(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067225
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/20 20180101AFI20240510BHJP
F21S 41/19 20180101ALI20240510BHJP
F21S 43/19 20180101ALI20240510BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20240510BHJP
F21V 3/06 20180101ALI20240510BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20240510BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240510BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240510BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20240510BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20240510BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/19
F21S43/19
F21S45/10
F21V3/06 130
F21S43/20
F21W102:13
F21W103:20
F21W103:55
F21W103:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177123
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】松井 洸樹
(72)【発明者】
【氏名】福與 翼
(57)【要約】
【課題】溶損を防止し、コストの増大を抑制しつつ、複数種類の光源を有する車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具1はアウタレンズと、前照灯と、LiDARと、赤外線センサのいずれか一つを少なくとも有する第一光学部品群と、DRL、TSL、路面描画装置のいずれか一つを少なくとも有する第二光学部品群と、を有する車両用灯具であって、前記アウタレンズはフォトクロミック層が設けられる第一領域と、フォトクロミック層が設けられない第二領域とを有し、前記第一光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第一領域と重なる位置に配置され、前記第二光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第二領域と重なる位置に配置される、車両用灯具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタレンズと、
前照灯と、LiDARと、赤外線センサのいずれか一つを少なくとも有する第一光学部品群と、
DRL、ターンシグナルランプ、路面描画装置のいずれか一つを少なくとも有する第二光学部品群と、を有する車両用灯具であって、
前記アウタレンズはフォトクロミック層が設けられる第一領域と、フォトクロミック層が設けられない第二領域とを有し、
前記第一光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第一領域と重なる位置に配置され、
前記第二光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第二領域と重なる位置に配置される、
車両用灯具。
【請求項2】
前記第一領域は、前記第二領域よりも面積が大きい、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記アウタレンズとともに灯室を構成するハウジングを有し、
前記灯室は前記第一光学部品群が配置される第一灯室と、前記第二光学部品群が配置される第二灯室とにエクステンションによって区切られている、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第一領域は紫外線によって発色するフォトクロミック化合物を有する、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第二領域は前記第一領域に対して、前記車両用灯具を車両に取り付けた際の下方に位置している、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第二領域の外周部の少なくとも一部は、前記車両用灯具の外周部の少なくとも一部と重複する、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、DRL(DaytimeRunning Lamp)等昼間も点灯する光源を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽光が車両用灯具の内部に入射すると、灯室内の部品に太陽光が集光し、溶損を起こす可能性がある。
【0005】
そこで本開示は、溶損が抑制された、複数種類の光学部品を有する車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
アウタレンズと、
前照灯と、LiDARと、赤外線センサのいずれか一つを少なくとも有する第一光学部品群と、
DRL、ターンシグナルランプ、路面描画装置のいずれか一つを少なくとも有する第二光学部品群と、を有し、
前記アウタレンズはフォトクロミック層が設けられる第一領域と、フォトクロミック層が設けられない第二領域とを有し、
前記第一光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第一領域と重なる位置に配置され、
前記第二光学部品群は前記車両用灯具の正面視において前記第二領域と重なる位置に配置される。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、溶損を防止し、コストの増大を抑制しつつ、複数種類の光源を有する車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る車両用灯具の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1における第一領域のA-A´線における断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る車両用灯具に用いられるLED光源の波長と放射照度の関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る車両用灯具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0010】
なお、
図1等に示すU、D、F、B、R、Lは車両用灯具1における方向を示すものであり、Uは上方、Dは下方、Fは前方、Bは後方、Rは右方、Lは左方である。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る車両用灯具1の一例を示す断面図である。
【0012】
本実施形態においては、灯具として、車両に搭載される車両用灯具1を説明する。
図1に示したように、車両用灯具1は、アウタレンズ2と、ハウジング3と、第一光学部品群12と、第二光学部品群22と、エクステンション30と、を有している。アウタレンズ2とハウジング3により灯室4が構成されている。灯室4はエクステンション30によって、第一灯室5と第二灯室6とに仕切られている。第一灯室5の内部に第一光学部品群12が設けられ、第二灯室6の内部に第二光学部品群22が設けられている。
【0013】
第一光学部品群12は前照灯13と、LiDAR14(Light Detection and Ranging)と、赤外線センサの少なくとも一つを有する。第一光学部品群12は昼間に使用されない、もしくは可視光を出射および検知することが無い光学部品が属する群である。なお、「光学部品」とは、可視光、赤外線、紫外線を含む光を発する光出射部品、および、可視光、赤外線、紫外線を含む光を検出する各種センサ部品を含む概念である。
図1に示す実施形態においては、第一光学部品群12は前照灯13とLiDAR14を有している。
【0014】
図示した前照灯13は、インナレンズ13a、リフレクタ13b、可視光を発する光源13c、ブラケット13dを有している。前照灯13は、光源13cから出射された光をリフレクタ13bによって反射し、インナレンズ13aを通して車両用灯具1の外部に照射可能に構成されている。前照灯13はブラケット13dによってハウジング3に固定されている。前照灯13はロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンの両方を照射可能に構成されている。なお前照灯13は複数設けられてもよく、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンは複数の別体の前照灯によって照射されてもよい。
【0015】
LiDAR14は、例えば、赤外光を出射したタイミングから、該赤外光が対象物によって反射した戻り赤外光を検出するまでの時間に基づいて、対象物までの距離情報を取得できる。また、赤外光の出射方向を変化させながら戻り赤外光が得られた方向を距離情報と関連付けて集積することにより、対象物の形状に係る情報を取得できる。すなわち、LiDARセンサ16は、赤外光を用いて車両の少なくとも前方を含む領域の情報を取得する装置である。
【0016】
第二光学部品群22はDRL、ターンシグナルランプ、路面描画装置のいずれか一つを少なくとも有する。第二光学部品群22は、昼間および夜間に使用する光学部品が属する群である。
図1に示す実施形態においては、第二光学部品群22はDRL23を有している。路面描画装置とは、昼間や夜間に使用され、自車両の周囲の路面に画像を投射し、周囲の交通他者とコミュニケーションを図るための装置である。
【0017】
図示したDRL23は、他車両のドライバーや歩行者に自車両の存在をより明確に視認させるために、昼間時および夜間時に点灯される灯具である。DRLはインナレンズ23a、リフレクタ23b、可視光を発する光源23c、ブラケット23dを有している。DRL23は光源23cから出射された光をリフレクタ23bによって反射し、インナレンズ23aを通して車両用灯具1の外部に照射可能に構成されている。
【0018】
アウタレンズ2は第一領域11と第二領域21とを有する。図示した例では、車両用灯具1の正面視で、おおよそ、上下方向にアウタレンズ2を3分割した時の上部および中部の領域に第一領域11が設けられ、下部の領域に第二領域21が設けられている。
アウタレンズ2は二色成形によって形成されていてもよい。第一領域11は
図2に示すようにハードコート層11aと、フォトクロミック層11bと、PCやPMMA等の透明部材11cで構成される。透明部材11c、フォトクロミック層11b、ハードコート層11aは、この順に灯室から外部に向かって積層されている。
フォトクロミック層11bは通常時は透明な層であるが、太陽光に含まれる特定の波長の光に晒されることよって発色し、可視光を透過不可能とする層である。本実施形態において、フォトクロミック層11bは特定の波長の光に反応して発色するフォトクロミック化合物を有している。フォトクロミック化合物は例えば米国特許第7166357号に記載のような化合物が用いられる。本実施形態において、フォトクロミック層11bは、夜間に透明で可視光を透過させ、昼間に発色し可視光を透過させない。
第二領域21はハードコート層とPCやPMMA等で構成される透明部材層で構成される。第二領域21は太陽光に晒された場合においても発色しない。
【0019】
図3は本開示における前照灯13の光源13cやDRL23の光源23cに用いられるLEDの波長と放射照度の関係を示す図である。本実施形態におけるフォトクロミック化合物は紫外線に反応して発色することが望ましく、
図4において破線で示した領域にあたる380~410nmの波長の光に反応して発色することがより望ましい。また、フォトクロミック化合物は、第一光学部品群12から出射される光に反応して発色しないことが望ましい。また、フォトクロミック化合物は発色時に、波長420~830nmの可視光を遮光することが好ましい。
【0020】
次に、
図4を用いて、本開示に係る前照灯13の態様について詳述する。
図4は、本開示の実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
図4に示す車両用灯具1において、第一領域11は範囲Aの部分、第二領域21は範囲Bの部分である。
なお、
図4に示す例においては第一灯室5に赤外線センサ15、第二灯室6にターンシグナルランプが設けられている。
【0021】
本実施形態において第一領域11は、フォトクロミック層11bを有するため、例えば昼間、太陽光に含まれる紫外線に晒されることによって発色する。発色する色はフォトクロミック層11bが有する化合物によって決定される。例えば、車両の車体の色に合わせた発色となることが望ましい。
図4に示したように、第一光学部品群12は車両用灯具1の正面視において第一領域11と重なる位置に配置されている。また、第二光学部品群22は車両用灯具1の正面視において第二領域21と重なる位置に配置されている。
第一領域11が発色した場合、第一領域11と重なる位置に配置されている第一光学部品群12は車両用灯具1の外部から視認ができなくなる。そのため、仮に第一領域11が発色した状態で前照灯13を点灯したとしても前照灯13から出射される光は車両用灯具1の外部から視認不可能となる。
【0022】
前述した通り、フォトクロミック層11bは特定の波長の光に晒されることよって可視光を透過不可能に発色する層である。そのため、可視光と比べ波長が長い赤外光(赤外線)や、可視光と比べ波長が短い紫外光(紫外線)は透過することができる。換言すると、赤外線を用いる赤外線センサや、赤外線等を用いるLiDARは、第一領域11と重なる位置に配置されていたとしても、第一領域11の発色による使用上の問題は発生しない。
【0023】
一方、第一領域11は、例えば夜間等の紫外線に晒されない状態では、フォトクロミック層11bが発色しない。第一領域11が発色しない場合、前述したようにフォトクロミック層11bは通常時において透明な層であるため、夜間等の紫外線に晒されない状態では可視光を透過可能である。そのため、第一領域11と重なる位置に配置されている前照灯13は夜間において車両用灯具1の外に光を出射可能である。
【0024】
第二領域21にはフォトクロミック層11bが設けられていないため、例えば第二領域21は昼間、紫外線等の光に晒されたとしても変色することは無い。
図4に示す例において第二領域21と重なる位置には、第二光学部品群22が配置されている。
図4に示す例においては、第二光学部品群22としてDRL23とTSL24が設けられている。DRL23とTSL24は可視光を出射し、昼間であっても使用する光学部品である。そのため、第二領域21にはフォトクロミック層が設けられない。
【0025】
ところで、従来、車両用灯具のアウタレンズは透明部材で構成されるため、灯室内の部品に太陽光が集光して溶損が生じるおそれがあった。
【0026】
上記課題はフォトクロミック層を使うことで解決が図られている。しかし、アウタレンズの全面にフォトクロミック層を設けると、使用するフォトクロミック化合物の量が多くなり、コストが嵩む。
【0027】
また、昨今の車両用灯具においては、DRLと前照灯など複数の機能の異なる光源を車両用灯具内に配置することが求められている。この場合、前述のようにアウタレンズの全面をフォトクロミック層とすると、DRLから出射される光を遮ることとなってしまうため、そのような灯具は実現することができない。
【0028】
そこで発明者は、車両用灯具1内に配置される光学部品を、フォトクロミック層11bによる発色によって使用に支障をきたす第一光学部品群12と、フォトクロミック層11bによる発色によっても使用に支障をきたさない第二光学部品群22に分けて配置することを考えた。具体的には、フォトクロミック層11bによる発色によっても使用に支障をきたさない第二光学部品群22を、フォトクロミック層11bを有するアウタレンズ2と重なる位置に配置し、フォトクロミック層11bによる発色によって使用に支障をきたす第一光学部品群12を、フォトクロミック層を有さないアウタレンズと重なる位置に配置することを検討した。
これにより、灯室4に配置される全ての光学部品を支障なく使用可能な状態としつつ、第一光学部品群12を昼間の紫外線から保護することができる。また、部分的にフォトクロミック層11bを設けるため、コストの上昇を抑えることができる。これにより、溶損を防止しつつ、コストの増大が抑制された、複数種類の光学部品を有する車両用灯具1が提供される。
また、昼間に車両用灯具1を見ると、アウタレンズ2に発色している部分と透明な部分とが混在しており、斬新な印象を与えることができる。
【0029】
上述した実施形態において、第一領域11は第二領域21と比べ面積が大きく構成されていてもよい。これにより太陽光による溶損を抑えつつ、従来の車両用灯具1にはない斬新な外観意匠を提供することができる。
【0030】
また、上述した実施形態において、第二領域21は第一領域11に対して、車両用灯具1を車両に取り付けた際の下方に位置していてもよい。これにより、仮に太陽光が第二領域21から侵入した場合においても、太陽光に晒される部品が少なくて済む。そのため、車両用灯具1の内部の部品の溶損を防ぐことができる。また、アウタレンズ2が下方から上方へ向かって後方に傾斜する形状である場合、太陽光線は車両用灯具1内により入りにくくなる。
【0031】
上述した実施形態において、第二領域21の外周部の少なくとも一部は、車両用灯具1の外周部の少なくとも一部と重複していてもよい。これにより、第二領域21は車両用灯具1の端部に位置することとなる。第二領域21が車両用灯具1の端部に位置することにより、仮に太陽光が第二領域21から侵入した場合においても、太陽光に晒される部品が少なくて済む。
また、第一領域11の外周部の少なくとも一部は、車両用灯具1の外周部の少なくとも一部と重複してもよい。これにより、太陽光による溶損を防ぐとともに、意匠性の高い車両用灯具1を提供することができる。
【0032】
ここまで本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の態様は上述した実施形態に限られない。例えば、第一光学部品群12と第二光学部品群22は別体の車両用灯具1A、1Bに格納されていてもよい。また、上述の説明では、エクステンション30によって第一灯室5と第二灯室6とが仕切られている車両用灯具1を説明したが、車両用灯具は第一灯室5と第二灯室6を仕切るエクステンションを有していなくてもよい。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用灯具
1A 車両用灯具
1B 車両用灯具
2 アウタレンズ
3 ハウジング
4 灯室
5 第一灯室
6 第二灯室
11 第一領域
11a ハードコート層
11b フォトクロミック層
11c 透明部材
12 第一光学部品群
13 前照灯
13a インナレンズ
13b リフレクタ
13c 光源
13d ブラケット
14 LiDAR
15 赤外線センサ
21 第二領域
22 第二光学部品群
23a インナレンズ
23b リフレクタ
23c 光源
23d ブラケット
30 エクステンション