(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067231
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】光電気変換コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177141
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】佐野 義昭
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137AC04
2H137AC12
2H137BA01
2H137BB03
2H137BB12
2H137BB23
2H137BC52
2H137BC55
2H137BC73
2H137CA13A
2H137CA16A
2H137CA43
2H137CA46
2H137CC05
2H137CD11
2H137DA39
2H137EA02
2H137HA13
(57)【要約】
【課題】多極コネクタに組み込んで使用可能な光電気変換コネクタを提供する。
【解決手段】光電気変換コネクタ1は、光信号を伝送する光ファイバ8aが設置される設置部20と、電気信号が入力又は出力されるリード10と、光ファイバとリードとの間で光信号と電気信号とを変換する光電気変換回路14と、を有する光電気変換モジュール2と、リードと電気的に接続される電気コネクタ4と、軸線方向に整列した光電気変換モジュールと電気コネクタとを収容するシェル6と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送する光ファイバが設置される設置部と、電気信号が入力又は出力される端子と、前記光ファイバと前記端子との間で光信号と電気信号とを変換する光電気変換回路と、を有する光電気変換モジュールと、
前記端子と電気的に接続される電気コネクタと、
軸線方向に整列した前記光電気変換モジュールと前記電気コネクタとを収容するシェルと、
を備える光電気変換コネクタ。
【請求項2】
前記シェルは、筒状体に形成され、
前記光電気変換モジュール及び前記電気コネクタは、前記光ファイバを保持する保持位置と、前記光ファイバを解放する解放位置との間で、前記シェルの内面に沿って当該シェルの軸線方向にスライド可能に配置される、
請求項1に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項3】
前記シェルは、当該シェルの内面から突出した突起部を有し、
前記光電気変換モジュールは、前記保持位置において前記突起部により押圧されるように配置された押圧部を有し、
前記押圧部は、前記突起部による押圧力を、前記設置部に設置された前記光ファイバに伝達するように構成されている、
請求項2に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項4】
前記光電気変換モジュールの前記押圧部が設けられている面において、前記光電気変換モジュールの軸線方向両端部の各々と前記押圧部との間に、前記光電気変換モジュールの軸線方向に沿って延びる溝部が形成され、
前記溝部は、前記シェルに収容された前記光電気変換モジュールが前記シェルの軸線方向にスライドするときに、前記突起部が前記溝部を通過可能な幅及び深さを有する、
請求項3に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項5】
前記シェルは、当該シェルの内面から突出したランスを有し、
前記光電気変換モジュールは、前記保持位置において前記解放位置側から前記ランスに当接する当接部を備える、
請求項2から4の何れか一項に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項6】
前記電気コネクタに、前記解放位置において前記電気コネクタと前記ランスとの干渉を避ける凹部が形成されている、
請求項5に記載の光電気変換コネクタ。
【請求項7】
前記光電気変換モジュールの前記当接部が設けられ前記シェルの内面に対向する面において、前記光電気変換モジュールの端部と前記当接部との間に、前記光電気変換モジュールの軸線方向に沿って延びる第2の溝部が形成され、
前記第2の溝部は、前記シェルに収容された前記光電気変換モジュールが前記シェルの軸線方向にスライドするときに、前記ランスが前記第2の溝部を通過可能な幅及び深さを有する、
請求項6に記載の光電気変換コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに接続され、電気信号を光信号に変換して光ケーブルにより伝送するための光電気変換コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気コネクタに接続され、電気信号を光信号に変換して光ケーブルにより伝送するための光電気変換コネクタが知られている。例えば、特許文献1には、接着剤を使用せずに光ファイバを光電気変換モジュールに機械的に取り付けられるようにした光ファイバ取付装置及びこれを用いた光電気変換コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、産業機器や輸送機器の高機能化に伴い、配線に用いられる端子やケーブルの種類も多様化が進んでいる。これらの端子やケーブルを種類毎に別々に接続する場合、コネクタのコスト増加や組立工数の増加等の問題が生じる可能性がある。そこで、様々な種類の端子を所望の組み合わせでまとめて保持する多極コネクタを使用することが考えられ、その多極コネクタで光電気変換コネクタも保持できるようにすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたような光電気変換コネクタは、プリント基板上に配置された専用の電気コネクタのハウジングに嵌合されることを前提としており、多極コネクタで使用できるようには構成されていない。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、多極コネクタに組み込んで使用可能な光電気変換コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの実施形態に係る光電気変換コネクタは、光信号を伝送する光ファイバが設置される設置部と、電気信号が入力又は出力される端子と、光ファイバと端子との間で光信号と電気信号とを変換する光電気変換回路と、を有する光電気変換モジュールと、端子と電気的に接続される電気コネクタと、軸線方向に整列した光電気変換モジュールと電気コネクタとを収容するシェルと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光電気変換コネクタを多極コネクタに組み込んで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る光電気変換コネクタの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光電気変換コネクタの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光電気変換コネクタの保持位置における側断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る光電気変換コネクタの解放位置における側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る光電気変換コネクタを多極コネクタに組み込んだ例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、実施形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、各実施形態(変形例も含む)は、独立して説明されているが、互いの構成要素を組み合わせて、光電気変換コネクタを構成することを排除するものではない。
【0011】
[光電気変換コネクタの構成]
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る光電気変換コネクタの構成について、具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係る光電気変換コネクタの斜視図である。
図2は、本実施形態に係る光電気変換コネクタの分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る光電気変換コネクタの保持位置における側断面図である。
図4は、本実施形態に係る光電気変換コネクタの解放位置における側断面図である。
図5は、本実施形態に係る光電気変換コネクタを多極コネクタに組み込んだ例を示す斜視図である。各図において、光電気変換コネクタの軸線方向(長さ方向)を「X」と表記し、光電気変換コネクタの短手方向(幅方向又は左右方向)を「Y」と表記し、光電気変換コネクタの高さ方向(又は上下方向)を「Z」と表記している。
【0012】
図1及び
図2に示すように、光電気変換コネクタ1は、光電気変換モジュール2と、電気コネクタ4と、シェル6とを備える。光電気変換モジュール2は、光ケーブル8と電気コネクタ4とに接続され、光ケーブル8と電気コネクタ4との間で光信号と電気信号とを変換する。電気コネクタ4は、光電気変換モジュール2に接続され、相手側の電気コネクタ4(図示せず)と光電気変換モジュール2との間で電気信号を伝送する。シェル6は、軸線方向に整列した光電気変換モジュール2と電気コネクタ4とを内部に収容する。
【0013】
本実施形態においては、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4の外形は直方体状に形成され、シェル6は角筒状体に形成されており、シェル6の内面に沿って軸線方向に光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4がスライド可能になっている。以下の説明では、光電気変換コネクタ1の軸線方向Xにおいて電気コネクタ4側を前方、光電気変換モジュール2側を後方と標記する。
【0014】
図3及び
図4に示すように、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4は、
図3に示す光ファイバ8aを保持する保持位置と、
図4に示す光ファイバ8aを解放する解放位置との間で、シェル6の内面に沿ってシェル6の軸線方向にスライド可能に配置されている。保持位置は、シェル6に対して光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4が前方(
図3における左側)にスライドした位置であり、解放位置は、シェル6に対して光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4が後方(
図3における右側)にスライドした位置である。
【0015】
光電気変換モジュール2は、端部にリード10(端子)を備えるリードフレーム12と、リードフレーム12上に配置された光電気変換回路14と、リードフレーム12のリード10以外の部分を覆う本体16と、本体16の一部に嵌まるように形成された押圧部18とを有する。
【0016】
リードフレーム12は、光電気変換モジュール2の軸線方向及び幅方向に平行な平板状に形成されており、前端部に電気コネクタ4の端子36と接続されるリード10が設けられている。また、リードフレーム12の上面の中央部には、光電気変換回路14が実装され、ボンディングワイヤによってリード10と接続されている。光電気変換回路14は、光電気変換モジュール2が光信号の発信側である場合には、例えば、垂直共振器面発光レーザ14a(VCSEL)及びVCSELドライバ14Bを含む。また、光電気変換モジュール2が光信号の受信側である場合には、例えば、フォトダイオード14cと、トランスインピーダンスアンプ/リミッティングアンプ(TIA/LA)などの増幅回路14dを含む。
【0017】
本体16は、光電気変換回路14が実装されたリードフレーム12を覆うと共に、リードフレーム12におけるリード10の部分が本体16の前方に露出するように、透明の樹脂により一体成形されている。また、本体16は、光ケーブル8の心線であって光信号を伝送する光ファイバ8aが設置される設置部20と、光電気変換回路14と光ファイバ8aとの間の光伝送路を成すプリズム22とを有する。
【0018】
設置部20は、上方に向かって開いた略V字形の断面を有し、本体16の軸線方向に沿って延びる溝として形成され、光電気変換回路14の後上方(
図3及び
図4における右上側)に設けられている。設置部20の後端側は、光ファイバ8aの挿入を容易にするために、前方から後方に向かって幅広となるテーパ状に形成されている。また、設置部20の上方は、後述する押圧部18が上方から下方に向かって嵌まるように、押圧部18の外形に合わせた形状の嵌合穴24が形成されている。この設置部20に光ファイバ8aが挿入され、嵌合穴24に嵌め込まれた押圧部18により光ファイバ8aが設置部20の略V字形溝の両壁面に押し付けられることにより、光ファイバ8aの位置決めがなされる。
【0019】
プリズム22は、光電気変換回路14の上方且つ設置部20に設置された光ファイバ8aの光軸上に位置し、光ファイバ8aの光軸方向(本体16の軸線方向)に対してプリズム22の反射面26が約45度傾斜するように、本体16と一体に形成されている。これにより、プリズム22は、設置部20に設置された光ファイバ8aと光電気変換回路14との間の光伝送路を形成する。光電気変換モジュール2が光信号の発信側である場合には、例えば、リードフレーム12に実装された垂直共振器面発光レーザ14a(VCSEL)からリードフレーム12の上方に射出された光は、プリズム22の反射面26で本体16の軸線方向に反射され、設置部20に設置された光ファイバ8aの端面から光ファイバ8aに入射する。また、光電気変換モジュール2が光信号の受信側である場合には、例えば、設置部20に設置された光ファイバ8aの端面から射出された光は、プリズム22の反射面26でフォトダイオード14cに向けて反射され、フォトダイオード14cの受光面からフォトダイオード14cに入射する。プリズム22の反射面26は、平面でもよく、光を集束させる集光面(凹面)に形成してもよい。
【0020】
さらに、本体16の上面(即ち嵌合穴24が形成され押圧部18が配置される面)において、本体16の前端と嵌合穴24との間、及び、本体16の後端と嵌合穴24との間の各々に、軸線方向に沿って延びる溝部28が形成されている。溝部28は、シェル6に収容された光電気変換モジュール2がシェル6の軸線方向にスライドするときに、後述するシェル6の突起部40が溝部28を通過可能な幅及び深さを有する。
【0021】
また、本体16の下面(即ち嵌合穴24が形成され押圧部18が配置される面とは反対側の面)において、本体16の前端部に、保持位置において後述するシェル6のランス42の解放位置側端部に当接する当接部30が形成されている。また、本体16の下面において、本体16の後端と当接部30との間に、本体16の軸線方向に沿って延びる第2の溝部32が形成されている。第2の溝部32は、シェル6に収容された光電気変換モジュール2がシェル6の軸線方向にスライドするときに、ランス42が第2の溝部32を通過可能な幅及び深さを有する。
【0022】
押圧部18は、略直方体状に形成され、本体16の嵌合穴24に上方から嵌め込まれている。本体16の嵌合穴24に嵌め込まれた押圧部18は、保持位置において、後述するシェル6の突起部40により下方に向かって押圧される。このとき、押圧部18は、突起部40による押圧力を設置部20に設置された光ファイバ8aに伝達し、光ファイバ8aを設置部20の略V字形溝の両壁面に押し付ける。これにより、光ファイバ8aの位置決めが行われる。
【0023】
電気コネクタ4は、相手側コネクタと嵌合するハウジング34と、ハウジング34内に配置され相手側コネクタの端子と電気的に接続される端子36とを備える。本実施形態においては、電子コネクタとしてメスコネクタを例示しているが、オスコネクタを用いることもできる。端子36の前端は、相手側コネクタの端子と接触する山型の接触部36aを形成しており、端子36の後端36bは、ハウジング34から後方に突出し、光電気変換モジュール2の前方に突出しているリード10と、例えばはんだ接合により電気的に接続される。
【0024】
また、電気コネクタ4の下面の後端部に、解放位置において後述するシェル6のランス42と電気コネクタ4との干渉を避ける凹部38が形成されている。凹部38は、シェル6に収容された電気コネクタ4が解放位置に配置されたときに、ランス42が凹部38の中に収容される幅及び深さを有する。
【0025】
シェル6は、角筒状体に形成されており、シェル6の上側の内面から下方に突出した突起部40と、下側の内面から上方に突出したランス42とを有している。
【0026】
突起部40は、打ち出し加工により、あるいは、別部材を固定することにより形成される。軸線方向に整列した光電気変換モジュール2と電気コネクタ4がシェル6の内部に収容されると、突起部40は、光電気変換モジュール2の上面と対向する。
【0027】
図4に示すように、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4が解放位置にあるときには、突起部40は、光電気変換モジュール2の本体16の溝部28の中に位置しているので、光電気変換モジュール2と干渉しない。即ち、押圧部18は突起部40から押圧されず、設置部20に設置された光ファイバ8aは設置部20に押し付けられないので、光ファイバ8aの脱着が可能となる。
【0028】
一方、
図3に示すように、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4が保持位置にある場合、突起部40は、押圧部18の上面に当接し、押圧部18を下方に(つまり設置部20に配置された光ファイバ8aの方向に)押し下げる。これにより、押圧部18は、突起部40からの押圧力を、設置部20に設置された光ファイバ8aに伝達し、光ファイバ8aを設置部20に押し付けるので、光ファイバ8aは設置部20に位置決めされる。
【0029】
ランス42は、シェル6の下側の壁面に切り込みを入れてシェル6の内側へ折り曲げることにより、シェル6の前方から後方に向かってランス42がシェル6の内側に立ち上がるように形成されている。
【0030】
また、シェル6の上面及び/又は下面には、光電気変換コネクタ1が多極コネクタ44に挿入されるときに後述する挿入孔48のガイド溝に嵌まるガイド部が、軸線方向に沿って延びるように形成されている(図示せず)。
【0031】
上記のように構成された光電気変換コネクタ1を組み立てる場合には、まず、電気コネクタ4と光電気変換モジュール2とを軸線方向に整列させ、電気コネクタ4のハウジング34から後方に突出している端子36と、光電気変換モジュール2の前方に突出しているリード10とを、例えばはんだ接合により接続する。
【0032】
次に、接続された電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2における、光電気変換モジュール2の後端を、シェル6の前方から軸線方向に沿ってシェル6の内部に挿入する。このとき、シェル6のランス42は光電気変換モジュール2の本体16の下面に形成された第2の溝部32を通過するので、ランス42が光電気変換モジュール2と干渉することはない。さらに光電気変換モジュール2をシェル6の後方に向かって挿入すると、ランス42は撓みながら光電気変換モジュール2の本体16の当接部30を乗り越え、当接部30よりも前方に位置する。この場合、光電気変換モジュール2の本体16の当接部30の前端がランス42の後端に当接することにより、光電気変換モジュール2の前方への移動が規制される。また、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2が解放位置に向かって後方にスライドした場合には、ランス42は電気コネクタ4の凹部38の中に収容されるので、電気コネクタ4と干渉することはない。
【0033】
電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2が解放位置に到達すると、電気コネクタ4のハウジング34の前端に形成されたフランジの後端面がシェル6の前端に当接し、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2がそれ以上後方に移動しないようにする。このとき、突起部40は、光電気変換モジュール2の本体16の溝部28の中に位置しているので、光電気変換モジュール2と干渉しない。即ち、押圧部18は突起部40から押圧されず、設置部20に設置された光ファイバ8aは設置部20に押し付けられないので、設置部20の後方から光ファイバ8aの脱着が可能となる。
【0034】
電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2が解放位置にあるときに、光ファイバ8aを、設置部20の後方からプリズム22の後端面に当接するまで設置部20の略V字形溝に挿入し、その後、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2をシェル6の軸線方向に沿って前方にスライドさせ、光電気変換モジュール2の当接部30の前端をランス42の後端に当接さシェル6ことにより、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2が保持位置に配置される。保持位置においては、シェル6の突起部40が押圧部18を下方に向かって押圧する。押圧部18は、突起部40による押圧力を設置部20に設置された光ファイバ8aに伝達し、光ファイバ8aを設置部20の略V字形溝の両壁面に押し付ける。これにより、光ファイバ8aが固定される。
【0035】
本実施形態の光電気変換コネクタ1は、例えば、
図5に示すような多極コネクタ44に組み込んで使用することができる。多極コネクタ44は、角筒形状のケース46を有し、ケース46は、光電気変換コネクタ1を含む複数種類のコネクタが軸線方向Xに沿って挿入される複数の挿入孔48を画定する内壁50を備えている。各挿入孔48は、ケース46の前端から後端まで貫通し、幅方向Yにおいて、コネクタの最小幅Wの整数倍の幅を有する直方体状に形成されている。本実施形態の光電気変換コネクタ1の幅は2Wである。
図5の例では、高さ方向Zにおける上段と下段の挿入孔48は、それぞれ、コネクタの最小幅Wの4倍の幅4Wを有している。この場合、上段と下段の挿入孔48には、それぞれ、最小幅Wのコネクタを4つ、幅2Wのコネクタを2つ、又は、最小幅Wのコネクタ2つと幅2Wのコネクタ1つを組み合わせて挿入することができる。
【0036】
各挿入孔48を形成する内壁50の内、幅方向Yに平行な面(即ち上面及び下面)には、軸線方向Xに沿って延びるガイド溝(図示せず)が形成されている。ガイド溝は、最小幅Wのコネクタを挿入可能な位置毎に配置される。即ち、
図5の例では、内壁50の上面及び下面に、それぞれ、4本のガイド溝が形成されている。
【0037】
さらに、各ガイド溝の後端近傍に、コネクタの係合部が係合する係合穴が形成されている(何れも図示せず)。つまり、
図5の例では、内壁50の上面及び下面に、それぞれ、4つの係合穴が形成されている。
【0038】
光電気変換コネクタ1がケース46の挿入孔48に挿入されるときに、シェル6のガイド部が挿入孔48のガイド溝に嵌まることにより、挿入孔48に対する光電気変換コネクタ1の幅方向Yの位置決めがなされる。さらに、光電気変換コネクタ1の係合部が挿入孔48のガイド溝に沿って移動し、係合穴に嵌まることで、光電気変換コネクタ1がケース46に対して固定される。また、光電気変換コネクタ1の高さ方向Zの動きは、内壁50の上面及び下面によって規制される。これにより、内壁50は、光電気変換コネクタ1が挿入孔48に挿入されたときに、光電気変換コネクタ1を保持する。
【0039】
[作用及び効果]
次に、上述した本実施形態に係る光電気変換コネクタ1の作用及び効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る光電気変換コネクタ1は、光信号を伝送する光ファイバ8aが設置される設置部20と、電気信号が入力又は出力されるリード10と、光ファイバ8aとリード10との間で光信号と電気信号とを変換する光電気変換回路14と、を有する光電気変換モジュール2と、リード10と電気的に接続される電気コネクタ4と、軸線方向に整列した光電気変換モジュール2と電気コネクタ4とを収容するシェル6と、を備える。
【0041】
このような本実施形態に係る光電気変換コネクタ1によれば、電気的に接続され軸線方向に整列した光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4が、シェル6に収容されている。したがって、多極コネクタ44のケース46における挿入孔48の形状に合わせてシェル6を形成することにより、多極コネクタ44に光電気変換コネクタ1を組み込んで使用することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、シェル6は、筒状体に形成され、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4は、光ファイバ8aを保持する保持位置と、光ファイバ8aを解放する解放位置との間で、シェル6の内面に沿って当該シェル6の軸線方向にスライド可能に配置される。これにより、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4をシェル6に収容した状態で、光ファイバ8aの脱着及び保持を行うことができるので、光電気変換コネクタ1を多極コネクタ44に組み込んで使用する際の光ケーブル8の接続作業が容易になる。
【0043】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、シェル6は、当該シェル6の内面から突出した突起部40を有し、光電気変換モジュール2は、保持位置において突起部40により押圧されるように配置された押圧部18を有し、押圧部18は、突起部40による押圧力を、設置部20に設置された光ファイバ8aに伝達するように構成されている。したがって、光電気変換モジュール2及び電気コネクタ4をシェル6の内面に沿ってスライドさシェル6だけで、押圧部18により光ファイバ8aを設置部20に押し付けて固定することができ、光ファイバ8aの取付作業を容易にすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、光電気変換モジュール2の押圧部18が設けられている面において、光電気変換モジュール2の軸線方向両端部の各々と押圧部18との間に、光電気変換モジュール2の軸線方向に沿って延びる溝部28が形成され、溝部28は、シェル6に収容された光電気変換モジュール2がシェル6の軸線方向にスライドするときに、突起部40が溝部28を通過可能な幅及び深さを有する。したがって、光電気変換モジュール2が保持位置以外の位置にあるときには、突起部40は溝部28の中に位置し、押圧部18を押圧しないので、設置部20に設置された光ファイバ8aは押圧部18により設置部20に押し付けられず、設置部20の後方から光ファイバ8aの脱着が可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、シェル6は、当該シェル6の内面から突出したランス42を有し、光電気変換モジュール2は、保持位置において解放位置側からランス42に当接する当接部30を備える。これにより、光電気変換モジュール2が保持位置を越えてスライドしないように、ランス42によって光電気変換モジュール2の移動を規制することができ、光ファイバ8aを確実に保持することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、電気コネクタ4に、解放位置において電気コネクタ4とランス42との干渉を避ける凹部38が形成されている。したがって、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2を、ランス42の干渉を受けず容易に解放位置にスライドさシェル6ことができる。
【0047】
また、本実施形態に係る光電気変換コネクタ1では、光電気変換モジュール2の当接部30が設けられシェル6の内面に対向する面において、光電気変換モジュール2の端部と当接部30との間に、光電気変換モジュール2の軸線方向に沿って延びる第2の溝部32が形成され、第2の溝部32は、シェル6に収容された光電気変換モジュール2がシェル6の軸線方向にスライドするときに、ランス42が第2の溝部32を通過可能な幅及び深さを有する。したがって、電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2をシェル6に収容するときに、シェル6のランス42は光電気変換モジュール2の第2の溝部32を通過するので、ランス42の干渉を受けず容易に電気コネクタ4及び光電気変換モジュール2をシェル6に収容することができる。
【0048】
[変形例]
次に、上述した本実施形態の変形例について説明する。
【0049】
上述した実施形態では、1本の光ファイバ8aを有する単心の光ケーブル8が光電気変換モジュール2に接続されているが、2本の光ファイバ8aを有する2心の光ケーブル8が光電気変換モジュール2に接続されるようにすることもできる。この場合、光電気変換モジュール2は、2本の光ファイバ8aのそれぞれに対して光電気変換回路14、押圧部18、設置部20、プリズム22を備える。
【0050】
また、上述した実施形態では、角筒形状のケース46を有する多極コネクタ44に光電気変換コネクタ1が組み込まれる例を説明したが、円筒状のケースを有する多極コネクタに組み込まれるように構成することもできる。この場合においても、多極コネクタの挿入孔の形状に合わせて、光電気変換コネクタ1のシェル6の形状を決定すればよい。
【0051】
なお、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。また、上述した実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る光電気変換コネクタは、例えば、信号伝送等の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 光電気変換コネクタ
2 光電気変換モジュール
4 電気コネクタ
6 シェル
8 光ケーブル
8a 光ファイバ
10 リード
12 リードフレーム
14 光電気変換回路
14a VCSEL
14b VCSELドライバ
14c フォトダイオード
14d 増幅回路
16 本体
18 押圧部
20 設置部
22 プリズム
24 嵌合穴
26 反射面
28 溝部
30 当接部
32 第2の溝部
34 ハウジング
36 端子
36a 接触部
36b 後端
38 凹部
40 突起部
42 ランス
44 多極コネクタ
46 ケース
48 挿入孔
50 内壁
X 軸線方向又は長さ方向
Y 幅方向又は左右方向
Z 高さ方向又は上下方向