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特開2024-67263情報処理装置、情報処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067263
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/125 20220101AFI20240510BHJP
   H04L 67/04 20220101ALI20240510BHJP
   H04L 67/60 20220101ALI20240510BHJP
【FI】
H04L67/125
H04L67/04
H04L67/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177192
(22)【出願日】2022-11-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G研究開発促進事業/Beyond 5G を活用した安全かつ効率的なクラウドロボティクスの実現」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
(57)【要約】
【課題】確率分布データを近似した混合モデルの精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができないこと。
【解決手段】本開示の情報処理装置100は、確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得する取得手段121と、通信状況に基づいて、確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定する決定手段122と、決定した混合数の分布を混合することによって確率分布データを近似した混合モデルを生成する生成手段123と、を備える。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得する取得手段と、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定する決定手段と、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する生成手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記取得手段は、前記通信状況として前記通信経路の通信帯域を取得し、
前記決定手段は、前記通信帯域に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信帯域にて通信可能なデータ量の前記混合モデルを生成するよう前記混合数を決定する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信状況に基づいて前記混合数の最大値を設定し、
前記生成手段は、前記最大値以下で前記混合数を変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルを評価し、
さらに、前記決定手段は、前記混合モデルの評価結果に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記生成手段は、前記最大値以下で前記混合数を変化させて生成した前記混合モデルの前記確率分布データに対する近似度合いを評価し、
前記決定手段は、前記混合モデルの前記確率分布データに対する前記近似度合いに基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
生成した前記混合モデルを、前記通信経路を介して外部装置に転送する転送手段を備えた、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信状況を取得する毎に、当該通信状況に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
【請求項8】
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理方法であって、
前記通信状況に基づいて前記混合数の最大値を設定し、
前記最大値以下で前記混合数を変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルを評価し、
前記混合モデルの評価結果に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理方法。
【請求項10】
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現実世界のシステムを観測及びモデル化したデジタルツインにおいて、観測誤差、制御誤差、モデル化誤差のような確率的な外乱を取り入れ、デジタル空間上で確率システムとして再現する確率的デジタルツインが要求されている。この場合、システムの状態を確率分布として扱うこととなり、確率的デジタルツイン側から確率分布データを現実世界のシステム側に対して提供することになる。
【0003】
ここで、上述したように確率的デジタルツイン側から現実世界のシステム側に確率分布データを提供する際には、通信網を介して確率分布データが転送されることとなる。このとき、確率分布データが既知の確率分布で表される場合には、かかる確率分布の母数を利用することで、転送するデータ量の削減を図ることができる。特に、確率分布データは、特許文献1に記載のように、複数のガウス分布を基底関数とした混合ガウスモデルとして表される場合があり、このような場合であってもデータ量を削減して転送することができる。一例として、特許文献1では、カルバックライブラーダイバージェンス(KLD)を計算して、元の確率モデルを混合ガウスモデルで近似している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-258977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように確率分布データを混合モデルで表してデータ転送する場合には、混合モデルの精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができない、という問題が生じる。例えば、混合モデルは、混合する分布の数が多いほど元の確率分布データを近似することができるが、転送データの容量が増加し、転送不良が生じることもある。
【0006】
このため、本開示の目的は、上述した課題である、確率分布データを複数の分布を混合した混合モデルでデータ転送する場合において、精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができない、という問題を解決することができる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態である情報処理装置は、
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得する取得手段と、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定する決定手段と、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する生成手段と、
を備えた、
という構成をとる。
【0008】
また、本開示の一形態である情報処理方法は、
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
という構成をとる。
【0009】
また、本開示の一形態であるプログラムは、
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、以上のように構成されることにより、確率分布データを複数の分布を混合した混合モデルでデータ転送する場合において、精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態1におけるデジタルツインシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2図1に開示したデジタルツインサーバの構成を示すブロック図である。
図3図1に開示したデジタルツインサーバの動作を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態2における情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本開示の実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本開示の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。図1乃至図2は、デジタルツインシステムの構成を説明するための図であり、図3は、デジタルツインシステムの処理動作を説明するための図である。
【0013】
[構成]
本実施形態におけるデジタルツインシステムは、図1に示すように、現実世界の対象システムの一例である制御サーバ20及びロボット30からなるロボット制御システムと、かかる対象システムを観測及びモデル化してデジタル空間上で再現するデジタルツインサーバ10と、がネットワークNを介して接続されて構成されている。
【0014】
デジタルツインサーバ10は、対象システムの状態をデジタル空間上で確率解析して確率分布データにて再現し、かかる確率分布データを近似したモデルを生成するものである。そして、デジタルツインサーバ10は、生成したモデルを確率分布データとして、現実世界の対象システムである制御サーバ20及びロボット30にネットワークNを介してデータ転送して提供する。これにより、対象システム側つまり制御サーバ20は、提供されたモデルを用いてロボット30の制御を行うことができる。なお、図1では、現実世界の対象システムとしてロボット制御システムを一例に挙げているが、現実世界の対象システムはいかなるシステムであってもよい。以下、主にデジタルツインサーバ10の構成、特に、確率分布データを近似したモデルを生成してデータ転送するための構成について説明する。
【0015】
デジタルツインサーバ10は、演算装置と記憶装置とを備えた1台又は複数台の情報処理装置にて構成される。そして、デジタルツインサーバ10は、図2に示すように、通信状況取得部11、混合数決定部12、モデル生成部13、データ転送部14、を備える。通信状況取得部11、混合数決定部12、モデル生成部13、データ転送部14の各機能は、演算装置が記憶装置に格納された各機能を実現するためのプログラムを実行することにより実現することができる。また、デジタルツインサーバ10は、閾値記憶部16を備える。閾値記憶部16は、記憶装置により構成される。以下、各構成について詳述する。
【0016】
通信状況取得部11(取得手段)は、対象システムである制御サーバ20等と接続されたネットワークの通信状況を取得する。具体的に、通信状況取得部11は、後述するようにモデルにて近似する確率分布データの提供先となる制御サーバ20との通信経路Nの通信状況である通信帯域を取得する。なお、通信状況取得部11は、制御サーバ20との通信経路Nの通信帯域を計測して取得してもよく、ネットワークに設置された他の通信装置にて計測された通信経路Nの通信帯域を取得してもよい。なお、通信状況取得部11は、通信経路Nの通信状況として、通信帯域以外の通信状況を表す特性値を取得してもよい。
【0017】
混合数決定部12(決定手段)は、取得した制御サーバ20との通信経路Nの通信帯域から、制御サーバ20との通信経路Nでデータ転送可能なデータ量を推定する。そして、混合数決定部12は、推定したデータ量から、後述するように、確率分布データを近似する複数のガウス分布を混合した混合ガウスモデルを生成する際におけるガウス分布の混合数を決定する。特に、本実施形態では、混合数決定部12は、混合数の最大値を決定する。なお、混合ガウスモデルは、混合するガウス分布の混合数が増加するほど、データ量が増大することとなる。このため、混合数決定部12は、通信帯域が広いほどデータ転送可能なデータ量を多く推定し、推定したデータ転送可能なデータ量が多いほど混合数の最大値を高く決定する。具体的に、混合数決定部12は、上述したように、通信帯域が広いほど高い値の混合数の最大値を算出するよう予め設定された算出式に基づいて、混合数の最大値を決定する。なお、混合数決定部12は、通信帯域が広いほど高い値となる1つの混合数を決定してもよい。
【0018】
モデル生成部13(生成手段、決定手段)は、上述したように決定した混合数の最大値に基づいて、複数のガウス分布を混合することによって確率分布データを近似した混合ガウスモデルを生成する。具体的に、モデル生成部13は、ガウス分布の混合数を最大値以下の所定値に設定し、設定した混合数のガウス分布で確率分布データを近似した混合ガウスモデルを生成する。そして、モデル生成部13は、生成した混合ガウスモデルと、確率分布データと、の近似度合いを評価する。例えば、モデル生成部13は、生成した混合ガウスモデルと確率分布データとのカルバックライブラーダイバージェンス(KLD)を算出する。なお、KLDは、2つの分布つまり混合ガウスモデルと確率分布データとの距離を表す値であり、KLDの値が小さいほど近似することを表す。そして、モデル生成部13は、算出したKLDと、予め閾値記憶部16に記憶している閾値と、を比較して、KLDが閾値未満であるか否かを調べる。このとき、閾値は、混合ガウスモデルと確率分布データとの近似度合いが許容される値、つまり、混合ガウスモデルと確率分布データとの十分に近似していると判定できる値、となっている。このため、算出したKLDが閾値未満である場合には、生成した混合ガウスモデルが、確率分布データを十分に近似していると評価できることとなる。
【0019】
そして、モデル生成部13は、混合ガウスモデルの評価結果に基づいて、最終的な混合数を決定する。具体的に、モデル生成部13は、生成した混合ガウスモデルのKLDが閾値未満である場合には、その混合数を最終的な混合数として決定する。そして、モデル生成部13は、決定した最終的な混合数で生成した混合ガウスモデルを、確率分布データとして制御サーバ20に提供する転送データとする。
【0020】
一方で、生成した混合ガウスモデルのKLDが閾値以上である場合には、生成した混合ガウスモデルの近似度合いが十分ではないと判断し、ガウス分布の混合数を変更して、新たに混合ガウスモデルを生成する。このとき、混合数が大きくなるにつれてKLDの値が小さくなることが想定されるため、モデル生成部13は、例えば、混合数を十分に小さい値である予め設定された初期値(例えば、「1」)から1ずつ大きい値に変化させて、その都度、上述したように混合ガウスモデルの生成とKLDの値の評価を行う。そして、モデル生成部13は、上述したように、KLDが閾値未満となった場合には、そのときの混合数を最終的な混合数として決定し、KLDが閾値以上であるが、混合数が最大値となった場合には、最大値を最終的な混合数として決定する。この場合も、モデル生成部13は、決定した最終的な混合数で生成した混合ガウスモデルを、確率分布データとして制御サーバ20に提供する転送データとする。
【0021】
なお、モデル生成部13は、上述した混合数決定部12にて既に1つの混合数が決定された場合には、かかる混合数を最終的な混合数として決定する。そして、モデル生成部13は、決定した最終的な混合数で生成した混合ガウスモデルを、確率分布データとして制御サーバ20に提供する転送データに決定する。
【0022】
上述した混合数決定部12とモデル生成部13とによるガウス分布の混合数の決定は、通信経路Nの通信状況、例えば、通信帯域を取得する毎に実行されてもよい。つまり、通信経路Nの通信状況が時間の経過とともに変化する場合には、一定の時間間隔や任意のタイミングで上述した通信状況取得部11にて通信状況を取得し、取得された最新の通信状況に応じて混合数の最大数を決定し、かかる最大数以下で上述したように最終的な混合数を決定してもよい。
【0023】
データ転送部14(転送手段)は、上述したように転送データとされた混合ガウスモデルを、通信経路Nを介して制御サーバ20(外部装置)に転送する。このとき、データ転送部14は、混合ガウスモデルを特定する情報として、「混合ガウスモデルであることを示す識別子」、「混合数」、「基底となる各ガウス分布の母数」、を制御サーバ20に転送する。つまり、データ転送部14が送信するデータのデータ量は、主にこれらのデータからなる。なお、各ガウス分布の母数(π,μ,σ)は、「π:混合の割合」、「μ:平均」、「σ:分散」である。
【0024】
ここで、上述したモデル生成部13による処理を、数式を用いて説明する。
【0025】
まず、モデル生成部13の処理の概要としては、数1に示すように、確率分布データp(x)を、K個のガウス分布Nを混合した混合ガウスモデルに近似する。このとき、モデル生成部13は、数2に示すように、確率分布データと混合ガウスモデルとのKLD(DKL)
が最小化つまり閾値未満となる混合数Kを決定し、かかる混合数Kで生成した混合ガウスモデルの基底とするガウス分布の母数等からなるパラメータを転送データとする。
【数1】
【数2】
【0026】
次に、モデル生成部13による、確率分布データp(x)を、K個のガウス分布Nを混合した混合ガウスモデルで近似するフィッティングアルゴリズムについて説明する。なお、ここでは、EMアルゴリズムを用いることとする。
【0027】
まず、混合する複数のガウス分布の混合率と母数を初期化する。数3は、初期化の一例である。
【数3】
【0028】
続いて、Eステップとして、数4に示すように、負担率(rnk)を計算し、数5に示すように、尤度Qを計算する。
【数4】
【数5】
【0029】
そして、上記尤度Qの増加分が、フィッティング用に設定された閾値未満である場合に終了する。
【0030】
その後、Mステップとして、下記数6に示すように、混合率K及びガウス分布Nの母数(π,μ,σ)を更新する。
【数6】
【0031】
上記EステップとMステップを基底回数繰り返す。
【0032】
なお、上記では、モデル生成部13において、確率分布データを、複数の基底となるガウス分布を混合した混合ガウスモデルで近似する場合を例示したが、混合する複数の基底となる分布は、ガウス分布であることに限定されず、指数分布など既知の分布を用いてもよい。つまり、モデル生成部13は、複数の既知の分布を混合して、確率分布データを近似した混合モデルを生成してもよい。このとき、既知の基底となる分布は、確率分布を特徴付ける定数である母数がわかるものである。これにより、データ転送部14は、確率分布データを近似した混合モデルの基底とする分布の母数を転送データに含めることとなる。
【0033】
[動作]
次に、上述したデジタルツインサーバ10の動作を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
まず、デジタルツインサーバ10は、対象システムである制御サーバ20等と接続された通信経路Nの通信状況として、通信帯域を取得する(ステップS1)。そして、デジタルツインサーバ10は、通信経路Nの通信帯域から、かかる通信経路Nでデータ転送可能なデータ量を推定し、さらに推定したデータ量からガウス分布の混合数の最大値を決定する(ステップS2)。このとき、デジタルツインサーバ10は、通信帯域が広いほどデータ転送可能なデータ量を多く推定し、推定したデータ転送可能なデータ量が多いほど混合数の最大値を高く決定する。
【0035】
続いて、デジタルツインサーバ10は、ガウス分布の混合数として最大値よりも小さい値である初期値を設定し、かかる混合数のガウス分布で確率分布データを近似した混合ガウスモデルを生成する(ステップS3)。そして、デジタルツインサーバ10は、生成した混合ガウスモデルと、確率分布データと、の近似度合いを評価する。例えば、デジタルツインサーバ10は、生成した混合ガウスモデルと確率分布データとのカルバックライブラーダイバージェンス(KLD)を算出し、KLDが閾値未満であるか否かを調べる(ステップS4)。デジタルツインサーバ10は、混合ガウスモデルのKLDが閾値未満である場合には(ステップS4でYes)、その混合ガウスモデルを確率分布データとして制御サーバ20に転送する(ステップS7)。このとき、デジタルツインサーバ10は、転送データとして、「混合ガウスモデルであることを示す識別子」、「混合数」、「規定となる各ガウス分布の母数」、を制御サーバ20に転送する。
【0036】
デジタルツインサーバ10は、生成した混合ガウスモデルのKLDが閾値以上である場合には(ステップS4でNo)、混合数が最大値であるか否かを調べる(ステップS5)。このとき、デジタルツインサーバ10は、混合ガウスモデルの混合数が最大値である場合には(ステップS5でYes)、上述同様に、その混合ガウスモデルを確率分布データとして制御サーバ20に転送する(ステップS7)。
【0037】
デジタルツインサーバ10は、生成した混合ガウスモデルのKLDが閾値以上であり(ステップS4でNo)、かつ、混合数が最大値でない場合には(ステップS5でNo)、その後、混合するガウス分布の混合数を変更して、新たに混合ガウスモデルを生成する。具体的に、デジタルツインサーバ10は、混合数を例えば「+1」するなど増加させて(ステップS6)、再度、上述同様に混合ガウスモデルの生成と(ステップS3)、KLDの値の評価を行う(ステップS4)。そして、デジタルツインサーバ10は、KLDが閾値未満となるか(ステップS4でYes)、混合数が最大値となるまで(ステップS5でYes)、上述したように、混合するガウス分布の混合数を変更して、新たに混合ガウスモデルを生成し評価する処理を繰り返す(ステップS6,S3,S4,S5)。そして、デジタルツインサーバ10は、生成した混合ガウスモデルのKLDが閾値未満となった場合(ステップS4でYes)、あるいは、混合数が最大値となった場合に(ステップS5でYes)、上述同様に、その混合ガウスモデルを確率分布データとして制御サーバ20に転送する(ステップS7)。
【0038】
なお、デジタルツインサーバ10は、通信経路Nの通信状況、例えば、通信帯域を、一定の時間間隔や予め設定されたタイミングで取得し(ステップS1)、取得する毎に、その通信帯域に応じて、上述した処理を繰り返してもよい(ステップS2~S7)。つまり、通信状況を取得する毎に、ガウス分布の混合数の最大値を決定して、かかる最大値以下で混合ガウスモデルの近似度合いが高くなるよう混合数を決定し、かかる混合数の混合ガウスモデルのデータ転送を行ってもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態におけるデジタルツインサーバ10では、通信経路の通信状況を取得して、通信状況に応じた混合数を決定し、かかる混合数の分布を混合することによって確率分布データを近似した混合モデルを生成している。このため、混合モデルの近似精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができる。特に、本実施形態では、混合モデルを通信可能なデータ量となる混合数の最大値を設定し、最大値以下で混合数を変化させて生成した混合モデルを評価して、評価結果に基づいて混合数を決定している。このため、さらに混合モデルの近似精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができる。
【0040】
<実施形態2>
次に、本開示の第2の実施形態を、図4乃至図5を参照して説明する。図4乃至図5は、実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明した情報処理装置の構成の概略を示している。
【0041】
まず、図4を参照して、本実施形態における情報処理装置100のハードウェア構成を説明する。情報処理装置100は、一般的な情報処理装置にて構成されており、一例として、以下のようなハードウェア構成を装備している。
・CPU(Central Processing Unit)101(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)102(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)103(記憶装置)
・RAM103にロードされるプログラム群104
・プログラム群104を格納する記憶装置105
・情報処理装置外部の記憶媒体110の読み書きを行うドライブ装置106
・情報処理装置外部の通信ネットワーク111と接続する通信インタフェース107
・データの入出力を行う入出力インタフェース108
・各構成要素を接続するバス109
【0042】
なお、図4は、情報処理装置100である情報処理装置のハードウェア構成の一例を示しており、情報処理装置のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、情報処理装置は、ドライブ装置106を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。また、情報処理装置は、上述したCPUの代わりに、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(TensorProcessingUnit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0043】
そして、情報処理装置100は、プログラム群104をCPU101が取得して当該CPU101が実行することで、図5に示す取得手段121と決定手段122と生成手段123とを構築して装備することができる。なお、プログラム群104は、例えば、予め記憶装置105やROM102に格納されており、必要に応じてCPU101がRAM103にロードして実行する。また、プログラム群104は、通信ネットワーク111を介してCPU101に供給されてもよいし、予め記憶媒体110に格納されており、ドライブ装置106が該プログラムを読み出してCPU101に供給してもよい。但し、上述した取得手段121と決定手段122と生成手段123とは、かかる手段を実現させるための専用の電子回路で構築されるものであってもよい。
【0044】
上記取得手段121は、確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得する。例えば、取得手段121は、通信経路の通信帯域を取得する。
【0045】
上記決定手段122は、通信状況に基づいて、確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定する。例えば、決定手段は、通信経路にて通信可能なデータ量の混合モデルを生成することができる混合数の最大値を決定し、最大値以下で生成した混合モデルの評価に応じて、混合数を決定する。
【0046】
上記生成手段123は、決定した混合数の分布を混合することによって確率分布データを近似した混合モデルを生成する。このとき、生成手段123は、混合数の最大値が設定された場合には、最大値以下で混合数を変化させて混合モデルを生成して評価し、評価結果に応じて決定された混合数の混合モデルを生成する。
【0047】
本開示は、以上のように構成されることにより、通信経路の通信状況に応じた混合数を決定し、かかる混合数の分布を混合することによって確率分布データを近似した混合モデルを生成している。このため、混合モデルの近似精度を向上させつつ確実なデータ転送を図ることができる。
【0048】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0049】
以上、上記実施形態等を参照して本開示を説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、上述した取得手段121と決定手段122と生成手段123との機能のうちの少なくとも一以上の機能は、ネットワーク上のいかなる場所に設置され接続された情報処理装置で実行されてもよく、つまり、いわゆるクラウドコンピューティングで実行されてもよい。
【0050】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本開示における情報処理装置、情報処理方法、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本開示は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得する取得手段と、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定する決定手段と、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する生成手段と、
を備えた情報処理装置。
(付記2)
付記1に記載の情報処理装置であって、
前記取得手段は、前記通信状況として前記通信経路の通信帯域を取得し、
前記決定手段は、前記通信帯域に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
(付記3)
付記2に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信帯域にて通信可能なデータ量の前記混合モデルを生成するよう前記混合数を決定する、
情報処理装置。
(付記4)
付記1に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信状況に基づいて前記混合数の最大値を設定し、
前記生成手段は、前記最大値以下で前記混合数を変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルを評価し、
さらに、前記決定手段は、前記混合モデルの評価結果に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
(付記5)
付記4に記載の情報処理装置であって、
前記生成手段は、前記最大値以下で前記混合数を変化させて生成した前記混合モデルの前記確率分布データに対する近似度合いを評価し、
前記決定手段は、前記混合モデルの前記確率分布データに対する前記近似度合いに基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
(付記6)
付記5に記載の情報処理装置であって、
前記生成手段は、前記最大値以下で前記混合数が増加するよう変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルの前記確率分布データに対する前記近似度合いとしてカルバックライブラーダイバージェンスを算出し、
前記決定手段は、前記カルバックライブラーダイバージェンスが予め設定された閾値未満となった際の前記混合数に決定する、
情報処理装置。
(付記7)
付記1に記載の情報処理装置であって、
生成した前記混合モデルを、前記通信経路を介して外部装置に転送する転送手段を備えた、
情報処理装置。
(付記8)
付記1に記載の情報処理装置であって、
前記決定手段は、前記通信状況を取得する毎に、当該通信状況に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理装置。
(付記9)
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
情報処理方法。
(付記10)
付記9に記載の情報処理方法であって、
前記通信状況として前記通信経路の通信帯域を取得し、
前記通信帯域に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理方法。
(付記11)
付記10に記載の情報処理方法であって、
前記通信帯域にて通信可能なデータ量の前記混合モデルを生成するよう前記混合数を決定する、
情報処理方法。
(付記12)
付記9に記載の情報処理方法であって、
前記通信状況に基づいて前記混合数の最大値を設定し、
前記最大値以下で前記混合数を変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルを評価し、
前記混合モデルの評価結果に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理方法。
(付記13)
付記12に記載の情報処理方法であって、
前記最大値以下で前記混合数を変化させて生成した前記混合モデルの前記確率分布データに対する近似度合いを評価し、
前記混合モデルの前記確率分布データに対する前記近似度合いに基づいて前記混合数を決定する、
情報処理方法。
(付記14)
付記13に記載の情報処理方法であって、
前記最大値以下で前記混合数が増加するよう変化させて前記混合モデルを生成すると共に、生成した前記混合数毎の前記混合モデルの前記確率分布データに対する前記近似度合いとしてカルバックライブラーダイバージェンスを算出し、
前記カルバックライブラーダイバージェンスが予め設定された閾値未満となった際の前記混合数に決定する、
情報処理方法。
(付記15)
付記9に記載の情報処理方法であって、
生成した前記混合モデルを、前記通信経路を介して外部装置に転送する、
情報処理方法。
(付記16)
付記9に記載の情報処理方法であって、
前記通信状況を取得する毎に、当該通信状況に基づいて前記混合数を決定する、
情報処理方法。
(付記17)
確率分布データを提供する提供先との通信経路の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記確率分布データを近似する際に利用する複数の既知の分布の混合数を決定し、
決定した前記混合数の前記分布を混合することによって前記確率分布データを近似した混合モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0051】
10 デジタルツインサーバ
11 通信状況取得部
12 混合数決定部
13 モデル生成部
14 データ転送部
16 閾値記憶部
20 制御サーバ
30 ロボット
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 プログラム群
105 記憶装置
106 ドライブ装置
107 通信インタフェース
108 入出力インタフェース
109 バス
110 記憶媒体
111 通信ネットワーク
121 取得手段
122 決定手段
123 生成手段


図1
図2
図3
図4
図5