(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067221
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】表面プロフィール測定方法、高炉内装入物のプロフィール測定方法および銑鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G01B15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177117
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】上岡 壮平
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA04
2F067AA53
2F067BB05
2F067EE04
2F067HH02
2F067JJ02
2F067KK08
2F067NN05
2F067NN09
2F067NN10
2F067RR12
(57)【要約】
【課題】粉塵環境下での装入物の表面形状を把握するプロフィールを測定できる技術を提案する。
【解決手段】測定対象の表面プロフィールを測定する方法であって、ミリ波を前記測定対象の基準軸を含む平面内で走査するにあたり、上面視でミリ波送受信部からの距離に応じて当該測定点における測定信号の積算時間を決定し、決定した測定信号の積算時間を用いて測定点ごとに、ミリ波送受信部からの距離データおよび走査角度データを得て、得た距離データおよび走査角度データに基づいて座標変換により、前記測定対象の表面プロフィールを演算する、表面プロフィール測定方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面プロフィールを測定する方法であって、
ミリ波を前記測定対象の基準軸を含む平面内で走査するにあたり、上面視でミリ波送受信部からの距離に応じて当該測定点における測定信号の積算時間を決定し、
決定した測定信号の積算時間を用いて測定点ごとに、ミリ波送受信部からの距離データおよび走査角度データを得て、
得た距離データおよび走査角度データに基づいて座標変換により、前記測定対象の表面プロフィールを演算する、
表面プロフィール測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面プロフィール測定方法を用いて、高炉の炉頂部から高炉内装入物のプロフィールを測定する方法であって、
前記基準軸を高炉の中心軸とし、前記平面を鉛直面とし、前記座標変換により、前記高炉内装入物の表面プロフィールを演算する、
高炉内装入物のプロフィール測定方法。
【請求項3】
前記ミリ波による走査は、前記高炉内の装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に行う、
請求項2に記載の高炉内装入物のプロフィール測定方法。
【請求項4】
原料装入中の炉内粉塵環境下で高炉内装入物のプロフィールを測定する、
請求項2または3に記載の高炉内装入物のプロフィール測定方法。
【請求項5】
上面視でミリ波送受信部から測定点までの距離に応じて前記積算時間を長く設定する、
請求項2または3に記載の高炉内装入物のプロフィール測定方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の高炉内装入物のプロフィール測定方法を使用して、高炉内装入物のプロフィールを測定し、測定したプロフィールに基づき、装入物分布の制御をしながら、高炉により銑鉄を製造する、
銑鉄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料装入中に分配シュートの旋回毎に高炉内装入物の表面形状を測定する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では炉頂から塊鉱石、焼結鉱、塊コークスと副原料の装入を行う。炉の下部に設置された羽口から、熱風炉で加熱された高温の空気を吹き込み、羽口前でコークスや補助燃料を燃焼して炉内の溶融物の温度を1500℃以上に保持する。また羽口前で生成した2000℃以上の高温還元ガスが炉内を上昇する過程で、装入物への熱交換と鉄鉱石の還元・溶融が行われる。このように高炉内部では装入物とガスが向流し予熱、還元、溶融などの反応が進行している。これら一連の反応の進行状態が高炉全体として効率よく制御されることで、高炉操業の安定を図ることができる。そのためにはガスの円滑な通気と、装入物の円滑な降下、つまり、荷下がりが保たれていることが基本となる。通気が制御されておらず、ガスの局所的な吹抜けや局部的な圧力変動が生じると、装入物とガスの間の熱交換や還元の進行が不十分となり炉熱に変動が生じる。ひいては、高炉の安定操業が維持できなくなる。そのため高炉の安定操業のためには適正な装入物分布を保ち、良好な通気を確保することが重要である。
【0003】
高炉の炉頂から、装入物が炉内に装入されたときに形成される表面形状を装入物分布という。装入物分布、すなわち鉱石、コークスが装入時に径方向及び円周方向でどのように分布するかということは、炉内を上昇するガス流れ分布に影響する。装入物分布を制御することで、ガス流れ分布を制御し、ガスの還元および熱伝達上の有効利用並びに通気性を確保することができる。このために、装入物分布制御は高炉操業において非常に重要である。特にコークスは高炉内で装入物を支えて適切な空間を作り、還元ガスおよび溶融物の流れを円滑にする役割がある。銑鉄1トンを生産するのに必要なコークス使用量をコークス比という。銑鉄コスト低減のためには、コークス使用量を極力少なくすることが望まれる。そのためコークス比をできるだけ少なくし、かつ炉内の通気性を保つような装入物分布制御を行うことができれば、安定操業を保ちながらコスト削減を行うことができる。
【0004】
炉頂のバンカー内の原料は、分配シュートにより炉内に装入される。この際に分配シュートの傾動角度、旋回数、旋回速度を変化させることにより、各原料を狙った箇所に狙った量を堆積させることが可能となる。これにより鉱石・コークスの層厚比や鉱石層へのコークスの混合状態を作り込むことで、高炉内のガス流れを安定化し、還元反応や熱交換を最適化することを装入物分布制御と呼んでいる。装入物分布制御は炉内のガス流れの制御を行う上で重要な技術である。そして装入物分布制御を適切に実施するためには、装入した原料の堆積形状を正確に把握することが重要である。
【0005】
図1に示すように、従来原料の堆積形状を測定する手段として炉内に実際にランスを挿入して、装入物表面プロフィールを測定するランス式PFM(プロフィールメータ)20が用いられていた。炉体の炉口部側面から、高炉1の軸心Cに向け、マイクロ波距離計を備えたランスを挿入し、マイクロ波を高炉1内の装入物2へ向けて発信することで、高炉1内の装入物2の表面、つまり原料面2Aまでの距離を測定する方式が行われてきた。
【0006】
また、マイクロ波の長所を維持し、原料の装入を長時間停止させることなくレベル測定が行える測定方法が、例えば特許文献1~3に記載されている。これらは、マイクロ波の送受信が行えるマイクロ波距離計と、マイクロ波放射方向を走査する走査駆動装置とを備えたプロフィール測定装置を用いている。そして、原料装入装置よりも上方の高炉の炉頂部にその装置を設置し、マイクロ波を高炉内に走査させ、マイクロ波距離計から入力された距離データおよび走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、データ処理部で高炉内装入物の表面プロフィールを演算するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-174371号公報
【特許文献2】特開2011-2241号公報
【特許文献3】特開2015-25710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような課題があった。
ランス式PFM20による装入物表面プロフィールの測定は炉体内の高濃度の粉塵中でも、マイクロ波の減衰が小さいので距離測定が可能であるという利点がある。しかし、測定中は原料の装入を待機させる必要があり、また原料の装入時には計測ランスを炉体の外へ退避させなければならないため、一日に数回程度しか測定できない。また、測定時間が長時間になるため、測定中の原料降下量が大きく、測定後の原料レベルの回復に時間がかかるという問題がある。
【0009】
原料装入時は粉塵が撒き上がり、高炉炉内が粉塵環境となるため、特許文献1~3に記載のプロフィール測定方法では原料装入を待機させたタイミングで測定が行う必要がある。そのため原料装入を待機させる時間ができるため、生産効率が低下する。また測定中の原料降下量が大きく、測定後の原料レベルの回復に時間がかかることから、測定回数に制約が生じる。そのため、原料装入中にリアルタイムでプロフィール測定を実施できる技術が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、原料装入を待機させることなく、原料装入中に分配シュートの旋回毎にリアルタイムに炉内の直径方向のプロフィール測定を実施できる技術を提案する。加えて、その技術を用いた銑鉄の製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる表面プロフィール測定方法は、測定対象の表面プロフィールを測定する方法であって、ミリ波を前記測定対象の基準軸を含む平面内で走査するにあたり、上面視でミリ波送受信部からの距離に応じて当該測定点における測定信号の積算時間を決定し、決定した測定信号の積算時間を用いて測定点ごとに、ミリ波送受信部からの距離データおよび走査角度データを得て、得た距離データおよび走査角度データに基づいて座標変換により、前記測定対象の表面プロフィールを演算することを特徴とする。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法は、上記表面プロフィール測定方法を用いて、高炉の炉頂部から高炉内装入物のプロフィールを測定する方法であって、前記基準軸を高炉の中心軸とし、前記平面を鉛直面とし、前記座標変換により、前記高炉内装入物の表面プロフィールを演算することを特徴とする。
【0013】
なお、本発明にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法は、
(a)前記ミリ波による走査は、前記高炉内の装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に行うこと、
(b)原料装入中の炉内粉塵環境下で高炉内装入物のプロフィールを測定すること、
(c)上面視でミリ波送受信部から測定点までの距離に応じて前記積算時間を長く設定すること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0014】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる銑鉄の製造方法は、上記高炉内装入物のプロフィール測定方法を使用して、高炉内装入物のプロフィールを測定し、測定したプロフィールに基づき、装入物分布の制御をしながら、高炉により銑鉄を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、上面視でプロフィールメータ(ミリ波送受信部)から装入物表面までの距離に応じて測定信号の積算時間を決定する。それにより、原料面からの信号反射強度を、粉塵の信号強度よりも大きな強度で確保することができる。もって、原料装入時に分配シュートの旋回毎にリアルタイムで測定することができるようになった。さらに、旋回毎の原料の堆積形状が詳細に把握できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法に用いて好適な装置および従来の装置を模式的に示す高炉炉口近傍の縦断面図であり、(b)はその模式斜視図である。
【
図2】上記実施形態に用いるプロフィールメータの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】上記実施形態にかかる分配シュートとミリ波の走査状況の関係を表す模式図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図である。
【
図4】従来の高炉装入物のプロフィール測定例を示すグラフである。
【
図5】上記実施形態にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法の考え方を表すグラフであって、(a)は測定信号の積算時間が短い場合を表し、(b)は測定信号の積算時間が長い場合を表す。
【
図6】上記実施形態にかかる測定信号の積算時間の一例を縦断面図に示す図である。
【
図7】上記実施形態を適用して測定した高炉装入物のプロフィール測定例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は高炉1の炉頂部にプロフィール測定装置を設置した例を示し、
図1(b)はその模式斜視図を示す。鉄鉱石やコークスなどの装入物2が、分配シュート3を通って炉内に装入される。本実施形態では、高炉1の炉内装入物2に対しプロフィールメータ10を用い、高炉1の中心軸Cを含む鉛直面S内でミリ波Mを走査することにより、高炉1の水平断面で直径方向について原料面2Aの形状を測定する。ミリ波はマイクロ波よりも波長が短く、指向性が高いので精度よく距離を計測できる。
図1(b)に示すように、鉛直面Sは基準軸としての高炉1の中心軸Cおよびプロフィールメータ10のミリ波送受信部を含む平面として定義される。
【0019】
図2はミリ波を用いたプロフィールメータ10の構成を示す模式図である。プロフィールメータ10は、ミリ波Mの送受信部11およびアンテナと反射板12、導波管、反射板駆動装置を有する。アンテナ及び反射板12は圧力容器内に収納されている。圧力容器の炉内15側には仕切弁13、14が二重に設置されており、それぞれの仕切弁13、14の駆動装置も設けられている。測定時には仕切弁がそれぞれ開くこと(O側)により、炉内15への開口部が生じミリ波(送信波16)を照射することが可能となる。また、上側仕切り板13および下側仕切り板14を閉じること(C側)により炉内とプロフィールメータ10とを切り離すことができる。照射されたミリ波(送信波16)は高炉装入物表面で反射し、この反射波17を、ミリ波送受信部11にて受信して検出する。検出後にミリ波の照射から受信までの間の周波数の変化分ΔFから、アンテナから高炉1の装入物表面2Aまでのミリ波の往復時間ΔTが求められ、測定対象までの距離が算出される。この測定方法は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式(周波数変調連続波方式)と呼ばれる。FMCW方式では、ミリ波(送信波16)を発射する電気信号と、装入物2表面からの反射波17を受信して得られる電気信号とをミキシングして測定する。
【0020】
本実施形態の一実施態様は、高炉1の炉頂部に、
図2に示すプロフィールメータ10を設置して実施する高炉内装入物のプロフィール測定方法である。本実施形態において、プロフィールメータ10が走査させるミリ波Mによる、複数の測定点Pにおける測定信号の各積算時間を、上面視で測定点Pのプロフィールメータ10からの距離に応じて予め決定しておく。たとえば、炉中心Cを基準として、プロフィールメータ10が設置されている側(近半径)の積算時間と、その反対側(遠半径)の積算時間とを異なる時間とし、2段階に設定する。または、それぞれの側をさらに2分割して4段階に設定しても良いし、さらに複数段階で設定しても良い。積算時間を距離に比例することもできる。また、高炉1の炉内の粉塵環境を別途監視カメラで撮影し、粉塵の程度によって、本実施形態の適用有無や測定信号の積算時間の長さ、パターンを決定してもよい。
【0021】
本実施形態では、上面視でプロフィールメータ10の設置位置から遠い位置ほど、測定信号の積算時間を長く設定することが好ましい。より遠い位置ではより長い測定信号の積算時間が設定されることで、積算時間内において略同距離から信号の反射がある高炉装入物2表面プロフィールの信号をより多く積算させることができる。それにより、多様な距離から反射がある粉塵の信号強度よりも大きな信号強度を確保することができる。
【0022】
本実施形態に用いるプロフィールメータ10は、高炉1内の装入物2の表面において、高炉の中心軸Cを通る鉛直面S内でミリ波を走査させる。プロフィールメータ10は、予め決定した測定信号の積算時間で複数の測定点Pにおいて装入物表面までの距離データを測定する。プロフィールメータ10は、距離データの測定時のミリ波の走査角度データに基づいて距離データを座標変換して、高炉内装入物の表面プロフィールを演算する。
【0023】
プロフィールメータ10から装入物表面2Aまでの距離によって測定信号の積算時間を決定することにより、原料面2Aからの信号反射強度を積算し、粉塵の信号強度よりも大きな強度を確保することができる。したがって、原料装入時に分配シュート3の旋回毎にリアルタイムで粉塵の影響なく高炉内装入物のプロフィールが測定することができるようになった。これにより、本実施形態の測定方法によれば、分配シュート3の旋回毎の原料の堆積形状が詳細に把握できる。もって、装入物2の分布制御に役立てることができる。
【0024】
図3は分配シュート3とプロフィールメータ10から照射されたミリ波Mとの関係に関する模式図を示す。
図3(a)は縦断面図を表し、
図3(b)は上面図を表す。分配シュート3がミリ波Mと干渉することを防ぐため、分配シュート3の旋回角度によってプロフィール測定タイミングを設定することが好ましい。そうすることで、分配シュート3旋回中にミリ波が干渉することなくプロフィール測定を行うことができる。具体的には、分配シュート3が右回転、又は左回転している際、半周の間に反射板12の角度を動かしてミリ波Mで走査し、もう半周の間で反射板12の角度を戻す操作法が例示される。ミリ波Mの走査開始および走査終了時点は、上面視での分配シュート3の回転角度が高炉1の中心軸Cに対する中心角でプロフィールメータ10から30°以上離れていることが好ましく、35°以上離れていることがさらに好ましい。一例として、
図3に示すように、プロフィールメータ10が上面視で高炉の外壁円周上で中心角が9°の位置に設置されている場合、分配シュート3が同様に9°の角度になっているときにミリ波Mを出すと分配シュートと干渉してしまう。したがって、分配シュート3が干渉しない角度のときに、ミリ波Mを出す。つまり、右回転の場合は、分配シュートが50°の角度のとき(4A)に、左回転の場合は、分配シュート3が330°の角度のとき(4B)にミリ波Mの送信を開始するとよい。ミリ波Mの走査は、高炉1の中心軸Cを挟んで対角の内壁にあたる遠地点PBから開始し、プロフィールメータ10側の内壁にあたる近地点PAで終了することが好ましい。先述した各測定点あたりの積算時間の合計と、反射板12が元の位置に戻るまでの一連の動作が、分配シュート3の1回転の時間以内に収まっていることが好ましい。
【0025】
本実施形態にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法では、高炉上部にプロフィールメータ10を設置し、測定信号の積算時間の調整を行う。それにより、粉塵環境下の原料装入中においても、原料装入物表面形状の測定を実施することができる。そのため、原料装入について一切待機することなく、正確な装入物堆積形状を把握することができ、装入物分布制御の高精度化に寄与する。高炉1の装入物分布制御は、分配シュート3の回転角度に応じて装入物の量を変更したり、旋回速度を変更したり、装入物の種類ごとの装入量を変更したりすることができる。これにより、コークス比の低減や炉内通気の安定化に効果があり、高炉のさらなる安定操業へ貢献する。
【0026】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、第1実施形態のプロフィール測定装置を実装した高炉による、銑鉄の製造方法である。具体的には、上記高炉内装入物のプロフィール測定方法を使用して、高炉内装入物のプロフィールを測定し、測定したプロフィールに基づき、装入物分布の制御をしながら、高炉により銑鉄を製造する方法である。この製造方法によれば、原料装入時における分配シュートの旋回毎のリアルタイムな測定により、旋回毎の原料の堆積形状を詳細に把握しながら、装入物分布を制御し、効率よく銑鉄の製造プロセスを実行することができる。これにより、安定した操業で銑鉄を製造することができる。
【0027】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、プロフィールの測定対象を高炉内装入物に限定せず、表面プロフィールを測定しうる対象物一般を対象としたプロフィール測定方法である。
【0028】
本実施形態は、測定対象の表面プロフィールを測定する方法であって、ミリ波を前記測定対象の基準軸を含む平面内で走査するにあたり、上面視でミリ波送受信部からの距離に応じて当該測定点における測定信号の積算時間を決定する。次に、決定した測定信号の積算時間を用いて測定点ごとに、ミリ波送受信部からの距離データおよび走査角度データを取得する。次に、当該取得した距離データおよび走査角度データに基づいて座標変換により、測定対象の表面プロフィールを演算する。
【0029】
第1実施形態においては、高炉内装入物を対象としたプロフィール測定方法を説明したが、測定対象は高炉内装入物の表面に限定されず、上述のように一般に適用可能である。特に、粉塵環境下での装入物の表面形状を把握する必要のあるプロセスへの適用が好適である。
【実施例0030】
図4は
図3に示す構成のプロフィールメータ10の設置条件において、従来用いていた一定の積算時間ti、つまり各測定点あたりti=2.5msで測定信号を積算して高炉内装入物のプロフィールを測定した結果である。ここで、炉中心Cを基準にプロフィールメータ10に近い近半径側RAと遠い遠半径側RBに分けて考える。
図4中の横軸について、近半径側RAは正の値で示し、遠半径側RBは負の値で示す。縦軸に地上面(GL)からの高さをとり、コークスを装入時の分配シュート3の旋回ごとに23回の装入物プロフィール測定結果をプロットした。
図4では、炉中心Cを基準として遠半径側炉壁PBに行くほど、原料装入中に撒き上がる粉塵の影響で測定不良が発生している。その理由は、
図6に示す照射したミリ波Mの原料面からの反射波17Aが、粉塵からの反射波17Bの強度より小さいためと考えられる。
【0031】
図5は上記実施形態にかかる高炉内装入物のプロフィール測定方法の内容を説明するための図である。
図5(a)は、たとえば、積算時間ti=2.5msでの反射信号の強度と反射距離の関係を表す。
図5(b)は、たとえば、積算時間ti=50msでの反射信号の強度と反射距離の関係を表す。プロフィールメータ10では複数の距離から反射信号が得られた場合、そのうち最も信号強度の強い反射信号の距離を測定点として認識する。信号強度の生データを確認したところ、プロフィールメータ10から遠い遠半径側RBについては原料面から反射波17Aの信号強度が、近半径側RAよりも比較的弱いことがわかった。遠半径側RBでは、粉塵からの反射波17Bの信号強度が、原料面からの反射波17Aの信号強度よりも強いために、粉塵からの反射波17Aを測定結果として判定している。その結果、
図4のような測定結果となる。
【0032】
このことから遠半径側RBの測定信号の積算時間tiを長くする変更を実施した。原料面2Aは測定中の時間スケール、つまり1s未満では大きく動かないため、測定信号の積算時間tiを長く設定することとした。それにより原料面からの反射波17Aの信号をほぼ同一距離で多く積算することができる。対して粉塵からの反射波17Bの信号については、様々な距離から反射するため同じ距離からの信号の積算量は少ない。そして測定信号の積算時間tiを長くとることにより、原料面からの反射波17Aの信号強度が粉塵からの反射波17Bの信号強度に勝ることができる(
図5(b))。
【0033】
図6は、本実施例における具体的な測定信号の積算時間tiの設定状況を示す図である。本実施例においては、
図6に示すように、遠半径側RBについて、1点あたりの積算時間tiを2.5msから50msに変更した。1点当たりの測定時間を50msとした理由は、分配シュート3旋回内に
図3に示すPBからPAまでの測定を終え、再度測定開始位置(PB)に戻ることを考慮した場合の測定点3点当たりの最大の積算時間を選んだ。
【0034】
図7は、上記で設定した測定信号の積算時間tiを用いて高炉内装入物のプロフィールを測定した結果である。
図7の横軸および縦軸は
図4と同様である。コークス装入時の分配シュート3の旋回ごとに23回の装入物プロフィール測定結果をプロットした。本実施例では粉塵からの反射波17Bではなく、原料面からの反射波17Aを正確に捉えることができた。高炉装入物の表面プロフィール形状を正しく測定できていることがわかる。このように本実施形態の方法の適用により、原料装入中の粉塵環境下においても高炉装入物の表面プロフィール形状を正しく測定することが可能となった。
本発明の高炉内装入物のプロフィール測定方法によれば、原料装入を待機させることなく、原料装入中に分配シュートの旋回毎にリアルタイムに炉内の直径方向のプロフィール測定を測定できる。旋回毎の原料の堆積形状が詳細に把握できるようになり、装入物分布制御の高精度化に寄与して、コークス比の低減や炉内通気の安定化に効果があり、高炉のさらなる安定操業へ貢献できるので、産業上有用である。特に、高炉にかかわらず粉塵環境下での装入物の表面形状を把握する必要のあるプロセスに適用して好適である。