(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067291
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240510BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240510BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F27/28 104
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177245
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】世古 篤史
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E070AA01
5E070AB04
5E070BA01
5E070CB02
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インダクタンスのばらつきを抑制しつつ、取得効率を高めることが可能なインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品1は、素体10と、素体10の内部に設けられ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイル20と、コイル20の一方端部に電気的に接続された第1、第2外部電極30a、30bを備える。第1コイル配線部21aaは、素体10の天面12a側から底面12b側にわたるように延び、第1コイル配線部21aaの内周縁は、第1内側円弧41aaで構成され、第1内側円弧41aaは、コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置Eaとし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、第1コイル配線部21aaの外周縁は、第1内側円弧41aaよりも素体10の表面側に位置する第1外側円弧42aaで構成され、第1外側円弧42aaは、コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置Faとし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の内部に設けられ、かつ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、
前記コイルの一方端部に電気的に接続された第1外部電極と、
前記コイルの他方端部に電気的に接続された第2外部電極と、を備え、
前記素体は、絶縁体を含み、
前記素体の表面は、前記コイル軸方向に平行な底面と、前記コイル軸方向に直交する高さ方向において前記底面に相対する天面と、を含み、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、各々、少なくとも前記素体の前記底面に露出し、
前記コイルは、前記コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が電気的に接続されてなり、
少なくとも1つの前記コイル配線は、前記コイル配線が延びる方向に沿って順に、第1コイル配線部と、前記第1コイル配線部に隣り合う第2コイル配線部と、前記第2コイル配線部に隣り合う第3コイル配線部と、を含み、
前記第1コイル配線部は、前記素体の前記天面側から前記底面側にわたるように延び、
前記コイル軸方向から見たとき、前記第1コイル配線部の内周縁は、第1内側円弧で構成され、
前記第1内側円弧は、前記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
前記コイル軸方向から見たとき、前記第1コイル配線部の外周縁は、前記第1内側円弧よりも前記素体の表面側に位置する第1外側円弧で構成され、
前記第1外側円弧は、前記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
前記第2コイル配線部は、前記第1コイル配線部よりも前記素体の前記底面側に位置するように延び、
前記コイル軸方向から見たとき、前記第2コイル配線部の内周縁は、第2外側円弧で構成され、
前記第2外側円弧は、前記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
前記コイル軸方向から見たとき、前記第2コイル配線部の外周縁は、前記第2外側円弧よりも前記素体の表面側に位置する第2内側円弧で構成され、
前記第2内側円弧は、前記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
前記第3コイル配線部は、前記第2コイル配線部に対して前記素体の前記底面側に突出している、ことを特徴とするインダクタ部品。
【請求項2】
前記第1内側円弧の曲率半径は、前記第2内側円弧の曲率半径よりも大きい、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1内側円弧の中心位置と前記第1外側円弧の中心位置とは、ともに、前記素体の前記高さ方向における中心位置よりも前記素体の前記天面側に存在している、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第1内側円弧の曲率半径は、前記素体の前記高さ方向における寸法の15%以上である、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記第1内側円弧の曲率半径は、30μm以上である、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第1内側円弧と前記第2外側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続され、
前記第1外側円弧と前記第2内側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続されている、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第1内側円弧及び前記第1外側円弧は、ともに、複数の曲率半径を有し、
前記第1内側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧と前記第2外側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続され、
前記第1外側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧と前記第2内側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続されている、請求項6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記第1内側円弧と前記第2外側円弧とは、両者に共通する接点を介して接続され、
前記第1外側円弧と前記第2内側円弧とは、両者に共通する接点を介して接続されている、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記第2内側円弧の曲率半径は、10μm以上、30μm以下である、請求項6~8のいずれかに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記第2内側円弧の曲率半径は、前記素体の前記高さ方向における寸法の10%以下である、請求項6~8のいずれかに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層体と、上記積層体内に設けられている螺旋状のコイルであって、積層方向から平面視したときに互いに重なりあって環状の軌道を形成している複数のコイル導体層、及び、該複数のコイル導体層を接続する複数のビアホール導体により構成されているコイルと、を備えており、上記環状の軌道は、外側に向かって突出する複数の第1の角、及び、内側に向かって突出する第2の角を有しており、全ての上記ビアホール導体は、上記第1の角に設けられていること、を特徴とする電子部品が開示されている。
【0003】
特許文献2には、クオーツからなるフィラー材とガラス材と樹脂材とを含む感光性の絶縁ペーストと導電ペーストとを準備する工程と、上記絶縁ペーストを塗布して第1絶縁層を形成する工程と、上記第1絶縁層の第1部分をマスクにより遮光した状態で上記第1絶縁層を露光する工程と、上記第1絶縁層の上記第1部分を除去して、上記第1部分に対応する位置に、溝深さが溝幅よりも大きな溝を形成する工程と、上記溝内に上記導電ペーストを塗布して、上記溝内にコイル導体層を形成する工程と、上記第1絶縁層上および上記コイル導体層上に上記絶縁ペーストを塗布して、第2絶縁層を形成する工程とを備える、インダクタ部品の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、コイルパターンが配置された複数の絶縁層を積層して形成される本体と、上記本体の外側に配置される第1及び第2外部電極と、を含むインダクタであって、上記複数のコイルパターンはコイル接続部を介して互いに接続され、且つ両端部がコイル引出部を介して上記第1及び第2外部電極に接続されたコイルを形成し、上記複数のコイルパターンは、最外側に配置されたコイルパターン、及び上記最外側に配置されたコイルパターンの内側に配置された複数のコイルパターンで構成され、上記内側に配置された全てのコイルパターンの各々の厚さは、上記最外側に配置されたコイルパターンの厚さよりも大きく、上記インダクタは、上記複数の絶縁層において上記第1および第2外部電極に対応する位置に形成されたダミー電極をさらに含む、インダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5459327号公報
【特許文献2】特許第6787286号公報
【特許文献3】特開2019-153798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の
図2及び
図6、並びに、特許文献2の
図1では、コイル導体層の形状について、コイル導体層が天面側において実装面側よりも長く、これらの天面側及び実装面側のコイル導体層が直線状又は湾曲線状のコイル導体層で接続された形状が示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1及び特許文献2のように、コイル導体層を天面側において実装面側よりも長くしつつ、これらの天面側及び実装面側のコイル導体層を直線状又は湾曲線状のコイル導体層で接続しようとすると、天面側のコイル導体層と直線状又は湾曲線状のコイル導体層とを、鋭角又は直角で、かつ、小さな曲率半径で接続せざるを得ないことが分かった。そして、本発明者が、天面側のコイル導体層と直線状又は湾曲線状のコイル導体層とを、鋭角又は直角で、かつ、小さな曲率半径で接続するように、特許文献1及び特許文献2に記載の方法、すなわち、感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりコイル導体層を形成したところ、天面側のコイル導体層と直線状又は湾曲線状のコイル導体層との接続部を形成する過程で現像加工を行う際に、現像液の循環不足による現像残渣(ここでは、導電ペーストの残渣)が発生したり、現像液を洗い流すリンス液の循環不足による過剰現像が発生したりすることにより、上記の接続部の幅がばらついてしまうことが分かった。以上のように本発明者が検討した結果、特許文献1に記載の電子部品及び特許文献2に記載のインダクタ部品では、天面側のコイル導体層と直線状又は湾曲線状のコイル導体層との接続部の幅がばらつくため、インダクタンスのばらつきを小さくすることが難しいという問題があることが分かった。
【0008】
上記の問題を回避する方法としては、コイル導体層の形状を、特許文献3の
図1及び
図2に記載されているように、天面側及び実装面側のコイル導体層の長さがほぼ同等であり、これらの天面側及び実装面側のコイル導体層が円弧状のコイル導体層で接続された形状とすることが考えられる。より具体的には、特許文献3のように、天面側及び実装面側のコイル導体層の長さをほぼ同等としつつ、これらの天面側及び実装面側のコイル導体層を円弧状のコイル導体層で接続しようとすると、天面側及び実装面側のコイル導体層と円弧状のコイル導体層とを、鈍角で、かつ、大きな曲率半径で接続できるため、天面側及び実装面側のコイル導体層と円弧状のコイル導体層との接続部を形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液の循環不足が解消されると考えられる。
【0009】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献3のように、天面側及び実装面側のコイル導体層の長さをほぼ同等としつつ、これらの天面側及び実装面側のコイル導体層を円弧状のコイル導体層で接続しようとすると、外部電極を避けるようにコイル導体層を配置する必要があるために、コイル導体層と外部電極との間の余白領域が大きくなってしまうことが分かった。以上のように本発明者が検討した結果、特許文献3に記載のインダクタでは、コイル導体層と外部電極との間の余白領域が大きくなるため、インダクタンスの取得効率が低下するという問題があることが分かった。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、インダクタンスのばらつきを抑制しつつ、インダクタンスの取得効率を高めることが可能なインダクタ部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインダクタ部品は、素体と、上記素体の内部に設けられ、かつ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、上記コイルの一方端部に電気的に接続された第1外部電極と、上記コイルの他方端部に電気的に接続された第2外部電極と、を備え、上記素体は、絶縁体を含み、上記素体の表面は、上記コイル軸方向に平行な底面と、上記コイル軸方向に直交する高さ方向において上記底面に相対する天面と、を含み、上記第1外部電極及び上記第2外部電極は、各々、少なくとも上記素体の上記底面に露出し、上記コイルは、上記コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が電気的に接続されてなり、少なくとも1つの上記コイル配線は、上記コイル配線が延びる方向に沿って順に、第1コイル配線部と、上記第1コイル配線部に隣り合う第2コイル配線部と、上記第2コイル配線部に隣り合う第3コイル配線部と、を含み、上記第1コイル配線部は、上記素体の上記天面側から上記底面側にわたるように延び、上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の内周縁は、第1内側円弧で構成され、上記第1内側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の外周縁は、上記第1内側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第1外側円弧で構成され、上記第1外側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記第2コイル配線部は、上記第1コイル配線部よりも上記素体の上記底面側に位置するように延び、上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の内周縁は、第2外側円弧で構成され、上記第2外側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の外周縁は、上記第2外側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第2内側円弧で構成され、上記第2内側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記第3コイル配線部は、上記第2コイル配線部に対して上記素体の上記底面側に突出している、ことを特徴とする。
【0012】
本発明のインダクタ部品において、コイル配線の内周縁よりも内側とは、コイル軸方向から見たときのコイル配線以外の位置であって、コイル配線の内周縁からの最短距離がコイル配線の外周縁からの最短距離よりも小さい位置を意味する。
【0013】
本発明のインダクタ部品において、コイル配線の外周縁よりも外側とは、コイル軸方向から見たときのコイル配線以外の位置であって、コイル配線の外周縁からの最短距離がコイル配線の内周縁からの最短距離よりも小さい位置を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インダクタンスのばらつきを抑制しつつ、インダクタンスの取得効率を高めることが可能なインダクタ部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明のインダクタ部品の一例を示す斜視模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すインダクタ部品の線分a1-a2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に対して第1コイル配線の形状を説明するための補助線を追記した状態を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の一例を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の別の一例を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の更に別の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のインダクタ部品について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0017】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0018】
本明細書中、要素間の関係性を示す用語(例えば、「平行」、「垂直」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、文字通りの厳密な態様のみを意味するだけではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度の差異を含む範囲も意味する。
【0019】
本発明のインダクタ部品は、素体と、上記素体の内部に設けられ、かつ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、上記コイルの一方端部に電気的に接続された第1外部電極と、上記コイルの他方端部に電気的に接続された第2外部電極と、を備え、上記素体は、絶縁体を含み、上記素体の表面は、上記コイル軸方向に平行な底面と、上記コイル軸方向に直交する高さ方向において上記底面に相対する天面と、を含み、上記第1外部電極及び上記第2外部電極は、各々、少なくとも上記素体の上記底面に露出し、上記コイルは、上記コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が電気的に接続されてなり、少なくとも1つの上記コイル配線は、上記コイル配線が延びる方向に沿って順に、第1コイル配線部と、上記第1コイル配線部に隣り合う第2コイル配線部と、上記第2コイル配線部に隣り合う第3コイル配線部と、を含み、上記第1コイル配線部は、上記素体の上記天面側から上記底面側にわたるように延び、上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の内周縁は、第1内側円弧で構成され、上記第1内側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の外周縁は、上記第1内側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第1外側円弧で構成され、上記第1外側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記第2コイル配線部は、上記第1コイル配線部よりも上記素体の上記底面側に位置するように延び、上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の内周縁は、第2外側円弧で構成され、上記第2外側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の外周縁は、上記第2外側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第2内側円弧で構成され、上記第2内側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、上記第3コイル配線部は、上記第2コイル配線部に対して上記素体の上記底面側に突出している、ことを特徴とする。
【0020】
図1は、本発明のインダクタ部品の一例を示す斜視模式図である。
【0021】
図1に示すインダクタ部品1は、素体10と、コイル20と、第1外部電極30aと、第2外部電極30bと、を有している。
【0022】
本明細書中、長さ方向、高さ方向、及び、幅方向を、
図1等に示すように、各々、L、T、及び、Wで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと高さ方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0023】
図1に示すように、素体10の表面は、長さ方向Lに相対する端面11a及び端面11bと、高さ方向Tに相対する天面12a及び底面12bと、幅方向Wに相対する側面13a及び側面13bと、を含んでいる。
図1に示す例において、幅方向Wは、コイル20のコイル軸方向に平行である。つまり、素体10の表面は、コイル軸方向に平行な底面12bと、コイル軸方向に直交する高さ方向Tにおいて底面12bに相対する天面12aと、を含んでいる。
【0024】
以下では、特に断らない限り、コイル軸方向を幅方向Wに平行な方向とする。
【0025】
素体10の底面12bは、実装面である。より具体的には、素体10の底面12bは、インダクタ部品1の実装時に実装対象物(例えば、基板)に対向する実装面である。よって、インダクタ部品1では、素体10の実装面、すなわち、素体10の底面12bがコイル軸方向に平行である。
【0026】
素体10の表面のうちの少なくとも1つの面、すなわち、端面11a、端面11b、天面12a、底面12b、側面13a、及び、側面13bの少なくとも1つの面には、各面を識別しやすくするためのマーキングが施されていてもよい。
【0027】
素体10の端面11a及び端面11bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、素体10の天面12a及び底面12bは、高さ方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、素体10の側面13a及び側面13bは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0028】
図1に示すように、素体10は、例えば、直方体状である。
【0029】
本明細書中、直方体状は、実質的に直方体状と言える形状であればよく、例えば、後述するように角部及び稜線部に丸みが付けられている略直方体状を含む。
【0030】
素体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。素体10の角部は、素体10の3面が交わる部分である。素体10の稜線部は、素体10の2面が交わる部分である。
【0031】
素体10は、絶縁体を含んでいる。
図1に示す例において、絶縁体は、複数の絶縁層がコイル軸方向に積層されてなる。
【0032】
図1に示す例において、複数の絶縁層は、絶縁層15a、絶縁層15b、絶縁層15c、及び、絶縁層15dを含んでいる。
【0033】
なお、
図1には示していないが、コイル軸方向における絶縁層15bと絶縁層15cとの間には、少なくとも1つの絶縁層が存在している。
【0034】
なお、
図1では、説明の便宜上、複数の絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0035】
絶縁体(絶縁層)を構成する絶縁材料としては、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とするガラス材料、セラミックス材料、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂等の有機材料、ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられる。絶縁材料としては、特に、誘電率及び誘電損失が小さい材料が好ましい。
【0036】
複数の絶縁層を構成する絶縁材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0037】
複数の絶縁層のコイル軸方向における寸法は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0038】
図1に示すように、コイル20は、素体10の内部に設けられ、かつ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されている。
【0039】
コイル20のコイル軸方向は、コイル20のコイル軸Cが延びる方向であり、上述したように素体10の実装面である底面12bに平行である。
【0040】
図1に示すように、コイル20は、コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が電気的に接続されてなる。
【0041】
図1に示す例において、複数のコイル配線は、第1コイル配線21a及び第2コイル配線21bを含んでいる。
【0042】
第1コイル配線21aは、複数のコイル配線のうち、コイル軸方向における素体10の側面13a側の最外位置に存在している。
【0043】
第1コイル配線21aは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0044】
第2コイル配線21bは、複数のコイル配線のうち、コイル軸方向における素体10の側面13b側の最外位置に存在している。
【0045】
第2コイル配線21bは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0046】
なお、
図1には示していないが、コイル軸方向における第1コイル配線21aと第2コイル配線21bとの間には、少なくとも1つのコイル配線が存在している。
【0047】
コイル配線を構成する導電材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0048】
複数のコイル配線を構成する導電材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0049】
複数のコイル配線のコイル軸方向における寸法は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0050】
複数のコイル配線について、コイル軸方向から見たときのコイル配線が延びる方向に直交する方向における寸法、つまり、コイル軸方向から見たときの幅は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0051】
複数のコイル配線のうち、コイル軸方向に隣り合うコイル配線は、その隣り合うコイル配線間の絶縁層をコイル軸方向に貫通する接続導体を介して電気的に接続されていてもよい。つまり、コイル20は、コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が接続導体を介して電気的に接続されてなっていてもよい。
【0052】
接続導体は、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0053】
接続導体を構成する導電材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0054】
なお、上述したように、
図1に示す例では、第1コイル配線21a及び第2コイル配線21bに少なくとも1つのコイル配線を加えた3つ以上のコイル配線でコイル20を構成するとしたが、接続導体の位置を調整することにより、第1コイル配線21a及び第2コイル配線21bのみでコイル20を構成することが可能である。
【0055】
図1に示すように、第1外部電極30aは、コイル20の一方端部に電気的に接続されている。より具体的には、
図1に示すように、コイル20を構成する第1コイル配線21aは、第1引出配線22aを介して、第1外部電極30aに電気的に接続されている。
【0056】
第1引出配線22aは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0057】
図1に示すように、第2外部電極30bは、コイル20の他方端部に電気的に接続されている。より具体的には、
図1に示すように、コイル20を構成する第2コイル配線21bは、第2引出配線22bを介して、第2外部電極30bに電気的に接続されている。
【0058】
第2引出配線22bは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0059】
引出配線を構成する導電材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0060】
第1引出配線22a及び第2引出配線22bを構成する導電材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0061】
本明細書中、コイル軸方向から見たときに、コイル配線が外部電極に接続される経路において、コイル配線の直線状部分に対して傾きつつ、外部電極に向かって延びている配線を引出配線とする(例えば、
図1に示す例)。この場合、コイル軸方向から見たときに、コイル配線及び引出配線は、両者の接続部を境にして同一直線上に存在していない。なお、コイル軸方向から見たときに、上述したように定められる引出配線に該当する配線が見当たらない場合、コイル軸方向から見たときにコイルに重なっていない(コイルからはみ出している)配線を引出配線とする(例えば、
図1と異なる例)。
【0062】
図1に示すように、第1外部電極30aは、少なくとも素体10の底面12bに露出している。
【0063】
図1に示す例において、第1外部電極30aは、素体10の底面12bの一部から端面11aの一部にわたって延びている。つまり、
図1に示す例において、第1外部電極30aは、素体10の底面12bの一部に加えて、素体10の端面11aの一部にも露出している。
【0064】
なお、第1外部電極30aは、素体10の底面12bのみに露出していてもよい。
【0065】
図1に示すように、第2外部電極30bは、少なくとも素体10の底面12bに露出している。
【0066】
図1に示す例において、第2外部電極30bは、素体10の底面12bの一部から端面11bの一部にわたって延びている。つまり、
図1に示す例において、第2外部電極30bは、素体10の底面12bの一部に加えて、素体10の端面11bの一部にも露出している。
【0067】
なお、第2外部電極30bは、素体10の底面12bのみに露出していてもよい。
【0068】
以上のように、第1外部電極30a及び第2外部電極30bは、コイル軸方向に直交する方向(ここでは、長さ方向L)に互いに離れるように設けられている。
【0069】
また、第1外部電極30a及び第2外部電極30bが、各々、実装面である素体10の底面12bに露出していると、インダクタ部品1の実装性が向上しやすくなる。
【0070】
図1に示す例において、第1外部電極30aのコイル軸方向における寸法は、素体10のコイル軸方向における寸法よりも小さい。
【0071】
なお、第1外部電極30aのコイル軸方向における寸法は、素体10のコイル軸方向における寸法と同じであってもよい。
【0072】
図1に示す例において、第2外部電極30bのコイル軸方向における寸法は、素体10のコイル軸方向における寸法よりも小さい。
【0073】
なお、第2外部電極30bのコイル軸方向における寸法は、素体10のコイル軸方向における寸法と同じであってもよい。
【0074】
第1外部電極30aは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0075】
第2外部電極30bは、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0076】
外部電極を構成する導電材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0077】
第1外部電極30aは、コイル20側から順に、上述した導電材料(例えば、Ag)を含む下地電極と、Niめっき電極と、Snめっき電極と、を有していてもよい。この場合、第1外部電極30aでは、下地電極が素体10の表面(
図1では、素体10の端面11a及び底面12b)と一体の面をなし、Niめっき電極及びSnめっき電極が下地電極を覆うように素体10の表面(
図1では、素体10の端面11a及び底面12b)から盛り上がっていてもよい。
【0078】
第2外部電極30bは、コイル20側から順に、上述した導電材料(例えば、Ag)を含む下地電極と、Niめっき電極と、Snめっき電極と、を有していてもよい。この場合、第2外部電極30bでは、下地電極が素体10の表面(
図1では、素体10の端面11b及び底面12b)と一体の面をなし、Niめっき電極及びSnめっき電極が下地電極を覆うように素体10の表面(
図1では、素体10の端面11b及び底面12b)から盛り上がっていてもよい。
【0079】
第1外部電極30a及び第2外部電極30bを構成する導電材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0080】
図2は、
図1に示すインダクタ部品の線分a1-a2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。より具体的には、
図2は、
図1に示すインダクタ部品1の長さ方向L及び高さ方向Tに沿う断面のうち、第1コイル配線21a及び第1引出配線22aを含む断面を示している。
【0081】
図3は、
図2に対して第1コイル配線の形状を説明するための補助線を追記した状態を示す断面模式図である。
【0082】
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aは、第1コイル配線21aが延びる方向に沿って順に、第1コイル配線部21aaと、第1コイル配線部21aaに隣り合う第2コイル配線部21abと、第2コイル配線部21abに隣り合う第3コイル配線部21acと、を含んでいる。
【0083】
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線部21aaは、素体10の天面12a側から底面12b側にわたるように延びている。
【0084】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第1コイル配線部21aaの内周縁は、第1内側円弧41aaで構成されている。
【0085】
第1内側円弧41aaは、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0086】
図2及び
図3に示す例において、第1内側円弧41aaは、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置Eaとし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0087】
なお、第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧のすべての中心位置が第1コイル配線21aの内周縁よりも内側にあればよい。
【0088】
本明細書中、コイル配線の内周縁よりも内側とは、コイル軸方向から見たときのコイル配線以外の位置であって、コイル配線の内周縁からの最短距離がコイル配線の外周縁からの最短距離よりも小さい位置を意味する。
【0089】
第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧は、線分(接線を含む)を介して互いに接続されていてもよいし、線分を介さずに互いに直に接続されていてもよいし、一部の領域では線分を介して接続されつつ、それ以外の領域では線分を介さずに直に接続されていてもよい。
【0090】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第1コイル配線部21aaの外周縁は、第1内側円弧41aaよりも素体10の表面側に位置する第1外側円弧42aaで構成されている。
【0091】
第1外側円弧42aaは、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0092】
図2及び
図3に示す例において、第1外側円弧42aaは、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置Faとし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0093】
図2及び
図3に示す例において、第1内側円弧41aaの中心位置Eaと第1外側円弧42aaの中心位置Faとは、互いに同じである。
【0094】
なお、第1内側円弧41aaの中心位置Eaと第1外側円弧42aaの中心位置Faとは、互いに異なっていてもよい。
【0095】
なお、第1外側円弧42aaが複数の曲率半径を有している場合、第1外側円弧42aaは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧のすべての中心位置が第1コイル配線21aの内周縁よりも内側にあればよい。
【0096】
第1外側円弧42aaが複数の曲率半径を有している場合、第1外側円弧42aaは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧は、線分(接線を含む)を介して互いに接続されていてもよいし、線分を介さずに互いに直に接続されていてもよいし、一部の領域では線分を介して接続されつつ、それ以外の領域では線分を介さずに直に接続されていてもよい。
【0097】
第1コイル配線21aにおいて、素体10の天面12a側から底面12b側にわたるように延びる第1コイル配線部21aaが上述した形状を有していることにより、素体10の天面12a側のコイル配線部と第1コイル配線部21aaとの接続部、及び、素体10の底面12b側のコイル配線部と第1コイル配線部21aaとの接続部を形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が循環しやすくなるため、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1では、第1コイル配線21aにおける上記の接続部のコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが抑制される。また、インダクタ部品1によれば、インダクタンスのばらつきが抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が向上する。
【0098】
図2及び
図3に示すように、第2コイル配線部21abは、第1コイル配線部21aaよりも素体10の底面12b側に位置するように延びている。
【0099】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第2コイル配線部21abの内周縁は、第2外側円弧42abで構成されている。
【0100】
第2外側円弧42abは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0101】
図2及び
図3に示す例において、第2外側円弧42abは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置Fbとし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0102】
図2及び
図3に示す例において、第2外側円弧42abの中心位置Fbは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあって、素体10の内部にある。
【0103】
なお、第2外側円弧42abの中心位置Fbは、素体10の外部にあってもよい。
【0104】
なお、第2外側円弧42abが複数の曲率半径を有している場合、第2外側円弧42abは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧のすべての中心位置が第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあればよい。
【0105】
本明細書中、コイル配線の外周縁よりも外側とは、コイル軸方向から見たときのコイル配線以外の位置であって、コイル配線の外周縁からの最短距離がコイル配線の内周縁からの最短距離よりも小さい位置を意味する。
【0106】
第2外側円弧42abが複数の曲率半径を有している場合、第2外側円弧42abは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧は、線分(接線を含む)を介して互いに接続されていてもよいし、線分を介さずに互いに直に接続されていてもよいし、一部の領域では線分を介して接続されつつ、それ以外の領域では線分を介さずに直に接続されていてもよい。
【0107】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第2コイル配線部21abの外周縁は、第2外側円弧42abよりも素体10の表面側に位置する第2内側円弧41abで構成されている。
【0108】
第2内側円弧41abは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0109】
図2及び
図3に示す例において、第2内側円弧41abは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置Ebとし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0110】
図2及び
図3に示す例において、第2内側円弧41abの中心位置Ebは、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあって、素体10の内部にある。
【0111】
なお、第2内側円弧41abの中心位置Ebは、素体10の外部にあってもよい。
【0112】
図2及び
図3に示す例において、第2内側円弧41abの中心位置Ebと第2外側円弧42abの中心位置Fbとは、互いに同じである。
【0113】
なお、第2内側円弧41abの中心位置Ebと第2外側円弧42abの中心位置Fbとは、互いに異なっていてもよい。
【0114】
なお、第2内側円弧41abが複数の曲率半径を有している場合、第2内側円弧41abは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧のすべての中心位置が第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあればよい。
【0115】
第2内側円弧41abが複数の曲率半径を有している場合、第2内側円弧41abは、各々の曲率半径に対応する複数の円弧を含むことになるが、これらの複数の円弧は、線分(接線を含む)を介して互いに接続されていてもよいし、線分を介さずに互いに直に接続されていてもよいし、一部の領域では線分を介して接続されつつ、それ以外の領域では線分を介さずに直に接続されていてもよい。
【0116】
以上のことから、
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aの内周縁は、第1内側円弧41aaと、第1内側円弧41aaに素体10の底面12b側で隣り合う第2外側円弧42abと、を含んでいる。更に、
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aの外周縁は、第1外側円弧42aaと、第1外側円弧42aaに素体10の底面12b側で隣り合う第2内側円弧41abと、を含んでいる。
【0117】
第1コイル配線21aの内周縁及び外周縁が上述した形状を有していることにより、高周波信号の反射が抑制される。
【0118】
図2及び
図3に示すように、第3コイル配線部21acは、第2コイル配線部21abに対して素体10の底面12b側に突出している。より具体的には、第3コイル配線部21acは、素体10の底面12bに各々露出した第1外部電極30aと第2外部電極30bとの間に向かうように、第2コイル配線部21abに対して素体10の底面12b側に突出している。
【0119】
第3コイル配線部21acが第2コイル配線部21abに対して素体10の底面12b側に突出していることにより、第1コイル配線21aの内径が大きくなるとともに、第1コイル配線21aと第1外部電極30aとの間の余白領域、及び、第1コイル配線21aと第2外部電極30bとの間の余白領域が小さくなる。したがって、インダクタ部品1では、インダクタンスの取得効率が向上する。
【0120】
以上のことから、インダクタ部品1によれば、インダクタンスのばらつきを抑制しつつ、インダクタンスの取得効率を高めることが可能なインダクタ部品を実現できる。
【0121】
インダクタ部品1によれば、インダクタンスのばらつきを抑制しつつ、インダクタンスの取得効率を高めることができるが、その上で、コイル配線のコイル軸方向から見たときの幅、素体10の端面11aとコイル20との間の長さ方向Lにおける最短距離、素体10の端面11bとコイル20との間の長さ方向Lにおける最短距離、コイル20のターン数、コイル配線のコイル軸方向における寸法、隣り合うコイル配線間の絶縁層のコイル軸方向における寸法等のパラメータによって、インダクタンスを更に調整することができる。
【0122】
図3に示すように、第1内側円弧41aaの曲率半径は、第2内側円弧41abの曲率半径よりも大きいことが好ましい。
【0123】
第1内側円弧41aaの曲率半径が、第2内側円弧41abの曲率半径よりも大きいことにより、素体10の天面12a側のコイル配線部と素体10の底面12b側のコイル配線部とで囲まれた袋小路領域に存在する第1コイル配線部21aaの曲率半径が大きくなるため、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液がより循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像がより発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきがより抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきがより抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきがより抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留がより向上する。
【0124】
一方、第2コイル配線部21abは、第1コイル配線部21aaと異なり、現像液及びリンス液の循環(流動)に対する袋小路領域ではなく開放領域に存在するため、第2内側円弧41abの曲率半径が第1内側円弧41aaの曲率半径よりも小さくても、第2コイル配線部21abを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が滞留しにくくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。
【0125】
なお、第1内側円弧41aa及び第2内側円弧41abが、ともに、複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最小値は、第2内側円弧41abの曲率半径の最大値よりも大きいことが好ましい。
【0126】
また、第1内側円弧41aaの曲率半径は、第2内側円弧41abの曲率半径以下であってもよい。すなわち、第1内側円弧41aaの曲率半径は、第2内側円弧41abの曲率半径と同じであってもよいし、第2内側円弧41abの曲率半径よりも小さくてもよい。
【0127】
なお、第1内側円弧41aa及び第2内側円弧41abが、ともに、複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最大値は、第2内側円弧41abの曲率半径の最小値以下であってもよい。すなわち、第1内側円弧41aaの曲率半径の最大値は、第2内側円弧41abの曲率半径の最小値と同じであってもよいし、第2内側円弧41abの曲率半径の最小値よりも小さくてもよい。
【0128】
コイル配線部の周縁(内周縁又は外周縁)を構成する円弧の曲率半径は、対象のコイル配線部の周縁上の任意の3点から近似した円の半径として定められる。ただし、対象のコイル配線部の周縁上の任意の3点を選択する際、コイル配線部の周縁の微小な凹凸、歪み等を避けるようにする。なお、上述した方法で近似された曲率半径の値に、コイル配線部の周縁の微小な凹凸、歪み等による近似誤差が含まれていると判断される場合は、その近似誤差を無視した値を曲率半径と定める。
【0129】
図3に示すように、第1内側円弧41aaの中心位置Eaと第1外側円弧42aaの中心位置Faとは、ともに、素体10の高さ方向Tにおける中心位置Gよりも素体10の天面12a側に存在していることが好ましい。
【0130】
第1内側円弧41aaの中心位置Eaと第1外側円弧42aaの中心位置Faとが、ともに、素体10の高さ方向Tにおける中心位置Gよりも素体10の天面12a側に存在していることにより、第1コイル配線部21aaの曲率半径が更に大きくなり得るため、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が更に循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が更に発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが更に抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが更に抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきが更に抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が更に向上する。
【0131】
なお、第1内側円弧41aa及び第1外側円弧42aaが、ともに、複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaを構成する複数の円弧のすべての中心位置と、第1外側円弧42aaを構成する複数の円弧のすべての中心位置とは、ともに、素体10の高さ方向Tにおける中心位置Gよりも素体10の天面12a側に存在していることが好ましい。
【0132】
第1内側円弧41aaの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の15%以上であることが好ましい。
【0133】
第1内側円弧41aaの曲率半径が、素体10の高さ方向Tにおける寸法の15%以上であることにより、第1コイル配線部21aaの曲率半径が更に大きくなり得るため、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が更に循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が更に発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが更に抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが更に抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきが更に抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が更に向上する。
【0134】
第1内側円弧41aaの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の35%以下であることが好ましい。
【0135】
第1内側円弧41aaの曲率半径が、素体10の高さ方向Tにおける寸法の35%以下であることにより、第1コイル配線部21aaを細くしなくても、更には、第1コイル配線部21aaと素体10の表面との間の絶縁領域を小さくしなくても、第1コイル配線部21aaの配置領域を確保しやすくなる。つまり、第1内側円弧41aaの曲率半径が、素体10の高さ方向Tにおける寸法の35%以下であることにより、第1コイル配線部21aaの配置領域を確保する際に、第1コイル配線部21aaが細くなることに起因する抵抗の増加が抑制され、更には、第1コイル配線部21aaと素体10の表面との間の絶縁領域が小さくなることに起因する信頼性の低下が抑制される。
【0136】
以上のように、第1内側円弧41aaの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の15%以上、35%以下であることが好ましい。
【0137】
なお、第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最小値は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の15%以上であることが好ましい。また、第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最大値は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の35%以下であることが好ましい。
【0138】
第1内側円弧41aaの曲率半径は、30μm以上であることが好ましい。第1内側円弧41aaの曲率半径の上記範囲は、インダクタ部品1のコイル配線の配置領域が狭い場合、例えば、インダクタ部品1が0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズ等の小さなサイズである場合に特に好ましいものである。
【0139】
第1内側円弧41aaの曲率半径が30μm以上であることにより、第1コイル配線部21aaの曲率半径が更に大きくなり得るため、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が更に循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が更に発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが更に抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが更に抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきが更に抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が更に向上する。
【0140】
第1内側円弧41aaの曲率半径は、70μm以下であることが好ましい。第1内側円弧41aaの曲率半径の上記範囲は、インダクタ部品1のコイル配線の配置領域が狭い場合、例えば、インダクタ部品1が0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズ等の小さなサイズである場合に特に好ましいものである。
【0141】
以上のように、第1内側円弧41aaの曲率半径は、30μm以上、70μm以下であることが好ましい。
【0142】
なお、第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最小値は、30μm以上であることが好ましい。また、第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaの曲率半径の最大値は、70μm以下であることが好ましい。
【0143】
第1外側円弧42aaの曲率半径は、60μm以上、85μm以下であることが好ましい。第1外側円弧42aaの曲率半径の上記範囲は、インダクタ部品1のコイル配線の配置領域が狭い場合、例えば、インダクタ部品1が0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズ等の小さなサイズである場合に特に好ましいものである。
【0144】
図4は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の一例を示す断面模式図である。
【0145】
図4に示すように、第1内側円弧41aaと第2外側円弧42abとは、両者に共通する接線J1を介して接続されていてもよい。更に、
図4に示すように、第1外側円弧42aaと第2内側円弧41abとは、両者に共通する接線J2を介して接続されていてもよい。
【0146】
第1内側円弧41aaと第2外側円弧42abとが両者に共通する接線J1を介して接続され、更には、第1外側円弧42aaと第2内側円弧41abとが両者に共通する接線J2を介して接続されていることにより、第1コイル配線部21aaと第2コイル配線部21abとが滑らかに接続されることになる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、高周波信号の反射が抑制されやすくなる。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aの内径が大きくなりやすいため、インダクタンスの取得効率が向上しやすくなる。
【0147】
本明細書中、2つの円弧が両者に共通する接線を介して接続されている態様には、2つの円弧が交わる態様でない限り、2つの円弧が両者の接線方向に完全に平行な直線を介して接続されている態様はもちろんのこと、2つの円弧が両者の接線方向に実質的に平行な直線を介して接続されている態様も含まれる。
【0148】
図5は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の別の一例を示す断面模式図である。
【0149】
第1内側円弧41aa及び第1外側円弧42aaは、ともに、複数の曲率半径を有していてもよい。
【0150】
第1内側円弧41aaが複数の曲率半径を有している場合、
図5に示すように、第1内側円弧41aaのうちの最小の曲率半径を有する円弧41aaaと第2外側円弧42abとは、両者に共通する接線J1を介して接続されていてもよい。つまり、第1内側円弧41aaにおける最小の曲率半径を有する円弧41aaaは、第1内側円弧41aaのうちの最も第2外側円弧42ab側に位置しつつ、第2外側円弧42abと共通する接線J1を介して、第2外側円弧42abに接続されていてもよい。
【0151】
第1外側円弧42aaが複数の曲率半径を有している場合、
図5に示すように、第1外側円弧42aaのうちの最小の曲率半径を有する円弧42aaaと第2内側円弧41abとは、両者に共通する接線J2を介して接続されていてもよい。つまり、第1外側円弧42aaにおける最小の曲率半径を有する円弧42aaaは、第1外側円弧42aaのうちの最も第2内側円弧41ab側に位置しつつ、第2内側円弧41abと共通する接線J2を介して、第2内側円弧41abに接続されていてもよい。
【0152】
第1内側円弧41aa及び第1外側円弧42aaが、ともに、複数の曲率半径を有している場合、第1内側円弧41aaのうちの最小の曲率半径を有する円弧41aaaと第2外側円弧42abとが両者に共通する接線J1を介して接続され、更には、第1外側円弧42aaのうちの最小の曲率半径を有する円弧42aaaと第2内側円弧41abとが両者に共通する接線J2を介して接続されていることにより、第1コイル配線部21aaと第2コイル配線部21abとが滑らかに接続されることになる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、高周波信号の反射が抑制されやすくなる。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aの内径が大きくなりやすいため、インダクタンスの取得効率が向上しやすくなる。
【0153】
図6は、
図3に示す第1コイル配線部及び第2コイル配線部の近傍を拡大した状態の更に別の一例を示す断面模式図である。
【0154】
図6に示すように、第1内側円弧41aaと第2外側円弧42abとは、両者に共通する接点K1を介して接続されていてもよい。更に、
図6に示すように、第1外側円弧42aaと第2内側円弧41abとは、両者に共通する接点K2を介して接続されていてもよい。
【0155】
第1内側円弧41aaと第2外側円弧42abとが両者に共通する接点K1を介して接続され、更には、第1外側円弧42aaと第2内側円弧41abとが両者に共通する接点K2を介して接続されていることにより、第1コイル配線部21aaと第2コイル配線部21abとが滑らかに接続されることになる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、高周波信号の反射が抑制されやすくなる。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aの内径が大きくなりやすいため、インダクタンスの取得効率が向上しやすくなる。
【0156】
第2内側円弧41abの曲率半径は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。第2内側円弧41abの曲率半径の上記範囲は、インダクタ部品1のコイル配線の配置領域が狭い場合、例えば、インダクタ部品1が0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズ等の小さなサイズである場合に特に好ましいものである。
【0157】
第2内側円弧41abの曲率半径が10μm以上、30μm以下であることにより、第1内側円弧41aaの曲率半径が第2内側円弧41abの曲率半径よりも大きい状態が実現されやすくなる。その結果、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。更に、第2コイル配線部21abを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が滞留しにくくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきが抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が向上する。
【0158】
なお、第2内側円弧41abが複数の曲率半径を有している場合、第2内側円弧41abの曲率半径の最大値は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0159】
第2内側円弧41abの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の10%以下であることが好ましい。
【0160】
第2内側円弧41abの曲率半径が、素体10の高さ方向Tにおける寸法の10%以下であることにより、第1内側円弧41aaの曲率半径が第2内側円弧41abの曲率半径よりも大きい状態が実現されやすくなる。その結果、第1コイル配線部21aaを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が循環しやすくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。更に、第2コイル配線部21abを形成する過程で現像加工を行う際に、現像液及びリンス液が滞留しにくくなり、結果的に、現像残渣及び過剰現像が発生しにくくなる。したがって、インダクタ部品1が上述した態様であると、第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅のばらつきが抑制され、結果的に、インダクタンスのばらつきが抑制される。また、インダクタ部品1が上述した態様であると、インダクタンスのばらつきが抑制されるために、正常なインダクタンスを有するインダクタ部品の取得率を示す歩留が向上する。
【0161】
第2内側円弧41abの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の5%以上であることが好ましい。
【0162】
第2内側円弧41abの曲率半径が、素体10の高さ方向Tにおける寸法の5%以上であることにより、第2コイル配線部21abを形成しやすくなる。
【0163】
以上のように、第2内側円弧41abの曲率半径は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の5%以上、10%以下であることが好ましい。
【0164】
なお、第2内側円弧41abが複数の曲率半径を有している場合、第2内側円弧41abの曲率半径の最大値は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の10%以下であることが好ましい。また、第2内側円弧41abが複数の曲率半径を有している場合、第2内側円弧41abの曲率半径の最小値は、素体10の高さ方向Tにおける寸法の5%以上であることが好ましい。
【0165】
第2コイル配線部21abの内周縁(すなわち、第2外側円弧42ab)と第3コイル配線部21acの内周縁とは、フィレットを介して接続されていることが好ましい。
【0166】
第2コイル配線部21abの外周縁(すなわち、第2内側円弧41ab)と第3コイル配線部21acの外周縁とは、フィレットを介して接続されていることが好ましい。
【0167】
第2コイル配線部21abの内周縁と第3コイル配線部21acの内周縁とを接続するフィレットの半径、及び、第2コイル配線部21abの外周縁と第3コイル配線部21acの外周縁とを接続するフィレットの半径は、各々、10μm以上であることが好ましい。なお、これらのフィレットの半径は、各々、10μmよりも小さくてもよい。
【0168】
第2コイル配線部21abの内周縁と第3コイル配線部21acの内周縁とを接続するフィレットの半径は、第2コイル配線部21abの外周縁と第3コイル配線部21acの外周縁とを接続するフィレットの半径よりも小さいことが好ましい。この場合、第2コイル配線部21abの外周縁と第3コイル配線部21acの外周縁とを接続するフィレットの半径は、第2コイル配線部21abの内周縁と第3コイル配線部21acの内周縁とを接続するフィレットの半径と、第1コイル配線21aの幅との和であることが好ましい。
【0169】
本明細書中、フィレットは、円弧又は直線が互いに接続される部分において、明確な角部がなく曲線状になっている部分を指す。また、フィレットの半径は、フィレットを構成する曲線の曲率半径を指す。
【0170】
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aは、第1コイル配線21aが延びる方向に沿って、第3コイル配線部21acから第1コイル配線21aの第1外部電極30aと反対側の端部に向かって順に、第3コイル配線部21acに隣り合う第5コイル配線部21ab’と、第5コイル配線部21ab’に隣り合う第4コイル配線部21aa’と、を更に含んでいてもよい。
【0171】
図2及び
図3に示すように、第5コイル配線部21ab’は、第3コイル配線部21acよりも素体10の天面12a側に位置するように延びている。
【0172】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第5コイル配線部21ab’の内周縁は、第5外側円弧42ab’で構成されている。
【0173】
第5外側円弧42ab’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0174】
図2及び
図3に示す例において、第5外側円弧42ab’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置Fb’とし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0175】
図2及び
図3に示す例において、第5外側円弧42ab’の中心位置Fb’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあって、素体10の内部にある。
【0176】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第5コイル配線部21ab’の外周縁は、第5外側円弧42ab’よりも素体10の表面側に位置する第5内側円弧41ab’で構成されている。
【0177】
第5内側円弧41ab’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0178】
図2及び
図3に示す例において、第5内側円弧41ab’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側を中心位置Eb’とし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0179】
図2及び
図3に示す例において、第5内側円弧41ab’の中心位置Eb’は、第1コイル配線21aの外周縁よりも外側にあって、素体10の内部にある。
【0180】
図2及び
図3に示すように、第4コイル配線部21aa’は、第5コイル配線部21ab’よりも素体10の天面12a側に位置するように延びている。
【0181】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第4コイル配線部21aa’の内周縁は、第4内側円弧41aa’で構成されている。
【0182】
第4内側円弧41aa’は、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0183】
図2及び
図3に示す例において、第4内側円弧41aa’は、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置Ea’とし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0184】
図2及び
図3に示すように、コイル軸方向から見たとき、第4コイル配線部21aa’の外周縁は、第4内側円弧41aa’よりも素体10の表面側に位置する第4外側円弧42aa’で構成されている。
【0185】
第4外側円弧42aa’は、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有している。
【0186】
図2及び
図3に示す例において、第4外側円弧42aa’は、第1コイル配線21aの内周縁よりも内側を中心位置Fa’とし、かつ、1つの曲率半径を有している。
【0187】
以上のことから、
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aの内周縁は、第1内側円弧41aaと、第1内側円弧41aaに素体10の底面12b側で隣り合う第2外側円弧42abとに加えて、第5外側円弧42ab’と、第5外側円弧42ab’に素体10の天面12a側で隣り合う第4内側円弧41aa’とを更に含んでいる。更に、
図2及び
図3に示すように、第1コイル配線21aの外周縁は、第1外側円弧42aaと、第1外側円弧42aaに素体10の底面12b側で隣り合う第2内側円弧41abとに加えて、第5内側円弧41ab’と、第5内側円弧41ab’に素体10の天面12a側で隣り合う第4外側円弧42aa’とを更に含んでいる。
【0188】
第1コイル配線21aの内周縁及び外周縁が上述した形状を有していることにより、高周波信号の反射が更に抑制される。
【0189】
第4内側円弧41aa’、第4外側円弧42aa’、第5内側円弧41ab’、及び、第5外側円弧42ab’の他の態様は、各々、上述した第1内側円弧41aa、第1外側円弧42aa、第2内側円弧41ab、及び、第2外側円弧42abの態様と同様であることが好ましい。
【0190】
第1引出配線22aの内周縁と第1外部電極30aの内周縁とは、フィレットを介して接続されていることが好ましい。
【0191】
第1引出配線22aの外周縁と第1外部電極30aの外周縁とは、フィレットを介して接続されていることが好ましい。
【0192】
第1引出配線22aの内周縁と第1外部電極30aの内周縁とを接続するフィレットの半径、及び、第1引出配線22aの外周縁と第1外部電極30aの外周縁とを接続するフィレットの半径は、各々、10μm以上であることが好ましい。なお、これらのフィレットの半径は、各々、10μmよりも小さくてもよい。
【0193】
第1引出配線22aの内周縁と第1外部電極30aの内周縁とを接続するフィレットの半径は、第1引出配線22aの外周縁と第1外部電極30aの外周縁とを接続するフィレットの半径よりも大きいことが好ましい。
【0194】
以下では、
図2に示す各種寸法の好ましい範囲について説明する。以下に示す各種寸法の範囲は、インダクタ部品1のコイル配線の配置領域が狭い場合、例えば、インダクタ部品1が0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズ等の小さなサイズである場合に特に好ましいものである。
【0195】
第1コイル配線21aのコイル軸方向から見たときの幅Mは、15μm以上、40μm以下であることが好ましい。
【0196】
素体10の端面11aとコイル20(ここでは、第1コイル配線21a)との間の長さ方向Lにおける最短距離N1は、20μm以上、75μm以下であることが好ましい。素体10の端面11bとコイル20(ここでは、第1コイル配線21a)との間の長さ方向Lにおける最短距離N2は、20μm以上、75μm以下であることが好ましい。
【0197】
素体10の天面12aとコイル20(ここでは、第1コイル配線21a)との間の高さ方向Tにおける最短距離P1は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。素体10の底面12bとコイル20(ここでは、第1コイル配線21a)との間の高さ方向Tにおける最短距離P2は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0198】
コイル20(ここでは、第1コイル配線21a)と第1外部電極30aとの間の高さ方向Tにおける最短距離Q1は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。コイル20(ここでは、第1コイル配線21a)と第2外部電極30bとの間の高さ方向Tにおける最短距離Q2は、10μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0199】
第1外部電極30aのコイル軸方向から見たときの幅R1は、10μm以上、25μm以下であることが好ましい。第2外部電極30bのコイル軸方向から見たときの幅R2は、10μm以上、25μm以下であることが好ましい。
【0200】
素体10の底面12bに露出した第1外部電極30aの長さ方向Lにおける寸法S1は、60μm以上、150μm以下であることが好ましい。素体10の底面12bに露出した第2外部電極30bの長さ方向Lにおける寸法S2は、60μm以上、150μm以下であることが好ましい。
【0201】
以上では、インダクタ部品1において、コイル20を構成する第1コイル配線21aの形状を主とした態様について説明したが、コイル20を構成する第2コイル配線21bの態様についても同様であることが好ましい。
【0202】
インダクタ部品1が必須の構成とする、第1コイル配線部21aa、第2コイル配線部21ab、及び、第3コイル配線部21acは、コイル20を構成する複数のコイル配線のうちの少なくとも1つのコイル配線に存在していればよい。例えば、第1コイル配線部21aa、第2コイル配線部21ab、及び、第3コイル配線部21acは、第1コイル配線21aのみに存在していてもよいし、第2コイル配線21bのみに存在していてもよいし、第1コイル配線21a及び第2コイル配線21bの両方に存在していてもよいし、第1コイル配線21a及び第2コイル配線21b以外のコイル配線に存在していてもよい。第1コイル配線部21aa、第2コイル配線部21ab、及び、第3コイル配線部21acは、コイル20を構成するすべてのコイル配線に存在していることが特に好ましい。
【0203】
インダクタ部品1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0204】
<マザー積層体を作製する工程>
まず、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とするガラス材料等を含む絶縁ペーストをスクリーン印刷等で塗工することを繰り返すことにより、絶縁ペースト層を形成する。ここで形成される絶縁ペースト層は、後に絶縁層15aとなる。
【0205】
次に、例えば、Ag等を金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷等で塗工することにより、感光性導電ペースト層を絶縁ペースト層上に形成する。更に、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射した後、アルカリ溶液等で現像することにより、コイル導体層と、外部導体層と、コイル導体層及び外部導体層に接続された引出導体層とを絶縁ペースト層上に形成する。以上のようにして、フォトリソグラフィ法により、コイル導体層、引出導体層、及び、外部導体層を複数箇所に形成する。ここで形成されるコイル導体層は、後に第1コイル配線21aとなる。ここで形成される引出導体層は、後に、第1コイル配線21a及び第1外部電極30aを接続する第1引出配線22aとなる。ここで形成される外部導体層は、後に第1外部電極30a及び第2外部電極30bの各々の一部となる。
【0206】
コイル導体層を形成する際、例えば、本発明のインダクタ部品に係るコイル配線のパターン(例えば、
図1に示す第1コイル配線21aのパターン)が描画されたフォトマスクを用いることにより、後に得られるインダクタ部品1において、本発明のインダクタ部品に係るコイル配線のパターンを実現できる。
【0207】
なお、コイル導体層、引出導体層、及び、外部導体層を形成する際、フォトマスクを用いた露光に代えて、例えば、フォトマスクを用いないDI露光(ダイレクトイメージ露光又は直接描画とも呼ばれる)を行ってもよい。
【0208】
次に、例えば、感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷等で塗工することにより、新たな絶縁ペースト層を既に形成された絶縁ペースト層上に形成する。更に、新たに形成された絶縁ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射した後、アルカリ溶液等で現像することにより、絶縁ペースト層にビアホール及び開口を形成する。以上のようにして、フォトリソグラフィ法により、ビアホール及び開口が複数箇所に設けられた絶縁ペースト層を形成する。ここで形成される絶縁ペースト層には、後に絶縁層15bとなる絶縁ペースト層が含まれる。ここで形成されるビアホールは、既に形成されたコイル導体層の一部に重なっている。ここで形成される開口は、既に形成された外部導体層に重なっている。
【0209】
なお、ビアホール及び開口が設けられた絶縁ペースト層を形成する際、フォトマスクを用いた露光に代えて、例えば、フォトマスクを用いないDI露光を行ってもよい。
【0210】
次に、例えば、Ag等を金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷等で塗工することにより、新たな感光性導電ペースト層を、ビアホール及び開口の内部に形成しつつ、既に形成された絶縁ペースト層上に形成する。更に、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射した後、アルカリ溶液等で現像することにより、接続導体層をビアホールの内部に形成しつつ、接続導体層に接続された新たなコイル導体層を絶縁ペースト層上に形成し、更に、既に形成された外部導体層に接続された新たな外部導体層を開口の内部に形成しつつ、この外部導体層上に更に新たな外部導体層を形成する。以上のようにして、フォトリソグラフィ法により、コイル導体層、接続導体層、及び、外部導体層を形成する。ここで形成される接続導体層は、後に、コイル軸方向に隣り合うコイル配線同士を接続する接続導体となる。
【0211】
なお、コイル導体層、接続導体層、及び、外部導体層を形成する際、フォトマスクを用いた露光に代えて、例えば、フォトマスクを用いないDI露光を行ってもよい。
【0212】
その後、上記の工程を繰り返すことにより、絶縁ペースト層、コイル導体層、接続導体層、及び、外部導体層を所定の積層構造になるように形成する。例えば、ここで形成されるコイル導体層には、後に第2コイル配線21bとなるコイル導体層が含まれる。
【0213】
なお、後に第2コイル配線21bとなるコイル導体層と、そのコイル導体層と同層の外部導体層とを形成する際には、コイル導体層及び外部導体層に接続された引出導体層も形成する。ここで形成される引出導体層は、後に第2引出配線22bとなる。
【0214】
最後に、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とするガラス材料等を含む絶縁ペーストをスクリーン印刷等で塗工することを繰り返すことにより、新たな絶縁ペースト層を形成する。ここで形成される絶縁ペースト層には、後に絶縁層15c及び絶縁層15dとなる絶縁ペースト層が含まれる。
【0215】
以上により、マザー積層体を作製する。
【0216】
コイル導体層、引出導体層、接続導体層、及び、外部導体層の導体パターンを形成する方法は、上述したフォトリソグラフィ法に限定されず、例えば、導体パターンの形状に開口が設けられたスクリーン印刷版を用いて導電ペーストを印刷積層する方法であってもよいし、スパッタ法、蒸着法、箔を圧着する方法等で導体膜を形成した後、導体パターンの形状になるように導体膜をエッチングする方法であってもよいし、セミアディティブ法でネガパターンを形成してからめっき膜を形成した後、導体パターンの形状になるようにめっき膜の不要部をエッチング等で除去する方法であってもよい。
【0217】
コイル導体層、引出導体層、接続導体層、及び、外部導体層の導体パターンを形成する際、導体パターンを多段形成することで高いアスペクト比を実現することにより、高周波での抵抗による損失を低減できる。導体パターンを多段形成する方法は、特に限定されず、例えば、上述したようにフォトリソグラフィ法を用いた工程を繰り返すことで導体パターンを繰り返し重ねる方法であってもよいし、セミアディティブ法で形成された導体パターンを繰り返し重ねる方法であってもよいし、セミアディティブ法で形成された導体パターンと、別途めっき成長させためっき膜をエッチングすることで形成された導体パターンとを順不同で重ねる方法であってもよいし、セミアディティブ法で形成されためっき膜を更にめっき成長させる方法であってもよい。
【0218】
コイル導体層、引出導体層、接続導体層、及び、外部導体層の導体パターンを構成する導電材料は、上述したAg等を金属主成分とする感光性導電ペーストに限定されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、箔を圧着する方法、めっき法等で形成されるAg、Au、Cu等の金属を含む導体であってもよい。
【0219】
絶縁ペースト層を形成する方法は、上述したフォトリソグラフィ法に限定されず、例えば、絶縁材料からなるシートを圧着する方法であってもよいし、絶縁材料をスピンコートする方法であってもよいし、絶縁材料をスプレーコートする方法であってもよい。
【0220】
ビアホール及び開口が設けられた絶縁ペースト層を形成する方法は、上述したフォトリソグラフィ法に限定されず、例えば、絶縁材料からなるシートを圧着する、絶縁材料をスピンコートする、絶縁材料をスプレーコートする等の方法で絶縁膜を形成した後、絶縁膜にレーザー加工、ドリル加工等を行うことによりビアホール及び開口を設ける方法であってもよい。
【0221】
絶縁ペースト層を構成する絶縁材料は、上述した硼珪酸ガラスを主成分とするガラス材料に限定されず、例えば、セラミックス材料、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂等の有機材料、ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等であってもよい。絶縁材料としては、特に、誘電率及び誘電損失が小さい材料が好ましい。
【0222】
<素体、コイル、及び、外部電極を形成する工程>
まず、マザー積層体をダイシング等で切断することにより、複数の未焼成の積層体に個片化する。
【0223】
未焼成の積層体は、絶縁ペースト層が積層されてなる絶縁ペースト積層部と、隣り合うコイル導体層が接続導体層を介して電気的に接続されるようにコイル導体層が積層されてなるコイル導体積層部と、外部導体層が積層されてなる外部導体積層部と、を有している。
【0224】
未焼成の積層体に個片化する際、未焼成の積層体の切断面に含まれる少なくとも絶縁ペースト積層部の底面に、外部導体積層部を2箇所で露出させる。
【0225】
次に、未焼成の積層体を焼成することにより、積層体を作製する。
【0226】
未焼成の積層体を焼成すると、絶縁ペースト層が絶縁層となることにより、絶縁ペースト積層部は素体10となる。また、未焼成の積層体を焼成すると、コイル導体層がコイル配線となることにより、コイル導体積層部はコイル20となる。更に、未焼成の積層体を焼成すると、2つの外部導体積層部は、一方が第1外部電極30aの一部となり、他方が第2外部電極30bの一部となる。
【0227】
次に、得られた積層体に対して、例えば、バレル研磨処理を施すことにより、素体10の角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0228】
最後に、焼成後の2つの外部導体積層部を下地電極として、めっき処理により、各々の下地電極の表面上にNiめっき電極及びSnめっき電極を順に形成する。Niめっき電極及びSnめっき電極の厚みについては、各々、例えば、2μm以上、10μm以下とする。
【0229】
このようにして、下地電極、Niめっき電極、及び、Snめっき電極を素体10の表面側から順に有する第1外部電極30a及び第2外部電極30bを形成する。
【0230】
外部電極を形成する方法は、上述したように未焼成の積層体の切断面(少なくとも絶縁ペースト積層部の底面)に露出させた外部導体積層部にめっき処理を施す方法に限定されず、例えば、上述したように未焼成の積層体の切断面(少なくとも絶縁ペースト積層部の底面)に外部導体積層部を露出させてから、外部導体積層部の露出部分を導電ペーストに浸漬(ディップ)したり、外部導体積層部の露出部分にスパッタ法で導電ペーストを成膜したりした後、めっき処理を施す方法であってもよい。
【0231】
以上により、インダクタ部品1が製造される。
【0232】
インダクタ部品1は、例えば、0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズとして製造される。インダクタ部品1のサイズは、0402(0.4mm×0.2mm×0.2mm)サイズに限定されない。
【0233】
以上のように、コイル導体層(後のコイル配線)を形成する際に用いられる型としては、例えば、フォトマスク(例えば、フォトリソグラフィ法による露光を行う場合)、設計図面(DI露光を行う場合)等が考えられるが、本発明のインダクタ部品に係るコイル配線のパターン(例えば、
図1に示す第1コイル配線21aのパターン)がこれらの型に描かれている場合は、本発明のインダクタ部品に係るコイル配線のパターンを実現できることになる。そのため、本発明のインダクタ部品に係るコイル配線のパターンが描かれた型(例えば、フォトマスク、設計図面等)も、本発明の1つである。
【0234】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0235】
<1>
素体と、
上記素体の内部に設けられ、かつ、コイル軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、
上記コイルの一方端部に電気的に接続された第1外部電極と、
上記コイルの他方端部に電気的に接続された第2外部電極と、を備え、
上記素体は、絶縁体を含み、
上記素体の表面は、上記コイル軸方向に平行な底面と、上記コイル軸方向に直交する高さ方向において上記底面に相対する天面と、を含み、
上記第1外部電極及び上記第2外部電極は、各々、少なくとも上記素体の上記底面に露出し、
上記コイルは、上記コイル軸方向に積層された複数のコイル配線が電気的に接続されてなり、
少なくとも1つの上記コイル配線は、上記コイル配線が延びる方向に沿って順に、第1コイル配線部と、上記第1コイル配線部に隣り合う第2コイル配線部と、上記第2コイル配線部に隣り合う第3コイル配線部と、を含み、
上記第1コイル配線部は、上記素体の上記天面側から上記底面側にわたるように延び、
上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の内周縁は、第1内側円弧で構成され、
上記第1内側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
上記コイル軸方向から見たとき、上記第1コイル配線部の外周縁は、上記第1内側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第1外側円弧で構成され、
上記第1外側円弧は、上記コイル配線の内周縁よりも内側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
上記第2コイル配線部は、上記第1コイル配線部よりも上記素体の上記底面側に位置するように延び、
上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の内周縁は、第2外側円弧で構成され、
上記第2外側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
上記コイル軸方向から見たとき、上記第2コイル配線部の外周縁は、上記第2外側円弧よりも上記素体の表面側に位置する第2内側円弧で構成され、
上記第2内側円弧は、上記コイル配線の外周縁よりも外側を中心位置とし、かつ、少なくとも1つの曲率半径を有し、
上記第3コイル配線部は、上記第2コイル配線部に対して上記素体の上記底面側に突出している、ことを特徴とするインダクタ部品。
【0236】
<2>
上記第1内側円弧の曲率半径は、上記第2内側円弧の曲率半径よりも大きい、<1>に記載のインダクタ部品。
【0237】
<3>
上記第1内側円弧の中心位置と上記第1外側円弧の中心位置とは、ともに、上記素体の上記高さ方向における中心位置よりも上記素体の上記天面側に存在している、<2>に記載のインダクタ部品。
【0238】
<4>
上記第1内側円弧の曲率半径は、上記素体の上記高さ方向における寸法の15%以上である、<3>に記載のインダクタ部品。
【0239】
<5>
上記第1内側円弧の曲率半径は、30μm以上である、<3>又は<4>に記載のインダクタ部品。
【0240】
<6>
上記第1内側円弧と上記第2外側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続され、
上記第1外側円弧と上記第2内側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続されている、<2>~<5>のいずれかに記載のインダクタ部品。
【0241】
<7>
上記第1内側円弧及び上記第1外側円弧は、ともに、複数の曲率半径を有し、
上記第1内側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧と上記第2外側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続され、
上記第1外側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧と上記第2内側円弧とは、両者に共通する接線を介して接続されている、<6>に記載のインダクタ部品。
【0242】
<8>
上記第1内側円弧と上記第2外側円弧とは、両者に共通する接点を介して接続され、
上記第1外側円弧と上記第2内側円弧とは、両者に共通する接点を介して接続されている、<2>~<5>のいずれかに記載のインダクタ部品。
【0243】
<9>
上記第2内側円弧の曲率半径は、10μm以上、30μm以下である、<6>~<8>のいずれかに記載のインダクタ部品。
【0244】
<10>
上記第2内側円弧の曲率半径は、上記素体の上記高さ方向における寸法の10%以下である、<6>~<9>のいずれかに記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0245】
1 インダクタ部品
10 素体
11a、11b 素体の端面
12a 素体の天面
12b 素体の底面
13a、13b 素体の側面
15a、15b、15c、15d 絶縁層
20 コイル
21a 第1コイル配線
21aa 第1コイル配線部
21ab 第2コイル配線部
21ac 第3コイル配線部
21aa’ 第4コイル配線部
21ab’ 第5コイル配線部
21b 第2コイル配線
22a 第1引出配線
22b 第2引出配線
30a 第1外部電極
30b 第2外部電極
41aa 第1内側円弧
41aaa 第1内側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧
41ab 第2内側円弧
41aa’ 第4内側円弧
41ab’ 第5内側円弧
42aa 第1外側円弧
42aaa 第1外側円弧のうちの最小の曲率半径を有する円弧
42ab 第2外側円弧
42aa’ 第4外側円弧
42ab’ 第5外側円弧
C コイル軸
Ea、Ea’ 第1内側円弧の中心位置
Eb、Eb’ 第2内側円弧の中心位置
Fa、Fa’ 第1外側円弧の中心位置
Fb、Fb’ 第2外側円弧の中心位置
G 素体の高さ方向における中心位置
J1、J2 接線
K1、K2 接点
L 長さ方向
M 第1コイル配線のコイル軸方向から見たときの幅
N1、N2 素体の端面とコイルとの間の長さ方向における最短距離
P1 素体の天面とコイルとの間の高さ方向における最短距離
P2 素体の底面とコイルとの間の高さ方向における最短距離
Q1 コイルと第1外部電極との間の高さ方向における最短距離
Q2 コイルと第2外部電極との間の高さ方向における最短距離
R1 第1外部電極のコイル軸方向から見たときの幅
R2 第2外部電極のコイル軸方向から見たときの幅
S1 素体の底面に露出した第1外部電極の長さ方向における寸法
S2 素体の底面に露出した第2外部電極の長さ方向における寸法
T 高さ方向
W 幅方向