(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067282
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】リング状ガスケット、金属リングならびにシール構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/12 20060101AFI20240510BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240510BHJP
F02F 11/00 20060101ALI20240510BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F16J15/12 Z
F16J15/10 W
F02F11/00 P
F16L23/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177234
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正明
【テーマコード(参考)】
3H016
3J040
【Fターム(参考)】
3H016AA05
3H016AB08
3H016AC04
3H016AD02
3H016AD08
3J040AA11
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA22
3J040EA47
3J040EA50
3J040FA02
3J040FA20
3J040HA06
3J040HA16
(57)【要約】
【課題】 排気通路を流通する流体に液体が含まれる場合であっても、当該液体の浸潤に伴う漏れを可及的に防止することを目的とする。
【解決手段】 第1部材のシール面3aに形成された収容溝3bに収容され、第1部材のシール面3aと第2部材のシール面4aとの間に挟持されるリング状ガスケット2に関する。
上記リング状ガスケット2は、マイカ(耐熱素材)によって構成されたマイカリング11(耐熱素材リング)と、当該マイカリング11に沿って設けた金属リング12とから構成されている。
上記金属リング12は、上記マイカリング11と上記第2部材のシール面4aとの間に挟持される底部12aと、当該底部12aに設けられるとともに上記収容溝3bに収容される内側、外側側部12c、12cとを備え、上記金属リング12に耐熱性を有したコーティングを形成したものとなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットにおいて、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴とするリング状ガスケット。
【請求項2】
上記金属リングの側部よりも上記耐熱素材リングが上方に突出していることを特徴とする請求項1に記載のリング状ガスケット。
【請求項3】
上記金属リングの側部を上記流体通路に対して内側および外側に設け、これら内側の側部と外側の側部との間隔を、上記耐熱素材リングの幅よりも広くしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のリング状ガスケット。
【請求項4】
上記金属リングの側部を上記流体通路に対して内側に設け、上記底部を上記環状溝よりも外側まで設けて、当該部分が第1シール面と第2シール面との間に挟持されるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のリング状ガスケット。
【請求項5】
上記金属リングの側部を上記流体通路に対して外側に設け、上記底部における上記環状溝よりも内側の端部を上記流体通路の開口縁まで設けて、当該部分が第1シール面と第2シール面との間に挟持されるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のリング状ガスケット。
【請求項6】
上記金属リングの側部を上記流体通路に対して内側または外側のいずれか一方に設け、当該側部の上端に天部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のリング状ガスケット。
【請求項7】
流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持される耐熱素材リングに装着される金属リングであって、
上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
上記底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴とする金属リング。
【請求項8】
流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットとを備えたシール構造において、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部または上記第2部材のシール面の少なくともいずれか一方に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴とするシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリング状ガスケット、金属リングならびにシール構造に関し、詳しくは第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるとともに、上記第1部材のシール面に形成された収容溝に収容されるリング状ガスケットおよび当該リング状ガスケットに用いる金属リング、当該リング状ガスケットを備えたシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が流通する流体通路が形成された第1部材と第2部材とを連結する際、これらの接合部に形成したシール面とシール面との間から流体が漏れないようにするために、これらの間にガスケットを設けたシール構造が知られている。
ここで、上記第1部材のシール面に無端状の収容溝を形成するとともに、当該収容溝にリング状を有したリング状ガスケットを収容することが行われている(特許文献1)。
特に特許文献1では、流体通路に高温の排気ガスが流通するようになっており、上記リング状ガスケットをマイカなどの耐熱素材によって構成したものとなっている。
このような上記耐熱素材からなるリング状ガスケットは高い耐熱性を有しているほか、第1部材と第2部材とを連結する際の荷重が低くてもシール性を得ることが可能であるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記排気ガスには燃料に含まれていた水分や、燃焼しなかった燃料などの微細な液体が含まれており、このような液体が上記リング状ガスケットを構成する耐熱素材に流体通路側から浸潤すると、最終的にはリング状ガスケットの外周側から漏れ出てしまう場合があり、いわゆるミクロシール性に問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は液体の浸潤に伴う漏れを可及的に防止することが可能なリング状ガスケット、金属リング並びにシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(※先日お送りした修正案において、コーティングを「底部または上記第2部材のシール面の少なくともいずれか一方」としましたが、この場合ですと、第2部材のシール面が構成に含まれてしまいます。従って、独立請求項を3つ作成し、第2部材のシール面にコーティングを形成する場合の構成を「シール構造」として保護することを提案します。)
すなわち請求項1に記載のリング状ガスケットは、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットにおいて、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴としている。
請求項7に記載の金属リングは、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持される耐熱素材リングに装着される金属リングであって、
上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
上記底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴としている。
請求項8に記載のシール構造は、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットとを備えたシール構造において、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部または上記第2部材のシール面の少なくともいずれか一方に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴とするシール構造。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、従来公知の耐熱素材リングに上記金属リングを追加するだけでよいため、耐熱素材リングを用いたシール構造に対して、大きな設計変更を要さずにシール性を向上させることが可能となっている。
また上記発明によれば、金属リングは上記下流側排気管のシール面に当接する底部と、当該底面に対して立設されるとともに上記収容溝の内部に位置する側部とを備えたものとなっている。
具体的には、排気管の内側に側部を設けた場合には、上記液体が耐熱素材リングに付着するのを防止することができ、排気管の外側に側部を設けた場合には、上記耐熱素材リングに浸潤した液体が外部に漏れるのを防止することが可能となっている。
また請求項1の発明および請求項7の発明では、金属リングの少なくとも底部に耐熱性を有したコーティングを形成したことにより、耐熱素材リングが有するシール性に加え、いわゆるミクロシール性を向上させることが可能となっている。
一方請求項8の発明では、金属リングの少なくとも底部または上記第2部材のシール面の少なくともいずれか一方に、耐熱性を有したコーティングを形成したことにより、耐熱素材リングが有するシール性に加え、いわゆるミクロシール性を向上させたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかるリング状ガスケットを備えたシール構造を示す断面図
【
図2】第1実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図3】第2実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図4】第3実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図5】第4実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図6】第5実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図7】第6実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【
図8】第7実施形態にかかるリング状ガスケットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施形態について説明すると、
図1はエンジンに接続されるとともに、排気ガスが流通する流体通路としての排気通路1aが形成された排気管1の接続部を示す、シール構造の断面図を示している。
上記排気管1は、エンジン側に設けられた第1部材としての上流側排気管1Aと、マフラー側に設けられた第2部材としての下流側排気管1Bとを、本発明にかかるリング状ガスケット2によってシールされた構造を有している。
上記上流側排気管1Aおよび下流側排気管1Bはそれぞれ断面円形の管状を有しており、これら上流側排気管1Aの後端部および下流側排気管1Bの先端部には、それぞれ対向する部分にシール面3a、4aの形成されたフランジ部3、4が設けられている。
上記上流側排気管1Aのシール面3aには、上記排気通路1aを囲繞するように無端状の収容溝3bが形成されており、上記リング状ガスケット2は当該収容溝3bに収容されている。
また上記フランジ部3、4におけるシール面3a、4aとは反対側の部分はテーパ状に形成されており、当該テーパ部分には断面V字形を有した金属製のVクランプ5が装着されている。
上記Vクランプ5を装着することにより、上記上流側排気管1Aのフランジ部3と、下流側排気管1Bのフランジ部4とが接近する方向に押圧され、シール面3aとシール面4aとが密着するようになっている。
なお、本実施形態で使用する図では、説明のため、シール面3a、4aとシール面3a、4aとが離隔しており、上記リング状ガスケット2が圧縮によって変形する前の状態を示している。
【0009】
図2に示すように、上記リング状ガスケット2は、耐熱素材としてのマイカによって構成された耐熱素材リングとしてのマイカリング11と、金属によって構成された金属リング12とから構成されている。
上記マイカリング11はマイカ製のマイカシートをリング状に圧縮成形することにより得ることができ、従来公知のものを使用することができる。
上記マイカリング11は通常、断面略長方形を有しており、上記リング状ガスケット2が上流側排気管1Aの収容溝3bに収容された状態において、上記シール面3aから下流側排気管1Bのシール面4a側に向けて突出するような寸法に形成されている。
このような構成により、上記上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとを連結する際に、シール面3aとシール面4aとを接近させて密着させると、マイカリング11が軸方向に圧縮されて変形し、リング状ガスケット2が収容溝3bの内部に完全に収容されるようになっている。
なお、上記耐熱素材リングを構成する他の素材として、上記マイカの他に、アラミドやグラファイトを用いることも可能である。また断面形状についても、長方形に限らず楕円形とすることも可能である。
また、上記耐熱素材によって構成したマイカリング11に対し、断面波状に変形させた金属板を内蔵したものや、マイカリング11の外面をステンレスや鉄製のメッシュで覆ったもの、ならびにマイカリング11の外面を薄い金属で覆ったものを使用することが可能である。
【0010】
図2に示す実施形態において、上記金属リング12は断面コ字形を有しており、素材としてはSUS材やSECC材を用いることができ、また板厚は0.1~0.3mm程度となっている。
上記金属リング12は、上記下流側排気管1Bのシール面4aと当接する底部12aと、当該底部12aを挟んで排気管1の内周側に位置する内側側部12aと、排気管1の外周側に位置する外側側部12bとから構成されている。
上記金属リング12の幅は、上記下流側排気管1Bに形成された収容溝3bに収容可能な寸法となっており、なおかつ上記マイカリング11を収容可能な寸法に形成されている。
本実施形態では、上記内側側部12aと外側側部12bとの間隔を、上記マイカリング11の幅よりも狭く設定しており、これにより上記上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとが接続されてマイカリング11が圧縮変形されても、内側側部12aや外側側部12bの変形を抑制することができる。
また上記内側側部12a、外側側部12bの上端部に対し、マイカリング11が上方に突出するように構成しており、マイカリング11が圧縮変形した際に、これら内側側部12aおよび外側側部12bの上端部が収容溝3bの底部に当接しないような寸法に設定されている。
【0011】
そして本実施形態の金属リング12の表面には、耐熱性を有するとともにミクロシール性に優れたコーティングが形成されている(図示せず)。
上記コーティングには従来公知の耐熱塗料を用いることができ、塗布厚さは0.010mm以上とすることが望ましい。
【0012】
上記構成を有するリング状ガスケット2を用いることで、以下のような効果が期待できる。
まず上記上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとを連結する際、収容溝3bに上記マイカリング11および金属リング12とからなるリング状ガスケット2を収容すればよい。つまり、従来公知のマイカリング11に上記金属リング12を装着するだけでリング状ガスケット2が得られ、大きな設計変更を要することなくシール構造を得ることができる。
次に、上流側排気管1Aと下流側排気管1BとをVクランプ5によって連結すると、上記マイカリング11が軸方向に圧縮されて変形し、リング状ガスケット2の全体が収容溝3bの内部に収容されるようになっている。
本実施形態では上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとの連結にVクランプ5を用いており、ボルトを用いて連結する場合に比べて締め付け力が低いため、リング状ガスケット2に作用する荷重が低くなってしまうが、上述した耐熱素材からなるマイカリング11を用いることで、低荷重でも十分なシール性を得ることが可能となっている。
そして、上記排気管1の排気通路1aに高温の排気ガスが流通すると、上記上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとの接合部では、上記シール面3aとシール面4aとが密着し、なおかつ上記リング状ガスケット2が設けられていることから、排気ガスの漏れが防止されるようになっている。
このとき、排気管1を流通する排気ガスは高温であるものの、上記マイカリング11は高い耐熱性を有していることから、当該マイカリング11によって高いシール性を得ることが可能となっている。
【0013】
一方、上記排気通路1aを流通する排気ガスには、燃料に含まれていた凝縮水や、燃焼しきらなかった飛沫燃料が含まれており、このような液体は上記マイカリング11を構成するマイカに浸潤する性質を有している。
このため、マイカリング11を備えたリング状ガスケット2の使用を継続すると、上述したような液体がマイカリング11の内周側、すなわち排気通路1a側から浸潤し、その後外周側から外部へと漏れてしまう恐れがあり、いわゆるミクロシール性に問題があった。
しかしながら、本実施形態のリング状ガスケット2は上記金属リング12を備えており、当該金属リング12は上記下流側排気管1Bのシール面4aに当接する底部12aと、当該底部12aに対して立設されるとともに上記収容溝の内部に位置する内側、外側側部12b、12cとを備えている。
このような構成のうち、上記排気管1の内側に位置する内側側部12bは、上記液体がマイカリング11に付着するのを防止し、排気管1の外側に位置する外側側部12cは、上記マイカリング11に浸潤した液体が外部に漏れるのを防止するようになっている。
【0014】
さらに上記金属リング12の表面には、ミクロシール性に優れたコーティングが形成されていることから、上述したようなマイカリング11に浸潤した液体が外部に漏れてしまうのを防止することができる。
ここで、上記コーティングは耐熱性も有していることから、高温の排気ガスが流通する排気管1に設けた場合であっても、劣化することなく高いシール性を維持することが可能となっている。
【0015】
図3~
図7は本発明にかかる他の実施形態に係るリング状ガスケット2を示したものとなっている。これらの実施形態において、上記マイカリング11は第1の実施形態と同じものを使用することが可能であり、上述したようにアラミド等の他の素材を利用したり、断面形状を異ならせることも可能である。
【0016】
図3に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、断面L字形を有しており、上記第1の実施形態における内側側部12bのみが形成されたものとなっている。
上述したように、上記内側側部12bは上記排気ガス中の液体がマイカリング11に付着するのを防止し、液体の漏れを防止するようになっている。
【0017】
図4に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、断面L字形を有しており、上記第1の実施形態における外側側部12cのみが形成されたものとなっている。
上述したように、上記外側側部12cは上記マイカリング11に浸潤した液体が外部に漏れるのを防止するようになっている。
【0018】
図5に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、断面コ字形を有しており、第1実施形態と異なり、底部12aの排気管1側に設けた内側側部12bと、当該内側側部12bの上端部に、上記底部12aと同じ方向に天部12dが設けられた構成となっている。
換言すると、本実施形態の金属リング12は、上記マイカリング11をコ字形の内側に収容するものの、第1実施形態と異なり、排気管1の外側に開口が形成されたものとなっている。
このような構成とすることにより、上記天部12dが上流側排気管1Aの収容溝3bの底面に密着することから、上記
図3に示す第2の実施形態に示すリング状ガスケット2よりも効果的に、収容溝3bとリング状ガスケット2との間からの液体の漏れを防止することができ、マイカリング11への液体の浸潤をより効果的に防止することができる。
なお、本実施形態の場合、Vクランプ5によって上流側排気管1Aのフランジ部3と下流側排気管1Bのフランジ部4とを連結すると、上記金属リング12が軸方向に圧縮されるが、このとき上記金属リング12の内側、外側側部12c、12cが適度に変形するため、シール性が損なわれないようになっている。
【0019】
図6に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、上記
図5に示す第4の実施形態と異なり、断面コ字形を有するものの、外側側部12cの上端部に天部12dを備えた構成となっている。
本実施形態においても、上記天部12dが上流側排気管1Aの収容溝3bの底面に密着することから、上記
図4に示す第3の実施形態に示すリング状ガスケット2よりも効果的に、収容溝3bとリング状ガスケット2との間からの液体の漏れを防止することができ、マイカリング11に浸潤した液体が外部に漏れてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0020】
図7に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、
図3の第2の実施形態と同様、断面L字形を有しており、上記底部12aが上記収容溝3bよりも外側に延長して形成されたものとなっている。
このような構成においても、第2の実施形態と同様、内側側部12cによって、液体がマイカリング11に浸潤するのを防止することができる。
さらに、上流側排気管1Aのフランジ部3と下流側排気管1Bのフランジ部4とを連結すると、金属リング12の上記底部12aのうち、収容溝3bの外周縁よりも外側の部分がシール面3aとシール面4aとの間に挟持され、当該金属リング12に形成したコーティングによってより高いシール性を得ることができる。
【0021】
図8に示すリング状ガスケット2の金属リング12は、
図4の第3の実施形態と同様、断面L字形を有しており、上記底部12aが上記収容溝3bの内側に延長して形成され、その端部が上記排気通路1aの開口縁と同じ位置に形成されたものとなっている。
このような構成とすることで、第3の実施形態と同様、外側側部12cによって、マイカリング11に浸潤した液体が漏れるのを防止することができる。
さらに、上流側排気管1Aのフランジ部3と下流側排気管1Bのフランジ部4とを連結すると、金属リング12の上記底部12aのうち、収容溝3bの内周側よりも内側の部分がシール面3aとシール面4aとの間に挟持され、当該金属リング12に形成したコーティングによってより高いシール性を得ることができる。
【0022】
なお、上記各実施形態では、上流金属リング12の全体に上記コーティングを形成しているが、少なくとも上記底部12a(表面および裏面)に形成されていればよい。または、上記金属リング12にコーティングを形成する代わりに、第2部材としての下流側排気管1Bのシール面4aにコーティングを形成することも可能であり、このような構成とすることにより、金属リング12の底部12aとシール面4aとの間のシール性を確保することができる。
また上記各実施形態では、上流側排気管1Aと下流側排気管1Bとの連結を上記Vクランプ5によって行っているが、上記フランジにボルト穴を形成して、これらをボルトによって連結するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態は、上記上流側排気管1Aおよび下流側排気管1Bに形成された排気通路1aの断面形状が円形で、これに伴い上記リング状ガスケット2は略円形に形成されているが、上記排気通路の形状等に伴って略四角形や楕円形状等、任意の形状にすることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1A 上流側排気管(第1部材) 1B 下流側排気管(第2部材)
1a 排気通路(流体通路) 2 リング状ガスケット
11 マイカリング(耐熱素材リング) 12 金属リング
12a 底部 12b 内側側部
12c 外側側部 12d 天部
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
すなわち請求項1に記載のリング状ガスケットは、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットにおいて、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴としている。
請求項7に記載の金属リングは、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持される耐熱素材リングに装着される金属リングであって、
上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
上記底部に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴としている。
請求項8に記載のシール構造は、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第1部材と、流体通路が形成されるとともに端部にシール面が形成された第2部材と、上記第1部材の上記シール面に形成された収容溝に収容され、第1部材のシール面と第2部材のシール面との間に挟持されるリング状ガスケットとを備えたシール構造において、
上記リング状ガスケットは、耐熱素材によって構成された耐熱素材リングと、当該耐熱素材リングに沿って設けた金属リングとから構成され、
上記金属リングは、上記耐熱素材リングと上記第2部材のシール面との間に挟持される底部と、当該底部における上記流体通路に対して内側または外側の少なくともいずれか一方に設けられるとともに上記収容溝に収容される側部とを備え、
さらに、上記金属リングの少なくとも底部または上記第2部材のシール面の少なくともいずれか一方に、耐熱性を有したコーティングを形成したことを特徴とするシール構造。