(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067306
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
C08G64/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177270
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 久成
(72)【発明者】
【氏名】羽場 修
(72)【発明者】
【氏名】秋田 真
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC05
4J029AD01
4J029AE04
4J029HC06
4J029JB122
4J029JC171
4J029JC311
4J029JC641
4J029JD01
4J029KD02
4J029KE08
4J029KE09
4J029KE17
(57)【要約】
【課題】シス型の脂環式ビシナルジオールを活用することのできる脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を含む、脂環式ポリカーボネート、及び所定の化合物をホスファゼン塩基及びウレア類を用いて開環重合することにより、下記式(1)で表される構造単位を含む脂環式ポリカーボネートを得ることを含む、脂環式ポリカーボネートの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を含む、脂環式ポリカーボネート。
【化1】
(式(1)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される構造単位の含有量が、脂環式ポリカーボネートを構成するすべてのモノマー成分に対し、5~40mol%である、請求項1に記載の脂環式ポリカーボネート。
【請求項3】
前記式(1)で表される構造単位が、下記式(1-2)で表される構造単位である、請求項1に記載の脂環式ポリカーボネート。
【化2】
【請求項4】
下記式(2)で表される構造単位をさらに含む、請求項1又は2に記載の脂環式ポリカーボネート。
【化3】
(式(2)中、Bは、置換していてもよい脂環部位である。)
【請求項5】
前記式(2)で表される構造単位の含有量が、脂環式ポリカーボネートを構成するすべてのモノマー成分に対し、60~95mol%である、請求項4に記載の脂環式ポリカーボネート。
【請求項6】
重量平均分子量(Mw)が500~10,000である、請求項5に記載の脂環式ポリカーボネート。
【請求項7】
下記式(4)で表される化合物をホスファゼン塩基及びウレア類を用いて開環重合することにより、下記式(1)で表される構造単位を含む脂環式ポリカーボネートを得ることを含む、脂環式ポリカーボネートの製造方法。
【化4】
(式(4)中のAは、置換していてもよい脂環部位である。)
【化5】
(式(1)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂環式ポリカーボネートは、ビスフェノールAなどの芳香族ポリカーボネート樹脂と比べて耐光性や透明性、色調に優れる傾向がある(例えば、特許文献1)。また、近年では、植物由来、バイオマス由来の原料を用いた脂環式ポリカーボネートの開発も行われている。例えば、特許文献2において、でんぷんから誘導可能なイソソルバイドを原料に用いたポリカーボネート樹脂が開示されている。
【0003】
このような脂環式ポリカーボネート樹脂のうち、隣接する炭素原子の各々に一つの水酸基を有するジオール(ビシナルジオール)を脂環式モノマーユニットとして含むポリカーボネートは、エポキシと二酸化炭素との共重合、又は環状カーボネートの開環重合で合成することができ、その広い産業応用性が期待される。
【0004】
例えば、炭素六員環を有するポリ(シクロヘキセンカーボネート)は、特許文献1に示されているように、シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素との反応によって合成できる。また、特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているように、1,2-シクロヘキセンカーボネートの開環重合によりポリ(シクロヘキセンカーボネート)が得られることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5403537号公報
【特許文献2】特開2019-108547号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules 2014, 47, 4230-4235.
【非特許文献2】Polymer Journal 2013, 45, 1183-1187.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまで合成されてきた脂環式ポリカーボネートは、トランス型の脂環式ビシナルジオールをモノマーユニットとするものであった。一方、シス型の脂環式ビシナルジオールは、反応性が低いことから重合しにくく、シス型の脂環式ビシナルジオールをモノマーユニットとして含むポリカーボネートは知られてこなかった。
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シス型の脂環式ビシナルジオールを活用することのできる脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
<1>
下記式(1)で表される構造単位を含む、脂環式ポリカーボネート。
【化1】
(式(1)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である。)
<2>
前記式(1)で表される構造単位の含有量が、5~40mol%である、<1>に記載の脂環式ポリカーボネート。
<3>
前記式(1)で表される構造単位が、下記式(1-2)で表される構造単位である、<1>又は<2>に記載の脂環式ポリカーボネート。
【化2】
<4>
下記式(2)で表される構造単位をさらに含む、<1>~<3>のいずれかに記載の脂環式ポリカーボネート。
【化3】
(式(2)中、Bは、置換していてもよい脂環部位である。)
<5>
前記式(2)で表される構造単位の含有量が、60~95質量%である、<4>に記載の脂環式ポリカーボネート。
<6>
重量平均分子量(Mw)が500~10000である、<1>~<5>のいずれかに記載の脂環式ポリカーボネート。
<7>
下記式(4)で表される化合物をホスファゼン塩基及びウレア類を用いて開環重合することにより、下記式(1)で表される構造単位を含む脂環式ポリカーボネートを得ることを含む、脂環式ポリカーボネートの製造方法。
【化4】
(式(4)中のAは、置換していてもよい脂環部位である。)
【化5】
(式(1)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シス型の脂環式ビシナルジオールを活用することのできる脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例3で得られたポリマーの
13C-NMRスペクトルである。
【
図2】
図2は、実施例3で得られたポリマーと重合例1で得られたポリマーの
13C-NMRスペクトルとの対比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。
【0012】
[脂環式ポリカーボネート]
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、下記式(1)で表される構造単位を含む。
【化6】
(式(1)中、Aは、置換していてもよい脂環部位(以下、「脂環部位A」ともいう)である。)
本実施形態によれば、シス型の脂環式ビシナルジオールを活用することのできる脂環式ポリカーボネート及び脂環式ポリカーボネートの製造方法を提供することができる。
【0013】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、以下に示すように式(1)で表される構造単位中に、Aの脂環部位とカーボネート基との結合部分(下記式(i)における矢印で示した結合部分)は、シス(cis)型である。なお、矢印で示す炭素は、不斉炭素となりえ、その場合、R,Sのいずれであってもよいが、便宜上、cis型を表すため式(1)のとおり表記されている。
【化7】
【0014】
式(1)中の、脂環部位Aに置換しうる置換基としては特に限定されないが、水酸基、リン酸基、アミノ基、ビニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エステル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキル基等が挙げられる。置換基は単独でも複数でも構わない。
【0015】
リン酸基及びアミノ基は、非置換であってもよく、置換されていてもよい。すなわち、1置換のリン酸基及びアミノ基であってもよく、2置換のリン酸基及びアミノ基であってもよい。リン酸基及びアミノ基の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基が挙げられる。
【0016】
アリール基の炭素数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~18であり、好ましくは6~15である。アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0017】
アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~18であり、好ましくは1~15である。アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノナニルオキシ基、デシルオキシ基、ビニルオキシ基、及びベンジルオキシ基が挙げられる。
【0018】
アリールオキシ基の炭素数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~18であり、好ましくは6~15である。アリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基が挙げられる。
【0019】
エステル基の炭素数は、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~18であり、好ましくは3~15である。エステル基としては、特に限定されないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、ヘプチルエステル基、オクチルエステル基、ノナニルエステル基、デシルエステル基、フェニルエステル基、ベンジルエステル基、ビニルエステル基、及びアリルエステル基が挙げられる。
【0020】
アシル基の炭素数は、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~18であり、好ましくは2~15である。アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0021】
アシルオキシ基の炭素数は、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~18であり、好ましくは2~15である。アシルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0022】
アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~18であり、好ましくは1~15である。アルキル基は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であってもよい。アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノナニル基、n-デシル基、及びベンジル基が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、式(1)で表される構造単位であって、置換基を有しない構成単位を有することが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートにおける置換基は、複数が結合して環状構造を形成していてもよい。
【0025】
脂環部位Aの炭素数は、好ましくは5~20であり、より好ましくは5~16であり、好ましくは6~10である。脂環部位Aとしては、特に限定されないが、飽和又は不飽和のシクロアルカンであり、例えばシクロプロパン、シクロプロペン、シクロブタン、シクロブテン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロノナン、シクロノネン、シクロデカン、シクロデセン、ノルボルネン、テトラシクロデカンで表される構造が挙げられるが、好ましくはシクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、又はシクロヘプテンである。
【0026】
以上の中でも、本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、式(1-2)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化8】
【0027】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートにおける、式(1)で表される構造単位の比率は、脂環式ポリカーボネートを構成するすべてのモノマー成分に対し、好ましくは0.01~100mol%であり、より好ましくは5~50mol%であり、更に好ましくは5~40mol%である。
【0028】
また、本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、式(1)で表される構造単位を繰り返し単位として有する単独重合体であっても、式(1)で表される構造単位に加え、他の構造単位を含む共重合体であってもよい。
【0029】
他の構造単位としては、トランス―カーボネート、エステル、エーテルなどのモノマーユニットを有していてもよい。
【0030】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、式(2)で表される構造単位を更に含むことが好ましい。
【化9】
(式(2)中、Bは、置換していてもよい脂環部位(以下、「脂環部位B」)である。)
脂環部位Bに置換しうる置換基は、上述のAで挙げた例と同様である。置換基は単独でも複数でもよい。脂環部位Bとしては、上述のBで挙げた例と同様である。
【0031】
上述のBの脂環部位とカーボネート基との結合部分は、トランス(trans)型である。なお、当該結合部分の炭素は、不斉炭素となりえ、その場合、R,Sのいずれであってもよいが、便宜上、trans型を表すため式(2)のとおり表記されている。
【0032】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートにおける、式(2)で表される構造単位の比率は、脂環式ポリカーボネートを構成するすべてのモノマー成分に対し、好ましくは0.01~100mol%であり、より好ましくは50~95mol%であり、更に好ましくは60~95mol%である。
【0033】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートの末端構造は、限定されないが、例えば水素基、水酸基、アルキル基、ビニル基、アミド基、エステル基、リン酸基、又はアルコキシ基であってもよい。
【0034】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートにおける、ポリスチレンを標準試料として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)は、500~500,000であり、好ましくは500~10,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0035】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)を上記の範囲内にとするためには、重合性モノマーと重合開始剤の割合を適宜調整すればよく、また、後述する製造方法によってポリカーボネート樹脂を製造すればよい。重合性モノマーに対する重合開始剤の割合を減らすことにより、重量平均分子量を大きくすることができる傾向にある。また、重合時間を長くすることにより、重量平均分子量を大きくすることができる傾向にある。更に、撹拌翼を用いて撹拌を行うことにより、当該Mwを大きくすることができる傾向にある。
【0036】
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートは、各種材料として用いることができ、例えば光学レンズ材料、光学デバイス、光学部品用材料、及びディスプレイ材料のような各種の光学用材料として使用してもよい。
【0037】
[脂環式ポリカーボネートの製造方法]
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法は、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「脂環式環状カーボネート(4)」ともいう)をホスファゼン塩基及びウレア類を用いて開環重合することにより、式(1)で表される構造単位を含む脂環式ポリカーボネートを得ることを含む方法が好ましい。
【化10】
(式(4)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である)
【0038】
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法は、下記式(5)で表される化合物とジアルキルカーボネートやホスゲン、尿素等に挙げられるカルボニル化合物とを触媒下で反応させるエステル交換法により脂環式ポリカーボネートを得る方法であってもよいが、好ましくは脂環式環状カーボネートの開環重合による製造方法である。
【化11】
(式(5)中、Aは、置換していてもよい脂環部位であり、Rは、水素、炭素数1~20の直鎖又は分枝アルキル基、又は、炭素数1~20のアシル基である。)
【0039】
(脂環式環状カーボネートの製造方法)
開環重合に用いる脂環式環状カーボネート(4)の合成方法としては、特に限定されないが、例えば式(6)で表される化合物と、ハロゲン化ギ酸エステル、炭酸エステル、尿素又はホスゲン等とを反応させることによって得ることができる。
【化12】
(式(6)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である。)
【0040】
ハロゲン化ギ酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸メチル、ブロモギ酸エチル、ヨードギ酸メチル、及びヨードギ酸エチルが挙げられる。炭酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピル、炭酸イソプロピル、炭酸ブチル、炭酸イソブチル、及び炭酸ジフェニルが挙げられる。
【0041】
ハロゲン化ギ酸エステルを用いる環状カーボネートの合成方法において、反応温度としては、-30~50℃が好ましく、より好ましくは0~10℃である。反応圧力としては、大気圧が好ましく、反応時間は、好ましくは1~24時間であり、より好ましくは6~12時間である。反応は、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気など不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0042】
反応は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方法により行うことができる。反応終了後、環状カーボネートは、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、イオン交換、シリカゲルカラム等の手段により分離及び精製できる。
【0043】
炭酸エステルを用いる環状カーボネートの合成方法において、使用される触媒は、特に限定されないが、例えば、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ケイ素、酸化銅、酸化銀に挙げられる金属酸化物;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、4-エチルモルホリン、ピコリン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、モルホリン、ピリミジン、イミダゾール、アニリン等に挙げられる有機塩基であり、好ましくは金属酸化物であり、より好ましくは酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムに挙げられる酸化アルカリ土類金属であり、更に好ましくは酸化カルシウムである。
【0044】
脂環式環状カーボネート(4)は、下記式(7)で表される化合物(以下、「シクロアルキレンオキシド(C2)」ともいう)と二酸化炭素とを反応させることによっても得ることができる。
【化13】
(式(7)中、Aは、置換していてもよい脂環部位である)
【0045】
シクロアルキレンオキシド(C2)との反応に用いる二酸化炭素はガス状、液状、固体状いずれであってもよく、また、純粋な二酸化炭素であってもよいし、他の反応に不活性な化合物類、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス類、炭化水素類との混合物であってもよいし、一酸化炭素や少量の酸素や水を含むものであってもよい。
【0046】
シクロアルキレンオキシド(C2)と二酸化炭素との反応には触媒が用いられるが、例えば、クロロ(5,10,15,20-テトラ-p-トリルポルフィリナート)クロミウム等のポルフィリン化合物、N-メチルイミダゾール等のアミン類、アルカリ金属やアルカリ土類金属のハロゲン化物が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属やアルカリ土類金属のハロゲン化物である。
【0047】
上記アルカリ金属やアルカリ土類金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムなどのハロゲン化物であって、具体的にはフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化フランシウム、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化ラジウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化フランシウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ラジウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化フランシウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ラジウムなどの単一金属と単一ハロゲンとの化合物類;塩化マグネシウムナトリウム、塩化マグネシウムカリウム、塩化カルシウムカリウム、臭化マグネシウムカリウムなどの複塩類;フッ化臭素カリウム、塩化ヨウ素カリウム、塩化ヨウ素ルビジウム、塩化ヨウ素セシウム、臭化塩化ヨウ素セシウム、臭化塩化ヨウ素ルビジウム、臭化ヨウ素カリウム、臭化ヨウ素セシウム、臭化ヨウ素ルビジウムなどのポリハロゲン化物類などが挙げられ、これらのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物は、単独で用いてもよいし、あるいは2種以上混合して用いてもよい。また、これらのハロゲン化物の中では、臭素又はヨウ素を含むものが好ましく、特にヨウ化物が好適である。本実施形態において用いられる前記のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の量については、特に制限はないが、使用されるシクロアルキレンオキシドに対して、通常0.001~1,000倍の範囲で使用されるのが好ましい。
【0048】
また、前記のアルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物は、本反応の触媒として用いるに当たり、シクロアルキレンカーボネートに溶解させたものを使用することが好ましい。二酸化炭素はシクロアルキレンオキシドに対して、通常、0.01~1,000倍モル、好ましくは0.1~100倍、より好ましくは0.5~20倍モル使用される。
【0049】
反応温度は50~400℃、好ましくは100~300℃で実施され、反応圧力は通常、常圧又は加圧下で実施され、反応時間は数分~数十時間である。
【0050】
(重合開始剤(又は重合触媒))
本実施形態に係る脂環式ポリカーボネートでは、脂環式環状カーボネート(4)を開環重合するために、ホスファゼン塩基とウレア類を用いる。これらのホスファゼン塩基とウレア類によりハイブリッド触媒を形成する。
ホスファゼン塩基としては特に限定されないが、例えば、
t-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(以下、「P1-t-Bu」ともいう)、
t-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(以下、「P1-t-Bu-トリス(テトラメチレン)」ともいう)、
1-t-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(以下、「P2-t-Bu」ともいう)、
1-エチル―2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(以下、「P2-Et」ともいう)、
1-t-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス-[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン)(以下、「P4-t-Bu」ともいう)、
2-t-ブチルイミノ―2-ジエチルアミノ‐1,3-ジメチルペルヒドロ―1,3,2-ジアザホスホリン(以下、「BEMP」ともいう)、
などが挙げられる。
【0051】
ウレア類としては、例えば、ウレア、チオウレア、グアニジンが挙げられる。ウレアとしては、例えば、無置換のウレア、1置換ウレア、2置換ウレアなどが挙げられる。
【0052】
1置換ウレアとしては、例えば、メチルウレア、エチルウレア、プロピルウレア、ブチルウレア、シクロヘキシルウレア、[(テトラヒドロフラン―2-イル)メチル]ウレア、3-クロロフェニルウレア、N-ベンゾイルウレア、(4-ブロモフェニル)ウレア等が挙げられる。
【0053】
2置換ウレアとしては、例えば、
1,3-ジメチルウレア、1,3-ジエチルウレア、1,3-ジイソプロピルウレア、1,3-ジシクロヘキシルウレア、1,3-ジフェニルウレア、1,3-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、
1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[2-(ジメチルアミノ)シクロヘキシ]ウレア、
1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、
1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[フェニル]ウレア、
1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[シクロヘキシル]ウレア、
1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[フェニル]ウレア、
1-[シクロヘキシル]-3-[フェニル]ウレア等が挙げられる。
【0054】
チオウレアとしては、例えば、無置換のチオウレアの他、メチルチオウレア、エチルチオウレア、プロピルチオウレア、ブチルチオウレア、シクロヘキシルチオウレア、[(テトラヒドロフラン―2-イル)メチル]チオウレア、3-クロロフェニルチオウレア、N-ベンゾイルチオウレア、(4-ブロモフェニル)チオウレア等の1置換チオウレア、1,3-ジメチルチオウレア、1,3-ジエチルチオウレア、1,3-ジイソプロピルチオウレア、1,3-ジシクロヘキシルチオウレア、1,3-ジフェニルチオウレア、1,3-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]チオウレア、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[2-(ジメチルアミノ)シクロヘキシ]チオウレア、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]チオウレア、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[フェニル]チオウレア、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[シクロヘキシル]チオウレア、1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[フェニル]チオウレア、1-[シクロヘキシル]-3-[フェニル]チオウレア等の2置換チオウレアが挙げられる。これらの中でも、2置換チオウレアが好ましい。
ウレア類は単独で用いても他の重合開始剤と組み合わせてもよいが、好ましくは他の重合開始剤との組み合わせであり、より好ましくはチオウレアと他の重合開始剤との組み合わせである。
【0055】
(添加剤)
得られるポリマーの分子量を制御する観点、及び末端構造を制御することで種々の特性を発現させる観点から、上記重合開始剤に加えて、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、5-ノルボルネン-2-メタノール、1-アダマンタノール、2-アダマンタノール、トリメチルシリルメタノール、フェノール、ベンジルアルコール、及びp-メチルベンジルアルコールのようなモノアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、及びポリエチレングリコールのようなジアルコール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、及びトリエタノールアミンのような多価アルコール、並びに、乳酸メチル、及び乳酸エチルが挙げられる。また、上記の添加剤は一種類を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(撹拌)
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法は、前記重合工程において、反応物及び/又は生成物を撹拌することが好ましい。撹拌方法としては、特に限定されないが、例えば、メカニカルスターラーと撹拌翼とを用いた撹拌、及びマグネチックスターラーと回転子とを用いた撹拌が挙げられる。
【0057】
(反応温度)
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法において、重合工程における反応温度は、本実施形態のポリカーボネートを製造することができる範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは0℃以上150℃以下であり、より好ましくは0℃以上130℃以下であり、更に好ましくは0℃以上120℃以下である。
【0058】
(溶媒)
本実施形態のポリカーボネートの製造方法では、溶媒を用いてもよく、用いなくてもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、及びプロピレングリコールノモノメチルエーテルアセテートのようなエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びトリクロロエタンのようなハロゲン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのような飽和炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及びクレゾールのような芳香族炭化水素系溶媒、並びに、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒が挙げられる。
【0059】
本実施形態のポリカーボネートの製造方法の重合工程における、重合開始剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂の目標とする分子量に応じて適宜調整すればよいが、開環重合性モノマーである環状カーボネートに対する物質量換算で、好ましくは、0.0001mоl%以上10mоl%以下であり、より好ましくは、0.0002mоl%以上5mоl%以下である。上記の重合開始剤は一種類を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本実施形態において、環状カーボネートは当業者に周知の技術によって定量できる。例えば、1H-NMR、13C-NMR、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等による方法が挙げられる。
【実施例0061】
以下、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
本実施例において、各種測定は以下のように行った。
【0063】
(1H-NMR測定)
日本電子株式会社製NMR装置(製品名:ECZ400R)、及びTFHプローブを用いて、以下のようにNMR測定をすることで、ポリカーボネート樹脂の1H-NMRスペクトルを得た。なお、重溶媒の基準ピークは、クロロホルム-dを用いた場合は7.26ppm、ジメチルスルホキシド-d6を用いた場合は2.50ppmであるとし、積算回数は8回として測定を行った。
【0064】
(13C-NMR測定)
日本電子株式会社製NMR装置(製品名:ECZ400R)、及びTFHプローブを用いて、以下のようにNMR測定をすることで、ポリカーボネートの13C-NMRスペクトルを得た。なお、重溶媒の基準ピークは、クロロホルム-dを用いた場合は77.16ppm、ジメチルスルホキシド-d6を用いた場合は39.52ppmであるとし、積算回数は256回として測定を行った。
【0065】
(転化率)
T6Cの転化率(xt)は、粗生成物の1H-NMRスペクトルにおける、モノマーメチンプロトンに由来するピーク(4.01~4.07ppm)の積分値Amtと、ポリマーのメチンシグナルに由来するピーク(4.56ppm、4,29ppm)の積分値Aptから、次式に従って求めた。
【0066】
【数1】
モノマー合計の転化率xは粗生成物の
13C-NMRスペクトルにおける、両モノマーのカルボニル炭素に由来するピーク(155ppm付近)の積分値A
mと、ポリマー中の両ユニットのカルボニル炭素に由来するピーク(154ppm付近)の積分値A
pから次式に従って算出した。
【0067】
【0068】
C6Cの転化率xcはモノマー合計の転化率xとT6Cの転化率xtを用いて、次式に従って求めた。
【0069】
【0070】
ただし、[M]0はモノマー合計の初濃度、[T6C]0はT6Cの初濃度、[C6C]0はC6Cの初濃度をそれぞれ表す。
【0071】
(重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mw)の測定)
ポリカーボネート0.02gに対して、テトラヒドロフランを2.0gの割合で加えた溶液を測定試料とし、高速GPC装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8420GPC」)を用いて、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKガードカラムSuperH-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperHM-H、TSKgel SuperH2000、及びTSKgel SuperH1000(いずれも東ソー株式会社製製品名)を直列に連結して用いた。カラム温度は40℃とし、テトラヒドロフランを移動相として、0.60mL/分の速度で分析した。検出器としては、RIディテクターを用いた。Polymer Standards Service製のポリスチレン標準試料(分子量:2520000、1240000、552000、277000、130000、66000、34800、19700、8680、3470、1306、370)を標準試料として、検量線を作成した。このようにして作成した検量線を基に、ポリカーボネート樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
【0072】
[合成例1:cis-1,2-シクロヘキセンカーボネート:C6Cの合成1]
シクロヘキセンオキシド(東京化成、40.0g、406mmol)、ヨウ化カリウム(0.162g、0.976mmol)を1Lオートクレーブに投入し、4.0MPa(30℃)になるように二酸化炭素を加圧し、その後200℃、4日間加熱した。その後、0.2~0.3hPa、120℃で減圧分留し、目的のcis-1,2-シクロヘキセンカーボネート(13.7g、96.4mmol、収率24%)を得た。
【0073】
[合成例2:cis-1,2-シクロヘキセンカーボネート:C6Cの合成2]
アルゴン気流下、50mL4つ口フラスコにジフェニルカーボネート(東京化成、1.66g、7.74mmol)、2-メチルTHF(東京化成、10ml)を加え、攪拌しながらcis-1,2-シクロヘキサンジオール(東京化成、1.00g、8.61mmol)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5-エン(TBD、東京化成、21.5mg、0.155mmol)、をさらに加え、室温で19時間撹拌した。反応後、酢酸を1滴加えクエンチした後、反応液を濃縮し、2.94gの淡黄色透明液体を得た。淡黄色透明液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的のcis-1,2-シクロヘキセンカーボネート(0.758g、5.33mmol、収率69%)を得た。
【0074】
[合成例3:cis-1,2-シクロヘキセンカーボネート:C6Cの合成3]
窒素気流下、50mL3つ口フラスコに、cis-1,2-シクロヘキサンジオール(東京化成、1.21g、10.4mmol)、脱水THF(30mL)を加えた。フラスコを氷浴に浸して内温が5℃以下になるように冷却しながら撹拌し、クロロギ酸エチル(富士フイルム和光純薬、3.68g、33.9mmol)、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬、3.61g、35.6mmol)を順に2回に分けて反応液中へ滴下攪拌し、室温で11時間撹拌した。エタノール(富士フイルム和光純薬、0.82g)を加えてクエンチした後、副生した白色固体を減圧濾過によって除去し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的のcis-1,2-シクロヘキセンカーボネート(1.07g、7.52mmol、収率78%)を得た。
【0075】
[合成例4:trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート:T6Cの合成]
窒素気流下、1000L反応容器に、trans-1,2-シクロヘキサンジオール(BLD PHARMATECH 25.0kg、215.2mol)、THF(安定剤含有)(250L)を加えた。反応容器を-6℃に冷却しながら撹拌し、クロロギ酸エチル(70.0kg、645mol)、トリエチルアミン(87.4kg、863mol)を脱水トルエン(188L)で希釈した溶液を順に2回に分けて反応液中へ終夜滴下攪拌し、その後更に4時間撹拌した。副生した白色固体を減圧濾過によって除去し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣にTHF/トルエン(2/1)(60.0L)を加えて溶解させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。溶離液はさらに濃縮し、クロロホルム270kgに溶解した後、イオン交換水217kgで2回水洗した。その後、クロロホルム20kg、ヘプタン100Lで再沈殿を行い、濃縮した後目的のtrans-シクロヘキセンカーボネート(22.81kg、160.5mol、収率75%)を得た。
【0076】
[合成例5:1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[シクロヘキシル]チオウレアの合成]
3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルイソチオシアネート(東京化成、0.68mL、3.70mmol)のTHF(4mL)溶液に、シクロヘシルアミン(0.42mL、3.70mmol)をゆっくり加えた。混合物を30℃で2時間撹拌した後、THFを減圧下留去した。得られた白色固体をn-ヘキサン10mlで4回洗浄し、乾燥させたのち、目的物(1.34g、3.62mmol、収率:98%)を得た。
【0077】
[重合例1:T6Cのアニオン開環重合]
25mLすりつき試験管に、trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート:T6C(0.30g、2.11mmol)を加え、試験管内を窒素で置換した。試験管を60℃に加熱し、ベンジルアルコール(9.13×10-3g、8,44×10-5mol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(12.8×10-3g、8.44×10-5mol)を加え、60℃で14時間撹拌した。14時間後、酢酸(7.63×10-3g、1.27×10-4mol)を加え反応を停止させた。試験管を室温まで放冷した後、少量のクロロホルムを加えて内容物を溶解した。得られた溶液を石油エーテル40mLに滴下して、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを回収し、クロロホルムに加えて再度溶解させた後、石油エーテル40mLに滴下して再沈殿を行った。ポリマーを減圧濾過によって回収し、真空中40℃で乾燥して、ポリマーを得た。
【0078】
[実施例1]
25mLすりつき試験管にcis-1,2-シクロヘキセンカーボネート:C6C(0.15g、1.06mmol)、trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート:T6C(0.15g、1.06mmol)、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[シクロヘキシル]チオウレア(23mg、6.21×10-2mmol)を加え、試験管内を窒素で置換した。試験管を60℃に加熱し、ベンジルアルコール:BnOH(2.28mg、2.11×10-2mmol)、1-t-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス-[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ5,4λ5-カテナジ(ホスファゼン):t―Bu―P4の0.8Mヘキサン溶液(26μL、2.11×10-2mmol)を加え、60℃で14時間撹拌した。14時間後無水酢酸(3.24mg、3.17×10-2mmol)を加え反応を停止させた。試験管を室温まで放冷した後、少量のクロロホルムを加えて内容物を溶解した。得られた溶液を石油エーテル40mLに滴下して、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを回収し、クロロホルムに加えて再度溶解させた後、石油エーテル40mLに滴下して再沈殿を行った。ポリマーを減圧濾過によって回収し、真空中40℃で乾燥して、コポリマーを0.15g得た。
【0079】
[実施例2~4]
以下同様にして、反応時間、モノマー仕込み量を変更し、実施例2~4を実施した。以下同様にして、反応時間、モノマー仕込み量を変更し、実施例2~4を実施した。
実施例3で得られたポリマーの
13C-NMRスペクトルを
図1に示した。
図2は、実施例3で得られたポリマーと重合例1で得られたポリマーの
13C-NMRスペクトルである。
【0080】