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特開2024-67278非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法、非水電解質蓄電デバイスの電極の添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067278
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法、非水電解質蓄電デバイスの電極の添加剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240510BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240510BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240510BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240510BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240510BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240510BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240510BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240510BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20240510BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01G11/86
H01G11/30
H01G11/68
H01G11/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177229
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】516309866
【氏名又は名称】ATTACCATO合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】山下 直人
(72)【発明者】
【氏名】池内 勇太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 太地
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AB01
5E078BA30
5E078BB30
5E078BB33
5E078FA02
5E078FA03
5E078FA13
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE05
5H017HH01
5H017HH03
5H050AA07
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050DA08
5H050DA11
5H050EA23
5H050FA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】 アルカリ性のスラリーでありながら、アルミニウムを腐食させずに製造できる電極の製造方法を提案する。
【解決手段】 非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法であって、活物質、導電助剤、ケイ酸塩水溶液を含んでなるアルカリ水溶液を分散媒とするスラリーを製造する工程Aと、電極の基材となるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、前記スラリーを塗工して電極を製造する工程Bと、を備え、前記ケイ酸塩水溶液が、一般式A2O・nSiO2で表されるケイ酸塩を水に溶解した液体であり、AがLi、NaまたはKの少なくともいずれか一種であり、nが1.7以上5以下である、電極の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法であって、
活物質、導電助剤、ケイ酸塩水溶液を含んでなるアルカリ水溶液を分散媒とするスラリーを製造する工程Aと、
電極の基材となるアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、前記スラリーを塗工して電極を製造する工程Bと、を備え、
前記ケイ酸塩水溶液が、一般式A2O・nSiO2で表されるケイ酸塩を水に溶解した液体であり、AがLi、NaまたはKの少なくともいずれか一種であり、nが1.7以上5以下である、
電極の製造方法。
【請求項2】
前記活物質として、Ni比率が6割を超える層状酸化物系材料、固溶体系材料、シリケート系材料、またはMn比率が5割を超えるリン酸系材料のいずれかを含む、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ水溶液のpH値が10以上である、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記工程Aは、
予めケイ酸塩水溶液を含んでなるアルカリ水溶液を用意し、
前記アルカリ水溶液に前記活物質を入れて混練する工程である、
請求項3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記ケイ酸塩水溶液の固形分が、スラリーの固形分総量に対して、0.1質量%以上15質量%以下で含まれる、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーが、さらに樹脂系バインダを含んでなり、
スラリーの固形分総量を100質量%とした場合、該樹脂系バインダが0.1~30質量%含有されている、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウムまたは前記アルミニウム合金の表面に、リン酸塩またはケイ酸塩からなるプライマー層が設けられ、該プライマー層の厚さが0.01μm以上3μm以下である、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
非水電解質蓄電デバイスにおける、アルミニウムまたはアルミニウム合金を基材とする電極に用いるアルカリ水溶液を分散媒とするスラリーの添加剤であり、
成分にケイ酸塩水溶液を含み、
前記ケイ酸塩水溶液が、一般式A2O・nSiO2で表されるケイ酸塩を水に溶解した液体であり、AがLi、NaまたはKの少なくともいずれか一種であり、nが1.7以上5以下である、
電極スラリー用の添加剤。
【請求項9】
前記ケイ酸塩水溶液の濃度が、1質量%以上50質量%以下である、
請求項8に記載の電極スラリー用の添加剤。
【請求項10】
さらに、消泡剤を含む、
請求項9に記載の電極スラリー用の添加剤。
【請求項11】
さらに、界面活性剤を含む、
請求項9に記載の電極スラリー用の添加剤。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の添加剤を含み、
pH値が10以上である、
電極スラリー用のアルカリ水溶液分散媒。
【請求項13】
請求項12に記載のアルカリ水溶液分散媒と、
Ni比率が6割を超える層状酸化物系材料、固溶体系材料、シリケート系材料、またはMn比率が5割を超えるリン酸系材料のいずれかを含む、
電極スラリー。
【請求項14】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の添加剤を電極に内包した、
非水電解質蓄電デバイス用の電極。
【請求項15】
請求項14に記載の電極を具備した、
非水電解質蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法、非水電解質蓄電デバイスの電極の添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの利用分野は、電子機器から自動車、大型蓄電システムなどへと展開しており、その市場規模は10兆円以上の産業に成長することが期待される。とりわけ、スマートフォン、タブレット型端末などの情報通信機器が、めざましい普及を遂げている。
【0003】
加えて、蓄電デバイスは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等をはじめとする次世代自動車の電源へと応用範囲も広がっている。また、蓄電デバイスは、家庭用バックアップ電源、自然エネルギーの蓄電、負荷平準化などに用いられるようになっている。このように、蓄電デバイスは、省エネルギー技術や新エネルギー技術の導入においても不可欠な存在である。
【0004】
蓄電デバイスとしては、二次電池及びキャパシタ等が挙げられる。現在、特に二次電池が、携帯電子機器の電源、電気自動車用電源及び家庭用電源等として用いられている。
【0005】
従来、二次電池は、ニッケル-カドニウム電池やニッケル-水素電池などのアルカリ二次電池が主流であったが、小型、軽量、高電圧、メモリー効果なしという特徴から、非水電解質二次電池、特にリチウム二次電池(リチウムイオン電池)の使用が増大している。非水電解質二次電池は、正極、負極、セパレータ、電解液または電解質、電槽(収納ケース)から構成される。
【0006】
正極や負極などの電極は、活物質、導電助剤、樹脂系バインダおよび集電体から構成される。一般的に、電極は、活物質、導電助剤、樹脂系バインダを溶媒に混合してスラリー状にし、これを集電体上に塗工し、乾燥後、ロールプレスなどで圧延することによって製造される。
【0007】
一般的に、水にアルカリ金属元素を含有する活物質を加えると、活物質を加える前の水よりもアルカリ性になる。アルカリ金属元素を含有する活物質には、出発材料である水酸化物や炭酸化合物などのアルカリ性物質が残存していることから、活物質が水に接触することでアルカリ性物質が水に溶出して、pH値を10以上に上昇させる。
【0008】
アルカリ金属元素を含有する活物質のうち、Ni比率が6割を超える層状酸化物系材料や、固溶体系材料、シリケート系材料、またはMn比率が5割を超えるリン酸系材料においては、pH値が11以上を示す。
【0009】
特に、Ni比率が高く、アルカリ金属元素を含有する活物質においては、さらに吸水によるプロトン交換反応(AM2O+xH2O→A1-xxMO2+xAOH)も起こり、強塩基性物質である水酸化物(AOH)を生成し、活物質も変質する。ここで、Aは周期表第一族元素であるアルカリ金属元素を示し、具体的には、Li、Na、Kである。以降、特別に記載がない限り、アルカリ金属元素をAと示す。
【0010】
このように、アルカリ金属元素を含有する活物質が水に曝された場合、活物質に含まれるアルカリ金属成分が水へ溶出、あるいは活物質の変質が不可逆的に起こり、活物質の可逆的な電気容量を低下や早期サイクル劣化が起こりやすい。
【0011】
また、水を分散媒に用いたスラリー(水系スラリー)では、塗工時に集電体であるアルミニウムやアルミニウム合金を腐食させ、均質な電極を得ることができない難点をもつ。
【0012】
このような理由から、アルカリ金属元素を含有する活物質からなる電極では、有機溶媒をスラリーの分散媒として用いて電極が製造されている。
【0013】
しかし、環境負荷と製造コストを低減させるために、上記の電極の製造工程においても、脱有機溶媒化が希求されている。
【0014】
本発明者らは、アルカリ金属成分の溶出による活物質の変質を防ぐというためには、予めアルカリ水溶液を作製し、これを分散媒とする流動体に活物質を加えることで、活物質が水に触れることによる劣化を抑制できるのはないかと考えて、耐アルカリ性と耐電圧性に優れるステンレス鋼を集電体に用いて電極作製したところ、pH10以上の強アルカリ性では、活物質の容量劣化が小さくなることを見出した。
【0015】
一方、アルカリ水溶液を分散媒として用いたスラリー(水系スラリー)では、塗工時に集電体であるアルミニウムやアルミニウム合金を腐食させ、均質な電極を得ることができない難点をもつ。また、水系スラリーのpH値が高ければ高いほど、腐食の影響は大きくなる。電池の重量エネルギー密度を向上と、低コスト化を両立するためには、軽量で安価なアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いた電極の製造方法の確立が望まれる。
【0016】
そこで、本発明者らは、アルカリ性の水系スラリーでありながら、アルミニウムを腐食させずに電極を製造することができ、かつ電池特性を向上させる製造方法を検討し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一の態様にかかる電極の製造方法によれば、分散媒に水を用いたスラリーまたは水と有機溶媒からなるスラリー(水系スラリー)に含まれる活物質の性能劣化を抑制し、かつ強アルカリ性を示すスラリーをアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗工し、均質な電極を得ることができる。ここで水系スラリーに限定しているのは、有機溶媒系ではケイ酸塩を加えると均質な電極が得られにくく、また電極抵抗が高くなるためである。
【0018】
また、この製造方法により得られた電極を具備した電池は、低温から高温にわたって幅広い温度範囲で安定して動作させることができ、電極抵抗が小さくなる。くわえて、電池の熱暴走が起こりにくくなり、安全性が向上する。
【0019】
この製造方法において、スラリーの分散媒はアルカリ性を示す水(アルカリ水溶液)である。pH10以上のアルカリ水溶液を用いることで、活物質に含まれるアルカリ金属成分が分散媒中に溶出しにくくなり、活物質の変質が起こりにくくなる。これにより、活物質と水が接触したことによる活物質の可逆容量の大幅な低下や、急速なサイクル劣化を防ぐことが可能となる。
【0020】
しかし、ほとんどのアルカリ水溶液は、両性金属であるアルミニウムを腐食させる作用をもつ。ただし、例外的に特定のケイ酸塩水溶液では反応しないことを見い出した。
【0021】
このため、活物質は、予めケイ酸塩水溶液が含有される流動体に加えることが好ましい。すなわち、活物質が含まれた流動体にケイ酸塩水溶液を加えるのではなく、所定のスラリーの固形分率となるように調整されたケイ酸塩水溶液に活物質を加える方が良い。
【0022】
例えば、活物質、導電助剤、ケイ酸塩からなる水系スラリーであれば、予め導電助剤とケイ酸塩水溶液からなる流動体を作製し、これに活物質を加えてスラリーを製造することが好ましい。活物質、導電助剤からなるスラリーに、ケイ酸塩水溶液を加えることでも、アルミの腐食抑制の一定の効果は得られるが、活物質の容量が下がるため、上記のように製造することが望ましい。
【0023】
また、ケイ酸塩水溶液が添加されたスラリーのpH値は10以上が好ましく、より好ましくは10.5以上である。pH値が10未満である場合、活物質に含まれるアルカリ金属成分が水へ溶出、または活物質の変質が起こりやすく、活物質の可逆的な電気容量を大幅に低下させる。また、サイクル劣化も早期に起こりやすい。
【0024】
ケイ酸塩には、オルトケイ酸塩(A4SiO4)、メタケイ酸塩(A2SiO3)、ピロケイ酸塩(A6Si27)、二ケイ酸塩(A2Si25)、四ケイ酸塩(A2Si49)などの多ケイ酸塩や、A2Si25、A2Si37、A2Si49などの多岐の種類が存在し、これらは水和物としても存在することが知られている。
【0025】
しかし、すべてのケイ酸塩が本発明に適用できるものではない。発明者らが種々のケイ酸塩を検討したところ、一般式A2O・nSiO2で表されるケイ酸塩において、AがLi、NaまたはKの少なくともいずれか一種であり、nが1.7以上5以下である条件を満たす場合において本発明の高い効果が得られることがわかった。
【0026】
nが1.7未満である場合、pH値は10以上であり、アルミニウムやアルミニウム合金に対する腐食抑制効果が発揮されず、むしろ腐食を促進する。nが5を超える場合、スラリー塗工後の乾燥工程でゲル状の皮膜が形成されやすく、電極抵抗を増大させる要因になる。また、nが5を超える場合、ポットライフが短く、ケイ酸塩水溶液を大気中で放置していると白濁や沈殿を起こし、変質しやすいという難点をもつ。また、nが5を超える場合、pH値が10未満であり、活物質の可逆容量が低下する。
【0027】
このような理由から、nは1.7以上5以下であることが好ましく、より好ましくは1.9以上4.8以下である。
【0028】
なお、本発明において、ケイ酸塩水溶液とは、上記ケイ酸塩を溶解した水を意味し、水に対して完全溶解や部分溶解の状態であってもよい。
【0029】
また、ケイ酸塩水溶液を乾燥して得られるケイ酸塩は、非晶質であることが好ましい。非晶質のケイ酸塩であれば、結晶のように特定方向に割れることがないため、体積変化による電極耐久性が改善される。加えて、フッ酸に対する耐性が向上するため、フッ酸由来の電極崩壊が起こりにくくすることができる。
【0030】
通常、非晶質の固体は、無秩序な分子配列から成り、区別できる結晶格子を所有しない。また、非晶質の固体の溶解性は結晶形の形態より高く、一定の融点を有しない。従って、粉末X線回折(XRD)パターンにおいて明確なピークが無いこと、示差熱分析(DTA)曲線や示差走査熱量分析(DSC)曲線の融解吸熱ピークが無いことが、非晶質形態であることを示している。
【0031】
すなわち、非晶質のケイ酸塩は、XRDにおいて、結晶質形態の特長であるシャープなピークが無く、Cu-Kα線による15°~40°の範囲内の回折角(2θ)に典型的な幅広いブロードなピーク、いわゆるhaloパターンを示す。
【0032】
ただ、XRDでhaloパターンが得られたとしても、そのすべてが非晶質とは限らない。しかし、それは、式1に示すシェラー式より、結晶粒が5nm未満の限定された条件だけである。すなわち、結晶粒が5nm以上の場合は、回折線が幅広く非晶質と似たパターンにはならない。
【0033】
D(Å)=0.9λ/(β×cosθ) ・・・・(式1)
(式中、Dは結晶粒の大きさ、λはX線管球の波長、βは結晶粒の大きさによる回折線の拡がり、θは回折角を示す)
【0034】
また、非晶質から結晶状態に変化する場合には、大きな発熱が起こるので、これを測定することによってケイ酸塩の結晶状態を判断することも可能である。ケイ酸塩の種類にもよるが、電極を10℃/h以上の昇温速度で、80℃以上600℃以下の温度で熱処理することで非晶質のケイ酸塩を得ることができる。
【0035】
活物質の種類やスラリーのpH値、ケイ酸塩の種類によって、スラリー中に含まれるケイ酸塩水溶液の最適量は変動するが、一般式A2O・nSiO2(A=Li、NaまたはK;n=1.7以上5以下)であるケイ酸塩水溶液を添加する場合、スラリーの固形分に対して、0.07質量%以上15質量%以下のケイ酸塩が含まれるように調合することが好ましい。
【0036】
また、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。ケイ酸塩水溶液の過剰投入は、電極のエネルギー密度と入出力特性の低下が起こるだけでなく、電極の乾燥工程で活物質層にクラックや剥がれが生じやすい。0.07質量%未満では、本発明の効果が得られない。
【0037】
なお、ケイ酸塩は粉末や顆粒などの固体状態よりも、水溶液として液体の状態であることが好ましい。ケイ酸塩水溶液の濃度は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。1質量%未満の場合ではスラリーの固形分が低くなり、50質量%を超える場合では不均一となりやすい。固体状態であっても、スラリーを混合する工程において、ケイ酸塩の一部が水に溶解することから、アルミニウムやアルミニウム合金への腐食抑制効果がある程度得られるものの、高温・高圧を利用しない限りでは、完全に溶解することが困難である。
【0038】
不完全に溶解したケイ酸塩が含まれるスラリーでは、ケイ酸塩と電極材料、あるいはケイ酸塩とケイ酸塩の粒子同士の集合粘着が起こり、不均一な電極となるため、品質管理上の課題になりやすい。
【0039】
また、完全にケイ酸塩が水に溶解していないことから、十分に腐食抑制効果を期待する場合、スラリーの固形分に対して、ケイ酸塩を多く含有させる必要がある。しかし、ケイ酸塩には電気容量をまったく示さないことから、電極の容量密度を低下させる要因になる。
【0040】
また、上記ケイ酸塩水溶液には、界面活性剤を含むことが好ましい。ケイ酸塩水溶液に界面活性剤が含まれることで、親水性に乏しい活物質(例えば、カーボンや油分が担持した粉末など)や導電助剤(例えば、グラファイトやグラフェンなど)を含むスラリーであっても、スラリー中に継子ができにくく、均質な電極を製造することができる。
【0041】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤を用いてよい。界面活性剤の含有量は、ケイ酸塩水溶液に対して、0.001質量%以上5質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の過剰投入は電池特性を低下させる要因になるが、少なすぎても効果が得られない。
【0042】
また、このケイ酸塩水溶液には、さらに、消泡剤を含むことが好ましい。界面活性剤が含まれるスラリーでは、混合工程でスラリーに泡が内包されるやすいという難点をもつ。消泡剤が含まれることで、スラリーを混合した際に、泡が生成しにくくなり、均質な電極を得ることができる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、抑泡剤、破泡剤、水混和性有機溶媒を用いてよい。
【0043】
消泡剤の含有量は、ケイ酸塩水溶液に対して、0.001質量%以上5質量%以下であることが好ましい。消泡剤の過剰投入は電池特性を低下させる要因になるが、少なすぎても効果が得られない。
【0044】
アルカリ金属元素を含有する活物質としては、ACoO2、ANi0.5Co0.2Mn0.34、AMn24、AMn2Ni0.54、AFeP27、AFePO4、ACoPO4、A4Ti512、AC6、A4.4Si、A4.4Sn、A4.4Ge、A3Sb、A-Al、A2S、金属Aなど様々な材料が存在するが、本願においては、これら活物質は対象にしない。これら活物質は、pH10未満の水に曝されても劣化しにくいものや、本発明の手法を用いても課題解決が困難な材料であるためである。
【0045】
本発明において、アルカリ金属元素を含有する活物質は、Ni比率が6割以上の層状酸化物系材料、または固溶体系材料、シリケート系材料、またはMn比率が5割を超えるリン酸系材料の無機物に限定される。これらいずれかの無機物を含む水系スラリーのpH値は11以上を示し、かつ水との暴露によって、活物質の可逆容量の大幅な低下や、急速なサイクル劣化が起こる。本発明の目的は、これらの課題を解決することにある。
【0046】
すなわち、本発明におけるアルカリ金属元素を含有する活物質とは、例えば、ANiO2、ANi0.6Co0.2Mn0.22、ANi0.8Co0.1Mn0.12、ANi0.8Co0.15Al0.052、ANi0.88Co0.1Al0.022などの遷移金属元素の総量に対してNi比率が6割を超える層状酸化物系材料、A2MnO3-ANiO2、A2MnO3-AMnO2、A2MnO3-ACoO2、A2MnO3-A(Ni,Mn)O2、A2MnO3-A(Ni,Co)O2、A2MnO3-A(Mn,Co)O2、A2MnO3-A(Ni,Mn,Co)O2などの固溶体系材料、A2FeSiO4、A2Fe0.5Mn0.5SiO4、A2MnSiO4、A2CoSiO4、A2NiSiO4などのシリケート系材料、AMnPO4、A(Mn0.6Fe0.4)PO4、A(Mn0.7Fe0.1Ni0.1Co0.1)PO4、A(Mn0.8Fe0.2)PO4、A(Mn0.9Ni0.1)PO4、AMnP27、A2MnP27、A2(Mn0.6Fe0.4)P27などのMn比率が5割を超えるリン酸系材料である。なお、これら活物質にはさらにハロゲン元素やカルコゲン元素、プニクトゲン元素が含まれていてもかまわない。
【0047】
ただし、上述したNi比率が6割を超える層状酸化物系材料や、固溶体系材料、シリケート系材料、Mn比率が5割を超えるリン酸系材料であっても、水洗や中和などにより、活物質に含まれる強塩基性物質を除去している場合においては、pH値が10未満にもなりうる。しかし、pH値が10未満となるように処理された活物質では、活物質の電気容量の低下やサイクル劣化が早期に起こりやすい難点をもつ。
【0048】
上述したNi比率が6割を超える層状酸化物系材料、固溶体系材料、シリケート系材料、Mn比率が5割を超えるリン酸系材料は、メディアン径(D50)0.01μm以上50μm以下が好ましい。活物質の粒径がこの範囲よりも大きいと、チクソトロピー性が低くなりダイラタンシー性を示す傾向となり、ケイ酸塩が含まれる水系スラリーの分散安定性が低下する。
【0049】
逆に、粒径がこの範囲よりも小さいと、活物質の比表面積が大きいため、ケイ酸塩の含有量を多く加えなければならなくなる。また、集電体との結着性が低下するばかりか、均一な電極が得られにくい。
【0050】
活物質粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円状、切子状、帯状、ファイバー状、フレーク状、ドーナツ状、中空状であってもよい。また、活物質粒子の表面にカーボンやセラミック、固体電解質を被覆または担持した状態であってもよい。
【0051】
水系スラリーには、導電助剤が含有されていることが好ましい。スラリーに含まれる固形分の総量を100%とした場合、導電助剤が0.5質量%以上20質量%以下で含有されていることが好ましい。ケイ酸塩にはイオン伝導性を有する物質も存在するが、電子伝導性には劣り、低抵抗の電極を実現するためには導電助剤の含有が必須となる。
【0052】
導電助剤は、電子伝導性を有していれば特に制限はなく、例えば、金属、炭素材料、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられるが、高い電子伝導性と耐酸化性の観点から、炭素材料が好ましい。具体的にはアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、ファーネスブラック(FB)、サーマルブラック、ランプブラック、チェンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、カーボンブラック(CB)、カーボンファイバー(例えば、登録商標であるVGCFという名称の気相成長炭素繊維)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、グラッシーカーボン、アモルファスカーボンなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いてもよい。
【0053】
上記スラリーには、さらに樹脂系バインダが含まれることが好ましい。本製造方法では、ケイ酸塩が結着性を有するため、樹脂系バインダを含有させなくても電極として機能する。しかし、活物質層の厚みが大きくなるにしたがって、得られる電極のフレキシブル性が低下する難点をもつ。スラリーに樹脂系バインダを含有させることで、活物質層の厚みが大きい電極であっても、すぐ得れたフレキシブル性を示すことができる。
【0054】
樹脂系バインダは、水に溶解または分散することの可能なバインダであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キタンサンガム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アミン、ポリアクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、塩化ビニール、シリコーンゴム、ニトリルゴム、シアノアクリレート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ラテックス、ポリウレタン、シリル化ウレタン、ニトロセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリスチレン、クロロプロピレン、レゾルシノール樹脂、ポリアロマティック、変性シリコーン、メタクリル樹脂、ポリブテン、ブチルゴム、2-プロペン酸、シアノアクリル酸、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルオリゴマー、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ポリアセタール、アルギン酸、デンプン、ショ糖、うるし、にかわ、ガゼイン、セルロースナノファイバー等の有機材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
スラリーの固形分の総量を100質量%とした場合、樹脂系バインダが0.1~30質量%含有されていることが好ましい。樹脂系バインダが0.1質量%未満であると電極のフレキシブル性が十分に得られず、電極のプレス調圧工程や捲回工程で剥離や脱落が起こりやすい。一方、30質量%を超える場合は、イオン伝導性が低く、また電気抵抗が高くなり、また、電池としての活物質の割合が少ないため、電極容量密度が低くなりやすい。
【0056】
樹脂系バインダは、高温の電解液に曝されることによって、電解液を吸って膨潤するものもあり、電池の高温耐久性を向上させる観点からは、電解液に対して不溶あるいは耐膨潤性に優れたバインダが好ましいとされていたが、本発明においては、ケイ酸塩が樹脂系バインダの膨潤を抑制することが可能である。ケイ酸塩は高温の電解液に曝されたとしても、膨潤することはなく、高温耐久性を向上させる機能も有している。
【0057】
電極のフレキシブル性を優先するなら、ケイ酸塩よりも樹脂系バインダを多めに、電極の高温耐久性を優先するなら、樹脂系バインダよりもケイ酸塩を多めに含有させることが好ましい。
【0058】
電極に用いられる集電体は、電子伝導性を有し、保持した負極活物質に通電し得る材料であればよいが、電極の軽量化と低コスト化の観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金が望ましい。
【0059】
ここで、アルミニウムとは、Al純度が99%以上のものを意味する。アルミニウム合金には、Al-Cu系合金、Al-Cu-Mg系合金、Al-Mn系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金、Al-Zn系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Zn-Mg-Cu系合金、Al-Fe系合金、Al-Fe-Si系合金、Al-Fe-Mn系合金、Al-Mg-Si-Fe系合金などが該当する。
【0060】
上記のアルミニウムまたはアルミニウム合金は、Al純度が高いほど、電子電導性や熱伝導性に優れる電極となる。このような理由から、アルミニウム合金は重量比でAlが2割以上含む合金であることが好ましい。反面、アルミニウムの純度が高くなるにしたがって、機械的強度が低下する難点をもつ。電子電導性、熱伝導性、機械的強度、加工性など総合的な観点からは、アルミニウム合金は重量比でAlが6割以上含む合金であることが好ましい。望ましくは、さらにFeが1%以上75%以下の範囲で含んでなるアルミニウム合金であることが好ましい。
【0061】
上記のアルミニウムまたはアルミニウム合金は、表面にリン酸塩またはケイ酸塩からなるプライマー層が設けられていることが好ましい。該プライマー層を設けることで、耐アルカリによる腐食をさらに抑制することができる。該プライマー層の厚さは、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。該プライマー層には、上述した導電助剤やバインダ、界面活性剤、消泡剤などを含んでもかまわない。
【0062】
集電体の形状には、線状、棒状、板状、箔状、多孔状があり、このうち充填密度を高めることができることと、骨格形成剤が活物質層に浸透しやすいことから多孔状であってもよい。多孔状には、メッシュ、織布、不織布、エンボス体、パンチング体、エキスパンド、又は発泡体などが挙げられ、このうち、集電基材の形状は、出力特性が良好なことからエンボス体または発泡体が好ましい。
【0063】
このようにして得られた電極は、非水電解質蓄電デバイスの正極または負極として使用することができる。非水電解質蓄電デバイスとは、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する非水電解質を備え、例えば、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオンキャパシタ、カリウムイオンキャパシタなどが該当する。一方、水電解質蓄電デバイスの正極または負極として使用した場合は、本発明の効果が得られない。
【0064】
この電極を蓄電デバイスの正極として用いる場合、この電極の充放電電位よりも卑の電極と組みわせることで蓄電デバイスを作製できる。一方、この電極を蓄電デバイスの負極として用いる場合、この電極の充放電電位よりも貴の電極と組み合わせることで蓄電デバイスを作製できる。
【0065】
例えば、本開示の電極を正極として用いる場合、対極(負極)は、蓄電デバイスに用いられる負極として用いられる電極であれば特に限定されない。
【0066】
蓄電デバイスに用いる電解質は、正極から負極、又は負極から正極にアルカリ金属イオンを移動させることのできる液体又は固体であればよい。すなわち、公知の非水電解質を用いた蓄電デバイスに用いられる電解質と同じものが使用可能である。例えば、電解液、ゲル電解質、固体電解質、イオン性液体、溶融塩などが挙げられる。ここで、電解液とは、電解質が溶媒に溶けた状態のものをいう。
【0067】
蓄電デバイスの構造としては、特に限定されないが、積層式、捲回式などの既存の形態・構造を採用できる。すなわち、正極と負極とがセパレータを介して対向して積層又は捲回された電極群を、電解液内に浸漬した状態で密閉化され、蓄電デバイスとなる。あるいは、正極と負極とが固体電解質を介して対向して積層又は捲回された電極群を密閉化して蓄電デバイスとなる。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、分散媒に水を用いたスラリー(水系スラリー)に含まれる活物質の性能劣化を抑制し、かつ強アルカリ性を示すスラリーをアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に塗工し、均質な電極を得ることができる。また、本製造方法により得られた電極を具備した電池は、幅広い温度範囲にわたって安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の実施例1の調圧前の電極断面のSEM像と電極表面の光学写真
図2】比較例1の調圧前の電極断面のSEM像と電極表面の光学写真
図3】実施例1と比較例1の-20℃環境における充放電サイクル特性を示すグラフ
図4】実施例1と比較例1の0℃環境における充放電サイクル特性を示すグラフ
図5】実施例1と比較例1の30℃環境における充放電サイクル特性を示すグラフ
図6】実施例1と比較例1の60℃環境における充放電サイクル特性を示すグラフ
図7】実施例1と比較例1の電極を用いた電池の直流抵抗を比較したグラフ
図8】LiFeSiO電極の充放電サイクル特性を示すグラフ
図9】実施例14、比較例7、比較例8のDSC曲線を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の一の態様にかかる実施形態、実施例について説明するが、本発明はこの実施形態、実施例に限定されるものではない。
【0071】
本実施形態の非水電解質蓄電デバイスの電極の製造方法としては、一例として、導電助剤、バインダ、増粘剤などを混練した作動流体に、添加剤としてケイ酸塩水溶液を添加して混練した後、これに活物質を投入し、混練して電極スラリーを製造する。そして、アルミニウムまたはアルミニウム合金の電極基材、例えばアルミニウム箔やシート、板などに、上記の電極スラリーを塗工し、乾燥して電極を作製する。なお、具体的な電極材料などは後述する。
【0072】
そして、後述のとおり、この電極を用いてリチウムイオン電池を作製し、試験を行った。なお、リチウムイオンキャパシタは、主に対極の動作が異なる以外はリチウムイオン電池と同様にして作製できる。
【0073】
具体的には、例えば、正極として、本実施形態の電極を、負極として従来のリチウムイオンキャパシタ用負極を用いる以外は、後述の電池と同様にして作製できる。リチウムイオン電池以外のアルカリ金属イオン電池は、主にリチウムイオン電池の電荷担体であるLiをNaやKに置き換えた以外はリチウムイオン電池と同様にして作製できる。
【0074】
具体的には、ナトリウムイオン電池では、正極として本実施形態の電極を、負極として従来のナトリウムイオン電池用負極を、電解液としてナトリウム支持塩を用いる以外は、後述の電池と同様にして作製できる。カリウムイオン電池では、正極として本実施形態の電極を、負極として従来のカリウムイオン電池用負極を、電解液としてカリウム支持塩を用いる以外は、後述の電池と同様にして作製できる。
【実施例0075】
[LiNi0.8Co0.1Mn0.12電極]
(実施例1)
LiNi0.8Co0.1Mn0.12(メディアン径D50=7.4μm)、アセチレンブラック(AB)、アクリル系バインダ(JSR製、TRD202A)、CMC(ダイセル製、2260)、ケイ酸リチウム(Li2O・4.0SiO2)からなる水系スラリー(固形比89:5:3.5:1.5:1wt.%)をアルミニウム箔(厚さ12μm)に塗工・調圧後、真空乾燥(140℃)して試験電極を作製した。単位面積当たりの可逆容量は2.5mAh/cm2とした。
【0076】
なお、水系スラリーは、予めケイ酸リチウム水溶液とアセチレンブラック、アクリル系バインダ、CMCを分散した流動体に、LiNi0.8Co0.1Mn0.12を加え、自公転式ミキサー(シンキー製、あわとり練太郎、2000rpm、10min)を用いて混合することで作製した。水系スラリーのpH値は11.6であった。
【0077】
(比較例1)
LiNi0.8Co0.1Mn0.12(メディアン径D50=7.4μm)、アセチレンブラック、アクリル系バインダ(JSR製、TRD202A)、CMC(ダイセル製、2260)からなる水系スラリー(固形比90:5:3.5:1.5wt.%)をアルミニウム箔(厚さ12μm)に塗工・調圧後、真空乾燥(140℃)して試験電極を作製した。単位面積当たりの可逆容量は2.5mAh/cm2とした。水系スラリーのpH値は11.2であった。
【0078】
(電極の観察)
図1に実施例1で得られた調圧前の電極断面のSEM像と電極表面の光学写真を示す。図2に比較例1で得られた調圧前の電極断面のSEM像と電極表面の光学写真を示す。ケイ酸リチウム(Li2O・4.0SiO2)を含まない比較例1の場合、電極塗工後に発泡し、乾燥後の活物質層には大きな空隙が発生するなど、欠陥が生じることが確認された。
【0079】
一方、Li2O・4.0SiO2を適用した場合、良好な塗工電極が得られた。実施例1の水系スラリーのpH値は比較例1よりも高いが、実施例1の場合、Li2O・4.0SiO2水溶液によって、アルミニウム箔表面に不動態皮膜が形成することで、アルミニウム箔の腐食を抑制したものと考えられる。
【0080】
(充放電サイクル特性)
実施例1および比較例1で得られた電極を試験電極とし、SiO対極、PP/PE/PP三層微多孔膜(セルガード社製、2325)、1mol/L LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1vol.,+ビニレンカボネート(VC)1wt.%を用いてコイン型電池(R2032)を作製した。
【0081】
SiO対極は、SiO(メディアン径D50=5μm)、アセチレンブラック(AB)、ポリイミド系バインダ(IST製、登録商標DREAMBOND)からなるNMP系スラリー(固形比75:5:20wt.%)をステンレス鋼箔(日鉄ケミカル&マテリアル製、厚さ10μm)に塗工・調圧後、真空乾燥(300℃)して作製された。SiO対極の単位面積当たりの可逆容量は4.3mAh/cm2とした。なお、SiO対極は、電池を組む前に、不可逆容量分のリチウムを電気化学的に補填している。
【0082】
充放電サイクル試験は、-20℃、0℃、30℃、60℃の各環境にて、カットオフ電圧4.45~2.2Vで充放電を繰り返す条件で行った。充放電電流レートは、-20℃環境の試験では0.1C率、0℃環境の試験では0.2C率、30℃環境の試験では1C率、60℃環境の試験では1C率とした。
【0083】
図3に、-20℃環境における充放電サイクル特性を示す。
図4に、0℃環境における充放電サイクル特性を示す。
図5に、30℃環境における充放電サイクル特性を示す。
図6に、60℃環境における充放電サイクル特性を示す。
【0084】
いずれの環境温度であっても、実施例1は比較例1よりも、安定して動作していることが認められる。本試験では、充電のカットオフ電圧が4.45Vと高く、充電過程では活物質の酸化だけでなく、活物質近傍で電解液の分解も同時に起こる条件となっている。実施例1のケイ酸塩が含まれる水系スラリーでは、乾燥工程で活物質表面にケイ酸塩が担持され、電解液の分解を抑制したものと考えられる。
【0085】
(電池の直流抵抗)
0℃、30℃、60℃の各環境にて、0.1C率充放電を10サイクル実施した実施例1と比較例1の電極を具備した電池を0.1C率で満充電後、0.1C率、0.2C率、0.5C率、1C率、2C率で放電を行い、各レートの電流値と平均放電電圧から、電池の直流抵抗を求めた。なお、試験電池は充放電サイクル特性を求めた電池と同じ条件とした。
【0086】
図7に、電池の直流抵抗を比較して示す。いずれの環境温度であっても、実施例1は比較例1よりも、低い抵抗を示している。通常、ケイ酸塩は電子電導性やイオン伝導性に乏しいことから、ケイ酸塩を含む実施例1の電池の抵抗は増大すると考えられるが、本試験条件では実施例1の抵抗値の方が低い結果になった。比較例1の抵抗値に対する実施例1の抵抗値の低減率(比較例)は、0℃環境では8.3%、30℃環境では9.9%、60℃環境では16.9%で、環境温度が高くなるにつれて抵抗の低減率が高くなっている。
【0087】
通常、電池は温度が高くなるにしたがって、抵抗が小さくなるが、電解液の分解は促進される傾向にある。当然ながら、電解液が分解すると電池の抵抗は増大する。
【0088】
実施例1のケイ酸塩が含まれる水系スラリーでは、乾燥工程で活物質表面にケイ酸塩が担持され、これが電解液の分解を抑制したものと考えられる。
【0089】
(電極の熱安定性)
30℃環境にて、0.1C率充放電を5サイクル実施後、0.1C率で4.2Vになるまで充電した電池から試験電極を摘出した。摘出した試験電極は、ジメチルカーボネート(DMC)で洗浄後、消防法SUS密閉パンに封入して示差走査熱量(DSC)測定を行った。DSC測定は、Arガスを10mL/minでフローし、昇温速度10℃/min、測定範囲50~250℃の条件とした。なお、試験電池は充放電サイクル特性を検討した電池と同じ仕様とした。
【0090】
発熱ピーク温度は実施例1では201.0℃、比較例1では191.1℃であった。
【0091】
LiCoO2やLiNiO2、Li(Ni,Co,Mn)O2、固溶体系材料などのアルカリ金属元素を含有する活物質は、充電状態(酸化状態)で加熱してゆくと発熱反応が観測される。深い充電状態(高電位状態)であればあるほど、あるいは充放電サイクルを繰り返すほど、低い温度で発熱することが知られている。これは、深い充電や繰り返しの充放電によって、活物質の結晶構造に欠損を生じさせ、これが熱的安定性を悪化させる要因になると考えられる。
【0092】
実施例1と比較例1でも、同様の発熱現象が確認された。ただ、実施例1と比較例1の発熱ピーク温度は異なり、実施例1は比較例1よりも10℃ほど高い温度で発熱している。実施例1のケイ酸塩が含まれる水系スラリーでは、乾燥工程で活物質表面にケイ酸塩が担持されていると考えられ、これが活物質の結晶構造を安定化させているものだと示唆される。
【0093】
[LiNi0.8Co0.15Al0.052電極]
LiNi0.8Co0.15Al0.052(メディアン径D50=12μm)、アセチレンブラック(AB)、アクリル系バインダ(JSR製、TRD202A)、CMC(ダイセル製、2260)、ケイ酸塩からなる水系スラリー(固形比87:5:3.5:1.5:3wt.%)を作製した。表1に示す各々のケイ酸塩またはケイ酸化合物を使用し、水系スラリーを作製した。
【0094】
なお、水系スラリーは、予めケイ酸塩水溶液(またはケイ酸化合物の分散液)とアセチレンブラック、アクリル系バインダ、CMCを分散した流動体に、LiNi0.8Co0.15Al0.052を加え、自公転式ミキサー(シンキー製、あわとり練太郎、2000rpm、10min)を用いて混合することで作製した。いずれの水系スラリーにおいてもpH値は11.4以上を示した。
【0095】
(電極の観察)
実施例2~7及び比較例2~6で得られた水系スラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔に塗工し、熱風乾燥機にて80℃で20分間の条件で入れ、電極の塗膜(活物質層)の状態を目視による外観検査を行った。
【0096】
表1に、電極塗工面の検査結果を示す。アルミニウム箔に塗工または熱風乾燥すると、水素ガスの発生により、塗工面に無数の気泡生成、クラック、剥離など欠損が生じることが認められる場合を「×」とした。上記の欠損が解消され、良好な塗工電極が得られている場合を「〇」とした。
【0097】
一般式A2O・nSiO2(A=Li、Na、またはK)で表されるケイ酸塩において、nが1.5以下である場合では、アルミニウム箔に対する腐食抑制効果が発揮されず、むしろ腐食を促進した。一方、nが2.0以上である場合では、腐食抑制効果が認められた。
【0098】
ただ、実施例4は塗工電極の外観検査には合格しているが、ケイ酸塩水溶液を大気中で数日間放置していると沈殿物が生成した。
【0099】
また、ケイ酸化合物であるLi2FeSiO4やSiO2では、アルミニウム箔に対する腐食抑制効果が発揮されなかった。Na2Oにおいても腐食抑制効果は発揮されなかった。なお、表1には記載していないが、ケイ酸アルミニウム(Al23・SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2)、モンモリロナイト(Al23・4SiO2)でも同様の試験を行ったが、アルミニウム箔に対する腐食抑制効果が発揮されなかった。
【0100】
Li2FeSiO4とNa2Oにおいては、むしろ腐食が促進された。
【0101】
これらの結果から、一般式A2O・nSiO2(A=Li、Na、またはK)で表されるケイ酸塩において、nの数が2以上であれば、アルミニウムに対する腐食の抑制効果はあると考えられる。しかし、nの数が大きくなりすぎると、ケイ酸塩水溶液のポットライフは短くなる傾向にあることから、ケイ酸塩水溶液の変質が起こりにくいという観点からは、nは4.8以下であることが良いと考えられる。
【0102】
【表1】
【0103】
[Li2FeSiO4電極]
(実施例8~13、および比較例4)
Li2FeSiO4(メディアン径D50=12μm)、アセチレンブラック、アクリル系バインダ(JSR製、TRD202A)、ケイ酸リチウム(Li2O・3.5SiO2)からなる水系スラリーを表2に記載の固形比で作製し、アルミニウム箔に塗工・調圧後、真空乾燥(140℃)して試験電極を作製した。単位面積当たりの可逆容量は0.5mAh/cm2とした。Li2FeSiO4は、ロータリーキルン(700℃)により、10質量%のカーボンが被覆複合されている。
【0104】
なお、水系スラリーは、予めケイ酸リチウム水溶液とアセチレンブラック、アクリル系バインダを分散した流動体に、Li2FeSiO4を加え、自公転式ミキサー(シンキー製、あわとり練太郎)で混合することで作製した。いずれの水系スラリーにおいてもpH値は11.6以上を示した。
【0105】
【表2】
【0106】
(電極の観察)
実施例8~13及び比較例4~6で得られた水系スラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔に塗工し、熱風乾燥機にて80℃で20分間の条件で入れ、電極の塗膜(活物質層)の状態を目視による外観検査を行った。
【0107】
表2に、電極塗工面の検査結果を示す。アルミニウム箔に塗工または熱風乾燥すると、水素ガスの発生により、塗工面に無数の気泡生成、クラック、剥離など欠損が生じることが認められる場合を「×」とした。上記の欠損が解消され、良好な塗工電極が得られている場合を「〇」とした。
【0108】
スラリーの固形分に対して、ケイ酸リチウムが0.5質量%以上である場合には、アルミニウム箔に対する腐食抑制効果が認められた。また、ケイ酸リチウムの配合比が増大するにつれて、腐食抑制効果も大きくなった。反面、乾燥時における塗膜の凝集応力も大きくなり、電極の反り返りがひどくなった。
【0109】
(電池特性)
実施例8~13及び比較例4~6で得られた電極を試験電極とし、金属リチウム対極(本条金属製、厚さ500μmのリチウム箔)、PP/PE/PP三層微多孔膜(セルガード社製、2325)、ガラスフィルタ(アドバンテック製、GA100)、1mol/L LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1vol.,+ビニレンカボネート(VC)1wt.%を用いてコイン型電池(R2032)を作製した。
【0110】
充放電サイクル試験は、30℃環境にて、カットオフ電圧4.8~1.5V、0.1C率充放電を1サイクル行った後、カットオフ電圧4.5~1.5V、0.2C率充放電を繰り返す条件で行った。
【0111】
図8に、Li2FeSiO4電極の充放電サイクル特性を示す。
なお、比較例6の電極を用いた電池では、内部抵抗が大きすぎて、充放電することができなかった。
【0112】
実施例8~13のスラリーの固形分に対して、ケイ酸リチウムが0.5質量%以上である場合には、0.2C率で100サイクル後でも、放電容量が100mAh/g程度を有し、安定したサイクル特性を示している。なかでも、実施例8~12の0.5質量%以上8質量%以下である場合、2サイクル目の放電容量が160~170mAh/gと大きい。
【0113】
一方、スラリーの固形分に対して、ケイ酸リチウムが0.05質量%以下である場合には、初回から放電容量が低い。比較例4のケイ酸リチウムが無添加の電極と、比較例5のケイ酸リチウムが0.05質量含まれる電極を比べると、若干ではあるものの比較例5の方が高容量となっている。しかし、比較例5と実施例8と比べると容量差は明確であることがわかる。
【0114】
Li2FeSiO4電極の充放電サイクル特性は、前述した電極の観察結果と相関性があるように思えるが、比較例6においてはこれに当てはまらない。
【0115】
比較例5も含めて、ケイ酸塩を用いた実施例8~13は、ケイ酸塩を含有しない比較例4と比べて、容量維持率が高い。本試験では、初回の充電のカットオフ電圧が4.8V、2サイクル目以降では4.5Vと高く、充電過程では活物質の酸化だけでなく、活物質近傍で電解液の分解も同時に起こる条件となっている。活物質は違えど、実施例1と同様、ケイ酸塩が含まれる水系スラリーでは、乾燥工程で活物質表面にケイ酸塩が担持され、電解液の分解を抑制したものと考えられる。
【0116】
なお、LiCoO2正極と黒鉛負極からなる一般的なリチウムイオン電池では、充電カットオフ電圧は4.2V程度であり、4.2Vを超える充電は電解液の分解を促進し、過充電となることは周知の事実である。
【0117】
[ケイ酸塩の適用方法]
(実施例14、比較例7、比較例8)
【0118】
一般式A2O・nSiO2(A=Li、NaまたはKの少なくともいずれか一種、nが1.7以上5以下)で表されるケイ酸塩を溶解したケイ酸塩水溶液は、水系スラリーへの添加の他、予めアルミニウム箔にコートすることによっても、強アルカリによる腐食反応を抑制できることが期待できる。
【0119】
ケイ酸塩の適用方法が与えるアルミニウム箔への腐食耐性と、電極の熱安定性の影響を調べるため、以下の電極を作製した。
【0120】
LiNi0.8Co0.1Mn0.12(メディアン径D50=11μm)、アセチレンブラック、アクリル系バインダ(JSR製、TRD202A)、CMC(ダイセル製、2260)からなる水系スラリー(固形比90:5:3.5:1.5質量%)を集電体に塗工・調圧後、真空乾燥(140℃)して試験電極を作製した。単位面積当たりの可逆容量は2.5mAh/cm2とした。
【0121】
実施例14として、上記の水系スラリーの固形分に対して、さらに所定量のケイ酸リチウム(Li2O・3.3SiO2)を1質量%添加して電極を作製した。
【0122】
比較例7として、アルミニウム箔にスポンジ製ローラーを用いてケイ酸リチウム水溶液(2質量%)を塗った後、乾燥(140℃)したものを集電体に用いた。塗膜(ケイ酸リチウム)の重量は30μg/cm2とした。
【0123】
比較例8として、実施例14と比較例7の比較として、無機ケイ酸塩を含有しない電極を作製した。
【0124】
(電極の観察)
ケイ酸リチウムを適用しない比較例8では、塗工後に直ちに発泡し、乾燥後の活物質層には大きな空隙が発生するなど、欠陥が生じることが確認された。一方、ケイ酸リチウムを適用した実施例14および比較例7では、良好な塗工電極が得られた。いずれのスラリーにおいてもpH値は11以上を示したが、実施例14と比較例7の場合、ケイ酸リチウムによって、アルミニウム箔表面に不動態皮膜が形成することで、アルミニウム箔の腐食を抑制したものと考えられる。
【0125】
(電極の熱安定性)
実施例14及び比較例7で得られた電極を試験電極とし、金属リチウム対極(本条金属製、厚さ500μmのリチウム箔)、PP/PE/PP三層微多孔膜(セルガード社製、2325)、ガラスフィルタ(アドバンテック製、GA100)、1mol/L LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1vol.,+ビニレンカボネート(VC)1wt.%を用いてコイン型電池(R2032)を作製した。
【0126】
試験電極を活性化するため、30℃環境にて、0.1C率充放電を5サイクル実施後、0.1C率で4.5Vになるまで充電した電池から試験電極を摘出した。摘出した試験電極は、DMCで洗浄後、消防法SUS密閉パンに封入してDSC測定を行った。なお、解体直後の電池の開回路電圧(OCV)はいずれも4.23Vであった。
【0127】
DSC測定は、Arガスを10mL/minでフローし、昇温速度5℃/min、測定範囲100~300℃の条件とした。
【0128】
図9に、実施例14、比較例7、比較例8のDSC曲線を示す。
【0129】
水系スラリーにケイ酸塩を添加した実施例14では、熱分解由来の最大発熱ピークが比較例8よりも高温側にシフトし、発熱量も小さいことが確認される。アルミニウム箔にケイ酸塩を被覆した比較例7では、実施例14のような現象は確認されない。
【0130】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態、実施例について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
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図9