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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067340
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ケーブル操作装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/14 20060101AFI20240510BHJP
   F16C 1/22 20060101ALI20240510BHJP
   F16C 1/10 20060101ALI20240510BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240510BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20240510BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20240510BHJP
【FI】
F16C1/14
F16C1/22 A
F16C1/10 F
B60J5/04 H
E05B79/20
E05B79/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177330
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】今川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】三枝 修平
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
【テーマコード(参考)】
2E250
3J032
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ42
2E250LL01
2E250PP13
2E250QQ08
2E250QQ09
3J032AB09
3J032AB21
3J032BC02
3J032BC06
(57)【要約】
【課題】設置スペースを小さくしつつ、操作力を適切に伝達可能なコントロールケーブルに対して、操作力を適切に与えることができるケーブル操作装置を提供する。
【解決手段】ケーブル操作装置Dであって、筒状体1b及びインナーケーブル1cの突出方向に沿って延びる案内溝6を有する本体部材2と、インナーケーブル1cが挿通される挿通孔、挿通孔の周囲に形成される縁部及び案内溝6に嵌合する被嵌合部を有する押出部材7とを備え、押出部材7は、操作者の操作力に応じて、押出部材7の被嵌合部が案内溝6に沿って一方及び他方へ直線移動するように変位し、押出部材7が一方へ変位する際に、押出部材7の縁部が筒状体1bの端部9に当接してその端部9をアウターケーシング1aの方へ押し込むように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールケーブルに操作力を与えるケーブル操作装置であって、
前記コントロールケーブルは、管状のアウターケーシングと、前記アウターケーシングに覆われ、操作力を伝達する筒状体と、前記筒状体の内側空間に配置されるインナーケーブルとを備え、前記筒状体及び前記インナーケーブルの夫々は独立して軸方向に摺動可能であり、
前記アウターケーシングを固定する固定部と、前記筒状体及び前記インナーケーブルの突出方向に沿って延びる案内溝とを有する本体部材と、
前記インナーケーブルが挿通される挿通孔と、前記挿通孔の周囲に形成される縁部と、前記案内溝に嵌合する被嵌合部とを有する押出部材と、を備え、
前記筒状体及び前記インナーケーブルは、前記固定部によって固定されている部分又はその近傍の前記アウターケーシングから直線状に突出し、
前記押出部材は、操作者の操作力に応じて、前記押出部材の被嵌合部が前記案内溝に沿って一方及び他方へ直線移動するように変位し、
前記押出部材が一方へ変位する際に、前記押出部材の前記縁部が前記筒状体の端部に当接して当該端部を前記アウターケーシングの方へ押し込むように構成されているケーブル操作装置。
【請求項2】
前記操作者が前記操作力を与えるために操作する第1操作部材と、
前記操作者によって前記第1操作部材に与えられた前記操作力を前記押出部材に伝達するリンク機構とを有する請求項1に記載のケーブル操作装置。
【請求項3】
前記第1操作部材は、前記本体部材に対して揺動軸周りに揺動可能に取り付けられ、
前記リンク機構は、
第1リンク部材と第2リンク部材とを有し、
前記第1リンク部材の一端は、前記押出部材に対して、前記押出部材の端部同士を結ぶ第1軸周りに互いに回転可能に取り付けられ、
前記第1リンク部材の他端は、前記第2リンク部材の一端に対して、前記第1軸と平行な第2軸周りに互いに回転可能に取り付けられ、
前記第2リンク部材の他端は、前記第1操作部材に対して、前記第2軸と平行な第3軸周りに回転可能に取り付けられ、
前記第3軸は前記揺動軸と平行である請求項2に記載のケーブル操作装置。
【請求項4】
前記インナーケーブルと連結され、前記インナーケーブルを前記固定部に向けて押し込む方向及び前記固定部から引き出す方向に前記操作者が操作する第2操作部材を備える請求項1~3の何れか一項に記載のケーブル操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブルに操作力を与えるケーブル操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などの車両のドアには、ドアを車体に留めるためのラッチ機構と、そのラッチ機構の動作をロックするためのロック機構とを備えるラッチ装置が設けられる。その場合、車両のドアの車室側には、乗員が操作できるラッチ操作部及びロック操作部が設けられる。そして、乗員は、ラッチ機構に対してラッチ用ケーブルを用いて接続されたラッチ操作部を操作することで、ドアを開操作することができる。また、乗員は、ロック機構に対してロック用ケーブルを用いて接続されたロック操作部を操作することで、ラッチ機構の動作をロック実行状態及びロック解除状態に切り替えることができる。
【0003】
このように、乗員が操作できるラッチ操作部及びロック操作部という二つの操作部が設けられている場合には、その操作力を伝達するために、ラッチ用ケーブル及びロック用ケーブルという2本のケーブルが必要になる。そのため、ドアの内部に2本のケーブルを配策するスペースを確保するために、ドアの内部の構造やドアのデザインなどに制約が生じるという課題がある。
【0004】
特許文献1(特開平7-269203号公報)には、アウターチューブ内にインナーケーブルが設けられたコントロールケーブル及びそのコントロールケーブルに操作力を与えるケーブル操作装置が記載されている。このコントロールケーブルにおいて、インナーケーブルは軸方向に移動自在であり、乗員が操作するオープンレバー(ケーブル操作装置)とラッチ機構との間を連結して、乗員によるドアの開操作の操作力を伝達するために用いられる。アウターチューブはインナーケーブルの周りで回動可能であり、ドアロック用のノブ(ケーブル操作装置)とロック機構との間を連結して、乗員によるドアロックの実施操作及び解除操作の操作力を伝達するために用いられる。このように、特許文献1に記載のコントロールケーブルは、ラッチ用及びロック用のケーブルが1本の部材で構成されているため、ドアの内部の構造やドアのデザインなどに対する制約が小さくなるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-269203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコントロールケーブルは、アウターチューブの回動をロック機構に伝達する構造になっている。コントロールケーブルの配索を容易にするためにはアウターチューブを柔軟にする必要があるが、特許文献1に記載のコントロールケーブルのアウターチューブを柔軟にした場合、その回動がロック機構に伝わり難くなる。また、アウターチューブが他の部材に接触している場合も、その回動がロック機構に伝わり難くなる。つまり、乗員の操作力の伝達が適切に行われないことが想定される。そのため、特許文献1に記載のコントロールケーブルは、操作者の操作力を適切に伝達するという目的を達成するには不十分である。
【0007】
尚、設置スペースを小さくしつつ、操作力を適切に伝達可能なコントロールケーブルを実現できたとしても、そのコントロールケーブルに操作力を与えるケーブル操作装置を実現することは困難である。例えば、単純に2本のケーブルを並列に束ねて1本にすることで、設置スペースを小さくできるコントロールケーブルは実現できる。但し、2本のケーブル同士の距離が近いままでは各別に操作力を与えることはできないため、ケーブル操作装置の部分では2本のケーブル同士の間隔を空けた上で、即ち、2本のケーブルの夫々の向きを異ならせた上で、2本のケーブルに対して互いに異なる方向に沿って押し込む又は引き出すなどする操作力を与えることになる。つまり、ケーブル操作装置がそれら2本のケーブル(第1ケーブル及び第2ケーブル)に対して各別に操作力を与えるためには、第1ケーブルに対して第1方向に沿って押し込む又は引き出すなどする操作力を与え、第2ケーブルに対して、第1方向とは別の第2方向に沿って押し込む又は引き出すなどする操作力を与えることになる。そのため、例えば、ケーブル操作装置が第1ケーブルに対して第1方向に沿って押し込む又は引き出すなどする操作力を与えると、それにつられて第2ケーブルは意図せずに第2方向とは別の方向を向いてしまい、所謂、ケーブルの首振りが発生してしまう。そして、第2方向とは別の方向に向けられている第2ケーブルに対して、第2方向に沿って押し込む又は引き出すなどを行おうとしても、その操作力を適切に与えることができないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、設置スペースを小さくしつつ、操作力を適切に伝達可能なコントロールケーブルに対して、操作力を適切に与えることができるケーブル操作装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るケーブル操作装置の特徴構成は、コントロールケーブルに操作力を与えるケーブル操作装置であって、
前記コントロールケーブルは、管状のアウターケーシングと、前記アウターケーシングに覆われ、操作力を伝達する筒状体と、前記筒状体の内側空間に配置されるインナーケーブルとを備え、前記筒状体及び前記インナーケーブルの夫々は独立して軸方向に摺動可能であり、
前記アウターケーシングを固定する固定部と、前記筒状体及び前記インナーケーブルの突出方向に沿って延びる案内溝とを有する本体部材と、
前記インナーケーブルが挿通される挿通孔と、前記挿通孔の周囲に形成される縁部と、前記案内溝に嵌合する被嵌合部とを有する押出部材と、を備え、
前記筒状体及び前記インナーケーブルは、前記固定部によって固定されている部分又はその近傍の前記アウターケーシングから直線状に突出し、
前記押出部材は、操作者の操作力に応じて、前記押出部材の被嵌合部が前記案内溝に沿って一方及び他方へ直線移動するように変位し、
前記押出部材が一方へ変位する際に、前記押出部材の前記縁部が前記筒状体の端部に当接して当該端部を前記アウターケーシングの方へ押し込むように構成されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、コントロールケーブルは、インナーケーブルが筒状体の内側の空間に挿通された構造の1本の部材で構成されるため、設置スペースが小さくて済むという利点がある。また、例えば2本のケーブルを並列に束ねたような構造ではなく、インナーケーブルが筒状体の内側の空間に挿通された同軸状の構造になっているため、どのような方向にも容易に曲げることができる。その結果、例えば狭い場所にコントロールケーブルを曲げた状態で設置することもできる。また、アウターケーシングを柔軟にしたとしても操作力が伝わり難くなることはない。更に、インナーケーブル及び筒状体は管状のアウターケーシングに覆われているため、アウターケーシングが他の部材に接触しても、インナーケーブル及び筒状体の軸方向の摺動が阻害されることはない。その結果、コントロールケーブルは、インナーケーブル及び筒状体に加えられた操作力を適切に伝達できる。
【0011】
また、押出部材は、操作者の操作力に応じて、押出部材の被嵌合部が案内溝に嵌って一方及び他方に直線移動するように変位する。加えて、操作者の操作力に応じて押出部材が一方へ変位する際に、インナーケーブルが挿通孔に挿通された状態で、押出部材の縁部が筒状体の端部に当接してその端部をアウターケーシングの方へ押し込むように構成されている。つまり、操作者の操作力に応じて押出部材が変位し、押出部材と筒状体とが当接したとしても、押出部材とインナーケーブルとが干渉することが抑制される。このように、操作者の操作力に応じて押出部材が変位したとしても、インナーケーブルにはその操作力が作用しないようにしながら、筒状体には操作力が適切に与えられる。
従って、設置スペースを小さくしつつ、操作力を適切に伝達可能なコントロールケーブルに対して、操作力を適切に与えることができるケーブル操作装置を提供できる。
【0012】
本発明に係るケーブル操作装置の別の特徴構成は、前記操作者が前記操作力を与えるために操作する第1操作部材と、
前記操作者によって前記第1操作部材に与えられた前記操作力を前記押出部材に伝達するリンク機構とを有する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、第1操作部材に与えられた操作者による操作力をリンク機構を介して押出部材に伝達することができる。
【0014】
本発明に係るケーブル操作装置の更に別の特徴構成は、前記第1操作部材は、前記本体部材に対して揺動軸周りに揺動可能に取り付けられ、
前記リンク機構は、
第1リンク部材と第2リンク部材とを有し、
前記第1リンク部材の一端は、前記押出部材に対して、前記押出部材の端部同士を結ぶ第1軸周りに互いに回転可能に取り付けられ、
前記第1リンク部材の他端は、前記第2リンク部材の一端に対して、前記第1軸と平行な第2軸周りに互いに回転可能に取り付けられ、
前記第2リンク部材の他端は、前記第1操作部材に対して、前記第2軸と平行な第3軸周りに回転可能に取り付けられ、
前記第3軸は前記揺動軸と平行である点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、操作者が第1操作部材に与えた揺動軸周りの揺動を、リンク機構が有する第1リンク部材及び第2リンク部材を介して、押出部材に伝達することができる。
【0016】
本発明に係るケーブル操作装置の更に別の特徴構成は、前記インナーケーブルと連結され、前記インナーケーブルを前記固定部に向けて押し込む方向及び前記固定部から引き出す方向に前記操作者が操作する第2操作部材を備える点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、操作者の操作力に応じて押出部材が変位したとしてもインナーケーブルにはその操作力が作用しないため、操作者が第2操作部に与えた操作力によってインナーケーブルを固定部に向けて押し込むこと及び固定部から引き出すことが適切に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用ドアにコントロールケーブルが設けられた状態を説明する図である。
図2】コントロールケーブルの構造を示す図である。
図3】ケーブル操作装置の具体例を示す図である。
図4】ケーブル操作装置の具体例を示す図である。
図5】ケーブル操作装置の構成部品を示す図である。
図6】押出部材を示す図である。
図7】ケーブル操作装置の構成部品を示す図である。
図8】リンク機構の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、車両用ドア25にコントロールケーブル1が設けられた状態を示す図である。
図示するように、車両用ドア25には、その車両用ドア25を車体(図示せず)に留めるためのラッチ機構31と、そのラッチ機構31の動作をロックするためのロック機構32とを備えるラッチ装置30が設けられる。その場合、車両用ドア25の車室側には、乗員などの操作者が操作できるケーブル操作装置Dが設けられる。ラッチ装置30とケーブル操作装置Dとがコントロールケーブル1によって接続されているため、操作者がケーブル操作装置Dにおいて行った操作はコントロールケーブル1を介してラッチ装置30に伝達される。例えば、操作者は、ラッチ機構31を動作させて、車両用ドア25を開操作することができる。また、操作者は、ケーブル操作装置Dを操作することでロック機構32を動作させて、ラッチ機構31の動作をロック実行状態及びロック解除状態に切り替えることができる。
【0020】
図2は、コントロールケーブル1の構造を示す図である。図示するように、コントロールケーブル1は、管状のアウターケーシング1aと、アウターケーシング1aに覆われ、操作力を伝達する筒状体の一例としてのスプリングケーブル1bと、スプリングケーブル1bの内側空間に配置されるインナーケーブル1cとを備える。つまり、インナーケーブル1cの周囲はスプリングケーブル1bによって取り囲まれている。スプリングケーブル1b及びインナーケーブル1cの夫々は独立して軸方向に摺動可能である。
【0021】
本実施形態のインナーケーブル1cは1本の金属線で構成され、押し引き操作力を伝達するプッシュプルケーブルとして用いられる。インナーケーブル1cを1本の金属線で構成することで、インナーケーブル1cの剛性を高めることができる。その結果、インナーケーブル1cに加えられた操作をより確実に伝達できる。
尚、インナーケーブル1cを複数の金属線を有するより線で構成してもよい。インナーケーブル1cを複数の金属線を有するより線で構成することで、例えば折り曲げられるなどしても断線し難くなる。
【0022】
本実施形態において、インナーケーブル1cの周囲を取り囲む筒状体は、素線が内部に空間を空けて螺旋状に巻回されたスプリングケーブル1bで構成される。スプリングケーブル1bを構成する素線は金属製又は樹脂製などの線条体であり、その素線を螺旋状に巻回して形成される。スプリングケーブル1bは、押し操作力を伝達するプッシュケーブルとして用いられる。
【0023】
このように、コントロールケーブル1は、インナーケーブル1cがスプリングケーブル1bの内部の空間に挿通された構造の1本の部材で構成されるため、設置スペースが小さくて済むという利点がある。また、例えば2本のケーブルを並列に束ねたような構造ではなく、インナーケーブル1cがスプリングケーブル1bの内部の空間に挿通された同軸状の構造になっているため、どのような方向にも容易に曲げることができる。その結果、例えば狭い場所にコントロールケーブル1を曲げた状態で設置することもできる。
【0024】
更に、インナーケーブル1c及びスプリングケーブル1bは管状のアウターケーシング1aに覆われているため、アウターケーシング1aが他の部材に接触しても、インナーケーブル1c及びスプリングケーブル1bの軸方向の摺動が阻害されることはない。その結果、コントロールケーブル1は、インナーケーブル1c及びスプリングケーブル1bに加えられた操作力を適切に伝達できる。
【0025】
例えば、後述するように、スプリングケーブル1bの一端はラッチ機構31に接続され、スプリングケーブル1bの他端は操作者が操作できる第1操作部材10と間接的に接続される。そして、操作者が、第1操作部材10によってスプリングケーブル1bを操作することで、車両用ドア25を開操作することができる。
【0026】
また、インナーケーブル1cの一端はラッチ機構31の動作をロックするためのロック機構32に接続され、インナーケーブル1cの他端は操作者が操作できる第2操作部材13に接続される。そして、操作者が、第2操作部材13によってインナーケーブル1cを操作することで、ラッチ機構31の動作をロック実行状態及びロック解除状態に切り替えることができる。
【0027】
スプリングケーブル1bをラッチ機構31と接続し、インナーケーブル1cをロック機構32と接続する場合、インナーケーブル1cがスプリングケーブル1bの内部の空間に挿通された同軸状の構造になる。この場合、スプリングケーブル1bを切断しない限り、インナーケーブル1cを切断することができず、ロック機構32に接続される側のインナーケーブル1cのみを切断することができないため、車両用ドア25のコントロールケーブル1を切断しての車両の盗難を防止することができる。
【0028】
図3及び図4は、コントロールケーブル1及びそのコントロールケーブル1に操作力を与えるケーブル操作装置Dの具体例を示す図である。図3はケーブル操作装置Dを表側面、即ち、操作者が操作可能な車室側から見た図である。図4はケーブル操作装置Dを裏側面、即ち、操作者が操作不能な車両用ドア25の内部側から見た図である。図5図7には、ケーブル操作装置Dの構成部品を示す。図8は各構成部品の動きを説明する図である。
【0029】
図中には、互いに直交する3つの方向であるX方向、Y方向及びZ方向を記載している。X方向については、一方側をX1方向とし、他方側をX2方向としている。Y方向については、一方側をY1方向とし、他方側をY2方向としている。Z方向については、一方側をZ1方向とし、他方側をZ2方向としている。例えば、X方向は車両の前後方向に沿う方向であり、Y方向は鉛直方向に沿う方向であり、Z方向は車両用ドア25の厚さ方向に沿う方向である。X-Y面は、車両用ドア25の車室側のパネル平面に沿う面である。
【0030】
ケーブル操作装置Dは、本体部材2と押出部材7とを備える。本体部材2は、アウターケーシング1aを固定する固定部3と、スプリングケーブル1b及びインナーケーブル1cの突出方向に沿って延びる案内溝6とを有する。図6に示すように、押出部材7は、インナーケーブル1cが挿通される挿通孔7aと、挿通孔7aの周囲に形成される縁部7bと、案内溝6に嵌合する被嵌合部7cとを有する。スプリングケーブル1b及びインナーケーブル1cは、固定部3によって固定されている部分又はその近傍のアウターケーシング1aからX1方向へ直線状に突出する。縁部7bは、挿通孔7aの開口部の周囲を取り囲む環状に形成されている。
【0031】
図7に示すように、本体部材2は板状部材4を用いて構成される。本体部材2には、固定部3と、延出部5と、ガイド14とが設けられる。延出部5には案内溝6が形成される。延出部5はX方向に沿って延びている。案内溝6はX方向に延びる溝であり、その案内溝6に嵌った部材がX方向に沿って移動するように案内する。ガイド14は、Z方向に沿って延びる溝で構成され、そのガイド14に嵌った部材がZ方向に沿って移動するように案内する。
【0032】
延出部5は内部が中空の直方体形状になっており、Z1方向に向いた面が開放されている。延出部5において、X1方向に向いた面に切欠(固定部3)が形成されて、その切欠にコントロールケーブル1が挟まれることでコントロールケーブル1のアウターケーシング1aの固定が行われる。そして、延出部5の内部空間にスプリングケーブル1b及びインナーケーブル1cが引き出される。延出部5において、固定部3に相対する面、即ち、X2方向に向いた面にはインナーケーブル1cが挿通される切欠が形成され、その切欠を通してインナーケーブル1cは延出部5の外部へ引き出される。そして、後述するように、インナーケーブル1cは第2操作部材13の連結部13aに連結される。
【0033】
延出部5において、Y1方向に向いた面及びY2方向に向いた面のそれぞれに、X方向に沿って延びる一対の溝(案内溝6)が設けられる。尚、図7に示す例では案内溝6は一対の溝で構成されるが、単一の溝で構成されていてもよい。
【0034】
押出部材7は円柱状の軸部材であり、延出部5の内部空間に、Y方向と平行に延びるように配置される。押出部材7の両端部の間の中央部分に挿通孔7aが形成される。挿通孔7aはX方向に沿う方向で押出部材7を貫通している。押出部材7の両端部は、案内溝6に嵌る被嵌合部7cとなる。つまり、押出部材7は、被嵌合部7cが案内溝6に嵌った状態で、案内溝6に沿って、即ち、X方向に沿って一方及び他方へ直線移動するように変位する。押出部材7がX1方向に変位する場合、挿通孔7aの周囲に形成される縁部7bがスプリングケーブル1bの端部9に当接して、スプリングケーブル1bはアウターケーシング1aの方へ(即ち、X1方向へ)押し込まれる。
【0035】
ケーブル操作装置Dは、操作者が操作力を与えるために操作する第1操作部材10と、操作者によって第1操作部材10に与えられた操作力を押出部材7に伝達するリンク機構Lとを有する。
【0036】
第1操作部材10は、操作者が力を加える力点部10aと、その操作力が作用する作用点部10bと、支点となる軸部10cとを有する。
【0037】
リンク機構Lは、第1リンク部材11と第2リンク部材12とを有する。
第1リンク部材11の一端は、押出部材7に対して、押出部材7の端部同士を結ぶ第1軸40周りに互いに回転可能に取り付けられる。第1リンク部材11の他端は、第2リンク部材12の一端に対して、第1軸40と平行な第2軸41周りに互いに回転可能に取り付けられる。第2リンク部材12の他端は、第1操作部材10に対して、第2軸41と平行な第3軸42周りに回転可能に取り付けられる。
【0038】
第1軸40、第2軸41、第3軸42及び揺動軸43は、Y方向に沿って互いに平行である。第1軸40、第2軸41、第3軸42及び揺動軸43のそれぞれは、Y方向に延びる円柱状の軸部材の中心に位置する。尚、本実施形態で揺動軸43と記載する場合、その軸の回転中心を意味する場合と、揺動軸43を構成する部材を意味する場合とがある。また、第1軸40と記載する場合、その軸の回転中心を意味する場合と、第1軸40を構成する円柱状の押出部材7を意味する場合とがある。また、本実施形態で第2軸41及び第3軸42と記載する場合、その回転中心を意味する場合と、各軸を構成する円柱状の軸部材を意味する場合とがある。
【0039】
第1操作部材10は、本体部材2を構成する板状部材4に対して揺動軸43周りに揺動可能に取り付けられる。具体的には、板状部材4に設けられる孔4aに対して第1操作部材10の軸部10cが取り付けられることで、第1操作部材10は本体部材2に対して揺動可能になる。
【0040】
図8に示すように、第1操作部材10の力点部10aに操作者の操作力が加えられることで、第1操作部材10が矢印で示すように揺動した場合、作用点部10bも矢印のように揺動する。その結果、作用点部10bに連結される第3軸42に取り付けられている第2リンク部材12の他端はX2方向に移動する。尚、本実施形態の場合、本体部材2を構成する板状部材4には、Z方向に延びるガイド14が設けられている。そして、第2リンク部材12の一端に連結される第2軸41が、ガイド14によってZ方向に沿ってのみ移動できるように構成されている。そのため、第2リンク部材12の他端がX2方向に移動する場合、第2リンク部材12の一端及び第2軸41はZ2方向に移動する。
【0041】
第2リンク部材12の一端及び第2軸41がZ2方向に移動する場合、同じく第2軸41に取り付けられている第1リンク部材11の他端もZ2方向に移動する。そして、第1リンク部材11の他端がZ2方向に移動する場合、第1リンク部材11の一端及びそれに連結される押出部材7は矢印で示すように案内溝6に沿ってX1方向に移動する。更に、押出部材7がX1方向に移動する場合、押出部材7によってスプリングケーブル1bの端部9が、アウターケーシング1aの方へ(即ち、X1方向へ)押し込まれる。
【0042】
このように、操作者が第1操作部材10に対して図8に矢印で示すような方向へ操作力を加えると、押出部材7は一方(即ちX1方向)へ変位する。そして、押出部材7がX1方向へ変位する際に、押出部材7の縁部7bがスプリングケーブル1bの端部9に当接してその端部9をアウターケーシング1aの方へ押し込む。尚、図示は省略するが、ラッチ装置30において、スプリングケーブル1bはケーブル操作装置Dの方へと例えばスプリングなどによって付勢されているため、操作者が第1操作部材10に操作力を加えるのを止めると、そのスプリングの付勢力によりスプリングケーブル1bは元の位置へ押し戻されるようになっている。そして、ケーブル操作装置Dの構成部品は図8に示した矢印と逆方向に移動して、図8に実線で示すような配置に戻る。このように、押出部材7は、操作者の操作力に応じて、押出部材7の被嵌合部7cが案内溝6に沿って一方及び他方へ直線移動するように変位する。
【0043】
ケーブル操作装置Dは、インナーケーブル1cと連結され、インナーケーブル1cを固定部3に向けて押し込む方向(X1方向)及び固定部3から引き出す方向(X2方向)に操作者が操作する第2操作部材13を備える。この第2操作部材13は、本体部材2に対して揺動軸43周りに揺動可能に装着される。インナーケーブル1cは、第2操作部材13の連結部13aに連結される。操作者が第2操作部材13を操作すると、第2操作部材13が揺動軸43周りに揺動し、それに伴って連結部13aも揺動する。具体的には、板状部材4に設けられる孔4bに対して第2操作部材13の軸部13bが取り付けられることで、第2操作部材13は本体部材2に対して揺動可能になる。その結果、連結部13aに連結されているインナーケーブル1cが、固定部3に向けて押し込む方向及び固定部3から引き出す方向に摺動する。そして、インナーケーブル1cの摺動がコントロールケーブル1を介してロック機構32に伝達され、その結果、ラッチ機構31の動作をロック実行状態及びロック解除状態に切り替えることができる。
【0044】
以上のように、押出部材7は、操作者の操作力に応じて、押出部材7の被嵌合部7cが案内溝6に嵌って一方及び他方に直線移動するように変位する。加えて、操作者の操作力に応じて押出部材7が一方へ変位する際に、インナーケーブル1cが挿通孔7aに挿通された状態で、押出部材7の縁部7bがスプリングケーブル1bの端部9に当接してその端部9をアウターケーシング1aの方へ押し込むように構成されている。つまり、操作者の操作力に応じて押出部材7が変位し、押出部材7とスプリングケーブル1bとが当接したとしても、押出部材7とインナーケーブル1cとが干渉することが抑制される。このように、操作者の操作力に応じて押出部材7が変位したとしても、インナーケーブル1cにはその操作力が作用しないようにしながら、スプリングケーブル1bには操作力が適切に与えられる。
【0045】
<別実施形態>
上記実施形態では、ケーブル操作装置Dの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
具体的には、上記実施形態ではリンク機構Lの構造を説明したが、その構造は適宜変更可能であり、操作者が第1操作部材10を操作した場合に、押出部材7がスプリングケーブル1bの端部9に当接してその端部9をアウターケーシング1aの方へ押し込むように構成されていればよい。例えば、押出部材7が第1リンク部材11に対して回転可能に取り付けられる例、第1リンク部材11が第2リンク部材12に対して回転可能に取り付けられる例、第2リンク部材12が第1操作部材10に対して回転可能に取り付けられる例などを記載したが、第2リンク部材12が第1操作部材10に対して回転不能に取り付けられる構成にしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、筒状体としてスプリングケーブル1bを用いて説明したが、操作力を伝達し、アウターケーシング1aの内部に挿通され、インナーケーブル1cが内部で摺動することができる構成であればその構成は適宜変更可能である。例えば、ライナーと、ライナーの周囲に螺旋状に撚線された複数の線材と、線材の外側に形成された被覆層とを備える筒状体や、素線を螺旋状に巻回したスプリングケーブル1bの外周に樹脂の被覆層を備える筒状体などでもよい。また、上記実施形態では筒状体は、押し操作力を伝達するプッシュケーブルとして用いられる例を示したが、引き操作力を伝達するプルケーブルとして用いられてもよい。
【0047】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、設置スペースを小さくしつつ、操作力を適切に伝達可能なコントロールケーブルに対して、操作力を適切に与えることができるケーブル操作装置に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 :コントロールケーブル
1a :アウターケーシング
1b :スプリングケーブル(筒状体)
1c :インナーケーブル
2 :本体部材
3 :固定部
6 :案内溝
7 :押出部材
7a :挿通孔
7b :縁部
7c :被嵌合部
9 :端部
10 :第1操作部材
11 :第1リンク部材
12 :第2リンク部材
13 :第2操作部材
40 :第1軸
41 :第2軸
42 :第3軸
43 :揺動軸
D :ケーブル操作装置
L :リンク機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8