(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006725
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電動工具システム、診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240110BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B23/14 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107895
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 景太
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一
【テーマコード(参考)】
3C038
3C064
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC04
3C038CA02
3C038CA06
3C038CC08
3C038EA03
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA22
3C064BA31
3C064BB90
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA28
3C064CA43
3C064CA53
3C064CA78
3C064CA80
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
3C064DA08
3C064DA23
3C064DA33
3C064DA37
3C064DA56
3C064DA59
3C064EA02
(57)【要約】
【課題】本開示は、ユーザ等が電動工具部の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をより容易に判断できるようにすることを目的とする。
【解決手段】電動工具システム100は、電動工具部1と、計測部4と、記憶部62と、推定部63と、を備える。計測部4は、電動工具部1に関する物理量を計測する。記憶部62は、計測部4で計測された物理量と物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、故障診断値を、物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶する。推定部63は、記憶部62に記憶された故障診断値と時間情報とに基づいて、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具部と、
計測部と、
記憶部と、
推定部と、を備え、
前記電動工具部は、
動力源から動力の供給を受け、トルクを発生する駆動部位と、
先端工具を装着可能な装着部位と、
前記駆動部位からの前記トルクを前記装着部位に伝達し前記装着部位を駆動する伝達部位と、を有し、
前記計測部は、前記電動工具部に関する物理量を計測し、
前記記憶部は、前記計測部で計測された前記物理量と前記物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、前記故障診断値を、前記物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶し、
前記推定部は、前記記憶部に記憶された前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記電動工具部が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める、
電動工具システム。
【請求項2】
前記推定部で求められた前記耐年情報を通知する通知部を更に備える、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記装着部位が駆動されているときには前記通知部が前記耐年情報を通知することを制限する制限部を更に備える、
請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記故障診断値が所定範囲内の値となるまでにかかる推定時間を、前記耐年情報として求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記電動工具部とは別の電動工具部からの情報に基づいて前記所定範囲を設定する設定部を更に備える、
請求項4に記載の電動工具システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記記憶部に記憶された全期間の前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記耐年情報を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項7】
前記推定部は、前記記憶部に記憶された全期間の前記故障診断値と前記時間情報とのうち、現時点よりも前の時点から、前記現時点までの期間の前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記耐年情報を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項8】
前記推定部は、前記記憶部に記憶された全期間の前記故障診断値と前記時間情報とのうち、現時点の前記故障診断値と、現時点よりも前の期間の前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記耐年情報を求める、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項9】
動力源から動力の供給を受け、トルクを発生する駆動部位と、
先端工具を装着可能な装着部位と、
前記駆動部位からの前記トルクを前記装着部位に伝達し前記装着部位を駆動する伝達部位と、を有する電動工具部に関する診断を行う診断方法であって、
計測部で計測された前記電動工具部に関する物理量と前記物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、前記故障診断値を、前記物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶部に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶部に記憶された前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記電動工具部が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める推定ステップと、を有する、
診断方法。
【請求項10】
請求項9に記載の診断方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電動工具システム、診断方法及びプログラムに関し、より詳細には、電動工具部の故障に関わる情報を求める電動工具システム、診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動工具は、モータと、取得部と、記憶部と、送信部と、を備える。取得部は、モータの回転中に検出された物理量データを取得する。記憶部は、物理量データと、物理量データを取得したときの時刻に関する時間情報とを対応付けて記憶する。送信部は、物理量データと時間情報とを、サーバシステムに送信する。サーバシステムは、物理量データと時間情報とを用いて、電動工具の状態の程度を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電動工具(電動工具部)の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をいつにすればよいのか、サーバシステムで評価された電動工具(電動工具部)の状態の程度に基づいてユーザ等が判断する必要がある。しかしながら、管理の時期の判断が難しい場合もある。
【0005】
本開示は、ユーザ等が電動工具部の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をより容易に判断できるようにする電動工具システム、診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具システムは、電動工具部と、計測部と、記憶部と、推定部と、を備える。前記電動工具部は、駆動部位と、装着部位と、伝達部位と、を有する。駆動部位は、動力源から動力の供給を受け、トルクを発生する。前記装着部位には、先端工具を装着可能である。前記伝達部位は、前記駆動部位からの前記トルクを前記装着部位に伝達し前記装着部位を駆動する。前記計測部は、前記電動工具部に関する物理量を計測する。前記記憶部は、前記計測部で計測された前記物理量と前記物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、前記故障診断値を、前記物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶する。前記推定部は、前記記憶部に記憶された前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記電動工具部が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0007】
本開示の一態様に係る診断方法は、電動工具部に関する診断を行う診断方法である。前記電動工具部は、駆動部位と、装着部位と、伝達部位と、を有する。駆動部位は、動力源から動力の供給を受け、トルクを発生する。前記装着部位には、先端工具を装着可能である。前記伝達部位は、前記駆動部位からの前記トルクを前記装着部位に伝達し前記装着部位を駆動する。前記診断方法は、記憶ステップと、推定ステップと、を有する。前記記憶ステップでは、計測部で計測された前記電動工具部に関する物理量と前記物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、前記故障診断値を、前記物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶部に記憶させる。前記推定ステップでは、前記記憶部に記憶された前記故障診断値と前記時間情報とに基づいて、前記電動工具部が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記診断方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ユーザ等が電動工具部の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をより容易に判断できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具システムの電動工具部の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具システムの電動工具部の概略図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具システムにより実行される、耐年情報を求める処理を概略的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、実施形態に係る電動工具システム100、診断方法及びプログラムについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(概要)
図1に示すように、本実施形態の電動工具システム100は、電動工具部1と、計測部4と、記憶部62と、推定部63と、を備える。電動工具部1は、駆動部位31と、装着部位33と、伝達部位32と、を有する。駆動部位31は、動力源P11から動力の供給を受け、トルクを発生する。装着部位33には、先端工具を装着可能である。伝達部位32は、駆動部位31からのトルクを装着部位33に伝達し装着部位33を駆動する。計測部4は、電動工具部1に関する物理量を計測する。記憶部62は、計測部4で計測された物理量と物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、故障診断値を、物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶する。推定部63は、記憶部62に記憶された故障診断値と時間情報とに基づいて、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0013】
本実施形態によれば、推定部63により、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報が求められるので、耐年情報に基づいて、電動工具部1の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をユーザ等が判断しやすい。すなわち、単に電動工具部1の故障の有無が診断される場合と異なり、ユーザ等が電動工具部1の故障に備えることができる。
【0014】
例えば、
図4において複数のドットd1で示すように、時点t0から時点t4までの複数の時点の各々における故障診断値はそれぞれ、物理量が計測された時点(日時)を示す時間情報と紐付けられて、記憶部62に記憶されている。推定部63は、それぞれの故障診断値と、故障診断値に紐付けられた時間情報とに基づいて、故障診断値が時点t4以降にどのように推移するかを推定する。
図4では、例えば、電動工具部1の累積稼動時間で表される時間が時点t0から時点t4になるまでの全ての故障診断値に基づいて、故障診断値の推移を表す近似曲線L10(実線)が求められ、近似曲線L10により、時点t4以降の故障診断値の推定値が求められる。累積稼動時間は、電動工具部1が初めて使用されて以降の、電動工具部1の稼動時間の総和である。
【0015】
さらに、推定部63は、時点t4以降の故障診断値の推定値に基づいて、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。本実施形態では、推定部63は、故障診断値が閾値Th1に達する時点を、電動工具部1が故障する時点と推定する。電動工具1が故障する時点を推定することは、耐年情報を求めることと同義である。
【0016】
また、電動工具システム100と同様の機能は、診断方法にて具現化可能である。本実施形態の診断方法は、電動工具部1に関する診断を行う診断方法である。電動工具部1は、駆動部位31と、装着部位33と、伝達部位32と、を有する。駆動部位31は、動力源P11から動力の供給を受け、トルクを発生する。装着部位33には、先端工具を装着可能である。伝達部位32は、駆動部位31からのトルクを装着部位33に伝達し装着部位33を駆動する。診断方法は、記憶ステップと、推定ステップと、を有する。記憶ステップでは、計測部4で計測された電動工具部1に関する物理量と物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、故障診断値を、物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶部62に記憶させる。推定ステップでは、記憶部62に記憶された故障診断値と時間情報とに基づいて、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0017】
また、診断方法は、プログラムにて具現化可能である。本実施形態のプログラムは、診断方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されていてもよい。
【0018】
(詳細)
(1)全体構成
以下、電動工具システム100についてより詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、電動工具システム100は、電動工具部1と、連携装置6と、を備える。
【0020】
電動工具部1は、先端工具を装着可能な機器である。先端工具は、例えば、ドリルビット又はドライバビット等である。ユーザ(作業者)は、穴あけ又はねじ締め等の作業を行うために電動工具部1を使用する。また、電動工具部1は、可搬型の機器(手持ちで使用される機器)である。
【0021】
連携装置6は、コンピュータシステムを含んでいる。連携装置6は、例えば、産業用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、又は、スマートフォン等の携帯電話である。連携装置6は、電動工具部1と通信する。連携装置6は、電動工具部1から取得した情報を処理して、耐年情報を求める。
【0022】
特に、本実施形態では、電動工具システム100が、複数のユーザが複数のワークの組立作業を行う組立ラインに用いられる場合を想定して説明する。電動工具システム100は、電動工具部1を複数(
図1では2つ)備え、2つの電動工具部1のうち一方の電動工具部1Aは第1ユーザに使用され、他方の電動工具部1Bは第1ユーザとは別の第2ユーザに使用される。2つの電動工具部1A、1Bの構成は同じなので、以下では、特に断りの無い限り、一方の電動工具部1に着目して説明する。
【0023】
(2)電動工具部
図1に示すように、電動工具部1は、稼動部3、電池パックP1、計測部4、通信部51、記憶部52、処理部53及び通知部231を有する。稼動部3は、装着部位33、伝達部位32及び駆動部位31を含む。また、
図2、
図3に示すように、電動工具部1は、ハウジング2、表示部211、トリガスイッチ221及びボックス50を更に有する。
【0024】
(3)ハウジング
ハウジング2は、伝達部位32、駆動部位31、計測部4及び処理部53等を収容している。ハウジング2は、収容部21と、グリップ部22と、装着部23と、を有する。
【0025】
収容部21の形状は、筒状である。収容部21は、伝達部位32、駆動部位31及び計測部4等を収容している。
【0026】
収容部21の表面には、表示部211が保持されている。表示部211は、例えば、LED(Light Emitting Diode)を含む。ユーザが作業中に表示部211を目視しやすいように、表示部211は、収容部21における装着部位33側とは反対側の端部に設けられている(
図2参照)。表示部211は、点滅等により、例えば、電動工具部1の状態を通知する。
【0027】
グリップ部22は、収容部21の外周面から収容部21の一径方向に沿った一方向に突出している。グリップ部22は、上記一方向に長い中空の筒形状に形成されている。グリップ部22は、ユーザがねじ締め等の作業を行う際に握る部分である。また、グリップ部22には、トリガスイッチ221が保持されている。トリガスイッチ221は、駆動部位31の動作のオン/オフを制御するためのスイッチである。
【0028】
グリップ部22の長手方向の一端には、収容部21がつながっており、他端には、装着部23がつながっている。
【0029】
また、グリップ部22には、ボックス50(
図3参照)が収容されている。ボックス50には、例えば、通信部51(
図1参照)、記憶部52、及び処理部53が収容されている。
【0030】
装着部23には、電池パックP1が着脱可能に取り付けられる。なお、本実施形態では、電池パックP1は電動工具部1の構成要素に含まれることとするが、電池パックP1が電動工具部1の構成要素に含まれることは必須ではない。
【0031】
電池パックP1は、動力源P11として、一次電池又は二次電池を含む。電動工具部1は、動力源P11から供給される電力により動作する。すなわち、動力源P11は、駆動部位31(モータ)を駆動する電力を供給する。また、動力源P11は、通信部51及び処理部53等を動作させるための電力を供給する。
【0032】
また、装着部23には、通知部231が保持されている。通知部231は、例えば、情報を視覚的に通知するためのディスプレイ等の表示装置を含む。また、通知部231は、操作部232と一体化されている。操作部232は、例えば、複数の釦を含む。操作部232は、ユーザの操作を受け付ける。ユーザは、通知部231を用いて、電動工具部1に関する種々の状況確認等を行うことができる。ユーザは、通知部231を用いて、例えば、耐年情報の確認、電池パックP1の残容量の確認、及び電動工具部1の動作モードの確認を行うことができる。また、ユーザは、操作部232を用いて、電動工具部1に関する種々の設定を行うことができる。ユーザは、通知部231を用いて、例えば、電動工具部1の動作モードの変更を行うことができる。
【0033】
(4)駆動部位
図3に示す駆動部位31は、例えばサーボモータである。駆動部位31は、動力源P11から供給される電気エネルギーをトルクに変換する。駆動部位31のトルク及び回転数は、制御部531(
図1参照)による制御に応じて変化する。制御部531は、サーボドライバである。制御部531は、例えば、駆動部位31のトルク及び回転数を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御により駆動部位31の動作を制御する。
【0034】
制御部531(
図1参照)は、トリガスイッチ221の操作量(引込量)を検知して、操作量に応じて駆動部位31を制御する。ユーザによってトリガスイッチ221が引かれることで、駆動部位31が動力源P11から動力の供給を受けて動作し、トルクを発生する。また、トリガスイッチ221の操作量に応じて、制御部531が駆動部位31(モータ)の回転数の目標値を調整する。
【0035】
(5)伝達部位
伝達部位32は、駆動部位31のトルクを装着部位33に伝達する。これにより、装着部位33が回転する。
【0036】
伝達部位32は、例えば、遊星歯車機構を含む。遊星歯車機構は、減速装置である。つまり、伝達部位32は、駆動部位31の回転数よりも小さい回転数で装着部位33を回転させる。
【0037】
(6)装着部位
装着部位33には、先端工具が装着される。先端工具は、例えば、ドリルビット又はドライバビット等である。装着部位33には、用途に応じて様々な種類の先端工具を着脱可能であってもよいし、特定の先端工具のみを装着可能であってもよい。
【0038】
駆動部位31から伝達部位32を介して装着部位33にトルクが伝達されると、装着部位33と共に先端工具が回転する。これにより、ユーザは、電動工具部1による穴あけ又はねじ締め等の作業を行うことができる。
【0039】
(7)計測部
計測部4は、電動工具部1に関する物理量を計測する。より詳細には、計測部4は、稼動部3の動作に関する物理量を計測する。本実施形態の計測部4は、電流計測部41と、トルク計測部42と、を有する。電流計測部41は、物理量として、動力源P11から駆動部位31に供給される電流を計測する。トルク計測部42は、物理量として、装着部位33のトルクを計測する。
【0040】
電流計測部41は、動力源P11と駆動部位31との間の電路に設けられる。電流計測部41は、例えば、シャント抵抗又はホール素子を含み、計測対象の電流に比例した電圧を出力する。
【0041】
トルク計測部42は、例えば、磁歪式歪みセンサ又は抵抗式歪みセンサを含む。
【0042】
磁歪式歪みセンサは、装着部位33にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、装着部位33の近傍の非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。
【0043】
抵抗式歪みセンサは、装着部位33の表面に貼り付けられる。抵抗式歪みセンサは、装着部位33にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた電気抵抗値の変化を、電圧信号に変換して出力する。
【0044】
(8)通信部
通信部51(
図1参照)は、通信インタフェース装置を含んでいる。通信部51は、通信インタフェース装置を介して、連携装置6の通信部61と通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。
【0045】
(9)記憶部
記憶部52(
図1参照)は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)等によって構成される不揮発性の記憶装置である。記憶部52は、計測部4で計測された物理量を時間情報と紐付けて記憶する。
【0046】
(10)通知部
通知部231(
図2参照)は、推定部63で求められた耐年情報を通知する。通知部231は、例えば、耐年情報を表示することで耐年情報を通知する。
【0047】
(11)処理部
電動工具部1は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含む。処理部53(
図1参照)は、電動工具部1の1以上のプロセッサを含む。メモリに記録されたプログラムを処理部53の1以上のプロセッサが実行することにより、処理部53の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0048】
図1に示すように、処理部53は、制御部531と、制限部532と、設定部533と、を含む。なお、これらは、処理部53によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0049】
制御部531は、トリガスイッチ221(
図2参照)の操作量を検知して、操作量に応じて駆動部位31の回転数を制御する。
【0050】
制限部532は、装着部位33が駆動されているときには通知部231が耐年情報を通知することを制限(禁止)する。例えば、制限部532は、装着部位33が駆動されているときには通知部231に耐年情報を表示させないように、通知部231を制御する。
【0051】
後述するように、連携装置6の推定部63は、故障診断値が所定範囲内の値となるまでにかかる推定時間を、耐年情報として求める。電動工具部1A、1Bのうち電動工具部1Aに着目すると、設定部533は、電動工具部1Aとは別の電動工具部1Bからの情報に基づいて所定範囲を設定する。詳しくは、後述する。
【0052】
(12)連携装置
図1に示すように、連携装置6は、通信部61と、記憶部62と、推定部63と、を備える。
【0053】
通信部61は、通信インタフェース装置を含んでいる。通信部61は、通信インタフェース装置を介して、電動工具部1の通信部51と通信可能である。
【0054】
記憶部62は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)等によって構成される不揮発性の記憶装置である。記憶部62は、故障診断値を時間情報と紐付けて記憶する。
【0055】
連携装置6は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含む。推定部63は、連携装置6の1以上のプロセッサを含む。メモリに記録されたプログラムを推定部63の1以上のプロセッサが実行することにより、推定部63の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0056】
推定部63は、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。特に、本実施形態の推定部63は、電動工具部1のうち駆動部位31、伝達部位32及び装着部位33を含む稼動部3が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0057】
(13)耐年情報の求め方
以下では、
図4、
図5を参照して、本開示の診断方法、すなわち、推定部63が耐年情報を求めるための一連の処理を説明する。なお、
図5に示すフローチャートは、本開示に係る診断方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0058】
推定部63は、例えば、一定の周期で耐年情報を求めてもよいし、耐年情報を要求する指令信号を受信したときに耐年情報を求めてもよい。また、推定部63は、例えば、電動工具部1の累積稼動時間が一定時間を超えてから、一定の周期で耐年情報を求めてもよい。
【0059】
上述したように、計測部4は、動力源P11から駆動部位31に供給される電流と、装着部位33のトルクと、を計測する(
図5のステップST1)。通信部61は、電動工具部1の通信部51と通信することにより、計測部4で計測された物理量である電流及びトルクと、電流及びトルクに紐付けられた時間情報と、を取得する。より詳細には、計測部4で計測された電流及びトルクは、計測時刻に関する情報(時間情報)と紐付けられて、電動工具部1の記憶部52に記憶される。通信部51は、記憶部52に記憶された電流、トルク及び時間情報を、連携装置6の通信部61に送信する。
【0060】
続いて、記憶部62は、通信部61が取得した電流、トルク及び時間情報を記憶する(ステップST2)。より詳細には、記憶部62は、電流及びトルクを、時間情報と紐付けて記憶する。
【0061】
計測部4は、例えば、電動工具部1がねじ締め等の作業を行う度に物理量(電流及びトルク)を計測し、記憶部62はそれぞれの物理量を記憶する。ただし、記憶部62は、一定の期間ごとの物理量の平均値を記憶してもよい。例えば、記憶部62は、1日に計測された物理量の平均値を記憶してもよい。
【0062】
推定部63は、計測部4で計測された後に記憶部62に記憶された電流及びトルクに基づいて、故障診断値を算出する。例えば、推定部63はまず、計測部4で計測された後に記憶部62に記憶された電流に基づいて、この電流から装着部位33で得られるトルクの理論値を算出する。以下では、計測部4で計測された電流に基づいて算出されたトルクを「理論トルク」と呼び、計測部4で計測されたトルクを「実測トルク」と呼ぶ。本実施形態では一例として、推定部63は、理論トルクから実測トルクを引いた値を、故障診断値とする。つまり、推定部63は、電流及び実測トルクに基づいて故障診断値を算出する(ステップST3)。
【0063】
記憶部62は、故障診断値を時間情報と紐付けて記憶する(ステップST4)。
【0064】
図4の複数のドットd1はそれぞれ、電流及び実測トルクが計測された時点(時間情報)と、その時点に計測された電流及び実測トルクから算出された故障診断値と、の対応を表す。推定部63は、現時点(時点t4)から故障診断値が所定範囲内の値となるまでにかかる推定時間を、耐年情報として求める。現時点とは、計測部4による直近の計測時点を指す。
【0065】
本実施形態では、値が閾値Th1よりも大きい範囲を、所定範囲とする。つまり、推定部63は、故障診断値が閾値Th1よりも大きくなるまでにかかる推定時間を、耐年情報として求める。
【0066】
伝達部位32の劣化等の異常が生じると、駆動部位31に入力される電流が装着部位33のトルクに変換されるまでのロスが大きくなり、実測トルクが理論トルクに対して低下する。よって、故障診断値が大きくなる。
【0067】
例えば、電動工具部1の用途がねじ締めである場合、電動工具部1を用いてのねじ締め本数が、電動工具部1の累積稼動時間に相当する。基本的に、電動工具部1の累積稼動時間が長いほど、電動工具部1が故障する可能性が高くなると考えられる。よって、基本的に、電動工具部1の累積稼動時間が長いほど、故障診断値が大きくなると考えられる。
【0068】
図4に示すように、推定部63は、例えば、時点t0から時点t4までの全ての故障診断値に基づいて、故障診断値の推移を表す近似曲線L10(実線)を求める。言い換えると、推定部63は、故障診断値を近似曲線L10でフィッティングする(ステップST5)。さらに推定部63は、近似曲線L10により、時点t4以降の故障診断値を推定する。これにより、
図4では推定部63は、時点t5に故障診断値が閾値Th1に達すると推定する。推定部63は、時点t4から時点t5までの経過時間を、耐年情報として求める(ステップST6)。このように、推定部63は、一例として、記憶部62に記憶された全期間(時点t0~t4)の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。近似曲線L10は、例えば、最小二乗法により求められる。推定部63は、記憶部62に記憶された全期間に亘る多数のデータ(故障診断値)から近似曲線L10を求めることで、耐年情報を精度良く求めることができる。
【0069】
別の一例として、推定部63は、記憶部62に記憶された全期間の故障診断値と時間情報とのうち、現時点(時点t4)よりも前の時点t3から、現時点までの期間の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。より具体的な例を説明すると、推定部63は、時点t3から時点t4までの故障診断値の推移を表す近似曲線L20(一点鎖線)を求める。そして、推定部63は、時点t4以降に、故障診断値が近似曲線L20に従って変化すると仮定して、時点t4以降の故障診断値を推定する。より詳細には、近似曲線L10上の時点t4の座標C1から、近似曲線L20と同形の曲線L21(破線)を延長する。推定部63は、時点t4以降の故障診断値が、曲線L21で表されると推定する。これにより、
図4では推定部63は、時点t6に故障診断値が閾値Th1に達すると推定する。推定部63は、時点t4から時点t6までの経過時間を、耐年情報として求める。時点t3における電動工具部1の累積稼動時間と、時点t4における電動工具部1の累積稼動時間との差は、例えば、工場において1か月から数か月程度、電動工具部1が使用されるときの稼動時間である。推定部63は、現時点までの直近の期間の故障診断値から近似曲線L20を求めることで、耐年情報を精度良く求めることができる。
【0070】
更に別の一例として、推定部63は、記憶部62に記憶された全期間の故障診断値と時間情報とのうち、現時点(時点t4)の故障診断値と、現時点よりも前の期間(時点t1~時点t2)の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。より具体的な例を説明すると、推定部63は、時点t1から時点t2までの故障診断値の推移を表す近似曲線L30(二点鎖線)を求める。そして、推定部63は、時点t4以降に、故障診断値が近似曲線L30に従って変化すると仮定して、時点t4以降の故障診断値を推定する。より詳細には、近似曲線L10上の時点t4の座標C1から、近似曲線L30と同形の曲線L31(破線)を延長する。推定部63は、時点t4以降の故障診断値が、曲線L31で表されると推定する。これにより、
図4では推定部63は、時点t7に故障診断値が閾値Th1に達すると推定する。推定部63は、時点t4から時点t7までの経過時間を、耐年情報として求める。例えば、現時点(時点t4)が夏季である場合、推定部63は、昨年の夏季(時点t1~時点t2)の故障診断値から、近似曲線L30を求める。つまり、推定部63は、現時点と条件が同じ又は類似する時期の故障診断値から、近似曲線L30を求める。これにより、耐年情報を精度良く求めることができる。
【0071】
連携装置6の通信部61は、推定部63で求められた耐年情報を電動工具部1に送信する。電動工具部1の通知部231は、耐年情報を通知する。なお、通知部231は、現時点の故障診断値が所定値を超えるまで、耐年情報の通知を行わないように設定されていてもよい。所定値は、閾値Th1よりも小さい。
【0072】
閾値Th1の初期値は、記憶部62に予め記憶されている。電動工具部1の通信部51は、閾値Th1を更新するための更新情報を連携装置6の通信部61へ送信する。これにより、記憶部62に記憶された閾値Th1が更新される。
【0073】
電動工具部1A、1Bのうち電動工具部1Aに着目すると、電動工具部1Aの設定部533は、電動工具部1Aとは別の電動工具部1Bからの情報に基づいて所定範囲(閾値Th1)を設定する。言い換えると、電動工具部1Aの設定部533は、電動工具部1Aとは別の電動工具部1Bからの情報に基づいて更新情報を生成する。
【0074】
例えば、電動工具部1Aと電動工具部1Bとが同じ条件で使用されており、かつ、電動工具部1Aよりも電動工具部1Bの方が累積稼動時間が長い場合を想定する。連携装置6の推定部63は、電動工具部1Bの故障診断値を求める。電動工具部1Bの故障診断値が、製品寿命よりも遅く閾値Th1に達すると推定されるのであれば、現在の閾値Th1が大き過ぎると考えられる。そのため、連携装置6は、電動工具部1Aに、閾値Th1を低下させるための更新情報を送信する。
【0075】
操作部232に対するユーザの操作により、閾値Th1が更新されてもよい。
【0076】
(実施形態の変形例)
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0077】
推定部63が将来の故障診断値を推定するに際して、時点t0~t4間の故障診断値の推移を近似曲線L10でフィッティングする処理は、必須ではない。実施形態では、例えば、時点t3~t4間の近似曲線L20と同形の曲線L21を、時点t4の近似曲線L10上の座標C1から延長することで、将来の故障診断値が推定される。これに対して、曲線L21を、例えば、計測部4で計測された物理量から演算された現時点(時点t4)の故障診断値の座標C2(
図4参照)から延長させて、将来の故障診断値が推定されてもよい。また、実施形態では、例えば、時点t1~t2間の近似曲線L30と同形の曲線L31を、時点t4の近似曲線L10上の座標C1から延長することで、将来の故障診断値が推定される。これに対して、曲線L31を、例えば、計測部4で計測された物理量から演算された現時点(時点t4)の故障診断値の座標C2(
図4参照)から延長させて、将来の故障診断値が推定されてもよい。
【0078】
実施形態では、推定部63は、理論トルクから実測トルクを引いた値を、故障診断値とする。これに対して、推定部63は例えば、実測トルク(計測部4で計測されたトルク)を故障診断値としてもよい。あるいは、推定部63は例えば、理論トルクから実測トルクを引いた値と、実測トルクと、の両方を故障診断値とし、2種類の故障診断値をそれぞれ用いて耐年情報を求めてもよい。
【0079】
実施形態では、時間情報は、計測部4が物理量を計測した日時を示す情報である。これに対して、時間情報は、例えば、計測部4が物理量を計測した時点における電動工具部1の累積稼動時間を示す情報であってもよい。
【0080】
実施形態では、電流及びトルクに基づいて故障診断値を算出する処理を、連携装置6が行う。これに対して、故障診断値を算出する処理を、電動工具部1の処理部53が行ってもよい。
【0081】
計測部4で計測される物理量は、電流及びトルクに限定されない。計測部4で計測される物理量は、例えば、電動工具部1の振動に関する物理量(振動の大きさ等)であってもよい。
【0082】
伝達部位32は、駆動部位31からのトルクを用いて装着部位33に衝撃(インパクト)を加える、インパクト機構を含んでいてもよい。つまり、電動工具部1は、インパクト工具であってもよい。
【0083】
通知部231は、耐年情報を視覚的に通知する構成に限定されず、音(音声等)又は振動により通知してもよい。また、通知部231は、電動工具部1の外部端末(携帯端末等)に通知信号を送信する送信機等で実現されてもよい。
【0084】
通知部231を、連携装置6が備えていてもよい。
【0085】
耐年情報を通知する通知部231は、電動工具システム100において必須の構成ではない。耐年情報は、例えば、電動工具部1の管理(メンテナンス及び交換等)の計画をコンピュータシステムが作成するために使用されてもよい。
【0086】
電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報は、電動工具部1が故障すると予測される時点を示す情報であってもよい。あるいは、耐年情報は、現時点、又は現時点の前若しくは後の所定の時点から故障診断値が所定範囲内の値となるまでにかかる推定時間を示す情報であってもよい。
【0087】
耐年情報は、電動工具部1が故障するまでにかかる推定時間を、故障するまでに可能な作業の回数に換算した数値であってもよい。例えば、耐年情報は、電動工具部1が故障するまでにねじ締めが可能なねじの本数を表してもよい。
【0088】
本開示における電動工具システム100又は診断方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電動工具システム100又は診断方法の実行主体としての機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0089】
また、連携装置6の複数の機能が、複数の装置に分散して設けられていてもよい。さらに、連携装置6の少なくとも一部の機能がサーバ又はクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0090】
また、電動工具システム100の構成が、複数の装置に分散して設けられていてもよい。例えば、少なくとも稼動部3を有する電動工具部1が、計測部4と、通信部51と、記憶部52と、処理部53と、通知部231と、のうち少なくとも1つに対して別体に設けられていてもよい。
【0091】
また、実施形態において、連携装置6と電動工具部1とに分散されている電動工具システム100の少なくとも一部の機能が、1つの装置に集約されていてもよい。例えば、実施形態では、連携装置6が電動工具部1とは別に設けられており、連携装置6が推定部63を備える。これに対して、電動工具部1が推定部63を備えていてもよい。この場合、連携装置6は、電動工具システム100の構成要素でなくてもよい。若しくは、電動工具部1が推定部63の一部の機能を備えていてもよい。
【0092】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0093】
第1の態様に係る電動工具システム(100)は、電動工具部(1)と、計測部(4)と、記憶部(62)と、推定部(63)と、を備える。電動工具部(1)は、駆動部位(31)と、装着部位(33)と、伝達部位(32)と、を有する。駆動部位(31)は、動力源(P11)から動力の供給を受け、トルクを発生する。装着部位(33)には、先端工具を装着可能である。伝達部位(32)は、駆動部位(31)からのトルクを装着部位(33)に伝達し装着部位(33)を駆動する。計測部(4)は、電動工具部(1)に関する物理量を計測する。記憶部(62)は、計測部(4)で計測された物理量と物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、故障診断値を、物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶する。推定部(63)は、記憶部(62)に記憶された故障診断値と時間情報とに基づいて、電動工具部(1)が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0094】
上記の構成によれば、推定部(63)により、電動工具部(1)が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報が求められるので、耐年情報に基づいて、電動工具部(1)の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をユーザ等が判断しやすい。
【0095】
また、第2の態様に係る電動工具システム(100)は、第1の態様において、通知部(231)を更に備える。通知部(231)は、推定部(63)で求められた耐年情報を通知する。
【0096】
上記の構成によれば、耐年情報に基づいて、電動工具部(1)の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をユーザ等が判断しやすい。
【0097】
また、第3の態様に係る電動工具システム(100)は、第2の態様において、制限部(532)を更に備える。制限部(532)は、装着部位(33)が駆動されているときには通知部(231)が耐年情報を通知することを制限する。
【0098】
上記の構成によれば、ユーザが電動工具部(1)を用いて作業をしているときに、通知部(231)による通知がユーザの注意を引いて作業の妨げとなる可能性を低減させることができる。
【0099】
また、第4の態様に係る電動工具システム(100)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、推定部(63)は、故障診断値が所定範囲内の値となるまでにかかる推定時間を、耐年情報として求める。
【0100】
上記の構成によれば、推定部(63)は、故障診断値に基づいて耐年情報を容易に求めることができる。
【0101】
また、第5の態様に係る電動工具システム(100)は、第4の態様において、設定部(533)を更に備える。設定部(533)は、電動工具部(1A)とは別の電動工具部(1B)からの情報に基づいて所定範囲を設定する。
【0102】
上記の構成によれば、設定部(533)は、所定範囲を適切な範囲に設定しやすい。
【0103】
また、第6の態様に係る電動工具システム(100)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、推定部(63)は、記憶部(62)に記憶された全期間の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。
【0104】
上記の構成によれば、推定部(63)は、電動工具部(1)の過去の使用状況等に応じて、耐年情報を求めることができる。
【0105】
また、第7の態様に係る電動工具システム(100)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、推定部(63)は、記憶部(62)に記憶された全期間の故障診断値と時間情報とのうち、現時点よりも前の時点から、現時点までの期間の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。
【0106】
上記の構成によれば、推定部(63)により求められる耐年情報に、現時点までの直近の期間における故障診断値が反映される。つまり、推定部(63)は、電動工具部(1)の直近の使用状況等に応じて、耐年情報を求めることができる。
【0107】
また、第8の態様に係る電動工具システム(100)では、第1~5の態様のいずれか1つにおいて、推定部(63)は、記憶部(62)に記憶された全期間の故障診断値と時間情報とのうち、現時点の故障診断値と、現時点よりも前の期間の故障診断値と時間情報とに基づいて、耐年情報を求める。
【0108】
上記の構成によれば、推定部(63)により求められる耐年情報に、過去の所定の期間の故障診断値が反映される。つまり、推定部(63)は、電動工具部(1)の過去の使用状況等に応じて、耐年情報を求めることができる。
【0109】
第1の態様以外の構成については、電動工具システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0110】
また、第9の態様に係る診断方法は、電動工具部(1)に関する診断を行う診断方法である。電動工具部(1)は、駆動部位(31)と、装着部位(33)と、伝達部位(32)と、を有する。駆動部位(31)は、動力源(P11)から動力の供給を受け、トルクを発生する。装着部位(33)には、先端工具を装着可能である。伝達部位(32)は、駆動部位(31)からのトルクを装着部位(33)に伝達し装着部位(33)を駆動する。診断方法は、記憶ステップと、推定ステップと、を有する。記憶ステップでは、計測部(4)で計測された電動工具部(1)に関する物理量と物理量に基づいて演算された演算値とのうち少なくとも一方を故障診断値として、故障診断値を、物理量が計測された時点に関する時間情報と紐付けて記憶部(62)に記憶させる。推定ステップでは、記憶部(62)に記憶された故障診断値と時間情報とに基づいて、電動工具部(1)が故障するまでにかかる推定時間に関する耐年情報を求める。
【0111】
上記の構成によれば、耐年情報に基づいて、電動工具部(1)の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をユーザ等が判断しやすい。
【0112】
また、第10の態様に係るプログラムは、第9の態様に係る診断方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0113】
上記の構成によれば、耐年情報に基づいて、電動工具部(1)の管理(メンテナンス及び交換等)の時期をユーザ等が判断しやすい。
【0114】
上記態様に限らず、実施形態に係る電動工具システム(100)の種々の構成(変形例を含む)は、診断方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 電動工具部
4 計測部
31 駆動部位
32 伝達部位
33 装着部位
62 記憶部
63 推定部
100 電動工具システム
231 通知部
532 制限部
533 設定部
P11 動力源