15A
3E067BA26A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB29
3E067EE02
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB02
3E067FB04
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】本発明では、加工が容易であり、かつプレススルー性が良好な、新規なプレススルー蓋材を提供する。
【解決手段】本発明のプレススルー蓋材10は、
金属箔層を有さず、かつ基材樹脂層12を有し、
前記基材樹脂層が、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であり、
前記第一の熱可塑性樹脂と、前記第二の熱可塑性樹脂とが相溶性であり、
前記第二の熱可塑性樹脂の含有率が、前記基材樹脂層の質量に対して、15~80質量%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層を有さず、かつ基材樹脂層を有し、
前記基材樹脂層が、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であり、
前記第一の熱可塑性樹脂と、前記第二の熱可塑性樹脂とが相溶性であり、
前記第二の熱可塑性樹脂の含有率が、前記基材樹脂層の質量に対して、15~80質量%である、
プレススルー蓋材。
【請求項2】
前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、100%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも40%以下である、
請求項1に記載のプレススルー蓋材。
【請求項3】
前記第一の熱可塑性樹脂が、第一のポリプロピレン系樹脂である、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材。
【請求項4】
前記第二の熱可塑性樹脂が、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン系樹脂、及び第二のポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材。
【請求項5】
ヒートシール層を更に有し、前記ヒートシール層の厚さが、10μm以下である、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材。
【請求項6】
印刷層を更に有する、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材。
【請求項7】
下記の特性を有する、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材:
引張最大点荷重:8~65N/15mm
引張破壊点伸び率:72%/15mm以下
【請求項8】
内容物、
ポケット部を有し、前記ポケット部に前記内容物を収容している、ブリスター容器、及び
前記ブリスター容器に接着されて前記内容物を封止している、請求項1又は2に記載のプレススルー蓋材
を有する、内容物入りブリスターパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレススルー蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば錠剤等の固形製剤や薬剤の入ったカプセルのための包装容器として、ブリスターパックが用いられている。このブリスターパックは、樹脂シート等で構成されているブリスター容器用シートに、ポケットとよばれる凹部を形成してブリスター容器を形成し、ポケット内に内容物を入れ、そして蓋材をヒートシール等によって接合させることにより形成することができる。
【0003】
ブリスター容器は、ポケットの内側に製剤等を収容した状態で、その周囲に拡がった裾の部分に蓋材をヒートシールすることにより、製剤等が封入された内容物入りブリスターパックとなる。かかるブリスターパックの一態様として、ポケット部を指等で押し潰すことにより、蓋材を突き破って内容物を取り出すPTP(プレス・スルー・パッケージ)が知られている。
【0004】
PTPにおける蓋材では、開封性の観点から、アルミニウム箔等の金属箔が広く用いられているが、蓋材が金属箔(無機物)、ブリスター容器が樹脂(有機物)であり、全く異なった材質であるため、分別処理が必要で、使用後のリサイクルや焼却処理が非常に困難であった。そこで、PTPの使用に適した、すなわち突き破りによる開封性が改善された樹脂製の種々の蓋材が提案されている。
【0005】
特許文献1では、ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材が開示されている。特許文献1では、この蓋材がスチレン系樹脂を含むことが開示されている。
【0006】
特許文献2では、熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部未満の無機フィラーとを含む層を少なくとも1層有する延伸フィルムからなることを特徴とするプレススルーパック用蓋材フィルムが開示されている。
【0007】
特許文献3では、厚み0.01~1mmのシートが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンまたはスチレンコポリマーの内の少なくとも1つからなる樹脂(A)100重量部に対し、無機フィラーを5~250重量部含有する樹脂組成物からなり、JIS P8112のミューレン低圧用試験による方法で、破裂強度が0.01~5kg/cmであることを特徴とするPTP用蓋材シートが開示されている。
【0008】
特許文献4では、全面に微細な多数の孔を形成した厚さが10~30μmのポリテレフタル酸エチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムに厚さが10~40μmのシーラント層を積層してなるPTP包装用のトップフィルムであって、上記孔はシーラント層に向って逆円錐又は逆角錐状あるいは逆円錐台又は逆角錐台状に形成されてシーラント層との積層面で15μmφ以下の径を有し、かつ該孔を1cm当り400~3000個設けてなることを特徴とするPTP包装用トップフィルムが開示されている。
【0009】
特許文献5では、一部に凹部(ポケット)が成形されたフィルムまたはシートと蓋材とが溶着されてなる包装体であり、前記フィルムまたはシートと前記蓋材の厚みを合わせた厚みが、250μm以下であり、前記フィルムまたはシートと前記蓋材に含まれる金属箔の合計厚みが35μm以下であるか金属箔を使用していない包装体であって、前記包装体の前記フィルムまたはシートに前記蓋材が溶着された部分を直角に切断して切断体を作成し、所定の刺通試験を実施した時に、厚み25μmのアルミ箔を貫通しないことを特徴とする包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-188181号公報
【特許文献2】特開2010-264987号公報
【特許文献3】特開平10-101133号公報
【特許文献4】実用新案登録第3035462号公報
【特許文献5】特開2018-2304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に係る発明のように、スチレン系樹脂を用いた場合、プレススルー性は幾らか改善されるものの、ポリスチレンの十分ではない耐溶剤性及び耐熱性に起因して、加工性が良好ではないことがあった。
【0012】
特許文献2及び3のように、フィラーを用いた場合には、有機素材及び無機素材が混在することとなり、リサイクル及び廃棄に悪影響が生じることがあった。
【0013】
また、特許文献4及び5のように、機械的処理により開封性を高めようとする場合、処理位置等の精密な制御が必要となること、及び、特に貫通孔を蓋材に設けた場合には、得られた蓋材の密封性が損なわれることがあった。
【0014】
そこで、本発明では、加工が容易であり、かつプレススルー性が良好な、新規なプレススルー蓋材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉金属箔層を有さず、かつ基材樹脂層を有し、
前記基材樹脂層が、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であり、
前記第一の熱可塑性樹脂と、前記第二の熱可塑性樹脂とが相溶性であり、
前記第二の熱可塑性樹脂の含有率が、前記基材樹脂層の質量に対して、15~80質量%である、
プレススルー蓋材。
〈態様2〉前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、100%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも40%以下である、
態様1に記載のプレススルー蓋材。
〈態様3〉前記第一の熱可塑性樹脂が、第一のポリプロピレン系樹脂である、態様1又は2に記載のプレススルー蓋材。
〈態様4〉前記第二の熱可塑性樹脂が、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン系樹脂、及び第二のポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、態様1~3のいずれか一項に記載のプレススルー蓋材。
〈態様5〉ヒートシール層を更に有し、前記ヒートシール層の厚さが、10μm以下である、態様1~4のいずれか一項に記載のプレススルー蓋材。
〈態様6〉印刷層を更に有する、態様1~5のいずれか一項に記載のプレススルー蓋材。
〈態様7〉下記の特性を有する、態様1~6のいずれか一項に記載のプレススルー蓋材:
引張最大点荷重:8~65N/15mm
引張破壊点伸び率:72%/15mm以下
〈態様8〉内容物、
ポケット部を有し、前記ポケット部に前記内容物を収容している、ブリスター容器、及び
前記ブリスター容器に接着されて前記内容物を封止している、態様1~7のいずれか一項に記載のプレススルー蓋材
を有する、内容物入りブリスターパック。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工が容易であり、かつプレススルー性が良好な、新規なプレススルー蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のプレススルー蓋材の側面断面図である。
図2図2は、本発明の内容物入りブリスターパックの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《プレススルー蓋材》
図1(a)に示すように、本発明のプレススルー蓋材10は、
金属箔層を有さず、かつ基材樹脂層12を有し、
前記基材樹脂層が、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記第一の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であり、
前記第二の熱可塑性樹脂のMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であり、
前記第一の熱可塑性樹脂と、前記第二の熱可塑性樹脂とが相溶性であり、
前記第二の熱可塑性樹脂の含有率が、前記基材樹脂層の質量に対して、15~80質量%である。
【0019】
破壊点伸び率が大きい第一の熱可塑性樹脂は、安定した加工性を有する一方で、この樹脂を蓋材として用いた場合には、内容物を押し出そうとしたときに、蓋材が延伸され、それによって、プレススルーに悪影響が生じることがあった。
【0020】
一方、破壊点伸び率が小さい第二の熱可塑性樹脂を蓋材として用いた場合、プレススルー性は良好である一方で、加工時に蛇行や撓み等が生じることがあった。
【0021】
これに対し、本発明者らは、第一及び第二の熱可塑性樹脂を上記の比率で含有させることにより、加工が容易であり、かつプレススルー性が良好なプレススルー蓋材を得ることができることを見出した。
【0022】
本発明のプレススルー蓋材は、金属箔層を含まない。金属箔層としては、アルミニウム箔層等が挙げられる。
【0023】
本発明において、破壊点伸び率は、JIS K 7161-1:2014に準拠して測定したものである。より具体的には、測定対象とする樹脂又は樹脂組成物を、厚さ60μmに成形し、これを幅15mm、長さ100mmの短冊状に切り出し、これを用いて、引張速度300mm/min、支点間距離50mmの条件で引張試験を行って得たものである。
【0024】
上記の引張試験を行った際に、本発明のプレススルー蓋材は、種々の特徴的な物理的性質、具体的には最大点荷重、最大点伸び率、破壊点伸び率、最大点から破壊点までの変位の値を得ることができる。これらの値は、上記の引張試験により得た応力-ひずみ曲線から得ることができる。
【0025】
本発明のプレススルー蓋材の最大点荷重は、MD方向及びTD方向のいずれにおいても、8N/15mm以上、10N/15mm以上、12N/15mm以上あることができ、また65N/15mm以下、62N/15mm以下、60N/15mm以下、55N/15mm以下、50N/15mm以下、45N/15mm以下、又は42N/15mm以下であることができる。この最大点荷重は、応力-ひずみ曲線における応力の最大値である。
【0026】
本発明のプレススルー蓋材の最大点伸び率は、MD方向及びTD方向のいずれにおいても、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、8%以下、又は6%以下であることができ、また1%以上、又は2%以上であることができる。この最大点伸び率は、応力-ひずみ曲線において応力が最大となる時におけるサンプルの伸び率を意味している。
【0027】
本発明のプレススルー蓋材の破壊点伸び率は、MD方向及びTD方向のいずれにおいても、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、28%以下、25%以下、又は23%以下であることができ、また1%以上、又は2%以上であることができる。特に、この破壊点伸び率が20%以下である場合には、本発明のプレススルー蓋材は、良好なプレススルー性を有する。この破壊点伸び率は、サンプルの破断が確認できたときにおけるサンプルの伸び率を意味している。
【0028】
本発明のプレススルー蓋材の最大点から破壊点までの変位は、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、23%以下、20%以下、又は19%以下であることができ、また5%以上、7%以上、又は10%以上であることができる。この変位は、上記の最大点伸び率と破壊点伸び率との差である。
【0029】
特に、最大点荷重が65N/15mm以下であり、かつ破壊点伸び率が20%以下である場合には、良好なプレススルー性を得ることができる。
【0030】
別の態様では、図1(b)に示すように、本発明のプレススルー蓋材10は、随意のシーラント層14、印刷層16、及びコート層18を有していてよい。印刷層16は、基材樹脂層12とシーラント層14との間、又は基材樹脂層12とコート層18との間に存在していてよい。コート層18は、基材樹脂層12のシーラント層14と反対側に存在していてよい。
【0031】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0032】
〈基材樹脂層〉
基材樹脂層は、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂を含有している樹脂層である。
【0033】
第一の熱可塑性樹脂と、第二の熱可塑性樹脂とは、相溶性である。ここで、本発明において、「相溶性である」とは、これらの熱可塑性樹脂が互いに分離せずに混ざり合うことを意味している。この相溶性は、例えば第一及び第二の熱可塑性樹脂が結晶性樹脂で構成されていることによりもたらされる。
【0034】
結晶性樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0035】
本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂である。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物を用いることができる。
【0037】
環状オレフィンコポリマー(COC)とは、α-オレフィンと環状オレフィンとを、へキサン、へプタン、オクタン、シクロへキサン、べンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒中で、いわゆるチーグラー触媒、メタロセン触媒などの触媒を調合することにより得ることができる共重合体をいう。
【0038】
基材樹脂層の厚さは、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、又は55μm以上であってよく、また120μm以下、110μm以下、100μm以下、95μm以下、90μm以下、又は85μm以下であってよい。
【0039】
基材樹脂層は、基材樹脂層を構成する樹脂組成物を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールコニカルミキサー等のバッチ式混練機や、2軸混練機等の連続混練機等を用いて混錬し、次いで混練した樹脂を、インフレーション法、Tダイ法等の押出成形法によりフィルム状に成形することにより製造することができる。
【0040】
(第一の熱可塑性樹脂)
第一の熱可塑性樹脂は、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上である、熱可塑性樹脂である。
【0041】
ここで、第一の熱可塑性樹脂の、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、120%以上、125%以上、又は130%以上であり、かつ200%以下、190%以下、180%以下、170%以下、160%以下、又は150%以下であってよい。
【0042】
この破壊点伸び率は、熱可塑性樹脂の引張強度、例えば引張破壊呼び歪みの値が高くなればなるほど高くなる。特に、第一の熱可塑性樹脂の引張破壊呼び歪みは、120%以上、150%以上、170%以上、又は190%以上であってよく、また600%以下、550%以下、530%以下、500%以下、470%以下、450%以下、430%以下、400%以下、370%以下、350%以下、320%以下、300%以下、280%以下、250%以下、又は220%以下であってよい。上記の引張破壊呼び歪みを有するものとして商業的に入手可能な熱可塑性樹脂を、本発明における第一の熱可塑性樹脂として用いることができる。
【0043】
第一の熱可塑性樹脂としては、例えば上記の条件を満足するポリプロピレン系樹脂等を用いることができる。第一の熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン系樹脂を、「第一のポリプロピレン系樹脂」と言及する。
【0044】
(第二の熱可塑性樹脂)
第二の熱可塑性樹脂は、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下である、熱可塑性樹脂である。
【0045】
第二の熱可塑性樹脂は、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率は、いずれも、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下であってよい。
【0046】
この破壊点伸び率は、熱可塑性樹脂の引張強度、例えば引張破壊呼び歪みの値が低くなればなるほど低くなる。特に、第二の熱可塑性樹脂の引張破壊呼び歪みは、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下であってよく、また5%以上、10%以上、又は15%以上であってよい。上記の引張破壊呼び歪みを有するものとして商業的に入手可能な熱可塑性樹脂を、本発明における第二の熱可塑性樹脂として用いることができる。このような第二の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂、並びにこれらの樹脂の少なくともいずれかを含む、イージーピールフィルムとして商業的に入手可能な樹脂フィルムを溶融して得た樹脂組成物等を用いることができる。第二の熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン系樹脂を、「第二のポリプロピレン系樹脂」と言及する。
【0047】
また、上記の破壊点伸び率を満足する第二の熱可塑性樹脂としては、単独では硬すぎて安定した製膜ができない熱可塑性樹脂を用いることもできる。このような熱可塑性樹脂としては、環状オレフィンコポリマー等を用いることができる。
【0048】
〈シーラント層〉
シーラント層は、プレススルー蓋材をブリスター容器にヒートシールさせるための随意の層である。この層は、内容物入りブリスターパックを得たときに、最も内容物側に位置することができる。
【0049】
シーラント層を構成する材料は、用いるブリスター容器の材料に応じて選択することができ、例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレンビニルアルコール、酸変性ポリオレフィン等を用いることができる。
【0050】
シーラント層は、フィルムの態様であってもよく、又はコーティングの態様であってもよい。
【0051】
シーラント層の厚さは、また10.0μm以下、8.0μm以下、5.0μm以下、又は3.0μm以下であることが、プレススルー性を阻害しない観点から好ましい。この厚さは、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1.0μm以上であってよい。
【0052】
シーラント層がフィルムの態様の場合には、ヒートシールにより、若しくは接着層を介して基材樹脂層に積層させてもよく、又は多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、基材樹脂層と共に成形及び積層をしてもよい。
【0053】
〈印刷層〉
印刷層は、表示、装飾等を目的とする随意の印刷層であってよい。印刷層は、随意の印刷手段により積層させることができる。
【0054】
印刷層は、プレススルー蓋材の表面に露出していないことが、耐擦過性の観点から好ましい。印刷層は、例えば、基材樹脂層とシーラント層との間、又は基材樹脂層とコート層との間の全部又は一部の領域に存在していてよい。
【0055】
〈コート層〉
コート層は、種々の機能を得ることができる随意の層である。コート層は、プレススルー蓋材の随意の位置に存在していてよく、例えば基材樹脂層のシーラント層と反対側に存在していてよい。
【0056】
コート層は、例えば印刷層を保護する保護コート層、耐熱性を向上させる耐熱コート層、バリア性を向上させるバリアコート層等であってよい。コート層を構成する材料は、コート層の目的に応じて適宜選択することができ、例えばOPニス等を用いることができる。
【0057】
コート層の厚さは、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であることが、本発明のプレススルー蓋材のプレススルー性を損なわない観点から好ましい。
【0058】
《内容物入りブリスターパック》
図2に示すように、本発明の内容物入りブリスターパック100は、
内容物30、
ポケット部22を有し、前記ポケット部22に前記内容物30を収容している、ブリスター容器20、及び
前記ブリスター容器20に接着されて前記内容物30を封止している、上記のプレススルー蓋材10
を有する。
【0059】
〈内容物〉
内容物は、ブリスター容器のポケット内に密封されている内容物である。かかる内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、衛生用品、医療機器、医療器具、電子部品等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬、試薬等を含む。
【0060】
〈ブリスター容器〉
ブリスター容器としては、ポケットを有するブリスター容器を用いることができる。
【0061】
ブリスター容器は、例えばブリスター容器用シートに、内容物を入れるためのポケットを形成することにより製造することができる。ポケットを成形する際の成形方法としては、平板式空圧成形法、プラグアシスト圧空成形法、ドラム式真空成型法等が挙げられる。
【0062】
単層のブリスター容器用シートは、基材層のみから構成されていてよい。複層のブリスター容器用シートは、基材層に加え、バリア層、機能層等を有していてよく、例えば基材層、バリア層及び機能層をこの順に有していてよい。隣り合う各層を貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法等が挙げられる。
【0063】
特に、ブリスター容器用シートは、蓋材側の層が、上記の第一又は第二の熱可塑性樹脂を含有していることが、蓋材とのヒートシール性の観点から好ましく、特に、ブリスター容器用シートが全体として、上記の第一又は第二の熱可塑性樹脂のうち、50質量%以上を占める樹脂を含有していること、特にこの樹脂から構成されていることが、蓋材と材料を揃え、それによってリサイクルを容易にする観点から好ましい。例えば、蓋材が、第一の熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン系樹脂を、50質量%以上含む場合には、ブリスター容器用シート全体が、このポリプロピレン系樹脂を含有していること、特にこのポリプロピレン系樹脂で構成されていることが好ましい。
【0064】
ブリスター容器用シートの厚さは、ブリスター容器としての適切な強度、コシ、バリア性等の観点から、例えば500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下とすることができ、また100μm以上、120μm、又は150μm以上とすることができる。
【0065】
(ブリスター容器用基材層)
ブリスター容器用基材層に用いられる樹脂としては、ブリスター容器用シートに適度なバリア性及び成形性を与える樹脂であれば特に制限されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6)、環状ポリオレフィン(COP、COC)、及びフッ素系樹脂(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン)等、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらは単層で用いても良いし、2層以上を積層して用いても良い。好ましくは、外部からの水分の浸入を防ぎ、防湿性に優れているものがよく、特にポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0066】
基材層の厚みは、バリア性を維持し、かつブリスターパック全体に強度等を与える観点から、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、また300μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0067】
(ブリスター容器用バリア層)
ブリスター容器用バリア層に用いられる材料としては、環状オレフィンポリマー、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のバリア性樹脂層、シリカ蒸着膜、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ蒸着膜等の無機物蒸着膜、塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、ポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜、及びこれらの組合せを挙げることができる。
【0068】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚みは、ブリスター容器用シートに適切な成形性とバリア性を与えるために、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であってよく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であってよい。
【0069】
バリア層としてバリア性樹脂層又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚みは、ブリスター容器用シートに適切な成形性とバリア性を与えるために、7μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、又は40μm以下であってよい。
【0070】
(他の層)
複層のブリスター容器用シートは、随意の他の層を有していてよい。他の層としては、例えば機能層、機能層上のスキン層、各層を接着させる接着層等が挙げられる。
【実施例0071】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
《プレススルー蓋材の作製》
〈実施例1〉
50質量部の第一の熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(PP1、引張破壊呼び歪み200%)及び50質量部の第二の熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(PP2、引張破壊呼び歪み20%)を溶融混錬し、キャストTダイ法により厚さ60μmのフィルムに製膜して、基材樹脂層からなる実施例1のプレススルー蓋材を得た。
【0072】
〈実施例2~17及び比較例1~8〉
基材樹脂層を構成する樹脂を表1~3に示すものに変更したことを除き、実施例1と同様にして、基材樹脂層からなる実施例2~17及び比較例1~5のプレススルー蓋材を得た。また、比較例6~8のプレススルー蓋材としては、表4に示す材料で構成されたフィルムを用いた。
【0073】
表1~3で言及している材料の詳細は以下のとおりである。
PE系EP:ポリエチレン系イージーピール樹脂組成物、引張破壊呼び歪み8%
COC:環状オレフィンコポリマー
OPP:二軸延伸ポリプロピレン
AL:アルミニウム
OPS:二軸延伸ポリスチレン
【0074】
なお、PE系PEを用いた比較例4及びCOCを用いた比較例5については、安定した製膜ができなかったことから、以下の引張特性の評価は行っていないため、表3では、これらの評価を「測定不可」と言及している。
【0075】
《引張特性の測定》
得られたプレススルー蓋材を、これを幅15mm、長さ100mmの短冊状に切り出し、これを用いて、引張速度300mm/min、支点間距離50mmの条件で引張試験を行って、引張特性を評価した。なお、COCを用いた比較例5については、
【0076】
《評価》
〈プレススルー性〉
CPP250μm(スーパーホイルE0025、三菱ケミカル株式会社)シートに、錠剤Φ8mm(エビオス錠、アサヒグループ食品株式会社)を入れて、作製した用意したプレススルー蓋材サンプルでシールをした。シールはヒートシール又は接着剤を使用した。シート側のポケット部を指で押圧し、錠剤を取り出せるかを確認した。同様の操作を5回行った。評価基準は以下のとおりである。
A:5回全て錠剤が取り出せた。
B:5回のうち少なくとも1回は錠剤が取り出せた。
C:5回全て錠剤が取り出せなかった。
【0077】
〈加工性〉
プレススルー蓋材の作製中に、フィルムの状態を目視により確認して、加工性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:偏肉による蛇行や撓みなく、安定して加工可能であった。
B:偏肉による蛇行や撓みがあり、加工が不安定であった。
【0078】
〈融着性〉
融着性の評価基準は以下のとおりである。
A:ブリスター容器と融着した。
B:ブリスター容器と融着しなかった。
【0079】
〈リサイクル性〉
リサイクル性の評価基準は以下のとおりである。
A:蓋材を構成する材料と、ブリスター容器を構成する材料とが50質量%以上重複していた。
B:蓋材を構成する材料が樹脂ではあったが、蓋材を構成する材料と、ブリスター容器を構成する材料との重複は50質量%未満であった。
C:蓋材を構成する材料が樹脂ではなかった。
【0080】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1~表4に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表1から、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であるPP1、並びにMD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であるPP2を含有しており、PP2の含有率が15~80質量%である、実施例1~3のプレススルー蓋材は、プレススルー性、加工性、融着性、及びリサイクル性のいずれも良好であったことが理解できよう。
【0086】
また、PE系EPについては、製膜時に破断した結果引張試験が行えなかったことから、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率は、当然にいずれも50%以下であったことが認識される。COCについては、硬すぎて安定して製膜できなかった結果引張試験が行えなかったが、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率は、引張試験を行うまでもなく、当然にいずれも50%以下であると認識できるものであった。
【0087】
実際に、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率のいずれかが、80%以上であるPP、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率が測定できなかったPE系EP又はCOCを含有しており、PE系EP又はCOCの含有率が、15~80質量%である、実施例4~17のプレススルー蓋材は、プレススルー性、加工性、融着性、及びリサイクル性のいずれも良好であった。このことからも、PE系EP及びCOCは、MD方向及びTD方向における破壊点伸び率が、いずれも50%以下であるものと同一視できることが理解できよう。
【0088】
中でも、最大点荷重が65N/15mm以下であり、かつ破壊点伸び率が25%以下である、実施例1~2、4~7及び10~16は、プレススルー性が特に良好であった。
【符号の説明】
【0089】
10 プレススルー蓋材
12 基材樹脂層
14 シーラント層
16 印刷層
18 コート層
20 ブリスター容器
22 ポケット部
30 内容物
100 内容物入りブリスターパック
図1
図2