(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067324
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電池管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240510BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240510BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/02 H
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177309
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 正人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 将徳
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BB01
5G503BB02
5G503EA08
5G503FA18
5G503GC06
5G503HA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池の放電時において、基板での発熱量を抑制する電池管理装置を提供する。
【解決手段】電池管理装置100は、第1電池11と第2電池12とを含む電池群10と、基板160と、第1スイッチ51と、電池群10と基板160とを接続する第1配線21と、第1配線21に設置された第1抵抗素子31と、基板160に配置された第2抵抗素子32と、を備える。第1スイッチ51が導通状態であるときに、第1電池11の電力が第1抵抗素子31および第2抵抗素子32により消費される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
基板と、
スイッチと、
前記電池と前記基板とを接続する第1配線と、
前記第1配線に設置された第1抵抗素子と、
前記基板に配置された第2抵抗素子とを備え、
前記スイッチが導通状態であるときに、前記電池の電力が前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子により消費される、電池管理装置。
【請求項2】
前記第1配線での発熱量と前記基板での発熱量との比と、前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との比とは同一である、請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記電池管理装置は、さらに、第1センサと、第2センサと、前記第1センサおよび前記第2センサの検出値の入力を受付けるコントローラとを備え、
前記第1センサは、前記スイッチが導通状態である場合に前記第1抵抗素子で電圧低下した前記電池の第1電圧値を出力し、
前記第2センサは、前記スイッチが導通状態である場合に前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子で電圧低下した前記電池の第2電圧値を出力し、
前記コントローラは、前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分値に基づいて、異常を検出する、請求項1または請求項2に記載の電池管理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記スイッチが非導通状態であるときにおいて、前記差分値が閾値より大きい場合に前記異常を検出し、
前記第1センサの許容誤差と前記閾値との比と、前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との比とは同一である、請求項3に記載の電池管理装置。
【請求項5】
前記第1配線は、前記電池の正極側に接続されており、
前記電池管理装置は、さらに、
前記第1配線と前記基板とを接続する1つの第1端子と、
前記電池の負極側に接続されている第2配線と、
前記第2配線と前記基板とを接続する1つの第2端子とを備える、請求項1または請求項2に記載の電池管理装置。
【請求項6】
前記電池管理装置は、前記第2配線に配置された第3抵抗素子をさらに備え、
前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第3抵抗素子の抵抗値との比率で前記電池の最高電圧値が比例配分された値の2乗値が、該第1抵抗素子の定格電力値で除算された値以上である、請求項5に記載の電池管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2021-068696号公報(特許文献1)には、蓄電モジュールが開示される。この蓄電モジュールは、複数の電池、および該複数の電池の電圧などを監視する制御部を備える。また、制御部は、電池の放電制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術において、たとえば、基板上に設けられた抵抗素子で電池の電力を消費することにより、該電池の放電制御を実行する構成が考えられる。しかしながら、このような構成であれば、該抵抗素子での発熱量が多大になった場合には、基板に異常が発生する場合が生じ得る。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電池の放電時において、基板での発熱量を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1項) 本開示の電池管理装置は、電池と、基板と、スイッチと、電池と基板とを接続する第1配線と、第1配線に設置された第1抵抗素子と、基板に配置された第2抵抗素子とを備える。スイッチが導通状態であるときに、電池の電力が第1抵抗素子および第2抵抗素子により消費される。
【0007】
(第2項) 第1項に記載の電池管理装置であって、第1配線での発熱量と基板での発熱量との比と、第1抵抗素子の抵抗値と第2抵抗素子の抵抗値との比とは同一である。
【0008】
(第3項) 第1項または第2項に記載の電池管理装置であって、電池管理装置は、さらに、第1センサと、第2センサと、第1センサおよび第2センサの検出値の入力を受付けるコントローラとを備える。第1センサは、スイッチが導通状態である場合に第1抵抗素子で電圧低下した電池の第1電圧値を出力する。
【0009】
第2センサは、スイッチが導通状態である場合に第1抵抗素子および第2抵抗素子で電圧低下した電池の第2電圧値を出力する。コントローラは、第1電圧値と第2電圧値との差分値に基づいて、異常を検出する。
【0010】
(第4項) 第3項に記載の電池管理装置であって、コントローラは、スイッチが非導通状態であるときにおいて、差分値が閾値より大きい場合に異常を検出し、第1センサの許容誤差と閾値との比と、第1抵抗素子の抵抗値と第2抵抗素子の抵抗値との比とは同一である。
【0011】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載の電池管理装置であって、第1配線は、電池の正極側に接続されている。電池管理装置は、さらに、第1配線と基板とを接続する1つの第1端子と、電池の負極側に接続されている第2配線と、第2配線と基板とを接続する1つの第2端子とを備える。
【0012】
(第6項) 第5項に記載の電池管理装置であって、電池管理装置は、第2配線に配置された第3抵抗素子をさらに備える。第1抵抗素子の抵抗値は、第1抵抗素子の抵抗値と第3抵抗素子の抵抗値との比率で電池の最高電圧値が比例配分された値の2乗値が、該第1抵抗素子の定格電力値で除算された値以上である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、電池の放電時において、基板での発熱量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態の電池管理装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1スイッチが導通状態である場合を説明するための図である。
【
図3】第1比較例の電池管理装置の構成を示す図である。
【
図4】第2比較例の電池管理装置の構成を示す図である。
【
図5】第3比較例の電池管理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本実施の形態の電池管理装置100の構成例を示す図である。電池管理装置100は、電池群10と、基板160と、コントローラ80とを備える。電池群10は、第1電池11と、第2電池12とを含む。第1電池11および第2電池12は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の充放電可能な電池である。
図1の例では、第1電池11および第2電池12は、直列接続される。電池群を構成する電池の数は3以上であってもよい。なお、本開示の電池回路装置の図面については、一部、記載されていない箇所がある。たとえば、電池群10が電力を供給する負荷は記載されていない。
【0017】
電池管理装置100は、後述の第1センサ61と第3センサ63とを備える。後述の第1スイッチ51および第2スイッチ52が非導通状態である場合には、第1センサ61は、第1電池11の電圧値を検出し、第3センサ63は、第2電池12の電圧値を検出する。第1センサ61で検出された電圧値、および第3センサ63で検出された電圧値はコントローラ80に出力される。コントローラ80は、第1センサ61からの電圧値、および第3センサ63からの電圧値に基づいて、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値とを推定する。そして、コントローラ80は、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値とに基づいて、後述の第1スイッチ51および第2スイッチ52を制御する。なお、変形例として、コントローラ80は、第1センサ61で検出された電圧値、および第3センサ63で検出された電圧値に基づいて、後述の第1スイッチ51および第2スイッチ52を制御するようにしてもよい。
【0018】
電池管理装置100は、さらに、第1配線21と、第2配線22と、第3配線23と、第1端子41と、第2端子42と、第3端子43とを備える。電池群10は、第1端子41、第2端子42、および第3端子43を介して、基板160と接続される。
【0019】
第1配線21の一端は第1電池11の正極端子に接続されており、第1配線21の他端は、第1端子41を介して基板160に接続される。第2配線22の一端は第1電池11の負極端子および第2電池12の正極端子に接続されており、第2配線22の他端は、第2端子42を介して基板160に接続される。第3配線23の一端は第2電池12の負極端子に接続されており、第3配線23の他端は、第3端子43を介して基板160に接続される。また、第1配線21には第1抵抗素子31が配置され、第2配線22には第3抵抗素子33が配置され、第3配線23には第5抵抗素子35が配置される。
【0020】
基板160は、第1端子81と、第2端子82と、第3端子83と、第4端子84と、第5端子85と、第6端子86と、第1配線111と、第2配線112と、第3配線113と、第4配線114と、第5配線115と、第6配線116とを備える。さらに、基板160には、計測回路150が搭載される。
【0021】
第1配線111の一端は第1端子41に接続され第1配線111の他端は第1端子81を介して計測回路150に接続される。第2配線112の一端は第1端子41に接続され第2配線112の他端は第2端子82を介して計測回路150に接続される。第3配線113の一端は第2端子42に接続され第3配線113の他端は第3端子83を介して計測回路150に接続される。第4配線114の一端は第2端子42に接続され第4配線114の他端は第4端子84を介して計測回路150に接続される。第5配線115の一端は第3端子43に接続され第5配線115の他端は第5端子85を介して計測回路150に接続される。第6配線116の一端は第3端子43に接続され第6配線116の他端は第6端子86を介して計測回路150に接続される。
【0022】
基板160は、さらに、第2抵抗素子32と、第4抵抗素子34と、第6抵抗素子36と、第7抵抗素子37と、第8抵抗素子38と、第9抵抗素子39と、第1コンデンサ91と、第2コンデンサ92と、第3コンデンサ93と、第4コンデンサ94とを備える。
【0023】
第2抵抗素子32は、第2配線112に配置される。第4抵抗素子34は、第4配線114に配置される。第6抵抗素子36は、第6配線116に配置される。第7抵抗素子37は、第1配線111に配置される。第8抵抗素子38は、第3配線113に配置される。第9抵抗素子39は、第5配線115に配置される。
【0024】
計測回路150は、第1センサ61と、第2センサ62と、第3センサ63と、第4センサ64と、第1スイッチ51と、第2スイッチ52とを有する。第1センサ61と、第2センサ62と、第1スイッチ51とは、第1電池11に対応する。第3センサ63と、第4センサ64と、第2スイッチ52とは、第2電池12に対応する。第1センサ61、第2センサ62、第3センサ63、および第4センサ64は、電圧値を検出する。この電圧値については後述する。また、第1センサ61および第3センサ63は、「主センサ」とも称され、第2センサ62および第4センサ64は、「副センサ」とも称される。
【0025】
第7抵抗素子37および第8抵抗素子38と、第1コンデンサ91とにより第1センサ61のRCフィルタが構成される。第2抵抗素子32および第4抵抗素子34と、第2コンデンサ92とにより第2センサ62のRCフィルタが構成される。第8抵抗素子38および第9抵抗素子39と、第3コンデンサ93とにより第3センサ63のRCフィルタが構成される。第4抵抗素子34および第6抵抗素子36と、第4コンデンサ94とにより第4センサ64のRCフィルタが構成される。このように、各センサについて、RCフィルタが構成されることにより、各センサに入力されるノイズは低減される。
【0026】
また、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値との差分値が大きい状態において、第1電池11および第2電池12が充電または放電される場合がある。この場合に充電では、容量が多い方の電池が先に満充電され、容量の少ない電池は容量の差分値だけ満充電されない。また、放電では、容量の少ない方の電池が先に容量がゼロになり、容量の多い電池も含めてこれ以上は放電されない。すなわち、容量の差分値だけ使用できる電池容量値が減少する事象が発生し好ましくない。したがって、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値との差分値は小さいことが好ましい。
【0027】
そこで、電池管理装置100は、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値との差分値が容量閾値よりも大きい場合には、容量値が多い方の電池を放電させる。具体的には、コントローラ80は、第1電池11の容量値と、第2電池12の容量値との差分値が容量閾値より大きい場合には、容量値が多い方の電池に対応するスイッチを導通状態(オン状態)に制御する。また、コントローラ80は、容量値が少ない方の電池に対応するスイッチを非導通状態(オフ状態)に制御する。
【0028】
具体的には、差分値が容量閾値よりも大きい場合において、第1電池11の容量値が第2電池12の容量値より大きい場合には、コントローラ80は、第1スイッチ51を導通状態に制御し第2スイッチ52を非導通状態に制御する。この制御により、第1抵抗素子31、第2抵抗素子32、第3抵抗素子33、および第4抵抗素子34で、第1電池11の電力(容量)を消費させることができる。
【0029】
また、差分値が容量閾値よりも大きい場合において、第2電池12の容量値が第1電池11の容量値より大きい場合には、コントローラ80は、第2スイッチ52を導通状態に制御し第1スイッチ51を非導通状態に制御する。この制御により、第3抵抗素子33、第4抵抗素子34、第5抵抗素子35、および第6抵抗素子36で、第2電池12の電力(容量)を消費させることができる。
【0030】
図2は、第1スイッチ51が導通状態である場合を説明するための図である。この場合とは、差分値が容量閾値よりも大きい場合において、第1電池11の容量値が第2電池12の容量値より大きい場合である。
図2の矢印αは、第1電池11の電流の流れを示す。また、
図2の例では、第1抵抗素子31、第3抵抗素子33、および第5抵抗素子35の抵抗値はそれぞれ同一であり10Ωである。また、第2抵抗素子32、第4抵抗素子34、および第6抵抗素子36の抵抗値はそれぞれ同一であり5Ωである。また、第7抵抗素子37、第8抵抗素子38、および第9抵抗素子39の抵抗値はそれぞれ同一であり1kΩである。
【0031】
第1スイッチ51が導通状態である場合には、第1電池11からの電流は、矢印αに示すように、主に、第1抵抗素子31、第2抵抗素子32、第1スイッチ51、第4抵抗素子34、および第3抵抗素子33の順序で流れる。このように、電池管理装置100において、第1スイッチ51が導通状態になった場合には、第1電池の電力(容量)は、配線(第1配線21および第2配線22)上の抵抗素子(第1抵抗素子31、第3抵抗素子33)と、基板160上の抵抗素子(第2抵抗素子32、第4抵抗素子34)とで消費される。換言すれば、電池管理装置100においては、電力を消費させる(放電させる)抵抗素子は、配線と基板とで分割されている。
【0032】
たとえば、第1電池11の電圧値が4.2Vである場合には、第1電池11の電流値は以下の式(1)により表される。
【0033】
4.2V/(10Ω+5Ω+5Ω+10Ω)=0.14A (1)
式(1)の左辺の分母は、第1抵抗素子31、第2抵抗素子32、第4抵抗素子34、および第3抵抗素子33の抵抗値の合計値(=30Ω)である。
【0034】
第1スイッチ51が導通状態であるときにおいて、第1センサ61は、第1抵抗素子31および第3抵抗素子33で電圧低下した第1電池11の電圧値(以下、「第1電圧値」とも称される。)を検出する。つまり、第1電圧値は以下の式(2)で表される。
【0035】
第1電圧値=4.2V-(20Ω×0.14A)=1.4V (2)
また、第2センサ62は、第1抵抗素子31~第4抵抗素子34で電圧低下した第1電池11の電圧値(以下、「第2電圧値」とも称される。)を検出する。つまり、第2電圧値は以下の式(3)で表される。
【0036】
第2電圧値=4.2V-(30Ω×0.14A)=0V (3)
第1センサ61および第2センサ62で検出された電圧値は、第1スイッチ51を導通状態であるか否かに関わらず、コントローラ80に出力される。コントローラ80は、第1スイッチ51を導通状態に制御している状態において、第1電圧値と第2電圧値との差分値が電圧閾値より大きい場合には、正常であると判断する。一方、コントローラ80は、第1スイッチ51を導通状態に制御している状態において、第1電圧値と第2電圧値との差分値が電圧閾値未満である場合(たとえば、第1電圧値と第2電圧値と同一である場合)には、異常が発生したと判断する。該異常は、たとえば、第1スイッチ51または第1抵抗素子31~第4抵抗素子34の異常などを含む。なお、この差分値が電圧閾値と同一である場合には、コントローラ80は、異常であると判断してもよく、正常であると判断してもよい。
【0037】
また、第1スイッチ51が非導通状態である場合において、電池管理装置100が正常である場合には、矢印αの電流は流れない。よって、コントローラ80は、第1スイッチ51を導通状態に制御している状態において、第1センサ61からの出力値と第2センサ62からの出力値との差分値が電圧閾値より小さい場合には、正常であると判断する。一方、第1スイッチ51が非導通状態である場合において第1センサ61からの出力値と第2センサ62からの出力値との差分値が電圧閾値より大きい場合には、異常であると判断する。この異常は、たとえば、第1スイッチ51が非導通状態であるにもかかわらず、矢印α方向に後述のリーク電流が流れるという異常を含む。なお、この差分値が電圧閾値と同一である場合には、コントローラ80は、異常であると判断してもよく、正常であると判断してもよい。
【0038】
また、第2スイッチ52が導通状態に制御された場合であっても、第1スイッチ51が導通状態に制御された場合と同様の処理が実行される。
【0039】
次に、本実施の形態の電池管理装置100と、比較例の電池管理装置の対比結果を説明する。
図3は、第1比較例の電池管理装置100Aの構成を示す図である。なお、
図3の例では、配線上の抵抗素子(第1抵抗素子31、第3抵抗素子33、第5抵抗素子35)が配置されていない点で、
図1とは異なる。また、
図1の第2抵抗素子32と、第4抵抗素子34と、第6抵抗素子36とのそれぞれに対応する抵抗素子として、
図3では、第2抵抗素子32Aと、第4抵抗素子34Aと、第6抵抗素子36Aとが記載されている。また、第1スイッチ51または第2スイッチ52が導通状態になった場合において、第1電池11または第2電池12の消費電力を、電池管理装置100と同一とするために、第2抵抗素子32Aと、第4抵抗素子34Aと、第6抵抗素子36Aとの抵抗値は、15Ωとされている。
【0040】
ここで、電池管理装置100Aにおいて、上述の式(1)でも表したように、第1電池11の電圧値が4.2Vである場合には第1電池11の電流値は0.14Aとなる。また、電池管理装置100Aにおいて、第1スイッチ51が導通状態となると、第2抵抗素子32Aおよび第4抵抗素子34Aで電力が消費される。そして、第2抵抗素子32Aおよび第4抵抗素子34Aでの発熱量は、以下の式(4)により表される。
【0041】
0.14A×0.14A×30Ω=0.588W (4)
このように、電池管理装置100Aにおいては、電力が消費される抵抗素子の全てが基板160に配置されている。また、第1電池11の大型化により該第1電池11の電流値が大きくなると、第2抵抗素子32Aおよび第4抵抗素子34Aでの発熱量はさらに大きくなる。したがって、高い耐熱性の基板160が必要とされ、電池管理装置100Aの高コスト化を招く。
【0042】
これに対し、電池管理装置100においては、電力を消費させる(放電させる)抵抗素子は、
図1に示すように、配線と基板とで分割されている。したがって、電池管理装置100において第1スイッチ51が導通状態になった場合には、配線上の抵抗素子の発熱量、および基板160上の抵抗素子の発熱量は、それぞれ、以下の式(5)、(6)により表される。
【0043】
0.14A×0.14A×20Ω=0.392W (5)
0.14A×0.14A×10Ω=0.196W (6)
上記式(4)および上記式(6)からも明らかなように、電池管理装置100は、基板160での発熱量を電池管理装置100Aの1/3とすることができる。したがって、高い耐熱性の基板160が必要とされないことから、電池管理装置100のコストを抑制できる。
【0044】
また、
図3の第1比較例の電池管理装置100Aの問題点(基板160での発熱量が多くなる点)を解消するために、第2抵抗素子32Aと、第4抵抗素子34Aと、第6抵抗素子36Aとを配線に配置させる構成が考えられる。
図4は、この構成が採用された第2比較例の電池管理装置100Bの構成を示す図である。
【0045】
第2比較例の電池管理装置100Bでは、第1電池11の正極端子からの配線は、2本の配線として構成されている。この2本の配線のうち、一方の配線は第1センサ61が電圧値を計測する配線であり、他方の配線は第2センサ62が電圧値を計測する配線である。したがって、電池管理装置100Bにおいては、6本の配線が必要となり、結果として、6つの端子(第1端子41B、第2端子42B、第3端子43B、第4端子44B、第5端子45B、第6端子46B)が必要となる。したがって、基板160の高コスト化を招く。
【0046】
これに対し、電池管理装置100においては、第1センサ61が電圧値を計測する配線の一部と、第2センサ62が電圧値を計測する配線の一部と、第1抵抗素子31が配置される配線が第1配線21として兼用される。したがって、電池管理装置100は、当該第1配線21に対応して、1つの端子(第1端子41)のみを有していればよく、
図4の電池管理装置100Bのように2つの端子を必要としない。したがって、電池管理装置100Bと比較して、電池管理装置100においては、基板160のコストを抑制できる。
【0047】
また、
図4の第2比較例の電池管理装置100Bの問題点(端子の数が多くなる点)を解消するために、第1センサ61が電圧値を検出する配線と、第2センサ62が電圧値を検出する配線とを兼用する構成が考えられる。
図5は、この構成が採用された第3比較例の電池管理装置100Cの構成を示す図である。
【0048】
第3比較例の電池管理装置100Cでは、第1センサ61が電圧値を検出する配線と、第2センサ62が電圧値を検出する配線とにおいて、第1スイッチ51がオンされたときに電圧低下する値は同一となる。したがって、第1スイッチ51が導通状態になったときまたはリーク電流が流れたときなどにおいても、第1センサ61および第2センサ62が検出する電圧値は同一となる。したがって、電池管理装置100Cは、異常を検出することができない。
【0049】
これに対し、第1センサ61が電圧値を検出する配線と、第2センサ62が電圧値を検出する配線とで、抵抗値は異なる(上記式(2)および(3)参照)。)。したがって、電池管理装置100は、異常を適切に検出することができる。
【0050】
また、第1端子41と第2端子42との短絡が発生した場合であっても、第1抵抗素子31は、故障しないように構成されている。具体的には、第1抵抗素子31の抵抗値R1は、第1抵抗素子31の抵抗値と第3抵抗素子33の抵抗値との比率rで第1電池11の最高電圧値Vmが比例配分された値の2乗値が、該第1抵抗素子の定格電力値Pmで除算された値以上とされることが好ましい。つまり、以下の式(7)により、第1抵抗素子31の抵抗値R1は表される。
【0051】
【0052】
比率rは、第1端子41と第2端子42との短絡が発生した場合に、第1電池11の電圧が、第1抵抗素子31と第3抵抗素子33とで分圧されることに起因する値である。また、
図2の例では、第1抵抗素子31と、第3抵抗素子33とは抵抗値は同一であることから、比率r=1/2となる。第1電池11の最高電圧値Vmは、たとえば、第1電池11が満充電されているときの電圧値であり、たとえば、Vm=4.2Vであるとする。第1抵抗素子31の定格電力値は0.5Wであるとする。この場合には、式(7)にこれらの数値が代入されることにより、第1抵抗素子31の抵抗値R1は、8.82Ω以上であることが好ましいことが示される。なお、上記式(7)においては、製造やメンテナンス等で意図しない短時間の短絡を想定しているためディレーティングは考慮されていない。
【0053】
第1抵抗素子31の抵抗値が、上記式(7)を満たしていれば、第1端子41と第2端子42との短絡が発生した場合であっても、第1抵抗素子31が故障することを抑制できる。したがって、第1端子41および第2端子42が短絡したときに作動する装置(たとえば、ヒューズ)を必要とせずに、電池管理装置100のコストを低減できる。
【0054】
また、
図1の電池管理装置100によれば、第1比と第2比とは同一である。なお、本開示の「同一」は、「完全同一」のみならず、「略同一」も含む。
【0055】
第1比は、第1配線21および第2配線22での放熱量の合計量と基板160での放熱量との比である。第1配線21および第2配線22での放熱量の合計量は、式(5)の例では、0.392Wである。また、基板160での放熱量は式(6)の例では、0.196Wである。つまり、第1比は、2:1となる。
【0056】
また、第2比は、第1抵抗素子31および第3抵抗素子33の抵抗値の合計量(20Ω)と、第2抵抗素子32および第4抵抗素子34の抵抗値の合計量(10Ω)との比である。つまり、第2比も2:1となり、第1比と第2比とは同一である。
【0057】
また、第1比と第2比とは同一であることから、たとえば、電池管理装置100の設計者は、配線(第1配線21および第2配線22)の発熱許容量と、基板160の発熱許容量とを確認し、これらの比率(第1比に対応)に基づいて、第1抵抗素子31~第4抵抗素子34の抵抗値を決定することができる。
【0058】
また、第1比は、第1配線21での発熱量と基板160での発熱量との比としてもよい。また、第2比は、第1抵抗素子31の抵抗値と第2抵抗素子32の抵抗値との比としてもよい。
【0059】
また、基板160などの異常(故障)が発生したときに、リーク電流が発生する場合がある。このリーク電流と判断される最小電流値を1mAとした場合、上記式(2)および式(3)に示すように、第1センサ61は、第1電池11の実際の電圧より20mV(=1mA×20Ω)低下した値を検出する。また、第2センサ62は、第1電池11の実際の電圧より30mV(=1mA×30Ω)低下した値を検出する。したがって、第1センサ61が検出する電圧値と、第1センサ61が検出する電圧値との差分値は10mVとなる。
【0060】
当該差分値が10mVである場合には、第1センサ61での低下電圧値は20mVである可能性がある。そして、この20mVが第1センサ61による電圧測定精度としての許容誤差(公差)であるとした場合には、上述の電圧閾値は10mVに設定される。
【0061】
以上により、電池管理装置100においては、第1センサ61の許容誤差と当該電圧閾値との比と、第1抵抗素子の抵抗値(=10Ω)と第2抵抗素子の抵抗値(5Ω)との比とは同一とされている。したがって、たとえば、電池管理装置100の設計者は、第1センサ61の許容誤差と当該電圧閾値との比に基づいて、第1抵抗素子31および第2抵抗素子32の抵抗値を決定することができる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
11 第1電池、21 第1配線、31 第1抵抗素子、32 第2抵抗素子、51 第1スイッチ、160 基板。