(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006724
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電動工具システム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240110BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107894
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】細川 信仁
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA25
3C064BA36
3C064BB01
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA28
3C064CA41
3C064CA53
3C064CA75
3C064CA80
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB22
3C064CB62
3C064CB71
3C064CB92
3C064DA02
3C064DA34
3C064DA42
3C064DA43
3C064DA59
3C064DA65
3C064DA73
3C064DA78
3C064DA91
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上を図る。
【解決手段】電動工具システム100は、駆動部13と、操作部12と、駆動制御部111と、工具本体と、検出部15と、記憶部17と、パラメータ演算部112と、を備える。駆動部13は、モータ131の回転により先端工具を駆動させて作業対象に対する作業を行わせる。工具本体は、駆動部13、操作部12、及び駆動制御部111を保持する。検出部15は、作業対象に対する先端工具及び工具本体のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を検出する。パラメータ演算部112は、操作部12が操作されている状態で、記憶部17に記憶された対応関係に基づいて、検出部15で検出された物理量の検出値に応じて制御パラメータの最適値を求める。駆動制御部111は、パラメータ演算部112で求めた制御パラメータの最適値に基づいて、操作部12へのユーザの操作に応じて駆動部13の動作を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを有し、前記モータの回転により先端工具を駆動させて作業対象に対する作業を行わせる駆動部と、
ユーザにより操作される操作部と、
前記操作部への前記ユーザの操作に応じて前記駆動部の動作を制御する駆動制御部と、
前記駆動部、前記操作部、及び前記駆動制御部を保持する、可搬型の工具本体と、
前記作業対象に対する前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を検出する検出部と、
前記物理量に対して前記駆動部の動作に関連する制御パラメータを対応付けた対応関係を記憶する記憶部と、
前記操作部が操作されている状態で、前記対応関係に基づいて、前記検出部で検出された前記物理量の検出値に応じて前記制御パラメータの最適値を求めるパラメータ演算部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記パラメータ演算部で求めた前記制御パラメータの最適値に基づいて、前記駆動部の動作を制御する、
電動工具システム。
【請求項2】
前記検出部は、カメラでの撮像画像に基づいて前記物理量を求める物理量抽出部を備え、
前記パラメータ演算部は、前記物理量抽出部で求めた前記物理量に応じて前記制御パラメータの最適値を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記物理量として、前記作業対象と前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方との間の距離に関するパラメータを検出し、
前記パラメータ演算部は、前記検出部で検出された前記距離に関するパラメータに応じて、前記制御パラメータの最適値を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記制御パラメータは、前記モータの回転数の上限である最大回転数を含み、
前記パラメータ演算部は、前記制御パラメータの最適値として、前記最大回転数の最適値を求める、
請求項3に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記距離に関するパラメータとして、前記作業対象と前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方との間の距離を検出し、
前記パラメータ演算部は、前記距離の検出値が小さくなるにつれて、前記最大回転数の最適値を小さくする、
請求項4に記載の電動工具システム。
【請求項6】
前記検出部は、前記物理量として、前記作業対象に対する前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方の姿勢のずれを示す姿勢差を、前記作業対象までの距離をそれぞれ検出する複数の測距センサの検出結果に基づいて検出し、
前記パラメータ演算部は、前記検出部で検出された前記姿勢差に応じて、前記制御パラメータの最適値を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項7】
前記制御パラメータは、前記モータの回転数の上限である最大回転数を含み、
前記検出部は、前記物理量として、前記作業対象に対する前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方の姿勢のずれを示す姿勢差を検出し、
前記パラメータ演算部は、前記姿勢差が許容範囲外の場合、前記最大回転数の最適値を0とする、
請求項1に記載の電動工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具システムに関する。本開示は、より詳細には、可搬型の工具本体を備える電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業管理システムが開示されている。作業管理システムは、制御装置と工具とを備えている。
【0003】
工具は、締結部品を締め付ける作業の際に用いられる。工具は、締付トルクのデータを前記制御装置に向けて送信する。制御装置は、処理部を備える。処理部は、工具により締結部品に与えられる締付トルクと、撮像装置により撮像された撮像画像とに基づいて、作業が正常に行われたか否かを判定する判定処理を実行する。正常と判定した場合、処理部は、現在の作業箇所での作業が終了したと判定し、次の作業箇所に関する指示信号を送信する処理を実行する。異常と判定した場合、処理部は、作業を正しく行うように指示する信号を送信する処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業管理システムのような電動工具システムでは、工具を用いた作業の作業効率の向上が望まれる場合がある。
【0006】
本開示の目的は、作業効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の電動工具システムは、駆動部と、操作部と、駆動制御部と、工具本体と、検出部と、記憶部と、パラメータ演算部と、を備える。前記駆動部は、モータを有し、前記モータの回転により先端工具を駆動させて作業対象に対する作業を行わせる。前記操作部は、ユーザにより操作される。前記駆動制御部は、前記操作部への前記ユーザの操作に応じて前記駆動部の動作を制御する。前記工具本体は、可搬型であって、前記駆動部、前記操作部、及び前記駆動制御部を保持する。前記検出部は、前記作業対象に対する前記先端工具及び前記工具本体のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を検出する。前記記憶部は、前記物理量に対して前記駆動部の動作に関連する制御パラメータを対応付けた対応関係を記憶する。前記パラメータ演算部は、前記操作部が操作されている状態で、前記対応関係に基づいて、前記検出部で検出された前記物理量の検出値に応じて前記制御パラメータの最適値を求める。前記駆動制御部は、前記パラメータ演算部で求めた前記制御パラメータの最適値に基づいて、前記駆動部の動作を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業効率の向上を図ることが可能となる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の電動工具システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具システムのシステム構成図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具システムに用いられる電動工具の概略図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具システムの動作を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5は、同上の電動工具システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態の電動工具システムについて、図面を用いて説明する。下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(1)概要
図1に示すように、本実施形態の電動工具システム100は、電動工具1を備えている。
【0012】
図1~
図3に示すように、電動工具1は、駆動部13と、操作部12と、駆動制御部111と、工具本体10と、を備えている。電動工具1は、更に、検出部15と、記憶部17と、パラメータ演算部112と、を備えている。
【0013】
駆動部13は、モータ131を有する。駆動部13は、モータ131の回転により先端工具20(
図3参照)を駆動させて、作業対象W1に対する作業を行う。作業対象W1は、金属、木材、樹脂等の任意の材料から形成される、任意の形状の物体を含み得る。
図3に示す例では、作業対象W1は、ねじ孔H1が形成された壁である。作業対象に対する作業は、例えば、作業対象W1のねじ孔H1に締め付け部材200を締め付ける作業である。締め付け部材200は、例えばネジ、ボルト等である。
【0014】
操作部12は、ユーザ(操作者)により操作される。駆動制御部111は、操作部12へのユーザの操作に応じて、駆動部13の動作を制御する。
【0015】
工具本体10は、可搬型であり、駆動部13、操作部12、及び駆動制御部111を保持する。本実施形態の電動工具システム100では、工具本体10は、検出部15、記憶部17及びパラメータ演算部112を更に保持する。
【0016】
検出部15は、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を、検出する。記憶部17は、物理量に対して駆動部13の動作に関連する制御パラメータを対応付けた対応関係を記憶する。パラメータ演算部112は、操作部12が操作されている状態で、記憶部17に記憶された対応関係に基づいて、検出部15で検出された物理量の検出値に応じて駆動部13の動作に関連する制御パラメータの最適値を求める。駆動制御部111は、パラメータ演算部112で求めた制御パラメータの最適値に基づいて、駆動部13の動作を制御する。
【0017】
本実施形態の電動工具システム100では、制御パラメータは、例えば、モータ131の回転数の上限である最大回転数を含む。パラメータ演算部112は、制御パラメータの最適値として、最大回転数の最適値を求める。駆動制御部111は、パラメータ演算部112で求めた最大回転数の最適値に基づいて、駆動部13の動作を制御する。
【0018】
ここで、電動工具1を用いて作業対象W1に対する作業を行う場合、作業対象W1に対する先端工具20及び/又は工具本体10の空間的な関係性が、想定されている状態から外れていると、作業が適切に行えない可能性がある。例えば、作業対象W1のねじ孔H1に締め付け部材200を締め付ける作業を行う場合、作業対象W1に対して工具本体10が想定よりも傾いていると、いわゆる「かじり」等の不具合が発生しやすくなる。作業対象W1に対する作業が適切に行えなかった場合、その作業対象W1が不良品となったり、作業をやり直す必要が生じたりする可能性がある。その場合、作業効率が低下し得る。
【0019】
本実施形態の電動工具システム100では、操作部12が操作されている状態で、作業対象W1に対する先端工具20及び/又は工具本体10の空間的な関係性を考慮して、駆動部13が制御される。そのため、作業対象W1に対する作業を適切に行えない可能性を低減することが可能となり、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0020】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る電動工具システム100について、図面を参照しながら詳細に説明する。電動工具システム100は、電動工具1に加えて、処理装置9を備えている。
【0021】
(2.1)処理装置
処理装置9は、例えば適宜の演算処理が可能な情報処理装置により実現される。
【0022】
処理装置9の形態は、特に限定されない。処理装置9は、電動工具1と直接又は間接的に通信可能であって、所定のプログラムに従って所望の処理を実行できる装置であればよい。処理装置9は、例えば、ユーザに装着されるメガネ型、腕輪型等のウェアラブル端末であってもよい。処理装置9は、例えば、スマートホン、タブレット端末等の携帯型の情報端末であってもよい。処理装置9は、例えば、ノートパソコン、デスクトップパソコン等の据え置き型の情報端末であってもよい。
【0023】
処理装置9は、
図1に示すように、通信部91と、制御部92と、操作部93と、表示部94と、を備える。
【0024】
通信部91は、電動工具1(詳しくは、後述の通信部16)と通信を行うための通信モジュールである。通信部91は、例えば、ZigBee(登録商標)に準拠した近距離無線通信を行う。
【0025】
表示部94は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイのような薄型ディスプレイを備え、制御部92によって表示内容が制御される。
【0026】
操作部93は、例えば、表示部94を構成する薄型ディスプレイに設けられたタッチスイッチを備え、操作に応じた信号を制御部92に出力する。操作部93は、ボタンスイッチ、マウス、キーボード等を備えていてもよい。
【0027】
制御部92は、通信部91、操作部93、表示部94等の動作を制御する。制御部92は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されている。1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部92として機能する。プログラムは、ここでは制御部92のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0028】
図1に示すように、制御部92は、工具情報受付部921を備えている。工具情報受付部921は、工具本体10の先端工具取付部134(後述する)に取り付けられる先端工具20の情報(工具情報)を受け付ける。工具情報受付部921は、例えば、表示部94に所定の入力画面が表示された状態で、操作部93を介してユーザからの入力を受け付けることで、工具情報を受け付ける。
【0029】
工具情報は、先端工具20の長さを含み得る。工具情報は、先端工具20の径、種類(例えば、ドライバビット又はソケットビットの別)等を含み得る。工具情報は、先端工具20の製品情報(製造メーカ、型番等)を含み得る。
【0030】
制御部92は、受け付けた工具情報を、通信部91を介して電動工具1へ送信する。
【0031】
(2.2)電動工具
電動工具1は、例えば、工場、建築現場等で使用される事業者向けの電動工具である。電動工具1は、例えば、設計図面、作業指図書等に従って、複数の締め付け部材200を作業対象W1に締め付ける作業を行うために使用される。この種の電動工具1としては、例えば、締め付け部材200を回転させて衝撃力を加えることによって締め付ける電動式のインパクトドライバーがある。なお、電動工具1は、電動式のインパクトドライバーに限定されず、電動式のインパクトレンチでもよいし、打撃力を与えるタイプではない電動ドリルドライバー、電動式のトルクレンチ等でもよい。
【0032】
図1~
図3に示すように、電動工具1は、工具本体10と、制御部11と、操作部12と、駆動部13と、センサ部14と、検出部15と、通信部16と、記憶部17と、電源部18と、を備える。
【0033】
工具本体10は、制御部11、操作部12、駆動部13、センサ部14、検出部15、通信部16、記憶部17、及び電源部18を保持する。
【0034】
図3に示すように、工具本体10は、筒形状の胴体部101と、胴体部101の周面から径方向に突出する握り部102と、を備える。
【0035】
胴体部101の軸方向における一端側からは、駆動部13の出力軸133が突出している。出力軸133の先端には、先端工具取付部134が設けられている。先端工具取付部134は、例えばチャックを備える。先端工具取付部134には、作業対象W1及び締め付け部材200に合わせた先端工具20(例えば、ドライバビット、ソケットビット等)が着脱自在に取り付けられる。
【0036】
握り部102の一端(
図3における下端)には、樹脂製のケース内に電源部18を収納した電池パック103が、着脱自在に取り付けられている。
【0037】
電源部18は、蓄電池を備えている。電源部18は、電池パック103内に収容されている。電池パック103は、樹脂製のケース内に電源部18を収容して構成されている。電池パック103を工具本体10から取り外し、取り外した電池パック103を充電器に接続することによって、電源部18の蓄電池を充電することができる。電源部18は、蓄電池に充電された電力で、制御部11を含む電気回路と駆動部13(モータ131)とに動作に必要な電力を供給する。電源部18及び電池パック103は、本実施形態では電動工具1の構成要素に含まれることとするが、電動工具1の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0038】
制御部11は、駆動部13、センサ部14、検出部15、通信部16等の動作を制御する。制御部11は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されている。1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部11として機能する。プログラムは、ここでは制御部11のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部11は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。制御部11を構成するコンピュータシステム(回路基板110等)は、例えば握り部102の内部に収容されている。
【0039】
図1に示すように、制御部11は、駆動制御部111を備えている。駆動制御部111は、操作部12へのユーザの操作に応じて、駆動部13(モータ131)の動作を制御する。
【0040】
操作部12は、握り部102に設けられたトリガスイッチ121を備える。トリガスイッチ121がユーザによって操作されると、トリガスイッチ121の引き込み量(操作量)に比例した大きさの操作信号が、駆動制御部111へ出力される。駆動制御部111は、操作部12からの操作信号に応じた速度で回転するように、駆動部13のモータ131の回転数を調整する。モータ131の回転数とは、モータ131の回転速度であり、単位時間当たりにモータ131のロータが回転する回数(速さ)[rpm]を意味する。
【0041】
駆動部13は、モータ131と、インパクト機構132と、出力軸133と、先端工具取付部134と、を備える。
【0042】
モータ131の動作(回転)は、駆動制御部111によって制御される。モータ131の出力軸の回転は、インパクト機構132を介して出力軸133に伝達される。出力トルクが所定レベル以下であれば、インパクト機構132は、モータ131の出力軸の回転を減速して出力軸133に伝達するように構成されている。出力トルクが所定レベルを超えると、インパクト機構132は、出力軸133に打撃力を加えて、出力軸133を回転させるように構成されている。モータ131及びインパクト機構132は胴体部101内に収納されている。
【0043】
センサ部14は、出力軸133による締付トルクを測定する。センサ部14は、例えば、出力軸133に取り付けられた磁歪式のトルクセンサ141を備えている。磁歪式のトルクセンサ141は、出力軸133にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。これによりセンサ部14は、出力軸133に加わったトルクを測定する。つまり、センサ部14は、電動工具1が締め付け部材200に与えるトルク(締付トルク)を測定する。センサ部14は、測定したトルク(締付トルク)を制御部11へ出力する。センサ部14は、モータ131の出力軸に加わるトルクを測定してもよい。センサ部14は、モータ131の出力軸に加わるトルクの測定値、及び減速機構の減速比等に基づいて、出力軸133に加わる締付トルクを測定してもよい。なお、センサ部14は磁歪式のトルクセンサ141を備えるものに限定されず、センサ部14の具体化手段は適宜変更が可能である。例えば、センサ部14は、モータ131に流れる電流を検出することによって、モータ131の出力軸に加わるトルクを測定してもよい。或いは、センサ部14は、インパクト機構132が出力軸133に加えた打撃の回数を振動センサを用いて計数し、打撃の回数から締付トルクを求めてもよい。
【0044】
駆動制御部111は、操作部12から入力される操作信号に応じてモータ131を駆動する。駆動制御部111は、電源部18からの電圧をモータ131用の駆動電圧に変換するインバータ回路を備えている。駆動電圧は、例えば、U相電圧、V相電圧及びW相電圧を含む三相交流電圧である。インバータ回路は、例えば、PWMインバータとPWM変換器とを利用して実現できる。PWM変換器は、駆動電圧の目標値(電圧指令値)に従って、パルス幅変調されたPWM信号を生成する。PWMインバータは、このPWM信号に応じた駆動電圧をモータ131に与えてモータ131を駆動する。PWMインバータは、例えば、三相分のハーフブリッジ回路とドライバとを備える。PWMインバータでは、ドライバがPWM信号に従って各ハーフブリッジ回路におけるスイッチング素子をオン/オフすることにより、電圧指令値に従った駆動電圧がモータ131に与えられる。
【0045】
ここで、駆動制御部111は、モータ131の回転数が最大回転数を超えないように、駆動部13の動作を制御する。すなわち、駆動制御部111は、トリガスイッチ121の引き込み量が検出可能な最大値であっても、モータ131の回転数が最大回転数を超えないように、駆動部13の動作を制御する。モータ131の最大回転数とは、モータ131の回転数の上限の設定値である。
【0046】
駆動制御部111は、例えば、センサ部14で測定された締付トルクの値が、予め設定されたトルク設定値に達すると、駆動部13のモータ131の回転を停止させる機能を有する。トルク設定値は変更可能であってもよく、例えば、ユーザの操作部93への操作に応じて処理装置9から送信される設定信号に基づいて、制御部11によって設定変更される。
【0047】
検出部15は、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を検出する。検出部15は、操作部12が操作されている状態で、物理量を検出する。
【0048】
図1に示すように、検出部15は、測距センサ151と、カメラ152と、物理量抽出部153と、を備える。物理量抽出部153は、ここでは、制御部11を構成するコンピュータシステムにより実現されている。
【0049】
図3に示すように、測距センサ151は、工具本体10に保持されている。検出部15(測距センサ151)は、物理量として、工具本体10(より詳細には、工具本体10において測距センサ151が保持されている部分)と作業対象W1との間の距離に関するパラメータを検出する。ここでは、距離に関するパラメータは、距離である。すなわち、測距センサ151は、工具本体10と作業対象W1との間の距離(測距センサ151から作業対象W1までの距離)を検出する。
【0050】
測距センサ151は、例えばタイムオブフライト(TOF)方式の測距センサである。測距センサ151は、発光部と受光部とを備え、発光部から放出された光が作業対象W1に反射されて受光部がその反射光を受光するまでの時間に基づいて、工具本体10(測距センサ151)と作業対象W1との間の距離を検出する。測距センサ151は、直接TOF方式のセンサであってもよいし、間接TOF方式のセンサであってもよい。
【0051】
測距センサ151は、検出した物理量(工具本体10と作業対象W1との間の距離)を示す信号を、制御部11へ送信する。なお、工具本体10と作業対象W1との間の距離を検出するための情報(例えば、発光部が光を放出してから受光部が受光するまでの時間)を測距センサ151が検出し、工具本体10と作業対象W1との間の距離自体は、別の演算装置(例えば物理量抽出部153)がその情報を用いて検出してもよい。
【0052】
本実施形態の電動工具1では、検出部15は、複数の測距センサ151を備えている。より詳細には、検出部15は、測距センサ151を3つ備えている。検出部15は、2又は4以上の測距センサ151を備えていてもよい。
【0053】
複数の測距センサ151は、ここでは、前方から見て、出力軸133を基準として互いに対称な位置に配置されている。例えば、3つの測距センサ151は、出力軸133の周りに等間隔(120度間隔)で配置されている。例えば、3つの測距センサ151のうちの1つは、前方から見て出力軸133の上側に配置され、別の1つは、前方から見て出力軸133の右下側に配置され、残りの1つは、前方から見て出力軸133の左下側に配置される。本開示において、「前方」とは、工具本体10から先端工具20へ向かう向きを意味し、「前方から見る」とは、先端工具20側から工具本体10側を見ることを意味する。
【0054】
複数の測距センサ151は、検出した物理量(測距センサ151から作業対象W1までの距離)を、物理量抽出部153へ送信する。
【0055】
物理量抽出部153は、複数の測距センサ151でそれぞれ検出された距離の値に基づいて、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの一方の姿勢のずれを示す姿勢差を検出する。すなわち、検出部15は、物理量として、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方の姿勢のずれを示す姿勢差を、作業対象W1までの距離をそれぞれ検出する複数の測距センサ151の検出結果に基づいて検出する。ここでは、物理量抽出部153は、作業対象W1に対する工具本体10の姿勢差を検出する。本開示において「姿勢差」とは、作業対象W1に対する工具本体10又は先端工具20(ここでは工具本体10)の姿勢の、基準となる姿勢からのずれの程度を意味する。「基準となる姿勢」とは、例えば、作業対象W1に対して工具本体10が正対している状態の、工具本体10の姿勢である。「基準となる姿勢」とは、例えば作業対象W1のうちで電動工具1と対向する対向面が平面状の場合、先端工具取付部134に取り付けられている先端工具20の軸線が作業対象W1の対向面に対して直交している状態の、工具本体10の姿勢である。一具体例において、「姿勢差」は、複数の測距センサ151でそれぞれ検出された距離の値から求められる先端工具20の軸線の向きと、基準となる姿勢(作業対象W1に対して先端工具20が正対している状態)での先端工具20の軸線の向きと、がなす角度の大きさである。
【0056】
物理量抽出部153は、複数(3つ)の測距センサ151でそれぞれ検出された複数(3つ)の距離の値の差に基づいて、姿勢差を検出する。例えば、作業対象W1の対向面が平面状の場合、複数の測距センサ151でそれぞれ検出された複数の距離の値が互いに等しければ、作業対象W1に対して工具本体10が正対していると言える(姿勢差は0)。一方、例えば、上側の測距センサ151で検出された距離の値が、残り2つ(左下及び右下)の測距センサ151で検出された距離の値よりも小さい場合、工具本体10が前斜め下に傾いている、と言える。傾きの大きさ(基準となる姿勢に対する傾斜角度、すなわち姿勢差)は、複数(3つ)の測距センサ151でそれぞれ検出された複数(3つ)の距離の値を用いて、求めることが可能である。
【0057】
物理量抽出部153は、求めた物理量(姿勢差)を含む信号を、制御部11へ送信する。
【0058】
カメラ152は、工具本体10に保持されている。カメラ152は、工具本体10の前方を撮影する。カメラ152は、工具本体10の前方を撮影できるように、例えば工具本体10の胴体部101の上面(
図3における上面)に取り付けられている。カメラ152は、ここでは、先端工具20のうちの少なくとも前端(締め付け部材200の頭部に嵌め込まれる部分)と、締め付け部材200のうちの少なくとも後端(頭部を含む部分)と、を一緒に撮影できるように、画角及び位置が設定されている。カメラ152は、工具本体10(例えば胴体部101)に埋め込まれて工具本体10と一体に形成されていてもよいし、工具本体10に設けられたコネクタ(例えば、USBコネクタ)に着脱可能に接続されて工具本体10に保持されてもよい。
【0059】
カメラ152は、撮像画像を、物理量抽出部153へ送信する。
【0060】
物理量抽出部153は、カメラ152での撮像画像に基づいて、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を求める。ここでは、物理量抽出部153は、カメラ152での撮像画像に基づいて、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの一方の姿勢のずれを示す姿勢差を検出する。物理量抽出部153は、特に、作業対象W1に対する先端工具20の姿勢差を検出する。
【0061】
物理量抽出部153は、撮像画像の画像解析を行うことで、姿勢差を検出する。「姿勢差」は、上述のように、作業対象W1に対する先端工具20又は工具本体10(ここでは先端工具20)の姿勢の、基準となる姿勢からのずれの程度を意味する。「基準となる姿勢」とは、例えば、作業対象W1に対して先端工具20が正対している状態の、先端工具20の姿勢である。「基準となる姿勢」とは、例えば作業対象W1の対向面が平面状の場合、先端工具20の軸線が作業対象W1の対向面に対して直交している状態の先端工具20の姿勢である。一具体例において、「姿勢差」は、カメラ152での撮像画像から求められる先端工具20の軸線の向きと、基準となる姿勢(作業対象W1に対して先端工具20が直交している状態)での先端工具20の軸線の向きと、がなす角度の大きさである。
【0062】
物理量抽出部153は、カメラ152による撮像画像を画像解析することで、姿勢差を検出する。物理量抽出部153は、例えば、画像解析の結果に基づいて、作業対象W1の対向面の法線方向(基準となる姿勢での先端工具20の軸線の向きに相当)と、先端工具20の軸線の向きと、がなす角度を、姿勢差として求める。「作業対象W1の対向面の法線方向」は、締め付け部材200の軸線の向きで代用されてもよい。
【0063】
このように、カメラ152を利用して物理量を求めることにより、より明確に物理量を検出することが可能となり、より正確に最適な制御パラメータの値を求めることが可能となる。
【0064】
物理量抽出部153は、求めた物理量(姿勢差)を示す信号を、制御部11へ送信する。
【0065】
通信部16は、例えば、処理装置9と無線通信を行うための通信モジュールである。通信部16は、例えば、ZigBee(登録商標)に準拠した近距離無線通信を行う。通信部16は、処理装置9から無線通信方式で、工具情報を含む信号を受信する。なお、通信部16と処理装置9との間の無線通信の方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信であってもよい。また、通信部16と処理装置9との間の通信は、有線通信であってもよい。
【0066】
記憶部17は、例えば、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ等を含む。不揮発性メモリには、例えばEEPROM又はフラッシュメモリ等がある。記憶部17は、制御部11が実行する制御プログラムを記憶する。記憶部17は、処理装置9から送信された「工具情報」を記憶する。工具情報は、先端工具取付部134に取り付けられている先端工具20の長さの情報を含む。また、記憶部17は、後述の「対応関係」を記憶する。
【0067】
図1に示すように、制御部11は、パラメータ演算部112を更に備える。パラメータ演算部112は、検出部15で検出された物理量の検出値に応じて、駆動部13の動作に関連する制御パラメータの最適値を求める。パラメータ演算部112は、記憶部17に記憶された対応関係に基づいて、制御パラメータの最適値を求める。
【0068】
記憶部17に記憶された「対応関係」は、検出部15で検出される物理量(距離、及び姿勢差)が取り得る複数の値に対して、制御パラメータの複数の値(最適値)を対応付けている。「対応関係」は、例えば、データテーブル、又は関係式等の形で、記憶部17に予め記憶されている。
【0069】
すなわち、「対応関係」は、作業対象W1に対する先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量(距離、姿勢差)に対して、駆動部13の動作に関連する制御パラメータを対応付けている。本実施形態の電動工具システム100では、上述のように制御パラメータはモータ131の最大回転数を含むので、「対応関係」は、物理量が取り得る複数の値に対して、最大回転数の複数の値(最適値)を対応付けている。
【0070】
パラメータ演算部112は、操作部12が操作されている状態(トリガスイッチ121が引かれている状態)で、検出部15で検出された物理量の検出値に応じて、制御パラメータ(最大回転数)の最適値を求める。そして、駆動制御部111は、パラメータ演算部112で求めた制御パラメータの最適値に基づいて、駆動部13の動作を制御する。
【0071】
パラメータ演算部112は、検出部15で検出された距離に関するパラメータに応じて、制御パラメータの最適値を求める。具体的には、パラメータ演算部112は、検出部15(測距センサ151)で検出された距離の値に応じて、モータ131の最大回転数の最適値を求める。「検出部15で検出された距離の値」は、複数(3つ)の測距センサ151でそれぞれ検出された距離の値の平均値、最大値又は最小値でもよいし、複数(3つ)の測距センサ151のうちの特定の1つの測距センサ151で検出された距離の値でもよい。
【0072】
パラメータ演算部112は、操作部12が操作されている状態(トリガスイッチ121が引かれている状態)で、「対応関係」に基づいて、測距センサ151で検出された距離の値の変化に応じてモータ131の最大回転数の最適値を変化させる。すなわち、操作部12が操作されてモータ131が回転している状態では、先端工具20によって締め付け部材200が作業対象W1に徐々にねじ込まれていくことで、作業対象W1と工具本体10との間の距離が徐々に変化する。パラメータ演算部112は、この距離の変化に応じて、最大回転数の最適値を変化させる。具体的には、パラメータ演算部112は、距離の検出値が小さくなるにつれて、最大回転数の最適値を小さくする。
【0073】
より詳細には、パラメータ演算部112は、記憶部17に記憶されている「工具情報(先端工具20の長さ)」と、検出部15で検出された作業対象W1と工具本体10との間の距離と、(必要に応じて更に測距センサ151から先端工具取付部134までの距離と、)に基づいて、作業対象W1と先端工具20との間の距離L0(
図3参照)を求める。
図4に示すように、パラメータ演算部112は、距離L0が所定値L1以上の場合(
図4において、距離L0が所定値L1である個所よりも左側の領域)では、最大回転数の最適値を、最大値N1とする。一方、距離L0が所定値L1よりも小さい場合(
図4において、距離L0が所定値L1である個所よりも右側の領域)、パラメータ演算部112は、最大回転数の最適値を、0以上で最大値N1未満の値に設定する。例えば、距離L0が所定値L1よりも小さい場合、パラメータ演算部112は、最大回転数の最適値を、所定値N2(0≦N2<N1)に設定する。
【0074】
これにより、締め付け部材200の締め付けの開始時(L0≧L1)には、モータ131を高速で(最大回転数の最大値N1で)回転させて素早く締め付け作業を行うことができる。また、締め付け部材200が着座に近づく(距離L0が所定値L1より小さくなる)と、モータ131の最大回転数が小さくなり、モータ131の回転数も小さくなる。そして、モータ131が比較的低速(最大値N1よりも小さな回転数)で回転している状態で、締め付け部材200が作業対象W1に着座する。これにより、例えば、モータ131が高速で回転中に締め付け部材200が着座することで生じ得る作業対象W1からの反動等を、抑制することが可能となる。
【0075】
パラメータ演算部112は、検出部15で検出された姿勢差に応じて、制御パラメータの最適値を求める。ここでの「姿勢差」は、測距センサ151の検出結果に基づいて求められた値でもよいし、カメラ152での撮像画像に基づいて求められた値でもよい。
【0076】
パラメータ演算部112は、例えば、姿勢差が許容範囲外の場合、最大回転数の最適値を0とする。これにより、作業対象W1に対して工具本体10が想定よりも傾いた状態で締め付け部材200の締め付け作業が行われる事態が抑制される。そのため、いわゆる「かじり」等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0077】
この構成の利点について、比較例の電動工具との比較を交えて説明する。比較例の電動工具は、操作部が操作されて締め付け作業を開始する作業開始時に、モータの回転数を、最大回転数よりも小さな値に強制的に低下させる。これにより、比較例の電動工具では、姿勢差が許容範囲内になりやすくなり、「かじり」等の不具合の発生が抑制される。しかしながら、比較例の電動工具では、作業開始時にモータの回転数を強制的に低下させるので、作業効率が低下する。
【0078】
一方、本実施形態の電動工具システム100では、締め付け部材200の締め付け作業の開始時において、姿勢差が許容範囲外であることが検出された場合、操作部12が操作されてトリガスイッチ121がオンされても、駆動制御部111はモータ131の回転を開始させない。そして、姿勢差が許容範囲内になれば、駆動制御部111は、最大回転数を最大値N1としてモータ131の回転を開始させる。これにより、作業対象W1での不具合の発生を抑制しながらも、作業効率を向上させることが可能となる。
【0079】
姿勢差の「許容範囲」は、先端工具20の種類、締め付け部材200の種類、作業対象W1の種類等に応じて適宜設定変更されてよい。
【0080】
(3)動作例
本実施形態の電動工具システム100の動作の具体例について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0081】
電動工具1を用いてユーザが作業を行う場合、ユーザはまず、処理装置9の操作部93を操作して工具情報を入力する(ST1)。処理装置9は、受け付けた工具情報を含む信号を、電動工具1へ送信する。電動工具1は、処理装置9から工具情報を含む信号を受信すると、工具情報を記憶部17に記憶させる。
【0082】
ユーザは、電動工具1を所定の位置にセットして、トリガスイッチ121をオンする(ST2)。トリガスイッチ121がオンされると、検出部15は、物理量を検出する(ST3)。具体的には、物理量抽出部153は、カメラ152での撮像画像に基づいて姿勢差を検出し、測距センサ151は、作業対象W1までの距離を検出する。
【0083】
制御部11(パラメータ演算部112)は、姿勢差が許容範囲内であるか否かを判定する(ST4)。姿勢差が許容範囲外の場合(ST4:No)、制御部11は、モータ131の最大回転数を0に設定して、モータ131の回転を停止させる(始動させない)(ST9)。
【0084】
姿勢差が許容範囲内の場合(ST4:Yes)、制御部11(パラメータ演算部112)は、作業対象W1と先端工具20との間の距離L0が所定値L1以上であるか否かを判定する(ST5)。距離L0が所定値L1以上の場合(ST5:Yes)、制御部11は、モータ131の最大回転数を最大値N1に設定する。そして制御部11(駆動制御部111)は、トリガスイッチ121の引き込み量に基づいて、モータ131の回転数が最大回転数(最大値N1)を超えないように、駆動部13を制御する。これにより、ユーザは、電動工具1を用いて高速作業を行う(ST6)。
【0085】
高速作業を行っている間、検出部15は、随時物理量(距離、姿勢差)を検出する(ST3)。姿勢差が許容範囲外となれば(ST4:No)、制御部11(パラメータ演算部112)は、モータ131の最大回転数を0に設定してモータ131の回転を停止させる。
【0086】
距離L0が所定値L1未満の場合(ST5:No)、制御部11は、モータ131の最大回転数を、所定値N2(<N1)に設定する。これにより、ユーザは、電動工具1を用いて低速作業を行う(ST7)。低速作業時において、測距センサ151は随時物理量(距離)を検出する。制御部11(駆動制御部111)は、トリガスイッチ121の引き込み量に基づいて、モータ131の回転数が最大回転数を超えないように、駆動部13を制御する。
【0087】
距離L0が0となって作業が完了すると(ST8:Yes)、制御部11は、モータ131を停止させる(ST9)。
【0088】
なお、電動工具システム100の動作は、
図5のフローチャートに限られず、工程の順番が変更されたり一部の工程が省略又は追加されたりしてもよい。例えば、検出部15は、トリガスイッチ121のオン(ST2)よりも前に、物理量を検出していてもよい。また、低速作業時(ST7)にも、検出部15が姿勢差を検出し、姿勢差が許容範囲内にあるか否かを制御部11(パラメータ演算部112)が判定してもよい。
【0089】
(4)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。上記の実施形態及び以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0090】
一変形例において、パラメータ演算部112がその最適値を求める駆動部13の動作に関連する制御パラメータは、モータ131の最大回転数に限られず、例えばモータ131に供給するモータ電流の最大値であってもよいし、PWM信号のデューティの最大値であってもよい。
【0091】
一変形例において、電動工具システム100は、処理装置9を備えていなくてもよい。電動工具1の制御部11が、工具情報受付部921の機能を備えていてもよい。例えば、先端工具20自体の表面に工具情報を読み取るためのコードが刻印されていて、先端工具取付部134に先端工具20が取り付けられた時にコードを読み取ることで工具情報受付部921が工具情報を取得してもよい。
【0092】
一変形例において、電動工具システム100は、工具情報受付部921を備えていなくてもよい。例えば、決まった長さの先端工具20のみが先端工具取付部134に取り付け可能な場合、工具情報を取得する必要はない。
【0093】
一変形例において、電動工具1の少なくとも一部の機能、例えば物理量抽出部153の機能、パラメータ演算部112の機能等は、処理装置9に設けられていてもよい。
【0094】
一変形例において、検出部15は、カメラ152を備えずに物理量抽出部153のみを備えていてもよい。
【0095】
一変形例において、物理量抽出部153は、カメラ152での撮像画像に基づいて、工具本体10と作業対象W1との間の距離又は先端工具20と作業対象W1との間の距離L0を検出してもよい。
【0096】
一変形例において、検出部15は、例えば加速度センサの検出結果に基づいて、姿勢差を検出してもよい。要するに、物理量を検出する検出部15の構成は、測距センサ151及びカメラ152を用いた構成に限定されない。
【0097】
一変形例において、検出部15は、距離に関するパラメータとして、作業対象W1と先端工具20及び工具本体10のうちの少なくとも一方との間の距離の変化量(又は単位時間当たりの変化量)を、検出してもよい。
【0098】
一変形例において、パラメータ演算部112は、距離L0が所定値L1以下の領域において、最大回転数の最適値を多段階に変化させてもよいし、距離L0が小さくなるにつれて徐々に小さくなるように最大回転数の最適値を変化させてもよい。
【0099】
(5)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、本明細書には以下の態様が開示されている。
【0100】
第1の態様の電動工具システム(100)は、駆動部(13)と、操作部(12)と、駆動制御部(111)と、工具本体(10)と、検出部(15)と、記憶部(17)と、パラメータ演算部(112)と、を備える。駆動部(13)は、モータ(131)を有する。駆動部(13)は、モータ(131)の回転により先端工具(20)を駆動させて作業対象(W1)に対する作業を行わせる。操作部(12)は、ユーザにより操作される。駆動制御部(111)は、操作部(12)へのユーザの操作に応じて駆動部(13)の動作を制御する。工具本体(10)は、可搬型である。工具本体(10)は、駆動部(13)、操作部(12)、及び駆動制御部(111)を保持する。検出部(15)は、作業対象(W1)に対する先端工具(20)及び工具本体(10)のうちの少なくとも一方の空間的な関係性を示す物理量を検出する。記憶部(17)は、上記の物理量に対して駆動部(13)の動作に関連する制御パラメータを対応付けた対応関係を記憶する。パラメータ演算部(112)は、操作部(12)が操作されている状態で、上記の対応関係に基づいて、検出部(15)で検出された物理量の検出値に応じて制御パラメータの最適値を求める。駆動制御部(111)は、パラメータ演算部(112)で求めた制御パラメータの最適値に基づいて、駆動部(13)の動作を制御する。
【0101】
この態様によれば、作業対象(W1)が不良品となる可能性を低減することが可能となり、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0102】
第2の態様の電動工具システム(100)では、第1の態様において、検出部(15)は、カメラ(152)での撮像画像に基づいて上記の物理量を求める物理量抽出部(153)を備える。パラメータ演算部(112)は、物理量抽出部(153)で求めた物理量に応じて制御パラメータの最適値を求める。
【0103】
この態様によれば、カメラ(152)を利用することにより、より明確に物理量を検出することが可能となり、より正確に最適な制御パラメータの値を求めることが可能となる。
【0104】
第3の態様の電動工具システム(100)では、第1又は第2の態様において、検出部(15)は、上記の物理量として、作業対象(W1)と先端工具(20)及び工具本体(10)のうちの少なくとも一方との間の距離に関するパラメータを検出する。パラメータ演算部(112)は、検出部(15)で検出された距離に関するパラメータに応じて、制御パラメータの最適値を求める。
【0105】
この態様によれば、作業時において、距離に関するパラメータに応じて動的に制御パラメータの最適値を求めることが可能となる。
【0106】
第4の態様の電動工具システム(100)では、第3の態様において、制御パラメータは、モータ(131)の回転数の上限である最大回転数を含む。パラメータ演算部(112)は、制御パラメータの最適値として、最大回転数の最適値を求める。
【0107】
この態様によれば、検出された物理量の値に応じて、最適な最大回転数の値を求めることが可能となる。
【0108】
第5の態様の電動工具システム(100)では、第4の態様において、検出部(15)は、距離に関するパラメータとして、作業対象(W1)と先端工具(20)及び工具本体(10)のうちの少なくとも一方との間の距離を検出する。パラメータ演算部(112)は、距離の検出値が小さくなるにつれて、最大回転数の最適値を小さくする。
【0109】
この態様によれば、モータ(131)が高速で回転中に締め付け部材(200)が着座することで生じ得る作業対象(W1)からの反動等を抑制することが可能となり、作業対象(W1)が不良品となる可能性を低減することが可能となり、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0110】
第6の態様の電動工具システム(100)では、第1~第5のいずれか1つの態様において、検出部(15)は、物理量として、作業対象(W1)に対する先端工具(20)及び工具本体(10)のうちの少なくとも一方の姿勢のずれを示す姿勢差を、作業対象(W1)までの距離をそれぞれ検出する複数の測距センサ(151)の検出結果に基づいて検出する。パラメータ演算部(112)は、検出部(15)で検出された姿勢差に応じて、制御パラメータの最適値を求める。
【0111】
この態様によれば、姿勢差に応じて制御パラメータの最適値を求めることが可能となる。
【0112】
第7の態様の電動工具システム(100)では、第1~第6のいずれか1つの態様において、制御パラメータは、モータ(131)の回転数の上限である最大回転数を含む。検出部(15)は、上記の物理量として、作業対象(W1)に対する先端工具(20)及び工具本体(10)のうちの少なくとも一方の姿勢のずれを示す姿勢差を検出する。パラメータ演算部(112)は、姿勢差が許容範囲外の場合、最大回転数の最適値を0とする。
【0113】
この態様によれば、いわゆる「かじり」等の不具合の発生を抑制することが可能となり、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0114】
100 電動工具システム
10 工具本体
111 駆動制御部
112 パラメータ演算部
12 操作部
13 駆動部
131 モータ
15 検出部
151 測距センサ
152 カメラ
153 物理量抽出部
17 記憶部
20 先端工具
200 締め付け部材
W1 作業対象