(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067316
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法及び金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177288
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA09
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK42
4F202CK52
4F202CK53
4F202CM31
(57)【要約】
【課題】螺子キャップのような、離型に際してアンダーカット部となる部分を有する有底筒形状の樹脂成形品を、成形品の変形を生じることなくスムーズに無理抜きにより離型可能な樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】金型を使用した賦形工程後に、金型を無理抜きにより離型させる離型工程を有する、樹脂成形品の製造方法において、前記樹脂成形品が、底部及び側壁部を備えた有底筒形状の樹脂成形品であり、前記側壁部内面にはアンダーカット部aが形成されていると共に、該アンダーカット部aと前記底部の距離よりも、前記底部との距離が近い位置にアンダーカット部bを有しており、前記金型が、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bを少なくとも有するコア金型であり、前記離型工程が、前記アンダーカット部aから前記金型Aを無理抜きする工程Aと、前記アンダーカット部bから前記金型Bを無理抜きする工程Bとを含むことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を使用した賦形工程後に、金型を無理抜きにより離型させる離型工程を有する、樹脂成形品の製造方法において、
前記樹脂成形品が、底部及び側壁部を備えた有底筒形状の樹脂成形品であり、前記側壁部内面にはアンダーカット部aが形成されていると共に、該アンダーカット部aと前記底部の距離よりも、前記底部との距離が近い位置にアンダーカット部bを有しており、
前記金型が、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bを少なくとも有するコア金型であり、
前記離型工程が、前記アンダーカット部aから前記金型Aを無理抜きする工程Aと、前記アンダーカット部bから前記金型Bを無理抜きする工程Bとを含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記アンダーカット部bが、前記底部内面又は前記アンダーカット部aよりも前記底部側の側壁部内面に形成されている請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂成形品が、前記底部が天面且つ前記側壁部がスカート部である合成樹脂製キャップであり、該合成樹脂製キャップが、前記天面から上方に延びる内側壁、該内側壁の上端から外方に延びる環状部を介して前記スカート部に連結する落とし蓋形状を有し、
前記アンダーカット部aが前記スカート部内面に形成された螺子部であり、アンダーカット部bが前記内側壁に形成された径方向外方に突出する環状密封部である請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記工程Aが、前記金型Aに対して前記樹脂成形品の底部を相対的に上昇させることにより、前記アンダーカット部aを無理抜きする工程である請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記工程Bが、前記工程Aの後に、前記金型Bに対して前記樹脂成形品を相対的に下降又は上昇させることにより、前記アンダーカット部bを無理抜きする工程である請求項4記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記離型工程における前記金型A及び/又は前記金型Bの移動に、スプリングが使用されている請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記賦形工程が、厚み0.3~2.0mmの合成樹脂製シートを熱成形する工程である請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形品の最厚肉部の厚みが1.5mm以下である請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
底部及び側壁部を備え、前記側壁部内面にアンダーカット部aを有し、前記底部内面にアンダーカット部bを有する、有底筒形状の樹脂成形品を成形するためのコア金型であって、
前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bとを少なくとも備え、
前記金型A及び金型Bは、それぞれ軸方向に移動可能であることを特徴とする金型。
【請求項10】
前記金型Aは、環状形状であり且つ前記金型Bの外周面に組み合される請求項9記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品の成形に用いられる金型に関し、より詳細には、薄肉の樹脂成形品であっても金型の無理抜きが可能であり、成形品にダメージを与えることなく離型可能な製造方法及びこの製造方法に好適に使用される金型に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックキャップ等の樹脂成形品は、射出成形や圧縮成形等の金型を用いた成形方法により一体成形され、離型時は無理抜きにより金型を取り除くことが行われている。プラスチックキャップにおける密封部や螺子部はキャップの密封性を確保する部分であると同時に、離型時にアンダーカットとなり、金型を無理抜きすることによりダメージを受けやすい部分でもあることから、金型の無理抜きによる成形品へのダメージを低減するために種々の提案がなされている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、内側にネジ部を有するキャップを成型するための金型であって、前記金型はアンダーカット形状となるネジ部を有するキャップの内側形状を成型するためのコア型と、キャップの外側形状を成型するための外型とを有し、前記コア型はベース型から突設してあるとともに当該コア型の外周部に沿って上下動する抜き型を有し、コア型は少なくとも前記ネジ部に対応する表面部を表面粗さRaにて200nm~400nmの無方向性の微小な凹凸面に形成してあり、前記抜き型はキャップの成型後に前記キャップのスカート端部に係止させつつ上方に向けて前進させることで当該キャップを前記コア型から無理抜き可能であることを特徴とする樹脂成型用金型が記載されている。
【0004】
密封部や螺子部を有するプラスチックキャップは構造が複雑であるため上記特許文献1のように、射出成形や圧縮成形で成形することが一般的であり、射出成形等では薄肉で軽量の螺子キャップを容易に成形することは困難であった。
また合成樹脂製シートを圧空成形等の熱成形することにより成形される合成樹脂製キャップも提案されており、例えば、下記特許文献2には、合成樹脂製シートの熱成形により螺子キャップを成形する方法が提案されている。
上記特許文献2においては、合成樹脂製シートの熱成形によりキャップを成形するものであることから、射出成形等により成形されるキャップに比して使用される材料の量が低減できるメリットがある旨記載されているが、離型に際しては、螺子キャップにおいては螺合を解く方向に回転させながらコア金型を抜くことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5741877号公報
【特許文献2】特公平5-57097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載されているように、アンダーカット部分等の変形を抑制するために、コア金型を旋回させて離型する方法では生産性が低下し、成形容易で経済性に優れた螺子キャップを提供するという趣旨に合致しない。
その一方、合成樹脂製シートの熱成形により成形された螺子キャップを無理抜きにより離型しようとしても、薄肉で剛性に乏しいことから、スカート部等が過度に引き延ばされて自立できない状態になってしまい、螺子部や密封部の変形により密封性が得られないだけでなく、キャップとして成立することすら困難であった。
また螺子キャップのような樹脂成形品においては、螺子部及び密封部のようにアンダーカット部となる部分が異なる位置に複数存在することから、成形品へのダメージを与えることなくスムーズに無理抜きすることは容易でない。特に落とし蓋形状の螺子キャップのように、容器口部の内面と密接する密封部を有するキャップにおいては、密封部と螺子部が径方向に相対する方向のアンダーカット部として形成されるため、金型を無理抜きすることは容易でない。
【0007】
従って本発明の目的は、螺子キャップのような、離型に際してアンダーカット部となる部分を複数有する有底筒形状の樹脂成形品を、成形品へのダメージを与えることなく、無理抜きにより離型可能な樹脂成形品の製造方法を提供することである。
また本発明の他の目的は、アンダーカット部を複数有する樹脂成形品にダメージを与えることなく無理抜きが可能な金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、金型を使用した賦形工程後に、金型を無理抜きにより離型させる離型工程を有する、樹脂成形品の製造方法において、前記樹脂成形品が、底部及び側壁部を備えた有底筒形状の樹脂成形品であり、前記側壁部内面にはアンダーカット部aが形成されていると共に、該アンダーカット部aと前記底部の距離よりも、前記底部との距離が近い位置にアンダーカット部bを有しており、前記金型が、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bを少なくとも有するコア金型であり、前記離型工程が、前記アンダーカット部aから前記金型Aを無理抜きする工程Aと、前記アンダーカット部bから前記金型Bを無理抜きする工程Bとを含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の樹脂成形品の製造方法においては、
(1)前記アンダーカット部bが、前記底部内面又は前記アンダーカット部aよりも前記底部側の側壁部内面に形成されていること、
(2)前記樹脂成形品が、前記底部が天面且つ前記側壁部がスカート部である合成樹脂製キャップであり、該合成樹脂製キャップが、前記天面から上方に延びる内側壁、該内側壁の上端から外方に延びる環状部を介して前記スカート部に連結する落とし蓋形状を有し、前記アンダーカット部aが前記スカート部内面に形成された螺子部であり、アンダーカット部bが前記内側壁に形成された径方向外方に突出する環状密封部であること、
(3)前記工程Aが、前記金型Aに対して前記樹脂成形品の底部を相対的に上昇させることにより、前記アンダーカット部aを無理抜きする工程であること、
(4)前記工程Bが、前記工程Aの後に、前記金型Bに対して前記樹脂成形品を相対的に下降又は上昇させることにより、前記アンダーカット部bを無理抜きする工程であること、
(5)前記離型工程における前記金型A及び/又は前記金型Bの移動に、スプリングが使用されていること、
(6)前記賦形工程が、厚み0.3~2.0mmの合成樹脂製シートを熱成形する工程であること、
(7)前記樹脂成形品の最厚肉部の厚みが1.5mm以下であること、
が好適である。
【0010】
本発明によればまた、底部及び側壁部を備え、前記側壁部内面にアンダーカット部aを有し、前記底部内面にアンダーカット部bを有する、有底筒形状の樹脂成形品を成形するためのコア金型であって、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bとを少なくとも備え、前記金型A及び金型Bは、それぞれ軸方向に移動可能であることを特徴とする金型が提供される。
本発明の金型においては、前記金型Aは、環状形状であり且つ前記金型Bの外周面に組み合されること、が好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂成形品の製造方法においては、アンダーカット部を異なる位置に複数有する樹脂成形品であっても、それぞれのアンダーカット部を形成し且つ別々に移動可能な複数の金型の組み合わせとすることにより、突出方向の異なるアンダーカット部があったとしても金型をスムーズに無理抜きすることが可能となる。特に、従来無理抜きによる離型が困難であった合成樹脂製シートの熱成形による薄肉の樹脂成形品であっても、成形品にダメージを与えることなくスムーズに無理抜きによる離型が可能になる。
すなわち、容器口部の内外面と接触して密封性或いはリシール性を発現する落とし蓋形状の螺子キャップのように、スカート部には径方向内方に突出する螺子部が形成され、スカート部よりも径方向内方の内側壁に径方向外方に突出する環状密封部が形成されている場合には、金型の無理抜きに際してキャップスカート部の拡径される方向が反対となり、金型の無理抜きは困難であるが、本発明においては、それぞれのアンダーカット部に対応する金型を別々に移動させることによって、離型時の樹脂成形品にかかる力を分散させ、無理抜きによっても金型をスムーズに成形品から取り除くことが可能となり、設計通りの樹脂成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明により製造される樹脂成形品の一例である螺子キャップの側断面図である。
【
図2】
図1のキャップを容器口部に適用した状態を示す部分拡大側断面図である。
【
図3】
図1の螺子キャップの製造における離型工程の一例を説明するための図である。
【
図4】
図1の螺子キャップの製造における離型工程の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、金型を使用した賦形工程後に、金型を無理抜きにより離型させる離型工程を有する、樹脂成形品の製造方法において、成形される樹脂成形品が、底部及び側壁部を備えた有底筒形状の樹脂成形品であり、前記側壁部内面にはアンダーカット部aが形成されていると共に、該アンダーカット部aと前記底部の距離よりも、前記底部との距離が近い位置にアンダーカット部bを有していることが第一の特徴であり、成形に用いる金型が、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bを少なくとも有するコア金型から成り、離型工程において、前記アンダーカット部aから前記金型Aを無理抜きする工程Aと、前記アンダーカット部bから前記金型Bを無理抜きする工程Bとを含むことが第二の特徴である。
【0014】
(樹脂成形品)
図1は本発明の製造方法により成形される樹脂成形品の一例である螺子キャップの形状について説明するための側断面図であり、
図2は
図1のキャップを容器口部に適用した状態を示す部分拡大側断面図である。
全体を1で示す螺子キャップは、概略的に言って、容器開口部を覆う天面2、天面2の外周縁から上方に延びる内側壁3、内側壁3の上端から外方に延びる環状部4を介して内側壁に連結する、螺子部5を備えたスカート部6から成る落とし蓋形状を有している。上記天面2が上述した樹脂成形品における底部に相当し、スカート部6が上述した側壁部に相当し、スカート部6に形成され径方向内方に突出する螺子部5がアンダーカット部aに相当する。
図1及び
図2に示す螺子キャップにおいては、上記内側壁3が、くの字状、すなわち下方に行くに従って内側壁の外径が増加する逆テーパ状の上方内側壁3aと下方に行くに従って外径が減少するテーパ状の下方内側壁3bとから成り、上方内側壁3aと下方内側壁3bの境界である屈曲部が環状突出部7として径方向外方に突出するように形成されており、内側壁3が環状突出部7を頂点として径方向に弾性変形可能である。この環状突出部7が、アンダーカット部aよりも底部(天面)に近い位置にあるアンダーカット部bに相当する。
すなわち、
図2に示すように、環状突出部7の容器に適用されていない状態における最大外径L1が、適用される容器口部20の内径L2よりも大きく形成されていることにより、螺子キャップ1が容器口部20に適用され、キャップが下死点まで螺子係合された密封状態で、環状突出部7は容器口部20内面と互いに半径方向に圧着した状態となり、優れた液密性を発現することが可能になっている。
【0015】
また
図1及び
図2に示す具体例では、キャップの密封性を高めるために、環状部4の内面に、螺子係合によりキャップが下死点に達したときに、容器口部20の先端と圧接するコンタクトリング9が形成され、またスカート部6の螺子部5よりも上方の環状部4に連なる部分(以下、「上方スカート部10」という)が、下方に行くに従ってスカート部の外径を減少させる逆テーパ状に形成されている。この逆テーパ状部分を形成するための段差部11も、スカート部6の内面よりも径方向内方に突出するアンダーカット部であり、前述した螺子部5(アンダーカット部a)よりも天面2(底部)に近いことから、アンダーカット部bに相当する。このように上方スカート部10が逆テーパ形状に形成されていることにより、容器口部20の先端付近を半径方向外側からタガ締めし、容器口部外面と上方スカート部10内面との間にシール部が形成され、更にキャップの密封性を高めることが可能となる。
【0016】
本発明の製造方法で製造可能な樹脂成形品は、上述したアンダーカット部a及びbを有する有底筒形状の樹脂成形品である限り、
図1に示したような螺子キャップに限定されない。例えば、トレイやカップ等の包装容器は有底円筒形状であると共に、蓋等を固定するための係合部や、スタッキングのための突起部等のアンダーカットとなる部分が形成されている場合があり、特に合成樹脂製シートの熱成形により成形されている樹脂成形品は薄肉であることから、無理抜きによる離型によりダメージを受けやすいことから、このような樹脂成形品は本発明の製造方法により製造されるのに適している。また樹脂成形品は、円筒状のみならず角筒状であってもよい。
合成樹脂製シートの熱成形により成形された樹脂成形品においては、樹脂成形品の最厚肉部の厚みが2.0mm以下の薄肉の成形品であることが好適であり、樹脂成形品の種類にもよるが、キャップ、トレイ、カップ等の包装体の場合には、各部位が0.1~2.0mmの厚みを有していることが望ましい。
【0017】
(成形工程)
本発明の樹脂成形品の製造方法においては、底部及び側壁部を有する有底筒形状の樹脂成形品の内部にコア金型を用い、このコア金型を無理抜きにより離型する製造方法である限り、賦形方法自体は圧縮成形や射出成形、或いは圧空成形等の熱成形の何れであってもよい。特に合成樹脂製シートを熱成形して得られる樹脂成形品は射出成形等により得られる樹脂成形品に比して薄肉であることから、金型の無理抜きにより金型の移動方向に過度に引き伸ばされて成形品の変形が生じやすいが、本発明の製造方法によれば、アンダーカット部による抵抗を低減させることができることから、金型の無理抜きを行っても、変形のない樹脂成形品の製造が可能となる。
【0018】
図3は、上述した螺子キャップ(樹脂成形品)の成形工程における、離型工程を説明するための図である。この樹脂成形品は、クランプ(図示せず)などにより固定された合成樹脂製シート21を、全体を30で示すコア金型を用いて熱成形することにより、螺子キャップ形状に賦形された後、冷却された状態である。前述した通り、この螺子キャップ1は、スカート部6の内面に形成された螺子部5がアンダーカット部a、内側壁3に形成された環状突出部7及び上方スカート部10に形成された段差部11がアンダーカット部bとして形成されている。
コア金型30は、螺子部5(アンダーカット部a)を有するスカート部6の形状を賦形可能な環状のスクリューコア金型30Aと、このスクリューコア金型30Aの中心部に嵌合し、環状突出部7(アンダーカット部b)を有する天面の形状を賦形可能なヘッド金型30Bとが入れ子状態に組合されて成っている。また
図3(A)から明らかなように、段差部11(アンダーカット部b)が、スクリューコア金型30A及びヘッド金型30Bの境界付近で金型30Bにより賦形されている。
【0019】
コア金型30により賦形された螺子キャップ1は、
図3(B)に示されるように、金型30Bのみがキャップ軸方向に上昇することにより、最初に金型30Aが螺子キャップ1のスカート部6から取り除かれ、螺子キャップ1のスカート部6の螺子部5(アンダーカット部a)が無理抜きされる(工程A)。この際、螺子キャップ1は天面2全体が金型30Bで保持された状態であり、金型30Aの移動に際して螺子部5(アンダーカット部a)による抵抗がかかるだけであることから、従来の無理抜きに比してスカート部6に作用する応力が低減されており、スカート部の伸長や螺子部の変形が有効に防止されている。
次いで、
図3(C)に示すように、金型30Bが軸方向に下降することにより、金型30Bが螺子キャップ1の天面2から取り除かれる(工程B)。この場合においても、金型30Bには、螺子キャップ1の環状突出部7及び段差部11(アンダーカット部b)による抵抗がかかるが、段差部11の下方のスカート部に対応する金型がないため撓みやすいことから、無理抜きに際して天面形状が損なわれることもない。
尚、
図3に示す具体例では、金型30Bが駆動機構を備え、金型30Bのみが上下動することにより金型30A及び金型30Bの両方が離型されているが、工程Aにおいて樹脂成形品の底部が金型30Aに対して相対的に移動される限りこれに限定されるものではなく、例えば、
図3(B)に示す金型30Aの離型工程において金型30Aが下降し、
図3(C)に示す金型30Bの離型工程において金型30Bが下降してもよい。
【0020】
図4は、上述した螺子キャップ(樹脂成形品)の離型工程の他の一例を説明するための図である。
図4(A)に示す態様においては、スクリューコア金型30Aは
図3に示した形態と同様であるが、ヘッド金型30Bが、外側ヘッド金型31Bと外側ヘッド金型31Bの中空部分に位置する内側ヘッド金型32Bとから成り、外側ヘッド金型31Bと内側ヘッド金型32Bがそれぞれ個別に可動する点で異なっている。
すなわち、外側ヘッド金型31Bは、螺子キャップ1の内側壁3から環状部4を介して上方スカート部10までを賦形可能な形状を有しており、また内側ヘッド金型32Bは、螺子キャップ1のドーム状の天面2を賦形可能な形状を有しており、
図4(A)に示すようにこれらが組み合わされた状態で、
図3に示したヘッド金型30Bと同様に螺子キャップの天面形状を賦形することができる。
この態様においては、外側ヘッド金型31Bは下端に軸方向に伸縮可能な第一のスプリング33を備えており、この第一のスプリング33により付勢されてヘッド金型30B全体を軸方向に移動させることができる。また外側ヘッド金型31Bと内側ヘッド金型32Bは、軸方向に伸縮可能な第二のスプリング34を間に介して一体化されており、第二のスプリング34によって内側ヘッド金型32Bが付勢されることにより、内側ヘッド金型32Bは外側ヘッド金型31Bから分離して軸方向に移動することが可能となる。
【0021】
図4(B)に示すように、第一のスプリング33により外側ヘッド金型31Bが付勢されると、ヘッド金型30B全体が軸方向上方に移動し、これにより、最初にスクリューコア金型30Aのスカート部6からの無理抜きが行われる(工程A)。
図3(B)に示した工程と同様に、スクリューコア金型30Aの離型に際して、ヘッド金型30Bにより螺子キャップ1は天面2全体が保持されており、金型30Aの無理抜きには螺子部5(アンダーカット部a)による抵抗がかかるだけであり、スカート部の伸長や螺子部の変形が有効に防止されている。
次いで、
図4(C)に示すように、第二のスプリングにより内側ヘッド金型32Bが付勢されると、内側ヘッド金型32Bのみが軸方向上方に移動し、これにより、外側ヘッド金型31Bの無理抜きが行われる(工程B)。この態様においては、内側ヘッド金型32Bにより螺子キャップの天面2が保持された状態で外側ヘッド金型32Bの無理抜きが行われるため、
図3に示した態様に比して、外側ヘッド金型31Bの無理抜きが容易である。
外側ヘッド金型31Bの離型終了後は、内側ヘッド金型32Bが下降することにより、内側ヘッド金型32Bがドーム状天面2から離型する(工程C)と共に.内側ヘッド金型32Bが外側ヘッド金型31Bと一体化し、更にヘッド金型30B全体が下降して、スクリューコア金型30Aと一体化して、螺子キャップから完全に取り除かれる。
尚、
図4に示した具体例では、外側ヘッド金型及び内側ヘッド金型の駆動機構をスプリングとしたが、これに限定されず、駆動軸によって上下動可能にするなど従来公知の機構を採用できる。
【0022】
前述した通り、本発明における離型工程は、コア金型を使用する限り、射出成形や圧縮成形等を用いた製造方法における離型工程として対応可能であるが、前述した通り、合成樹脂製シートを用いた真空圧空成形、プラグアシスト圧空成形等の熱成形を用いた製造方法の離型工程であることが好適である。すなわち、本発明によれば、熱成形による樹脂成形品のように薄肉であるため伸張しやすい樹脂成形品であっても、所期の設計寸法通りに成形することが可能である。
合成樹脂製シートとしては、これに限定されないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の単層シートの他、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂やアルミニウム箔等から成るガスバリア性中間層を備えた多層シートを用いることもできる。
また合成樹脂製シートの厚みとしては、用いる樹脂の種類や成形品の形状によって一概に規定できないが、0.3mm~2.0mmの範囲にあることが望ましい。特に前述した螺子キャップのような形状を成形する場合には、0.3mm~1.5mmの厚みであることが好適である。
【0023】
(金型)
本発明の金型は、底部及び側壁部を備え、前記側壁部内面にアンダーカット部aを有し、前記底部内面にアンダーカット部bを有する、有底筒形状の樹脂成形品を成形するためのコア金型であって、前記アンダーカット部aを形成する金型Aと、前記アンダーカット部bを形成する金型Bとを少なくとも備え、前記金型A及び金型Bは、それぞれ軸方向に移動可能であることが重要な特徴である。
本発明の金型は、樹脂成形品表面の複数のアンダーカット部のそれぞれに対応するように、金型表面を複数の領域に分割し、それぞれが軸方向に個別に移動可能となるように、同心状に組み合わされて一つのコア金型を構成することができ、具体的には、
図3に示すコア金型では、金型表面をアンダーカットa及びアンダーカットbの形成位置に合わせて2分割して、一方の金型を環状の外側金型とし、他方の金型を外側金型の内周面側に組み合わせて成る2つの金型から構成しているが、アンダーカットの数或いは形成位置によって適宜変更することができる。
このように、それぞれのアンダーカット部に対応する複数の金型が別々に移動することによって、離型時の樹脂成形品にかかる力を分散させ、アンダーカット部による無理抜き時の抵抗が低減され、アンダーカット部の変形はもちろん、合成樹脂製シートの熱成形から成る薄肉の樹脂成形品に対しても、所期の樹脂成形品を成形できる。
【0024】
本発明の金型は、射出成形や圧縮成形に使用する場合には、キャビティ型と組み合わせることにより樹脂成形品を成形可能であり、この場合も前述した熱成形による場合と同様にして金型を無理抜きすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、螺子キャップのような、離型に際してアンダーカット部となる部分を有する有底筒形状の樹脂成形品を、成形品の変形を生じることなくスムーズに無理抜きできることから、射出成形や圧縮成形はもちろん、合成樹脂製シートからの熱成形により成形される薄肉の樹脂成形品の製造方法としても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 螺子キャップ、2 天面、3 内側壁、4 環状部、5 螺子部、6 スカート部、7 環状突出部、8 カウンターシンク部、9 コンタクトリング、10 上方スカート部、20 容器口部、30A スクリューコア金型、30B ヘッド金型、31B 外側ヘッド金型、32B 内側ヘッド金型、33 第一のスプリング、34 第二のスプリング。