(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067361
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】パーソナライズ行動変容システム、パーソナライズ行動変容方法、及びパーソナライズ行動変容装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177373
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 高彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
(72)【発明者】
【氏名】村上 健祐
(72)【発明者】
【氏名】多屋 優人
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 和真
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊介
(72)【発明者】
【氏名】安富祖 瞬
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB17
5H181BB20
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】ドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性における行動指針に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけるパーソナライズ行動変容システム、パーソナライズ行動変容方法、及びパーソナライズ行動変容装置を提供すること。
【解決手段】パーソナライズ行動変容システムは、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得し、人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得し、前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出し、抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得し、
人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得し、
前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出し、
抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示する
パーソナライズ行動変容システム。
【請求項2】
前記メッセージを提示した後の前記ドライバが運転する車両の車両データを取得し、
取得した前記車両データに基づいて、前記メッセージの提示による前記ドライバにおける行動変容の効果を確認し、
前記効果の確認結果に基づいて、前記行動変容推定モデルを更新する、請求項1に記載のパーソナライズ行動変容システム。
【請求項3】
前記車両データに含まれる燃費データを用いて、前記ドライバに前記メッセージを提示する前後における前記燃費データの変化から前記行動変容の効果を確認する、請求項2に記載のパーソナライズ行動変容システム。
【請求項4】
前記車両データに含まれる安全運転に関する安全運転スコアを用いて、前記ドライバに前記メッセージを提示する前後における前記安全運転スコアの変化から前記行動変容の効果を確認する、請求項2に記載のパーソナライズ行動変容システム。
【請求項5】
前記ドライバの前記心理特性データは、少なくとも前記車両データを用いて推定される、請求項2に記載のパーソナライズ行動変容システム。
【請求項6】
前記行動変容推定モデルは、類似するユースケースで生成された行動変容推定モデルを利用して、前記効果の確認結果に基づいて更新されたものである、請求項2に記載のパーソナライズ行動変容システム。
【請求項7】
コンピュータをパーソナライズ行動変容システムとして機能させるパーソナライズ行動変容方法であって、
ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得する心理特性取得ステップと、
人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得する行動指針取得ステップと、
前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出するメッセージ抽出ステップと、
抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示するメッセージ提示ステップと、
を備えるパーソナライズ行動変容方法。
【請求項8】
ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得する心理特性取得部と、
人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得する行動指針取得部と、
前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出するメッセージ抽出部と、
抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示するメッセージ提示部と、
を備えるパーソナライズ行動変容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけるパーソナライズ行動変容システム、パーソナライズ行動変容方法、及びパーソナライズ行動変容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を運転するドライバの心理特性を推定し、推定した心理特性に基づいてドライバの行動や感じ方を推定したり、車両や当該車両に搭載されるナビゲーション装置等を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-87109号公報
【特許文献2】特開2007-327872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地球温暖化を防ぐために脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、例えば、車両のエコドライブがある。しかしながら、ドライバに画一的なエコドライブ実施のお願いをしただけでは、エコドライブ実施の効果に限界がある。
そこで、エコドライブに限らず、より良い社会にしていくためには、車両等のハードウェア/ソフトウェアの進歩だけではなく実際に運転するドライバの行動も変えていく必要がある。
【0005】
本発明は、ドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性における行動指針に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけるパーソナライズ行動変容システム、パーソナライズ行動変容方法、及びパーソナライズ行動変容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパーソナライズ行動変容システムは、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得し、人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得し、前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出し、抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示する。
【0007】
前記メッセージを提示した後の前記ドライバが運転する車両の車両データを取得し、取得した前記車両データに基づいて、前記メッセージの提示による前記ドライバにおける行動変容の効果を確認し、前記効果の確認結果に基づいて、前記行動変容推定モデルを更新してもよい。
【0008】
前記車両データに含まれる燃費データを用いて、前記ドライバに前記メッセージを提示する前後における前記燃費データの変化から前記行動変容の効果を確認してもよい。
【0009】
前記車両データに含まれる安全運転に関する安全運転スコアを用いて、前記ドライバに前記メッセージを提示する前後における前記安全運転スコアの変化から前記行動変容の効果を確認してもよい。
【0010】
前記ドライバの前記心理特性データは、少なくとも前記車両データを用いて推定されてもよい。
【0011】
前記行動変容推定モデルは、類似するユースケースで生成された行動変容推定モデルを利用して、前記効果の確認結果に基づいて更新されたものであってもよい。
【0012】
本発明に係るパーソナライズ行動変容方法は、コンピュータをパーソナライズ行動変容システムとして機能させるパーソナライズ行動変容方法であって、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得する心理特性取得ステップと、人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得する行動指針取得ステップと、前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出するメッセージ抽出ステップと、抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示するメッセージ提示ステップと、を備える。
【0013】
本発明に係るパーソナライズ行動変容装置は、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データを取得する心理特性取得部と、人の心理特性データが入力されると当該人に対する行動指針の指標を示す行動指針データを出力する行動変容推定モデルに、取得した前記ドライバの前記心理特性データを入力し、前記行動変容推定モデルが出力する前記ドライバの行動指針データを取得する行動指針取得部と、前記行動指針の指標毎に前記ドライバに提示する複数のメッセージを格納するデータベースから、取得した前記ドライバの行動指針データの指標に基づいてメッセージを抽出するメッセージ抽出部と、抽出した前記メッセージを前記ドライバに提示するメッセージ提示部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性における行動指針に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態におけるパーソナライズ行動変容システムの全体構成を示す図である。
【
図2】ドライバ心理特性推定装置により推定された複数のドライバそれぞれの心理特性データの一例を示す図である。
【
図3】ドライバに対する行動変容の心理効果の指標、及び心理効果の指標毎のアンケートの一例を示す図である。
【
図4】行動変容推定モデルが出力する行動指針データの一例を示す図である。
【
図5】ドライバに行動変容を促すメッセージを提示するまでのパーソナライズ行動変容装置のパーソナライズ行動変容処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態におけるパーソナライズ行動変容システム1の全体構成を示す図である。
パーソナライズ行動変容システム1は、ユーザであるドライバが運転する車両10と、当該ドライバが所有するスマートフォン等の利用状況を記憶するスマホ利用データベース(DB)20と、ドライバ心理特性推定装置30と、パーソナライズ行動変容装置40と、情報処理装置50と、を備える。車両10、スマホ利用DB20、ドライバ心理特性推定装置30、パーソナライズ行動変容装置40、及び情報処理装置50は、データの機密性を守るセキュリティネットワーク等の図示しないネットワークを介して通信可能に接続される。
なお、以下では、ドライバの行動変容としてエコドライブをドライバ毎に促す場合を例示して説明する。しかしながら、本発明は、エコドライブ以外(例えば、安全運転等)のドライバの行動変容に対しても適用することができる。
【0017】
<車両10>
車両10は、例えば、当該車両メーカの運用するコネクテッドシステム(図示しない)と連携し、CAN(Controller Area Network)内で送受信される車両データをCANデータとして、図示しないネットワークを介して、ドライバ心理特性推定装置30に送信する。
ここで、CANデータは、走行距離としてオドメーター値、速度として車速及び車輪速度、加速度として前後方向加速度及び左右方向加速度、及び角速度を含んでもよい。また、CANデータは、エンジン回転数、アクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、ステアリング操舵角、ヘッドランプ状態、ターンランプスイッチ状態、ハザードランプスイッチ状態、アシスト機能の利用状況等を含んでもよい。
なお、パーソナライズ行動変容システム1は、1つの車両10が接続されたが、これに限定されず、2以上の複数の車両10が接続されてもよい。
【0018】
<スマホ利用DB20>
スマホ利用DB20は、例えば、データサーバ装置等であり、ドライバのスマートフォン等の加入プランやサブスクサービスの契約有無等のスマホサービス契約データを記憶する。スマホ利用DB20は、通信事業者毎に設けられてもよい。スマホ利用DB20は、パーソナライズ行動変容システム1において、ドライバのスマホサービス契約データの利用に関して当該ドライバにより許可されている場合、当該ドライバのスマホサービス契約データをドライバ心理特性推定装置30に提供する。
【0019】
<ドライバ心理特性推定装置30>
ドライバ心理特性推定装置30は、例えば、サーバ装置等のコンピュータであり、
図1に示すように、制御部31及び記憶部32の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイス等を備える。なお、ドライバ心理特性推定装置30は、例えば車両メーカや通信事業者毎に設けられてもよい。
【0020】
制御部31は、ドライバ心理特性推定装置30の全体を制御する部分であり、記憶部32に記憶された、ドライバ心理特性推定プログラムを含む各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各機能を実現する。制御部31は、CPUであってよい。
【0021】
記憶部32は、ハードウェア群をドライバ心理特性推定装置30として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ(SSD)、又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。具体的には、記憶部32は、本実施形態の各機能を制御部31に実行させるためのプログラムの他、車両10のドライバであるユーザのユーザ情報(ユーザID、パスワード、車両10の情報等)、及びドライバ毎に車両10のCANデータを記憶する。また、記憶部32は、心理特性推定モデル320を記憶する。
【0022】
心理特性推定モデル320は、例えば、公知の手法(例えば、石川雄一、小林亮博、南川敦宣、「運転行動の特徴を用いた心理特性(BIG5)の推定可能性の検証」、信学技報、vol. 118、no. 222、LOIS2018-23、pp. 89-94、2018年9月)を用いて、複数のドライバそれぞれにおける運転頻度や1回の運転における走行距離、運転時間等の運転習慣と、ハンドル、アクセル、ブレーキの操作量や操作頻度等の運転操作と、ドライバが利用するスマホサービス契約データと、を要素としたベクトル(特徴量データ)を入力データとし、当該複数のドライバそれぞれに対するアンケート等によって取得した心理特性データをラベルとする教師データを用いて教師あり学習を実行することで生成された学習済みモデルである。なお、心理特性データには、ドライバの性格を示すBig5(知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、情緒不安定性)、ネガティブな特性(DT)、刺激欲求特性(SS)、共感性指標(IRI)の指標等が含まれる。
【0023】
制御部31は、上述したように、ドライバ心理特性推定プログラム等を適宜読み出して実行することにより、ドライバ判定部310と、心理特性推定部311と、を備える。
【0024】
ドライバ判定部310は、例えば、車両10から受信したドライバのユーザ情報と、記憶部32に記憶されたユーザ情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合、車両10のドライバがパーソナライズ行動変容システム1に登録されたユーザと認証する。ドライバ心理特性推定装置30は、認証したドライバが運転する車両10のCANデータを、当該ドライバのユーザ情報と紐付けて記憶部32に記憶する。
【0025】
心理特性推定部311は、記憶部32に記憶されたドライバが運転する車両10のCANデータ及び当該ドライバのスマホサービス契約データに基づいて、ドライバの心理特性を推定する。
具体的には、心理特性推定部311は、例えば、記憶部32に記憶されたCANデータからドライバにおける運転習慣を示す運転頻度や1回の運転における走行距離、運転時間等と、運転操作を示すハンドル、アクセル、ブレーキの操作量や操作頻度等と、を算出する。そして、心理特性推定部311は、算出したドライバにおける運転習慣を示す運転頻度や1回の運転における走行距離、運転時間等、及び運転操作を示すハンドル、アクセル、ブレーキの操作量や操作頻度等と、ドライバが利用するスマホサービス契約データと、を要素としたベクトル(特徴量データ)を心理特性推定モデル320に入力し、ドライバの心理特性データ(Big5(知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、情緒不安定性)、ネガティブな特性(DT)、刺激欲求特性(SS)、共感性指標(IRI)の指標)を推定する。心理特性推定部311は、推定したドライバの心理特性データを、後述するパーソナライズ行動変容装置40に出力する。
【0026】
<パーソナライズ行動変容装置40>
パーソナライズ行動変容装置40は、例えば、サーバ装置等のコンピュータであり、
図1に示すように、制御部41及び記憶部42の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイス等を備える。なお、パーソナライズ行動変容装置40は、例えば車両メーカや通信事業者毎に設けられてもよい。また、パーソナライズ行動変容装置40は、ドライバ心理特性推定装置30を含んでもよい。
【0027】
記憶部42は、ハードウェア群をパーソナライズ行動変容装置40として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ(SSD)、又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。具体的には、記憶部42は、本実施形態の各機能を制御部41に実行させるためのパーソナライズ行動変容プログラム等を記憶する。また、記憶部42は、心理特性データベース(DB)420、行動変容推定モデル421、行動変容指標データベース(DB)422、及びメッセージデータベース(DB)423を有する。
【0028】
心理特性DB420は、ドライバ心理特性推定装置30により推定されたドライバのBig5(知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、情緒不安定性)、ネガティブな特性(DT)、刺激欲求特性(SS)、共感性指標(IRI)の指標の心理特性データを、ドライバ毎に記憶する。
【0029】
行動変容推定モデル421は、例えば、勾配ブースティング、サポートベクタマシン、ニューラルネットワーク等の機械学習モデルであり、複数のドライバの心理特性データを入力データとし、複数のドライバそれぞれに対するアンケートの結果に基づく心理効果(行動指針)の指標を示す行動指針データをラベル(正解)とする教師データを用いた、公知の教師あり学習により生成されたものである。
本実施形態では、ドライバ心理特性推定装置30により推定された複数のドライバそれぞれの心理特性データを入力データとして用いる。
図2は、ドライバ心理特性推定装置30により推定された複数のドライバそれぞれの心理特性データの一例を示す図である。なお、
図2では、心理特性データとして、CANデータから推定されたBig5の知的好奇心(Openness)、誠実性(Conscientiousness)、外向性(Extraversion)、協調性(Agreeableness)、情緒不安定性(Neuroticism)の指標を示す。なお、ネガティブな特性(DT)、刺激欲求特性(SS)、共感性指標(IRI)の指標についても同様である。
図2に示すように、推定された各ドライバの心理特性データの各指標は、教師あり学習の入力データとして用いるために、二値化される。具体的には、各指標は、平均値+1σより大きい場合に「指標_high」とし、平均値+1σより小さい場合に「指標_low」とする。なお、σは標準偏差である。
【0030】
また、本実施形態では、複数のドライバそれぞれに対して行ったエコドライブの行動変容を促す場合の心理効果の指標毎のアンケートの回答をラベルデータとして用いる。
図3は、ドライバに対する行動変容の心理効果の指標、及び心理効果の指標毎のアンケートの一例を示す図である。なお、
図3では、ドライバに対してエコドライブの行動変容を促す場合の心理効果の指標を示すが、エコドライブ以外の安全運転等の場合についても同様である。
図3に示すように、ドライバにエコドライブの行動変容を促す心理効果(行動指針)として、例えば、心理学に基づき「情報の魅力度」、「結論の明示」、「両面提示」、「ネガティブ感情の喚起」、「ポジティブ感情の喚起」、「希少性」、「返報性」、「権威」、「コミットメントと一貫性」、「社会的証明」、「好意」、「インセンティブ」、及び「フィードバックを与える」の13の指標を使用する。
【0031】
複数のドライバそれぞれにおける「情報の魅力度」等の心理効果の指標は、例えば、「エコドライブには、自分の燃費を確認することと、車間距離にゆとりをもって加速・減速の少ない運転をすることが重要です。あなたがエコドライブに関する情報提供を受ける場面を想像してください。」という共通文章の下で、各心理効果の指標に関するアンケートを複数のドライバに対して予め実施し、アンケートの内容について「そう思う」か「そう思わない」かの回答として取得される。なお、心理効果の各指標は、ラベルデータとして用いる場合、「0(そう思わない)」と「1(そう思う)」との二値化するようにしてもよい。
これにより、行動変容推定モデル421は、取得された入力データとラベルデータとを用いて、教師あり学習を実行することにより生成される。生成された行動変容推定モデル421の精度がPoC(Proof of Concept)閾値となる目標精度を満足することが、実験により確認されている。
これにより、後述する行動指針取得部411は、ドライバ心理特性推定装置30により推定されたドライバの心理特性データを行動変容推定モデル421に入力することで、行動変容推定モデル421から出力されるドライバにおける13の心理効果の指標に関する行動指針データを取得することができる。
【0032】
なお、「情報の魅力度」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、受け手に行ってほしい行動を明確に示す指標である。例えば、「エコドライブをすることで、燃費向上により環境に良いことに加えて、交通事故の削減にもつながります。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合い(例えば、5段階評価等)をドライバに回答させることで、「情報の魅力度」の指標を測ることができる。
また、「結論の明示」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、メッセージで伝えられた情報の有益性を示す指標である。例えば、「あなたの運転は燃費が良くないので、エコドライブをこころがけましょう。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「結論の明示」の指標を測ることができる。
また、「両面提示」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、唱導する方向(説得したい方向)に合う情報だけでなく、逆の内容も提示することを示す指標である。例えば、「あなたの運転は燃費が良くないので、エコドライブをこころがけましょう。エコドライブは時に面倒に感じるかもしれませんが、将来的に燃料費低減・地球環境保護といった利点があります。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「両面提示」の指標を測ることができる。
また、「ネガティブ感情の喚起」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、説得メッセージにおいて、受け手の感情(恐怖、不安等)をあおる表現を用いることを示す指標である。例えば、「あなたはゆとりのない車間距離と急加速・減速で同乗者や周りのドライバを怖がらせていないですか。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「ネガティブ感情の喚起」の指標を測ることができる。
【0033】
また、「ポジティブ感情の喚起」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、説得メッセージにおいて、受け手におもしろさ(ユーモア)、快適な感情をもたらす表現を用いることを示す指標である。例えば、「あなたがゆとりのある車間距離で運転をすることで同乗者や周りのドライバも安全です。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「ポジティブ感情の喚起」の指標を測ることができる。
また、「希少性」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、資源の量や、獲得できる期間が限られていると、価値が高く感じられることを示す指標である。例えば、「今ならエコドライブのコツをまとめた資料を配信中!」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「希少性」の指標を測ることができる。
また、「返報性」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、他者から受けた行為に対して、自分も同様の行為を返すことを示す指標である。例えば、「譲り合いの気持ちをもって運転しませんか?」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「返報性」の指標を測ることができる。
また、「権威」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、情報の送り手が説得のテーマについての専門的知識・技能を持っていることや、送り手の経歴や職業、情報源が明示されていること等の要因が、専門性があるという印象に影響することを示す指標である。例えば、「警察庁と環境省によると、エコドライブをすることで、燃費向上により環境に良いことに加えて、交通事故の削減にもつながります。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「権威」の指標を測ることができる。
【0034】
また、「コミットメントと一貫性」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、説得メッセージに対する態度を(契約や署名や公言等により)表明させることを示す指標である。例えば、「あなたの前回の運転時はエコドライブを意識したブレーキングがされていました。本日も継続しましょう。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「コミットメントと一貫性」の指標を測ることができる。
また、「社会的証明」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、被介入者の周囲の環境を利用した影響や、他者の状況(サービス利用率や調査結果)を提示することを示す指標である。例えば、「エコドライブを実施すれば燃費向上につながることに加えて、交通事故が約60%減少したという報告があります。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「社会的証明」の指標を測ることができる。
また、「好意」は、対人影響の分類の「説得」に分類される指標で、説得の受け手から見て、送り手が魅力的であることや、外見が良い等の表面的な手掛かりから、送り手の知性や誠実さといった内的な性質も(実際には手掛かりと関係なくても)良いだろうと推測してしまうことを示す指標である。例えば、「ガソリン代の負担に悩んでいるあなたへ。エコドライブでガソリン代を少しでも浮かせてみませんか。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「好意」の指標を測ることができる。
【0035】
また、「インセンティブ」は、対人影響の分類の「誘発」に分類される指標で、利益とコストの目立ちやすさを操作し、注意を向けさせることを示す指標である。例えば、「エコドライブキャンペーン実施中。燃費10%向上で100円相当のポイントプレゼント!」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「インセンティブ」の指標を測ることができる。
また、「フィードバックを与える」は、対人影響の分類の「誘発」に分類される指標で、行動の結果(適切か不適切か、完了したかどうか等)を行為者に知らせ、不適切な行動ややり忘れを修正させることを示す指標である。例えば、「あなたの運転に対して、燃費が通知されます。」というアンケートの設問に対して「そう思う」か「そう思わない」かの度合いをドライバに回答させることで、「フィードバックを与える」の指標を測ることができる。
【0036】
行動変容指標DB422は、後述する行動指針取得部411により取得されたドライバ毎の行動指針データが記憶される。
【0037】
メッセージDB423は、行動指針データの心理効果の指標毎にドライバに提示する複数のメッセージが予め格納される。なお、複数のメッセージには、例えば、
図3に示すアンケートと同じ文章が含まれてもよい。また、メッセージDB423は、心理効果の指標の組み合わせに応じた複数のメッセージを格納するようにしてもよい。
【0038】
制御部41は、前述したように、パーソナライズ処理プログラム等を適宜読み出して実行することにより、心理特性取得部410と、行動指針取得部411と、メッセージ抽出部412と、メッセージ提示部413と、を備える。
【0039】
心理特性取得部410は、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データをドライバ心理特性推定装置30から取得する。
【0040】
行動指針取得部411は、心理特性取得部410により取得されたドライバの心理特性データを二値化して行動変容推定モデル421に入力し、ドライバにおける13の心理効果(行動指針)の指標の行動指針データを取得する。
図4は、行動変容推定モデル421が出力する行動指針データの一例を示す図である。
図4に示すように、行動指針取得部411は、例えば、
図2の二値化されたドライバAの心理特性データを行動変容推定モデル421に入力すると、13の心理効果の指標毎の効果の有無を示す「0(無し)」又は「1(有り)」の行動指針データを取得する。すなわち、ドライバAの場合、行動指針データのうち「ポジティブ感情の喚起」、「返報性」、「権威」、「コミットメントと一貫性」、「社会的証明」、「好意」、「インセンティブ」、及び「フィードバックを与える」の指標が、行動変容を促すのに効果があることを示す。
行動指針取得部411は、取得した行動指針データを行動変容指標DB422にドライバと紐付けて記憶する。
なお、行動変容推定モデル421は、行動指針データの13の心理効果の指標毎の効果の有無を、「0」又は「1」で出力したが、0~1の値で出力するようにしてもよい。
【0041】
メッセージ抽出部412は、例えば、行動指針取得部411により取得されたドライバの行動指針データの指標に基づいて、ドライバに行動変容を促すメッセージをメッセージDB423から抽出する。
具体的には、メッセージ抽出部412は、例えば、行動変容DBから所定の期間(例えば、直近の1週間等)のドライバの行動指針データを読み出し、読み出した行動指針データの「情報の魅力度」等の心理効果の指標毎の平均値を算出するようにしてもよい。そして、メッセージ抽出部412は、行動指針データのうち最大の平均値の心理効果の指標に対応するメッセージをメッセージDB423から抽出するようにしてもよい。
なお、メッセージ抽出部412は、後述するメッセージ提示部413が提示したメッセージに対してドライバの行動変容に効果なしの確認結果を後述する情報処理装置50から受信した場合、パーソナライズ行動変容装置40に含まれるキーボードやタッチパネル等の入力装置(図示しない)を介したオペレータの入力操作に基づいて、抽出したメッセージの心理効果の指標に対する新たなメッセージを受け付け、メッセージDB423を更新するようにしてもよい。あるいは、メッセージ抽出部412は、提示したメッセージの心理効果の指標における別のメッセージをメッセージDB423から抽出するようにしてもよい。
また、メッセージ抽出部412は、メッセージDB423が心理効果の指標の組み合わせに応じた複数のメッセージを格納している場合、平均値が大きい順の心理効果の指標の組み合わせに基づいてメッセージをメッセージDB423から抽出するようにしてもよい。
【0042】
メッセージ提示部413は、例えば、メッセージ抽出部412により抽出されたメッセージをドライバに提示する。
具体的には、メッセージ提示部413は、例えば、抽出されたメッセージを所定の期間(例えば、1週間等)に1回、電子メールでドライバAのスマートフォンに送信し提示する。
そうすることで、パーソナライズ行動変容装置40は、ドライバ毎の心理特性における行動指針に応じたエコドライブの行動変容を促すことができ、エコドライブに向けた意識改善の向上を図ることができる。
なお、メッセージ提示部413は、抽出したメッセージを電子メールで送信したが、SNSやWEBブラウザ等を介してメッセージをドライバに提示するようにしてもよい。
また、メッセージ提示部413は、ナビゲーション装置等の車両10の車載装置(図示しない)にメッセージを提示するようにしてもよい。この場合のメッセージの提示は、例えば、車載装置のディスプレイに表示したり、音声で通知する等してもよい。
【0043】
<情報処理装置50>
情報処理装置50は、例えば、コンピュータ装置等であり、
図1に示すように、制御部51及び記憶部52の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイス等を備える。なお、情報処理装置50は、例えば車両メーカや通信事業者毎に設けられてもよい。また、情報処理装置50は、パーソナライズ行動変容装置40と一体に構成されてもよい。
【0044】
記憶部52は、ハードウェア群を情報処理装置50として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ(SSD)、又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。具体的には、記憶部52は、本実施形態の各機能を制御部51に実行させるための情報処理プログラム等を記憶する。
【0045】
制御部51は、前述したように、情報処理プログラム等を適宜読み出して実行することにより、車両データ取得部510と、確認処理部511と、を備える。
【0046】
車両データ取得部510は、車両10からCANデータを取得する。
【0047】
確認処理部511は、車両データ取得部により取得されたCANデータに基づいて、メッセージの提示により車両10のドライバにおける行動変容の効果を確認する。
具体的には、確認処理部511は、例えば、エコドライブの場合、CANデータに含まれる提示後の燃費がメッセージの提示前の値と比較して向上しているか否かを判定する。確認処理部511は、提示後の燃費が向上している場合、ドライバの行動変容に対して提示したメッセージの効果があると判定する。一方、確認処理部511は、提示後の燃費が向上していない場合、ドライバの行動変容に対して提示したメッセージの効果がないと判定する。確認処理部511は、確認結果をパーソナライズ行動変容装置40にフィードバックする。
そして、パーソナライズ行動変容装置40は、上述したように、提示したメッセージが行動変容の効果なしの確認結果のフィードバックを受信した場合、オペレータの入力操作に基づいて、提示したメッセージの心理効果の指標に対する新たなメッセージを受け付け、メッセージDB423を更新するようにしてもよい。あるいは、パーソナライズ行動変容装置40は、提示したメッセージの心理効果の指標における別のメッセージをメッセージDB423から抽出し、抽出したメッセージをドライバに提示するようにしてもよい。
【0048】
図5は、ドライバに行動変容を促すメッセージを提示するまでのパーソナライズ行動変容装置40のパーソナライズ行動変容処理の流れの一例を示す図である。なお、ここで示すフローは、ドライバ心理特性推定装置30からドライバの心理特性データを受信する度に実行される。
【0049】
ステップS11において、心理特性取得部410は、ドライバの心理特性の指標を示す心理特性データをドライバ心理特性推定装置30から取得する。
【0050】
ステップS12において、行動指針取得部411は、ステップS11で取得されたドライバの心理特性データを二値化して行動変容推定モデル421に入力し、ドライバにおける13の心理効果(行動指針)の指標毎の効果の有無を示す行動指針データを取得する。行動指針取得部411は、取得したドライバの行動指針データを行動変容指標DB422に記憶する。
【0051】
ステップS13において、メッセージ抽出部412は、ステップS12で取得されたドライバの行動指針データの指標に基づくドライバに行動変容を促すメッセージをメッセージDB423から抽出する。
【0052】
ステップS14において、メッセージ提示部413は、ステップS13で抽出したメッセージを電子メールでドライバのスマートフォンに送信し提示する。
【0053】
ステップS15において、メッセージ抽出部412は、提示したメッセージによりドライバの行動変容に効果なしの確認結果のフィードバックを情報処理装置50から受信したか否かを判定する。ドライバの行動変容に効果なしの確認結果のフィードバックを情報処理装置50から受信した場合、処理は、ステップS16に進む。一方、ドライバの行動変容に効果なしの確認結果のフィードバックを情報処理装置50から受信しない場合、パーソナライズ行動変容装置40の処理は終了する。
【0054】
ステップS16において、メッセージ抽出部412は、パーソナライズ行動変容装置40の入力装置(図示しない)を介したオペレータの入力操作に基づいて、ステップS13で抽出したメッセージの心理効果の指標に対する新たなメッセージを受け付け、メッセージDB423を更新する。パーソナライズ行動変容装置40の処理は終了する。
【0055】
以上により、本実施形態に係るパーソナライズ行動変容システム1は、ドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性における行動指針に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけることができる。
また、パーソナライズ行動変容システム1は、所定の期間(例えば、1週間等)に1回、抽出したメッセージをドライバのスマートフォン等に提示する働きかけを繰り返すことにより、実際の実験において、メッセージを受け取らないドライバや、「エコドライブをお願いします。」等の一律の単純なお願いのメッセージのみを受信するドライバと比べて、約2.5倍の意向改善したドライバの数を増加させることができ、メッセージを提示しなくても習慣化させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0057】
本実施形態では、エコドライブの場合のパーソナライズ行動変容システム1の動作を例示したが、これに限定されない。
例えば、パーソナライズ行動変容システム1は、ドライバに対して安全運転等の行動変容を促す場合に対しても適用することができる。具体的には、安全運転の場合、情報処理装置50は、CANデータに含まれる提示後の安全運転スコア(例えば、急ブレーキ回数等)がメッセージの提示前の値と比較して向上(すなわち急ブレーキ回数等が減少)しているか否かを判定する。提示後の安全運転スコアが向上している場合、情報処理装置50は、ドライバの行動変容に対して提示したメッセージの効果があると判定するようにしてもよい。一方、情報処理装置50は、提示後の安全運転スコアが向上していない場合、ドライバの行動変容に対して提示したメッセージの効果がないと判定し、パーソナライズ行動変容装置40にフィードバックするようにしてもよい。そして、パーソナライズ行動変容装置40は、効果がある指標に基づく別のメッセージをメッセージDB423から抽出し、抽出したメッセージをドライバに提示するようにしてもよい。
【0058】
また例えば、本実施形態では、パーソナライズ行動変容装置40は、提示したメッセージに対してドライバの行動変容に効果なしの確認結果のフィードバックを情報処理装置50から受信した場合、オペレータの入力操作に基づいて提示したメッセージの心理効果の指標の新たなメッセージを受け付け、メッセージDB423を更新したが、これに限定されない。
例えば、パーソナライズ行動変容装置40は、提示したメッセージに対してドライバの行動変容に効果なしの確認結果を情報処理装置50から受信した場合、当該メッセージが抽出された時のドライバの心理特性データを入力データとし、行動指針データの心理効果の各指標をラベルとする新たな教師データを用いて、再度教師あり学習を行い、行動変容推定モデル421を更新するようにしてもよい。
そうすることで、パーソナライズ行動変容装置40は、ドライバの行動指針データをより精度良く推定することができ、ドライバの行動変容を促すより効果のあるメッセージを抽出することができる。
【0059】
また例えば、本実施形態では、パーソナライズ行動変容装置40は、予めエコドライブ用に生成されて行動変容推定モデル421を有したが、これに限定されない。例えば、パーソナライズ行動変容装置40は、安全運転等の類似するユースケースで生成された行動変容推定モデル421を利用して、情報処理装置50からの確認結果のフィードバックに基づいて、エコドライブ用の行動変容推定モデル421に更新するようにしてもよい。
【0060】
また例えば、本実施形態では、パーソナライズ行動変容装置40は、メッセージDB423に心理効果の指標毎に複数の文章を予め格納し、行動変容推定モデル421から出力されたドライバの心理効果の指標に基づいてメッセージDB423からメッセージを抽出したが、これに限定されない。例えば、パーソナライズ行動変容装置40は、複数のドライバの行動指針データの心理効果の各指標を入力データとし、専門家等が作成した心理効果の指標毎の文章をラベルとする教師データを用いた機械学習により生成された学習済みモデルを有してもよい。パーソナライズ行動変容装置40は、行動変容推定モデル421から出力されたドライバの行動指針データを当該学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルが出力する文章をドライバに提示するメッセージとするようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態の機能的構成を変形するようにしてもよい。すなわち、
図1の機能的構成は例示に過ぎず、本実施形態の機能的構成を限定するものではない。すなわち、本発明のパーソナライズ行動変容システム1の機能に関する一連の処理を全体として実行できる機能が各機器に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図1の例に限定されない。
【0062】
また、これら機能的構成を実現するための装置についても、上述した実施形態での説明は例示に過ぎない。例えば、パーソナライズ行動変容装置40は、ドライバ心理特性推定装置30及び/又は情報処理装置50を含んでもよい。
また、ドライバ心理特性推定装置30、パーソナライズ行動変容装置40、及び情報処理装置50それぞれの各機能は、適宜複数のサーバ装置に分散する、分散処理システムとしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、ドライバ心理特性推定装置30、パーソナライズ行動変容装置40、及び情報処理装置50の各機能を実現してもよい。
【0063】
パーソナライズ行動変容システム1に係る機能は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD-ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【0064】
なお、これにより、例えばドライバ毎に心理特性を推定し、推定した心理特性における行動指針に応じた行動変容をドライバ毎に働きかけることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 パーソナライズ行動変容システム
10 車両
20 スマホ利用DB
30 ドライバ心理特性推定装置
31 制御部
310 ドライバ判定部
311 心理特性推定部
32 記憶部
320 心理特性推定モデル
40 パーソナライズ行動変容装置
41 制御部
410 心理特性取得部
411 行動指針取得部
412 メッセージ抽出部
413 メッセージ提示部
42 記憶部
420 心理特性DB
421 行動変容推定モデル
422 行動変容指標DB
423 メッセージDB
50 情報処理装置
51 制御部
510 車両データ取得部
511 確認処理部
52 記憶部