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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067359
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ワイヤクリップ
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/00 20060101AFI20240510BHJP
   F16B 2/14 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F16G11/00 C
F16B2/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177367
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390007238
【氏名又は名称】コンドーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 修生
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 明英
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GB14
(57)【要約】
【課題】各部品を互いに分離することなくワイヤロープに着脱可能とすることにより、高所で作業する際に部品が落下することを防止でき、さらに、ワイヤロープが外れる可能性を低減させることを可能とする、ワイヤクリップを提供する。
【解決手段】ワイヤクリップ1においては、カム体2を本体3に対して他方向に回動させて不使用状態とした際には、カム体2と第一片33との間にワイヤロープWを挿通可能な間隙が形成されるとともに、カム体2と第二片34との間はワイヤロープWを挿通不能に閉塞され、カム体2を使用状態とした際には、カム体2と第一片33との間はワイヤロープWを挿通不能に閉塞されるとともに、カム体2と第二片34との間にワイヤロープWを挿通可能な間隙が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と該板状部の端部に形成された溝状部とを備える本体と、該本体の前記板状部に回動可能に組付けられるカム体と、前記カム体を前記本体に対して回動可能に連結する軸部材と、を備え、
前記本体の前記溝状部は、ワイヤロープを収容可能とするとともに、ワイヤロープの脱落を防止するために前記板状部と平行となる第一片及び第二片が隣接して形成され、
前記カム体は、一端部に前記溝状部との間で前記ワイヤロープを挟持するためのカム部が形成され、前記軸部材を挟んで前記カム部と反対側の他端部に被係合部が形成され、
前記溝状部における前記第二片の側から延出される前記ワイヤロープと、前記被係合部と、のそれぞれに対して対向する方向に引張力を加え、前記カム体を前記本体に対して一方向に回動させて使用状態とすることにより、前記カム部と前記溝状部とにより前記ワイヤロープの中途部を挟持する、ワイヤクリップであって、
前記カム体を前記本体に対して他方向に回動させて不使用状態とした際には、前記カム体と前記第一片との間に前記ワイヤロープを挿通可能な間隙が形成されるとともに、前記カム体と前記第二片との間は前記ワイヤロープを挿通不能に閉塞され、
前記カム体を使用状態とした際には、前記カム体と前記第一片との間は前記ワイヤロープを挿通不能に閉塞されるとともに、前記カム体と前記第二片との間に前記ワイヤロープを挿通可能な間隙が形成される、ワイヤクリップ。
【請求項2】
前記ワイヤロープが前記溝状部に収容されている際は、前記カム体と前記ワイヤロープとが干渉することにより、前記カム体を前記本体に対して不使用状態とすることが不能とされる、請求項1に記載のワイヤクリップ。
【請求項3】
前記カム体には、前記カム体を使用状態とした際に前記第一片と重複する閉塞片が形成される、請求項1又は請求項2に記載のワイヤクリップ。
【請求項4】
前記第二片には、前記カム体の前記本体に対する一方向側への回動を規制する規制突起が形成される、請求項3に記載のワイヤクリップ。
【請求項5】
前記第一片及び/又は前記第二片には、前記ワイヤロープを挿通する順序が表記される、請求項4に記載のワイヤクリップ。
【請求項6】
前記カム体には、前記本体に対する一方向側への回動方向が表記される、請求項5に記載のワイヤクリップ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等でワイヤロープの中途部を挟持するために用いられるワイヤクリップが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-242738号公報
【特許文献2】実開平1-172587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の技術によれば、断面U字形のクランプ本体と、このクランプ本体の内壁とカム面との間でワイヤロープを挟持するカムとが、カム軸を介して回動自在に連結されている。このような構成に係るワイヤクリップにおいては、クランプ本体を形成する二枚の側壁のそれぞれにカム軸を挿通させる構成としている。このため、ワイヤクリップをワイヤロープに着脱する際には、ワイヤクリップの各部品を互いに分離する必要がある。これにより、ワイヤクリップをワイヤロープに着脱する作業が煩雑になるとともに、高所で作業する際に部品が落下する虞があった。
【0005】
一方、前記特許文献2に記載の技術によれば、クランプ本体における側壁を一枚とし、クランプ本体の溝部とカムとの間の開放部からワイヤロープを挿入できる構成としている。このような構成においては、各部品を互いに分離せずにワイヤロープに着脱することができるため、ワイヤクリップをワイヤロープに着脱する作業を簡素化でき、高所で作業する際に部品が落下することがない。しかし、特許文献2に記載のワイヤクリップによれば、カムがクランプ本体に対して回転した拍子に、ワイヤロープがワイヤクリップから外れる可能性があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、各部品を互いに分離することなくワイヤロープに着脱可能とすることにより、高所で作業する際に部品が落下することを防止でき、さらに、ワイヤロープが外れる可能性を低減させることを可能とする、ワイヤクリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明に係るワイヤクリップは、板状部と該板状部の端部に形成された溝状部とを備える本体と、該本体の前記板状部に回動可能に組付けられるカム体と、前記カム体を前記本体に対して回動可能に連結する軸部材と、を備え、前記本体の前記溝状部は、ワイヤロープを収容可能とするとともに、ワイヤロープの脱落を防止するために前記板状部と平行となる第一片及び第二片が隣接して形成され、前記カム体は、一端部に前記溝状部との間で前記ワイヤロープを挟持するためのカム部が形成され、前記軸部材を挟んで前記カム部と反対側の他端部に被係合部が形成され、前記溝状部における前記第二片の側から延出される前記ワイヤロープと、前記被係合部と、のそれぞれに対して対向する方向に引張力を加え、前記カム体を前記本体に対して一方向に回動させて使用状態とすることにより、前記カム部と前記溝状部とにより前記ワイヤロープの中途部を挟持する、ワイヤクリップであって、前記カム体を前記本体に対して他方向に回動させて不使用状態とした際には、前記カム体と前記第一片との間に前記ワイヤロープを挿通可能な間隙が形成されるとともに、前記カム体と前記第二片との間は前記ワイヤロープを挿通不能に閉塞され、前記カム体を使用状態とした際には、前記カム体と前記第一片との間は前記ワイヤロープを挿通不能に閉塞されるとともに、前記カム体と前記第二片との間に前記ワイヤロープを挿通可能な間隙が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤクリップによれば、各部品を互いに分離することなくワイヤロープに着脱可能とすることにより、高所で作業する際に部品が落下することを防止でき、さらに、ワイヤロープが外れる可能性を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ワイヤクリップの使用状態を示す斜視図。
図2】ワイヤクリップを示す斜視図。
図3】ワイヤクリップの組付構成を示す斜視図。
図4図1中のX-X線断面図。
図5】第一手順におけるワイヤクリップを示す正面図。
図6】第二手順におけるワイヤクリップを示す正面図。
図7】カム体とワイヤロープとが干渉する状態のワイヤクリップを示す正面図。
図8】使用状態のワイヤクリップを示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では図1から図8を用いて、本発明の一実施形態に係るワイヤクリップ1について説明する。図1に示す如く、ワイヤクリップ1は工事現場等における作業の際に、ワイヤロープWの中途部を挟持した状態で、レバーホイストやチェーンブロック等の工具における係合部材Fに係合されて牽引される道具である。
【0012】
図1から図4に示す如く、ワイヤクリップ1は、カム体2と本体3とが、軸部材であるボルトB、及び、ナットNにより回動可能に連結されて構成される。本実施形態に係るワイヤクリップ1において、各部材にはダクタイル鋳鉄等の合金部品が採用される。以下、各部材について順に説明する。
【0013】
本体3は、板状部31と、板状部31の端部に形成された溝状部32とを備える。板状部31の端部には板状部31を貫通する本体挿通孔31aが開口される。図1及び図4に示す如く、ワイヤクリップ1の使用状態において溝状部32にはワイヤロープWが収容される。また、溝状部32にはワイヤロープWの脱落を防止するために、板状部31と平行となる第一片33及び第二片34が隣接して形成される。
【0014】
第一片33及び第二片34には、それぞれの前面に第一表記部33a及び第二表記部34aが形成されている。第一表記部33a及び第二表記部34aには、ワイヤロープWを溝状部32に挿通する順序が表記されている。本実施形態においては図3及び図5から図7に示す如く、第一表記部33aには「1」、第二表記部34aには「2」と表記されている。ワイヤクリップ1の使用者は、この第一表記部33a及び第二表記部34aの表記により、ワイヤロープWをワイヤクリップ1に組付ける手順を認識することができる。具体的に、使用者は、まず第一片33の側にワイヤロープWを挿入してから、第二片34の側にワイヤロープWを挿入することを認識できる。なお、第一表記部33a及び第二表記部34aにおける記載は、ワイヤロープWを溝状部32に挿通する順序が判別できれば良く、その方法は本実施形態に限定されるものでない。また、第一片33と第二片34とのうち何れか一方にのみ、表記部を形成する構成とすることもできる。
【0015】
図3に示す如く、第二片34の前後方向の厚みは第一片33よりも大きく形成されている。第二片34において第一片33との厚みの差により形成される段差は、カム体2の本体3に対する一方向側(カム体2が本体3に対して時計回り方向に回動する方向、以下同じ)への回動を規制する規制突起35として形成されている。この規制突起35により、カム体2が本体3において一方向側に回りすぎることを防止している。
【0016】
カム体2は、本体3の板状部31に回動可能に組付けられる。具体的には、カム体2にはカム体2を貫通するカム挿通孔2aが開口される。そして、図3に示す如く、本体挿通孔3aとカム挿通孔2aとに軸部材であるボルトBが挿通され、ボルトBの先端部にナットNが螺合されることにより、カム体2と本体3とが相対的に回動可能とされる。
【0017】
カム体2は、その一端部(図2及び図3に示す下端部)に、溝状部32との間でワイヤロープWを挟持するためのカム部21が形成されている(図8を参照)。また、ボルトBを挟んでカム部21と反対側の他端部に、円環状の被係合部22が形成されている。図1に示す如く、ワイヤクリップ1の使用時において、被係合部22には係合部材Fが係合される。
【0018】
本実施形態に係るワイヤクリップ1においては、図1図6及び図8に示す如く、ワイヤロープWを溝状部32に収容した状態で、カム体2を一方向側に回動させてカム部21と溝状部32とによりワイヤロープWを挟持した状態を「使用状態」と記載する。また、図5に示す如く、カム体2を他方向(カム体2が本体3に対して反時計回り方向に回動する方向、以下同じ)側に回動させてカム部21と溝状部32とによるワイヤロープWの挟持を解除した状態を「非使用状態」と記載する。
【0019】
また、カム体2には、カム体2を使用状態とした際に、本体3における第一片33と重複する閉塞片23が形成されている。これにより、ワイヤクリップ1の使用時においてワイヤロープWが溝状部32の第一片33の側から外れることがないように構成している。カム体2を使用状態とした際、第一片33は、カム体2においてカム部21と閉塞片23との間に形成される溝25に挿入される。
【0020】
カム体2には、本体3に対する一方向側(カム部21と溝状部32とがワイヤロープWを挟持する側)への回動方向を表記する方向表記部24が表示される。本実施形態において、方向表記部24は被係合部22の上側及び閉塞片23に、矢印の形状で表記されている。換言すれば、カム体2に表記されている方向表記部24の矢印の方向にカム体2を回動させると、ワイヤクリップ1がワイヤロープWを挟持するように構成されている。ワイヤクリップ1の使用者は、この方向表記部24の表記により、ワイヤロープWをワイヤクリップ1に組付けた際に引張力を加える方向(カム体2の一方向への回転方向)を認識することができる。
【0021】
本実施形態におけるワイヤクリップ1を使用する際には図1に示す如く、溝状部32における第二片34の側から延出されるワイヤロープと、被係合部22と、のそれぞれに対して対向する方向に引張力を加える(図8中の矢印Rを参照)。そして、カム体2を本体3に対して一方向に回動させて使用状態とすることにより、カム部21と溝状部32とによりワイヤロープWの中途部を挟持するのである。
【0022】
次に、ワイヤクリップ1でワイヤロープWを挟持する手順について、図5及び図6を用いて説明する。図5に示す第一手順において、カム体2を本体3に対して他方向に回動させて不使用状態とする。この際、図5に示す如く、カム体2と第一片33との間にワイヤロープWを挿通可能な間隙が形成される。この間隙を介してワイヤロープWの一部を溝状部32に挿入する。一方、カム体2と第二片34との間は、ワイヤロープWを挿通不能に閉塞されている。
【0023】
次に、図6に示す第二手順において、カム体2を本体3に対して一方向に回動させて使用状態とする。この際、カム体2と第一片33との間はワイヤロープWを挿通不能に閉塞される。一方、カム体2と第二片34との間にワイヤロープWを挿通可能な間隙が形成される。この間隙を介してワイヤロープWの残りを溝状部32に挿入する。この状態で、第二片34の側から延出されるワイヤロープと被係合部22と、のそれぞれに引張力を加えることにより、カム部21と溝状部32とでワイヤロープWの中途部を挟持する。
【0024】
逆に、ワイヤクリップ1からワイヤロープWを取り外す際は、ワイヤロープと被係合部22とに加える引張力を緩めた状態で、図6に示す使用状態において、カム体2と第二片34との間の間隙を介して、ワイヤロープWの一部を溝状部32から取り出す。さらに、図5に示す不使用状態において、カム体2と第一片33との間の間隙を介して、ワイヤロープWの残りを溝状部32から取り出すのである。
【0025】
上記の如く、本実施形態に係るワイヤクリップ1によれば、本体3における板状部31を一枚とし、本体3の溝状部32とカム体2との間の間隙からワイヤロープWを挿入できる構成としている。このように構成したワイヤクリップ1においては、カム体2と本体3等、ワイヤクリップ1の各部品を互いに分離することなく、ワイヤクリップ1をワイヤロープWに着脱することが可能となる。これにより、ワイヤクリップ1をワイヤロープWに着脱する作業を簡素化でき、片手でワイヤクリップ1を持ってワイヤロープWを着脱することが可能となる。また、ワイヤクリップ1の各部品が分離しないため、ワイヤロープWに着脱する作業を高所で行う際に、部品が落下する虞を低減させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係るワイヤクリップ1によれば、上記の如く、カム体2を本体3に対して異なる二つの姿勢(使用状態と不使用状態)とすることにより、ワイヤロープWをワイヤクリップ1から取外すことを可能としている。換言すれば、カム体2が本体3に対して使用状態から不使用状態へと順に変位しなければ、ワイヤロープWがワイヤクリップ1から外れないように構成している。これにより、ワイヤロープWがワイヤクリップ1から不用意に外れる可能性を低減させることが可能となる。
【0027】
また、ワイヤクリップ1からワイヤロープWを取り外す際は、まず、上記の如くカム体2と第二片34との間隙からワイヤロープWを取り出す必要がある。第二片34の側から延出されるワイヤロープWには、ワイヤクリップ1の使用時においては引張力が作用するため、ワイヤクリップ1の使用時にワイヤロープWが外れる可能性が低い。即ち、ワイヤクリップ1においては、使用時においてワイヤロープWに引張力が加わる第二片34の側からワイヤロープWを取り外す構成とすることにより、ワイヤロープWがワイヤクリップ1から外れにくくなるように構成している。
【0028】
また、本実施形態に係るワイヤクリップ1によれば、図7に示す如く、ワイヤロープWが溝状部32に収容されている際は、カム体2を本体3に対して反時計回りに回動した場合、カム体2とワイヤロープWとが干渉する。これにより、図5の如くカム体2と第一片33との間にワイヤロープWを挿通可能な間隙が形成されない。即ち、ワイヤクリップ1においては、ワイヤロープWが溝状部32に収容されている際に、ワイヤロープWが第一片33とカム体2との間から外れることを防止している。このため、ワイヤロープWをワイヤクリップ1からより外れにくくすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ワイヤクリップ 2 カム体
2a カム挿通孔 3 本体
3a 本体挿通孔
21 カム部 22 被係合孔
23 閉塞片 24 方向表記部
25 溝
31 板状部 32 溝状部
33 第一片 33a 第一表記部
34 第二片 34a 第二表記部
35 規制突起
W ワイヤロープ B ボルト(軸部材)
N ナット R 矢印
F 係合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8