IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067286
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】オイル封入方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G01L13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177240
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 有紀
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD04
2F055FF49
2F055GG01
2F055GG12
2F055GG22
(57)【要約】
【課題】オイル封入空間にオイルを導入して満たした後、オイル導入孔を封止するまでの間、満たしたオイルの減少を抑制する。
【解決手段】オイル導入路105および第1ダイアフラム室103a,第2ダイアフラム室103bにオイルを導入した直後から、オイルの揮発が抑制された空間であるチャンバー141に基板101を配置する(第3工程)。基板101を配置する空間は、陽圧状態およびオイルの蒸気が含まれた状態の少なくとも1つとすることができる。この後、オイル導入路105、第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bにオイルが導入された状態で、オイル導入孔104を封止する。
【選択図】 図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面にダイアフラムを形成し、前記ダイアフラムの内側の面に圧力を導入するためのダイアフラム室を形成し、前記ダイアフラム室に連通して前記基板の他方の面にオイル導入孔を有するオイル導入路を形成する第1工程と、
前記基板の他方の面から、前記オイル導入孔にオイルを供給して前記オイル導入路および前記ダイアフラム室に導入する第2工程と、
前記オイル導入路および前記ダイアフラム室に前記オイルを導入した直後から、前記オイルの揮発が抑制された空間に前記基板を配置する第3工程と、
前記空間に前記基板を配置した後、前記空間で前記オイル導入孔を封止する第4工程と
を備えるオイル封入方法。
【請求項2】
請求項1記載のオイル封入方法において、
前記空間は、陽圧状態および前記オイルの蒸気が含まれた状態の少なくとも1つとされていることを特徴とするオイル封入方法。
【請求項3】
請求項1記載のオイル封入方法において、
前記空間は、密閉可能とされたチャンバーの内部空間であることを特徴とするオイル封入方法。
【請求項4】
請求項3記載のオイル封入方法において、
前記チャンバーは、前記内部空間を真空排気可能とされていることを特徴とするオイル封入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル封入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工業用の差圧計では、一方のダイアフラムに加えられた圧力を他方のダイアフラムに伝達させるために、2つのダイアフラム室およびこれらを連通する連通路を、オイルなどによる圧力伝達物質で満たしている。また、2つのダイアフラム室および連通路に満たしたオイルは、これらの空間に封入するため、オイルの導入孔を、封止部材で封止している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-159593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力伝達物質としてシリコーンオイルやフッ素オイルなどが用いられるが、これらオイルは蒸発する。このため、2つのダイアフラム室および連通路にオイルを満たした後、封止完了まで時間を要してしまうと、2つのダイアフラム室および連通路に満たしたオイルが減少し、例えば連通路上端よりオイル液面が下降する場合が発生する。この状態で封止をすると、封止された領域(オイル封入空間)に気泡が混入し、圧力が正しく伝達できなくなる懸念がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、オイル封入空間にオイルを導入して満たした後、オイル導入孔を封止するまでの間、満たしたオイルの減少を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオイル封入方法は、基板の一方の面にダイアフラムを形成し、ダイアフラムの内側の面に圧力を導入するためのダイアフラム室を形成し、ダイアフラム室に連通して基板の他方の面にオイル導入孔を有するオイル導入路を形成する第1工程と、基板の他方の面から、オイル導入孔にオイルを供給してオイル導入路およびダイアフラム室に導入する第2工程と、オイル導入路およびダイアフラム室にオイルを導入した直後から、オイルの揮発が抑制された空間に基板を配置する第3工程と、空間に基板を配置した後、空間でオイル導入孔を封止する第4工程とを備える。
【0007】
上記オイル封入方法の一構成例において、空間は、陽圧状態およびオイルの蒸気が含まれた状態の少なくとも1つとされている。
【0008】
上記オイル封入方法の一構成例において、空間は、密閉可能とされたチャンバーの内部空間である。
【0009】
上記オイル封入方法の一構成例において、チャンバーは、内部空間を真空排気可能とされている。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、オイル導入路およびダイアフラム室にオイルを導入した直後から、オイルの揮発が抑制された空間に基板を配置して、この空間でオイル導入孔を封止するので、オイル封入空間にオイルを導入して満たした後、オイル導入孔を封止するまでの間、満たしたオイルの減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法を説明するための途中工程のセンサチップの状態を示す断面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法を説明するための途中工程のセンサチップの状態を示す断面図である。
図1C図1Cは、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法を説明するための途中工程のセンサチップの状態を示す断面図である。
図1D図1Dは、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法を説明するための途中工程のセンサチップの状態を示す断面図である。
図1E図1Eは、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法を説明するための途中工程のセンサチップの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るオイル封入方法について図1A図1Eを参照して説明する。このオイル封入方法は、差圧計とするセンサチップの製造に関するものである。
【0013】
まず、図1Aに示すように、第1工程は、複数のセンサチップ領域121の各々において、基板101の一方の面に第1ダイアフラム102aおよび第2ダイアフラム102bを形成する。なお、一方の面は、図1A図1Eの紙面において、下側の面である。また、第1ダイアフラム102aの内側の面に圧力を導入するための第1ダイアフラム室103aを形成し、第2ダイアフラム102bの内側の面に圧力を導入するための第2ダイアフラム室103bを形成する。また、第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bに連通して基板101の他方の面にオイル導入孔104を有するオイル導入路105を形成する(第1工程)。オイル導入孔104は、基板101の他方の面に形成された凹部である。なお、他方の面は、図1A図1Eの紙面において、上側の面である。
【0014】
また、この例では、基板101は、一方の面に接合された他基板131を備える。第1工程では、他基板131に、第1ダイアフラム102aの外側の面に圧力を導入するための第1圧力導入孔131aを形成し、第2ダイアフラム102bの外側の面に圧力を導入するための第2圧力導入孔131bを形成する。
【0015】
基板101は、例えば、第1基板101aと第2基板101bとを貼り合わせて作製した接合基板から構成することができる。第1基板101aおよび第2基板101bは、ともにシリコン基板とすることができる。第1基板101aには、一部のオイル導入路105および第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bが形成されている。第2基板101bには、複数のセンサチップ領域121毎に、オイル導入孔104および一部のオイル導入路105が形成されている。
【0016】
また、他基板131は、ダイアフラム層102を介して基板101(第1基板101a)に接合されている。ダイアフラム層102の第1ダイアフラム室103aの領域が、第1ダイアフラム102aとなる。また、ダイアフラム層102の第2ダイアフラム室103bの領域が、第2ダイアフラム102bとなる。ダイアフラム層102は、例えば、Siから構成することができる。
【0017】
次に、基板101の他方の面から、複数のセンサチップ領域121のオイル導入孔104の各々にオイルを供給する。オイルは、例えば、シリコーンオイルやフッ素オイルとすることができる。次いで、複数のセンサチップ領域121のオイル導入孔104の各々にオイルが供給された状態で、基板101を真空排気雰囲気に配置することで、オイル導入孔104からオイル導入路105および第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bのガスを排気する。例えば、基板101を、真空排気装置の排気室内に配置し、真空排気装置を動作させて排気室内を排気することで、基板101の周囲を、真空排気雰囲気とすることができる。
【0018】
この排気により、図1Bに示すように、オイル導入孔104に供給された液滴107のオイルを、オイル導入路105および第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bに導入する(第2工程)。このようにして、オイル導入路105および第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bにオイルを導入して充填した後、基板101を、排気室から搬出する。
【0019】
上述したようにオイル導入路105および第1ダイアフラム室103a,第2ダイアフラム室103bにオイルを導入した直後から、オイルの揮発が抑制された空間に基板101を配置する(第3工程)。基板101を配置する空間は、陽圧状態およびオイルの蒸気が含まれた態の少なくとも1つとすることができる。
【0020】
例えば、図1Cに示すように、上記空間として、密閉可能とされたチャンバー141の内部空間に基板101を配置(搬入)する。チャンバー141には、ガス導入部142、真空ポンプ143、および圧力制御装置144が接続されている。
【0021】
例えば、チャンバー141の内部空間に基板101を搬入した後で密閉状態とし、真空ポンプ143を動作させて内部空間を真空排気し、この後、ガス導入部142より不活性ガスを導入する。圧力制御装置144により内部空間の圧力が外部より高くなるようにガス導入部142より不活性ガスを導入すれば、基板101が配置された内部空間を陽圧状態とすることができる。また、真空ポンプ143を動作させる代わりに、チャンバー141の内部空間に基板101を搬入した後で密閉状態としたうえで、不活性ガスを導入して内部空間を陽圧状態とすることができる。
【0022】
また例えば、チャンバー141の内部空間に基板101を搬入した後で密閉状態とし、真空ポンプ143を動作させて内部空間を真空排気し、この後、ガス導入部142よりオイルの蒸気を導入する。圧力制御装置144により内部空間の圧力が外部より高くなるようにガス導入部142よりオイルの蒸気を導入すれば、基板101が配置された内部空間をオイルの蒸気が含まれた(オイルの蒸気で満された)状態とすることができる。なお、真空ポンプを動作させずともチャンバー141の内部空間にガス導入部142よりオイルの蒸気を導入することができる場合、真空ポンプ143を動作させる必要はない。
【0023】
上述したように、オイルの揮発が抑制された空間であるチャンバー141の内部空間に基板101を配置した後、以下に説明するように、オイル導入路105、第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bにオイルが導入された状態で、オイル導入孔104を封止する(第4工程)。
【0024】
まず、図1Dに示すように、オイル導入孔104に金属から構成された金属部材108を配置する。金属部材108は、例えばAuSn合金から構成されたソルダボールとすることができる。また、図示していないが、オイル導入孔104の表面には、金属層を形成しておくことができる。
【0025】
次に、オイル導入孔104に配置された金属部材108を加熱して溶融させることで、図1Eに示すように、図示しない金属層に溶着した金属部材108からなる封止部材109でオイル導入孔104を封止する。この場合、封止部材109は、溶融することで変形して金属層に溶着した金属部材108から構成されたものとなる。例えば、レーザー照射により、金属部材108を加熱溶融することができる。
【0026】
上述したように、封止部材109でオイル導入孔104を封止した後、基板101をチャンバー141より搬出する。ここで、基板101の表面における余剰オイルは、例えば、洗浄面に固体二酸化炭素粒子を吹きつけて洗浄する洗浄法などで除去することができる。最後に、よく知られた基板ダイシング技術により、基板101をセンサチップ領域121毎に分割してセンサチップとする。得られたセンサチップは、よく知られた差圧計を構成する素子であり、形成したセンサチップは、支持基板に接合され、所定のメータボディに搭載される。
【0027】
なお、オイルの導入にチャンバー141を用いることができる。オイル導入孔104にオイルを供給した後、基板101をチャンバー141に搬入し、内部空間を密閉状態とし、真空ポンプ143を動作させることで、基板101の周囲を、真空排気雰囲気とすることができる。この排気により、オイル導入孔104に供給された液滴107のオイルを、オイル導入路105および第1ダイアフラム室103a、第2ダイアフラム室103bに導入することができる。この場合、第2工程、第3工程、および第4工程を、同一の装置内で実施することができる。
【0028】
また、真空排気するチャンバーと、オイルの揮発が抑制された空間を構成するチャンバーとを、別体とすることができる。真空排気チャンバーとガス導入チャンバーとを、搬送部で連結することができる。真空排気チャンバーにおいて第2工程を実施した直後に搬送部を経由して基板をガス導入チャンバーに移送すれば、ガス導入チャンバーにおいて、第3工程、第4工程を実施することができる。
【0029】
以上に説明したように、本発明によれば、オイル導入路およびダイアフラム室にオイルを導入した直後から、オイルの揮発が抑制された空間に基板を配置して、この空間でオイル導入孔を封止するので、オイル封入空間にオイルを導入して満たした後、オイル導入孔を封止するまでの間、満たしたオイルの減少を抑制することができる。
【0030】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0031】
101…基板、101a…第1基板、101b…第2基板、102…ダイアフラム層、102a…第1ダイアフラム、102b…第2ダイアフラム、103a…第1ダイアフラム室、103b…第2ダイアフラム室、104…オイル導入孔、105…オイル導入路、107…液滴、108…金属部材、109…封止部材、121…センサチップ領域、131…他基板、131a…第1圧力導入孔、131b…第2圧力導入孔、141…チャンバー、142…ガス導入部、143…真空ポンプ、144…圧力制御装置。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E