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特開2024-67260エキシマランプ、オゾン生成装置および紫外線照射装置
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  • 特開-エキシマランプ、オゾン生成装置および紫外線照射装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067260
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】エキシマランプ、オゾン生成装置および紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H01J65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177188
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 壮則
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 晟大
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(57)【要約】
【課題】窒素酸化物などの有害ガスの発生を抑え、紫外線照射、オゾン生成などを効果的に行うことができるランプ、あるいはそのようなランプを備えたオゾン生成装置、紫外線照射装置などを提供する。
【解決手段】エキシマランプ10は、電極50が挿入された内側管30と外側管40とを溶着した放電容器20と、管状部60とを備え、管状部60の両端に絶縁性の蓋70、80を取り付ける。放電容器20内に放電空間20Sが形成され、また、管状部60内には、放電容器20周囲に内部空間10S、すなわち流路Rが形成される。そして、管状部60と放電容器20との間には、非放電空間領域として隔離空間60Sが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の少なくとも一部を内部に配置し、放電ガスが封入される放電容器と、
前記放電容器との間に間隔を設けて同軸的に配置される導電性の管状部とを備え、
前記電極と前記管状部との間に電圧が印加されると、前記放電容器と前記管状部との間に形成される隔離空間において放電が発生せず、前記放電容器内の放電空間において発生した放電によって、前記管状部に向けて紫外線が放射されることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記放電容器と前記管状部との径方向距離間隔が、前記電極と前記管状部との間に電圧が印加されたときの前記隔離空間において放電が発生せず、前記放電容器内において放電が発生する距離間隔に定められていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記放電容器と前記管状部との径方向距離間隔が、1mmより大きく、6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記管状部の径方向厚さが、1mm以上3mm以下の範囲に定められることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記放電容器と前記管状部との径方向距離間隔が、前記放電容器外表面から放射される172nmのピーク波長を有する紫外線の紫外線強度比が20%まで減衰する透過距離以下であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記放電空間の内径が、前記放電空間の径方向距離よりも大きく定められることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記放電容器が、外側管と内側管の少なくとも一方の端部とを溶着することによって形成され、
前記電極が、前記内側管に覆われ、前記放電空間に露出していないことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記電極が筒状であり、
前記電極の外周面と前記管状部の内周面との径方向距離が、周方向および軸方向のうち少なくとも軸方向に沿って、一定であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のエキシマランプを備え、
前記隔離空間の少なくとも一部が、酸素を含む流体の流れる流路を形成することを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項10】
請求項9に記載されたオゾン生成装置を備えたことを特徴とするオゾン水生成器。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載のエキシマランプを備え、
前記隔離空間の少なくとも一部が、流体の流れる流路を形成することを特徴とする紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射するエキシマランプに関し、また、紫外線照射装置および紫外線照射によってオゾンを生成するオゾン生成装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する放電ランプなどは、除菌、消臭処理用の光源として利用可能であり、また、除菌、消臭などを行う紫外線照射装置の光源として、あるいは、除菌、消臭などに利用されるオゾンを発生させるオゾン発生源として利用されている。このようなランプは、除菌、消臭対象となるガスや液体などが流れる流路管内に設置される。
【0003】
例えば、グロー放電する放電管の隔壁に沿ってガスを流すオゾン生成装置が知られている(特許文献1参照)。そこでは、放電管の管壁との間に僅かな隙間を設けて管状の対向電極を設ける。そして、そのわずかな隙間にガスを流してオゾンを生成し、オゾンを含む混合ガスを流出する。また、放電管と管状の対向電極との間に無声放電を生じさせるとともに、放電管から放射される紫外線によってオゾン化させるオゾン発生装置も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-111206号公報
【特許文献2】特開平4-108603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、放電管と対向電極との間に僅かな隙間しかなく、実質的に離間した配置構造でないため、コロナ放電が隙間に生じる。そのため、空気などのガスが流れると窒素酸化物が生じ、場合によっては殺菌、脱臭などの処理対象に対して影響を与える。また、上記特許文献2においても、無声放電が放電管と対向電極との間で生じるため、窒素酸化物が生じる。窒素酸化物はオゾンと原子酸素を減少させ、オゾン濃度の低下とオゾン発生効率の低下を招く。また、窒素酸化物は最終的に五酸化二窒素(N)になって安定するが、空気中の水分と反応して硝酸(HNO)が発生し、金属を腐食させる。
【0006】
したがって、窒素酸化物などの有害ガスの発生を抑え、紫外線照射、オゾン生成などを効果的に行うことができるランプ、あるいはそのようなランプを備えたオゾン生成装置、紫外線照射装置などを提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様であるエキシマランプは、電極の少なくとも一部を内部に配置し、放電ガスが封入される放電容器と、放電容器との間に間隔を設けて同軸的に配置される導電性の管状部とを備える。管状部は、様々な構成が可能であり、液体、気体などを流す可能な配管として構成可能である。また、筒状容器や、アウターケーシングなども、管状部に含まれるものとする。
【0008】
本発明では、電極と管状部との間に電圧が印加されると、放電容器と管状部との間に形成される隔離空間において放電が発生せず、放電容器内の放電空間において発生した放電によって、管状部に向けて紫外線が放射される。例えば、放電容器と管状部との径方向距離間隔が、電極と管状部との間に電圧が印加されたときの隔離空間において放電が発生せず、放電容器内において放電が発生する距離間隔に定められている。
【0009】
放電容器と管状部との径方向距離間隔は、放電容器、および管状部のサイズ、厚さ等に応じて定めることが可能である。例えば、放電容器と管状部との径方向距離間隔は、1mmより大きく、6mm以下に定めることができる。また、管状部の径方向厚さは、1mm以上3mm以下の範囲に定めることができる。
【0010】
紫外線は様々なピーク波長をもつ紫外線を利用することが可能であり、放電容器、および管状部のサイズ、厚さなどもそれに従って定めることが可能である。例えば、172nmのピーク波長を有する紫外線を放射する場合、放電容器と管状部との径方向距離間隔は、放電容器外表面から放射される172nmのピーク波長を有する紫外線の紫外線強度比が20%まで減衰する透過距離以下となるように定めることができる。
【0011】
放電容器の構成は様々であり、例えば、外側管と内側管の少なくとも一方の端部とを溶着することによって形成することが可能である。この場合、電極が、内側管に覆われ、放電空間に露出していないように構成することができる。例えば、内側管に挿入する筒状の電極を構成可能である。あるいは、内側管を設けずに電極を露出する構成にすることも可能である。
【0012】
そして、様々なバリエーションの放電容器に対し、放電空間の内径が放電空間の径方向距離よりも大きくなるように、放電容器を構成することができる。ここで、「放電空間の内径」とは、例えば、内側管が設けられている場合には内側管サイズ(外径)、露出電極であれば電極の径方向に沿ってランプ軸中心から最大離れた電極端部(外径)を示す。
【0013】
電極が筒状である場合、電極の外周面と管状部の内周面との径方向距離が、周方向および軸方向のうち少なくとも軸方向に沿って、一定であるように構成することが可能である。
【0014】
以上説明したエキシマランプは、オゾン生成装置、およびオゾン生成装置を備えたオゾン水生成器、紫外線照射装置に適用することができる。本発明の他の一態様であるオゾン生成装置は、隔離空間の少なくとも一部が、酸素を含む流体の流れる流路を形成する。また、本発明の他の一態様である紫外線照射装置は、隔離空間の少なくとも一部が、流体の流れる流路を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、窒素酸化物などの有害ガスの発生を抑え、紫外線照射、オゾン生成などを効果的に行うことができるランプ、あるいはそのようなランプを備えたオゾン生成装置、紫外線照射装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図2】第2の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図3】第3の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図4】第4の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
【0019】
エキシマランプ10は、放電容器20を備える。ここでは、石英ガラスから成る内側管30と外側管40の一方の端部とを溶着させることによって、放電容器20が構成されている。内側管30、外側管40は、ここでは断面円状であり、内側管30が外側管40に対して(ランプ軸Cにたいして)同軸的に配置されている。内側管30の一部は、外側管40の一方の端部40T1から突出している。また、電極50が、内側管30内に設けられている。
【0020】
電極50は、ここでは導電性の円筒状電極として構成され、その一部が内側管30に覆われた状態で挿入され、内側管30に対し同軸的に配置されている。電極50の一方の端部は、内側管30の端部30Tから突出して外部に露出し、給電線(図示せず)を介して電源部(図示せず)と接続されている。
【0021】
電極50は、導電性の素材であればよく、ここでは、アルミニウムなど熱伝導性が良好な軽量の金属から成る。例えば、平板材を曲げることによって電極50を円筒状に構成することができる。
【0022】
外側管40と内側管30との間には、放電ガスが封入された放電空間20Sが形成されている。放電ガスは、ランプ点灯時に紫外線を放射することが可能なガスであればよい。希ガスまたは希ガスを含む放電ガスを封入することが可能である。ここでは、キセノンガスが封入されている。
【0023】
本実施形態では、放電容器20が、内側管30の外径Dが比較的大きい放電管として構成されている(以下では、必要に応じて大口径放電管という)。具体的には、内側管30の外径D、すなわち放電空間20Sの内径が、外側管40の内表面と内側管30の外表面との間の径方向距離間隔d、すなわちランプ軸に対する径方向に沿った放電距離間隔よりも大きくなるように、構成されている。
【0024】
例えば、内側管30、外側管40に対し、内径27mm、外径30mmの外側管40を構成し、内径10mm、外径13mmの内側管30を構成することが可能であり、外側管40の内表面と内側管30の外表面との間の径方向距離間隔dを7mmと定めることができる。また、筒状の電極50に関しては、内径4mm、外径10mmの円筒状電極とすることができる。
【0025】
エキシマランプ10は、放電容器20を覆う導電性の管状部60を備え、放電容器20に対して同軸的に配置されている。管状部60は、放電容器20との間で原料ガスを流す配管として構成され、ここでは円筒状に形成されている。管状部60は、導電性の素材から構成すればよく、ここでは、アルミニウムなど熱伝導性の良好な軽量金属から成る。管状部60は、図示しない給電線を介してアース接続している、あるいは電源部と接続する。
【0026】
管状部60の両端部60T1、60T2には、放電容器20を収容する管状部60の内部空間を塞ぐための蓋(キャップ)70、80が装着されている。円板状の蓋70、80は、ここでは絶縁性の素材(例えば塩化ビニール(PVC)など)から成り、管状部60の両端部60T1、60T2に嵌め込まれた状態で固定されている。
【0027】
外側管40の一方の端部40T1側に配置される蓋70は、内側管30が挿通される孔70Aを有し、内側管30を軸支する保持部材として機能する。蓋70、80の内部空間側表面には、紫外線を遮光する円板状の遮光板90A、90Bが設置されている。なお、蓋70から突出する内側管30に対し、例えばボアスルーコネクタなどいった継手を設けるように構成してもよい。
【0028】
エキシマランプ10は、放電容器20と管状部60がランプ軸Cに対して同軸配置するランプ構造であるとともに、ランプ内部に流路Rである内部空間10Sを形成するランプ構造を採用している。すなわち、管状部60、放電容器20そして蓋70、80によって内部空間10S(流路R)を形成するとともに、蓋70、蓋80に対してそれぞれ流入口92、流出口94が形成されている。管状部60の軸方向長さは、内部空間10Sの軸方向長さよりも長い。
【0029】
したがって、図示しない流路管と接続する流入口92を通じて、ガスや液体をエキシマランプ10の内部空間10S(流路R)に流入させ、流出口94から流出させることができる。ここでは、酸素を含む原料ガス(例えば空気)が流入するように、構成されている。
【0030】
内部空間10Sに原料ガスを流入する流入口92の入口部分92Aは、ランプ軸Cからランプ径方向に離れた位置にあり、外側管40(放電容器20)の径方向に沿って延びる表面40M付近と向かい合うように形成されている。流路Rに流入したガスは、管状部60と放電容器20との間に介在する空間(以下では、隔離空間という)60Sを通過し、内部空間10Sで生成されたオゾンが含まれるガスが、流出口94の出口部分94Aから流出する。
【0031】
流出口94は、外側管40の一方の端部40T2側に配置される蓋80の中心部付近に形成されている。したがって、流入口92の入口部分92Aと流出口94の出口部分94Aは、ランプ軸Cに沿って対向する位置関係(同軸上の位置関係)になく、ランプ径方向に沿って互いに異なる位置に形成されている。
【0032】
流入口92の入口部分92Aから流入したガスは、その一部が外側管40の一方の端部40T1の表面に当たり、また、比較的間隔が狭い隔離空間60Sを流れていく。そして、入口部分92Aと向かい合っていない出口部分94Aから流出する。そのため、エキシマランプ10の内部空間10S(流路R)を通過するガスは、全体的に乱流状態となって流れていく。
【0033】
本実施形態では、ランプ点灯時、電極50と管状部60との間に高周波電圧が印加されると、放電容器20内に放電が生じ、エキシマ光が紫外線として放射される。ここでは、放電ガスとしてキセノンガスを封入されているため、172nmをピーク波長とする紫外線が放射される。周波数(MHz)、印加電圧(kV(peak to peak))に関しては、放電容器20、管状部60のサイズ、オゾン生成量などに従って適宜定められる。
【0034】
上述したように、放電容器20は大口径放電管として構成されている。そのため、紫外線放射面となる放電容器20(外側管40)の外表面40Mの領域が広くなるにも関わらず、隔離空間60Sよりも比較的低い印加電圧(放電開始電圧)で放電容器20内において放電を発生させ、ランプ軸Cに沿った隔離空間60Sに対し、均一に紫外線を照射することができる。
【0035】
ここで、ランプ軸Cに沿った隔離空間60Sは、ランプ点灯中、放電容器20内で放電が発生したときでも、コロナ放電が発生しない空間領域(非放電空間領域)として構成されている。管状部60の内表面と放電容器20(外側管40)のランプ軸に沿った外表面40Mとの径方向距離間隔K、管状部60の厚さ60Tは、放電容器20内で放電を発生させたときでも、隔離空間60Sが非放電空間領域となるように定められている。
【0036】
放電容器20内において発生した放電から放射される紫外線は、隔離空間60Sを含めて流路R内の原料ガスに照射する。これによって隔離空間60Sが、紫外線照射領域、オゾン生成領域となり、原料ガスに含まれる酸素からオゾンが発生し、オゾンを含むガスがエキシマランプ10から流出する。
【0037】
上述したように、大口径放電管として放電容器20が構成さていることにより、比較的低い電力によっても、空間領域として十分確保されたオゾン生成領域に対して効果的にオゾンを発生させることができる。一方、隔離空間60Sが非放電空間領域として形成されているため、窒素が原料ガスに含まれる場合でも、オゾンを含む流出ガスには、窒素酸化物などの有害ガスが含まれない。
【0038】
本実施形態では、エキシマランプ10は、光源であるとともにオゾン発生源として構成されており、オゾン水生成器に組み込まれている。具体的には、エキシマランプ10の流出口94が、管路12を介して気液混合部13と接続する。オゾンを含むガスは、気液混合部13において水などの液体と混合し、オゾン水が生成される。なお、オゾン水生成器は、例えば特開平11-347567号公報に記載されているように、オゾン分解部、除湿部、流量調整部などを備え、その機構およびオゾン水生成処理に関する構成は周知であり、説明を省略する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態におけるエキシマランプ10は、従来のエキシマランプのように放電容器20(外側管40)の外表面40Mに外側電極を設ける電極構造を採用していない。そして、(外側電極ではなく)原料ガスを流す配管として構成される管状部60と電極50との間に電圧を印加することによって、原料ガスの流れる隔離空間60Sに紫外線を照射する。
【0040】
紫外線照射や原料ガスの流れにとって障害となる外側電極が配置されていないため、原料ガスに対して効果的に紫外線を照射させ、オゾンを効率よく発生させることができる。また、隔離空間60Sにおいてコロナ放電が発生しないため、窒素酸化物などが生じず、ガスの通過する機器、器具や除菌消臭対象などに影響を与えないでオゾン生成することができる。
【0041】
特に、コロナ放電発生の抑制に関しては、電極50と管状部60が円筒状の導電性部材として同軸配置された構成であるため、電極50の外周面と管状部60の内周面との径方向距離が、周方向および軸方向に沿って一定となる。これにより、放電容器20内に放電を発生させる電圧を印加したとき、電極50の内表面と管状部60の内表面の間に、周方向および軸方向に沿って均一な電界強度分布が形成される。
【0042】
そのため、従来のエキシマランプのように、外側電極の開口部付近における電界集中によるコロナ放電が発生しない。また、大口径放電管として放電容器20が構成されているため、電極50と管状部60の直径(曲率)が比較的大きく、紫外線照射が従来型エキシマランプと比べて面照射に近い状態となる。このような構造は、隔離空間60Sにおいて電界集中が生じることによるコロナ放電の発生を抑制する。
【0043】
アース接続あるいは電源部と接続する管状部60は、原料ガスを流す配管として構成されている。そのため、紫外線照射装置、オゾン生成装置などに対し、そのまま着脱自在に装着し、交換することが容易な構成になっている。また、電源部を一体として備えたランプモジュールとして構成することも容易であり、石英ガラスから成る放電容器(ランプ)だけを取り外すといった作業を必要とせず、ランプ交換を容易に行うことができる、
【0044】
また、管状部60の配管構造により、放電を発生させる電圧を印加することが可能な条件の下、様々な導電性部材を適用することが可能である。したがって、管状部60をアルミニウムなどの熱伝導性が高い軽量素材で構成し、隔離空間60Sに露出することにより、放熱性を高めて軽量化したエキシマランプ10を提供することが可能となる。
【0045】
その一方で、管状部60の両端を絶縁性部材である蓋70、80と接続し、流入口92、流出口94を形状変形容易な絶縁性の蓋70、80に形成している。これにより、流入口92、流出口94の経路および流路Rにおけるガスの流れを、自在に設計することが可能となる。
【0046】
さらに、エキシマランプ10の内部空間10S(流路R)に流入したガスは、上述したように乱流状態となって流出する。そのため、エキシマランプ10の内部空間10S(流路R)を通過する間に紫外線が十分に照射されることになり、効果的にオゾンを発生させることができる。また、放熱性の高い管状部60の軸方向長さが、放電空間20S(外側管40)の軸方向長さよりも長いため、内部空間10S(流路R)全体を十分冷却することが可能となる。
【0047】
電極50と管状部60の構成、径方向距離間隔K、管状部60の厚さ60Tは、隔離空間60Sに放電が生じないように定めればよく、また、紫外線の減衰する距離(透過距離)などを考慮して定めることが可能である。径方向距離間隔Kについては、少なくともコロナ放電が生じないような距離間隔を定めればよい。
【0048】
例えば、径方向距離間隔Kが1mm以下の場合、隔離空間60Sは僅かな隙間として存在することになり、事実上、放電容器20(外側管40)に管状部60を嵌合させた状態と変わりなく、必然的に僅かな隙間においてコロナ放電が生じる。
【0049】
また、オゾン生成する隔離空間60Sが小さくなるため、放電容器20から放射される紫外線の紫外線照度が高い距離範囲において管状部60により遮られることになり、原料ガスが十分に紫外線を照射されず、オゾン生成効率が悪い。また、隔離空間60Sが小さいと、管状部60自身が原料ガスの流れを妨げる障害となり、原料ガスを効率よく流すことができない。したがって、隔離空間60Sにおけるコロナ放電の発生を防ぎ、オゾン生成効率を高めるため、径方向距離間隔Kを1mmより大きく定めるように構成するのがよい。
【0050】
一方、172nmをピーク波長とする紫外線を大気中に放射する場合、約8mm程度で紫外線強度が10%程度に減衰されることが知られている。そのため、径方向距離間隔Kに関しては、放電容器20(外側管40)の外表面40Mから放射される紫外線の紫外線強度比が20%まで減衰する透過距離以下となるように定め、紫外線照度が低い領域を流れる原料ガスの流れの割合を少なくするのが好ましい。例えば、径方向距離間隔Kを6mm以下に定めることができる。
【0051】
また、径方向距離間隔Kが比較的長いと、放電容器20内の放電に寄与する印加電圧が低下して紫外線照度が低下する。したがって、172nmをピーク波長とする紫外線を放射する場合、径方向距離間隔Kを2mm~3mmの範囲に定めることが好ましい。
【0052】
管状部60の両端部付近に設けられる、絶縁性の蓋70、80は、電界強度分布に影響を与えない位置に形成することが好ましい。また、隔離空間60Sに露出する管状部60の内表面は、電界集中するような凹凸形状を設けず、電界集中しない平滑な形状に定めることが好ましい。
【0053】
管状部60の厚さ60Tに関しては、管状部60の外表面の放熱性、すなわちオゾン熱分解の抑制に繋がる隔離空間60Sの温度上昇の抑制を考慮し、また剛性や重量などを考慮して、厚さ60Tを定めることが可能である。例えば、管状部60の厚さ60Tは、1mm~3mmの範囲に定めることができる。
【0054】
次に、第2の実施形態であるエキシマランプについて説明する。第2の実施形態では、流入口の入口部分と流出口の出口部分が径方向に沿って形成されたエキシマランプとして構成されている。
【0055】
図2は、第2の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。エキシマランプ100は、電極150が挿入された内側管130と外側管140とを溶着した放電容器120と、管状部160とを備え、管状部160の両端に絶縁性の蓋170、180が取り付けられている。蓋170には、内側管130を軸支する継ぎ手(ここでは、ボアスルーコネクタ)190が設けられている。
【0056】
放電容器120内には放電空間120Sが形成され、また、管状部160内には、放電容器120周囲に内部空間10S、すなわち流路Rが形成されている。そして、管状部160と放電容器120との間には、隔離空間160Sが形成されている。
【0057】
管状部160の軸方向長さは、放電容器120(外側管140)の軸方向長さよりも短い。蓋170、180は、その一部が放電容器120と対向する位置まで延在し、原料ガスが流れる配管の一部として機能している。蓋170、180には、放電容器120の両端付近と向かい合う位置に、ガスの流入口192、流出口194が形成されている。流入口192、流出口194は、それぞれランプ径方向を向いている。
【0058】
第1の実施形態と同様、隔離空間160Sは、非放電空間領域となるように形成されている。そのため、窒素酸化物などの有害なガスの発生を抑えながらオゾンを含むガスをエキシマランプ100から流出させることができる。また、流入口192、流出口194が放電容器120の両端部付近のランプ軸に沿った外表面と向かい合う位置に形成しているため、第1の実施形態と同様、流路Rにおいてガスが乱流状態となり、紫外線を十分に照射させることができるランプ構造を採用することが可能となる。
【0059】
次に、図3を用いて第3の実施形態であるエキシマランプについて説明する。第3の実施形態では、流入口、流出口が導電性の管状部に形成されている。それ以外の構成については、第2の実施形態と実質的に同じである。
【0060】
図3は、第3の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。エキシマランプ200は、電極250が挿入された内側管230と外側管240とを溶着した放電容器220と、管状部260とを備える。管状部260は、ここでは有底管状であり、管状部260の一方の端部に絶縁性の蓋290が取り付けられている。なお、蓋290の代わりに内側管230を軸支する継ぎ手(ここでは、ボアスルーコネクタ)190を設けてもよい。
【0061】
放電容器220内には放電空間220Sが形成され、また、管状部260内には、放電容器220周囲に内部空間210S、すなわち流路Rが形成されている。そして、管状部260と放電容器220との間には、隔離空間260Sが形成されている。第1、第2の実施形態と同様、隔離空間260Sは、非放電空間領域となるように形成されている。
【0062】
管状部260には、流入口292、流出口294が形成されている。流入口292、流出口294は、第2の実施形態と同様、放電容器220(外側管240)の両端部付近のランプ軸に沿った外表面と向かい合う方向に形成されている。なお、流入口292、流出口294に関しては、1つに限らずより多く形成することも可能である。
【0063】
次に、図4を用いて第4の実施形態であるエキシマランプについて説明する。第4の実施形態では、流路がランプ軸方向に沿って形成されている。
【0064】
図4は、第4の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。エキシマランプ300は、電極350が挿入された内側管330と外側管340とを溶着した放電容器320と、管状部360とを備える。管状部360は、第1および第2の実施形態と同様、無底管状であり、両端部は解放されている。
【0065】
放電容器320内には放電空間320Sが形成され、また、管状部360内には、放電容器320周囲に内部空間310S、すなわち流路Rが形成されている。そして、管状部360と放電容器320との間には、隔離空間360Sが形成されている。
【0066】
第1~第4の実施形態では、電極が内側管に挿入されているが、内側管が電極を埋設するように構成してもよく、電極の一部が内側管から放電容器内(放電空間)に露出するように構成してもよい。このとき、放電容器の断面形状、内側管と外側管の断面形状は任意であり、例えば断面矩形状でもよく、さらには同軸的配置に限定されない。さらに、内側管を設けずに放電容器を構成することも可能であり、放電容器および管状部の形状、サイズ、厚さなどは、管状部に対して非放電空間となる隔離空間を形成可能な範囲で、それぞれ定めればよい。
【0067】
第1~第4の実施形態では、オゾン水生成器に装着可能なエキシマランプとして説明しているが、除菌消臭処理などを行う紫外線照射装置の光源として利用することも可能である。さらに、管状部にガスや液体などを流さず、環状部を紫外線の透過する素材で構成することにより、管状部の外部へ向けて紫外線を放射するエキシマランプとしても構成することが可能である。また、波長172nm以外の紫外線を放射するようにエキシマランプを構成することも可能であり、それに合わせて管状部の厚さ、隔離空間の径方向距離間隔などを定めればよい。
【符号の説明】
【0068】
10 エキシマランプ
20 放電容器
30 内側管
40 外側管
50 電極
60 管状部
図1
図2
図3
図4