(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067234
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】足用の清掃用具
(51)【国際特許分類】
A47K 7/02 20060101AFI20240510BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A47K7/02 Z
A46B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177144
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柿木 友美子
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 和也
(72)【発明者】
【氏名】武田 汐里
【テーマコード(参考)】
2D134
3B202
【Fターム(参考)】
2D134CD03
3B202AA15
3B202AB15
3B202BA02
3B202CA02
3B202DB01
3B202DB04
3B202EB14
(57)【要約】
【課題】座位で清掃した際の身体への負担を低減しつつ、過度な力をかけることなく足全体を適切に清掃できる足用の清掃用具を提供すること。
【解決手段】足Fを清掃するための清掃部120が配置されたヘッド部100と、ヘッド部100の後端100bから長軸方向の後端側に向けて連続的に延在するハンドル部200と、を有し、側面視において、ハンドル部200が清掃部120よりも背面側に反っている反り領域を有し、正面視における長軸方向の全長は、250mm以上450mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を清掃するための清掃部が配置されたヘッド部と、
前記ヘッド部の後端から長軸方向の後端側に向けて連続的に延在するハンドル部と、を有し、
側面視において、前記ハンドル部が前記清掃部よりも背面側に反っている反り領域を有し、
正面視における前記長軸方向の全長は、250mm以上450mm以下である、足用の清掃用具。
【請求項2】
側面視において、
前記清掃部の最先端側の基部と、前記清掃部の最後端側の基部と、を結ぶ延長線を設け、前記ハンドル部を前記長軸方向に沿って5等分に区分けし、前記ヘッド部と前記ハンドル部の境界位置から後端側に向けて第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域とした場合、
前記反り領域は、少なくとも前記第3領域~前記第5領域の何れかの領域であり、
前記延長線から垂直方向に延びて前記ハンドル部の各前記領域における最大厚みの中心位置を結ぶ線分の最小の高さは、前記第1領域~前記第2領域の間よりも、前記第3領域~前記第5領域の間の方が高い、請求項1に記載の足用の清掃用具。
【請求項3】
側面視において、
前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第4領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第4領域高さの割合が0.5倍以上4.0倍以下であり、
前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第5領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第5領域高さの割合が0.5倍以上5.0倍以下である、請求項2に記載の足用の清掃用具。
【請求項4】
側面視において、
前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第1領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第1領域高さの割合が0.1倍以上1.5倍以下であり、
前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第2領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第2領域高さの割合が0.1倍以上2.0倍以下であり、
前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第3領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第3領域高さの割合が0.3倍以上3.0倍以下である、請求項3に記載の足用の清掃用具。
【請求項5】
前記第5領域高さの前記第2領域高さに対する比が1.0以上10.0以下であり、
前記第5領域高さの前記第3領域高さに対する比が1.0以上5.0以下であり、
前記第5領域高さの前記第4領域高さに対する比が1.0以上4.0以下である、請求項4に記載の足用の清掃用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足用の清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、現代人は1日に1度、入浴時に足を清掃する習慣を持つ。言い換えると、足を汚す等の特別な事情がない場合、日常生活では1日の中で入浴時に1度だけ足を清掃することになるため、足は手や口腔内等に比べて1日の汚れが蓄積しやすい。例えば、基礎疾病をもつ人(以下、「患者」とする)にとっては、細菌の繁殖に伴う重症化の予防や早期治療の観点より、日々の足の衛生維持を欠かすことができない。
【0003】
しかしながら、患者が足を清掃する際、健常者向けに設計された一般的な洗浄器具等を使用すると、清掃効果だけを考慮した設計のため、清掃作業時に痛みを伴ったり、身体に余分な負担がかかってしまうことが懸念される。これらの理由より、患者は、一般的な洗浄器具を使用して足の清掃を試みた場合、足の汚れをしっかと落とすことができず、その結果、治療の長期化や重症化を招き、更には、より重篤な症状に至ってしまうケースも散見される。
【0004】
上記のような課題が存在する中、年齢等に関わらず、生涯にわたって元気に歩行することを実現するための足を作るためには、足の清掃をはじめとするフットケアを日常生活の中で習慣づけていくことが重要である。フットケアの習慣化には、正しい足の清掃を実現するための清掃用具の存在が不可欠である。しかしながら、看護師等の医療従事者が足専門の外来で清掃処置を行う場合でさえも、身近な毛先の柔らかい歯ブラシを洗浄器具に代用している。現状、使用者のユーザビリティに配慮した適切な足用の清掃用具は存在していないと言える。
【0005】
また、一般的に、高齢者の中には足清掃の必要性が高い人が多いと言われている。高齢者は、足の清掃時に体を大きく屈曲させる等の様々な体位をとることが難しいため、椅子等に座った座位の状態で足の清掃を行うことが多い。前述したように、現状においては足の清掃に適した清掃用具が存在しないため、身近な清掃用のブラシである歯ブラシを代用することが多い。ただし、歯ブラシは、手でハンドル部(柄)を把持しつつ、手を動かすことによって口腔内を洗浄する用途に基づいて設計されている。そのため、歯ブラシは、ハンドル部の全長が200mm程度の長さで設計されていることが多い。高齢者等の使用者は、歯ブラシを足の清掃に代用した場合、座位の状態で足の各部に歯ブラシの清掃部(ブラシ部)を届かせることが困難になる。その結果、使用者は、足の清掃時に腰をかがめたり、手や腕を不自然な方向に動かしたりしなければならない。したがって、足の清掃に歯ブラシを代用した場合、使用者は、身体により負担のかかる無理な態勢をとらざるを得なくなる。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、足を清掃するために開発された足清掃用のブラシが開示されている。しかしながら、特許文献1の足清掃用のブラシにおいても、次のような点が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の足清掃用のブラシでは、清掃部と当該清掃部の後端側に配置されたハンドル部が略直線状に延在している。そのため、使用者がハンドル部を把持しつつ、手指を介してブラッシングを行うと、ハンドル部に加えた力がヘッド部へ直接的に伝わってしまう。そのため、特許文献1の足清掃用のブラシを使用した際、ヘッド部から足に対して過度な荷重がかかってしまう。したがって、特許文献1の足清掃用のブラシは、ヘッド部が足に付与する荷重を十分に分散させることができず、使用者に痛みや不快感を感じさせてしまう可能性が高い。
【0009】
また、特許文献1の足清掃用のブラシでは、ハンドル部の長さが短いことに起因する「身体に負担のかかる無理な姿勢での清掃」という課題について言及されていない。そのため、上記課題への対策も特に講じられていない。
【0010】
本願発明者らは、上記課題を解決するべく、座位で足を清掃する際の身体への負担と清掃時に痛みを低減できる構造について鋭意研究を重ねた結果、用具全長を座位に適した特定の長さとし、更に清掃時にハンドル部からヘッド部に伝わる力を適度に逃がし、特に足の一部が疾患の合併症・治療により正常な皮膚が侵された潰瘍部や創傷部等の通常の皮膚よりも敏感な部分(以下、これらを総称して「敏感部」という)を傷付けないように力加減がコントロール可能な形状を見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、座位で清掃した際の身体への負担を低減しつつ、過度な力をかけることなく足全体をしっかりと清掃できる足用清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記(1)~(5)の何れか1つによって達成される。
【0013】
(1)足を清掃するための清掃部が配置されたヘッド部と、前記ヘッド部の後端から長軸方向の後端側に向けて連続的に延在するハンドル部と、を有し、側面視において、前記ハンドル部が前記清掃部よりも背面側に反っている反り領域を有し、正面視における前記長軸方向の全長は、250mm以上450mm以下である、足用の清掃用具。
【0014】
(2)側面視において、前記清掃部の最先端側の基部と、前記清掃部の最後端側の基部と、を結ぶ延長線を設け、前記ハンドル部を前記長軸方向に沿って5等分に区分けし、前記ヘッド部と前記ハンドル部の境界位置から後端側に向けて第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域とした場合、前記反り領域は、少なくとも前記第3領域~前記第5領域の何れかの領域であり、前記延長線から垂直方向に延びて前記ハンドル部の各前記領域における最大厚みの中心位置を結ぶ線分の最小の高さは、前記第1領域~前記第2領域の間よりも、前記第3領域~前記第5領域の間の方が高い、上記(1)に記載の足用の清掃用具。
【0015】
(3)側面視において、前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第4領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第4領域高さの割合が0.5倍以上4.0倍以下であり、前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第5領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第5領域高さの割合が0.5倍以上5.0倍以下である、上記(2)に記載の足用の清掃用具。
【0016】
(4)側面視において、前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第1領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第1領域高さの割合が0.1倍以上1.5倍以下であり、前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第2領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第2領域高さの割合が0.1倍以上2.0倍以下であり、前記ヘッド部の最大長さに対する、前記ハンドル部の前記第3領域の最大厚みの中心位置と前記延長線とが垂直方向で交わる線分の第3領域高さの割合が0.3倍以上3.0倍以下である、上記(2)又は(3)に記載の足用の清掃用具。
【0017】
(5)前記第5領域高さの前記第2領域高さに対する比が1.0以上10.0以下であり、前記第5領域高さの前記第3領域高さに対する比が1.0以上5.0以下であり、前記第5領域高さの前記第4領域高さに対する比が1.0以上4.0以下である、上記(2)~(4)の何れか1つに記載の足用の清掃用具。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヘッド部とハンドル部を含む長軸方向の全長が250mm以上450mm以下の長さを持つ。そのため、使用者は、座位で足を清掃する際、ハンドル部を手指で把持した状態において、ハンドル部の先端側に配置されたヘッド部を被清掃部位となる足の甲と足の裏面の双方、及び踵付近に配置することができる。したがって、使用者は、足の清掃時に腰を屈めたり、手や腕を不自然な方向に動かしたりする必要が無くなるため、身体にかかる負担を軽減できる。
【0019】
また、本発明の清掃用具は、側面視においてハンドル部が清掃部よりも背面側に反っている反り領域を有するため、清掃時にかかるヘッド部への過度な荷重を逃がして「なで洗い」が可能となる。したがって、足用の清掃用具は、ヘッド部から足に対して過度な荷重がかかることを防止できるため、特に潰瘍部や創傷部等の敏感部を清掃する場合に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る足用の清掃用具を示す図であり、
図1(A)は側面図であり、
図1(B)は正面図である。
【
図2】側面図においてハンドル部の各領域(第1領域~第5領域)、延長線、及び第1領域~第5領域の各線分の高さを示した図である。
【
図3】側面図におけるヘッド部周辺の部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態に足用の清掃用具の使用例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る足用の清掃用具を示す図であり、
図5(A)は側面図であり、
図5(B)は正面図である。
【
図6】第2実施形態のヘッド部の嵌合前の状態を正面側から見た斜視図である。
【
図7】第2実施形態のヘッド部の嵌合前の状態を背面側から見た斜視図である。
【
図8】第2実施形態のヘッド部を接続部に嵌合した状態の斜視図である。
【
図9】第2実施形態のヘッド部を接続部に嵌合した状態の断面図である。
【
図10】実施例1~実施例3、比較例1の各サンプルの全体形状を示すグラフである。
【
図11】実施例1~実施例3、比較例1の仕様と評価結果を示す表である。
【
図12】実施例1、実施例4、実施例5の各サンプルの全体形状を示すグラフである。
【
図13】実施例1、実施例4、実施例5の仕様と評価結果を示す表である。
【
図14】実施例1、実施例6、実施例7の各サンプルの全体形状を示すグラフである。
【
図15】実施例1、実施例6、実施例7の仕様と評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0022】
更に、本明細書に添付する図面は、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0023】
各図に付した矢印X1-X2は、ハンドル部200の長手方向(清掃用具10の長手方向と同方向)を示す。矢印X1側は、ハンドル部200の先端側を示し、矢印X2側は、ハンドル部200の後端側を示す。また、各図に付した矢印Y1-Y2はハンドル部200の幅方向を示す。また、各図に付した矢印Z1-Z2は、ハンドル部200の厚み方向を示す。
【0024】
本明細書において、正面視とは、ヘッド部100の植毛面110側から清掃用具10を見ることを意味する(
図1を参照)。側面視とは、ヘッド部100の厚み方向(清掃部120の高さ方向と同方向)と直交する方向(正面視における左右方向)から見ることを意味する(
図1、
図2を参照)。
【0025】
本実施形態に係る足用の清掃用具10(以下、単に「清掃用具10」ともいう)は、
図4に示すように足Fを清掃するための用具である。特に、清掃用具10は、使用者が座位で清掃した姿勢で足Fを清掃する際に身体にかかる負担を低減しつつ、潰瘍部や創傷部のような敏感部に対する刺激を少なくして適切に清掃することができる。
【0026】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る清掃用具10について
図1~
図4を適宜参照しながら説明する。清掃用具10は、
図1(A)、
図1(B)に示すように、足Fを清掃するための清掃部120が配置されたヘッド部100と、ヘッド部100の後端から長軸方向の後端側に向けて連続的に延在するハンドル部200と、を有する。
【0027】
<ヘッド部>
ヘッド部100は、清掃用具10の先端側に配置され、ハンドル部200の先端200aと一体的に繋がった構成を有する。ヘッド部100の植毛面110には、複数本の用毛121を束ねた毛束群122からなる清掃部120が配置されている。ヘッド部100は、足Fの清掃性に関する部位である。
【0028】
清掃部120は、用毛121を複数本束ねた毛束群122とし、複数の毛束群122を植毛面110に任意に配列(格子状配列、千鳥状配列等)して構成される。用毛の材質、毛束群122の1つあたりの用毛の本数や毛束群122の配置数等については任意に選択することができる。
【0029】
用毛121の形状は、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面110から毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先が植毛面110に略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。用毛121の横断面形状は、特に限定されず、真円形、楕円形等の円形、多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等としてもよい。全ての用毛121の断面形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、清掃部120は、前述のような植設された用毛121に限らず、2色成形やインサート成形等で毛束を一体成形してもよい。
【0030】
ヘッド部100は、
図2に示すように、植毛面110の最先端に位置する先端部100aと、清掃部120の最後端(詳細には、清掃部120の最後端に位置する用毛121の植毛面110との境に位置する基部)に位置する後端部100bとを有する。ヘッド部100の全長に相当する最大長さLHは、側面視において先端部100aと後端部100bとの間の長さである。
【0031】
なお、側面視において、ヘッド部100の植毛面110の最先端の基部の位置と、清掃部120の最先端の基部の位置が一致する場合、ヘッド部100は、清掃部120の最先端の基部と清掃部120の最後端の基部との間の長さが、ヘッド部100の最大長さLHとなる。
【0032】
<ハンドル部>
ハンドル部200は、清掃時に使用者により手指等で把持される。使用者は、手指等でハンドル部200を把持しつつ、ハンドル部200の先端側に配置された清掃部120を清掃対象である足Fの任意の被清掃部位(例えば、踵Fh、足の甲Fi、足の裏面Fr等、ただしこれらに限定されない。)に当接させて擦る等の作業をすることで清掃を行う(
図4を参照)。
【0033】
ハンドル部200は、ヘッド部100の後端となる後端部100bから長軸方向の後端側に向けて連続的に延在する。ハンドル部200の全長は、側面視において先端200aから基端200bまでの長さである。ハンドル部200は、清掃時に使用者により把持され、手で持って使用する上での操作性・手のフィット感に関する部位となる。
【0034】
本実施形態では、ハンドル部200の構造を説明するにあたり、下記のように延長線Lと各領域A1~A5を定義する。
【0035】
ハンドル部200は、
図2に示すように、清掃部120の最先端側の基部120aと、清掃部120の最後端側の基部120bとを結ぶ延長線Lを設け、更にハンドル部200を長軸方向に沿って5等分に区分けしてヘッド部100とハンドル部200の境界位置Bから後端側に向けて第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4、第5領域A5とした場合、第1領域A1から第5領域A5に向かって徐々に清掃部120から背面側に離れる方向に離隔し、ハンドル部200全体として反った形状を有する。延長線Lは、
図3に示すように、ヘッド部100の植毛面110の面上を通り、かつ植毛面110の最先端(基部120a)から最後端(基部120b)を結ぶ線分とも言える。
【0036】
ハンドル部200は、
図2に示すように、ヘッド部100の清掃部120から背面側に反っている反り領域Cを有する。反り領域Cは、清掃時にハンドル部200からヘッド部100に伝わる力を適度に逃がしてヘッド部100に過度な荷重がかからないように作用する。
【0037】
ハンドル部200の第1領域A1~第5領域A5は、次のように機能する。
・第1領域A1は、ヘッド部100とハンドル部200との境界付近に位置し、清掃時の荷重をヘッド部100に伝える部位となる。
・第2領域A2は、ハンドル部200の先端から少し後端側に位置し、清掃時の荷重をヘッド部100に伝える部位となる。第1領域A1及び第2領域A2は、清掃時に応力集中が起こる部位となる。
・第3領域A3は、ハンドル部200の中央部に位置し、応力集中が起きる領域(第1領域A1、第2領域A2)と、使用者が把持する把持部の領域(第4領域、第5領域A5)を区分けする部位である。
・第4領域A4は、ハンドル部200の把持部として機能し、主に人差し指と親指が当接する部位となる。
・第5領域A5は、ハンドル部200の把持部として機能し、主に掌が当接する部位となる。
【0038】
清掃用具10は、ハンドル部200が清掃部120から背面側に反った形状を有するため、被清掃部位に過度な圧力がかからず、被清掃部位と清掃部120の清掃面123が略平行になり易い。したがって、清掃用具10は、清掃部120側に傾かせた形状やハンドル部200がストレート状のものと比べて、清掃時の力を逃がす方向へ促すことができるため「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができる。
【0039】
清掃用具10は、座位で足Fを清掃する際の身体への負担を低減しつつ、清掃時のハンドル部200からヘッド部100伝わる力を適度に逃がして痛みが出ないようにするため、以下の寸法を規定した構造を有する。
図2には、側面視において延長線Lと、延長線Lから垂直方向に延びてハンドル部200の各領域A1~A5における最大厚みの中心位置P1~P5を結ぶ線分の高さ(長さ)である第1領域高さLA1~第5領域高さLA5が示されている。
【0040】
清掃用具10の長軸方向の全長は、正面視において250mm以上450mm以下であり、清掃性の観点から300mm以上が好ましい。
【0041】
足清掃を必要とする高齢者の多くは座位で清掃し、清掃用のブラシとして歯ブラシを代用しているのが現状である。しかし、歯ブラシは、全長200mm程度とハンドルが短いため、清掃時には腰を屈めたり手や腕を不自然な方向に動かしたりしなければならず、身体への負担が大きかった。これに対し、清掃用具10は、全長が250mm以上450mm以下であるため、ハンドル部200の先端側に配置されたヘッド部100を足の甲Fiと足の裏面Frの双方、及び踵Fh等の被清掃部位付近に容易に配置することができる。したがって、使用者は、足Fの清掃時に腰を屈めたり、手や腕を不自然な方向に動かしたりする必要が無くなるため、身体にかかる負担を軽減できる。
【0042】
ヘッド部100の清掃部120は、清掃用具10の全長に対して極端に小さく、長軸方向の最大長さLHは40mm以下、短軸方向(長軸方向と交差する幅方向)の最大長さLHは30mm以下である。「極端に小さい」とは、清掃用具10の全長の16%以下の大きさであり、清掃性を維持しつつより効果的に敏感部への刺激を緩和するには13.5%以下とするのがより好ましい。
【0043】
一般的な足用ブラシは、ブラシ全体の大きさに対して清掃部120を有するブラシ部(ヘッド部100に相当)が大きいため(例えば、ヘッド長やヘッド幅が60mm以上)。そのため、この足用ブラシは、潰瘍部等の敏感部との接触面積が増え痛みを伴う課題があった。仮に、ブラシ部に柔らかい用毛を用いたとしても、接触面積は変わらず大きいため、上記課題は解決されない。これに対し、清掃用具10は、清掃部120を極端に小さく(ヘッド長40mm以下、幅30mm以下)したため、清掃部120に荷重がかかった際の荷重圧をヘッド部100に集中でき、過度に力を入れずとも清掃性を高めることができる。特に、使用者の足Fに敏感部がある場合、清掃部120との接触面積を小さくできるため、過度な痛みが抑制され効果的である。
【0044】
清掃用具10において、反り領域Cは、ハンドル部200における少なくとも第3領域A3~第5領域A5の何れかの領域であり、延長線Lから垂直方向に延びてハンドル部200の各領域A1~A5における最大厚みの中心位置P1~P5を結ぶ線分の高さ(第1領域高さLA1~第5領域高さLA5)の最小の高さは、第1領域A1~第2領域A2の間よりも、第3領域A3~第5領域A5の間の方が高い。
【0045】
一般的に、使用者が座位で足の甲Fiや足の裏面Frを磨くときに清掃部120の可動域を最も広げて操作するには、手首の周方向を回動するよりも肘や腕を支点にしてハンドル部200を長軸方向の前後に移動するのが効果的である。清掃用具10は、ハンドル部200の先端側の第1領域A1~第2領域A2の間の高さ(第1領域高さLA1、第2領域高さLA2)を、ハンドル部200の後端側の第3領域A3~第5領域A5の間の高さ(第3領域高さLA3~第5領域高さLA5)より低いため、使用者が把持してヘッド部100に荷重をかけて清掃するときに、応力集中が起きる部位を反り領域Cとなる第3領域A3~第5領域A5側にシフトでき、ヘッド部100に荷重がかかり過ぎることが防止できる。
【0046】
清掃用具10は、側面視において、ヘッド部100の最大長さLHに対する、ハンドル部200の第4領域A4の最大厚みの中心位置P4と延長線Lとが垂直方向で交わる線分の高さに相当する第4領域高さLA4の割合(以下、「第4割合」とする。)が0.5倍以上4.0倍以下であり、潰瘍部等の敏感部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、0.6倍以上1倍以下とするのが好ましい。換言すると、第4割合の下限は、0.5倍以上が好ましく、0.6倍以上がより好ましい。第4割合の上限は、4.0倍以下が好ましく、1倍以下がより好ましい。
【0047】
清掃用具10は、側面視において、ヘッド部100の最大長さLHに対する、ハンドル部200の第5領域A5の最大厚みの中心位置P5と延長線Lとが垂直方向で交わる線分の高さに相当する第5領域高さLA5の割合(以下、「第5割合」とする。)が0.5倍以上5.0倍以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、1.1倍以上3.0倍以下とするのが好ましい。換言すると、第5割合の下限は、0.5倍以上が好ましく、1.1倍以上がより好ましい。第5割合の上限は、5.0倍以下が好ましく、3.0倍以下がより好ましい。
【0048】
清掃用具10は、第4割合及び第5割合を前述した範囲に制御することで、用具全体の大きさに対して清掃部120の大きさを可能な限り小さくし、かつハンドル部200の後端側は清掃部120側の背面側に反らせた形状となる。そのため、清掃用具10は、ハンドル部200から伝わる力により清掃部120に荷重がかかった場合、小さい清掃部120に荷重圧を集中できるようになり、敏感部の清掃性を高めることができる。また、清掃部120が小さいため、敏感部と清掃部120の接触面積が小さくでき、清掃中の過度な痛みを抑制することもできる。更に、清掃用具10は、清掃部120の背面側に反った形状となるため、清掃時の力を逃がす方向へ促して「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができる。
【0049】
一方、第4割合と第5割合は、前述の範囲を外れると以下の問題が生じ得る。
【0050】
第4割合と、第5割合が0.5倍未満の場合は、ヘッド部100が長く、ハンドル部200の高さが低くなるため、ヘッド部100とハンドル部200の第4領域A4、及びヘッド部100と第5領域A5は、何れもストレート状になり、ヘッド部100が大きくなる。そのため、被清掃部位とヘッド部100の接触面積が大きくなり、清掃時に過度な痛みを伴うと共に、ストレート状であるがゆえにヘッド部100の荷重を分散し難くなるおそれがある。
【0051】
第4割合が4.0倍を超える場合、第5割合が5.0倍を超える場合は、ヘッド部100が短く、ハンドル部200の高さが高くなるため、ヘッド部100とハンドル部200の第4領域A4、及びヘッド部100と第5領域A5は、何れも同一線上にない関係になると共に、ヘッド部100が小さくなる。そのため、被清掃部位とヘッド部100の接触面積が小さくなることで清掃時に痛みを伴うリスクは低減されるものの、ハンドル部200が清掃部120の背面側に反り過ぎてしまうため、第4領域A4や第5領域A5からヘッド部100に伝わる荷重がコントロールし難く、ヘッド部100へ過度に荷重がかかって痛みを伴うおそれがある。
【0052】
清掃用具10は、側面視において、ヘッド部100の最大長さLHに対する、ハンドル部200の第1領域A1の最大厚みの中心位置P1と延長線Lとが垂直方向で交わる線分の高さに相当する第1領域高さLA1の割合(以下、「第1割合」とする。)が0を超え1.5倍以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、0.1倍以上0.5倍以下とするのが好ましい。換言すると、第1割合の下限は、0.1倍以上が好ましい。第1割合の上限は、1.5倍以下が好ましく、0.5倍以下がより好ましい。なお、「0」とは、延長線Lと、第1領域A1の最大厚みの中心位置P1とが限りなく近付き実質的に0(ヘッド部100とハンドル部200が面一で平行に繋がっていることを含む)であることを意味する。
【0053】
清掃用具10は、側面視において、ヘッド部100の最大長さLHに対する、ハンドル部200の第2領域A2の最大厚みの中心位置P2と延長線Lとが垂直方向で交わる線分の高さに相当する第2領域高さLA2の割合(以下、「第2割合」とする。)が0を超え2.0倍以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、0.1倍以上0.5倍以下とするのが好ましい。換言すると、第2割合の下限は、0.1倍以上が好ましい。第2割合の上限は、2.0倍以下が好ましく、0.5倍以下がより好ましい。なお、「0」とは、延長線Lと、第2領域A2の最大厚みの中心位置P2とが限りなく近付き実質的に0(ヘッド部100とハンドル部200が面一で平行に繋がっていることを含む)であることを意味する。
【0054】
清掃用具10は、側面視において、ヘッド部100の最大長さLHに対する、ハンドル部200の第3領域A3の最大厚みの中心位置P3と延長線Lとが垂直方向で交わる線分の高さに相当する第3領域高さの割合(以下、「第3割合」とする。)が0を超え3.0倍以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、0.3倍以上0.8倍以下とするのが好ましい。換言すると、第3割合の下限は、0.1倍以上が好ましい。第3割合の上限は、3.0倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましい。なお、「0」とは、延長線Lと、第1領域A3の最大厚みの中心位置P3とが限りなく近付き実質的に0(ヘッド部100とハンドル部200が面一で平行に繋がっていることを含む)であることを意味する。
【0055】
清掃用具10は、第1割合、第2割合及び第3割合を前述した範囲に制御することで、用具全体の大きさに対して清掃部120の大きさを可能な限り小さくし、かつハンドル部200の後端側は清掃部120側の背面側に反らせた形状となる。そのため、清掃用具10は、ハンドル部200から伝わる力により清掃部120に荷重がかかった場合、小さい清掃部120に荷重圧を集中できるようになり、敏感部の清掃性を高めることができる。また、清掃部120が小さいため、敏感部と清掃部120の接触面積が小さくでき、清掃中の過度な痛みを抑制することもできる。更に、清掃用具10は、清掃部120の背面側に反った形状となるため、清掃時の力を逃がす方向へ促して「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができる。
【0056】
一方、第1割合、第2割合及び第3割合は、前述の範囲を外れると以下の問題が生じ得る。なお、「0未満」とは、側面視において、延長線Lを境界として清掃部120の背面側をプラス方向、清掃部120の正面側(清掃面123側)をマイナス方向としたとき、該当する第1領域高さLA1~第3領域高さLA3がマイナス方向に延びた状態(各割合がマイナス値になる状態)を意味する。したがって、第1領域高さLA1~第3領域高さLA3の何れかが0未満の場合、該当する第1領域A1~第3領域A3の何れかの領域は、延長線Lを超えて清掃部120側に傾いた形状となる。
【0057】
第1割合、第2割合及び第3割合が0未満の場合は、ヘッド部100が長く、ハンドル部200の高さが低くなるため、ヘッド部100とハンドル部200の第1領域A1、ヘッド部100とハンドル部200の第2領域A2、及びヘッド部100と第3領域A3は、何れもストレート状になると共に、ヘッド部100が大きくなる。座位で清掃する際には、肘や腕を支点にしてハンドル部200の長軸方向の前後に移動するのが効果的であり、清掃時に清掃部120と第1領域A1、清掃部120と第2領域A2、及び清掃部120と第3領域A3は、共に移動方向に対して略平行になることが好ましい。しかし、0未満の場合、ヘッド部100が清掃部120側に傾いた形状となるため、前述の効果が得られ難くなる。特に、第1領域A1は、ヘッド部100とハンドル部200の境界であるため、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。また、第3領域A3は、ハンドル部200の高さが背面側に反る第4領域A4~第5領域A5の境界であるため、0未満になると第4領域A4~第5領域A5との高さの差が大きくなり過ぎて、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。
【0058】
第1割合が1.5倍を超える場合、第2割合が2.0倍を超える場合、第3割合が3.0倍を超える場合は、ヘッド部100が短く、ハンドル部200の高さが高くなるため、ヘッド部100とハンドル部200の第4領域A4、及びヘッド部100と第5領域A5は、何れも同一線上にない関係になり、更にヘッド部100が小さくなる。そのため、被清掃部位とヘッド部100の接触面積が小さくなることで清掃時に痛みを伴うリスクは低減されるものの、清掃部120と第1領域A1、清掃部120と第2領域A2、及び清掃部120と第3領域A3は、何れも移動方向に対して略平行になることを満足できず、ハンドル部200が清掃部120の背面側に反り過ぎてしまうため、座位での効果的な清掃性が得られ難くなる。特に、第1領域A1は、ヘッド部100とハンドル部200の境界であるため、1.5倍を超えると、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。また、第3領域A3は、ハンドル部200の高さが背面側に反る第4領域A4~第5領域A5の境界であるため、3.0倍を超えると、第4領域A4~第5領域A5との高さの差が小さくなり過ぎて、ヘッド部100の中央から先端側に応力集中が発生してしまい、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。
【0059】
清掃用具10は、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が1.0以上10.0以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、3.0以上5.0以下とするのが好ましい。換言すると、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比の下限は、1.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比の上限は、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
【0060】
また、清掃用具10は、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が1.0以上5.0以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、2.0以上4.0以下とするのが好ましい。換言すると、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比の下限は、1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比の上限は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0061】
また、清掃用具10は、第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が1.0以上4.0以下であり、潰瘍部等の敏感な患部に対する清掃性及び清掃時の痛み低減の観点から、1.5以上3.0以下である。換言すると、第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比の下限は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比の上限は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
【0062】
清掃用具10は、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比、及び第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比を前述した範囲に制御することで、ハンドル部200の全体形状として後端側が清掃部120側の背面側に反った形状となる。そのため、清掃用具10は、ハンドル部200から清掃部120に過度な力が伝わらず適度に力を逃がすことができるため、「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができる。
【0063】
一方、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比、及び第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比は、前述の範囲を外れると以下の問題が生じ得る。
【0064】
第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が1未満の場合、ハンドル部200の全体形状が、清掃部120の背面側に反った形状となるものの、側面視でS字調の形状となる傾向にあり、その結果、第5領域A5から伝わるヘッド部100への荷重が、清掃部120と同じ方向にかかり易くなり、清掃中に痛みを伴うおそれがある。第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が1未満の場合も、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比の関係と同様の問題があり、特に、第3領域A3は、ハンドル部200の高さが背面側に反る第4領域A4~第5領域A5の境界であるため、第5領域A5との高さの差が小さくなり過ぎて、ヘッド部100の中央から先端側に応力集中が発生してしまい、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が1未満の場合、ハンドル部200が清掃部120の背面側に反った形状であるものの、ハンドル部200の後端側がストレート状となるため、ヘッド部100とハンドル部200の後端が略直線状になり、被清掃部位に清掃部120の荷重をかけ過ぎてしまうおそれがある。
【0065】
第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が10を超える場合、ハンドル部200の全体形状が大きく清掃部120の背面側に反り過ぎてしまうため、第5領域A5から伝わるヘッド部100への荷重をコントロールし難く、ヘッド部100へ過度に荷重をかけてしまい、痛みを伴うおそれがある。第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が5を超える場合、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比の関係と同様の問題があり、特に、第3領域A3は、ハンドル部200の高さが背面側に反る第4領域A4~第5領域A5の境界であるため、第5領域A5との高さの差が小さくなり過ぎて、ヘッド部100の中央から先端側に応力集中が発生してしまい、応力集中をハンドル部200の後端側にシフトできなくなるおそれがある。第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が4を超える場合、ハンドル部200が清掃部120の背面側に反った形状であるものの、ハンドル部200の後端側が大きくハンドル部200が清掃部120の背面側に大きく反り過ぎてしまうため、第5領域A5からヘッド部100に伝わる荷重がコントロールし難く、ヘッド部100へ過度に荷重がかかって痛みを伴うおそれがある。
【0066】
ここで、清掃用具10の具体的な寸法を例示する。
【0067】
清掃用具10は、正面視での全長を300mm、ハンドル部200の全長を270mm(第1領域A1~第5領域A5の各領域の全長は54mm)、ヘッド部100の長軸方向の全長を30mm、短軸方向の全長を19.5mmとすることができる。また、清掃用具10は、第1領域高さLA1を8mm、第2領域高さLA2を9mm、第3領域高さLA3を12mm、第4領域高さLA4を21mm、第5領域高さLA5を33mmとすることができる。
【0068】
図4には、清掃用具10の使用状態が示されている。清掃用具10は、座位の状態で足Fの甲Fiや足の裏面Fr等の足F全体を清掃する際、使用者の身体への負担が低減されるように適度な長さと形状を有する。そのため、ハンドル部200の先端側に配置されたヘッド部100を足の甲Fi、足の裏面Frの双方、及び踵Fh等の足F全体の被清掃部位付近に適切に配置することができる。したがって、使用者は、足Fの清掃時に腰を屈めたり、手や腕を不自然な方向に動かしたりする必要が無くなるため、身体にかかる負担を軽減できる。また、清掃用具10は、ハンドル部200が清掃部120から背面側に反った形状を有するため、被清掃部位に過度な圧力がかからず、被清掃部位と清掃部120の清掃面123が略平行になり、清掃時の力を逃がす方向へ促して余分な力をかけずに適切に清掃することができる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る足用の清掃用具10Aについて
図5~
図9を適宜参照しながら説明する。
【0070】
なお、第2実施形態の説明では、主に前述した形態との相違点について説明し、他の形態と同等の機能を有する構成要件については同一又は関連する符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない。また、構成、部材、及び使用方法等については、第1実施形態と同様のものとしてよい。
【0071】
第2実施形態の清掃用具10Aは、ヘッド部100Aが交換可能な形態である点が、第1実施形態と相違する。
【0072】
清掃用具10Aは、ヘッド部100Aが交換可能に構成されるため、繰り返し使用する中で清掃部120にへたりが生じたり汚染されたりした際に、速やかに交換することができる。特に、糖尿病患者やリウマチ患者のような基礎疾患の合併症や治療により正常な皮膚が侵された結果生じ得る潰瘍部等の敏感部を清掃する際は、清掃部120の清掃面123が敏感部に当接することで出血し、清掃部120に血液が付着することもあるため清潔性の観点から有効である。
【0073】
清掃用具10Aは、
図5(A)、
図5(B)に示すように、清掃部120を有するヘッド部100Aが、ハンドル部200Aの先端に設けられた接続部210に着脱可能に装着される。
【0074】
ヘッド部100Aは、
図6に示すように、植毛面110を有する基台部130と、接続部210との嵌合部位となる切り欠き部131と、を備える。
【0075】
切り欠き部131は、側面視において、基台部130の側面の略中央付近から後端に向かって延びるように基台部130の上側の角部を一部切り欠いて形成される。切り欠き部131の厚み方向における上側端部131aは、植毛面110の側端部110aと連続している。
【0076】
基台部130の背面には、
図7に示すように、接続部210の突起部212aが嵌合される嵌合凹部132が形成されている。嵌合凹部132の形状、形成数、サイズは、特に制限されず、嵌合凸部213と適切に嵌合して清掃時にヘッド部100Aが外れない程度の嵌合力が発揮可能に設計されればよい。
【0077】
接続部210は、
図6、
図7に示すようにハンドル部200Aの先端に設けられ、ヘッド部100Aの基台部130が着脱可能に構成される。接続部210は、基台部130の側面周面の一部及び背面の一部を覆うように接続する。
【0078】
接続部210は、ヘッド部100Aとの接続後に基台部130が載置される載置面211と、載置面211の側端部211aから厚み方向に立ち上がるように延びる一対の壁部212と、載置面211から厚み方向に延びる嵌合凸部213と、載置面211から接続部210の背面に向けて貫通する複数の貫通孔214と、を備える。
【0079】
壁部212の頂部には、対向する他方の壁部212の頂部に向かって突出する突起部212aが複数設けられる。突起部212aの形状、形成数、サイズは、特に制限されず、切り欠き部131と適切に嵌合して清掃時にヘッド部100Aが外れない程度の嵌合力が発揮可能に設計されればよい。
【0080】
嵌合凸部213は、接続部210に基台部130を装着した際、基台部130の嵌合凹部132と嵌合する。嵌合凸部213の形状、形成数、サイズは、特に制限されず、嵌合凹部132と適切に嵌合して清掃時にヘッド部100Aが外れない程度の嵌合力が発揮可能に設計されればよい。
【0081】
貫通孔214は、載置面211から接続部210の背面に貫通して形成される。貫通孔214は、接続部210に対する基台部130の接触面積を減らすことで、基台部130と接続部210との密着を防いで着脱操作を容易にする。貫通孔214の形状、形成数、サイズは、特に制限されず、ヘッド部100Aの着脱操作時の摩擦抵抗等を低減してスムーズな着脱操作を可能とし、更に接続部210に装着されたヘッド部100Aを保持でき、かつ清掃時の荷重に耐え得る強度が確保できるように設計されればよい。
【0082】
清掃用具10Aは、
図8に示すように、接続部210にヘッド部100Aの基台部130を装着した際、壁部212が基台部130の側面と当接しつつ、突起部212aが切り欠き部131に嵌合される。また、嵌合凸部213は、
図9に示すように、嵌合凹部132に嵌合される。
【0083】
このように、清掃用具10Aは、基台部130に対し、厚み方向と交差する垂直方向と、厚み方向の少なくとも2方向から基台部130と嵌合するため、清掃時に異なる角度からの応力が働き嵌合力を示す。したがって、清掃用具10Aは、清掃時にヘッド部100Aが外れず、着脱操作時には貫通孔214の作用により容易に着脱することができる。
【0084】
以上説明したように、本発明の清掃用具10、10Aは、足Fを清掃するための清掃部120が配置されたヘッド部100と、ヘッド部100の後端(後端部100b)から長軸方向の後端側に向けて連続的に延在するハンドル部200と、を有し、側面視において、ハンドル部200が清掃部120よりも背面側に反っている反り領域Cを有し、正面視における長軸方向の全長は、250mm以上450mm以下である。
【0085】
このような構成により、ハンドル部200の先端側に配置されたヘッド部100を被清掃部位付近に配置することができる。したがって、使用者は、足Fの清掃時に腰を屈めたり、手や腕を不自然な方向に動かしたりする必要が無くなるため、身体にかかる負担を軽減できる。また、用具全体の大きさに対して清掃部120の大きさを可能な限り小さくし、かつハンドル部200の後端側は清掃部120側の背面側に反らせた形状にできるため、清掃用具10は、ハンドル部200から伝わる力により清掃部120に荷重がかかった場合、小さい清掃部120に荷重圧を集中できるようになり、敏感部の清掃性を高めることができる。更に、清掃部120が小さいため、敏感部と清掃部120の接触面積が小さくでき、清掃中の過度な痛みを抑制することもできる。また、清掃用具10は、清掃部120の背面側に反った形状となるため、清掃時の力を逃がす方向へ促して「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができる。ゆえに、清掃用具10、10Aは、特に潰瘍部や創傷部等の敏感部を有する使用者の足Fを清掃する用具として最適である。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0087】
図10~
図15は、実施例及び比較例の試験結果と官能試験の結果を示すグラフや表が示されている。
【0088】
<サンプルの仕様>
共通事項として、正面視における各サンプルの全長は300mm、ヘッド部の全長は30mm、ヘッド部の平均厚みは6mmとした
〈各サンプルの特徴〉
・実施例1、実施例2、実施例3、及び比較例1の全体形状は、
図10に示すグラフ線に沿う形状とし、各サンプルの長軸方向におけるヘッド部及びハンドル部の各領域の長さは
図11のTable.1に示す長さとした。実施例2、実施例3の形状は、実施例1の形状に対して背面側の立ち上がりが大きい形状とした
・実施例4、実施例5の全体形状は、
図12に示すグラフ線に沿う形状とし、各サンプルの長軸方向におけるヘッド部及びハンドル部の各領域の長さは
図13のTable.4に示す長さとした。実施例4、実施例5の形状は、実施例1の形状に対して第4領域~第5領域の立ち上がりが大きい形状とした
・実施例6、実施例7の全体形状は、
図14に示すグラフ線に沿う形状とし、各サンプルの長軸方向におけるヘッド部及びハンドル部の各領域の長さは
図15のTable.7に示す長さとした。実施例6の形状は、実施例1の形状に対して第1領域~第2領域の高さを高くし、実施例7の形状は、実施例1の形状に対して第1領域~第2領域の高さを高くし、更に第4領域~第5領域の高さを顕著に大きくした。
【0089】
<評価方法>
足に敏感部を有する試験者10人が各サンプルを座位の状態で使用し、下記の評価基準で評価した
〈清掃実感〉
・◎:ヘッド部に荷重がかかり過ぎずほとんど刺激がなく、清掃し易い
・〇:ヘッド部に荷重がかかり少し刺激はあるものの、耐えられる程度であり、清掃し易い
・×:ヘッド部に荷重がかかり耐えられないほど刺激が大きく、清掃し難い
〈操作性〉
・◎:肘や腕を支点にしてハンドル部の長軸方向に前後に移動し易く、清掃し易い
・〇:肘や腕を支点にしてハンドル部の長軸方向に前後にやや移動し難いものの、清掃し易い
・×:肘や腕を支点にしてハンドル部の長軸方向に前後に移動し難く、清掃し難い。
【0090】
<結果>
図11のTable.3に示すように、実施例1は、清掃実感と操作性が共に「◎」の評価となった。実施例2、実施例3は、何れも清掃実感と操作性が共に「〇」の評価となった。
【0091】
実施例1~実施例3は、
図11のTable.2に示すように、何れも第4割合は0.5倍以上4.0倍以下、第5割合は0.5倍以上5.0倍以下、第1割合は0を超え1.5倍以下、第2割合は0を超え2.0倍以下、第3割合は0を超え3.0倍以下であった。また、実施例1~実施例3は
図11のTable.3に示すように、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が1.0以上10.0以下、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が1.0以上5.0以下、第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が1.0以上4.0以下の範囲にあった。そのため、実施例1~実施例3は、座位で清掃する際に肘や腕を支点にして長軸方向へ移動させ易く身体への負担が軽減され、更にハンドル部が清掃部の背面側に反った形状となり、清掃時の力を逃がす方向へ促して「なで洗い」が可能となり、余分な力をかけずに適切に清掃することができたため、良好な結果が得られたものと考えられる。
【0092】
一方、比較例1は、清掃実感と操作性が共に「×」の評価となった。比較例1は、
図10に示すように、第1割合、第2割合、および第3割合が実質的に0となり、ヘッド部とハンドル部が面一で平行に繋がって全体形状がストレート形状となる。そのため、比較例1は、実施例1~実施例3のサンプルように清掃時に被清掃部位と清掃面が略平行にならず、ハンドル部からの力がヘッド部に過度に伝わってしまい、刺激が大きくなったと考えられる。また、比較例1は、全体形状がストレート形状となるため、座位で清掃する際に、身体への負担が大きく清掃し難かったものと考えられる。
【0093】
図13のTable.6に示すように、実施例4、実施例5は、何れも清掃実感と操作性が共に「〇」の評価となった。実施例4、実施例5は、
図13のTable.5に示すように、実施例1と同様、第4割合は0.5倍以上4.0倍以下、第5割合は0.5倍以上5.0倍以下、第1割合は0を超え1.5倍以下、第2割合は0を超え2.0倍以下、第3割合は0を超え3.0倍以下であった。また、実施例4~実施例5は、
図13のTable.6に示すように、実施例1と同様、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が1.0以上10.0以下、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が1.0以上5.0以下、第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が1.0以上4.0以下の範囲にあった。
【0094】
実施例1と、実施例4及び実施例5の評価結果の差異について、実施例4、実施例5の第4領域及び第5領域は、
図12に示すように、実施例1の第4領域及び第5領域と比べて背面側への反りが大きいため、ヘッド部への荷重のコントロールがやや難しく清掃時の刺激や清掃のし難さは若干あるものの、概ね良好な結果が得られたものと考えられる。
【0095】
図15のTable.9に示すように、実施例6、実施例7は、何れも清掃実感と操作性が共に「〇」の評価となった。実施例6、実施例7は、
図15のTable.8に示すように、実施例1と同様、何れも第4割合は0.5倍以上4.0倍以下、第5割合は0.5倍以上5.0倍以下、第1割合は0を超え1.5倍以下、第2割合は0を超え2.0倍以下、第3割合は0を超え3.0倍以下であった。また、実施例6、実施例7は、
図15のTable.9に示すように、実施例1と同様、第5領域高さLA5の第2領域高さLA2に対する比が1.0以上10.0以下、第5領域高さLA5の第3領域高さLA3に対する比が1.0以上5.0以下、第5領域高さLA5の第4領域高さLA4に対する比が1.0以上4.0以下の範囲にあった。
【0096】
実施例1と実施例6及び実施例7の評価結果の差異について、実施例6、実施例7の第4領域及び第5領域は、
図14に示すように、実施例1の第4領域及び第5領域と比べて背面側への反りが大きいため、ヘッド部への荷重のコントロールがやや難しく清掃時の刺激や清掃のし難さは若干あるものの、概ね良好な結果が得られたものと考えられる。